ゲスト
(ka0000)
ゴブリンがバカンス
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/24 12:00
- 完成日
- 2018/08/26 15:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●楽しい海のはずが……
例年海水浴客で賑わう砂浜は、ゴブリンの群れに襲撃されていた。
逃げ惑う海水浴客を、ゴブリンたちが追い掛け回す。
しかし、このゴブリンたち、姿が少し普通ではなかった。
着ているものはブーメランパンツ型の水着のみ。
手に持つ武装はどこから手に入れてきたのかスイカ、木の棒、浮き輪、ビーチバレーのボール、パラソルにチェアなどどう見てもサマーレジャーを楽しむためのソレばかり。
それでも特に戦闘訓練を積んでいるわけでもない一般人とゴブリンとでは身体能力差はいかんともし難く、人間の海水浴客は全てビーチから追い払われてしまった。
武装がアレだからか、それとも遊びにきた建前ゴブリン側としても血を見るのは嫌なのか、人間側に多少の怪我人こそ出たものの全て軽傷で、重篤な怪我人や死人は皆無だったのが救いだ。
無人になったビーチでゴブリンたちが騒ぐ。
「コノスナハマハ、オレタチガセンキョシタ! カイスイヨクジョウ、オレタチノモノ!」
「ゴブリンダッテバカンスシタイ! アソブケンリアル!」
「ニンゲンバカリ、ヒトリジメズルイ!」
「リッパナカイスイジョクジョウ、ツカワセロ!」
「ソーダソーダ!」
「ニンゲン、カエレ!」
騒ぎ立てながらバカンスの準備をするゴブリンたち。
そのうちの一人が残された海の家が無人になっていることに気付き憤慨した。
「ウミノイエ、エイギョウシテナイ! シゴトシロ!」
その海の家の店員も一緒くたにゴブリンたちが追い払っていたのだが、彼らは気付いていなかった。
知能があるとはいっても、やはりゴブリンはゴブリン。一部の例外を除けば、お馬鹿さんばかりだった。
●ハンターズソサエティ
依頼を持ってきた受付嬢ジェーン・ドゥの第一声は少しおかしかった。
「事件です。……いえ、事件なのでしょうか? これ」
普段なら断言する彼女が、珍しく言い淀んでいる。
それでも斡旋にやってきたからには、緊急性が高いか人気がなく面倒くさい依頼のどちらかであるのは明白だ。
可能性としては、その複合という場合もある。
ハンターズソサエティに集まったハンターたちに対して、ジェーンが依頼の説明を始めた。
「とある海水浴場が、白昼堂々ゴブリンたちに襲撃され占拠されました。……ですが、当のゴブリンたちにも殺意はないようで、彼らは海水浴場にいた人間を追い出し、自らがバカンスを楽しんでいます。……個人的には、ゴブリンがバカンスを楽しむのは一向に構わないと思いますが、その方法が問題です。彼らが海水浴場を不当占拠したことで、海水浴場の管理者からハンターズソサエティに奪還依頼が入っています。それと、これは依頼人である管理者がつけた注文なのですが、そのまま伝えます。『ゴブリンとて客としてルールを守ってくれるなら来るのは構わないので、和解が可能で平和的解決ができるならそれが一番いい。なるべく海水浴場を血で汚さないで欲しい。相手がゴブリンで、汚れ自体は洗えばいいとはいえ、海水浴場管理者としてこれ以上の血生臭い殺生沙汰は御免被る』だそうです。引き受ける場合は依頼人の注文を出来る限り尊重するようにしてください。それでは、皆様のご参加をお待ちしております」
ジェーンは最後に一礼し、話を締め括った。
例年海水浴客で賑わう砂浜は、ゴブリンの群れに襲撃されていた。
逃げ惑う海水浴客を、ゴブリンたちが追い掛け回す。
しかし、このゴブリンたち、姿が少し普通ではなかった。
着ているものはブーメランパンツ型の水着のみ。
手に持つ武装はどこから手に入れてきたのかスイカ、木の棒、浮き輪、ビーチバレーのボール、パラソルにチェアなどどう見てもサマーレジャーを楽しむためのソレばかり。
それでも特に戦闘訓練を積んでいるわけでもない一般人とゴブリンとでは身体能力差はいかんともし難く、人間の海水浴客は全てビーチから追い払われてしまった。
武装がアレだからか、それとも遊びにきた建前ゴブリン側としても血を見るのは嫌なのか、人間側に多少の怪我人こそ出たものの全て軽傷で、重篤な怪我人や死人は皆無だったのが救いだ。
無人になったビーチでゴブリンたちが騒ぐ。
「コノスナハマハ、オレタチガセンキョシタ! カイスイヨクジョウ、オレタチノモノ!」
「ゴブリンダッテバカンスシタイ! アソブケンリアル!」
「ニンゲンバカリ、ヒトリジメズルイ!」
「リッパナカイスイジョクジョウ、ツカワセロ!」
「ソーダソーダ!」
「ニンゲン、カエレ!」
騒ぎ立てながらバカンスの準備をするゴブリンたち。
そのうちの一人が残された海の家が無人になっていることに気付き憤慨した。
「ウミノイエ、エイギョウシテナイ! シゴトシロ!」
その海の家の店員も一緒くたにゴブリンたちが追い払っていたのだが、彼らは気付いていなかった。
知能があるとはいっても、やはりゴブリンはゴブリン。一部の例外を除けば、お馬鹿さんばかりだった。
●ハンターズソサエティ
依頼を持ってきた受付嬢ジェーン・ドゥの第一声は少しおかしかった。
「事件です。……いえ、事件なのでしょうか? これ」
普段なら断言する彼女が、珍しく言い淀んでいる。
それでも斡旋にやってきたからには、緊急性が高いか人気がなく面倒くさい依頼のどちらかであるのは明白だ。
可能性としては、その複合という場合もある。
ハンターズソサエティに集まったハンターたちに対して、ジェーンが依頼の説明を始めた。
「とある海水浴場が、白昼堂々ゴブリンたちに襲撃され占拠されました。……ですが、当のゴブリンたちにも殺意はないようで、彼らは海水浴場にいた人間を追い出し、自らがバカンスを楽しんでいます。……個人的には、ゴブリンがバカンスを楽しむのは一向に構わないと思いますが、その方法が問題です。彼らが海水浴場を不当占拠したことで、海水浴場の管理者からハンターズソサエティに奪還依頼が入っています。それと、これは依頼人である管理者がつけた注文なのですが、そのまま伝えます。『ゴブリンとて客としてルールを守ってくれるなら来るのは構わないので、和解が可能で平和的解決ができるならそれが一番いい。なるべく海水浴場を血で汚さないで欲しい。相手がゴブリンで、汚れ自体は洗えばいいとはいえ、海水浴場管理者としてこれ以上の血生臭い殺生沙汰は御免被る』だそうです。引き受ける場合は依頼人の注文を出来る限り尊重するようにしてください。それでは、皆様のご参加をお待ちしております」
ジェーンは最後に一礼し、話を締め括った。
リプレイ本文
●依頼開始
照りつける日差し、打ち寄せる潮騒の音。
そんな中で、人間たちを追い出しバカンスを楽しもうとするゴブリンたち。
依頼を受けたハンターたちは、そんな光景を想像し思い思いの反応をする。
(ゴブリンだろうと何だろうと、遊びたいものは遊びたいよね。でも、他の人を追いだしたりされちゃ、とっても迷惑だよ!)
夢路 まよい(ka1328)は遊んであげれば、満足して言うこと聞いてくれたりするかなあ? などと思いながら、準備をする。
(……なんてーか妙なゴブリンもいるんだな。ま、俺らには関係ねーや。な、イルミナ……ってなんでさらっと依頼受けてんのこの娘!)
お前、エルフのくせにゴブリンと仲良くしたいの? と偏見気味な問いを己の恋人に投げかけるコウ(ka3233)だった。
「……は? ゴブリンと仲良くしたい訳ないじゃない。浜辺をのさばっているゴブリンを掃除したいだけよ」
コウに答えながらも、イルミナ(ka5759)は倒すな……ですって? 依頼人の希望? ああもう……! と心中で苛立ちと戸惑いが渦巻いている。
(ゴブリンと平和的に、か……全く無茶を言う……。が、まあ依頼人の要望とあらば仕方あるまい。しかし普通の話し合いで上手くいくのか)
そうなら自分たちを雇う必要もないと思いながらも、レイア・アローネ(ka4082)は友人に選んでもらった赤のビキニを着ていくことにした。
(バーベキューセットを持ち込んで焼こうかな。場所はパラソル傍とか? ゴブリンが寄って来たら「食べる?」とか誘ってみる?)
普段はなさそうなシチュエーションに、イヴ(ka6763)はワクワクしながら準備をしていた。
それらの一方で、現場のビーチでは既に。
「ビーチで遊ぼうと思ったら既に予想外の先客がいたんだよ」
狐中・小鳥(ka5484)が、ビーチで遊べると来てみたらゴブリンと一緒になったことに一筋汗を垂らしながらも、向こうも装備的に遊ぶ気満々のようなので勝負ついでに遊べばいいか、と白スク水着姿で思っていた。
さあ、依頼の始まりだ!
●サマーバケーションはゴブリンと勝負
ハンターたちとゴブリンたちは戦闘体勢に入る。
しかしどちらも格好が思い切りバカンス仕様なので、いまいち締まらず、スイカ割りとビーチバレーで勝負する流れになった。
スイカ割りに参加するのはまよいとイルミナの二人で、ビーチバレーに参加するのがコウ、レイア、小鳥、イルミナの四人である。
イヴはどちらにも入っていない。バーベキューセットを持ち込んで我が道を行っている。
合計七名になってしまうが、イルミナがどちらも参加するためなので問題ない。
こうして、ゴブリンたちとのバカンスは幕を開けた。
一斉掃射ですっきりさせた方が簡単なのにと未だに思っているイルミナは、既に銃も没収されている状況だった。
ゴブリンに対して嫌悪感が強い彼女だけは、やると書いて殺すと読む気配を見せていたので、仕方ない処置である。
「コウまで何よ、あなたあいつらの味方? ふーん、私からゴブリンを庇うの? へー?」
イラついて八つ当たり気味なイルミナは、コウに宥められて渋々皆の方針を受け入れ、ひとまず先にスイカ割りの方に行くことにした。
スイカ割りは前に一度やったことがある。目隠しして棒でスイカを叩き割るのだ。いつも目で狙撃しているため目隠しは慣れない。それでも、イルミナには負けられない理由があった。
もちろん、ビーチの所有権もある。
それ以上に、ゴブリンなんかにバカにされるのが許せなかったのだ。
しかし振り下ろした棒は空を切り、スイカに掠りもしなかった。
まずはハンター側の一敗。
「私が勝ったら大人しくマナーを守って遊ぶこと! さあ、勝負だよ!」
「ナラ、オレタチカッタラバカンスノジャマスルナ!」
そしてまよいとゴブリンが睨み合う。
負けたときの条件はよほど変なものであればまよいとて拒否しただろうが、向こうが負けたときの条件と同等くらいだったのでまよいは受けて立った。
ゴブリンたちに対し、遊び勝負をしかける。種目はスイカ割りだ。
しかしそのゴブリンはスイカ割りのルールを理解していなかった。
スイカを砂浜に設置するのではなく、まよいに向けて投げつけてきたのだ。
投げられたスイカは放物線を描いて飛ぶ。
対するまよいは棒きれを野球のバットのようにスイングして、スイカに当てた。
スイカが真っ二つに割れる。
「オイオマエラ、ソレ、アソビカタチガウゾ」
「まあ、細かいこと気にした方が負けだよ!」
「ソウダソウダ!」
勝負を通して何故か意気投合するまよいとゴブリンに、もう一人のゴブリンは、スイカ割りってそういう遊びじゃないとでもいいたげな顔になっていたが、とにかくハンター側が二連敗を阻止し一勝した。
スイカ割り勝負は同点となり、決着はビーチバレーに持ち越された。
試合中、イヴはパラソル傍でバーベキューを先に食べて毒が入ってないことをアピールしていた。
ただし、ししとうは天然のロシアンルーレットである。
匂いに誘われたゴブリン二匹が近付いてくる。
「お肉はオレガノで香り付けがエルフ流だよ? 君たちはどうやって食べるの?」
ゴブリン二匹は話しかけられて戸惑うように顔を見合わせる。
「辛いのあたった! ひー、これはキッツい!! お水! お水ちょうだい!」
自分で焼いたししとうに自分で当たったらしく、イヴは悲鳴を上げた。
恐る恐るバーベキューに手をつけ、イヴが何もしないことを確認すると、ゴブリンたちはイヴと一緒に夢中になって食べ始めた。
デザートはフルーツと練乳たっぷりのかき氷である。
ゴブリン二匹に配り、イヴが早食い対決を提案する。
当たり前だが全員頭がキーンとして悶絶し、それどころではなくなったので、無効試合になった。
フードファイトは正直ゴブリンといい勝負なイヴだったが、本気で楽しみながらも、ゴブリンと打ち解けて話を聞いてもらう下地を作ることに成功した。
そして、舞台はビーチバレーに移る。
元からいた二匹に加え、浮き輪をつけて海で遊んでいたゴブリンたちも合流していた。
「せっかくだから私達と勝負……というか遊んで貰うんだよ♪ 負けたら勝った方の言う事を聞くという事で♪」
「ナラオレタチカッタラデテイケ!」
細かいルールを定めてもあまり意味がなさそうなので、同人数で勝負しボールを落とすと相手に得点。一定の点数を取った方が勝ちということにした。
相方はレイアだ。
イヴと一緒にパラソルを立てるのを手伝ったり、まよいと一緒にシートを敷いてスイカ割りの準備を行ったりと地味に色々動いていたレイアは、そのおかげでそこそこゴブリンたちに心を許されていた。
「遊びは賑やかなほど楽しいぞ。お前達は人間が海を独り占めしているといったな。ならばお前達は海を独り占めはしないだろう?」
このセリフは見事ゴブリンたちの反論を封じた。
レイアとしては遠泳も考えていたが、これを本気でやると大差がついた場合ゴブリンたちがキツいだけなので、ビーチバレーである。
勝負事でムキになって流血沙汰になっては元も子もないため、レイアは上手く手を抜きつつ接戦を楽しんで貰うつもりだった。
勿論勝つ気ではいるが。
しかし手加減を忘れるほど勝負は白熱した。
「遊びとはいえ勝負である以上、全力で勝ちに行くんだよ!」
小鳥がレイアとのコンビネーションやビーチバレーのコートを利用した立体的な動きでゴブリンたちを翻弄しながら動きつつボールを取り、上げたトスをレイアが力強いスパイクでゴブリンのコートに打ち込めば、二回目はもうそれは見たぞとばかりに見事ゴブリンたちがブロックを成功させてきたのだ。
大きく息を吸い込み、マテリアルを丹田から全身に巡らせ、鋭い一撃を放つ備えとすることで、鋭く力強いサーブを撃ち込み、小鳥がサービスエースを取ったのもつかの間。
ゴブリンたちのサーブになると技術も何もない力任せのサーブが偶然際どいコースに突き刺さり、サービスエースを返される。
ボールは滑り込んででも取るつもりで動き回る小鳥だったが、ゴブリンたちは運に恵まれているようで、ここぞという時にファインプレーを出されて押し切れない。
それでも動き回る事なら負けない自信があった小鳥は、アイドル見習いとして鍛えた足腰を信じコート内を走り回る。
そして、長いサドンデスの末、レイアのスパイクがレシーブをしようとしたゴブリンごと吹き飛ばしてコートに突き刺さり、ビーチバレー一戦目はレイア・小鳥チームの勝利となった。
これで、ハンター側の二勝である。
同時刻に、コウとイルミナも試合を行っていた。
正直面倒なことにしかならない気がするが、そこは惚れた弱み。
コウは仕方ないからイルミナの面倒は見ないとな、と決意していた。
血なまぐさいことを考えていそうなイルミナからは銃を取り上げ済みだ。
そのせいで、スイカ割りから戻りこうして同じコートにいるイルミナからはコウに対し物いいたげな気配が漂っているのだが。
「っていうかその水着大胆過ぎないか……? いやいつも大胆だけど……。前褒めてくれたから……? ……ったく……」
「オマエライチャツクナ! イイカゲンニシロ!」
「リアジュウバクハツシテシマエ!」
照れるコウを見て、ゴブリンたちは怒り狂っている。
これ以上怒らせても仕方がないので、コウとイルミナはさっさとゴブリンが希望しているらしいビーチバレーの準備を始めた。
遊んでやる代わりに自分たち以外の人間に絡むなよと思いつつも、コウはゴブリンたちがルールを理解しているか少し疑問だった。
何か起きそうならすぐ止めたり仲裁できるように、ゴブリンとイルミナ双方の様子を監視する。
とりあえず勝った方の言う事を聞くということにし、最低限のルールとしてビーチバレーのボール以外で殴ったり投げたりするのは反則だということを、根気強くゴブリンとイルミナに説明した。
コウは不満は食べ物でも奢って消そうと、今もカキ氷を用意しているイヴをちらりと見た。
しかし、試合のゴブリンは驚くほどフェアで上手かった。
もしかしたら、普通に戦うより強いのではないか思うくらいに。
ストライダーとしての足の速さを生かしてゴブリンチームの攻撃を受け、トスを上げてイルミナに打たせるつもりで、コウはゴブリンたちの攻撃を待ち構えたのだが、自分が防御、イルミナが攻撃と役割分担を徹底し、楽しむつもりだったコウは、だからこそ鋭く自分たちのコートに突き刺さったゴブリンのスパイクに不意を打たれた。
完全に調子を崩されたコウは、そこから連続で失点を重ねてしまった。
焦るコウに、イルミナの声が飛ぶ。
「コウ、いくわよ。完膚なきまでに叩きのめして、あいつらに浜辺はふさわしくないって分からせてやるの……! だからシャキッとしなさい! それでも私の(……)なの!?」
一番大事な場面は聞き取れないほど物凄く小声だったが、真っ赤な顔で叱咤するイルミナのおかげでコウは立ち直った。
直後にイルミナがスパイクを思い切り空振り、ムキになったせいでシリアスだった場面が一気にコメディっぽくなり、雰囲気がいい意味で弛緩したせいもあるが。
「……ああ! 俺たちのコンビプレー、共同作業を見せてやろうぜ!」
それからはゴブリンに全くチャンスを与えず、コウとイルミナのコンビはそれ以上失点を重ねずに試合に勝ち切った。
●ハンターとゴブリンたち
無事、試合を通じて和解できたと呼べる関係になったハンターとゴブリンたちは、割ったスイカやイヴが用意したバーベキューやデザートを皆で一緒に食べながら、具体的な取り決めを行った。
まず、砂浜の使用権は人間が七、ゴブリンは三とし、危害を加えないことは最前提で、これはお互い絶対に遵守すること。
その上で、ゴブリンでも遊ぶのは構わないことと、ここのオーナーはゴブリンもお客として歓迎してくれていることを説明し、続いてしてはいけないことをゴブリンたちに言い聞かせる。
一般客を追い出して独占は禁止。
暴力や犯罪は全面的に禁止。
ビーチを汚すのも禁止。ゴミは持ち帰って掃除もしていく。来たときよりも美しく。
これらのルールは人もゴブリンも同じだ。
ゴブリンたちはいつも人間に退治されているから思うところがあるかもしれないが、人がいけない事をした場合でも相応の罰があって平等に扱われているのだから、こればかりは納得してもらうしかない。
一部、機嫌悪そうに唇をとがらせている女エルフもいたが、年下の恋人に宥められまんざらでもなくなり、最終的には皆の決定に反対しなかった。
「タノシカッタ! マタヤリタイ!」
「オマエタチ、ツギハイツクル!? ソノトキニマタアオウ!」
一日たっぷり楽しんだゴブリンたちは、すっかりハンターたちに感化され砂浜のゴミ拾いまでして帰っていった。
それからこのビーチは、ゴブリンたちが時折バカンスに訪れるビーチとして、有名になったそうな。
照りつける日差し、打ち寄せる潮騒の音。
そんな中で、人間たちを追い出しバカンスを楽しもうとするゴブリンたち。
依頼を受けたハンターたちは、そんな光景を想像し思い思いの反応をする。
(ゴブリンだろうと何だろうと、遊びたいものは遊びたいよね。でも、他の人を追いだしたりされちゃ、とっても迷惑だよ!)
夢路 まよい(ka1328)は遊んであげれば、満足して言うこと聞いてくれたりするかなあ? などと思いながら、準備をする。
(……なんてーか妙なゴブリンもいるんだな。ま、俺らには関係ねーや。な、イルミナ……ってなんでさらっと依頼受けてんのこの娘!)
お前、エルフのくせにゴブリンと仲良くしたいの? と偏見気味な問いを己の恋人に投げかけるコウ(ka3233)だった。
「……は? ゴブリンと仲良くしたい訳ないじゃない。浜辺をのさばっているゴブリンを掃除したいだけよ」
コウに答えながらも、イルミナ(ka5759)は倒すな……ですって? 依頼人の希望? ああもう……! と心中で苛立ちと戸惑いが渦巻いている。
(ゴブリンと平和的に、か……全く無茶を言う……。が、まあ依頼人の要望とあらば仕方あるまい。しかし普通の話し合いで上手くいくのか)
そうなら自分たちを雇う必要もないと思いながらも、レイア・アローネ(ka4082)は友人に選んでもらった赤のビキニを着ていくことにした。
(バーベキューセットを持ち込んで焼こうかな。場所はパラソル傍とか? ゴブリンが寄って来たら「食べる?」とか誘ってみる?)
普段はなさそうなシチュエーションに、イヴ(ka6763)はワクワクしながら準備をしていた。
それらの一方で、現場のビーチでは既に。
「ビーチで遊ぼうと思ったら既に予想外の先客がいたんだよ」
狐中・小鳥(ka5484)が、ビーチで遊べると来てみたらゴブリンと一緒になったことに一筋汗を垂らしながらも、向こうも装備的に遊ぶ気満々のようなので勝負ついでに遊べばいいか、と白スク水着姿で思っていた。
さあ、依頼の始まりだ!
●サマーバケーションはゴブリンと勝負
ハンターたちとゴブリンたちは戦闘体勢に入る。
しかしどちらも格好が思い切りバカンス仕様なので、いまいち締まらず、スイカ割りとビーチバレーで勝負する流れになった。
スイカ割りに参加するのはまよいとイルミナの二人で、ビーチバレーに参加するのがコウ、レイア、小鳥、イルミナの四人である。
イヴはどちらにも入っていない。バーベキューセットを持ち込んで我が道を行っている。
合計七名になってしまうが、イルミナがどちらも参加するためなので問題ない。
こうして、ゴブリンたちとのバカンスは幕を開けた。
一斉掃射ですっきりさせた方が簡単なのにと未だに思っているイルミナは、既に銃も没収されている状況だった。
ゴブリンに対して嫌悪感が強い彼女だけは、やると書いて殺すと読む気配を見せていたので、仕方ない処置である。
「コウまで何よ、あなたあいつらの味方? ふーん、私からゴブリンを庇うの? へー?」
イラついて八つ当たり気味なイルミナは、コウに宥められて渋々皆の方針を受け入れ、ひとまず先にスイカ割りの方に行くことにした。
スイカ割りは前に一度やったことがある。目隠しして棒でスイカを叩き割るのだ。いつも目で狙撃しているため目隠しは慣れない。それでも、イルミナには負けられない理由があった。
もちろん、ビーチの所有権もある。
それ以上に、ゴブリンなんかにバカにされるのが許せなかったのだ。
しかし振り下ろした棒は空を切り、スイカに掠りもしなかった。
まずはハンター側の一敗。
「私が勝ったら大人しくマナーを守って遊ぶこと! さあ、勝負だよ!」
「ナラ、オレタチカッタラバカンスノジャマスルナ!」
そしてまよいとゴブリンが睨み合う。
負けたときの条件はよほど変なものであればまよいとて拒否しただろうが、向こうが負けたときの条件と同等くらいだったのでまよいは受けて立った。
ゴブリンたちに対し、遊び勝負をしかける。種目はスイカ割りだ。
しかしそのゴブリンはスイカ割りのルールを理解していなかった。
スイカを砂浜に設置するのではなく、まよいに向けて投げつけてきたのだ。
投げられたスイカは放物線を描いて飛ぶ。
対するまよいは棒きれを野球のバットのようにスイングして、スイカに当てた。
スイカが真っ二つに割れる。
「オイオマエラ、ソレ、アソビカタチガウゾ」
「まあ、細かいこと気にした方が負けだよ!」
「ソウダソウダ!」
勝負を通して何故か意気投合するまよいとゴブリンに、もう一人のゴブリンは、スイカ割りってそういう遊びじゃないとでもいいたげな顔になっていたが、とにかくハンター側が二連敗を阻止し一勝した。
スイカ割り勝負は同点となり、決着はビーチバレーに持ち越された。
試合中、イヴはパラソル傍でバーベキューを先に食べて毒が入ってないことをアピールしていた。
ただし、ししとうは天然のロシアンルーレットである。
匂いに誘われたゴブリン二匹が近付いてくる。
「お肉はオレガノで香り付けがエルフ流だよ? 君たちはどうやって食べるの?」
ゴブリン二匹は話しかけられて戸惑うように顔を見合わせる。
「辛いのあたった! ひー、これはキッツい!! お水! お水ちょうだい!」
自分で焼いたししとうに自分で当たったらしく、イヴは悲鳴を上げた。
恐る恐るバーベキューに手をつけ、イヴが何もしないことを確認すると、ゴブリンたちはイヴと一緒に夢中になって食べ始めた。
デザートはフルーツと練乳たっぷりのかき氷である。
ゴブリン二匹に配り、イヴが早食い対決を提案する。
当たり前だが全員頭がキーンとして悶絶し、それどころではなくなったので、無効試合になった。
フードファイトは正直ゴブリンといい勝負なイヴだったが、本気で楽しみながらも、ゴブリンと打ち解けて話を聞いてもらう下地を作ることに成功した。
そして、舞台はビーチバレーに移る。
元からいた二匹に加え、浮き輪をつけて海で遊んでいたゴブリンたちも合流していた。
「せっかくだから私達と勝負……というか遊んで貰うんだよ♪ 負けたら勝った方の言う事を聞くという事で♪」
「ナラオレタチカッタラデテイケ!」
細かいルールを定めてもあまり意味がなさそうなので、同人数で勝負しボールを落とすと相手に得点。一定の点数を取った方が勝ちということにした。
相方はレイアだ。
イヴと一緒にパラソルを立てるのを手伝ったり、まよいと一緒にシートを敷いてスイカ割りの準備を行ったりと地味に色々動いていたレイアは、そのおかげでそこそこゴブリンたちに心を許されていた。
「遊びは賑やかなほど楽しいぞ。お前達は人間が海を独り占めしているといったな。ならばお前達は海を独り占めはしないだろう?」
このセリフは見事ゴブリンたちの反論を封じた。
レイアとしては遠泳も考えていたが、これを本気でやると大差がついた場合ゴブリンたちがキツいだけなので、ビーチバレーである。
勝負事でムキになって流血沙汰になっては元も子もないため、レイアは上手く手を抜きつつ接戦を楽しんで貰うつもりだった。
勿論勝つ気ではいるが。
しかし手加減を忘れるほど勝負は白熱した。
「遊びとはいえ勝負である以上、全力で勝ちに行くんだよ!」
小鳥がレイアとのコンビネーションやビーチバレーのコートを利用した立体的な動きでゴブリンたちを翻弄しながら動きつつボールを取り、上げたトスをレイアが力強いスパイクでゴブリンのコートに打ち込めば、二回目はもうそれは見たぞとばかりに見事ゴブリンたちがブロックを成功させてきたのだ。
大きく息を吸い込み、マテリアルを丹田から全身に巡らせ、鋭い一撃を放つ備えとすることで、鋭く力強いサーブを撃ち込み、小鳥がサービスエースを取ったのもつかの間。
ゴブリンたちのサーブになると技術も何もない力任せのサーブが偶然際どいコースに突き刺さり、サービスエースを返される。
ボールは滑り込んででも取るつもりで動き回る小鳥だったが、ゴブリンたちは運に恵まれているようで、ここぞという時にファインプレーを出されて押し切れない。
それでも動き回る事なら負けない自信があった小鳥は、アイドル見習いとして鍛えた足腰を信じコート内を走り回る。
そして、長いサドンデスの末、レイアのスパイクがレシーブをしようとしたゴブリンごと吹き飛ばしてコートに突き刺さり、ビーチバレー一戦目はレイア・小鳥チームの勝利となった。
これで、ハンター側の二勝である。
同時刻に、コウとイルミナも試合を行っていた。
正直面倒なことにしかならない気がするが、そこは惚れた弱み。
コウは仕方ないからイルミナの面倒は見ないとな、と決意していた。
血なまぐさいことを考えていそうなイルミナからは銃を取り上げ済みだ。
そのせいで、スイカ割りから戻りこうして同じコートにいるイルミナからはコウに対し物いいたげな気配が漂っているのだが。
「っていうかその水着大胆過ぎないか……? いやいつも大胆だけど……。前褒めてくれたから……? ……ったく……」
「オマエライチャツクナ! イイカゲンニシロ!」
「リアジュウバクハツシテシマエ!」
照れるコウを見て、ゴブリンたちは怒り狂っている。
これ以上怒らせても仕方がないので、コウとイルミナはさっさとゴブリンが希望しているらしいビーチバレーの準備を始めた。
遊んでやる代わりに自分たち以外の人間に絡むなよと思いつつも、コウはゴブリンたちがルールを理解しているか少し疑問だった。
何か起きそうならすぐ止めたり仲裁できるように、ゴブリンとイルミナ双方の様子を監視する。
とりあえず勝った方の言う事を聞くということにし、最低限のルールとしてビーチバレーのボール以外で殴ったり投げたりするのは反則だということを、根気強くゴブリンとイルミナに説明した。
コウは不満は食べ物でも奢って消そうと、今もカキ氷を用意しているイヴをちらりと見た。
しかし、試合のゴブリンは驚くほどフェアで上手かった。
もしかしたら、普通に戦うより強いのではないか思うくらいに。
ストライダーとしての足の速さを生かしてゴブリンチームの攻撃を受け、トスを上げてイルミナに打たせるつもりで、コウはゴブリンたちの攻撃を待ち構えたのだが、自分が防御、イルミナが攻撃と役割分担を徹底し、楽しむつもりだったコウは、だからこそ鋭く自分たちのコートに突き刺さったゴブリンのスパイクに不意を打たれた。
完全に調子を崩されたコウは、そこから連続で失点を重ねてしまった。
焦るコウに、イルミナの声が飛ぶ。
「コウ、いくわよ。完膚なきまでに叩きのめして、あいつらに浜辺はふさわしくないって分からせてやるの……! だからシャキッとしなさい! それでも私の(……)なの!?」
一番大事な場面は聞き取れないほど物凄く小声だったが、真っ赤な顔で叱咤するイルミナのおかげでコウは立ち直った。
直後にイルミナがスパイクを思い切り空振り、ムキになったせいでシリアスだった場面が一気にコメディっぽくなり、雰囲気がいい意味で弛緩したせいもあるが。
「……ああ! 俺たちのコンビプレー、共同作業を見せてやろうぜ!」
それからはゴブリンに全くチャンスを与えず、コウとイルミナのコンビはそれ以上失点を重ねずに試合に勝ち切った。
●ハンターとゴブリンたち
無事、試合を通じて和解できたと呼べる関係になったハンターとゴブリンたちは、割ったスイカやイヴが用意したバーベキューやデザートを皆で一緒に食べながら、具体的な取り決めを行った。
まず、砂浜の使用権は人間が七、ゴブリンは三とし、危害を加えないことは最前提で、これはお互い絶対に遵守すること。
その上で、ゴブリンでも遊ぶのは構わないことと、ここのオーナーはゴブリンもお客として歓迎してくれていることを説明し、続いてしてはいけないことをゴブリンたちに言い聞かせる。
一般客を追い出して独占は禁止。
暴力や犯罪は全面的に禁止。
ビーチを汚すのも禁止。ゴミは持ち帰って掃除もしていく。来たときよりも美しく。
これらのルールは人もゴブリンも同じだ。
ゴブリンたちはいつも人間に退治されているから思うところがあるかもしれないが、人がいけない事をした場合でも相応の罰があって平等に扱われているのだから、こればかりは納得してもらうしかない。
一部、機嫌悪そうに唇をとがらせている女エルフもいたが、年下の恋人に宥められまんざらでもなくなり、最終的には皆の決定に反対しなかった。
「タノシカッタ! マタヤリタイ!」
「オマエタチ、ツギハイツクル!? ソノトキニマタアオウ!」
一日たっぷり楽しんだゴブリンたちは、すっかりハンターたちに感化され砂浜のゴミ拾いまでして帰っていった。
それからこのビーチは、ゴブリンたちが時折バカンスに訪れるビーチとして、有名になったそうな。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 8人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓! イヴ(ka6763) エルフ|21才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/08/23 08:40:07 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/24 10:53:27 |