ゲスト
(ka0000)
【MN】青白い馬が光の都を駆け抜ける
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/12 07:30
- 完成日
- 2018/08/13 14:08
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ハロー、シチズン。こちらはエンドレスです」
統一地球連合宙軍所属最新鋭艦ヴァルハラのブリッジでは、相も変わらずAI『エンドレス』の声が木霊する。
連合宙軍極東支部が計画した『太陽会戦』への参加を要請されたパイロット達は、ホーチミンクラスタの奇襲任務が下された。
高高度からの降下作戦を実施の上、パイロット達はヴァルキリーと共にホーチミンクラスタの撃破に成功。歪虚側は主力を北上させていた事からインドシナ半島の南北で挟撃を受ける形となった。この作戦が成功すれば、戦力バランスは大きく書き換えられるだろう。
「連合宙軍ではヴァルキリーシリーズの量産が決定しました」
新型CAM『ヴァルキリー』。
この艦に乗るパイロットであれば、誰でも知っている。
マドゥラ・フォレスト博士が開発した新システム――正式名称を『Deadry Alliance System』を搭載したヴァルキリーは、通常のCAMとは大きく異なる。DASによりパイロットの思考を読み取る事で、性能を飛躍的に向上。特に反応速度は特筆すべきものがある。
またパイロット達も特定状況で機体能力が各段に上がる事を知っているが、その発動状況は不明のままだ。
しかし――問題もある。
「量産って……博士は今も行方不明なのでしょう?」
パイロットの一人がエンドレスへ問いかけた。
マドゥラ博士はヴァルキリーを逃がす為にアデレードの研究施設で行方不明となった。
博士が不在の状況でDASを搭載したヴァルキリーをどうやって量産するというのだ。
さらに別のパイロットが、補足するように『ある指摘』をぶつける。
「確かDASには適合があるはずだ。適合しなければシステムは動かない。誰でも乗れる機体じゃない。そもそも量産など不可能じゃないか?」
DASは万人向けのシステムではない。
適性が存在し、パイロットが適合しなければCAMは起動すらしない。誰でもが乗れるシステムではない以上、量産など実現不可能だ。
「DASの最深部はブラックボックスですが、一部は軍も把握しております。
その情報を元に軍はDAS補助システムの開発に成功しました。これによりDASを汎用化させる事で適性を軽減してパイロットが搭乗する事が可能です。既に軍は量産体制に入っております」
エンドレスの機械音がパイロットへの疑問に答える。
パイロット達がホーチミンで戦っている間、連合宙軍は既にDASの新システム開発に乗り出していた。DASの根幹はマドゥラ博士にしか分からないが、基本ベースは軍も把握している。問題は適合であり、その適用も補助システムを開発する事で軽減する事ができたようだ。
だが、エンドレスによれば補助システムは自転車の補助輪に近いものであり、完全に性能を引き出すには適合を無視できないという。
「なんだよ。これで楽できると思ったのに」
「それだけ戦力の低下が著しいという事だ。こんな機体でもヴァルキリーとして量産する事に意味があるのだろう」
ハンター達も口々に己の見解を述べる。
ホーチミンクラスタの撃破に成功しただけなのだが、既にヴァルキリーは連合宙軍内において重要な存在となっていた。
――反抗の象徴。
歪虚の支配に正面から立ち向かっていく期待の部隊。
しかし、その内実は過酷な戦場へ次々と送り込まれる懲罰部隊のような運用なのだが。
「エンドレス、この後の動向は?」
「太陽会戦に呼応して欧州及びアメリカ支部も同時に反抗作戦を開始します。欧州戦線ではパリ陥落により決着。契約者となった者達がパリに歪虚の支配体制を樹立しています。生きて行く為に契約者となる者いる中で、レジスタンスが隠れて破壊活動を行っている状況でした。
欧州支部はフランスに南北から上陸。レジスタンスの暴動に合わせてパリへ一斉に攻撃を仕掛ける手筈となっています。最終目標は凱旋門にあるパリクラスタです」
パリ陥落は連合宙軍にとって衝撃的な事件であった。
欧州中央部主要都市に支配地域を失った人類はイギリス、及びイタリア南部へ逃れて徹底抗戦を継続していた。だが、太陽会戦の成功を受けて欧州支部は再起を図る作戦を下した。
『liberte』――自由と名付けられた作戦は、パリ奪還に主軸を置かれていた。
パリの奪還という欧州支部の悲願を達成する事で軍全体の士気を向上させて戦線を押し上げようというのだ。
歪虚側の欧州最大拠点はベルリンクラスタ。
かつての栄光を再び、という訳か。
「なるほど。パリ奪還に手を貸せという訳か」
「はい、これよりヴァルハラは進路を東へ取り、パリへ……緊急通信を受信。通信回線を開きます」
コメント中にエンドレスは、突然の緊急通信を受信。パイロットへ聞かせる為に、通信回線をブリッジのスピーカーへ接続した。
ブリッジに響くのは連続して響く銃声と、息を切らせる男性の声。
「失敗だ。作戦は敵に漏れていた! 現在、パリ市内で敵と交戦中。量産型ヴァルキリー部隊を投入しているが、パリ攻略の部隊は劣勢……うわっ!」
男性の悲鳴。
次の瞬間、通信は絶たれてブリッジに沈黙が支配する。
作戦の漏洩。それは欧州支部の立案したパリ奪還作戦の成功が困難だという事だ。
既に量産されたヴァルキリーを投入しているようだが、それでも劣勢を押し返すには至っていない。
もしかするとパリクラスタには何かあるのかもしれない。
だが、それでもパイロット達の目に諦めの色は見られない。
「今も戦っているレジスタンスがいるのだろう? なら、行くしかないな。
エンドレス、予定通りパリへ向かってくれ」
●
「これが、ヴァルキリーですか。戦士を誘う女神の名を冠するには残念過ぎます」
パリに駐留していたブラッドリーは、足下に転がる量産型ヴァルキリーを見下ろしていた。
レジスタンスと呼応してパリへ進軍を開始した連合宙軍であったが、既にブラッドリーら歪虚側に作戦が漏洩。レジスタンスへ潜ませていたスパイの情報は十分に役立ってくれた。
それでもパリへ敵を誘き寄せたのはヴァルキリーという期待に興味があったからだ。
「ホーチミンクラスタを破壊したと聞いていますが、この程度で陥落するはずがありません。おそらく、何か事情があるはずです。
……ああ、それは子羊が七つの封印の解き放ち、悔い改める事を放棄した哀れなる者達。既に白い馬が訪れている事も気付かず、天使達の存在を信じ続けているのでしょう」
ブラッドリーの手に震えが走る。
黙示騎士ウォーレンから聞かれていた人間は放つ最後の光。
それに触れられるかと期待していたブラッドリー。
光――それが戦いの果てに追い求める魂の光なのだろうか。
「行きますよ、ペイルライダー。真の導き手は別にいるはずです。戦士を誘う者を出迎えなければなりません」
深蒼の歪虚CAMペイルライダーは、旋回してパリクラスタへと消えていった。
統一地球連合宙軍所属最新鋭艦ヴァルハラのブリッジでは、相も変わらずAI『エンドレス』の声が木霊する。
連合宙軍極東支部が計画した『太陽会戦』への参加を要請されたパイロット達は、ホーチミンクラスタの奇襲任務が下された。
高高度からの降下作戦を実施の上、パイロット達はヴァルキリーと共にホーチミンクラスタの撃破に成功。歪虚側は主力を北上させていた事からインドシナ半島の南北で挟撃を受ける形となった。この作戦が成功すれば、戦力バランスは大きく書き換えられるだろう。
「連合宙軍ではヴァルキリーシリーズの量産が決定しました」
新型CAM『ヴァルキリー』。
この艦に乗るパイロットであれば、誰でも知っている。
マドゥラ・フォレスト博士が開発した新システム――正式名称を『Deadry Alliance System』を搭載したヴァルキリーは、通常のCAMとは大きく異なる。DASによりパイロットの思考を読み取る事で、性能を飛躍的に向上。特に反応速度は特筆すべきものがある。
またパイロット達も特定状況で機体能力が各段に上がる事を知っているが、その発動状況は不明のままだ。
しかし――問題もある。
「量産って……博士は今も行方不明なのでしょう?」
パイロットの一人がエンドレスへ問いかけた。
マドゥラ博士はヴァルキリーを逃がす為にアデレードの研究施設で行方不明となった。
博士が不在の状況でDASを搭載したヴァルキリーをどうやって量産するというのだ。
さらに別のパイロットが、補足するように『ある指摘』をぶつける。
「確かDASには適合があるはずだ。適合しなければシステムは動かない。誰でも乗れる機体じゃない。そもそも量産など不可能じゃないか?」
DASは万人向けのシステムではない。
適性が存在し、パイロットが適合しなければCAMは起動すらしない。誰でもが乗れるシステムではない以上、量産など実現不可能だ。
「DASの最深部はブラックボックスですが、一部は軍も把握しております。
その情報を元に軍はDAS補助システムの開発に成功しました。これによりDASを汎用化させる事で適性を軽減してパイロットが搭乗する事が可能です。既に軍は量産体制に入っております」
エンドレスの機械音がパイロットへの疑問に答える。
パイロット達がホーチミンで戦っている間、連合宙軍は既にDASの新システム開発に乗り出していた。DASの根幹はマドゥラ博士にしか分からないが、基本ベースは軍も把握している。問題は適合であり、その適用も補助システムを開発する事で軽減する事ができたようだ。
だが、エンドレスによれば補助システムは自転車の補助輪に近いものであり、完全に性能を引き出すには適合を無視できないという。
「なんだよ。これで楽できると思ったのに」
「それだけ戦力の低下が著しいという事だ。こんな機体でもヴァルキリーとして量産する事に意味があるのだろう」
ハンター達も口々に己の見解を述べる。
ホーチミンクラスタの撃破に成功しただけなのだが、既にヴァルキリーは連合宙軍内において重要な存在となっていた。
――反抗の象徴。
歪虚の支配に正面から立ち向かっていく期待の部隊。
しかし、その内実は過酷な戦場へ次々と送り込まれる懲罰部隊のような運用なのだが。
「エンドレス、この後の動向は?」
「太陽会戦に呼応して欧州及びアメリカ支部も同時に反抗作戦を開始します。欧州戦線ではパリ陥落により決着。契約者となった者達がパリに歪虚の支配体制を樹立しています。生きて行く為に契約者となる者いる中で、レジスタンスが隠れて破壊活動を行っている状況でした。
欧州支部はフランスに南北から上陸。レジスタンスの暴動に合わせてパリへ一斉に攻撃を仕掛ける手筈となっています。最終目標は凱旋門にあるパリクラスタです」
パリ陥落は連合宙軍にとって衝撃的な事件であった。
欧州中央部主要都市に支配地域を失った人類はイギリス、及びイタリア南部へ逃れて徹底抗戦を継続していた。だが、太陽会戦の成功を受けて欧州支部は再起を図る作戦を下した。
『liberte』――自由と名付けられた作戦は、パリ奪還に主軸を置かれていた。
パリの奪還という欧州支部の悲願を達成する事で軍全体の士気を向上させて戦線を押し上げようというのだ。
歪虚側の欧州最大拠点はベルリンクラスタ。
かつての栄光を再び、という訳か。
「なるほど。パリ奪還に手を貸せという訳か」
「はい、これよりヴァルハラは進路を東へ取り、パリへ……緊急通信を受信。通信回線を開きます」
コメント中にエンドレスは、突然の緊急通信を受信。パイロットへ聞かせる為に、通信回線をブリッジのスピーカーへ接続した。
ブリッジに響くのは連続して響く銃声と、息を切らせる男性の声。
「失敗だ。作戦は敵に漏れていた! 現在、パリ市内で敵と交戦中。量産型ヴァルキリー部隊を投入しているが、パリ攻略の部隊は劣勢……うわっ!」
男性の悲鳴。
次の瞬間、通信は絶たれてブリッジに沈黙が支配する。
作戦の漏洩。それは欧州支部の立案したパリ奪還作戦の成功が困難だという事だ。
既に量産されたヴァルキリーを投入しているようだが、それでも劣勢を押し返すには至っていない。
もしかするとパリクラスタには何かあるのかもしれない。
だが、それでもパイロット達の目に諦めの色は見られない。
「今も戦っているレジスタンスがいるのだろう? なら、行くしかないな。
エンドレス、予定通りパリへ向かってくれ」
●
「これが、ヴァルキリーですか。戦士を誘う女神の名を冠するには残念過ぎます」
パリに駐留していたブラッドリーは、足下に転がる量産型ヴァルキリーを見下ろしていた。
レジスタンスと呼応してパリへ進軍を開始した連合宙軍であったが、既にブラッドリーら歪虚側に作戦が漏洩。レジスタンスへ潜ませていたスパイの情報は十分に役立ってくれた。
それでもパリへ敵を誘き寄せたのはヴァルキリーという期待に興味があったからだ。
「ホーチミンクラスタを破壊したと聞いていますが、この程度で陥落するはずがありません。おそらく、何か事情があるはずです。
……ああ、それは子羊が七つの封印の解き放ち、悔い改める事を放棄した哀れなる者達。既に白い馬が訪れている事も気付かず、天使達の存在を信じ続けているのでしょう」
ブラッドリーの手に震えが走る。
黙示騎士ウォーレンから聞かれていた人間は放つ最後の光。
それに触れられるかと期待していたブラッドリー。
光――それが戦いの果てに追い求める魂の光なのだろうか。
「行きますよ、ペイルライダー。真の導き手は別にいるはずです。戦士を誘う者を出迎えなければなりません」
深蒼の歪虚CAMペイルライダーは、旋回してパリクラスタへと消えていった。
リプレイ本文
『未だパリの灯は消えていない。人がいる限り、決して失われる事はない。
今こそ、パリの地に人類の未来を……』
クオン・サガラ(ka0018)――アルターAは、通信機から流れてくる政治家の演説を止めた。
自らの保身と士気向上を狙って統一地球連合宙軍とパリのレジスタンスにメッセージを送っているのだろうが、改修された『オリオン』でパリの空を飛行するアルターAにとっては虚しい空想に過ぎないからだ。
眼下ではレジスタンスと呼応してパリへ軍が進軍する予定であったが、作戦は歪虚側に漏洩。待ち伏せを受けた部隊が歪虚側の奇襲を受けて撤退を続けている。
事実上の失敗は間違いないが、戦場に立たない政治家にとって命は余程軽いと見える。「……進軍ルートに歪虚CAMを確認しました。上空から迎撃します」
オリオンは新制御システム『アトロポス』を搭載した独立兵装システム『トライスター』により安定した飛行が可能となった。
このままパリクラスタへ突入する事は難しいが、重装甲な上に反応速度が量産型ヴァルキリー並になっている事を考えれば上空からの牽制がメインとなるだろう。
「敵機、ロックオン……それ以上、やらせません」
正式に某軍事企業のテストパイロットから軍属となったアルターA。
眼前のモニターにはこちらに気付いて手持ちのライフルを向ける歪虚CAM。
しかし、電磁防御力発生装置内蔵バインダーシールドが弾丸からオリオンを守る。
上空から一直線に飛来するオリオン。
距離を縮めた後――電磁速射砲を叩き込む。
強烈な一撃が、歪虚CAMの機体を吹き飛ばす。
残骸が道端に転がり、大きな音を奏でている。
「このまま対空砲火を潰して橋頭堡を確保します」
敵の防衛網を破壊。さらにオリオンを人型へ変形させて、クラスタ突入の流れを作る。
オーストラリア、ベトナムと激戦を潜り抜けてきたアルターAなら不可能ではない。
だが、まだアルターAは気付いていない。
このパリには、今までの敵とひと味違う存在がいる事を――。
●
「『あれ』が事実としたら、俺は……」
岩井崎 旭(ka0234)――仮面のアッシュは、コンコルド広場へ進軍しながら先日の言葉が脳裏を巡っていた。
『パイロット自身は気付いていなくとも、パイロットを愛した人はいます。皆さんは、誰かを失っています』
DASに適正のあるパイロットについて、エンドレスが発言した情報だ。
もし、エンドレスの言った言葉が事実とすれば、今乗っているヴァルキリー『リーパー』も自分に関わる誰かが関わっているという事になる。
火星帰りの天慶をリペアした機体にヴァルキリーのパーツで更に修復を施している。
天慶のリミッター解除にリープテイルの応用で加速を高める。かなり危険が伴う改造ではあるが、アッシュはこの機体改造に敢えて着手した。
ここまで準備してきたのだ。今更、臆して引き返す事などアッシュにはできない。
「いや、それがなんだろーと、今は戦うしかねーよな。
分からん力に縋るしかない程、人間が弱くねぇってとこも見せてやる」
コンコルド広場の着地を目撃したのだろう、歪虚CAMの集団が現れる。
集団といっても現れたのは数体。おそらく統一地球連合宙軍に対する作戦に戦力割り振った事から、敵はパリ全域に戦力を分散させたのだろう。
この程度ならリーパーだけでも十分だ。
「いっくぜぇ!」
アッシュは、叫ぶ。
今のアッシュは一暴れしたい気分。余計な事を忘れ、存分に力を振るうだけだ。
肩に装備されたガトリング砲で迫る歪虚CAMを牽制。足を止めた瞬間、リープテイルで一気に間合いを詰める。
「……ぐっ!」
アッシュの体に掛かる加速。
装甲が薄くなった為にリーパーの計器からも悲鳴のようなアラームが鳴り響く。
「これでリミッター解除したら……やべぇな。けどっ!」
腕に装備された放熱型アームソードを解放、リープテイルの加速を乗せて振り抜いた。
歪虚CAMの体を捉え、斬撃が胴体に大きな傷を付ける。攻撃を受けた歪虚CAMの機体が後方へと吹き飛んだ。
突然の急発進で警戒を強める歪虚CAM。
新しい機体への不安と期待を抱えながら、アッシュは再びアームソードを構えた。
●
大切な人だった実姉は、事故で亡くなった。
いつも優しくて。
笑顔が綺麗で。
何度も思い出しても自慢の姉だった。
周りからも仲がいいと言われるぐらい、常に傍らに姉の存在があった。
きっと、姉はもう一人の自分であり、喪失感は半身を失う以上に衝撃が事件だった。
「姐さん。言ってたよね、『戦いなんて関わらないで』って」
桜崎 幸(ka7161)は、ヴァルキリー『ネージュ』でパリの地に降り立った。
統一地球連合宙軍の圧倒的な劣勢。その中で、軍は量産型ヴァルキリー部隊と共にオリジナルのヴァルキリー部隊の派遣した。
狙うは――パリクラスタ。
それは、絶望的な状況から状況を覆せという無茶なオーダーに他ならない。
「だけどね、姐さん。姐さんが死んだあの日から、僕の世界は死んだも同じだったんだ」
中型狂気の存在がモニターへ移し出されたと同時に、幸はリープテイルで急加速。
中型狂気が反応する前に近接ブレードを引き抜く。
「自分から死のうとしないのは、死ぬ事にも意味を感じなかったから」
鋏を振り上げる中型狂気の脇腹にブレードを斬り上げる。
大きく体を揺らす中型狂気。
幸は追撃の一撃を中型狂気の顔面へと突き刺した。
リープテイルの加速によるものであるが、それ以上に幸の鬼気迫る活躍は周囲のパイロットにも伝わっていく。
「……もしかしたら、良い機体なのかもしれないわね」
R7エクスシア『mercenario』出撃したマリィア・バルデス(ka5848)は、幸の活躍を目の当たりにしてそんな言葉を口にした。
ロングレンジライフル「ルギートゥスD5」で後方より仲間の援護射撃を行いながらパリクラスタへ向けて進軍を行っているが、各ヴァルキリーの動きにより進軍は順調に進んでいた。
「あれ? マリィアさんの機体、ヴァルキリーじゃないのですね」
幸はマリィアの機体がヴァルキリーではない事に気付いた。
マリィアもヴァルキリーが新型機体で性能も良い事は知っている。しかし、この年でロートル扱いをされたとしても、ヴァルキリーに乗りたいとは思わなかった。
「適性がなかったの。無くてせいせいするくらいよ」
「何故?」
「私は軍人だもの。験も担ぐし、虫の知らせも信じる運命論者よ。決まっているじゃない。その勘が言うのよ……乗らない方が良い、選ばれない方が良いってね?」
それはマリィアの本心であった。
理屈がある訳じゃない。ただ、あの高すぎる性能。特にリミッターが解除された状態は通常のCAMでは考えられない異常な代物だ。
だからこそ、マリィアの中でヴァルキリーに対する警報が鳴り響いている。
「そう。マリィアさんに適性はなかったんだね」
「……ところで、その機体。あまりに装甲が薄すぎない? 一発受けたら終わりじゃない」
マリィアが改めてネージュを見たところ、装甲が明らかに薄い。
リープテイルの加速を引き出す為に敢えて薄くしているつもりだろうが、その薄さで近接戦メインの装備では死にに行くようなものだ。
だが、幸はそんなマリィアの懸念に対して穏やかな笑顔を返す。
「これでいいんだ。ネージュに乗っていれば、姐さんの言葉を思い出せるから」
「お姉さん?」
「そう。姐さんを感じていられる。どれだけ危険だって、そんなのはどうでも良い。姐さんの近くにいられるなら」
「……?」
マリィアには、幸の言葉の意味が分からない。
だが、幸の様子が普通ではない事は分かる。
(あれもヴァルキリーの影響なの? だとしたら、あの機体は……)
ヴァルキリーの秘める性能に、マリィアは危機感を強める。
●
順調にパリクラスタに向けて北上するヴァルキリーのパイロット達。
しかし、通常では考えられない動きを見せる者もいる。
これもヴァルキリーの魔力なのだろうか。
「待って下さい。突出し過ぎています」
上空のオリオンからはアルターAは地上のパイロットへ呼び掛ける。
新型CAMヴァルキリー『ラーズグリーズ』に乗るユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、凱旋門に向けて一気に速度を上げる。
白兵戦による高機動強襲特化させた機体で、武装もリープテイル以外は斬艦刀のみ。これもすべて機動力を向上させる。その為、装甲は極めて薄く被弾すれば命の危険性に繋がる。
パリの街だった瓦礫の山。その傍らを白地に蒼のラインが入った彗星が駆け抜ける。
「まだ大丈夫。ラーズ、共に生きて帰る為に。仇為すモノを死へと誘う為に」
ホーチミンクラスタを巡る一戦で、ユーリはラーズグリーズに搭載されたDAS――正式名称『Deadry Alliance System』――を体感していた。
機体性能の段違いな向上に加え、驚異的な戦闘力。
反面、パイロットにかかる負荷は一気に増大する。
危険である事は理解しているが、ユーリはDASに『ラーズ』という名前で読んでいた。
「その装甲では危険過ぎます」
アルターAは旋回した後、ラーズグリーズの後方を追いかける。
ユーリはその機動力を生かして一気にパリクラスタへとラーズグリーズを走らせていた。一発の被弾が致命傷になりかねない、危険過ぎる機体に乗って。
動く棺桶と揶揄されても、ユーリはその足を止めるつもりはなかった。
「心配ありません。敵に遅れを取ったりはしません」
「それでも無茶過ぎる。せめて背中は守らせてもらう」
鞍馬 真(ka5819)のヴァルキリーがユーリに追いついた。
鞍馬のヴァリキリーも機動力を生かした近接戦闘に特化した機体であった。リープテイルでの加速で一気に飛び込んでからの斬撃を基本戦法として用いるのだが、ユーリ同様鞍馬のヴァルキリーも装甲に不安が残っていた。
「エスコート、と受け取ってよろしいのかしら?」
「敗北寸前の戦況をひっくり返せという命令自体が無茶なんだ。一人ぐらい、一緒に戦う者がいても罰は当たらないだろう」
鞍馬のヴァルキリーがリープテイルで一気に急加速。
勢いと同時にパリの道を駆け抜け、一撃の下に歪虚CAMを葬り去る。
リープテイル終了と同時に鞍馬の体を襲う強烈な負荷。
重苦しい圧力が体を押しつぶそうとしている。
それでも鞍馬はまったく止まる気配はない。
「やりますわね。でも、私とラーズなら……」
「お喋りをしている暇はありませんよ、迷える子羊達」
ユーリの言葉を遮るように、パリクラスタより姿を見せたのは一機の歪虚CAM。
深い蒼に染め上げられ、赤い瞳が怪しく輝いている。
その操縦者は――ブラッドリー(kz0252)。パリの歪虚を指揮する立場にある。
「エンドレス、クラスタ前に新手が現れました。軍のデータベースに情報はありますか?」
アルターAはエンドレスへ敵の情報調査を打診した。
仮に以前の戦いで目撃されているのであれば、敵の攻撃に関するヒントが得られるかもしれない。
『該当の敵はペイルライダーと呼ばれる歪虚CAMです。欧州戦線では単騎で多数のCAM部隊を壊滅に追い込んだ機体です』
「ペイルライダー……」
アルターAはエンドレスが告げた名前を繰り返した。
おそらく、あの機体がパリクラスタを防衛している最大戦力だ。
ペイルライダーさえ倒せば、パリクラスタ殲滅は目前だ。
「堂々と正面から現れるとは、とても自信がおありなのですね」
「出迎え? 私達と戦う事が目的だったのか?」
ユーリと鞍馬のヴァルキリーを前に、ブラッドリーは臆する事なく歩み出る。
威風堂々とした態度。ブラッドリーがただの歪虚ではない事を、二人は直感で感じ取っていた。
「先に倒した人形と同じではありませんよね? 封印を解いた羊ならば、その力を私に示して下さい」
●
仮面のアッシュは、既に肩で息をしていた。
パリクラスタ近くまで到着したものの、リーパーとアッシュの体に掛かる負担は想像以上であった。
「くそっ……両方は、やっぱり無茶だったか」
アッシュが火星で乗っていた天慶は、一時的にリミッターを解除して性能を引き出す機体であった。それに加えてパイロットの体に負荷のかかるリープテイルを利用し続ければ、その反動は自ずと大きなモノになる。
「このっ!」
ヒート大鎌で歪虚CAMの腕を叩きおとすと同時に、リープテイル。
高速移動で別の歪虚CAMへ移動。そのまま体当たりで歪虚CAMを転倒させる。
既に何機もの歪虚CAMや中型狂気を倒し、リジェネレーションで回復をしているものの精神的な疲労までは回復できない。
「もう少し、もう少しなんだよ!」
強引にリープテイルで突き進むリーパー。
しかし、前方の中型狂気二体が行く手を阻む。
このままではリーパーと激しく衝突する。
「!」
「邪魔はさせない」
フライトシステムで空中を移動していたmercenario。
パリクラスタ突入目前という事でマリィアが一気にパリクラスタに向けて動き出していた。
中型狂気のリーパーの間にmercenarioを滑り込ませ、光の翼で中型狂気の攻撃を阻んだ。
マリィアがこじ開けた隙を、アッシュは逃さない。
「どけって言ってるだろっ!」
肩のガトリングが回転。
撃ち出された弾丸が中型狂気の顔面を貫いた。
顔面を破壊された中型狂気は、潰れるようにその場で力を失い動かなくなった。
「ありがとうな」
「まだ終わってない。情報では敵の指揮官機がこの辺りに現れたそうだけど……」
「二人とも、クラスタへ突入してくれ。指揮官機はこちらで対応する」
二人が受信したのはアルターAからの通信。
既に他のパイロットが指揮官機と交戦している為、今のうちにパリクラスタへ先行して核を破壊するよう打診してきたのだ。
優先目標はパリクラスタ殲滅。
悔しくもあるが、今は全体作戦の成功を優先すべきだ。
「行くしかねぇよな、やっぱ」
アッシュとマリィアは危険を承知でパリクラスタに向けて突入を開始した。
●
ユーリは、既に追い詰められていた。
装甲の薄い機体であったからこそ、受けるダメージは大きい。だが、それ以上にペイルライダーの機体性能は段違いであった。
「私もあなたも、こんな所で終わるつもりはない。そうでしょ?
……だからラーズ、ここからは出し惜しみ無しで行くわよっ」
既に操縦系に異常を感じ取ったユーリは、ホーチミンクラスタで発動したDASのリミッター解除を試みる。雷を含んだ金色の粒子が機体全体を覆う。
「更に力を隠していましたか。封印を解いた羊である事は間違いないようです」
「ラーズ!」
リープテイルによる急加速。
斬艦刀を手に、ラーズグリーズはペイルライダーへ肉薄する。
振るわれる刃。
しかし、その刃はペイルライダーの電磁バリアにより阻まれる。
「報告にあった人間側の新技術。その血塗られた技術の上に成り立った力を持ってして、私に挑むつもりですか」
「……あなたは何を知っているの?」
「その反応。そうですか、あなたは何もご存じないのですね?」
「ブラッドリー!」
鞍馬のヴァルキリーが二機の横からリープテイルで一気に間合いを詰める。
連射式レールガンから逃れる為に、鞍馬は接近戦を挑む他無かった。
既に何度も反撃を受けて機体の何カ所かで故障の警報も出ている。
それでも、鞍馬は食らい付く。死ぬ為じゃない。仲間がパリクラスタを破壊するまでの時間をこの場で稼ぐ貯めに。
(……生きていても仕方ないけど、君が生きろと言ったから、私はまだ死ねないんだ)
「ほう」
ブラッドリーの眼前で鞍馬のヴァルキリーが金色に輝く。
――生きる。
生への執着が、DASを呼び起こす。
妹の『私の分まで生きて欲しい』。
その願いを、鞍馬は叶える。
「そちらの羊も封印を解きましたか」
ブラッドリーはユーリを突き放して二機から距離を置く。
その反応速度は、リミッター解除した二機にも決して劣らない。
だが、接触した感覚が決して倒せない相手では無いと告げている。
「血塗られた封印をこじ開けてでも戦いを続ける。人間はそこまで追い込まれていましたか。そこまで死をお望みですか?」
「別に死にたがりのつもりはないけど、そう見えるかなぁ?」
隙を突く形で桜崎のネージュがリープテイルで接近。
予定では遠距離攻撃を先に破壊するつもりであったが、ペイルライダーの動きが速い為に奇襲作戦へと切り替えていた。
近接ブレード二本をペイルライダーの肩に突き刺した。
食い込む刃。油断した事で電磁バリアの形成が遅れたのが原因だ。
「……くっ、もう一機いましたか。ですが!」
ペイルライダーはネージュを抱きかかえると至近距離から胸部より電磁砲を発射。
報告の無かった兵器がネージュの機体を貫いた。
力を失い、地面へと転がるネージュ。
それを跨ぐようにペイルライダーはユーリと鞍馬へと近づいてくる。
「お気付きでしょう? 封印を解かなければ、私に太刀打ちできない事を……」
(封印? ……何の事。
そんな事よりやっと気付いた。生きる事に理由なんて必要ない。だって、ここで呼吸して生きる事は誰も批判できないから。もっと早く気付いていれば良かったのかな……)
電磁砲は、確実にネージュの機体を破壊。
桜崎の体も無事では済まない。薄れゆく意識。
腕の痺れから怪我を負った事は間違いない。
もう持たない。それは桜崎自身も理解できた。
(あ。キルシュは……僕に何かあった時の為に、知り合いに頼んでおいて良かったなぁ。それから姐さんと良く行ったカフェ。ハニーカフェオレが好きで、良く頼んだっけ。
ああ、もうすぐ姐さんの所へ……)
走馬灯のように巡る思い出。
だが、その時桜崎の耳に届く声。
それは懐かしく――そして、とても身近にあった声。
『まだダメよ』
「……姐さん!」
次の瞬間、ネージュは起動する。
金色の粒子が溢れ、周囲へと広がっていく。
異変に最初に気付いたのはブラッドリーだった。
「まさか、封印……否、これは? そうですか……それ程大事ですか」
ブラッドリーは向き直ると再び電磁砲を構える。
しかし、それよりもネージュは素早く動く。
リープテイル? 否、それよりも圧倒的な素早さでペイルライダーに肉薄する。
「速い!?」
「姐さん、もう少しだけ待ってて」
屈み込んだネージュは近接ブレードから伸びた光の剣を下段から斬り上げた。
右腕を吹き飛ばされるペイルライダー。
その圧倒的な力にブラッドリーは危機感を抱いたようだ。
「そうですか……勝利の為に人はそこまで犠牲を強いるのですね」
「あなたは、何を知っているの?」
ユーリは再び同じ質問を繰り返した。
何故、どうやってかは分からない。
だが、ブラッドリーはDASに対して重大な何かを知っているようだ。
その問いに、ブラッドリーは答える。
「メキシコシティ」
「!?」
「その血塗られし機体の秘密を知りたければ、そこへ行きなさい。あなた方が開いた封印は、運命に導かれたとしても開けてはいけない封印だったと気付くでしょう」
そう告げるとペイルライダーは踵を返して明後日の方向へ撤退を開始した。
三機のヴァルキリーを前に勝利は無理だと判断したのだろう。
「撤退したか。追撃できる余力もない。これで良い」
鞍馬は戦場ではあったが、大きなため息をついた。
だが、気になるのはネージュだ。
DASには何か秘密がある。
リミッター解除とは何か。ネージュのあの力は何か。
唯一、それを体現した桜崎に聞けば分かるかもしれない。
しかし――。
「……亡くなってますわ」
ユーリの言葉。
桜崎は、既にネージュの機体内で死亡していた。
パリクラスタが破壊される10分ほど前の出来事であった。
●
パリクラスタが陥落した事で、欧州支部は大きく息を吹き返した。
ドイツのベルリンクラスタに向け、極東支部、中央アジア支部と連携。一気に欧州奪還を目指すようだ。
ペイルライダーの行方は今も不明。だが、ブラッドリーが残した言葉はヴァルキリーのパイロットに深く突き刺さった。
「やはり、ヴァルキリーは……」
マリィアは自身の直感が正しいと実感した。
ブラッドリーを信じる訳ではないが、あれは触れてはいけない禁忌だ。
そして、あのシステムの秘密は統一地球連合宙軍がひた隠しているものだ。量産に漕ぎ着けた事を考えても、おそらく公開される事はない。
その中でメキシコシティへ赴く事は統一地球連合宙軍を敵に回すかもしれない。
パイロット達に、運命の選択が突き付けられようとしていた。
今こそ、パリの地に人類の未来を……』
クオン・サガラ(ka0018)――アルターAは、通信機から流れてくる政治家の演説を止めた。
自らの保身と士気向上を狙って統一地球連合宙軍とパリのレジスタンスにメッセージを送っているのだろうが、改修された『オリオン』でパリの空を飛行するアルターAにとっては虚しい空想に過ぎないからだ。
眼下ではレジスタンスと呼応してパリへ軍が進軍する予定であったが、作戦は歪虚側に漏洩。待ち伏せを受けた部隊が歪虚側の奇襲を受けて撤退を続けている。
事実上の失敗は間違いないが、戦場に立たない政治家にとって命は余程軽いと見える。「……進軍ルートに歪虚CAMを確認しました。上空から迎撃します」
オリオンは新制御システム『アトロポス』を搭載した独立兵装システム『トライスター』により安定した飛行が可能となった。
このままパリクラスタへ突入する事は難しいが、重装甲な上に反応速度が量産型ヴァルキリー並になっている事を考えれば上空からの牽制がメインとなるだろう。
「敵機、ロックオン……それ以上、やらせません」
正式に某軍事企業のテストパイロットから軍属となったアルターA。
眼前のモニターにはこちらに気付いて手持ちのライフルを向ける歪虚CAM。
しかし、電磁防御力発生装置内蔵バインダーシールドが弾丸からオリオンを守る。
上空から一直線に飛来するオリオン。
距離を縮めた後――電磁速射砲を叩き込む。
強烈な一撃が、歪虚CAMの機体を吹き飛ばす。
残骸が道端に転がり、大きな音を奏でている。
「このまま対空砲火を潰して橋頭堡を確保します」
敵の防衛網を破壊。さらにオリオンを人型へ変形させて、クラスタ突入の流れを作る。
オーストラリア、ベトナムと激戦を潜り抜けてきたアルターAなら不可能ではない。
だが、まだアルターAは気付いていない。
このパリには、今までの敵とひと味違う存在がいる事を――。
●
「『あれ』が事実としたら、俺は……」
岩井崎 旭(ka0234)――仮面のアッシュは、コンコルド広場へ進軍しながら先日の言葉が脳裏を巡っていた。
『パイロット自身は気付いていなくとも、パイロットを愛した人はいます。皆さんは、誰かを失っています』
DASに適正のあるパイロットについて、エンドレスが発言した情報だ。
もし、エンドレスの言った言葉が事実とすれば、今乗っているヴァルキリー『リーパー』も自分に関わる誰かが関わっているという事になる。
火星帰りの天慶をリペアした機体にヴァルキリーのパーツで更に修復を施している。
天慶のリミッター解除にリープテイルの応用で加速を高める。かなり危険が伴う改造ではあるが、アッシュはこの機体改造に敢えて着手した。
ここまで準備してきたのだ。今更、臆して引き返す事などアッシュにはできない。
「いや、それがなんだろーと、今は戦うしかねーよな。
分からん力に縋るしかない程、人間が弱くねぇってとこも見せてやる」
コンコルド広場の着地を目撃したのだろう、歪虚CAMの集団が現れる。
集団といっても現れたのは数体。おそらく統一地球連合宙軍に対する作戦に戦力割り振った事から、敵はパリ全域に戦力を分散させたのだろう。
この程度ならリーパーだけでも十分だ。
「いっくぜぇ!」
アッシュは、叫ぶ。
今のアッシュは一暴れしたい気分。余計な事を忘れ、存分に力を振るうだけだ。
肩に装備されたガトリング砲で迫る歪虚CAMを牽制。足を止めた瞬間、リープテイルで一気に間合いを詰める。
「……ぐっ!」
アッシュの体に掛かる加速。
装甲が薄くなった為にリーパーの計器からも悲鳴のようなアラームが鳴り響く。
「これでリミッター解除したら……やべぇな。けどっ!」
腕に装備された放熱型アームソードを解放、リープテイルの加速を乗せて振り抜いた。
歪虚CAMの体を捉え、斬撃が胴体に大きな傷を付ける。攻撃を受けた歪虚CAMの機体が後方へと吹き飛んだ。
突然の急発進で警戒を強める歪虚CAM。
新しい機体への不安と期待を抱えながら、アッシュは再びアームソードを構えた。
●
大切な人だった実姉は、事故で亡くなった。
いつも優しくて。
笑顔が綺麗で。
何度も思い出しても自慢の姉だった。
周りからも仲がいいと言われるぐらい、常に傍らに姉の存在があった。
きっと、姉はもう一人の自分であり、喪失感は半身を失う以上に衝撃が事件だった。
「姐さん。言ってたよね、『戦いなんて関わらないで』って」
桜崎 幸(ka7161)は、ヴァルキリー『ネージュ』でパリの地に降り立った。
統一地球連合宙軍の圧倒的な劣勢。その中で、軍は量産型ヴァルキリー部隊と共にオリジナルのヴァルキリー部隊の派遣した。
狙うは――パリクラスタ。
それは、絶望的な状況から状況を覆せという無茶なオーダーに他ならない。
「だけどね、姐さん。姐さんが死んだあの日から、僕の世界は死んだも同じだったんだ」
中型狂気の存在がモニターへ移し出されたと同時に、幸はリープテイルで急加速。
中型狂気が反応する前に近接ブレードを引き抜く。
「自分から死のうとしないのは、死ぬ事にも意味を感じなかったから」
鋏を振り上げる中型狂気の脇腹にブレードを斬り上げる。
大きく体を揺らす中型狂気。
幸は追撃の一撃を中型狂気の顔面へと突き刺した。
リープテイルの加速によるものであるが、それ以上に幸の鬼気迫る活躍は周囲のパイロットにも伝わっていく。
「……もしかしたら、良い機体なのかもしれないわね」
R7エクスシア『mercenario』出撃したマリィア・バルデス(ka5848)は、幸の活躍を目の当たりにしてそんな言葉を口にした。
ロングレンジライフル「ルギートゥスD5」で後方より仲間の援護射撃を行いながらパリクラスタへ向けて進軍を行っているが、各ヴァルキリーの動きにより進軍は順調に進んでいた。
「あれ? マリィアさんの機体、ヴァルキリーじゃないのですね」
幸はマリィアの機体がヴァルキリーではない事に気付いた。
マリィアもヴァルキリーが新型機体で性能も良い事は知っている。しかし、この年でロートル扱いをされたとしても、ヴァルキリーに乗りたいとは思わなかった。
「適性がなかったの。無くてせいせいするくらいよ」
「何故?」
「私は軍人だもの。験も担ぐし、虫の知らせも信じる運命論者よ。決まっているじゃない。その勘が言うのよ……乗らない方が良い、選ばれない方が良いってね?」
それはマリィアの本心であった。
理屈がある訳じゃない。ただ、あの高すぎる性能。特にリミッターが解除された状態は通常のCAMでは考えられない異常な代物だ。
だからこそ、マリィアの中でヴァルキリーに対する警報が鳴り響いている。
「そう。マリィアさんに適性はなかったんだね」
「……ところで、その機体。あまりに装甲が薄すぎない? 一発受けたら終わりじゃない」
マリィアが改めてネージュを見たところ、装甲が明らかに薄い。
リープテイルの加速を引き出す為に敢えて薄くしているつもりだろうが、その薄さで近接戦メインの装備では死にに行くようなものだ。
だが、幸はそんなマリィアの懸念に対して穏やかな笑顔を返す。
「これでいいんだ。ネージュに乗っていれば、姐さんの言葉を思い出せるから」
「お姉さん?」
「そう。姐さんを感じていられる。どれだけ危険だって、そんなのはどうでも良い。姐さんの近くにいられるなら」
「……?」
マリィアには、幸の言葉の意味が分からない。
だが、幸の様子が普通ではない事は分かる。
(あれもヴァルキリーの影響なの? だとしたら、あの機体は……)
ヴァルキリーの秘める性能に、マリィアは危機感を強める。
●
順調にパリクラスタに向けて北上するヴァルキリーのパイロット達。
しかし、通常では考えられない動きを見せる者もいる。
これもヴァルキリーの魔力なのだろうか。
「待って下さい。突出し過ぎています」
上空のオリオンからはアルターAは地上のパイロットへ呼び掛ける。
新型CAMヴァルキリー『ラーズグリーズ』に乗るユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、凱旋門に向けて一気に速度を上げる。
白兵戦による高機動強襲特化させた機体で、武装もリープテイル以外は斬艦刀のみ。これもすべて機動力を向上させる。その為、装甲は極めて薄く被弾すれば命の危険性に繋がる。
パリの街だった瓦礫の山。その傍らを白地に蒼のラインが入った彗星が駆け抜ける。
「まだ大丈夫。ラーズ、共に生きて帰る為に。仇為すモノを死へと誘う為に」
ホーチミンクラスタを巡る一戦で、ユーリはラーズグリーズに搭載されたDAS――正式名称『Deadry Alliance System』――を体感していた。
機体性能の段違いな向上に加え、驚異的な戦闘力。
反面、パイロットにかかる負荷は一気に増大する。
危険である事は理解しているが、ユーリはDASに『ラーズ』という名前で読んでいた。
「その装甲では危険過ぎます」
アルターAは旋回した後、ラーズグリーズの後方を追いかける。
ユーリはその機動力を生かして一気にパリクラスタへとラーズグリーズを走らせていた。一発の被弾が致命傷になりかねない、危険過ぎる機体に乗って。
動く棺桶と揶揄されても、ユーリはその足を止めるつもりはなかった。
「心配ありません。敵に遅れを取ったりはしません」
「それでも無茶過ぎる。せめて背中は守らせてもらう」
鞍馬 真(ka5819)のヴァルキリーがユーリに追いついた。
鞍馬のヴァリキリーも機動力を生かした近接戦闘に特化した機体であった。リープテイルでの加速で一気に飛び込んでからの斬撃を基本戦法として用いるのだが、ユーリ同様鞍馬のヴァルキリーも装甲に不安が残っていた。
「エスコート、と受け取ってよろしいのかしら?」
「敗北寸前の戦況をひっくり返せという命令自体が無茶なんだ。一人ぐらい、一緒に戦う者がいても罰は当たらないだろう」
鞍馬のヴァルキリーがリープテイルで一気に急加速。
勢いと同時にパリの道を駆け抜け、一撃の下に歪虚CAMを葬り去る。
リープテイル終了と同時に鞍馬の体を襲う強烈な負荷。
重苦しい圧力が体を押しつぶそうとしている。
それでも鞍馬はまったく止まる気配はない。
「やりますわね。でも、私とラーズなら……」
「お喋りをしている暇はありませんよ、迷える子羊達」
ユーリの言葉を遮るように、パリクラスタより姿を見せたのは一機の歪虚CAM。
深い蒼に染め上げられ、赤い瞳が怪しく輝いている。
その操縦者は――ブラッドリー(kz0252)。パリの歪虚を指揮する立場にある。
「エンドレス、クラスタ前に新手が現れました。軍のデータベースに情報はありますか?」
アルターAはエンドレスへ敵の情報調査を打診した。
仮に以前の戦いで目撃されているのであれば、敵の攻撃に関するヒントが得られるかもしれない。
『該当の敵はペイルライダーと呼ばれる歪虚CAMです。欧州戦線では単騎で多数のCAM部隊を壊滅に追い込んだ機体です』
「ペイルライダー……」
アルターAはエンドレスが告げた名前を繰り返した。
おそらく、あの機体がパリクラスタを防衛している最大戦力だ。
ペイルライダーさえ倒せば、パリクラスタ殲滅は目前だ。
「堂々と正面から現れるとは、とても自信がおありなのですね」
「出迎え? 私達と戦う事が目的だったのか?」
ユーリと鞍馬のヴァルキリーを前に、ブラッドリーは臆する事なく歩み出る。
威風堂々とした態度。ブラッドリーがただの歪虚ではない事を、二人は直感で感じ取っていた。
「先に倒した人形と同じではありませんよね? 封印を解いた羊ならば、その力を私に示して下さい」
●
仮面のアッシュは、既に肩で息をしていた。
パリクラスタ近くまで到着したものの、リーパーとアッシュの体に掛かる負担は想像以上であった。
「くそっ……両方は、やっぱり無茶だったか」
アッシュが火星で乗っていた天慶は、一時的にリミッターを解除して性能を引き出す機体であった。それに加えてパイロットの体に負荷のかかるリープテイルを利用し続ければ、その反動は自ずと大きなモノになる。
「このっ!」
ヒート大鎌で歪虚CAMの腕を叩きおとすと同時に、リープテイル。
高速移動で別の歪虚CAMへ移動。そのまま体当たりで歪虚CAMを転倒させる。
既に何機もの歪虚CAMや中型狂気を倒し、リジェネレーションで回復をしているものの精神的な疲労までは回復できない。
「もう少し、もう少しなんだよ!」
強引にリープテイルで突き進むリーパー。
しかし、前方の中型狂気二体が行く手を阻む。
このままではリーパーと激しく衝突する。
「!」
「邪魔はさせない」
フライトシステムで空中を移動していたmercenario。
パリクラスタ突入目前という事でマリィアが一気にパリクラスタに向けて動き出していた。
中型狂気のリーパーの間にmercenarioを滑り込ませ、光の翼で中型狂気の攻撃を阻んだ。
マリィアがこじ開けた隙を、アッシュは逃さない。
「どけって言ってるだろっ!」
肩のガトリングが回転。
撃ち出された弾丸が中型狂気の顔面を貫いた。
顔面を破壊された中型狂気は、潰れるようにその場で力を失い動かなくなった。
「ありがとうな」
「まだ終わってない。情報では敵の指揮官機がこの辺りに現れたそうだけど……」
「二人とも、クラスタへ突入してくれ。指揮官機はこちらで対応する」
二人が受信したのはアルターAからの通信。
既に他のパイロットが指揮官機と交戦している為、今のうちにパリクラスタへ先行して核を破壊するよう打診してきたのだ。
優先目標はパリクラスタ殲滅。
悔しくもあるが、今は全体作戦の成功を優先すべきだ。
「行くしかねぇよな、やっぱ」
アッシュとマリィアは危険を承知でパリクラスタに向けて突入を開始した。
●
ユーリは、既に追い詰められていた。
装甲の薄い機体であったからこそ、受けるダメージは大きい。だが、それ以上にペイルライダーの機体性能は段違いであった。
「私もあなたも、こんな所で終わるつもりはない。そうでしょ?
……だからラーズ、ここからは出し惜しみ無しで行くわよっ」
既に操縦系に異常を感じ取ったユーリは、ホーチミンクラスタで発動したDASのリミッター解除を試みる。雷を含んだ金色の粒子が機体全体を覆う。
「更に力を隠していましたか。封印を解いた羊である事は間違いないようです」
「ラーズ!」
リープテイルによる急加速。
斬艦刀を手に、ラーズグリーズはペイルライダーへ肉薄する。
振るわれる刃。
しかし、その刃はペイルライダーの電磁バリアにより阻まれる。
「報告にあった人間側の新技術。その血塗られた技術の上に成り立った力を持ってして、私に挑むつもりですか」
「……あなたは何を知っているの?」
「その反応。そうですか、あなたは何もご存じないのですね?」
「ブラッドリー!」
鞍馬のヴァルキリーが二機の横からリープテイルで一気に間合いを詰める。
連射式レールガンから逃れる為に、鞍馬は接近戦を挑む他無かった。
既に何度も反撃を受けて機体の何カ所かで故障の警報も出ている。
それでも、鞍馬は食らい付く。死ぬ為じゃない。仲間がパリクラスタを破壊するまでの時間をこの場で稼ぐ貯めに。
(……生きていても仕方ないけど、君が生きろと言ったから、私はまだ死ねないんだ)
「ほう」
ブラッドリーの眼前で鞍馬のヴァルキリーが金色に輝く。
――生きる。
生への執着が、DASを呼び起こす。
妹の『私の分まで生きて欲しい』。
その願いを、鞍馬は叶える。
「そちらの羊も封印を解きましたか」
ブラッドリーはユーリを突き放して二機から距離を置く。
その反応速度は、リミッター解除した二機にも決して劣らない。
だが、接触した感覚が決して倒せない相手では無いと告げている。
「血塗られた封印をこじ開けてでも戦いを続ける。人間はそこまで追い込まれていましたか。そこまで死をお望みですか?」
「別に死にたがりのつもりはないけど、そう見えるかなぁ?」
隙を突く形で桜崎のネージュがリープテイルで接近。
予定では遠距離攻撃を先に破壊するつもりであったが、ペイルライダーの動きが速い為に奇襲作戦へと切り替えていた。
近接ブレード二本をペイルライダーの肩に突き刺した。
食い込む刃。油断した事で電磁バリアの形成が遅れたのが原因だ。
「……くっ、もう一機いましたか。ですが!」
ペイルライダーはネージュを抱きかかえると至近距離から胸部より電磁砲を発射。
報告の無かった兵器がネージュの機体を貫いた。
力を失い、地面へと転がるネージュ。
それを跨ぐようにペイルライダーはユーリと鞍馬へと近づいてくる。
「お気付きでしょう? 封印を解かなければ、私に太刀打ちできない事を……」
(封印? ……何の事。
そんな事よりやっと気付いた。生きる事に理由なんて必要ない。だって、ここで呼吸して生きる事は誰も批判できないから。もっと早く気付いていれば良かったのかな……)
電磁砲は、確実にネージュの機体を破壊。
桜崎の体も無事では済まない。薄れゆく意識。
腕の痺れから怪我を負った事は間違いない。
もう持たない。それは桜崎自身も理解できた。
(あ。キルシュは……僕に何かあった時の為に、知り合いに頼んでおいて良かったなぁ。それから姐さんと良く行ったカフェ。ハニーカフェオレが好きで、良く頼んだっけ。
ああ、もうすぐ姐さんの所へ……)
走馬灯のように巡る思い出。
だが、その時桜崎の耳に届く声。
それは懐かしく――そして、とても身近にあった声。
『まだダメよ』
「……姐さん!」
次の瞬間、ネージュは起動する。
金色の粒子が溢れ、周囲へと広がっていく。
異変に最初に気付いたのはブラッドリーだった。
「まさか、封印……否、これは? そうですか……それ程大事ですか」
ブラッドリーは向き直ると再び電磁砲を構える。
しかし、それよりもネージュは素早く動く。
リープテイル? 否、それよりも圧倒的な素早さでペイルライダーに肉薄する。
「速い!?」
「姐さん、もう少しだけ待ってて」
屈み込んだネージュは近接ブレードから伸びた光の剣を下段から斬り上げた。
右腕を吹き飛ばされるペイルライダー。
その圧倒的な力にブラッドリーは危機感を抱いたようだ。
「そうですか……勝利の為に人はそこまで犠牲を強いるのですね」
「あなたは、何を知っているの?」
ユーリは再び同じ質問を繰り返した。
何故、どうやってかは分からない。
だが、ブラッドリーはDASに対して重大な何かを知っているようだ。
その問いに、ブラッドリーは答える。
「メキシコシティ」
「!?」
「その血塗られし機体の秘密を知りたければ、そこへ行きなさい。あなた方が開いた封印は、運命に導かれたとしても開けてはいけない封印だったと気付くでしょう」
そう告げるとペイルライダーは踵を返して明後日の方向へ撤退を開始した。
三機のヴァルキリーを前に勝利は無理だと判断したのだろう。
「撤退したか。追撃できる余力もない。これで良い」
鞍馬は戦場ではあったが、大きなため息をついた。
だが、気になるのはネージュだ。
DASには何か秘密がある。
リミッター解除とは何か。ネージュのあの力は何か。
唯一、それを体現した桜崎に聞けば分かるかもしれない。
しかし――。
「……亡くなってますわ」
ユーリの言葉。
桜崎は、既にネージュの機体内で死亡していた。
パリクラスタが破壊される10分ほど前の出来事であった。
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パリクラスタが陥落した事で、欧州支部は大きく息を吹き返した。
ドイツのベルリンクラスタに向け、極東支部、中央アジア支部と連携。一気に欧州奪還を目指すようだ。
ペイルライダーの行方は今も不明。だが、ブラッドリーが残した言葉はヴァルキリーのパイロットに深く突き刺さった。
「やはり、ヴァルキリーは……」
マリィアは自身の直感が正しいと実感した。
ブラッドリーを信じる訳ではないが、あれは触れてはいけない禁忌だ。
そして、あのシステムの秘密は統一地球連合宙軍がひた隠しているものだ。量産に漕ぎ着けた事を考えても、おそらく公開される事はない。
その中でメキシコシティへ赴く事は統一地球連合宙軍を敵に回すかもしれない。
パイロット達に、運命の選択が突き付けられようとしていた。
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