• 空蒼

【空蒼】恨絶の狂機 5機目

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
5~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/09/14 07:30
完成日
2018/09/22 03:00

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

※このシナリオは(赤山比で)難易度が“超”高く設定されています。貴方の大事な装備アイテムの損失、重体や再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
なお、登場するNPCも、皆様と同様、重体や再起不能、死亡判定があり、容赦なく判定されます。

★個人連動シナリオ『【空蒼】恨絶の狂機 4機目』のオープニングの続き★

●討伐艦隊旗艦
 コロニーの近くで待機させていた強化人間達の母船から通信が途絶えた。
 暴走した強化人間に襲われたのか、避難したのか。
「暴走機体、こちらに真っ直ぐ向かって来ます! 数3。また、コロニー奥影より狂気VOIDが多数出現!」
「慌てる事はない。こちらは20倍以上の戦力なのだぞ」
 “上司”は優雅にくつろぎながら答える。
 強化人間が本当に暴走するとは思っていなかったが、結果的には変わらない。
 各部隊からの厄介者を一網打尽にできれば、それぞれの部隊長や将官に恩が売れるのだ。この混迷の時代、それは大きな意味を持つ。
「狂気VOIDには新型機を当たらせろ。旧式機は暴走機体を撃墜せよ」
 これで終わりだ。
 だが、易々と戦線を突破される。暴走機体は新型のコンフェンサーだが、機体性能に大きな差があるとは思えない。
 現場の指揮官は何をしているのか。
「突破されたなら、包囲すればいいだろう」
「そ、それが、大変な異常が発生しているようです」
 通信機から聞こえてくるのはパイロット達の悲鳴だった。
『機体がコントロールできない。乗っ取られてる』
『やめろ、撃つな。撃つな~!』
『死にたくない!助けてくれ!』
 阿鼻叫喚とは、この事だろう。
 暴走機体に対峙した機体のことごとくは、コントロールを奪われ、仲間の機体に襲いかかる。
 辛うじて無事だった機体は、仲間と暴走機体の両面から攻撃を受けて、手も足も出ない状況だ。
「ここは危険です。戦闘ブリッジへ」
「役立たず共め! ハンター達も出せ!」
「一機、急速接近してきます! 機体識別は……星加機です!」
 強い意思を感じるように、暴走機体が戦線を突破して真っ直ぐに迫ってくる。
 モニターごしでも、圧倒的な殺意が伝わってきた。
「止まれ! この船にはお前の息子も乗っているのだぞ! どうなってもいいのか!」
 “上司”の必死の叫びは、確かに星加機に聞こえているはず。
 こんな時の為に、星加の息子を月に呼び寄せ、船に乗せているのだ。
 我ながら、素晴らしい準備だったと思う。
 声が聞こえたのか、星加機はライフルを向けたまま、動きをピッタリと止めた。
「よ……」
 ニヤリとした表情を浮かべた“上司”だったが、次の瞬間、凍てついた。
 向けられた銃口から、マテリアルレーザーが放たれ、“上司”に直撃したからだった。

●旗艦船内
 激しい揺れに艦内は襲われた。
 対空ブリッジに敵の直撃を受けたようだと艦内放送が告げている。
「行かなきゃ! 母さんを止めないと!」
 部屋から飛び出た孝純を慌てて追いかける鳴月 牡丹(kz0180)。
 少年の腕を力強く捕まえる。
「ダメだよ!」
「なんで! 母さんの暴走を説得する為に、ボクが呼ばれたんでしょ!?」
「外は宇宙空間なんだよ」
 精霊の加護を受けた覚醒者であってもイニシャライザーの力なしに宇宙空間に出るのは危険だ。
 ましてや、孝純はただの人間だ。宇宙空間に出れば即死なのは言うまでもない。
「混乱に紛れてCAMに乗る!」
「操縦できる訳がない。あれは訓練しないといけないよ!」
 訓練しても牡丹はろくに乗れなかったが。
「……こっそり、父さんのシミュレーターで練習はしていたから」
「だとしてもダメだよ。あんな戦場に!」
「説得したら戻ってくるから!」
 必死に縋る孝純に対し、牡丹はつい熱くなる。
「説得は無駄だよ。暴走したら、止められない!」
「なんで? 絶対に止めらない訳がない!」
 牡丹は少年の叫びと勢いに思わず、孝純の身体を壁にぶつける。
「契約者は、契約元を倒さない限り、元には戻らないんだよ!」
「け……契約者? 強化人間じゃなくて!?」
 余計な事を口走ったと牡丹は後悔した。
「……生きたまま、歪虚と契約すれば、契約者となって歪虚の力を扱えるんだ」
「それじゃ、母さんはVOIDと……嘘だ!」
「望んで契約した訳じゃない! 強化人間になるという仕組みがそうさせてるはずなんだ!」
「それを、鳴月さんはずっと黙っていたの!? 母さんがVOIDの手下だって分かりながら!」
 心の奥底から込み上げてくる行き場のない怒りを少年は噴き出した。
「契約元が分からないと契約を解除できないからだよ!」
 牡丹がここの所、東方のゴタゴタに首を突っ込まずにいたのは、リアルブルーに頻繁に転移していたからだ。
 その理由は、強化人間の契約元の存在を探す為……だが、時間だけが過ぎ、今の状況に至った。
 身動きが抑えられている身体で戒めを解こうともがく孝純。
 次の瞬間、閃光と共に爆発が通路に広がった。激しい衝撃で二人は別々に離れる。どうやら、船外からの攻撃を受けたようだ。
「……イテテテ。孝純君!」
 瓦礫の向こう側に少年が見えた。
 少年は手すりに掴まりながら閉じる隔壁の奥に映る、宇宙空間を見つめている。
「さよなら、鳴月さん……今まで、ありがとう」
 それだけ告げると、少年は艦の奥に向かって消えていった。
 牡丹は拳を壁に叩きつける。
「くっそ! あの子の頼むって、籃奈に言われてるのに!」
 再び大きい振動に襲われる。敵の襲撃を受けているようだ。
 このままでは艦自体が沈んでしまう可能性も出てきた。
「……僕の言葉はあの子には通じない……誰か、孝純君を、止めて……」 
 弱気な台詞が、牡丹の口から流れていった。



○解説
●目的
孝純の保護

●内容
艦内を捜索し、孝純を見つけ出す

●状況
オープニング直後、通路で牡丹の泣き言を聞いている所からスタート(全員)
通路の幅は1スクエア
複雑に入り組んでおり、途中、崩壊や隔壁が降りていて迷路と化している
艦内での居場所を知らせるマップなど、敵襲の影響で使えない

●艦
特務双艦ジェミニ
テレーザ級巡洋艦を2隻並べた双胴艦。中破した2隻の巡洋艦を修理改修する際にCAM母艦のデータ収集目的で造られた
武装などは元のテレーザ級に準拠する
防御力を高める為、幾つもの隔壁やブロックで構成され、必要があれば被害ブロックごとパージする事も可能
その為、艦内は狭く、通路が幾つも入り組んでおり複雑になっている

●探索
便宜上、特別ルールを用います
基礎能力【直感】に、プレイングでの行動やスキル等を考慮した上で、一般行為判定を行います
『目標の行為の難易度は0.1』
『判定可能回数は移動力と同じ回数』(探索時に使用するという前提でのスキルによる補正は有効とします)
捜索に集中するという事で、判定可能回数を1回消費して、『目標行為の難易度を0.1上げる』事は可能とする
全員が判定して成功しなかった場合、依頼は失敗となる

リプレイ本文


「……僕の言葉はあの子には通じない……誰か、孝純君を、止めて……」
 鳴月 牡丹(kz0180)にしては珍しい弱気な発言。
 この状況において星加 籃奈(kz0247)の一人息子である孝純を見つけ出すのは大変だろう。
「大事なお母さんが心配な気持ち痛いほどわかるけど、今飛び出して言ったらもっと事態がややこしくなっちゃうんだから!」
 どーんと盛大に胸を揺らしながら、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が叫んだ。
 その声に驚いて振り返る牡丹。
「あ、あれ……皆、いつからそこに」
「いつからって、孝純が飛び出してった所からだよ」
 ニヤニヤとしながら牡丹の肩をトントンと叩くイレーヌ(ka1372)。
 この勝気な女将軍が弱気な所は滅多に見られないのだ。カメラの準備が整っていれば激写していたのに。
「あの子も思い切った事をするのですね」
 ヘルヴェル(ka4784)が穏やかな微笑のまま言った。
 利発そうな少年に感じたが……やる時はやる。そんな男の子かもしれない。
「そういえば、CAMに詳しかったようだな」
 CAM格納庫で出会った少年の興味津々な表情を思い出しながらアニス・テスタロッサ(ka0141)が呟く。
 孝純がシミュレーターをどれだけかじったか分からないが、実際の戦場は甘くない。外に出ても撃ち落とされるのは目に見えている。
 ペタンと座り込んだままの牡丹に龍崎・カズマ(ka0178)は手を伸ばした。
「孝純は10歳前後だ。本当ならまだ親に甘えていい時期なんだ。いくら大人びていてもな」
「凄くしっかりしているなとは思っていたんだけど」
 苦笑を浮かべながら彼の手を取る牡丹。
 逆に言うと、牡丹が子供っぽいというべき事だが……。
「時間が経って落ち着くか、それとも更に行動を起こすか分からない。ここは早く見つけないと」
「そうです! ここはルンルン忍法を駆使し、孝純くんを探して保護して説得しちゃいます!」
「ただ問題があるとすれば、この広い船内、どう探すかですね」
 ビシっとポーズを取るルンルンの横で冷静にヘルヴェルが言った。
 警備上の理由という事で、ハンター達には詳細な船内地図を渡されなかった。通路の端末は外からの襲撃により完全に機能していない。
「船外からVOIDの攻撃を受けているみたいだから、バラけて探すのは危ないかもね」
 艦内放送はVOIDの襲撃を伝えていた。
 既に取りついているらしく、場所によってはVOIDが内部に潜入しているという。
「それでVOIDが船の中に居るって事か……どう手分けする?」
 カズマの問いにアニスが答える。
「孝純を探す途中でVOIDと遭遇する可能性もある。会敵した以上、簡単には無視できないだろう。なら、二手に分かれるのが精々だな」
「僕はそれでいいと思うよ」
 考えるのが苦手な牡丹はアニスの提案に素直に応じると、真っ先にカズマの腕を掴もうとした。
 だが、その腕は既に抑えられていた。
「ちょっとさ、イレーヌ君とヘルヴェル君。ナニしてくれるのさ」
「ナニも無いさ。白兵戦で強いのは順当に言って、牡丹とカズマだろう。分かれるのは当然だよ」
「アニスさんもルンルンさんも、前衛で戦えるでしょうが、やはり、メインクラスの違いはあります。ここは牡丹さんにお願いしたいのです」
 イレーヌとヘルヴェルの説得に牡丹は頬を膨らませながらも、途中で気分が変わったようだ。
「ふーん。まぁ、僕は『女将軍』だからね。ちょっとやそっとのVOIDなんか敵じゃないし」
「班で分かれるが連絡は逐一だぞ」
「分かってるって、カズマ君。でもまぁ、僕、何も持ってないけど」
 乾いた笑い声を挙げる牡丹にルンルンが盛大に、それは双胴艦の二つの艦首のようにも見える程、強調した胸と共にトランシーバーを掲げた。
「任せて下さい! 私が持ってますから!」
「よし、通信係は任せた!」
 負けじと牡丹も巨大なナニを揺らしながら、飛び跳ねてルンルンに告げた。
 目の前で跳ねる4つの頂きを、冷めた目で眺めていたアニスが胸元を隠すつもりはないけど、両腕を組んで言い放つ。
「急ぐぞ。遊んでいる時間はないからな」
 振り返りもせずに、アニスは走り出し、慌てた牡丹とルンルンも追い掛けるように走る。
 曲がり角を過ぎる前に牡丹が一瞬、振り返った。
「それじゃ、後でー!」
 消え去った牡丹が見えなくなった角を見つめるイレーヌ。
「たぶん、元気になったんじゃないかな」
「あたし達は何もしていませんけれど」
 含みのある微笑みをヘルヴェルはカズマに向けた。
「さぁ、俺達も行こうか」
 牡丹があの様子であれば、少なくともVOIDとの戦闘は問題ないだろう。
 むしろ大事なのは孝純の行方の方だ。


 通路の記号番号を確認してヘルヴェルはメモに記録する。
 これだけ広い船内なのだ。管理する為に記号や番号を付けるのは当然だろう。
 問題は、その記号が何を意味し、どんな配列になっているかだ。
「ブロック分けがあるのであれば何処かに必ず書いてあるはずです」
 特務双艦ジェミニの双胴部分は幾つもの隔壁やブロックで構成されており、必要に応じてブロックごとパージする事も可能だ。
 当然、そのブロック名が分かるようにはなっているだろう。
「人も見当たらないし、これは骨が折れるな」
 通路の先や来た道を頻繁に振り返っては誰かいないかイレーヌ(ka1372)は探す。
 軍人か軍属か、内部構造を理解していそうな者を探してみてはいるが、運が悪いのか、巡り合わない。
 できれば士官級……だめなら、下士官でもいいし、格納庫のスタッフでもいい。船のCAMデッキの全容が確認できれば、孝純を探すのに役に立つはずだ。
「管制室か会議室か、とりあえず到着できればと思うが……」
「展望ブリッジへの矢印はありましたね」
 カズマの言葉にヘルヴェルが応える。
 当ても無く探索を続けるよりかはと、3人は展望ブリッジの方向に向かって進む。
 途中、VOIDの襲撃を受けたのか、隔壁が降りていたり、通路が崩れている所があったが、スキルも使って突破する。
 やがて、大きな区画の入り口に到着した。
「この先が展望ブリッジのようですね」
「分厚そうな隔壁だな……あれは軍人か?」
 丈夫な作りの隔壁の手前、操作パネルの蓋が開きっぱなしになっている脇に、兵士が倒れ込んでいた。
「おい、大丈夫か?」
 イレーヌが呼び掛けながら回復魔法を使うと、うめき声を上げながら兵士は目を覚ました。
 階級章を見るに、下士官のようだ。両脚があらぬ方向にひしゃげ、全身がボロボロだった。
「ハ、ハンターか?」
「一先ずは大丈夫そうだな。何があったんだ?」
 適切な大きさの残骸を見つけ、それをあて木代わりにして兵士の脚を固定するカズマ。
 兵士は苦しそうな表情を浮かべながら答えた。
「伝令で対空ブリッジに入ろうとしたら、突然の爆発に巻き込まれて……なんとか、ここで区画を閉鎖した」
「この先は展望ブリッジじゃないのか?」
「普段は展望室として利用されているが……今回の作戦では艦隊司令部が置かれて……」
 どうやら、星加機の強襲で破壊された所のようだ。
「私達はCAM格納庫を探している。場所は分かるか?」
 兵士を覗き込むように身を乗り出してイレーヌは尋ねた。
「生きている端末があれば……分かるかもしれない。けど、細かく知るには士官以上じゃないと」
「情報に制限が掛けてあるのか」
「この船は一般人も乗れる場合があるから……情報管理は徹底している……」
 そう言いながらも兵士は血まみれのカードをポケットから取り出すと、ハンターに渡した。
「俺は……救助を呼んだからここで待っている。これは、爆風で飛んできた士官以上の、カード」
「ありがとう。でも、良いのですか? 後で怒られたりしませんか?」
 カードを受け取るヘルヴェルが心配そうに声を掛ける。
 如何にハンターといえども、軍という組織の外の者だ。情報漏洩になる場合もあるだろう。
「いいんだ。血が止まったようだし、それに……この船を守ってくれるんだろ」
「当然だ」
「なら……頼んだ」
 兵士は疲れたのか、静かに瞳を閉じた。
 手に入れたカードを確りと握り締め、ヘルヴェルはカズマとイレーヌを見つめる。
「生き残っている端末を探しましょう」
 3人は頷きあうと再び走り出した。


「思ったより複雑で……」
 走り続けたためか、ルンルンが肩で激しく呼吸している。
 その度に揺れる彼女の双丘。
「想像していたよりも、作りの予想がつかないです」
「巡洋艦を二隻並べ、新設の胴体部分で繋がっている訳だからな」
 元軍人であるアニスの表情は硬い。
 おおよそ、軍艦というものの作りは大きくは変わらないと思ったが、少なくとも、この特務双艦ジェミニは経験則が当てはまらなかった。
 いや、もっと正確に言うと『新設された胴部分は』だろう。
 これが、元となっているテレーザ級巡洋艦の方であれば、もう少しまともに動けたかもしれない。
「で、次の角の先でいいの? アニス君」
 先に進んだ牡丹が振り返る。
 頭を使う事はダメダメだが、身体を動かす事に限っていえば、頼もしいの一言だ。
「あぁ、間違いないはず。区画が閉じていなければ、この先にCAMデッキがある」
 アニスは先日もこの特務艦の警備依頼を受けて乗船していた。
 CAM母艦の試験を兼ねた艦なだけに、CAMの整備もできるのを利用し、アニスも自機を調整していたのだ。
 だから、覚えていた通路に出たら、その時滞在していたデッキまで行けると考えていた。
「孝純くんと会った場所ですか?」
 ルンルンが符を掲げながら尋ねた。
 彼女はルンルン忍法――と自称している符術の使い手だ。何かの術を行使するのだろう。
「……あぁ、突然現れた少年が、まさか、籃奈の一人息子とはな」
 利発そうな少年の面影をアニスは思い出す。
 星加籃奈とは幾度かの依頼で一緒だった。新型のCAMであるコンフェンサーの開発に絡む依頼からの付き合いだ。
 今、その星加籃奈は暴走して、コンフェンサーを駆り、この艦に襲い掛かってきている。愛した夫が遺した一人息子が乗っているとは知っているのだろうか――。
「おぉっと!」
 曲がり角を過ぎた牡丹が声を上げて立ち止まった。
 どうしたものかとアニスとルンルンが追いつくと、瓦礫の山が通路を塞いでいた。
 どうやらVOIDの攻撃を受けたのだろう。天井から崩れており、僅かな空間はその部分しかなかった。
「回り道している暇はない。突破するか」
 瓦礫を崩しつつ登りだしたアニス。
 ルンルンは疾影士の力とその力を引き出すブーツにより壁を“歩く”。
「掴まって下さい!」
「それは助かる」
「あー。僕も置いていかないでよー」
 牡丹が四つん這いで瓦礫を登りながら恨めしそうに言った。
 きっと自力で瓦礫を登れるだろうが、面倒くさくなって瓦礫を力尽くで片付けようと無茶をしかねないので、アニスを引っ張った後、牡丹も引っ張るルンルン。
「思ったより早く、到着できましたね!」
 瓦礫の山を越えてCAMデッキに降り立ったルンルンが嬉しそうな表情を浮かべる。
 広いデッキにはCAMの1機も置かれていなかった。出撃してしまったのか、元々、そういうスペースだったのか分からない。
「収穫なしかー」
 大きくため息をついて転がっているパイプ椅子を起こすとドカリと座る牡丹。
 アニスは真剣な表情のまま辺りを見渡していた。
 利発なあの少年の事だ。ハンター達に追われているのにハンター達が居たデッキを選んでくるとは無いだろうと。
 だが、アニスにはもう一つ、此処に来た理由があった。
「そうでもないようだ、牡丹」
 何かを見つけたようで、走り出す。
 アニスが探していたのはデッキ区画内の端末だった。
 CAMを整備するには多くの情報や部品の手配を行う必要がある以上、端末が設置されているのは当然のことだった。
「……よし、CAMデッキ区画の情報は確認できそうだな」
 残念ながら隔壁情報などはセキュリティー上の都合により閲覧が不能だった事だ。
 それでもCAMデッキの場所が確認できた意味は大きいだろう。
 他に引き出せる情報は無いか確認しようとしや矢先だった。アニスの袖をルンルンが引っ張る。
「アニスさん、ニンジャの敵が出ました!」
「仕方ない。まずはそっちを片付けてからだ」
 ルンルンが符を、アニスはライフルを構える。
 彼女らの前に狂気VOIDが数体、ゆっくりとした動きで迫ってきたのだった。


 巻貝の先端みたいなものが隔壁を破っていた。当然、巻貝ではない。狂気VOIDの一種だ。
 細い先端が不気味な音を立てて開いた。すると、眼球に虫とクラゲがくっ付いているような、およそ、人間から見れば意味不明な形状の小型VOIDが生み出されてくる。
「数が多いですね」
 蒼機剣と刀を左右の手に持ったヘルヴェル。
 正常に作動している端末を探していたら狂気VOIDと遭遇したのだ。
 それまで2~3体だったのが、ここに来て、それ以上の数と運悪く対峙する事になった。
 もっとも、これだけの狂気VOIDが暴れているのだ。艦にこれ以上の損害を出さない為には、退治できた方が良いので、一概に運が悪いという訳でもないが。
「たぁ!!」
 気合の掛け声と共にイレーヌが小型VOIDをガントレットで容赦なく殴る。肉球型の衝撃波が突き抜け、そのVOIDは消滅していく。
 それを見届けないうちに彼女は魔法を行使する為に精神を集中させる。
「足を止めようか」
 一斉に襲われたら脅威かもしれないが、ここは狭い通路内だ。
 イレーヌの魔法が効果を発揮して、VOID共に黒き刃が突き刺さる。それはただの刃ではない。移動する力を奪う魔法だ。
 通路に並ぶように止まったVOIDに対し、ヘルヴェルはマテリアルの流れに意識を集中する。
「衝撃波を放ちます」
 仲間を巻き込む……というよりかは合図のように、ヘルヴェルは告げると剣を振り抜いた。
 猛烈な衝撃波が次々にVOIDへと襲い掛かる。
 身動きが取れないVOIDは目障りなハンターに対して反撃を試みた。
 並んだ目玉から負のマテリアルのレーザーが一斉に放たれる。
 一度、二度と回避したヘルヴェルだったが、敵の攻撃全てを避け切るのは困難だった。
「これは……厳しいですね」
 次の斉射が放たれる前に巨大なガントレットを構えてイレーヌが彼女の前に立った。
「この位なら受け止められるさ」
「ありがとうございます。それなら、あたしはこれで」
 ビーム攻撃をガントレットの盾部分で防ぐイレーヌとその背後からシグニスを操り攻撃を続けるヘルヴェル。
 巻貝のような大型VOIDが二人に対して先端を向けた時だった。
「簡単に撃てると思ったか」
 マテリアルのオーラで身を隠しながら迫っていたカズマが強烈な一撃は打ち込んだ。
 VOIDの先端がぐしゃっと音を立てて潰れる。
「そっちは任せた!」
 間髪入れずに攻撃を続けるカズマ。
 この巻貝のようなVOID――通称、強襲型の厄介な点は小型のVOIDを出現させる事だ。出来る限り、早期に撃破したい。
 それに、一刻も早く探索を続けないといけないのだ。
「あぁ、任されたよ」
「分かりました」
 イレーヌとヘルヴェルが応える。
 小型VOIDの攻撃はイレーヌの守りを突破できない。万が一、急所に入ったとしても聖導士の力で回復するだけだ。
 一方、二人の攻撃はVOIDに通じる。
 幾度かの攻防を経て、それほど時間が過ぎないうちにハンター達は艦に入り込んだVOIDを殲滅する事ができた。

「この端末、生きているようだな」
 強襲型VOIDが突き抜けていた先の部屋でカズマが壁に埋め込まれている端末を確認して仲間に告げる。
 どうやら士官クラスに割り当てられていた部屋のようだ。
「引き出せる?」
「このカードが有効なら……」
 端末にカードをかざすとピピっと機械音が響いた。
「セキュリティーが外れましたね。艦の全体図と……降りている隔壁も確認できます」
「よし、ここまでは狙い通りだな。CAMデッキを順に回るか」
 ハンター達は次の場所を目指して走り出した。


 狂気VOIDとの戦闘はアニスやルンルン達の方でも発生していた。
 といっても、『女将軍』の異名を持つ牡丹が一緒なのだ。戦闘は大きな問題なく対処出来ていた。
「ちょっと物足りないよ~」
 何も居なくなった虚空に向かって拳を振るう牡丹。
「無駄な時間を掛ける訳にはいかないからな。それぐらいでちょうどいいだろう」
 アニスがライフルを背負いながら言った。
 必要であれば戦闘回避も考えたが……この様子なら大丈夫だろう。
「さて……」
 注意深く周囲を観察するアニス。
 ただ気を付けてみているというものではない。猟撃士としての力だ。
 先日孝純と出会った際、少年はダクトか何かのハッチから姿を表した。通路が瓦礫や隔壁で封鎖されている以上、少年はその道を通っているはずだ。
「……ここか」
 通路の隅に管理用のパネルを見つけた。
 人が入れる大きさではないが……。
「ジュゲームリリ(中略)マジカル……ルンルン忍法分身の術!」
 ルンルンが放り投げた符が人型の式神へと変わる。
 丸っこい字で「るんるん」と書かれたそれは、アニスが開いたパネルの中へと入っていった。
「これは電気設備系の管理通路みたいですね」
「それなら、どこかに人が通れる出入口のハッチがあるはずだ」
「分かりました」
 直感でこっちだと思う方向にスィーと式神を動かした所で、這いつくばって進む少年の姿を見つけた。
 少年も「るんるん」と書かれた式神の存在に気が付く。最初は驚いた顔をしていたが、それがすぐにハンターのものと分かったようだ。
「あぁぁ! いました! 孝純くんです」
「え? どこどこ!?」
 大きな声で叫んだルンルンに牡丹が飛び掛かる。
 そのおかげで集中が途切れてしまったが、式神も遠くまで追いかけられないので無問題だろう。
「頭の良い子らしいし、追ってるの気づかれたら隠れたりもしそうですね」
 人差し指を口元に当てるルンルン。
 隠れているのなら、生命を感知する符術を行使する事もできる。
 少し考えた様子でアニスが通路の先を指さした。
「この近くにCAMデッキがあるはずだ。見つかった以上、孝純も急ぐだろう」
 隠れる可能性があるとすれば、CAMを奪い取ろうとする瞬間を見計らう間のはずだ。
 チャンスが来るまで、物陰かどこかで様子を見る可能性が高い。
 そんな時にこそ、探知系の術は極めて有効なはずだ。生命感知の術は範囲が特段に広いという訳ではないが、相手が動かなければ確実に探索場所を詰めていける事が出来る。
「向こうの班にも連絡しますね」
 ルンルンがトランシーバーを手にした。
 距離的には離れているが、場所が分かればすぐに駆け付けられるだろう。
「急ごう! 宇宙に出られたら、流石の僕でも追いかけられないからね」
 牡丹の言葉にアニスとルンルンは頷いて、走り出した。


 目指したCAMデッキは近かったが、VOIDの襲撃を受けていた。
 幸いにも大型VOIDは居ないようだが、小型VOID数体が我が物顔でデッキ内を浮遊しては、右往左往する人々に向かって負のマテリアルのレーザーを放つ。
 そんな混乱を極める中、アニスは背負ったライフルを構えもせずに周囲を観察し続けていた。
 この状況こそ、孝純が望んでいるからだ。混乱に乗じてCAMを奪うつもりなのだ。
 ルンルンも符を手にしたまま、辺りを見渡し、孝純が隠れられそうな物陰や場所を探している。
 そんな訳で、牡丹だけがVOIDに向かって走り出していた。
「VOIDは僕が相手にするから、二人は頼んだよ!」
 デッキ内の混乱をそのままにしておく事も出来ないし、牡丹が戦うのなら問題はないだろう。
 生命感知の術を使いながら探索を続けるルンルンの視界の中、影がコンテナの角から飛び出した。
「孝純くん!」
 呼びかけたが少年は止まる気はなさそうだ。
 走り去る方向には脚を損傷して頓挫している旧式のCAM。駆動系は起動しているようだ。
「……やむを得ないです! ルンルン忍法泥々の術!」
 ルンルンの符術が不可思議な結界を作る。
 それは結界に侵入した者の足元が泥状に固まる術だ。足を取られ、思うように進めない孝純にアニスが迫る。
 脚にマテリアルを集わせた力を放ちつつ、身体全体で飛び掛かった。
 縺れ合うようにアニスと孝純の二人は転がる。転がりながらもアニスは素早く孝純の身体を抑える。
 この辺り、訓練された軍人と一般人の違いだろう。そういう意味で言うとアニスの行動は相手が子供だろうが容赦ない。
「やめてよ! 母さんが、母さんが、待っているんだ!」
 なおも暴れる少年の両肩を床に強く押し当てながらアニスは叫んだ。
「この大馬鹿野郎! お前に何かあったら、籃奈の帰る場所が無くなっちまうだろうが!」
 籃奈は愛する夫を亡くし、“上司”による辛酸な日々を過ごしてきた。
 ここで孝純が居なくなってしまったら、暴走関係なしに、帰るべき居場所はなくなる。そんな事、誰も望んでいないはずだ。
「なんで……母さんの名前を?」
「決まってる。知った仲だからだ」
 少年の腕を背に回しつつ、アニスは引っ張るように孝純と立ち上がる。
 そこへルンルンが孝純の正面からギュッと抱き締めた。
「お母さんが心配な気持ちは良くわかるけど、今、外で私の仲間達がお母さん助けようと必死になってるんだから、邪魔しちゃだめです」
「だって、母さんは暴走してるんでしょ」
「一歩戦場に出れば、死はすぐ傍だ。籃奈だってそれは覚悟の上だろう……それでも、ハンター達は最善を尽くす。籃奈を助ける為に、な」
 それがハンターというものだろう。暴走する籃奈や襲ってきた狂気VOIDを船外で迎撃している者達の中には、籃奈と関りがあった者も多い。彼らを信じるしかない。
 アニスは片腕で少年を拘束しつつ、残った手で孝純のポケットをまさぐると携帯電話を取り上げる。
 その時、連絡を受けたハンター達が合流した。
「両手に花だなんて孝純もよくやるね……これは、らきすけの神の素質があるかもね」
 真っ先に駆け寄ったのはイレーヌだった。正確には両手に花ではなく、前後に花であるが。
 どこかしら安堵の表情も彼女から隠れ見えた。トントンと孝純の頭を撫でる。
「自分のしたいことをするのは大事だが、勇敢と向こう見ずは全く別だぞ」
「イレーヌさん……」
「熱くなった時こそ、一度頭を空にしろ。近くに仲間がいるなら頼れ。今、孝純は1人ではないのだから」
「でも、僕は皆さんのように強くない……足を引っ張るだけで……」
「強いとか弱いとか、そんなもの“仲間”に関係ないだろ」
 微笑を浮かべて少年の頭をコツンと小突く。
 妙に真面目で責任感がある少年だから考え込んでしまうのだろう。
 こうなれば勝手に逃げ出す事はないと判断し、アニスが拘束を解く。
「外の状況を確認したいな。モニターを探すついでに牡丹にも声を掛けてくる」
 少年から離れ、駆け出しながらアニスは先程奪った携帯電話を確認した。
 噂になっている例のアプリはインストールされていないようだった。
 戦況を伝える艦内放送に耳を傾ける孝純。ハンター達が対応しているといっても不安なものは不安なのだろう。
「マテリアルはな……強い感情に反応する傾向があるんだ」
 そう告げながらカズマが少年に向き合う。
「感情に?」
「クリムゾンウェストでは、強い感情を込めた祈りが時として、力になる」
 それをハンター達は“マテリアルリンク”と呼んでいる。
 どういう原理かは分からないが……祈りが届いたことを経験した者もハンターの中にはいるはずだ。
 もっとも、覚醒者ではない孝純には出来ない事ではあるのだが……。
 スッとヘルヴェルがパイロットインカムのマイクを近づける為に顔を寄せる。
「外で戦うハンター達に通信が繋がっているわ」
 カズマが念の為、通信距離を伸ばす機導術を行使しながら孝純に言う。
「ハンター達の機体を通じて、籃奈に声が届くはずだ」
「で、でも、なんて言えば……」
 狼狽える少年の前にアニスが牡丹を連れて戻って来た。
 どこから拝借したのか、小型のモニターが乗ったカートを牡丹が押している。モニターには外での戦闘の様子が映し出されていた。
「これに母さんが!?」
 モニターに食い入るように少年が釘付けになった。
 ハンター達の機体の追撃を恐ろしい程の速さで引き離そうとする星加機。その機動も尋常ではない事をこの場の誰もが理解した。
 あれでは、中のパイロットは無事では済まないだろう。
「……僕は、僕はどうすれば……」
 少年の目から見ても、自分が外に出た所でどうにもならないと分かっただろう。
 目に涙を浮かべ、両肩を落とす孝純にヘルヴェルが優しく言った。
「それでも、孝純くんの声は聞こえているはずよ」
「だとしても、なんて言えば……これじゃ、母さん、何も聞いてないよ!」
「難しい事はないわ。孝純くん……叫んで! 思いを込めて、此処でできることを!」
 ヘルヴェルの言葉を聞いて少年はハンター達を見渡す。
 頷いたハンター達に応えるように、孝純は叫んだ。
「か……母さん!」
 モニターに映る籃奈の機体に変化見られない。
 それでも、少年の叫びは続いた。幾度も繰り返して。
「母さん! 母さん!」
 心の奥底から、力の限り叫ぶ孝純の声。
 直後、機体がピタリと止まったように見えた。
 機体を追い掛けていたカメラがその挙動についていけなくなり、画面から外れる。
 カメラが再び星加機を捉えた時、濃紺色のエクスシアが近接戦を挑む所だった。
 手に汗握る一瞬。
 攻撃を受け止められながらもエクスシアが苦しい体勢から強引に可変機銃を星加機に叩きつけた。
 それが決め手となったようで、暴走機体は停止する。
「母さんは!?」
 悲痛な少年の叫び。少し間が空いてから通信機を通じてハンターの声が聞こえた。
「……大丈夫だ。これぐらいでは強化人間は死なない。重要参考人を確保。ジェミニ管制、最寄りの格納庫に運ぶ。受け入れ準備を頼む」
 その言葉に歓声が上がる。
 孝純は大粒の涙を流しながら座り込んだ。
「なんとかなりましたね」
 ホッとした表情を浮かべ、ヘルヴェルが言った。
 一時はどうなる事かと思っただけに、安堵しない訳がない。
 孝純がCAMを奪って外に出たとしてもVOIDの攻撃を受けて撃墜されるか、運良く、母親の所に辿り着いても何も出来なかっただろう。
 最悪、少年の目の前で母親を討つことだってあり得たかもしれない。
「さっきのカードをあるか?」
 ヘルヴェルの様子に頷きながらカズマは尋ねる。
 さっきのカードとは、端末を操作する際に使ったものだ。
「運がよければ、ここのデッキに、と思ってさ」
「それなら……孝純くんに、幸運を」
 グローブに軽くキスしてから、ヘルヴェルはカズマにカードを渡す。
 彼が何をしようとしているのか、大体予想はついた。籃奈の機体を受け入れる格納庫を、今いるデッキに指定させるつもりなのだろう。
 結構重要なセキュリティー情報まで把握できるカードだ。士官の中でも上の方、もしかして将官クラスの可能性もある。
 端末に取り付いたカズマがパネルを何回かタッチする。
「……凄いな、このカード」
 恐らく通常であれば暗証番号や認証を求めてくるだろうが、戦闘での混乱の影響か、あるいはデッキ選択というレベルであればという事だったのか、カズマの狙い通りに手配が出来た。
「よし、受け入れ準備だ!」
「え? ここに来るの? 機体を受け止めればいいの?」
 間抜けな返事をした牡丹に苦笑を浮かべるカズマ。
 流石の牡丹といえども、生身でCAMを受け止める訳にはいかないだろう。
 というか、もし受け止められたとしても、中で気を失っているとみられる籃奈が、その衝撃を受ける事になる。
「アニスの指示に従えばいいと思うよ、牡丹」
 いつの間にか、イレーヌが女将軍の尻を撫でながら応えた。
「緊急着艦用のネットがあるはずだ。それを使う」
 既に走り出しているアニスが答えた。
 突然の事に慌ただしくなるデッキ。幸い、幾人かの整備兵も残っていたので手伝ってくれる様子だ。
「孝純くんも行こう」
「そうですよ。お母さんを迎えないと」
 座り込んでキョトンとする少年にルンルンとヘルヴェルが声を掛けた。
 少年は涙を二の腕で拭うと、力強く頷く。
「はい! 皆さん、ありがとうございます!」
「宇宙服の着用を忘れるなよ」
 注意を呼び掛けるカズマの言葉がデッキ内に響いていった。


 暴走する強化人間と狂気VOIDに襲われた特務双艦ジェミニの艦内で行方不明になった孝純をハンター達は発見・保護する事が出来た。
 また、孝純へのハンター達の言葉・接し方が、結果的に暴走状態の籃奈を止めるキッカケとなり、籃奈を暴走状態から救い出す事も出来たのであった。



 応急手当を受けた籃奈はすぐに救護室へと運ばれた。
 今の所、昏睡している状態だが、命に別状はないとの事だ。
「母さん、お帰りなさい」
 穏やかな寝息を立てる籃奈の傍で孝純が呼び掛ける。
 この軍艦は月面基地へと向かう予定だと軍医から教えて貰った。
 なんでも、暴走した強化人間が集められている……らしい。
「……母さん、ごめんなさい。僕、まだ、やる事があるよ」
 少年が手にしているのは母が持っていた手帳。
 その中には、直前の任務の事が書かれていた。
 廃棄コロニーの制圧とその途上における強化人間達の暴走と反乱……。
「この手帳を軍の偉い人に渡しても動いてくれる保証がないなら……やっぱり、ハンターの皆さんにお願いするしかない」
 強い決意を抱きながら少年は手帳を見つめ続けるのであった。


 『【空蒼】恨絶の狂機 ∞機目』に続く――。

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MVP一覧

  • 絆を繋ぐ
    ヘルヴェルka4784
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜ka5784

重体一覧

参加者一覧

  • 赤黒の雷鳴
    アニス・テスタロッサ(ka0141
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 絆を繋ぐ
    ヘルヴェル(ka4784
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
ヘルヴェル(ka4784
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/09/10 18:06:32
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/08 18:02:41
アイコン 【相談】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/09/15 00:12:11