ゲスト
(ka0000)
泳ぎを教えて!
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/17 12:00
- 完成日
- 2018/09/18 15:36
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●少年は泳げない
その村は川沿いに発展した村だった。
川と共に生き、死ぬ。村人は皆泳げるのが当たり前で、泳げない者の方が少数派だった。
しかし、村人たちの中で少年だけが泳げなかった。
誤って川に落ちて溺れたことがあり、それ以来水が怖くて顔を水につけることすらできなくなったのだ。
村では泳げることの方が当たり前で、少年くらいの年齢で泳げないのはむしろ遅い方だといえた。
少年よりも年下の子どもでも、既に泳げる子がいるくらいだ。
川の恵みで生計を立てている村では、泳げるようにならなければ一人前とは見られない。
当然子どものコミュニティでも、泳げる者の方が発言権が強く、少年の立場は低かった。
●水泳勝負
ある日、少年は友人と喧嘩した。
友人は泳ぎが得意で、少年が泳げないことを馬鹿にしたからだった。
「見てろ! すぐに泳げるようになるからな!」
「すぐっていつだよ!」
「い、一週間後だ!」
「本当か!? じゃあ一週間後に勝負しようぜ!」
売り言葉に買い言葉で、少年は水泳勝負を約束してしまう。
全く泳げない少年は我に返って顔色を青くしたが、今更後悔しても後の祭りだった。
(ど、どうしよう……)
悩んでいるうちにも、時間は過ぎていく。
少年が祭りで水泳勝負をするという噂は、子どものコミュニティを通じて村中に広まった。
元よりそれほど広い村ではないので、村の隅々まで噂が広まるのに、それほど時間を必要とはしなかった。
「あいつ、一週間後に水泳勝負をするらしいぞ!」
「マジか! 泳げないのに大丈夫なのかよ!」
「水に顔すらつけられないんだから、あいつの負けに決まってるだろ!」
子どもたちは少年の話で盛り上がるが、肝心の少年は全く泳げるようになっていない。
水に顔すらつけられないのだから当然のことで、少年自身にはどうしようもないことだ。
自分が泳げないことは、少年自身が一番よく分かっている。
そして、一人では泳げるようになる見込みがほぼないことも。
「な、何とかしなきゃ……!」
悲壮な顔で少年は決意を固めた。
村の大人たちに相談して、知恵を借りた結果、ハンターを頼ることになった。
それほどまでに、少年のトラウマは根深かったのである。
●助けてハンターさん!
ハンターズソサエティで、公開前の依頼を整理していた受付嬢ジェーン・ドゥは、数ある依頼に紛れていたとある依頼に目を留めた。
「……今度は泳ぎの指導依頼ですか」
内容はこうだ。
水泳勝負をすることになり、本番までに泳げるようになりたいので、ハンターの指導を求む。
「まあ、放っておいても問題ないでしょうし、公開してしまいましょう」
一人頷くと、ジェーンは依頼を公開する手続きを始めた。
その村は川沿いに発展した村だった。
川と共に生き、死ぬ。村人は皆泳げるのが当たり前で、泳げない者の方が少数派だった。
しかし、村人たちの中で少年だけが泳げなかった。
誤って川に落ちて溺れたことがあり、それ以来水が怖くて顔を水につけることすらできなくなったのだ。
村では泳げることの方が当たり前で、少年くらいの年齢で泳げないのはむしろ遅い方だといえた。
少年よりも年下の子どもでも、既に泳げる子がいるくらいだ。
川の恵みで生計を立てている村では、泳げるようにならなければ一人前とは見られない。
当然子どものコミュニティでも、泳げる者の方が発言権が強く、少年の立場は低かった。
●水泳勝負
ある日、少年は友人と喧嘩した。
友人は泳ぎが得意で、少年が泳げないことを馬鹿にしたからだった。
「見てろ! すぐに泳げるようになるからな!」
「すぐっていつだよ!」
「い、一週間後だ!」
「本当か!? じゃあ一週間後に勝負しようぜ!」
売り言葉に買い言葉で、少年は水泳勝負を約束してしまう。
全く泳げない少年は我に返って顔色を青くしたが、今更後悔しても後の祭りだった。
(ど、どうしよう……)
悩んでいるうちにも、時間は過ぎていく。
少年が祭りで水泳勝負をするという噂は、子どものコミュニティを通じて村中に広まった。
元よりそれほど広い村ではないので、村の隅々まで噂が広まるのに、それほど時間を必要とはしなかった。
「あいつ、一週間後に水泳勝負をするらしいぞ!」
「マジか! 泳げないのに大丈夫なのかよ!」
「水に顔すらつけられないんだから、あいつの負けに決まってるだろ!」
子どもたちは少年の話で盛り上がるが、肝心の少年は全く泳げるようになっていない。
水に顔すらつけられないのだから当然のことで、少年自身にはどうしようもないことだ。
自分が泳げないことは、少年自身が一番よく分かっている。
そして、一人では泳げるようになる見込みがほぼないことも。
「な、何とかしなきゃ……!」
悲壮な顔で少年は決意を固めた。
村の大人たちに相談して、知恵を借りた結果、ハンターを頼ることになった。
それほどまでに、少年のトラウマは根深かったのである。
●助けてハンターさん!
ハンターズソサエティで、公開前の依頼を整理していた受付嬢ジェーン・ドゥは、数ある依頼に紛れていたとある依頼に目を留めた。
「……今度は泳ぎの指導依頼ですか」
内容はこうだ。
水泳勝負をすることになり、本番までに泳げるようになりたいので、ハンターの指導を求む。
「まあ、放っておいても問題ないでしょうし、公開してしまいましょう」
一人頷くと、ジェーンは依頼を公開する手続きを始めた。
リプレイ本文
●ではさっそく
少年は、自信なさげな表情を浮かべ、か細い声でピタと名乗った。
水着姿でピタの前に立つボルディア・コンフラムス(ka0796)は、始める前から既に教える気満々だった。
「ほー……お前か、泳げるようになりてぇってのは。よっしゃ任せとけ! 島生まれの本気ってヤツを見せてやるよ!」
まずはどれだけ泳げないのか実際に見るため、何気なくしかしピタの抵抗をものともせず強制的に川に引きずり込む。
ピタが泳げるように特訓する目的で依頼に参加した夢路 まよい(ka1328)は、まずは水に対する恐怖心を克服してもらおうと考えていた。
「水に入ったけど、結果的に大丈夫だったっていう経験を重ねないとね。極端な話、溺れても大丈夫、くらいの安心感を持てる状況で練習できたらいいんだけど」
目の前の状況を見ると、少し厳しいか。
学生時代は水泳部に所属していた雨月彩萌(ka3925)は、トラウマの対象は違えど、同じような境遇にあるピタを、応援するのもまた良しと考える。
「トラウマを抱える少年ですか。理由はどうあれトラウマと向き合い、克服する機会を得たのは幸運ですね」
ピタを落ち着かせ、まずはトラウマ克服の第一歩として水に顔をつける事を勧めた。
一緒に泳ぐ為水着を着て参加したレイア・アローネ(ka4082)は、とりあえず子供にスパルタして水嫌いにさせるような事だけは避けようと考えていた。
「泳ぎたい、か。うん、いいではないか、前向きに頑張るのは好きだぞ私。しかし一週間は厳しいな……」
とはいっても、レイアが持っている水着は前に依頼で着用したビキニだけなのだが。
星野 ハナ(ka5852)は黒の悩殺ビキニで参上した。
「若人の悩殺訓練ですぅ? ジェーンさん分かってらっしゃるじゃないですかぁ」
少年にシュノーケル付ゴーグルを贈り、両腕で胸の谷間強調しつつ少年の前に座り込み下から上目遣いで見つめる。
「泳ぎを教える先生の1人、星野ハナですぅ。ピタくんをぉ、立派な潜水マーにしてあげますぅ」
水着姿の女性たちに囲まれたピタは、水が怖いやら女の人の裸を見るのが恥ずかしいやらで、川の中で顔を真っ青にしたり真っ赤にしたりしてあわあわしている。
さあ、依頼の始まりだ!
●普通の水泳授業になるはずがない
溺れそうになったピタを自分の体に掴まらせつつ、ボルディアはまずは水に慣れさせることから始めた。
「あー、大丈夫だ大丈夫だ。恐けりゃそのまま掴まっとけ。……おい、テメェどこ掴んでんだ、エロガキ」
「ご、ごめんなさい!」
いっぱいいっぱいだったピタは自分の手が胸やら尻やらに触れているのに全く気付いていなかったらしい。
触れた感触を思い出してしまって、ピタは顔を真っ赤にして首を横に振り、煩悩を追い出す。
ボルディアはピタの両手を掴んで離れないようにして、そのまま川にプカーと浮かばせた。
「ほら、支えてやるから力を抜け。いい感じに力が抜けたらそのままバタ足な」
後は補助なしでできるようになるまで繰り返すのみ。
ちょっとでも進歩が見てとれたら頭を撫でて褒め、ピタのやる気を引き出す。
「よし、次は息継ぎとクロールを教えてやる。クロールは腕をしっかりと伸ばして大きく水を掻くように。息継ぎは、まずは顔を水につけた状態でタイミングを覚えろ。……何? 顔をつけるのが怖い? 実践で克服しろ!」
ピタを川に叩き込んだボルディアは、身体の様々な箇所を藁をも掴む思いのピタに掴まれながら、とにかく泳がせた。
やはりスパルタである。
どんな水着にしようか考えたまよいが選んだのは、まよい自身が泳いでみせるわけでもないということで、機能性を重視したものではなく、見た目を重視したお洒落なビキニ水着だ。
「戦闘依頼でもないし、水場で泳ぎの練習に付き合うわけだから、水着は着ていかないとね!」
幼く少女らしいまよいの容姿と、女性の魅力溢れるビキニ水着がアンバランスな魅力を生み出している。
まよいはワンドを手に水の精霊力を自分の体にまとわせ、水上でも地上と同じように移動できるようにした。
何度も使ったことのある魔法だが、今回は波がある時でもバランスを崩すことなく移動できるよう改良強化された特別な魔法だ。
「溺れても私がすぐに助けてあげるからね。この魔法をかければ水面を歩けるようになるから、少なくとも練習中は溺れても大丈夫だよ」
まよいはピタから不安感を取り除き、安心感を持てるように努める。
そもそも溺れる前から、実際に魔法をかけて水の上を歩くというのを体験して貰うのもありかもしれない。
いざという時はこれで助かるというのは安心感に繋がるし、水の上を歩くことで、水は怖い物という先入観を拭えるかもしれない。
着慣れた競泳水着を着用した彩萌は、まずはトラウマ克服の第一歩として水に入り、顔をつける事を勧めてみた。
「自分が何を恐れているのか、それが分かっているのなら大丈夫です。恐れを抱くのは正常な事。そして恐れるモノに向き合う事ができれば、強くなるための第一歩を踏み出せます」
ピタは彩萌の言葉に真剣な表情で耳を傾けている。
「わたしにもトラウマがあります。逃げても逃げても追いかけてきて忘れる事もできないおぞましいモノが。だからわたしは戦う事を選びました。逃げられないのなら立ち向かい、超えてみせると。理由は違いますが、トラウマと向き合い戦う事を選んだ仲です。一緒に頑張りましょう」
その言葉に影響を受けたか、ピタは水が怖くても我慢するようになった。
怖がっているままだが水に顔をつけられるようになったピタへ、彩萌は水泳部時代に身に着けた知識と技術を少しずつ丁寧に教えていく。
もちろん、ピタ自身の体力と気力を考慮し、無理をするようなら止めてピタを諫めることも忘れない。
「無理や我慢をすれば上手くなるものでもありません。うまくいかない時は手を止め、今のやり方が正しいか見直し体を休めるのも大事です」
「まずぅ、シュノーケル付きゴーグルのつけ方から勉強しましょぉ」
ピタを川の淵に座らせたハナは、ゴーグル内を水で流して自分が装着してみせ、同じことをするように促した。
「これをしてれば水も目に入らないしぃ、咥えれば息もできるでしょぉ? 水に顔を付けても今と同じ物が見えるんですぅ……先生絶対手を離さないからぁ、ちょっとだけ水の中を覗いてくれますぅ?」
ピタの手を引いて滑らないよう充分注意しながら、ゆっくりゆっくりピタをの腰が浸かるくらいの場所まで誘導する。
「シュノーケル咥えてぇ、ちゃんとすぅはぁすぅはぁしながらぁ、目も開いたままで水に顔を付けてみて下さいぃ……全然苦しくなく水の中が見えるでしょぉ?」
そのままゆっくりしゃがんで首まで水に浸かり、ハナは下を見ているピタに自分の胸の隙間がよく見えるよう強調する。
「それじゃ先生絶対手を離さないからぁ、足を地面から放してみてぇ?」
思わず凝視するピタの手を軽く引っ張り、ハナは自分の胸にピタの頭をぶつけた。
「ほら、もう浮いて泳げたよぉ。後はバタ足と手で水を掻けばもっと早く泳げますぅ」
少年は鼻血を吹いた。
どうやら刺激が強過ぎたようである。
彩萌が着ている競泳水着を見て、レイアは己の水着姿が不味かったかと思い始めていた。
教育に悪いハナに、レイアは全力でツッコミを入れたい気分だった。
ツッコミを入れたいと思いつつも、口論になったら妙な説得力で言いくるめられそうな予感もするレイアだ。
レイア自身もビキニ姿であまりハナのことはいえないのだが、これでもレイアは大真面目である。
ピタが目を覚ましたので、ハナと交代して割と真面目に指導を行う。
泳ぐ事よりもまず水に慣れることが一番大事だ。
水に顔をつけるところから始め、素潜りで遊びながら慣れさせる。
(せっかく練習するのだから、できるなら勝たせてやりたいが……)
レイアがどんなに努力しようと、これはピタの問題だ。
ピタがどんな手を使っても勝ちたいのなら協力するのもやぶさかではなかったが、ピタはそれを望まないだろう。
(彼が満足するかどうか、そちらが一番の目標だな。少なくとも練習が楽しかったとは思って欲しいよ)
仲間たちが指導した甲斐もあり、ピタは急速に泳ぐのが上手くなってきていた。
それぞれ指導者を変えて反復練習をしたのが良かったのか、もうピタが溺れるようなこともない。
これなら、本番も大丈夫だろう。
●本番の結果は……
ある時新しい依頼を探しにハンターズ・ソサエティにやってきたボルディア、まよい、彩萌、レイア、ハナの五人は、受付嬢ジェーン・ドゥに声をかけられた。
「ああ、ちょうどいいところに。今、あなた方に会いたいという方がいらっしゃっているんですよ。以前、泳ぎの練習をつけてもらったそうで、その結果報告をしたいそうで」
ああ、あの依頼だとピンときた五人は、ジェーンに案内され部屋へ移動する。
そこには、どこか赤い顔でもじもじとしているピタがいた。
「あ、あのっ! 水泳勝負、勝てました! ありがとうございます!」
頭を下げたピタの手には、ハナの贈り物であるシュノーケル付ゴーグルが大事そうに握られていた。
五人が近寄る。
思いっきりハグしたボルディアは、茹蛸のように真っ赤に染まったピタの顔色を見た。
「お? なんだ顔赤くして。一丁前に照れてやがんのか?」
もう誰も水着姿ではないのだが、もしかしたら当時の姿を思い出したのかもしれない。
「良かったね」
少年君が泳げるように特訓するという依頼を受けた目的だけでなく、泳げるようにして少年の試合自体も勝利に終わらせたことで、まよいは大いに満足していた。
そして、ピタへ注がれる眼差しが一つ。
「よく頑張りましたね」
元々勝負の結果は問うつもりはなかったが、彩萌はピタが勇気を出して一歩を踏み出したことを喜び、見守っていた。
「お前が掴み取った結果だ。胸を張れ」
実はこっそり本番では応援に行っていて、どんな結果だろうと頑張りを褒めてやろうと思っていたレイアは、先に結果を知っていたことなどおくびにも出さず、ピタと接した。
「ご褒美、要りますぅ?」
悪戯っぽく微笑んだハナが、胸を突き出すような姿勢で上からピナを覗き込む。
ピナの目が胸に吸い寄せられ、慌てて逸らされた。
初心な少年である。
こうして、今回の依頼は本当の意味で終了したのだった。
少年は、自信なさげな表情を浮かべ、か細い声でピタと名乗った。
水着姿でピタの前に立つボルディア・コンフラムス(ka0796)は、始める前から既に教える気満々だった。
「ほー……お前か、泳げるようになりてぇってのは。よっしゃ任せとけ! 島生まれの本気ってヤツを見せてやるよ!」
まずはどれだけ泳げないのか実際に見るため、何気なくしかしピタの抵抗をものともせず強制的に川に引きずり込む。
ピタが泳げるように特訓する目的で依頼に参加した夢路 まよい(ka1328)は、まずは水に対する恐怖心を克服してもらおうと考えていた。
「水に入ったけど、結果的に大丈夫だったっていう経験を重ねないとね。極端な話、溺れても大丈夫、くらいの安心感を持てる状況で練習できたらいいんだけど」
目の前の状況を見ると、少し厳しいか。
学生時代は水泳部に所属していた雨月彩萌(ka3925)は、トラウマの対象は違えど、同じような境遇にあるピタを、応援するのもまた良しと考える。
「トラウマを抱える少年ですか。理由はどうあれトラウマと向き合い、克服する機会を得たのは幸運ですね」
ピタを落ち着かせ、まずはトラウマ克服の第一歩として水に顔をつける事を勧めた。
一緒に泳ぐ為水着を着て参加したレイア・アローネ(ka4082)は、とりあえず子供にスパルタして水嫌いにさせるような事だけは避けようと考えていた。
「泳ぎたい、か。うん、いいではないか、前向きに頑張るのは好きだぞ私。しかし一週間は厳しいな……」
とはいっても、レイアが持っている水着は前に依頼で着用したビキニだけなのだが。
星野 ハナ(ka5852)は黒の悩殺ビキニで参上した。
「若人の悩殺訓練ですぅ? ジェーンさん分かってらっしゃるじゃないですかぁ」
少年にシュノーケル付ゴーグルを贈り、両腕で胸の谷間強調しつつ少年の前に座り込み下から上目遣いで見つめる。
「泳ぎを教える先生の1人、星野ハナですぅ。ピタくんをぉ、立派な潜水マーにしてあげますぅ」
水着姿の女性たちに囲まれたピタは、水が怖いやら女の人の裸を見るのが恥ずかしいやらで、川の中で顔を真っ青にしたり真っ赤にしたりしてあわあわしている。
さあ、依頼の始まりだ!
●普通の水泳授業になるはずがない
溺れそうになったピタを自分の体に掴まらせつつ、ボルディアはまずは水に慣れさせることから始めた。
「あー、大丈夫だ大丈夫だ。恐けりゃそのまま掴まっとけ。……おい、テメェどこ掴んでんだ、エロガキ」
「ご、ごめんなさい!」
いっぱいいっぱいだったピタは自分の手が胸やら尻やらに触れているのに全く気付いていなかったらしい。
触れた感触を思い出してしまって、ピタは顔を真っ赤にして首を横に振り、煩悩を追い出す。
ボルディアはピタの両手を掴んで離れないようにして、そのまま川にプカーと浮かばせた。
「ほら、支えてやるから力を抜け。いい感じに力が抜けたらそのままバタ足な」
後は補助なしでできるようになるまで繰り返すのみ。
ちょっとでも進歩が見てとれたら頭を撫でて褒め、ピタのやる気を引き出す。
「よし、次は息継ぎとクロールを教えてやる。クロールは腕をしっかりと伸ばして大きく水を掻くように。息継ぎは、まずは顔を水につけた状態でタイミングを覚えろ。……何? 顔をつけるのが怖い? 実践で克服しろ!」
ピタを川に叩き込んだボルディアは、身体の様々な箇所を藁をも掴む思いのピタに掴まれながら、とにかく泳がせた。
やはりスパルタである。
どんな水着にしようか考えたまよいが選んだのは、まよい自身が泳いでみせるわけでもないということで、機能性を重視したものではなく、見た目を重視したお洒落なビキニ水着だ。
「戦闘依頼でもないし、水場で泳ぎの練習に付き合うわけだから、水着は着ていかないとね!」
幼く少女らしいまよいの容姿と、女性の魅力溢れるビキニ水着がアンバランスな魅力を生み出している。
まよいはワンドを手に水の精霊力を自分の体にまとわせ、水上でも地上と同じように移動できるようにした。
何度も使ったことのある魔法だが、今回は波がある時でもバランスを崩すことなく移動できるよう改良強化された特別な魔法だ。
「溺れても私がすぐに助けてあげるからね。この魔法をかければ水面を歩けるようになるから、少なくとも練習中は溺れても大丈夫だよ」
まよいはピタから不安感を取り除き、安心感を持てるように努める。
そもそも溺れる前から、実際に魔法をかけて水の上を歩くというのを体験して貰うのもありかもしれない。
いざという時はこれで助かるというのは安心感に繋がるし、水の上を歩くことで、水は怖い物という先入観を拭えるかもしれない。
着慣れた競泳水着を着用した彩萌は、まずはトラウマ克服の第一歩として水に入り、顔をつける事を勧めてみた。
「自分が何を恐れているのか、それが分かっているのなら大丈夫です。恐れを抱くのは正常な事。そして恐れるモノに向き合う事ができれば、強くなるための第一歩を踏み出せます」
ピタは彩萌の言葉に真剣な表情で耳を傾けている。
「わたしにもトラウマがあります。逃げても逃げても追いかけてきて忘れる事もできないおぞましいモノが。だからわたしは戦う事を選びました。逃げられないのなら立ち向かい、超えてみせると。理由は違いますが、トラウマと向き合い戦う事を選んだ仲です。一緒に頑張りましょう」
その言葉に影響を受けたか、ピタは水が怖くても我慢するようになった。
怖がっているままだが水に顔をつけられるようになったピタへ、彩萌は水泳部時代に身に着けた知識と技術を少しずつ丁寧に教えていく。
もちろん、ピタ自身の体力と気力を考慮し、無理をするようなら止めてピタを諫めることも忘れない。
「無理や我慢をすれば上手くなるものでもありません。うまくいかない時は手を止め、今のやり方が正しいか見直し体を休めるのも大事です」
「まずぅ、シュノーケル付きゴーグルのつけ方から勉強しましょぉ」
ピタを川の淵に座らせたハナは、ゴーグル内を水で流して自分が装着してみせ、同じことをするように促した。
「これをしてれば水も目に入らないしぃ、咥えれば息もできるでしょぉ? 水に顔を付けても今と同じ物が見えるんですぅ……先生絶対手を離さないからぁ、ちょっとだけ水の中を覗いてくれますぅ?」
ピタの手を引いて滑らないよう充分注意しながら、ゆっくりゆっくりピタをの腰が浸かるくらいの場所まで誘導する。
「シュノーケル咥えてぇ、ちゃんとすぅはぁすぅはぁしながらぁ、目も開いたままで水に顔を付けてみて下さいぃ……全然苦しくなく水の中が見えるでしょぉ?」
そのままゆっくりしゃがんで首まで水に浸かり、ハナは下を見ているピタに自分の胸の隙間がよく見えるよう強調する。
「それじゃ先生絶対手を離さないからぁ、足を地面から放してみてぇ?」
思わず凝視するピタの手を軽く引っ張り、ハナは自分の胸にピタの頭をぶつけた。
「ほら、もう浮いて泳げたよぉ。後はバタ足と手で水を掻けばもっと早く泳げますぅ」
少年は鼻血を吹いた。
どうやら刺激が強過ぎたようである。
彩萌が着ている競泳水着を見て、レイアは己の水着姿が不味かったかと思い始めていた。
教育に悪いハナに、レイアは全力でツッコミを入れたい気分だった。
ツッコミを入れたいと思いつつも、口論になったら妙な説得力で言いくるめられそうな予感もするレイアだ。
レイア自身もビキニ姿であまりハナのことはいえないのだが、これでもレイアは大真面目である。
ピタが目を覚ましたので、ハナと交代して割と真面目に指導を行う。
泳ぐ事よりもまず水に慣れることが一番大事だ。
水に顔をつけるところから始め、素潜りで遊びながら慣れさせる。
(せっかく練習するのだから、できるなら勝たせてやりたいが……)
レイアがどんなに努力しようと、これはピタの問題だ。
ピタがどんな手を使っても勝ちたいのなら協力するのもやぶさかではなかったが、ピタはそれを望まないだろう。
(彼が満足するかどうか、そちらが一番の目標だな。少なくとも練習が楽しかったとは思って欲しいよ)
仲間たちが指導した甲斐もあり、ピタは急速に泳ぐのが上手くなってきていた。
それぞれ指導者を変えて反復練習をしたのが良かったのか、もうピタが溺れるようなこともない。
これなら、本番も大丈夫だろう。
●本番の結果は……
ある時新しい依頼を探しにハンターズ・ソサエティにやってきたボルディア、まよい、彩萌、レイア、ハナの五人は、受付嬢ジェーン・ドゥに声をかけられた。
「ああ、ちょうどいいところに。今、あなた方に会いたいという方がいらっしゃっているんですよ。以前、泳ぎの練習をつけてもらったそうで、その結果報告をしたいそうで」
ああ、あの依頼だとピンときた五人は、ジェーンに案内され部屋へ移動する。
そこには、どこか赤い顔でもじもじとしているピタがいた。
「あ、あのっ! 水泳勝負、勝てました! ありがとうございます!」
頭を下げたピタの手には、ハナの贈り物であるシュノーケル付ゴーグルが大事そうに握られていた。
五人が近寄る。
思いっきりハグしたボルディアは、茹蛸のように真っ赤に染まったピタの顔色を見た。
「お? なんだ顔赤くして。一丁前に照れてやがんのか?」
もう誰も水着姿ではないのだが、もしかしたら当時の姿を思い出したのかもしれない。
「良かったね」
少年君が泳げるように特訓するという依頼を受けた目的だけでなく、泳げるようにして少年の試合自体も勝利に終わらせたことで、まよいは大いに満足していた。
そして、ピタへ注がれる眼差しが一つ。
「よく頑張りましたね」
元々勝負の結果は問うつもりはなかったが、彩萌はピタが勇気を出して一歩を踏み出したことを喜び、見守っていた。
「お前が掴み取った結果だ。胸を張れ」
実はこっそり本番では応援に行っていて、どんな結果だろうと頑張りを褒めてやろうと思っていたレイアは、先に結果を知っていたことなどおくびにも出さず、ピタと接した。
「ご褒美、要りますぅ?」
悪戯っぽく微笑んだハナが、胸を突き出すような姿勢で上からピナを覗き込む。
ピナの目が胸に吸い寄せられ、慌てて逸らされた。
初心な少年である。
こうして、今回の依頼は本当の意味で終了したのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 6人 |
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重体一覧
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サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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水泳教室 レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/09/17 09:46:01 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/16 16:37:04 |