ゲスト
(ka0000)
街道砕く亀雑魔。砲塔付
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2014/12/27 22:00
- 完成日
- 2015/01/05 21:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ヴォイドの戦力は基本的には大きさに比例する。
小惑星級なら宇宙戦艦が必要かもしれないが、人間大なら生身覚醒者でも対抗はでき、8人いれば戦死者無しで勝てる。
これは法則ではない。経験則でしかない。
しかし高位ヴォイドなどの一部を除けばまず通用する経験則だった。
●
「雑魔を倒せても街道全壊では意味がないだろぉっ!」
とある領地持ち貴族が泣いていた。
ここは王国内に張り巡らされた街道の一角。具体的には西寄りにある街道である。
貴族は複数の覚醒者からなる私兵団を率い、街道に現れた雑魔を戦死者0重傷者0で殲滅した。
華麗に躱して隙をついて仕留める戦法は優雅かつ華麗であり、実に絵になる活躍だった。
「修理費で今年の税収が……」
倒した雑魔が消えた後、残ったのは多数の大穴が開いた石畳だ。
雑魔の一撃は威力が高すぎて、覚醒者が躱した分街道に大きな被害が出た訳だ。
魔伝が鳴る。
『閣下! こちら別働隊。東の境界監視所です。森の中に亀型雑魔を3体を視認。現戦力では足止めしかできませんっ』
貴族の奥歯が砕けた。
覚醒回数に余裕があってもスキルは既に使い尽くしている。
今から迎撃に向かえば勝てはしても戦死者が出かねない。街道の被害を減らそうとしたら数人死ぬかもしれない。
「私の馬を貸してやる。金に糸目はつけぬ。ハンターズソサエティから戦力を引き出して来い!」
軽装の覚醒者が真っ青な顔で敬礼し、悍馬を駆って街を目指した。
●
よほど急ぎだったのだろう。
職員の体を突っ切る形で3Dディスプレイが現れた。
慌てる職員の目の前でディスプレイが広がる。
「多脚戦車? SF映画か?」
「待て、これ雑魔じゃないか?」
依頼物色中のハンター達が騒ぎ出す。
ディスプレイに映っているのは背が低く重心の低い、強いて言えば亀に見えないこともない雑魔だ。
甲羅に張り付いた筒状の何かから、1分に1発の頻度で砲弾状の物が飛び出している。
「装甲増し増し。攻撃は長射程の1発特化……体当たりもありか」
「動きは雑だな。2対1以上でかかれば無傷で勝てるだろ」
現地の貴族私兵と違って対ヴォイド戦に特化しているからか、威勢の良い言葉が飛び出している。無論口だけではなく実力相応のある発言だ。
雑魔が小さくなっていく。
カメラ役の野良パルムは走っているらしく、画面が揺れて少し見辛い。
迎撃に出る貴族私兵、飛び出す砲弾もどきに砕ける街道、修理費に悲鳴をあげる貴族。
「建物破壊特化だとぉ?」
私兵達が必死に攻撃を繰り返している。
砲塔の動きを見て弾を避け、重い分威力のありそうな体当たりは慣れた動きで回避、けれど軽い武器では亀の甲羅を打ち抜けず、偶然で急所にあたるのを期待して攻撃を繰り返すしかない。
画面が2分割され戦場の光景が右側に、開いた左側には戦場周辺の地図と依頼内容が挿入される。
「これ、録画か」
「えーっと、転送されてから借りた馬か自前の馬で現地へ急行、雑魔3体以上と交戦?」
「借りた馬や街道に被害が出ても損害賠償しなくていいって書いてあるけど、あるけどさぁ」
勝つだけなら簡単。完全勝利を目指すなら無理ゲー級。
そんな依頼をうけるかどうか迷うハンター達であった。
小惑星級なら宇宙戦艦が必要かもしれないが、人間大なら生身覚醒者でも対抗はでき、8人いれば戦死者無しで勝てる。
これは法則ではない。経験則でしかない。
しかし高位ヴォイドなどの一部を除けばまず通用する経験則だった。
●
「雑魔を倒せても街道全壊では意味がないだろぉっ!」
とある領地持ち貴族が泣いていた。
ここは王国内に張り巡らされた街道の一角。具体的には西寄りにある街道である。
貴族は複数の覚醒者からなる私兵団を率い、街道に現れた雑魔を戦死者0重傷者0で殲滅した。
華麗に躱して隙をついて仕留める戦法は優雅かつ華麗であり、実に絵になる活躍だった。
「修理費で今年の税収が……」
倒した雑魔が消えた後、残ったのは多数の大穴が開いた石畳だ。
雑魔の一撃は威力が高すぎて、覚醒者が躱した分街道に大きな被害が出た訳だ。
魔伝が鳴る。
『閣下! こちら別働隊。東の境界監視所です。森の中に亀型雑魔を3体を視認。現戦力では足止めしかできませんっ』
貴族の奥歯が砕けた。
覚醒回数に余裕があってもスキルは既に使い尽くしている。
今から迎撃に向かえば勝てはしても戦死者が出かねない。街道の被害を減らそうとしたら数人死ぬかもしれない。
「私の馬を貸してやる。金に糸目はつけぬ。ハンターズソサエティから戦力を引き出して来い!」
軽装の覚醒者が真っ青な顔で敬礼し、悍馬を駆って街を目指した。
●
よほど急ぎだったのだろう。
職員の体を突っ切る形で3Dディスプレイが現れた。
慌てる職員の目の前でディスプレイが広がる。
「多脚戦車? SF映画か?」
「待て、これ雑魔じゃないか?」
依頼物色中のハンター達が騒ぎ出す。
ディスプレイに映っているのは背が低く重心の低い、強いて言えば亀に見えないこともない雑魔だ。
甲羅に張り付いた筒状の何かから、1分に1発の頻度で砲弾状の物が飛び出している。
「装甲増し増し。攻撃は長射程の1発特化……体当たりもありか」
「動きは雑だな。2対1以上でかかれば無傷で勝てるだろ」
現地の貴族私兵と違って対ヴォイド戦に特化しているからか、威勢の良い言葉が飛び出している。無論口だけではなく実力相応のある発言だ。
雑魔が小さくなっていく。
カメラ役の野良パルムは走っているらしく、画面が揺れて少し見辛い。
迎撃に出る貴族私兵、飛び出す砲弾もどきに砕ける街道、修理費に悲鳴をあげる貴族。
「建物破壊特化だとぉ?」
私兵達が必死に攻撃を繰り返している。
砲塔の動きを見て弾を避け、重い分威力のありそうな体当たりは慣れた動きで回避、けれど軽い武器では亀の甲羅を打ち抜けず、偶然で急所にあたるのを期待して攻撃を繰り返すしかない。
画面が2分割され戦場の光景が右側に、開いた左側には戦場周辺の地図と依頼内容が挿入される。
「これ、録画か」
「えーっと、転送されてから借りた馬か自前の馬で現地へ急行、雑魔3体以上と交戦?」
「借りた馬や街道に被害が出ても損害賠償しなくていいって書いてあるけど、あるけどさぁ」
勝つだけなら簡単。完全勝利を目指すなら無理ゲー級。
そんな依頼をうけるかどうか迷うハンター達であった。
リプレイ本文
●
4脚が石畳の上を動く。安定した脚に支えられているのは分厚い甲羅だ。傾斜装甲風の曲面で構成されている。生半可な攻撃では貫くのは無理だ。
「おおー! ありゃ確かに戦車だぜ、戦車」
雑魔目がけて疾走する馬の上で、岩井崎 旭(ka0234)が心底楽しげな笑みを浮かべていた。
彼と愛馬が駆けるのは街道。雑魔がいるのも街道だ。
避難誘導は完了しているため遮るものは何も無く、旭に気付いた亀型雑魔が4脚を使って向きを変える。
砲口にしか見えない筒が、甲羅の上から旭を睨みつけていた。
「へっ」
旭の口の端が吊り上がる。
主の意を察し、乗用馬サラダが90度近く方向を変えて街道から平地へ抜け出した。
雑魔が混乱する。追うか砲塔を向け直すか迷っている間に着地音と別の馬の動きを見落としてしまった。
「行け」
アバルト・ジンツァー(ka0895)は着地の衝撃を受け逃し、アサルトライフルの安全装置解除と立射姿勢への移行を短時間で成し遂げる。
彼の馬は後ろ髪を引かれる様子で振り向こうとして、主の言葉に押されてそのまま西へ駆け去った。
アバルトは動かない。嵩張り重いはずの大型銃を両手だけで構え微動だにしない。
引き金を引く。
亀が足を踏み出す半秒前に、足が触れるはずだった石畳に弾痕が刻まれる。
足跡よりはるかに小さいとはいえ込められた破壊力は段違いだ。雑魔はダメージを受けなかったからこそ余計に痛みを恐れてしまい、旭を追うこともアバルトを狙うこともできずに街道上に立ち尽くしてしまう。
足音が近づいてくる。鉄の如き骨と鋼の如き筋を包んだ靴が石畳を蹴る。蹴った結果加速するのはバルバロス(ka2119)の巨体だ。
亀型雑魔との距離が、バルバロス以外が想像もしていなかった短時間で0に近づいた。
雑魔が怯える。4脚が縮こまる。恐怖に押されて砲塔が動き、バルバロスの火照った肉目がけて砲弾を発射する。
バルバロスの前傾姿勢の角度が深くなり、口元から雄叫びが放たれた。
砲弾がかすめる。バーサーカーの肩が拳1つ分凹む。皮膚と血と肉が混じった霧がバルバロスを赤く彩った。
彼は止まるどころかさらに加速する。
スコール伝統の戦闘用斧を両手で振りかぶる。ただ振れば街道を削ったはずの斧と我が身にマテリアルを注ぎ込み、砲弾発射直後の砲塔にぶちかます。
激突の衝撃に、血と汗と雑魔の悲鳴が舞った。
バルバロスの赤い瞳がぎょろりと動く。
斧による衝撃は甲羅の重防備でも消しきれず、雑魔の内臓部分に少なくないダメージを与えた。だが斧を当てた砲塔は凹みはしても形を保っている。後2、3発は撃てるはずだ。
「初弾は街道から外れた」
背後からアバルトの声が聞こえ、バルバロスは内心安堵の息を吐く。
この雑魔を倒せば終わりではない。主要街道という超重要インフラを防御しながら戦い、目の前の1体だけでなく計4体の処理を行わなくてはならないのだ。
「ぬぅ」
巨大斧を盛ったまま組み付く。肩からさらに血が流れるが気にする余裕はない。次の敵に向かうためにもこの場で一気に決めるつもりだった。
が、亀型雑魔は4脚による低重心を活かして後退していく。
バルバロスの額に汗が浮かび、一筋頬を伝って街道へ落ちた。
アバルトが狙いを修正して射撃する。狙い澄まされた1弾が甲羅外の脚を撃ち抜く。かなりのダメージのはずだがこのままでは時間がかかりすぎる。
緑の瞳を半秒だけ斜め横に向け、アバルトは決断した。
「10秒!」
バルバロスが負傷を感じさせない動きで前進した。前進の筋肉が怒張し、雑魔の前脚に組み付き、大地を揺るがす咆哮と共に抱え上げる。
それはせいぜい1、2秒の間の出来事だった。
雑魔が身をよじってバルバロスを跳ね飛ばし、前脚を再び街道につけるより早く、旭が戦場に再突入した。
「勝負だッ!」
馬上で槍を真っ直ぐに構える。
鋭さはあっても甲羅を射貫くには足らない。足らない分はサラダのパワーと重さ、なにより旭自身のマテリアルで補う。
穂先はただただ真っ直ぐに、何より速く進み続け、バルバロスによって晒された腹に吸い込まれていった。
「わははっ、痛ぇっ」
旭の手に、複数の内蔵を潰した感触と甲羅の内側にぶつかった衝撃が届いた。
雑魔の片足から力が抜けて横転、半壊した腹をハンターの目にさらす。
銃弾が穴を穿ち、斧が腹の表面の砕き、穂先が核を潰すまで十秒もかからなかった。
●
旭達が戦闘に突入する十数秒前、1人のハンターが馬から下りるところだった。
Luegner(ka1934)が音もなく土の上に降りると、移動のため結っていた髪が解けて揺れた。
「お疲れ様です」
借り物の馬を軽く撫でて労ってから、そっと背を押して西へ送り出す。
白い肌が淡い光で照らされる。覚醒の影響で艶のある黒髪が銀色に変わり、冬の陽光を反射しているのだ。
Luegnerは移動中の亀型雑魔3体に注意を向けたまま、片膝を落として地面を撫でた。
クリムゾンウェスト出身者ならただの穴と判断したかもしれない。しかし彼女にとっては見たことのある代物だ。
砲撃跡。質量弾としても炸裂弾としても中途半端なものと判断して威力と形を推測した。
「倒す今のうちですね。さて……おとなしくこちらに来ていただければ助かるのですが……」
長身の彼女を覆う大きさの盾を構え、必要以上には急がず雑魔との距離を詰めていく。
20歩近く歩いたとき、それまで街道を向いていた砲塔3つが回転を始めた。
Luegnerは息を吐く。
街道を無視してよいならいくらでもやりようがある。だがインフラを守るためには危険をおかして雑魔を引きつけるしかない。
盾の脇から手を伸ばす。
アサルトライフルに比べると玩具のように小さな拳銃を構え、引き金を静かに撫でた。
剥き出しの足に次々命中する。最悪3体全てを相手にするつもりで撃ったのに、Luegnerの銃撃に気づいたのは2体だけ、Luegnerに向き直ったのは1体だけだった。
その1体の砲塔が点に見えた。Luegnerが回避ではなく盾による防御を覚悟した瞬間、砲塔の周辺に火花が散った。
亀型雑魔が左右2本ずつの足を反対向きに動かす。超信地旋回に似た動きで向きを変え、けれどどこから撃たれた分からず回り続ける。
鬼ごっこの際歌われる童謡が聞こえる。
声は若く、なのに響きは深山の底の見えない泉のよう。
砲塔が人の気配のある岩を向く寸前、岩陰からリーゼロッテ=御剣(ka3558)が飛び出した。
停止すれば地面に届くほど長い髪がほぼ水平だ。砲弾が撃ち出され岩が砕け無数の破片が飛び散りはしても、リーゼロッテの肌に傷一つつけることもできなかった。
「私も歳には勝てないって事かしら」
世の奥様方に聞かれると白手袋投擲が確実な言葉を口にし、着弾時の煙でほんの少しだけ汚れた拳銃を構える。
もちろん動きは止めていないので、砲塔内が空の雑魔がリーゼロッテの後をひたすら追う展開になる。
雑魔の選ぶ進路は余りに単純過ぎた。Luegnerもまともな注意力のある雑魔相手には絶対にこんなことをしなかったろう。雑魔が停止すれば確実にぶつかる距離まで近づいて、進路上に飛び出すと同時に盾を用いた堅守の構えをとった。
馬鹿は急には止まれない。大きな盾にぶつかり、姿勢が安定していないので重さと力を有効に使えずLuegnerを押し倒せず、隙だらけの状態での停止を強要させられた。
「砲撃がご自慢……ですか……」
魔導拳銃を半ばまで砲口に突き込む。何をされるか察し雑魔の全身が震える。
銃声が響き、砲塔内で跳弾が連続し、奥の奥まで届いてめり込んだ。
砲塔からどす黒い煙が吹き出し拳銃と盾の表現を汚した。砲塔は千切れかねない勢いで回り続け、4脚も不規則に動き出してLuegnerから離れる。
「さぁ……お痛の時間はお終い。お仕置きされる覚悟はいいかしら?」
堅守の直後で動けないLuegnerに代わってリーゼロッテが急接近する。
頭部の口を刀で狙い、唇を全壊させるが雑魔の動きは止まらない。
銃撃の効果が薄かった甲羅は無視して手足の節目を狙い、2度目の攻撃で切断に成功する。
雑魔が残る3脚で動き続けている。ただの兵ならくじけそうな状況でも、彼女には微笑む余裕があった。
「さぁ……お痛の時間はお終い。お仕置きされる覚悟はいいかしら?」
Luegnerの銃撃が甲羅の端に当たる。甲羅ではなく至近の腹にひびが入る。
全力疾走で汗みずくの旭と愛馬が、地面から跳ね上げる動きで割れ目に穂先を直撃させ、大きな亀ごと浮かせた。
「じゃあ、ね」
100年単位で扱い慣れたようも見える動きで刀を突き込み中を解体する。リーゼロッテが刀を引き抜くまでもなく、雑魔の体全てが薄れて消えていった。
●
武神 守悟(ka3517)はいらだたしげに髪を掻いた。
舌打ちしたくなるのを馬の背中で堪える。
彼の不機嫌の原因は、馬ではなく自分の足で並走中のイーディス・ノースハイド(ka2106)だ。
自分より年下が戦場に赴くのはまだ我慢できる。それが女性だとしてもだ。だけれども、馬を危険にさらしたくないという理由で走り続けてそのまま戦場へというのは、守悟にとって受け容れがたかった。
「障害物と雑魔の相手を同時にさせるのは危険だからね」
イーディスは息も乱さず会話しながら、全身鎧をものともせずに大地に空いた亀裂を軽々と飛び越える。
着地の瞬間、非舗装の地面に深い足型が刻まれる。装甲がこすれる音もかなり目立つ。
女性らしさを失わない優美な外見でも分厚い鎧であるのは厳然たる事実。だがイーディスの体力なら使いこなせるのも歴とした現実だった。
今度は本当に舌打ちして鞍から飛び降りる。
守悟が手を振ると、西の街所属の馬は荒い息を吐きながら低速で帰路へついた。
「私達の相手はあれだな」
イーディスがわずかに進路を変更する。
向かう先は、街道に向かうか街道外で戦闘中の同属に合流するか迷ってその場で円を描いている1体だ。
「気づかないか」
真剣で、かつ余裕のある表情でつぶやく。
残り十数歩の距離まで近づいたのに反応がない。亀型雑魔の頭は予想以上に残念なようだ。
「来ないのか?」
彼女は、足下から目元までを隠していた盾を横に除けた。
そうすると、分厚い鎧を着ていても細く見える体が雑魔の目に映る。
「好き勝手しやがって」
守悟がイーディスを追い越し雑魔に迫る。
甲羅の上の砲塔が左右に動き、最終的に小さく細い少女の狙いをつけ砲弾に火をつけた。
「俺も好き勝手させてもらうぞ」
イーディスに倍する速度で距離を詰める。刀の間合いには明らかに足りない場所で利き腕を振るう。
砲塔が火を吹くより、戦闘用ワイヤーが砲塔に絡みつく方がほんの少しだけ早かった。
守悟の奥歯が軋む。発射の衝撃がワイヤー越しに伝わってきて、腕、肩の骨を痛めつけたのだ。
「我が身の未熟を痛感するよ」
守悟が狙いを甘くしてくれても避けきれない。
だからイーディスは、盾が最も分厚くなる角度で砲弾を受け、衝撃を無理なく手から足、足から地面へ受け流した。受けた傷は軽症未満。実に見事な防御だった。
守悟の逞しいからだが華麗に宙を舞う。
半秒後、重さと固さだけは凄い亀が守悟のいた場所を通過した。
亀型雑魔は守悟しか目に入っていないようで、イーディスを無視してひたすら彼を追う。
守悟は、わざと雑魔と同程度の速度しか出さなかった。
戦場を街道外に止めるのも勝利条件の1つであるし、増援が届くまで耐えれば確実に勝てるからだ。
もっともただ待つようなぬるい真似はしない。
「防御は任されよ」
イーディスが雑魔に接近する。
守悟が眉をしかめて数歩後退する。
亀型雑魔は己の半分以下の重さの彼女を跳ね飛ばそうと突進し、止まった。
イーディスが不敵に微笑む。
盾の陰で地面に突き刺して無理矢理その場に留まっているが、雑魔相手に水面下の努力を晒すつもりはない。
「ったく」
守悟が甲羅と密着できる距離まで接近し凝視する。
甲羅で覆われていない脚と首も、ワイヤー程度ではどうしようもない固さを誇っている。
「手柄を譲られるたぁな」
黒鞘から不知火を抜き、角度を調整し、亀の首と甲羅の間から差し込んだ。
雑魔は恐慌状態に陥り逃げようと力を入れる。イーディスが眉をしかめ、大地にひび割れが生じる。が、それ以上のことは起きなかった。
刃がするりと中に入る。
激しく抵抗する筋をすぱりと裂いて、形のない核を押しつぶす。亀は、これまでの抵抗から想像できないほどあっさりと消えるのだった。
●
雑魔計4体のうち3体をハンター7人が抑えた訳で、当然1対1の戦いが1組発生する。
ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)は利き手にワンドを、もう一方の手に手綱を持って、地面に潜む穴と岩とさらに雑魔まで相手にしていた。
石つぶてが亀の頭に直撃する。
固めを隠すほど腫れ上がりはしても、雑魔の動きに全く変化がなかった。
「たちが悪いですね……」
火、水、地属性術を全種当てた。
1つくらいは大きく効いてもいいはずなのに、よりにもよって属性に偏りがないらしい。
雑魔の砲塔に動きがあった。
同属3体の危機に気付き、4脚を巧みに操り滑るような動きで増援に向かおうとした。
が、速度が十分上がる前に騎乗するラシュディアに遮られる。
「さすがに……」
肩から背中が猛烈に痛む。雑魔を食い止めるのと馬の脚を潰されないよう防ぐのを同時に行うため、我が身を盾にするしかなかった。
砲口がラシュディアに向く。
指向完了から発砲まで1秒を切っていた。
馬が無理なく横へ跳ぶ。それはラシュディアが予め指示していた動きで、当たれば主と一緒に死ぬことになったかもしれない砲弾が、主のローブをかすめて遠くへ消えた。
「はっ」
口元に浮かぶ笑みは嘲笑に限りなく近かった。
雑魔は増援を諦めラシュディアに向き直る。刺し違えるつもりで馬の進路を予想し急進する。予測が甘すぎてラシュディアが選んだ進路を読み切れず何もない場所を虚しく行きすぎる。
ラシュディアは好機に見えるタイミングには普通の攻撃しかせず、雑魔の戦線離脱の動きのみ潰し続けた。
「すまぬ。遅くなった」
そして、 アサルトライフルの射程にアバルトが、ひと駆けすれば斧の距離に最低限自己治癒したバルバロスが現れた。
「私は退路を塞ぎます」
ラシュディアの瞳にはヴォイド必滅の意思だけがあった。
「む。……承知した」
アバルトは痛ましげに目を伏せ、次の瞬間には冷静な武人の顔に戻る。
他の雑魔を倒したハンターも集まり、雑魔は7対1で瞬きする間に殲滅された。
街道補修費は領主の予想の半額程度で済みはしたが、馬が何頭も人手に渡ることになったらしい。
4脚が石畳の上を動く。安定した脚に支えられているのは分厚い甲羅だ。傾斜装甲風の曲面で構成されている。生半可な攻撃では貫くのは無理だ。
「おおー! ありゃ確かに戦車だぜ、戦車」
雑魔目がけて疾走する馬の上で、岩井崎 旭(ka0234)が心底楽しげな笑みを浮かべていた。
彼と愛馬が駆けるのは街道。雑魔がいるのも街道だ。
避難誘導は完了しているため遮るものは何も無く、旭に気付いた亀型雑魔が4脚を使って向きを変える。
砲口にしか見えない筒が、甲羅の上から旭を睨みつけていた。
「へっ」
旭の口の端が吊り上がる。
主の意を察し、乗用馬サラダが90度近く方向を変えて街道から平地へ抜け出した。
雑魔が混乱する。追うか砲塔を向け直すか迷っている間に着地音と別の馬の動きを見落としてしまった。
「行け」
アバルト・ジンツァー(ka0895)は着地の衝撃を受け逃し、アサルトライフルの安全装置解除と立射姿勢への移行を短時間で成し遂げる。
彼の馬は後ろ髪を引かれる様子で振り向こうとして、主の言葉に押されてそのまま西へ駆け去った。
アバルトは動かない。嵩張り重いはずの大型銃を両手だけで構え微動だにしない。
引き金を引く。
亀が足を踏み出す半秒前に、足が触れるはずだった石畳に弾痕が刻まれる。
足跡よりはるかに小さいとはいえ込められた破壊力は段違いだ。雑魔はダメージを受けなかったからこそ余計に痛みを恐れてしまい、旭を追うこともアバルトを狙うこともできずに街道上に立ち尽くしてしまう。
足音が近づいてくる。鉄の如き骨と鋼の如き筋を包んだ靴が石畳を蹴る。蹴った結果加速するのはバルバロス(ka2119)の巨体だ。
亀型雑魔との距離が、バルバロス以外が想像もしていなかった短時間で0に近づいた。
雑魔が怯える。4脚が縮こまる。恐怖に押されて砲塔が動き、バルバロスの火照った肉目がけて砲弾を発射する。
バルバロスの前傾姿勢の角度が深くなり、口元から雄叫びが放たれた。
砲弾がかすめる。バーサーカーの肩が拳1つ分凹む。皮膚と血と肉が混じった霧がバルバロスを赤く彩った。
彼は止まるどころかさらに加速する。
スコール伝統の戦闘用斧を両手で振りかぶる。ただ振れば街道を削ったはずの斧と我が身にマテリアルを注ぎ込み、砲弾発射直後の砲塔にぶちかます。
激突の衝撃に、血と汗と雑魔の悲鳴が舞った。
バルバロスの赤い瞳がぎょろりと動く。
斧による衝撃は甲羅の重防備でも消しきれず、雑魔の内臓部分に少なくないダメージを与えた。だが斧を当てた砲塔は凹みはしても形を保っている。後2、3発は撃てるはずだ。
「初弾は街道から外れた」
背後からアバルトの声が聞こえ、バルバロスは内心安堵の息を吐く。
この雑魔を倒せば終わりではない。主要街道という超重要インフラを防御しながら戦い、目の前の1体だけでなく計4体の処理を行わなくてはならないのだ。
「ぬぅ」
巨大斧を盛ったまま組み付く。肩からさらに血が流れるが気にする余裕はない。次の敵に向かうためにもこの場で一気に決めるつもりだった。
が、亀型雑魔は4脚による低重心を活かして後退していく。
バルバロスの額に汗が浮かび、一筋頬を伝って街道へ落ちた。
アバルトが狙いを修正して射撃する。狙い澄まされた1弾が甲羅外の脚を撃ち抜く。かなりのダメージのはずだがこのままでは時間がかかりすぎる。
緑の瞳を半秒だけ斜め横に向け、アバルトは決断した。
「10秒!」
バルバロスが負傷を感じさせない動きで前進した。前進の筋肉が怒張し、雑魔の前脚に組み付き、大地を揺るがす咆哮と共に抱え上げる。
それはせいぜい1、2秒の間の出来事だった。
雑魔が身をよじってバルバロスを跳ね飛ばし、前脚を再び街道につけるより早く、旭が戦場に再突入した。
「勝負だッ!」
馬上で槍を真っ直ぐに構える。
鋭さはあっても甲羅を射貫くには足らない。足らない分はサラダのパワーと重さ、なにより旭自身のマテリアルで補う。
穂先はただただ真っ直ぐに、何より速く進み続け、バルバロスによって晒された腹に吸い込まれていった。
「わははっ、痛ぇっ」
旭の手に、複数の内蔵を潰した感触と甲羅の内側にぶつかった衝撃が届いた。
雑魔の片足から力が抜けて横転、半壊した腹をハンターの目にさらす。
銃弾が穴を穿ち、斧が腹の表面の砕き、穂先が核を潰すまで十秒もかからなかった。
●
旭達が戦闘に突入する十数秒前、1人のハンターが馬から下りるところだった。
Luegner(ka1934)が音もなく土の上に降りると、移動のため結っていた髪が解けて揺れた。
「お疲れ様です」
借り物の馬を軽く撫でて労ってから、そっと背を押して西へ送り出す。
白い肌が淡い光で照らされる。覚醒の影響で艶のある黒髪が銀色に変わり、冬の陽光を反射しているのだ。
Luegnerは移動中の亀型雑魔3体に注意を向けたまま、片膝を落として地面を撫でた。
クリムゾンウェスト出身者ならただの穴と判断したかもしれない。しかし彼女にとっては見たことのある代物だ。
砲撃跡。質量弾としても炸裂弾としても中途半端なものと判断して威力と形を推測した。
「倒す今のうちですね。さて……おとなしくこちらに来ていただければ助かるのですが……」
長身の彼女を覆う大きさの盾を構え、必要以上には急がず雑魔との距離を詰めていく。
20歩近く歩いたとき、それまで街道を向いていた砲塔3つが回転を始めた。
Luegnerは息を吐く。
街道を無視してよいならいくらでもやりようがある。だがインフラを守るためには危険をおかして雑魔を引きつけるしかない。
盾の脇から手を伸ばす。
アサルトライフルに比べると玩具のように小さな拳銃を構え、引き金を静かに撫でた。
剥き出しの足に次々命中する。最悪3体全てを相手にするつもりで撃ったのに、Luegnerの銃撃に気づいたのは2体だけ、Luegnerに向き直ったのは1体だけだった。
その1体の砲塔が点に見えた。Luegnerが回避ではなく盾による防御を覚悟した瞬間、砲塔の周辺に火花が散った。
亀型雑魔が左右2本ずつの足を反対向きに動かす。超信地旋回に似た動きで向きを変え、けれどどこから撃たれた分からず回り続ける。
鬼ごっこの際歌われる童謡が聞こえる。
声は若く、なのに響きは深山の底の見えない泉のよう。
砲塔が人の気配のある岩を向く寸前、岩陰からリーゼロッテ=御剣(ka3558)が飛び出した。
停止すれば地面に届くほど長い髪がほぼ水平だ。砲弾が撃ち出され岩が砕け無数の破片が飛び散りはしても、リーゼロッテの肌に傷一つつけることもできなかった。
「私も歳には勝てないって事かしら」
世の奥様方に聞かれると白手袋投擲が確実な言葉を口にし、着弾時の煙でほんの少しだけ汚れた拳銃を構える。
もちろん動きは止めていないので、砲塔内が空の雑魔がリーゼロッテの後をひたすら追う展開になる。
雑魔の選ぶ進路は余りに単純過ぎた。Luegnerもまともな注意力のある雑魔相手には絶対にこんなことをしなかったろう。雑魔が停止すれば確実にぶつかる距離まで近づいて、進路上に飛び出すと同時に盾を用いた堅守の構えをとった。
馬鹿は急には止まれない。大きな盾にぶつかり、姿勢が安定していないので重さと力を有効に使えずLuegnerを押し倒せず、隙だらけの状態での停止を強要させられた。
「砲撃がご自慢……ですか……」
魔導拳銃を半ばまで砲口に突き込む。何をされるか察し雑魔の全身が震える。
銃声が響き、砲塔内で跳弾が連続し、奥の奥まで届いてめり込んだ。
砲塔からどす黒い煙が吹き出し拳銃と盾の表現を汚した。砲塔は千切れかねない勢いで回り続け、4脚も不規則に動き出してLuegnerから離れる。
「さぁ……お痛の時間はお終い。お仕置きされる覚悟はいいかしら?」
堅守の直後で動けないLuegnerに代わってリーゼロッテが急接近する。
頭部の口を刀で狙い、唇を全壊させるが雑魔の動きは止まらない。
銃撃の効果が薄かった甲羅は無視して手足の節目を狙い、2度目の攻撃で切断に成功する。
雑魔が残る3脚で動き続けている。ただの兵ならくじけそうな状況でも、彼女には微笑む余裕があった。
「さぁ……お痛の時間はお終い。お仕置きされる覚悟はいいかしら?」
Luegnerの銃撃が甲羅の端に当たる。甲羅ではなく至近の腹にひびが入る。
全力疾走で汗みずくの旭と愛馬が、地面から跳ね上げる動きで割れ目に穂先を直撃させ、大きな亀ごと浮かせた。
「じゃあ、ね」
100年単位で扱い慣れたようも見える動きで刀を突き込み中を解体する。リーゼロッテが刀を引き抜くまでもなく、雑魔の体全てが薄れて消えていった。
●
武神 守悟(ka3517)はいらだたしげに髪を掻いた。
舌打ちしたくなるのを馬の背中で堪える。
彼の不機嫌の原因は、馬ではなく自分の足で並走中のイーディス・ノースハイド(ka2106)だ。
自分より年下が戦場に赴くのはまだ我慢できる。それが女性だとしてもだ。だけれども、馬を危険にさらしたくないという理由で走り続けてそのまま戦場へというのは、守悟にとって受け容れがたかった。
「障害物と雑魔の相手を同時にさせるのは危険だからね」
イーディスは息も乱さず会話しながら、全身鎧をものともせずに大地に空いた亀裂を軽々と飛び越える。
着地の瞬間、非舗装の地面に深い足型が刻まれる。装甲がこすれる音もかなり目立つ。
女性らしさを失わない優美な外見でも分厚い鎧であるのは厳然たる事実。だがイーディスの体力なら使いこなせるのも歴とした現実だった。
今度は本当に舌打ちして鞍から飛び降りる。
守悟が手を振ると、西の街所属の馬は荒い息を吐きながら低速で帰路へついた。
「私達の相手はあれだな」
イーディスがわずかに進路を変更する。
向かう先は、街道に向かうか街道外で戦闘中の同属に合流するか迷ってその場で円を描いている1体だ。
「気づかないか」
真剣で、かつ余裕のある表情でつぶやく。
残り十数歩の距離まで近づいたのに反応がない。亀型雑魔の頭は予想以上に残念なようだ。
「来ないのか?」
彼女は、足下から目元までを隠していた盾を横に除けた。
そうすると、分厚い鎧を着ていても細く見える体が雑魔の目に映る。
「好き勝手しやがって」
守悟がイーディスを追い越し雑魔に迫る。
甲羅の上の砲塔が左右に動き、最終的に小さく細い少女の狙いをつけ砲弾に火をつけた。
「俺も好き勝手させてもらうぞ」
イーディスに倍する速度で距離を詰める。刀の間合いには明らかに足りない場所で利き腕を振るう。
砲塔が火を吹くより、戦闘用ワイヤーが砲塔に絡みつく方がほんの少しだけ早かった。
守悟の奥歯が軋む。発射の衝撃がワイヤー越しに伝わってきて、腕、肩の骨を痛めつけたのだ。
「我が身の未熟を痛感するよ」
守悟が狙いを甘くしてくれても避けきれない。
だからイーディスは、盾が最も分厚くなる角度で砲弾を受け、衝撃を無理なく手から足、足から地面へ受け流した。受けた傷は軽症未満。実に見事な防御だった。
守悟の逞しいからだが華麗に宙を舞う。
半秒後、重さと固さだけは凄い亀が守悟のいた場所を通過した。
亀型雑魔は守悟しか目に入っていないようで、イーディスを無視してひたすら彼を追う。
守悟は、わざと雑魔と同程度の速度しか出さなかった。
戦場を街道外に止めるのも勝利条件の1つであるし、増援が届くまで耐えれば確実に勝てるからだ。
もっともただ待つようなぬるい真似はしない。
「防御は任されよ」
イーディスが雑魔に接近する。
守悟が眉をしかめて数歩後退する。
亀型雑魔は己の半分以下の重さの彼女を跳ね飛ばそうと突進し、止まった。
イーディスが不敵に微笑む。
盾の陰で地面に突き刺して無理矢理その場に留まっているが、雑魔相手に水面下の努力を晒すつもりはない。
「ったく」
守悟が甲羅と密着できる距離まで接近し凝視する。
甲羅で覆われていない脚と首も、ワイヤー程度ではどうしようもない固さを誇っている。
「手柄を譲られるたぁな」
黒鞘から不知火を抜き、角度を調整し、亀の首と甲羅の間から差し込んだ。
雑魔は恐慌状態に陥り逃げようと力を入れる。イーディスが眉をしかめ、大地にひび割れが生じる。が、それ以上のことは起きなかった。
刃がするりと中に入る。
激しく抵抗する筋をすぱりと裂いて、形のない核を押しつぶす。亀は、これまでの抵抗から想像できないほどあっさりと消えるのだった。
●
雑魔計4体のうち3体をハンター7人が抑えた訳で、当然1対1の戦いが1組発生する。
ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)は利き手にワンドを、もう一方の手に手綱を持って、地面に潜む穴と岩とさらに雑魔まで相手にしていた。
石つぶてが亀の頭に直撃する。
固めを隠すほど腫れ上がりはしても、雑魔の動きに全く変化がなかった。
「たちが悪いですね……」
火、水、地属性術を全種当てた。
1つくらいは大きく効いてもいいはずなのに、よりにもよって属性に偏りがないらしい。
雑魔の砲塔に動きがあった。
同属3体の危機に気付き、4脚を巧みに操り滑るような動きで増援に向かおうとした。
が、速度が十分上がる前に騎乗するラシュディアに遮られる。
「さすがに……」
肩から背中が猛烈に痛む。雑魔を食い止めるのと馬の脚を潰されないよう防ぐのを同時に行うため、我が身を盾にするしかなかった。
砲口がラシュディアに向く。
指向完了から発砲まで1秒を切っていた。
馬が無理なく横へ跳ぶ。それはラシュディアが予め指示していた動きで、当たれば主と一緒に死ぬことになったかもしれない砲弾が、主のローブをかすめて遠くへ消えた。
「はっ」
口元に浮かぶ笑みは嘲笑に限りなく近かった。
雑魔は増援を諦めラシュディアに向き直る。刺し違えるつもりで馬の進路を予想し急進する。予測が甘すぎてラシュディアが選んだ進路を読み切れず何もない場所を虚しく行きすぎる。
ラシュディアは好機に見えるタイミングには普通の攻撃しかせず、雑魔の戦線離脱の動きのみ潰し続けた。
「すまぬ。遅くなった」
そして、 アサルトライフルの射程にアバルトが、ひと駆けすれば斧の距離に最低限自己治癒したバルバロスが現れた。
「私は退路を塞ぎます」
ラシュディアの瞳にはヴォイド必滅の意思だけがあった。
「む。……承知した」
アバルトは痛ましげに目を伏せ、次の瞬間には冷静な武人の顔に戻る。
他の雑魔を倒したハンターも集まり、雑魔は7対1で瞬きする間に殲滅された。
街道補修費は領主の予想の半額程度で済みはしたが、馬が何頭も人手に渡ることになったらしい。
依頼結果
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相談 バルバロス(ka2119) ドワーフ|75才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/12/27 19:26:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/25 00:35:53 |