ゲスト
(ka0000)
【MN】その日見た夢
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/12 22:00
- 完成日
- 2018/08/25 11:51
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
――その日は、とても疲れていた。
依頼を片づけるのに手こずったり。
道を歩いていたら喧嘩に巻き込まれたり。
とにかくもう、すごくすごく疲れていて……。
「……皆さん、物凄く疲れた顔していらっしゃいますけど大丈夫ですか?」
いつもと変わらぬ賑やかなハンターズソサエティ。ハンターオフィス職員、イソラはその一角でぐったりとしている一団を見つけて声をかける。
「あー。イソラちゃん……。ちょっと色々あってね……」
「野良犬に追いかけられて転んだです……!」
「私、水路で輸送の仕事手伝ってたら荷物と一緒に水に落ちたわ……」
「俺は……いや、いい。やっぱいい。思い出して嫌になってきたからいい」
イソラの問いに、それぞれボヤくハンター達。それに、彼女も納得したように頷く。
「……本当、皆さん色々あったですね。お疲れ様ですよ。……そーだ。お疲れみたいですし、いっそ、今日これから休暇にしちゃったらどうです?」
「ん? でも、依頼もあるしな……」
「お休みして、体調を整えるのもお仕事のうちですよー? 疲れ過ぎたら力も出ないのです。たまに1日くらい休んだってバチ当たりませんよー。ね?」
「そうね。たまにはいいかもね……」
イソラの労いにうんうんと頷くハンター達。
彼女の言葉が有難いと思うくらいには、疲れているようで――。
「あ。そうだ。私、リラックスして良く眠れるっていうハーブティーをいただいたです。皆さんにご馳走しますね! ちょっと待っててください!」
「あ。本当? いいの?」
「イソラちゃん悪いわねー」
「いえいえ! 普段皆さん頑張ってくださってますし! ちょっとした恩返しです!」
そんなことがあって、家に戻ってきたハンター達。
装備を外して、そのままベッドに倒れこんでため息をつく。
……何か、イソラからお茶をご馳走になってからやたらと眠い。
リラックスして良く眠れる効果だったっけ? いやーよく効くなー。
あー。着替えるのも面倒くさい。
自分が思っているより疲れていたらしい……目を閉じたら、もう瞼が上がらなくて――。
「ん? あれ?」
もう朝……?
それにしては何か変だぞ……??
眩しさに目を開け、周囲を見渡したハンター。
そこには、信じられないような光景が広がっていた。
――これは夢、だろうか。
それにしてはなんだかリアルな気がするけれど……。
ハンター達の、不思議な夢が始まる。
依頼を片づけるのに手こずったり。
道を歩いていたら喧嘩に巻き込まれたり。
とにかくもう、すごくすごく疲れていて……。
「……皆さん、物凄く疲れた顔していらっしゃいますけど大丈夫ですか?」
いつもと変わらぬ賑やかなハンターズソサエティ。ハンターオフィス職員、イソラはその一角でぐったりとしている一団を見つけて声をかける。
「あー。イソラちゃん……。ちょっと色々あってね……」
「野良犬に追いかけられて転んだです……!」
「私、水路で輸送の仕事手伝ってたら荷物と一緒に水に落ちたわ……」
「俺は……いや、いい。やっぱいい。思い出して嫌になってきたからいい」
イソラの問いに、それぞれボヤくハンター達。それに、彼女も納得したように頷く。
「……本当、皆さん色々あったですね。お疲れ様ですよ。……そーだ。お疲れみたいですし、いっそ、今日これから休暇にしちゃったらどうです?」
「ん? でも、依頼もあるしな……」
「お休みして、体調を整えるのもお仕事のうちですよー? 疲れ過ぎたら力も出ないのです。たまに1日くらい休んだってバチ当たりませんよー。ね?」
「そうね。たまにはいいかもね……」
イソラの労いにうんうんと頷くハンター達。
彼女の言葉が有難いと思うくらいには、疲れているようで――。
「あ。そうだ。私、リラックスして良く眠れるっていうハーブティーをいただいたです。皆さんにご馳走しますね! ちょっと待っててください!」
「あ。本当? いいの?」
「イソラちゃん悪いわねー」
「いえいえ! 普段皆さん頑張ってくださってますし! ちょっとした恩返しです!」
そんなことがあって、家に戻ってきたハンター達。
装備を外して、そのままベッドに倒れこんでため息をつく。
……何か、イソラからお茶をご馳走になってからやたらと眠い。
リラックスして良く眠れる効果だったっけ? いやーよく効くなー。
あー。着替えるのも面倒くさい。
自分が思っているより疲れていたらしい……目を閉じたら、もう瞼が上がらなくて――。
「ん? あれ?」
もう朝……?
それにしては何か変だぞ……??
眩しさに目を開け、周囲を見渡したハンター。
そこには、信じられないような光景が広がっていた。
――これは夢、だろうか。
それにしてはなんだかリアルな気がするけれど……。
ハンター達の、不思議な夢が始まる。
リプレイ本文
――そこは、豪華な茶室だった。
赤と黒で纏められた調度品。そこかしこに蝶のモチーフがあって、主の趣味の良さを伺わせる。
そんな中、無言で睨み合っている執事姿のバタルトゥ・オイマト(kz0023)と人間サイズのハイルタイを交互に見てオロオロとするエステル・ソル(ka3983)。
深紅のドレス姿で椅子に身体を預けていた蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、扇を口元に当ててため息を漏らす。
「なんじゃ。バタルトゥも然様に仏頂面をして居るでないよ」
「……俺も客くらい選ぶ」
「この館の主は妾ぞ? 客人は妾が決める事……まあ、此度の客人は随分愛想がないようじゃがの」
「儂とその若造に愛想を求めるのが間違いというものだ」
「それもそうさな。だが……此処は儚き泡沫の夢の館。幻蝶の茶室じゃ。此の場では会話を楽しんで貰うぞえ?」
「……拒否権はないのだろう?」
「お前のような女狐が一番性質が悪い」
男性陣の目線を受け止めて、蜜鈴は殊更深く微笑む。
「うむ。よう分かっておるではないか。誉め言葉として受け取っておこう。さあ執事よ、茶を淹れておくれ。淑女をあまり待たせるでない。……エステルや。来て早々騒がしくしてすまなんだのう。こちらへおいで」
「いえ! お招き戴いてありがとうです」
青いふんわりとしたドレスで淑女のお辞儀をし、案内された席に着くエステル。
うう。今日の蜜鈴さんもとってもシックで素敵です。バタルトゥさんも珍しい恰好してるけどカッコいい……!
彼女がそんな事を考えている間に運ばれて来る紅茶。エステルはふと、隣に座る大男に声をかける。
「あの。わたくしハイルタイさんに聞きたい事があったです。……ベスタハで何があったですか? どうして歪虚になったです? どうしてオイマト族を裏切ったです?」
「そんな事を今更知ってどうする。歴史は変えられぬ。誰も救われぬ」
「でも、わたくしは……むぐぐ?」
「エステル、然様に質問攻めにしては答える隙が無かろう? ハイルタイも……歳を食うた者の悪い癖じゃ。己より若い者に知らぬで良いと言うは傲慢じゃぞ」
くつくつと笑いながらエステルの口にクッキーを運ぶ蜜鈴。ハイルタイは面倒臭そうにため息をつく。
「ベスタハで何が起きたかは明白じゃ。……儂が歪虚に情報を渡した。辺境部族から成り立つ連合軍の情報と、己の持ちうる知識全てな」
「……その結果、沢山の辺境の戦士が死んだ。父も母もあいつも……」
バタルトゥの絞り出すような声にハッとするエステル。
……あいつというのは誰だか分からないけれど。
バタルトゥはベスタハで、大切な人たちを沢山失ったのだ――。
彼女がそんな事を考えている間も、ハイルタイの声が続く。
「戦争とはそういうものだ。……一度起きれば人が死ぬ。その被害を少なくしようとした儂の策を一蹴したのは他でもないお前の父だろうに」
「……族長はお前の作戦を理解はしていた。だが、採用は出来なかった……。お前の戦略はお前がいなければ成り立たぬ。最初はそれでもいいだろう。だが……万が一という事もある。自分がいなくても皆がやっていける方法を示すのが……」
「黙れ。どこまでも父親に似おってからに。忌々しい」
「ふむ? 前族長はおんしの父親だったのかえ?」
バタルトゥの言葉を遮るハイルタイ。蜜鈴の問いに、バタルトゥは頷く。
「そうかえ。根が深い話よの……。さあ、続けておくれ。妾もこのレディもおんしらの話に興味があるゆえな」
にっこりと笑う蜜鈴にこくこくと頷くエステル。
――夢のお茶会は、長くなりそうで。バタルトゥとハイルタイはため息をついた。
「……先輩。これ教えて貰ってもいいですか?」
「ん? ああ、これは……こうだな」
「成程。そういう事だったんですね」
「うん。また分からなかったら聞いて」
「ありがとうございます」
書類と共にやりとりされる付箋。そこに書かれる週末の予定。
化粧室から、ひそひそと女子社員の話声がする。
「……ねえ、クィーロさんと神代さん、まだ会社に残ってるみたいよー!」
「えっ。本当? 食事誘ってみる?」
「忙しそうだしどうかなー」
「っていうか2人共絶対彼女いるよねー!」
――ここはリアルブルーの某会社。
当の本人達は噂されている事など露程も知らず。
クィーロ・ヴェリル(ka4122)と神代 誠一(ka2086)は、今日もせっせと馬車馬のように働いていた。
「……誠一。弁当箱洗っておいたぞ。てか人に弁当作らせてんだから弁当箱くらい洗えよ」
「うわ。ごめん。後でやろうと思ってたんだ。つーか今日の弁当マジおいしかった! クィーロちゃん、明日もお願いできないかなー?」
「キモイ。甘えんな」
「お前先輩に対して酷くない!?」
「先輩らしい事してから言え」
給湯室から戻って来るなりばっさりと切り捨てるクィーロ。
誠一は、大学からの先輩だ。
眼鏡の似合う爽やかなイケメンだし、仕事も出来る男なのに悲しいかな、生活力が皆無で――。
食事は適当だわ、放っておくとごみ溜めの中で生活するので何だかんだ世話を焼いている。
この『放っておけない』というのも誠一の人徳なのかもしれないけれど。
クィーロは仕事面から生活面に至るまで非の打ち所がないパーフェクトヒューマンなので、誠一の世話くらい何て事ないし。
何よりこの先輩。超騙しやすい。正直ちょろい。
色々とね! 利用価値があるんですよ! そう! 特に今日みたいな日はね!
「誠一。まだ仕事終わってないのか? これじゃ今日も終電逃すぞ?」
「いやいや待って!? 誰のせいで俺の仕事増えたと思ってんだよ!!」
「え。だって早く帰りたいし」
「俺だって早く帰りたいっつーの!! 大体コレだってお前なら余裕だろ! 早く手伝えって!」
ギャーギャーと言い合う2人。そこに女子社員達がやって来るのが見えて……2人はすごい変り身でシュッと真顔を作る。
「クィーロさん、神代さん。そろそろ上がられます?」
「良かったら一緒に食事どうですか?」
「……すみません、僕、今日は用事があるので」
「あ、そうなんです? 残念……」
「神代さんは?」
「俺もちょっと仕事が溜まってるんで、ごめんね。……クィーロ君。ちょっといいかな」
女子社員達の誘いを笑顔で躱したクィーロと誠一。
肩を掴んでいる誠一が『一人だけ、帰れると、思うなよ』と目で訴えていたが……クィーロはサクッと無視する事に決めた。
「じゃあ、僕これで失礼します。先輩、後宜しくお願いします」
慌てる誠一。彼にだけに分かるように悪戯っぽい目線を向けて――クィーロは颯爽と会社を後にした。
クィーロがオーダーメイドした包丁を受け取り、買い物を済ませた後も、会社は煌々と明かりがついていた。
「……誠一マジで残ってたんだ。流石の俺も引くわー」
「目途つけて帰りたいし。でも俺、クィーロが戻ってきてくれるって信じてたから!!」
「……帰ろうかな」
「待って! 待ってお願い!! 俺を捨てないで!」
「もー。しょーがないなー。とりあえず夕飯持ってきたから食えよ。その間に仕事進めておいてやるから」
「うわあ! 神がいる!! ありがと!」
涙を流さんばかりに有り難がる誠一に苦笑を返すクィーロ。
やっぱり放っておけないんだよなぁ……。
そんな事を考えつつ、彼はすごい速さで仕事を片づけ始めた。
朝、目を開けた瞬間からカイン・シュミート(ka6967)は、異変を感じていた。
何だろう。見慣れた家のはずなのに天井が遠い気がする。
ちょうどよかったパジャマがだぼだぼで歩きにくい。
というか、何で胸がこんなに重いんだ……?
――うーん。良く分からないがとりあえず顔洗うか……。
のろのろとベッドから起き上がり、洗面台に移動するカイン。
鏡を見ると小柄でやたらと目つきの鋭い女が映っている。
――あ? これ誰だ。どっかで見た事あるような……ん? 待てよ? もしかしてこれ俺か……?
ハァ!? 何で!!?
うわああ! 夢か? 夢だよな? 夢であって欲しい。夢でいてください……!
というか何だ。これ死んだあいつより背丈も胸もありそうだな……?
慌てつつも妙に冷静に自分の身体の分析を始めるカイン。
そこに金髪の男が飛び込んで来た。
「カイン! 折り入って相談がある」
「ギャアアアア!!?」
「ああ、驚かせてすまない。信じて貰えないかもしれないが……」
「……お前、リーベか」
「え。男になってるのに。どうして分かった?」
「そりゃあお前、大して変わってねぇし」
カインの一言に笑顔で固まるリーベ・ヴァチン(ka7144)。
花の乙女にぶつけられた無情な言葉。
次の瞬間、ばっちーーん! というイイ音が家の中に響いた。
「お前、いきなり殴るのやめろよ」
「カインが失礼な事を言うからだろう」
「だってリーベは元々男前じゃねえか! 今だってやたらとどっしり構えてるしよ!!」
「騒いだって仕方ないからな……」
ベッドに座って言い合うカインとリーベ。
何故か性別が逆転した状態になっていると把握した2人は朝食を済ませた後、人に会わないようにしつつ早々に買い物を済ませ、居候達を驚かさぬようカインの自室に立てこもっていた。
「仕事も休みだな……。このナリじゃ行けねえし」
「そうだな」
「てか、これからどうするよ」
「どうする、とは?」
「着替えとかトイレとか風呂だよ!! お前困らねえの!!?」
「まあ、確かに違和感はあるが……私は身に着けるものが減ったくらいだしさして困ってないかな」
「……見た目もあんま変わらないもんな」
「……もう一度殴られたいのか?」
リーベの凄みのある笑顔にブンブンと首を振るカイン。
その度に豊かな胸が揺れて、彼……もとい彼女は深々とため息をつく。
「うおー。この感覚慣れねえな。いつ戻るんだろうな、これ……。てか、女子ってこんな苦労してたんだな……」
「ふむ。私が下着の付け方を教えてあげようか」
「お。助かる……って、おい。顔近くね?」
「いやあ。男を部屋に引っ張り込むだなんて、迂闊にも程があるんじゃないのかと思ってね」
「へ? 俺男だし」
「今は女子だろう。そして私は男だ」
不穏な雰囲気を感じて脱出を図るカイン。あっという間にリーベに捕まり抑え込まれる。
何とか腕を外そうともがくが、力が足りずに払いのける事が出来ない。
「や、やめろって」
「何故? 男は皆狼なんだろう?」
「リーベここは落ち着こう」
「……涙目で抗うお前も、結構可愛いな」
抗う程に抑え込まれる腕。リーベの端正な顔が迫ってきて――。
「……!!?」
ベッドから飛び起きたカイン。思わず自分の身体を確認して……。
「ああああ。夢で良かった……」
突っ伏す彼。心から安堵のため息を漏らす。
それにしても何であんな夢を見たのか。とはいえ、あの夢が続いてたら……いや、考えるのやめよう。
どうせなら、普通に休日過ごす夢の方がいい。
それってデートと言うのかもしれねぇけど……まあ、あいつなら悪くねぇしな。
そんな事を考えながら。カインは二度寝を決め込むべくベッドに潜り込んだ。
周囲を見渡して、アルマ・A・エインズワース(ka4901)はすぐにこれは夢だと判断した。
そこはただ真っ白な――あると思えばあるし、ないと思えば何もない空間で。
そして何より……誰よりも会いたかったあの人――アレクサンドル・バーンズ(kz0112)がいたから。
そう。彼が存在するなんてあり得ない。
でも、草臥れた白衣姿がひどく懐かしくて……アルマは金髪の男に歩み寄る。
「……アレックスさん」
「何だ。お前さんか」
「ねえねえ。僕を甘っちょろいって言ってましたけど。撤回してくれますか?」
「何の話だ」
「だって僕、貴方を殺しました。やるって言ったらやるですよ」
「おっさんを殺せるチャンスをみすみす逃した坊主が言う台詞じゃないな」
「あはは。相変わらず厳しいです。全然、僕を認めてくれない……何でです?」
「……言っただろう。お前さんとは相容れる事はないってな」
冗談に返って来る軽口。懐かしいアレックスの声。
もう二度と聞けないと思っていたそれが聞けるのが嬉しくて、アルマは目を細める。
「ねえ。……僕、強くなりましたよ」
「……お前さんがどうなろうが興味はないな」
「いつもそう言ってましたよね。貴方を止めたいって言ったら、力で我儘を貫けって言ったからこうなったのに。――でも、貴方は嘘つきです」
くすくすと笑うアルマ。以前と変わらぬ、やる気のないアレクサンドルの茶色の瞳を見据えたまま続ける。
「僕、嘘は嫌いです。それでも……」
この人を嫌いになれなかったのは――きっと自分が思っている以上に、彼が好きだったのだろうと思う。
――夢だと分かっているのに。会えた事がこんなに嬉しい。
この感情を好きと言わずして何だというのか。
アルマの想いを、この歪虚が理解してくれる事は終ぞなかったけれど……殺したくなかった。
世界は酷いモノばかりではない事を思い出して、静かに生きて欲しかった。
――だって。リリカとマティリアを想っていたこの人は、まさに『ヒト』そのものだったから。
最初にこの人に幸せを与えてくれたのも、彼自身が憎んだ『ヒト』であった筈なのに。
……それでも、殺すと決めた。
この人の憎悪は殺さなければ止まらない。
そう、覚ってしまったから――。
「貴方のせいですよ? 僕がこんな『悪い子』になったの」
「それがお前さんの選択だ。おっさんのせいにするな」
「ひどいですー! 僕をキズモノにしたくせにー!」
笑うアルマ。アレクサンドルとの会話が楽しくて仕方がない。
――そうだ。きっと彼を知らなければ、ただのハンターでいられた。
それでも、もう止まれなくなってしまった。
……貴方を。大好きな人を手にかけてしまったから。
魔王は目指す。
そうすれば、彼のような。『正当な』復讐者の味方ができるから――。
「折角会えたのに、やっぱり名前では呼んでくれないんですね」
「人の名前を覚えるのは面倒でね」
「……あ。そうだ。リリカさんとマチリアさんに会えました? 心配かけたんですからちゃんとごめんなさいしないとダメですよ」
「余計なお世話だ」
渋い顔をするアレクサンドルに笑うアルマ。
今の自分があるのは彼がいたから。だからこそ、一番伝えたいのは――。
「……ありがとう」
そっと手を伸ばして、アレクサンドルの無精ひげに触れるアルマ。
……彼から負のマテリアルは感じない。
もう歪虚ではなくなったから。止まらない程の憎しみは消えただろうか?
「……おい。アルマ! いつまで寝てんだ。起きろ!」
不意に聞こえてきた声。あれは参謀の声だろうか。
ああ、待って。もう少しだけこの人と一緒にいたいのに……。
アルマは朝日に追い立てられるように、急速に覚醒していった。
赤と黒で纏められた調度品。そこかしこに蝶のモチーフがあって、主の趣味の良さを伺わせる。
そんな中、無言で睨み合っている執事姿のバタルトゥ・オイマト(kz0023)と人間サイズのハイルタイを交互に見てオロオロとするエステル・ソル(ka3983)。
深紅のドレス姿で椅子に身体を預けていた蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、扇を口元に当ててため息を漏らす。
「なんじゃ。バタルトゥも然様に仏頂面をして居るでないよ」
「……俺も客くらい選ぶ」
「この館の主は妾ぞ? 客人は妾が決める事……まあ、此度の客人は随分愛想がないようじゃがの」
「儂とその若造に愛想を求めるのが間違いというものだ」
「それもそうさな。だが……此処は儚き泡沫の夢の館。幻蝶の茶室じゃ。此の場では会話を楽しんで貰うぞえ?」
「……拒否権はないのだろう?」
「お前のような女狐が一番性質が悪い」
男性陣の目線を受け止めて、蜜鈴は殊更深く微笑む。
「うむ。よう分かっておるではないか。誉め言葉として受け取っておこう。さあ執事よ、茶を淹れておくれ。淑女をあまり待たせるでない。……エステルや。来て早々騒がしくしてすまなんだのう。こちらへおいで」
「いえ! お招き戴いてありがとうです」
青いふんわりとしたドレスで淑女のお辞儀をし、案内された席に着くエステル。
うう。今日の蜜鈴さんもとってもシックで素敵です。バタルトゥさんも珍しい恰好してるけどカッコいい……!
彼女がそんな事を考えている間に運ばれて来る紅茶。エステルはふと、隣に座る大男に声をかける。
「あの。わたくしハイルタイさんに聞きたい事があったです。……ベスタハで何があったですか? どうして歪虚になったです? どうしてオイマト族を裏切ったです?」
「そんな事を今更知ってどうする。歴史は変えられぬ。誰も救われぬ」
「でも、わたくしは……むぐぐ?」
「エステル、然様に質問攻めにしては答える隙が無かろう? ハイルタイも……歳を食うた者の悪い癖じゃ。己より若い者に知らぬで良いと言うは傲慢じゃぞ」
くつくつと笑いながらエステルの口にクッキーを運ぶ蜜鈴。ハイルタイは面倒臭そうにため息をつく。
「ベスタハで何が起きたかは明白じゃ。……儂が歪虚に情報を渡した。辺境部族から成り立つ連合軍の情報と、己の持ちうる知識全てな」
「……その結果、沢山の辺境の戦士が死んだ。父も母もあいつも……」
バタルトゥの絞り出すような声にハッとするエステル。
……あいつというのは誰だか分からないけれど。
バタルトゥはベスタハで、大切な人たちを沢山失ったのだ――。
彼女がそんな事を考えている間も、ハイルタイの声が続く。
「戦争とはそういうものだ。……一度起きれば人が死ぬ。その被害を少なくしようとした儂の策を一蹴したのは他でもないお前の父だろうに」
「……族長はお前の作戦を理解はしていた。だが、採用は出来なかった……。お前の戦略はお前がいなければ成り立たぬ。最初はそれでもいいだろう。だが……万が一という事もある。自分がいなくても皆がやっていける方法を示すのが……」
「黙れ。どこまでも父親に似おってからに。忌々しい」
「ふむ? 前族長はおんしの父親だったのかえ?」
バタルトゥの言葉を遮るハイルタイ。蜜鈴の問いに、バタルトゥは頷く。
「そうかえ。根が深い話よの……。さあ、続けておくれ。妾もこのレディもおんしらの話に興味があるゆえな」
にっこりと笑う蜜鈴にこくこくと頷くエステル。
――夢のお茶会は、長くなりそうで。バタルトゥとハイルタイはため息をついた。
「……先輩。これ教えて貰ってもいいですか?」
「ん? ああ、これは……こうだな」
「成程。そういう事だったんですね」
「うん。また分からなかったら聞いて」
「ありがとうございます」
書類と共にやりとりされる付箋。そこに書かれる週末の予定。
化粧室から、ひそひそと女子社員の話声がする。
「……ねえ、クィーロさんと神代さん、まだ会社に残ってるみたいよー!」
「えっ。本当? 食事誘ってみる?」
「忙しそうだしどうかなー」
「っていうか2人共絶対彼女いるよねー!」
――ここはリアルブルーの某会社。
当の本人達は噂されている事など露程も知らず。
クィーロ・ヴェリル(ka4122)と神代 誠一(ka2086)は、今日もせっせと馬車馬のように働いていた。
「……誠一。弁当箱洗っておいたぞ。てか人に弁当作らせてんだから弁当箱くらい洗えよ」
「うわ。ごめん。後でやろうと思ってたんだ。つーか今日の弁当マジおいしかった! クィーロちゃん、明日もお願いできないかなー?」
「キモイ。甘えんな」
「お前先輩に対して酷くない!?」
「先輩らしい事してから言え」
給湯室から戻って来るなりばっさりと切り捨てるクィーロ。
誠一は、大学からの先輩だ。
眼鏡の似合う爽やかなイケメンだし、仕事も出来る男なのに悲しいかな、生活力が皆無で――。
食事は適当だわ、放っておくとごみ溜めの中で生活するので何だかんだ世話を焼いている。
この『放っておけない』というのも誠一の人徳なのかもしれないけれど。
クィーロは仕事面から生活面に至るまで非の打ち所がないパーフェクトヒューマンなので、誠一の世話くらい何て事ないし。
何よりこの先輩。超騙しやすい。正直ちょろい。
色々とね! 利用価値があるんですよ! そう! 特に今日みたいな日はね!
「誠一。まだ仕事終わってないのか? これじゃ今日も終電逃すぞ?」
「いやいや待って!? 誰のせいで俺の仕事増えたと思ってんだよ!!」
「え。だって早く帰りたいし」
「俺だって早く帰りたいっつーの!! 大体コレだってお前なら余裕だろ! 早く手伝えって!」
ギャーギャーと言い合う2人。そこに女子社員達がやって来るのが見えて……2人はすごい変り身でシュッと真顔を作る。
「クィーロさん、神代さん。そろそろ上がられます?」
「良かったら一緒に食事どうですか?」
「……すみません、僕、今日は用事があるので」
「あ、そうなんです? 残念……」
「神代さんは?」
「俺もちょっと仕事が溜まってるんで、ごめんね。……クィーロ君。ちょっといいかな」
女子社員達の誘いを笑顔で躱したクィーロと誠一。
肩を掴んでいる誠一が『一人だけ、帰れると、思うなよ』と目で訴えていたが……クィーロはサクッと無視する事に決めた。
「じゃあ、僕これで失礼します。先輩、後宜しくお願いします」
慌てる誠一。彼にだけに分かるように悪戯っぽい目線を向けて――クィーロは颯爽と会社を後にした。
クィーロがオーダーメイドした包丁を受け取り、買い物を済ませた後も、会社は煌々と明かりがついていた。
「……誠一マジで残ってたんだ。流石の俺も引くわー」
「目途つけて帰りたいし。でも俺、クィーロが戻ってきてくれるって信じてたから!!」
「……帰ろうかな」
「待って! 待ってお願い!! 俺を捨てないで!」
「もー。しょーがないなー。とりあえず夕飯持ってきたから食えよ。その間に仕事進めておいてやるから」
「うわあ! 神がいる!! ありがと!」
涙を流さんばかりに有り難がる誠一に苦笑を返すクィーロ。
やっぱり放っておけないんだよなぁ……。
そんな事を考えつつ、彼はすごい速さで仕事を片づけ始めた。
朝、目を開けた瞬間からカイン・シュミート(ka6967)は、異変を感じていた。
何だろう。見慣れた家のはずなのに天井が遠い気がする。
ちょうどよかったパジャマがだぼだぼで歩きにくい。
というか、何で胸がこんなに重いんだ……?
――うーん。良く分からないがとりあえず顔洗うか……。
のろのろとベッドから起き上がり、洗面台に移動するカイン。
鏡を見ると小柄でやたらと目つきの鋭い女が映っている。
――あ? これ誰だ。どっかで見た事あるような……ん? 待てよ? もしかしてこれ俺か……?
ハァ!? 何で!!?
うわああ! 夢か? 夢だよな? 夢であって欲しい。夢でいてください……!
というか何だ。これ死んだあいつより背丈も胸もありそうだな……?
慌てつつも妙に冷静に自分の身体の分析を始めるカイン。
そこに金髪の男が飛び込んで来た。
「カイン! 折り入って相談がある」
「ギャアアアア!!?」
「ああ、驚かせてすまない。信じて貰えないかもしれないが……」
「……お前、リーベか」
「え。男になってるのに。どうして分かった?」
「そりゃあお前、大して変わってねぇし」
カインの一言に笑顔で固まるリーベ・ヴァチン(ka7144)。
花の乙女にぶつけられた無情な言葉。
次の瞬間、ばっちーーん! というイイ音が家の中に響いた。
「お前、いきなり殴るのやめろよ」
「カインが失礼な事を言うからだろう」
「だってリーベは元々男前じゃねえか! 今だってやたらとどっしり構えてるしよ!!」
「騒いだって仕方ないからな……」
ベッドに座って言い合うカインとリーベ。
何故か性別が逆転した状態になっていると把握した2人は朝食を済ませた後、人に会わないようにしつつ早々に買い物を済ませ、居候達を驚かさぬようカインの自室に立てこもっていた。
「仕事も休みだな……。このナリじゃ行けねえし」
「そうだな」
「てか、これからどうするよ」
「どうする、とは?」
「着替えとかトイレとか風呂だよ!! お前困らねえの!!?」
「まあ、確かに違和感はあるが……私は身に着けるものが減ったくらいだしさして困ってないかな」
「……見た目もあんま変わらないもんな」
「……もう一度殴られたいのか?」
リーベの凄みのある笑顔にブンブンと首を振るカイン。
その度に豊かな胸が揺れて、彼……もとい彼女は深々とため息をつく。
「うおー。この感覚慣れねえな。いつ戻るんだろうな、これ……。てか、女子ってこんな苦労してたんだな……」
「ふむ。私が下着の付け方を教えてあげようか」
「お。助かる……って、おい。顔近くね?」
「いやあ。男を部屋に引っ張り込むだなんて、迂闊にも程があるんじゃないのかと思ってね」
「へ? 俺男だし」
「今は女子だろう。そして私は男だ」
不穏な雰囲気を感じて脱出を図るカイン。あっという間にリーベに捕まり抑え込まれる。
何とか腕を外そうともがくが、力が足りずに払いのける事が出来ない。
「や、やめろって」
「何故? 男は皆狼なんだろう?」
「リーベここは落ち着こう」
「……涙目で抗うお前も、結構可愛いな」
抗う程に抑え込まれる腕。リーベの端正な顔が迫ってきて――。
「……!!?」
ベッドから飛び起きたカイン。思わず自分の身体を確認して……。
「ああああ。夢で良かった……」
突っ伏す彼。心から安堵のため息を漏らす。
それにしても何であんな夢を見たのか。とはいえ、あの夢が続いてたら……いや、考えるのやめよう。
どうせなら、普通に休日過ごす夢の方がいい。
それってデートと言うのかもしれねぇけど……まあ、あいつなら悪くねぇしな。
そんな事を考えながら。カインは二度寝を決め込むべくベッドに潜り込んだ。
周囲を見渡して、アルマ・A・エインズワース(ka4901)はすぐにこれは夢だと判断した。
そこはただ真っ白な――あると思えばあるし、ないと思えば何もない空間で。
そして何より……誰よりも会いたかったあの人――アレクサンドル・バーンズ(kz0112)がいたから。
そう。彼が存在するなんてあり得ない。
でも、草臥れた白衣姿がひどく懐かしくて……アルマは金髪の男に歩み寄る。
「……アレックスさん」
「何だ。お前さんか」
「ねえねえ。僕を甘っちょろいって言ってましたけど。撤回してくれますか?」
「何の話だ」
「だって僕、貴方を殺しました。やるって言ったらやるですよ」
「おっさんを殺せるチャンスをみすみす逃した坊主が言う台詞じゃないな」
「あはは。相変わらず厳しいです。全然、僕を認めてくれない……何でです?」
「……言っただろう。お前さんとは相容れる事はないってな」
冗談に返って来る軽口。懐かしいアレックスの声。
もう二度と聞けないと思っていたそれが聞けるのが嬉しくて、アルマは目を細める。
「ねえ。……僕、強くなりましたよ」
「……お前さんがどうなろうが興味はないな」
「いつもそう言ってましたよね。貴方を止めたいって言ったら、力で我儘を貫けって言ったからこうなったのに。――でも、貴方は嘘つきです」
くすくすと笑うアルマ。以前と変わらぬ、やる気のないアレクサンドルの茶色の瞳を見据えたまま続ける。
「僕、嘘は嫌いです。それでも……」
この人を嫌いになれなかったのは――きっと自分が思っている以上に、彼が好きだったのだろうと思う。
――夢だと分かっているのに。会えた事がこんなに嬉しい。
この感情を好きと言わずして何だというのか。
アルマの想いを、この歪虚が理解してくれる事は終ぞなかったけれど……殺したくなかった。
世界は酷いモノばかりではない事を思い出して、静かに生きて欲しかった。
――だって。リリカとマティリアを想っていたこの人は、まさに『ヒト』そのものだったから。
最初にこの人に幸せを与えてくれたのも、彼自身が憎んだ『ヒト』であった筈なのに。
……それでも、殺すと決めた。
この人の憎悪は殺さなければ止まらない。
そう、覚ってしまったから――。
「貴方のせいですよ? 僕がこんな『悪い子』になったの」
「それがお前さんの選択だ。おっさんのせいにするな」
「ひどいですー! 僕をキズモノにしたくせにー!」
笑うアルマ。アレクサンドルとの会話が楽しくて仕方がない。
――そうだ。きっと彼を知らなければ、ただのハンターでいられた。
それでも、もう止まれなくなってしまった。
……貴方を。大好きな人を手にかけてしまったから。
魔王は目指す。
そうすれば、彼のような。『正当な』復讐者の味方ができるから――。
「折角会えたのに、やっぱり名前では呼んでくれないんですね」
「人の名前を覚えるのは面倒でね」
「……あ。そうだ。リリカさんとマチリアさんに会えました? 心配かけたんですからちゃんとごめんなさいしないとダメですよ」
「余計なお世話だ」
渋い顔をするアレクサンドルに笑うアルマ。
今の自分があるのは彼がいたから。だからこそ、一番伝えたいのは――。
「……ありがとう」
そっと手を伸ばして、アレクサンドルの無精ひげに触れるアルマ。
……彼から負のマテリアルは感じない。
もう歪虚ではなくなったから。止まらない程の憎しみは消えただろうか?
「……おい。アルマ! いつまで寝てんだ。起きろ!」
不意に聞こえてきた声。あれは参謀の声だろうか。
ああ、待って。もう少しだけこの人と一緒にいたいのに……。
アルマは朝日に追い立てられるように、急速に覚醒していった。
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【相談卓】夢での邂逅 蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009) エルフ|22才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/08/08 00:27:08 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/10 00:17:53 |