ゲスト
(ka0000)
水着コンテストを守れ!
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/30 12:00
- 完成日
- 2018/08/31 19:07
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●まだまだ夏は終わらない
八月終盤になっても、暑さは続いている。
蝉の鳴き声はもはや聞き飽きたくらいで、リアルブルーのようにどこにでもクーラーが設置された建物があるというわけではないクリムゾンウエストは、猛暑をどう乗り切るかが毎年の課題だ。
クリムゾンウエストでも、ゾンネンシュトラール帝国はまだマシといえるだろう。
魔導機械が発展しており、クーラーと同じような冷却機能を持つものも存在している。
当然それなりに貴重で、基本的には限られた場所にしか設置されてはいないが。
リアルブルーに比べれば快適とはいえないクリムゾンウエストでは、暑さを吹き飛ばすために街や村によっては盛んにイベントが計画され、取り行われていた。
今回とある街で行われるのもその一つだ。
ゾンネンシュトラール帝国の街なのだから他の国よりかは遥かに冷房事情に恵まれているのだが、それはそれ、これはこれ。
そうだからといってイベントを計画してはいけないなどということもなく、無事当日になりイベントは決行された。
ちなみに行われるイベントとは、水着コンテストである。
●波乱に満ちたコンテスト
水着コンテスト会場は大騒ぎになっていた。
ヒラヒラと空中を漂うヒモのようなものが、出場者に巻き付いて縛り上げ、空中に連れ去ってしまったのだ。
出場者たちは十人いたのだが、全員水着姿のまま拘束されて空中で磔のような状態にされている。
全員美人で露出度の高い水着姿のまま縛り上げられているので、とても見た目がアレだ。
「おお……眼福だなぁ」
「あんたこの事態に何言ってんのよ!」
「女の敵!」
「死ね!」
思わず拝んでしまった男が回りの女たちに袋叩きにされている。
別の男は本当は拝んだ男に同意したい気持ちでいっぱいだったが、同じ目には遭いたくなかったので口を噤んだ。
代わりに別の質問をする。
「で、何なんだアレ」
「知らないわよ! バケモノじゃないの!?」
「バケモノっていうと、歪虚か。あんな歪虚もいるんだなぁ」
「何呑気なこと言ってるのよ! あなた何とかしなさいよ! 男でしょ!」
「無茶言うな! っていうか、後ろ、後ろ!」
男が必死に女たちの背後を指差す。
物凄い形相の男に女たちが振り向くと、そこにはひらひらとした紐のような歪虚の姿が。
「きゃああああ!?」
「ちょ、どこ触ってんのよ!」
「何で女ばっかりなのよ! 男の方も狙いなさいよ!」
紐型の歪虚に連れ去られ、空中でお子様に語るには憚れるオブジェとして縛り上げられる女たちを見ながら、ぽつんと取り残された男が呟いた。
「……グッジョブ」
思わずサムズアップした男のこめかみに、縛り上げられた女たちの足から落ちたらしいサンダルがヒットした。
天罰覿面である。
八月終盤になっても、暑さは続いている。
蝉の鳴き声はもはや聞き飽きたくらいで、リアルブルーのようにどこにでもクーラーが設置された建物があるというわけではないクリムゾンウエストは、猛暑をどう乗り切るかが毎年の課題だ。
クリムゾンウエストでも、ゾンネンシュトラール帝国はまだマシといえるだろう。
魔導機械が発展しており、クーラーと同じような冷却機能を持つものも存在している。
当然それなりに貴重で、基本的には限られた場所にしか設置されてはいないが。
リアルブルーに比べれば快適とはいえないクリムゾンウエストでは、暑さを吹き飛ばすために街や村によっては盛んにイベントが計画され、取り行われていた。
今回とある街で行われるのもその一つだ。
ゾンネンシュトラール帝国の街なのだから他の国よりかは遥かに冷房事情に恵まれているのだが、それはそれ、これはこれ。
そうだからといってイベントを計画してはいけないなどということもなく、無事当日になりイベントは決行された。
ちなみに行われるイベントとは、水着コンテストである。
●波乱に満ちたコンテスト
水着コンテスト会場は大騒ぎになっていた。
ヒラヒラと空中を漂うヒモのようなものが、出場者に巻き付いて縛り上げ、空中に連れ去ってしまったのだ。
出場者たちは十人いたのだが、全員水着姿のまま拘束されて空中で磔のような状態にされている。
全員美人で露出度の高い水着姿のまま縛り上げられているので、とても見た目がアレだ。
「おお……眼福だなぁ」
「あんたこの事態に何言ってんのよ!」
「女の敵!」
「死ね!」
思わず拝んでしまった男が回りの女たちに袋叩きにされている。
別の男は本当は拝んだ男に同意したい気持ちでいっぱいだったが、同じ目には遭いたくなかったので口を噤んだ。
代わりに別の質問をする。
「で、何なんだアレ」
「知らないわよ! バケモノじゃないの!?」
「バケモノっていうと、歪虚か。あんな歪虚もいるんだなぁ」
「何呑気なこと言ってるのよ! あなた何とかしなさいよ! 男でしょ!」
「無茶言うな! っていうか、後ろ、後ろ!」
男が必死に女たちの背後を指差す。
物凄い形相の男に女たちが振り向くと、そこにはひらひらとした紐のような歪虚の姿が。
「きゃああああ!?」
「ちょ、どこ触ってんのよ!」
「何で女ばっかりなのよ! 男の方も狙いなさいよ!」
紐型の歪虚に連れ去られ、空中でお子様に語るには憚れるオブジェとして縛り上げられる女たちを見ながら、ぽつんと取り残された男が呟いた。
「……グッジョブ」
思わずサムズアップした男のこめかみに、縛り上げられた女たちの足から落ちたらしいサンダルがヒットした。
天罰覿面である。
リプレイ本文
●良い子には見せられない光景
紐型歪虚に水着コンテストの出場者たちが縛り上げられ、空中で卑猥なアレなオブジェと化している中、ハンターたちが到着した。
依頼を受けて女性の救助に来たボルディア・コンフラムス(ka0796)は、目の前の光景に唖然とした。
(……アレだな。男もバカだけど、歪虚も大概バカばっかだな)
気を取り直して、南の敵の対処に向かう。
「女たちは俺たちが救助するからよ。お前らはクッションになるものでも探して落下地点に行ってくれ。シーツとかでもいいから」
居合わせた男性客にはシーツか何かを用意し、落下した女性客を受け止めるようお願いをしておく。
「お~、水着の女の人が紐で縛られてる? そういうの、男の人たちは喜ぶのかな」
会場の北に向かって、捕まった女性たちの解放を目指すことに決めた夢路 まよい(ka1328)に、縛り上げられている女性のサンダルが頭にヒットした男性客が冗談交じりに君が縛り上げられてもおじさん喜ぶぞとはやし立てた。懲りない男である。
「私? ん~、お気に入りの人の前ならともかく、遠慮しとく。その辺の男の人に無駄に喜んで貰っても仕方ないし」
西に向かいながら縛られた人質を撮影しつつ、神楽(ka2032)のテンションは振り切れていた。
「グッジョブ、歪虚っす! じゃない、歪虚め、許さんっす」
ついでのように付け足された歪虚への憤りは物凄く棒読みだ。
神楽が撮影に使っている魔導カメラは性能的には普通のものと変わりないが特注で、フレームは最高級の物に変更され、更に豪華なオプションや装飾品がゴテゴテとくっつけられている。
暑いので露出度がかなり高いエルバッハ・リオン(ka2434)だが、他者の視線はまったく気にしていない。
「分散して行動するか、全員で行動するか。……分かれるなら、まずは東からにしましょうか」
エルバッハは神楽に前衛を頼むつもりで、台詞もちゃんと考えていた。内容はこうだ。
『後でお礼に『マッサージ』をさせてもらいます。その際に偶々触れたとしても、私は気にしませんから』
しかし、神楽は既に西へ向かっている。頼み損ねた。現実は非情である。
サクラ・エルフリード(ka2598)も水着のような姿だが参加者ではない。
まよいと一緒に北側の対応を行う事になった。
「何か騒ぎがしていると来てみれば……」
男性客がサクラへ参加したかったのか、そのためにそんな格好なのかと尋ねてきた。
「え、いえ、私は参加者ではなくただの通りすがりです……。参加したくてこの格好をしているわけでもないです……」
飛行魔法を武器に付与してもらい、まよいとともに空へ向かうサクラだった。
「俺はコウだ。よろしく頼む。……なんでこんな事になってんだろうなあ……?」
ハンター仲間たちに自己紹介をしながら、コウ(ka3233)はイルミナも水着コンテストに出れば良かったのにと内心思っていた。
他の男には見せたくないが、同時に自慢したい複雑な男心である。
そんなコウをじとっと釘を刺すようにイルミナ(ka5759)は見ていた。
「水着コンテスト? 人間って暇ね。そんなもの見て楽しいのかしら……ねえ、コウ?」
(いつも水着みたいなもんだろというのは怒るから黙ってよう)
コウの内心には気付いていないようで、イルミナはコウから視線を外し、空中で縛られアレなオブジェと化した女たちを見上げる。
正確には、女たちを縛っているものを。
「あれは……歪虚? よりにもよって人が集まってる最中に……っ!! 私が狙撃で動きを鈍らせるわ。人質がいるから落とす訳にはいかない……」
コウとイルミナは、二人一緒に駆け出した。
「水着コンテストか……平和だ……。私に面白半分に参加を勧めてくる悪友もいないしな……」
平和を噛み締めているかのような顔でレイア・アローネ(ka4082)は一人ごちる。
「と思ったら歪虚か……! み、水着の女を襲う歪虚!? ……最近各方面でこんなの増えてないか……?」
レイアは西側の救助に向かうことにした。
何故か分担が決まった時、他の仲間達から驚いた顔をされたような気がしたが、たぶんレイアの気のせいだろう。
さあ、戦いの始まりだ!
●北の戦い
空を飛んで空中に連れ去られた女性に近づいたまよいは、サクラに護衛してもらいながらまずは引っ張って地上に下ろそうと試みる。
「女性を狙って空中拘束させる雑魔とは……変態というかマニアックな雑魔ですよね……」
サクラの呟きを聞きながら作業を続け、女性を解放しても地面に激突しないくらい降ろせたので、まよいは次に幻想的な歌と舞踊を、電光楽器の伴奏付きで奏でる。
「穢れし魂 もたらす災禍 精霊の加護にて 幻のものとせん」
澄んだまよいの歌声が響き、その身を蝕む災厄から身を護る力を引き出した。
縛られるがままだった女性たちが、締め付けに対して身を捩り、抵抗を始める。
サクラが続いて女性たちに対し魔法で援護を行う。
光が対象の全身を覆い、煌めきながら女性の不調を癒すと、歪虚の締め付けがついに解けた。
「出来る限り迎撃はしますので、救助の方は任せます……。早急に助けてあげてください……」
下で待ち構える男たちが、落ちる女性を受け止めて安全圏まで避難させていく。
女性を追いかけようとした紐型歪虚たちは、今からでは追いつかないことを悟ったかまよいとサクラに対象を変え襲い掛かってきた。
それに対しまよいはとサクラはフォーメションを組み、歪虚たちを迎え撃つ。
前衛のサクラは奮戦した。
魔法で黒い塊をいくつも放ち、紐型歪虚を牽制する。
しかし、コンテスト用に空中に張られた飾り付きワイヤーが邪魔でうまく距離が取れず接近を許してしまった。
剣で斬り払おうとするサクラだが、紐型歪虚はサクラに巻き付き、アレな格好に縛り上げようとしてくる。
そこへ、まよいの歌が聞こえてきた。
振りかかる災いを、幻のごとく葬り去る歌が。
紐型歪虚を振り解いたサクラは、断固たる意志を示し自身の周囲に不可視の境界を作り上げる。
その後押しを受けてかは分からないが解れかけていた戒めを女性たちが自力で振り解き、地面に降りて男性客たちの手を借りながらその場から逃げ出す。
追いかけようとする紐型歪虚たちへサクラが続けて光の波動を放ち、衝撃で吹き飛ばした。
「ありがと、サクラ! ……これで、おしまいだよっ!」
自らの頭上に光るエネルギーの矢を複数浮かべたまよいが、右手を上げて振り下ろす。
紐型歪虚たち目掛け矢が放たれ、紐型歪虚たちを貫いた。
●西の戦い
神楽は地上から、レイアはフライングスレッドに乗り、空から捕まっている女達の救出に向かう。
紐型歪虚たちは水着姿の女性たちを縛り上げてなお一斉にレイアだけを狙ってきた。
「!? なんでこちらに攻撃が……? 私は水着姿ではないぞ……!? ……捕まったらおしまいか……神楽! サポートを……っ!」
さすがに四体掛かりで狙われてはさばき切れず、レイアはアレなオブジェの仲間入りを果たす寸前にまで追い詰められた。
再度縛られた人質を撮影していた神楽は名残惜しそうに魔導カメラをしまう。
「もっと撮影したいっすけどそろそろ助けるかっす」
神楽はレイアが完全に捕まる前に動き出し、魔法で作り出した幻影の触手を紐型歪虚に伸ばし拘束し、引き寄せを試みた。
完全に拘束されていたわけではないレイアには影響がなかったが、水着姿のコンテスト参加者は紐型歪虚に全身拘束されていたせいか、幻影の触手によりエロスとロマン溢れる形で拘束され、更には幻影のヌルヌルした粘液塗れになって歪虚に引っ張られる形で一緒についてきた。
続いて神楽は魔法で作った電撃を放つ。
人質である水着コンテスト参加者が落下して地面に激突する前に、神楽は一瞬強く敵だと念じることで出した幻影の触手で引き寄せ抱き留める。
「柔らかくて、温かくて、最高っす~。おお! いい眺めっす! じゃない、大丈夫っすか? しかし、紐の次は触手に拘束とかついてないっすね~、ケケケ」
その後神楽がひっ叩かれたかどうかは彼のみぞ知る。
残った紐型雑魔が水着コンテスト参加者を取り返そうと再び彼女を狙って拘束を仕掛けてくる。
攻撃を捨てた守りに適した構えでレイアは紐型歪虚に水着コンテスト参加者を触らせず、斬り払う。
レイアは自身の生体マテリアルを魔導剣に伝達し、強化して捕まっている水着コンテスト参加者の拘束を解き、救出した。
だが、まだ二体が人質付きで残っている。
「……やりたくはないが……最悪我が身を囮にして神楽に託すか……」
結果からいえば人質は無事救出し、残る二体も討伐もできたが、まあレイアがどうなったかは推して知るべし。
●南と東の戦い
こちらの戦いは少し変則的になった。
南と西で散らばっていた紐型歪虚たちが戦ううちに合流して八体になってしまったのだ。
故に、自然とハンター側も四人集まる形になる。
空を翔けていくボルディアとコウの二人に対し、イルミナは援護射撃の準備を行う。
自らの行動選択肢から移動を完全に捨て、マテリアルを視力と感覚に集中させ、狙いをつけることに集中してゆっくりと射撃姿勢を取った。
(なんとかこちらに敵意を向けさせれば……! え? わ、私に紐が……? な、なんで……ちょっ、触らないで!)
もうほとんど普段着が水着に近い格好だったせいだろうか。
行動を起こす前に紐型歪虚の数体がコウを飛び越えてイルミナに迫ってきた。
捕まっている女性が多過ぎたのでまず保護を優先していたコウが慌てて反転し、イルミナの下へ向かった。
「し、しまった! イルミナ!」
「い、いえ、これはチャンスよ……! コウ! ちょっとあなた何見てるのよ! この紐引っ張ってヤツらを引きずり下ろすわよ!」
絡み付く紐型歪虚に抵抗しつつ、イルミナは機転を利かせ逆に歪虚を引っ張ることで地面に引きずり降ろそうとする。
だが悲しいかな筋力が足りず、逆に負けて空中に釣り上げられかけたところを、間に合ったコウがイルミナと協力して今度こそ地面に引きずり下ろし、イルミナと人質の水着コンテスト参加者を一人助けることに成功する。
獲物を失った紐型歪虚に対して、機会をひたすら窺い続けたエルバッハが動いた。
同時に複数の魔法を詠唱し、発動する。
発動には高い集中力のマテリアルを必要とし、消耗も増えてしまうが、瞬間火力を補うには欠かせない魔法詠唱技術だ。
鋭い風と冷たい氷の矢が一本、紐型歪虚に向かって放たれた。
風は鎌鼬のように紐型歪虚の身体を切り裂き、続いて飛来した矢が衝撃を伴いその冷気により紐型歪虚を凍りつかせ、動きを鈍らせる。
効果を発揮すると、氷は速やかにその場から消えた。
そして、再び魔法を放つ準備をしようとしたエルバッハは、自分目掛けて殺到する紐型歪虚たちを見た。
どうやら今ので気を引いてしまったらしい。
回避が間に合わず、エルバッハは空中でアレなオブジェの仲間入りを果たした。
「やらかしました……。助けてください……」
それに応じたのは、ボルディアだった。
「うぐぐ……なんで俺がこんな格好しなきゃなんねぇンだ。チクショウ、オイこのクソ変態歪虚! 捕まえンなら俺にしやがれ!」
気を引くために水着を着用していたボルディアは、紐型歪虚の至近で筋肉を隆起させると同時に体内のマテリアルを光に変えて放出し、注目を集める。
肌を見られるのは恥ずかしがるボルディアも、筋肉を見られる事については筋肉美を見せるという意識なので恥ずかしがらない。
今度はボルディアに紐型歪虚たちが殺到して絡み付いてきた。
「俺の筋肉を、この程度で捕まえられると思ってンじゃねぇ!」
全身の筋肉の隅々まで気力で満たし、気迫の一声と共に精神を統一、節制の力で紐型歪虚を引き千切り弾き飛ばす。
そこへ、ボルディアが稼いだ時間を利用して拘束を振り解き地上に戻っていたエルバッハが、再度フライングスレッドで急接近し、水着コンテストの女性たちを歪虚から引きはがして離脱する。
続いてコウがもう一人人質を取り戻した。
そして加勢しにきたまよいとサクラ、レイアと神楽が残る全ての人質を紐型歪虚たちからかっさらっていく。
神楽とエルバッハの視線が絡み合った。
「『マッサージ』、要りますか?」
返答は猛烈な勢いでエルバッハ目掛けて切られた魔導カメラのシャッター音だった。
コウがマテリアルを込めて移動力を上昇させ、その素早い動きで、紐型歪虚たちの回避タイミングを狂わせ、さらに全速力で駆け抜けながら、すれ違いざまに斬りつけていく。
「八つ裂きにしてやる!」
え……八つ裂きって……そこまで怒らなくても……と思いつつ、フォローに回るのはイルミナだ。
伸びてくる紐型歪虚の身体を瞬時に撃ち抜き、攻撃を妨害する。
そして、自由になっただけで終わるボルディアではなかった。
自身の炎のマテリアルを刹那、爆発させるようにして引き出し、限界を超えた動きで斧を十分に回転させ、その勢いを保ったまま地面に叩きつける。
天を劈くような気炎はあたかも敵を喰らい尽くさんとする獣にも見え、味方をも焼き尽くす暴虐の炎を巻き散らす。
炎が消えた後には、紐型歪虚たちはチリも残らなかった。
●水着コンテスト
紐型歪虚を全て倒した後、会場は整え直されて改めて水着コンテストが開かれた。
ドラムロールが響く中、ビキニ姿の女性アナウンサーが優勝を発表する。
拍手と歓声が上がるが発表はまだ終わっていなかった。
「大量の無効票により、急遽特別賞を設けることになりました! 受賞者は、ハンターのボルディア・コンフラムス様、夢路 まよい様、神楽様、エルバッハ・リオン様、サクラ・エルフリード様、コウ様、レイア・アローネ様、イルミナ様の八名となります!」
突然挙げられた自分たちの名前に、完全に見物客気分でいたハンターたちはぎょっとする。
優勝者を含め、水着コンテストの参加者の誰もが微笑んで、ハンターたちに拍手をしながら助けられた礼を告げ、特別賞受賞を祝福する。
「エントリーしておらずほぼ誰も水着を着ていないどころか、男性すら混じっていますが、たくさんの投票に込められた私たちの感謝をこうして伝えたいと思います! 会場の皆さん、私たちを助けてくださったハンターの皆様に、盛大な拍手をお願いいたします!」
呆気に取られるハンターたちに向けて、優勝者が発表された時以上の大歓声と、万雷の拍手が響き渡った。
紐型歪虚に水着コンテストの出場者たちが縛り上げられ、空中で卑猥なアレなオブジェと化している中、ハンターたちが到着した。
依頼を受けて女性の救助に来たボルディア・コンフラムス(ka0796)は、目の前の光景に唖然とした。
(……アレだな。男もバカだけど、歪虚も大概バカばっかだな)
気を取り直して、南の敵の対処に向かう。
「女たちは俺たちが救助するからよ。お前らはクッションになるものでも探して落下地点に行ってくれ。シーツとかでもいいから」
居合わせた男性客にはシーツか何かを用意し、落下した女性客を受け止めるようお願いをしておく。
「お~、水着の女の人が紐で縛られてる? そういうの、男の人たちは喜ぶのかな」
会場の北に向かって、捕まった女性たちの解放を目指すことに決めた夢路 まよい(ka1328)に、縛り上げられている女性のサンダルが頭にヒットした男性客が冗談交じりに君が縛り上げられてもおじさん喜ぶぞとはやし立てた。懲りない男である。
「私? ん~、お気に入りの人の前ならともかく、遠慮しとく。その辺の男の人に無駄に喜んで貰っても仕方ないし」
西に向かいながら縛られた人質を撮影しつつ、神楽(ka2032)のテンションは振り切れていた。
「グッジョブ、歪虚っす! じゃない、歪虚め、許さんっす」
ついでのように付け足された歪虚への憤りは物凄く棒読みだ。
神楽が撮影に使っている魔導カメラは性能的には普通のものと変わりないが特注で、フレームは最高級の物に変更され、更に豪華なオプションや装飾品がゴテゴテとくっつけられている。
暑いので露出度がかなり高いエルバッハ・リオン(ka2434)だが、他者の視線はまったく気にしていない。
「分散して行動するか、全員で行動するか。……分かれるなら、まずは東からにしましょうか」
エルバッハは神楽に前衛を頼むつもりで、台詞もちゃんと考えていた。内容はこうだ。
『後でお礼に『マッサージ』をさせてもらいます。その際に偶々触れたとしても、私は気にしませんから』
しかし、神楽は既に西へ向かっている。頼み損ねた。現実は非情である。
サクラ・エルフリード(ka2598)も水着のような姿だが参加者ではない。
まよいと一緒に北側の対応を行う事になった。
「何か騒ぎがしていると来てみれば……」
男性客がサクラへ参加したかったのか、そのためにそんな格好なのかと尋ねてきた。
「え、いえ、私は参加者ではなくただの通りすがりです……。参加したくてこの格好をしているわけでもないです……」
飛行魔法を武器に付与してもらい、まよいとともに空へ向かうサクラだった。
「俺はコウだ。よろしく頼む。……なんでこんな事になってんだろうなあ……?」
ハンター仲間たちに自己紹介をしながら、コウ(ka3233)はイルミナも水着コンテストに出れば良かったのにと内心思っていた。
他の男には見せたくないが、同時に自慢したい複雑な男心である。
そんなコウをじとっと釘を刺すようにイルミナ(ka5759)は見ていた。
「水着コンテスト? 人間って暇ね。そんなもの見て楽しいのかしら……ねえ、コウ?」
(いつも水着みたいなもんだろというのは怒るから黙ってよう)
コウの内心には気付いていないようで、イルミナはコウから視線を外し、空中で縛られアレなオブジェと化した女たちを見上げる。
正確には、女たちを縛っているものを。
「あれは……歪虚? よりにもよって人が集まってる最中に……っ!! 私が狙撃で動きを鈍らせるわ。人質がいるから落とす訳にはいかない……」
コウとイルミナは、二人一緒に駆け出した。
「水着コンテストか……平和だ……。私に面白半分に参加を勧めてくる悪友もいないしな……」
平和を噛み締めているかのような顔でレイア・アローネ(ka4082)は一人ごちる。
「と思ったら歪虚か……! み、水着の女を襲う歪虚!? ……最近各方面でこんなの増えてないか……?」
レイアは西側の救助に向かうことにした。
何故か分担が決まった時、他の仲間達から驚いた顔をされたような気がしたが、たぶんレイアの気のせいだろう。
さあ、戦いの始まりだ!
●北の戦い
空を飛んで空中に連れ去られた女性に近づいたまよいは、サクラに護衛してもらいながらまずは引っ張って地上に下ろそうと試みる。
「女性を狙って空中拘束させる雑魔とは……変態というかマニアックな雑魔ですよね……」
サクラの呟きを聞きながら作業を続け、女性を解放しても地面に激突しないくらい降ろせたので、まよいは次に幻想的な歌と舞踊を、電光楽器の伴奏付きで奏でる。
「穢れし魂 もたらす災禍 精霊の加護にて 幻のものとせん」
澄んだまよいの歌声が響き、その身を蝕む災厄から身を護る力を引き出した。
縛られるがままだった女性たちが、締め付けに対して身を捩り、抵抗を始める。
サクラが続いて女性たちに対し魔法で援護を行う。
光が対象の全身を覆い、煌めきながら女性の不調を癒すと、歪虚の締め付けがついに解けた。
「出来る限り迎撃はしますので、救助の方は任せます……。早急に助けてあげてください……」
下で待ち構える男たちが、落ちる女性を受け止めて安全圏まで避難させていく。
女性を追いかけようとした紐型歪虚たちは、今からでは追いつかないことを悟ったかまよいとサクラに対象を変え襲い掛かってきた。
それに対しまよいはとサクラはフォーメションを組み、歪虚たちを迎え撃つ。
前衛のサクラは奮戦した。
魔法で黒い塊をいくつも放ち、紐型歪虚を牽制する。
しかし、コンテスト用に空中に張られた飾り付きワイヤーが邪魔でうまく距離が取れず接近を許してしまった。
剣で斬り払おうとするサクラだが、紐型歪虚はサクラに巻き付き、アレな格好に縛り上げようとしてくる。
そこへ、まよいの歌が聞こえてきた。
振りかかる災いを、幻のごとく葬り去る歌が。
紐型歪虚を振り解いたサクラは、断固たる意志を示し自身の周囲に不可視の境界を作り上げる。
その後押しを受けてかは分からないが解れかけていた戒めを女性たちが自力で振り解き、地面に降りて男性客たちの手を借りながらその場から逃げ出す。
追いかけようとする紐型歪虚たちへサクラが続けて光の波動を放ち、衝撃で吹き飛ばした。
「ありがと、サクラ! ……これで、おしまいだよっ!」
自らの頭上に光るエネルギーの矢を複数浮かべたまよいが、右手を上げて振り下ろす。
紐型歪虚たち目掛け矢が放たれ、紐型歪虚たちを貫いた。
●西の戦い
神楽は地上から、レイアはフライングスレッドに乗り、空から捕まっている女達の救出に向かう。
紐型歪虚たちは水着姿の女性たちを縛り上げてなお一斉にレイアだけを狙ってきた。
「!? なんでこちらに攻撃が……? 私は水着姿ではないぞ……!? ……捕まったらおしまいか……神楽! サポートを……っ!」
さすがに四体掛かりで狙われてはさばき切れず、レイアはアレなオブジェの仲間入りを果たす寸前にまで追い詰められた。
再度縛られた人質を撮影していた神楽は名残惜しそうに魔導カメラをしまう。
「もっと撮影したいっすけどそろそろ助けるかっす」
神楽はレイアが完全に捕まる前に動き出し、魔法で作り出した幻影の触手を紐型歪虚に伸ばし拘束し、引き寄せを試みた。
完全に拘束されていたわけではないレイアには影響がなかったが、水着姿のコンテスト参加者は紐型歪虚に全身拘束されていたせいか、幻影の触手によりエロスとロマン溢れる形で拘束され、更には幻影のヌルヌルした粘液塗れになって歪虚に引っ張られる形で一緒についてきた。
続いて神楽は魔法で作った電撃を放つ。
人質である水着コンテスト参加者が落下して地面に激突する前に、神楽は一瞬強く敵だと念じることで出した幻影の触手で引き寄せ抱き留める。
「柔らかくて、温かくて、最高っす~。おお! いい眺めっす! じゃない、大丈夫っすか? しかし、紐の次は触手に拘束とかついてないっすね~、ケケケ」
その後神楽がひっ叩かれたかどうかは彼のみぞ知る。
残った紐型雑魔が水着コンテスト参加者を取り返そうと再び彼女を狙って拘束を仕掛けてくる。
攻撃を捨てた守りに適した構えでレイアは紐型歪虚に水着コンテスト参加者を触らせず、斬り払う。
レイアは自身の生体マテリアルを魔導剣に伝達し、強化して捕まっている水着コンテスト参加者の拘束を解き、救出した。
だが、まだ二体が人質付きで残っている。
「……やりたくはないが……最悪我が身を囮にして神楽に託すか……」
結果からいえば人質は無事救出し、残る二体も討伐もできたが、まあレイアがどうなったかは推して知るべし。
●南と東の戦い
こちらの戦いは少し変則的になった。
南と西で散らばっていた紐型歪虚たちが戦ううちに合流して八体になってしまったのだ。
故に、自然とハンター側も四人集まる形になる。
空を翔けていくボルディアとコウの二人に対し、イルミナは援護射撃の準備を行う。
自らの行動選択肢から移動を完全に捨て、マテリアルを視力と感覚に集中させ、狙いをつけることに集中してゆっくりと射撃姿勢を取った。
(なんとかこちらに敵意を向けさせれば……! え? わ、私に紐が……? な、なんで……ちょっ、触らないで!)
もうほとんど普段着が水着に近い格好だったせいだろうか。
行動を起こす前に紐型歪虚の数体がコウを飛び越えてイルミナに迫ってきた。
捕まっている女性が多過ぎたのでまず保護を優先していたコウが慌てて反転し、イルミナの下へ向かった。
「し、しまった! イルミナ!」
「い、いえ、これはチャンスよ……! コウ! ちょっとあなた何見てるのよ! この紐引っ張ってヤツらを引きずり下ろすわよ!」
絡み付く紐型歪虚に抵抗しつつ、イルミナは機転を利かせ逆に歪虚を引っ張ることで地面に引きずり降ろそうとする。
だが悲しいかな筋力が足りず、逆に負けて空中に釣り上げられかけたところを、間に合ったコウがイルミナと協力して今度こそ地面に引きずり下ろし、イルミナと人質の水着コンテスト参加者を一人助けることに成功する。
獲物を失った紐型歪虚に対して、機会をひたすら窺い続けたエルバッハが動いた。
同時に複数の魔法を詠唱し、発動する。
発動には高い集中力のマテリアルを必要とし、消耗も増えてしまうが、瞬間火力を補うには欠かせない魔法詠唱技術だ。
鋭い風と冷たい氷の矢が一本、紐型歪虚に向かって放たれた。
風は鎌鼬のように紐型歪虚の身体を切り裂き、続いて飛来した矢が衝撃を伴いその冷気により紐型歪虚を凍りつかせ、動きを鈍らせる。
効果を発揮すると、氷は速やかにその場から消えた。
そして、再び魔法を放つ準備をしようとしたエルバッハは、自分目掛けて殺到する紐型歪虚たちを見た。
どうやら今ので気を引いてしまったらしい。
回避が間に合わず、エルバッハは空中でアレなオブジェの仲間入りを果たした。
「やらかしました……。助けてください……」
それに応じたのは、ボルディアだった。
「うぐぐ……なんで俺がこんな格好しなきゃなんねぇンだ。チクショウ、オイこのクソ変態歪虚! 捕まえンなら俺にしやがれ!」
気を引くために水着を着用していたボルディアは、紐型歪虚の至近で筋肉を隆起させると同時に体内のマテリアルを光に変えて放出し、注目を集める。
肌を見られるのは恥ずかしがるボルディアも、筋肉を見られる事については筋肉美を見せるという意識なので恥ずかしがらない。
今度はボルディアに紐型歪虚たちが殺到して絡み付いてきた。
「俺の筋肉を、この程度で捕まえられると思ってンじゃねぇ!」
全身の筋肉の隅々まで気力で満たし、気迫の一声と共に精神を統一、節制の力で紐型歪虚を引き千切り弾き飛ばす。
そこへ、ボルディアが稼いだ時間を利用して拘束を振り解き地上に戻っていたエルバッハが、再度フライングスレッドで急接近し、水着コンテストの女性たちを歪虚から引きはがして離脱する。
続いてコウがもう一人人質を取り戻した。
そして加勢しにきたまよいとサクラ、レイアと神楽が残る全ての人質を紐型歪虚たちからかっさらっていく。
神楽とエルバッハの視線が絡み合った。
「『マッサージ』、要りますか?」
返答は猛烈な勢いでエルバッハ目掛けて切られた魔導カメラのシャッター音だった。
コウがマテリアルを込めて移動力を上昇させ、その素早い動きで、紐型歪虚たちの回避タイミングを狂わせ、さらに全速力で駆け抜けながら、すれ違いざまに斬りつけていく。
「八つ裂きにしてやる!」
え……八つ裂きって……そこまで怒らなくても……と思いつつ、フォローに回るのはイルミナだ。
伸びてくる紐型歪虚の身体を瞬時に撃ち抜き、攻撃を妨害する。
そして、自由になっただけで終わるボルディアではなかった。
自身の炎のマテリアルを刹那、爆発させるようにして引き出し、限界を超えた動きで斧を十分に回転させ、その勢いを保ったまま地面に叩きつける。
天を劈くような気炎はあたかも敵を喰らい尽くさんとする獣にも見え、味方をも焼き尽くす暴虐の炎を巻き散らす。
炎が消えた後には、紐型歪虚たちはチリも残らなかった。
●水着コンテスト
紐型歪虚を全て倒した後、会場は整え直されて改めて水着コンテストが開かれた。
ドラムロールが響く中、ビキニ姿の女性アナウンサーが優勝を発表する。
拍手と歓声が上がるが発表はまだ終わっていなかった。
「大量の無効票により、急遽特別賞を設けることになりました! 受賞者は、ハンターのボルディア・コンフラムス様、夢路 まよい様、神楽様、エルバッハ・リオン様、サクラ・エルフリード様、コウ様、レイア・アローネ様、イルミナ様の八名となります!」
突然挙げられた自分たちの名前に、完全に見物客気分でいたハンターたちはぎょっとする。
優勝者を含め、水着コンテストの参加者の誰もが微笑んで、ハンターたちに拍手をしながら助けられた礼を告げ、特別賞受賞を祝福する。
「エントリーしておらずほぼ誰も水着を着ていないどころか、男性すら混じっていますが、たくさんの投票に込められた私たちの感謝をこうして伝えたいと思います! 会場の皆さん、私たちを助けてくださったハンターの皆様に、盛大な拍手をお願いいたします!」
呆気に取られるハンターたちに向けて、優勝者が発表された時以上の大歓声と、万雷の拍手が響き渡った。
依頼結果
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変態(歪虚)は滅ぶべし ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/08/30 11:52:17 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/30 11:38:50 |