ゲスト
(ka0000)
黒き蹂躙者
マスター:四方鴉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 5~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2014/12/29 12:00
- 完成日
- 2015/03/11 11:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●森に潜むは黒き群れ
冬の訪れ、寒風吹き荒び落ち葉舞い散るその森に、数多の影がその姿を現していた。
森の中ほど、滾々と湧き出る清水から生じるマテリアル、それを喰らい尽くさんとして集結した蟻型の雑魔たちである。
漆黒の体躯から繰り出される膂力は邪魔な木々を押し倒し、齧り切り、森の形を変えて行く。
そして作り出された進路を進む、一際大きな体躯の個体。それはまさに女王の風格、大移動を指揮した女王蟻と呼べる存在である。
傍に控える影はその腕が巨大な鎌へと変貌、さらに甲殻も先を進む個体とは違い鋭く伸びたトゲ、何重にも重なり合うように形成された外骨格の甲冑は親衛隊とも呼べる存在。
ならば、道を作りし数多の固体は働き蟻であり歩兵という立ち位置か。
個々の力量は低くとも、数の暴力にて蹂躙するその姿は単純だからこそ効果の見込める人海戦術そのもの。
ただひたすらに突き進み、目的たる水源からのマテリアルを喰らい尽くすべく猛進する黒き群れ。
落ち葉に隠れた地面の凹凸も6本足の安定性にて走破、見通し悪き雑木や下草を噛み切り踏みしだき進路を確保、獣道を用いず一直線にて泉を目指す進軍速度は遅いが黒き重圧が其処には存在。
ただ、その猛進を見つめる幾つもの目が、木々の合間から覗いていた事を蟻達は知る由もなかった。
●
「はいはいはーい、アリだーっ! ってワケで、アリ駆除人員一斉募集でーすよーっと♪」
集まったハンターを前にハイテンションにて受付嬢が説明開始、雑魔退治の人員を募っていた。
今回の目的は、とある森に存在する泉、其処を目指し進軍する大量の蟻型雑魔の群れを排除する事が目的だ。
「敵の編成はザ・女王蟻ってのが1匹、親衛隊というか、普通の個体より強い戦闘向けのが4匹、あと働き蟻がいっぱいって所ですね。
最近、森の様子がおかしいって近隣の村が狩人を雇って森の様子を窺ってたんですが、それはどうやらマテリアルの気配を感じた働き蟻が森を徘徊してたのが原因だったみたいですねー。
んで、何日かしたら大移動、群れ全体で水源ってかマテリアル目指して突っ込んできたってわけですよ! 貴重な水源を潰されるのは困るってことで、近隣の村から協同依頼、手早く蟻の群れをやっちゃって欲しいそうですけど、時間が無いんで急いで向かっちゃって下さいな」
取りまとめられた資料には総数不明の一文字と共に、一際目立つ固体情報が細かく報告。
数日間、雑魔の様子を窺っていたベテラン狩人の目が調べた情報がしっかりと書き込まれ、如何なる行動様式かを知るという情報面での優位性。
さらには、個々の能力が低いという点もあり、女王蟻と親衛隊には多少手こずるだろうが物量以外に危険な要素は無いという事が見て取れた。
「情報としては以上です。地形は少々見通しの悪い雑木とかがありますけど、相手は無理矢理切り開いて進軍してるので速度は遅く、先制攻撃は楽にとれるでしょう。
群れで移動してますし、先回りからの待ち伏せとかいきなり中枢に切り込んでいくとか、お好きな作戦でちゃっちゃと駆除しちゃってくださいね。
あ、でも、巣がないから水攻めで全滅とかちょっと火薬を仕込んで爆破、とか出来ないのは残念ですねー。こう、蟻の巣って壊したくなっちゃわないですか? ちょっと刺激あたえたら慌てて出てくるところとかもう、楽しくって。そこをプチプチと……って、ちょっと、何話しの途中で出発してるんですかぁー!?」
ハイテンションは別に良い、資料も渡した、必要な説明は既に受けた。
長々と蟻の巣に対する思いを語る受付嬢に対し、これ以上長話は無用だと顔をあわせたハンター達はとっとと出発。
後ろから無駄に語る受付嬢の叫びが聞こえた気がしたが、きっと気のせいであろう。
冬の訪れ、寒風吹き荒び落ち葉舞い散るその森に、数多の影がその姿を現していた。
森の中ほど、滾々と湧き出る清水から生じるマテリアル、それを喰らい尽くさんとして集結した蟻型の雑魔たちである。
漆黒の体躯から繰り出される膂力は邪魔な木々を押し倒し、齧り切り、森の形を変えて行く。
そして作り出された進路を進む、一際大きな体躯の個体。それはまさに女王の風格、大移動を指揮した女王蟻と呼べる存在である。
傍に控える影はその腕が巨大な鎌へと変貌、さらに甲殻も先を進む個体とは違い鋭く伸びたトゲ、何重にも重なり合うように形成された外骨格の甲冑は親衛隊とも呼べる存在。
ならば、道を作りし数多の固体は働き蟻であり歩兵という立ち位置か。
個々の力量は低くとも、数の暴力にて蹂躙するその姿は単純だからこそ効果の見込める人海戦術そのもの。
ただひたすらに突き進み、目的たる水源からのマテリアルを喰らい尽くすべく猛進する黒き群れ。
落ち葉に隠れた地面の凹凸も6本足の安定性にて走破、見通し悪き雑木や下草を噛み切り踏みしだき進路を確保、獣道を用いず一直線にて泉を目指す進軍速度は遅いが黒き重圧が其処には存在。
ただ、その猛進を見つめる幾つもの目が、木々の合間から覗いていた事を蟻達は知る由もなかった。
●
「はいはいはーい、アリだーっ! ってワケで、アリ駆除人員一斉募集でーすよーっと♪」
集まったハンターを前にハイテンションにて受付嬢が説明開始、雑魔退治の人員を募っていた。
今回の目的は、とある森に存在する泉、其処を目指し進軍する大量の蟻型雑魔の群れを排除する事が目的だ。
「敵の編成はザ・女王蟻ってのが1匹、親衛隊というか、普通の個体より強い戦闘向けのが4匹、あと働き蟻がいっぱいって所ですね。
最近、森の様子がおかしいって近隣の村が狩人を雇って森の様子を窺ってたんですが、それはどうやらマテリアルの気配を感じた働き蟻が森を徘徊してたのが原因だったみたいですねー。
んで、何日かしたら大移動、群れ全体で水源ってかマテリアル目指して突っ込んできたってわけですよ! 貴重な水源を潰されるのは困るってことで、近隣の村から協同依頼、手早く蟻の群れをやっちゃって欲しいそうですけど、時間が無いんで急いで向かっちゃって下さいな」
取りまとめられた資料には総数不明の一文字と共に、一際目立つ固体情報が細かく報告。
数日間、雑魔の様子を窺っていたベテラン狩人の目が調べた情報がしっかりと書き込まれ、如何なる行動様式かを知るという情報面での優位性。
さらには、個々の能力が低いという点もあり、女王蟻と親衛隊には多少手こずるだろうが物量以外に危険な要素は無いという事が見て取れた。
「情報としては以上です。地形は少々見通しの悪い雑木とかがありますけど、相手は無理矢理切り開いて進軍してるので速度は遅く、先制攻撃は楽にとれるでしょう。
群れで移動してますし、先回りからの待ち伏せとかいきなり中枢に切り込んでいくとか、お好きな作戦でちゃっちゃと駆除しちゃってくださいね。
あ、でも、巣がないから水攻めで全滅とかちょっと火薬を仕込んで爆破、とか出来ないのは残念ですねー。こう、蟻の巣って壊したくなっちゃわないですか? ちょっと刺激あたえたら慌てて出てくるところとかもう、楽しくって。そこをプチプチと……って、ちょっと、何話しの途中で出発してるんですかぁー!?」
ハイテンションは別に良い、資料も渡した、必要な説明は既に受けた。
長々と蟻の巣に対する思いを語る受付嬢に対し、これ以上長話は無用だと顔をあわせたハンター達はとっとと出発。
後ろから無駄に語る受付嬢の叫びが聞こえた気がしたが、きっと気のせいであろう。
リプレイ本文
●奇襲
「――見えた。情報通り数が多いな」
蟻の進行予測地点に来たハンターたちは、レイス(ka1541)の言葉に顔を向ける。
森の中。木々の間からうかがえば……ほどなく、北からやってくる黒い軍勢が見えた。
10人は素速く左右に分かれ、木陰や樹上に身を潜めた。待ち伏せる態勢だ。
向かって左側、仲間と頷きあったヴァイス(ka0364)はトランシーバーを取り出す。
「こっちはいつでも合図で飛び出せるぜ」
「こちらも状態は万全です。息を合わせて、参りましょう」
同じくトランシーバーで答えたのは、反対側の藤田 武(ka3286)。皆に合図を出せる位置で木に隠れていた。
すると、がしがし、かちかち、と――大音を上げて木を倒し、草を切り裂きながら、黒の軍団が目の前にやってきた。
先頭部分だけでも10匹を越える働き蟻の群れ――それを見送り、より大きな体を持った親衛隊蟻隊が見えたとき。
タイミングを合わせたヴァイスと武が合図すると……ばさっ! 左右から挟み込むように、10人のハンターは一斉に飛び出した。
親衛隊は……一瞬のことに、まだ反応を見せない。
そこを最初に襲ったのは、ジーナ(ka1643)の銃撃だった。
「ここで止まって果ててもらうぞ」
どうっ! リボルバーの弾丸が、左側の親衛隊蟻の1匹を穿つ。その個体は、防御も出来ず衝撃に煽られた。
同時、柊 真司(ka0705)もアサルトライフルの引き金に指をかけている。
「ここで一気にやらせてもらうぜ」
ばすっ! と胴にさらなる銃弾を受けた親衛隊蟻は、顎を鳴らしながら不意打ちにあえぐ。
それでもすぐに、態勢を直そうとするようだったが――
「そんな隙、与えると思うか!」
肉迫するのは、ヴァイス。紅蓮のオーラを身に纏いながら、打ち込むのは魔導機械による強打だ。
がぁんと音を立て、親衛隊蟻の巨体は大きく倒れ込んでいく。
その反対、右側で先陣を切ったのはレイスだ。瞬間、瞳を朱く染め、体を黒炎で覆うと――マテリアルを込めた素速い動きで、右端の1匹に樹上から接近。
「貴様らの進軍も、ここまでだ」
戦槍によるスラッシュエッジをたたき込む。関節に喰らった親衛隊蟻は半ば横倒れになってしまう。
そこへ走り込むのは、上霧 鋭(ka3535)。
「アリのバケモノ、な。だったらオレは、カミキリムシのバケモノだぜ」
ぽつりと呟いている。覚醒している鋭は、全身を黒い外骨格で覆い、体躯も長身となっていた。
腕と同化した武器で振り抜くのは、クラッシュブロウ。倒れた親衛隊の頭部に強烈な一撃を加えた。
左側では、働き蟻が異変に気付きはじめていた。かさかさと、親衛隊を守りに入るが――ずおん! その先頭がジュン・トウガ(ka2966)の斧になぎ払われた。奥に控える巨体――女王蟻を目指すジュンには、働き蟻も親衛隊もとにかく邪魔な障害物でしかない。
「ちっ、めんどいな。……というか、大量にワラワラ出てくるといえば、大量のGが伝統かとも思ってたんだが」
「むしろ、Gとか蜘蛛とか、そういうのじゃないだけマシじゃありません?」
右側からジュンに返すのは白神 霧華(ka0915)だ。霧華もウォーミングアップとばかり、奇襲を邪魔する働き蟻に、大鎌を振り回す。刃に狩られ、蟻は一撃で撃退されていた。
その間、瀕死ながらも起き上がろうとする左側の親衛蟻隊だが――ミリア・コーネリウス(ka1287)がそれを許さない。
「これでまず――1匹、頂きますよ」
両目を紅く輝かせると、剣形の紋章が浮かぶ右手を振り上げ――踏み込んで、渾身撃。ずおっ! 強力な斬撃は、弱った蟻を断ち切り――その黒い体を消滅させた。
右側では、頭部にダメージを受けた親衛隊蟻に、武がロッドを振りかぶり、打撃を与えていた。
「攻撃としては多少、浅いかも知れませんが――」
それでも、ダメージに加え、体勢を崩すことに成功していた。
そこを、柊 紅葉(ka3799)のオートマチックが正面から狙っていた。
どん、と強弾が命中。それは相当のダメージではあったが――
「こちらはまだ、倒すには至らないみたいですね」
紅葉の言葉通り、こちらの親衛隊蟻はまだ息がある。すぐに起き上がり、鎌を構えてきた。
紅葉は即座に後退。深追いはしない。
「では私たちは、働き蟻を対処しに行きますね」
言うと同時、紅葉だけではなく、女王蟻へ向かう者、ここへ残る者、働き蟻を引きつける者――全員が三班へと素速く分かれた。奇襲は、終わりだ。
「みんな、それぞれ、頼んだぜ!」
真司が走りながら声をあげる。ハンターたちは頷くと、すぐに第二の戦闘へと入った。
●軍団討伐
紅葉、ジーナ、武の3人は南側を向いていた。
働き蟻の群れが女王や親衛隊を守るため、引き返そうとしている。ジーナはそこに立ちふさがり、他班を邪魔する蟻から狙っていた。
ばすっ! ばすっ! 奇襲時から続けてリボルバーを撃ち、一体、また一体と消滅させてゆく。
「しかし、やはり数は多いな。掃討しようと思えば楽ではなさそうだ」
「とりあえずは、足止めを目標にしましょう。サポートさせて頂きます」
武が答えると、きら――と魔法の光でジーナを覆った。
プロテクション。ジーナは働き蟻の攻撃が無視できるまで防御が強まったのを実感する。
「ありがとう、助かるよ」
いいえ、と言うと武は、自身も蟻の進行を阻むように距離を置いて戦いはじめた。
ジーナの横で強弾を放ち続ける紅葉は――脇から北上を目指す働き蟻を発見する。
「あれを放っておくわけにはいきませんね。引きつけてきます」
ジーナが頷くのを背に、紅葉は木立に入り、蟻を誘導した。
(初めての依頼で雑木林とか……もっと綺麗なところに出て欲しいよね~……)
正直そんなことを思う紅葉だったが――まあ、雑魔との戦いも、つまらなくはなさそうだから。
「足を引っ張らない程度には、頑張ってみますか。……一応、村の人達のためにもね」
ばん、と紅葉の銃弾がその1匹を塵へと変えた。
ミリアとヴァイス、そして鋭とレイスは、親衛隊と戦うため、残っていた。
他班の移動と同時に、4人も交戦を続けようとする――が、先制したのは親衛隊蟻だった。
びゅおっ! 奇襲でダメージを負った1匹が反撃とばかり、至近の鋭に鎌を浴びせた。
「ぐっ……と!」
鋭はわずかに後退する……が、ダメージは無いに等しい。動物霊の力で高めていた防御力があり、うまく受け身も取れていた。
逆に、こちらから敵へクラッシュブロウを打ち込んだ。
「残念だな。オレの勝ちだ」
瀕死のその個体は防ぎきれず、散り散りになって消滅した。
「これであと2匹ですね」
ミリアが言いながら、構える。親衛隊蟻2匹は、既に群れを取り巻く異常に気付き、敵意をあらわにしていた。
1匹は即座に女王の元へ参じようとするが――ざすっ! ミリアがその個体へ、横から斬撃を喰らわせる。
さらに、ヴァイスが立ちはだかる。
「悪いが、女王の元へは行かせないぜ」
ぎぃん、と正面から親衛隊蟻を強打ではじき返していた。
もう1匹には、レイスと鋭が向かい合う。
この個体は、かちかち、と顎を鳴らすとすぐにレイスに突進してきていた。
だがレイスは退かず、素速い動きで槍を突き出すと……ずんっ!
前肢と胴体の継ぎ目に一撃を喰らわせた。
「さて、役割としては足止めだが――別に、全てを倒してしまっても構わんのだろう?」
ちゃき、と槍を構え直すレイス。鋭と共に、その蟻の逃げ道を塞ぐように立った。
ジュンと霧華、真司の3人は、女王蟻にたどり着いていた。
「うわ、デカ……」
見上げ、思わず呟くのはジュンだ。現れたその巨体、親衛隊よりも大きく、まさに女王の威容である。
女王蟻は、親衛隊が守りに来ないと見ると――自ら、牽制するように脚を振り回していた。だが、ジュンは臆したりはせず、すぐに武器を取っている。
「まあ、とにかくコレを叩き潰せばいいんだろ。やってやるよ。このアッくシュシュブりェード、で……って、噛みやすくて長い! 早口言葉かよ!」
武器名をちょっと噛みつつ、眼前の働き蟻1匹をなぎ払い――女王蟻へ突進。
そのまま懐に飛び込み、ずばっ、と斧で切り込んだ。
同時、真司は接近のリスクを避け、ライフルで脚部を狙っている。
「逃すわけにはいかねぇからな。まずは、機動力――脚を破壊させて貰うぜ」
どうっ! 強烈な威力の銃弾が的中、女王の脚の一本が、ばきんとはじけ飛んだ。
「では、私はこちらから弱体化させてもらいますね」
しゅる、と霧華が操るのはワイヤーウィップ。リーチを生かして女王の触覚に巻き付ける。
びっ、と引くと、その一本の先端をちぎるように破壊した。
と――その直後。女王が体を反らせ腹をふくらませていた。
ずおおっ! 霧華に向けて吐き出されたのは……強力な粘液のビーム。
高速で飛来するそれを、しかし霧華はとっさに前転してよけた。
ばぁん! と、当たった地面は大きくえぐれている。だが、立ち上がった霧華は無傷で、冷静であった。
「中々、面白いじゃないですか。じゃあ――こちらもさらに反撃させてもらいますね」
●激化
南方、武は仲間の支援を続けている。
祈りをかけると、柔らかく温かい光が、先頭で戦うジーナの傷を癒していく。ジーナは働き蟻に応戦しながらも振り返った。
「こちらを支援してくれるのは嬉しい、が、自身のことに気を使っているか?」
「ええ。私も、無謀なことばかりは、いたしません」
言いながら、武は迫る蟻をロッドで押し戻す。武自身、蟻を数多引きつけているが……主眼は、時間稼ぎだ。
出来ることを最大限に。これが武のハンターとしての戦い方だった。
ジーナは、その直前からリボルバーをレイピアに持ち替えている。
それで迫る蟻を――ざすっ! 1匹1匹、確実に貫いていった。
「やはり、こちらの方が本領発揮できるな」
手にしっくりと来るその剣を握って、また攻撃。そのうち、蟻は大幅に数を減らしてゆく。
そこで、紅葉が合流した。
紅葉は、木立で引きつけた蟻の群れを一通り、退治してきていた。
「紅葉、体力は平気か?」
「回復しながらですから。おそらく蟻が逆側にもいると思うのでそちらへ行きます」
ジーナに答えつつ、紅葉はすぐに反対へ向かう。
「お気をつけください。――神よ、われらに祝福を」
武が紅葉にプロテクションをかける。紅葉はありがとうございます、と応えつつ、木立に入った。
先ほどより少ないが、こちらにも蟻は潜んでいた。
「邪魔させてもらいますね~」
紅葉は円を描くように動き、木々の間を縫って蟻を翻弄しながら、どんっ、どんっ、と狙撃していく。
ほどなくその群れは全滅するが――紅葉はそこで気付いた。
遠く、親衛隊に応戦する面々に、後ろから働き蟻が迫るのが見えたのだ。
紅葉は、慌てず伝話を取り出し状況を伝える。向こうで伝話を持つメンバーが振り返るのを確認すると――自分も木立を走り、銃撃。
対親衛隊班の対処も間に合い、すぐにその蟻はいなくなった。
働き蟻の群れはもはや、風前の灯火だ。
レイスと鋭は親衛隊蟻との戦闘を継続している。
この蟻は――今度は鎌を振り回し、レイスを切り刻もうと突っ込んできていた。よりどう猛な動きだったが……レイスはそれらの攻撃を全て紙一重で回避している。
反撃するのは、後方から木を蹴って跳躍する、鋭だ。
「背中見せるなんて、殴ってくれって言ってるようなもんだぜ」
勢いをつけて、祖霊の力を纏った一撃――クラッシュブロウ。ばきん、と甲殻ごと衝撃を与えられ、親衛隊蟻は藻掻くように体を鳴動させた。
そこへレイスもすかさず戦槍での突きを入れた。
――ぎんっ! そこで親衛隊蟻が死にものぐるいで体をよじり、甲殻の硬い部分で威力を相殺した。
レイスは焦らず、間合いを取る。
「流石に、硬いところもあるか。だが、やりようはいくらでもあるぞ」
そこで、伝話に紅葉の連絡が入る。やり取りを聞いた鋭と目配せすると――レイスは背後の働き蟻が襲うと同時、身をかわし、親衛隊蟻と激突させた。
一瞬の隙に、鋭がさらなるクラッシュブロウで親衛隊蟻をふらつかせ――その体に飛び乗ったレイスが、頭部の付け根に槍を突き込む。
ずん、と槍に貫通された親衛隊蟻は……ほどなく、塵となって消滅した。
「鋭、うまく連携を取ってもらった。礼を言う」
「うまくやったのは、おまえだろ。オレはまあ、アリに負けるわけにはいかなかっただけだよ」
ヴァイスとミリアも、逆側で親衛隊蟻と交戦している。この蟻は、しばらく逃げ道を探っていたようだが……2人に挟まれたと見ると、一転して鎌で斬りかかってきた。
突撃されたのはミリア。だが、ミリアは構えを解かず、よけもしない。
「はぁっ――!」
巧みに大剣を操り――きぃん! 鎌の攻撃をはじく。すると相手が追撃をするのを許さず、踏み込んで、突き。真正面から頭部へ重いダメージを与えた。
「アリごときに、この剣は折れませんよ」
衝撃でたたらを踏む親衛隊蟻を横から追撃するのは、ヴァイス。
「逆に、こいつを真っ二つにしてやろう」
リボルビングソーによる強打を打ち込んだ。ずん、と甲殻ごとねじ伏せるような威力の一撃は、蟻の体力を一気にもぎ取る。
そこで紅葉から連絡が入る。背後からの、働き蟻の残党だ。
ヴァイスが親衛隊を警戒しつつもそれらを手早く仕留めていくと……親衛隊蟻はチャンスと見たか、女王の方へ素速く動きかけた。
だが――ミリアが立ちはだかり、またも正面から、大剣での一撃。
がきんっ! 防ぐ余裕もない親衛隊蟻は、鎌を綺麗に断ち切られた。
「この大剣に断てぬものなど……すいません今まで結構ありました」
「あるのかよっ」と小さく突っ込みを入れつつも、ヴァイスは大きな隙を見せる形となった親衛隊蟻の背を逃さない。
「眼前の敵から注意を逸らすのは……迂闊すぎだぜ!」
攻めの構えからの渾身撃。苦しむ間もなく、親衛隊蟻は藻屑のように消え去った。
●虚空へと
群れの北部では、女王蟻との交戦が続く。
脚の一本が消えた女王蟻を見ながら、真司は続けて照準を合わせていた。
「これで、そろそろ動きにくくなるだろうな」
ばきん! ライフルの銃弾で、女王蟻の二本目の脚が宙へ吹き飛ぶ。
がしがし、と苦悶にも似た仕草をする女王蟻だが、霧華が間髪入れず、ワイヤーウィップを繰っていた。
びしゅっ、と強く引くと、残った女王蟻の触覚が切断された。
「それにしても触覚落として脚落として、って冷静に考えると結構エグイですよね……。あの受付の方は好きそうですが」
距離を取って着地しつつ言う霧華。嬉しそうに蟻を語る受付嬢の姿が思い出されたが……今はそんなことを考えている場合ではない。
弱体化された女王だが……同時に平静さを失い、暴れるような動きをしはじめていた。
至近で斧での斬撃を喰らわせ続けていたジュンも、それには振り回される。
無論、それで攻撃をやめるジュンではない。斧を握り直し――ざすっ! 再び刃を打ち込んでゆく。
だが、興奮している女王蟻はそれで憤怒。残った脚でがむしゃらにジュンを蹴飛ばそうとした。しかし――
「防御障壁、展開!」
きぃん! 光の壁がジュンの前に現れ、攻撃を軽減して空中に霧散した。真司の防御障壁だ。
武器でもうまく防御していたジュンのダメージは、軽い。
「悪いな、助かったよ」
言うと、ジュンは剣形態にしていた武器を斧形態へ戻し、再度突撃。
「よし、このまま、殺す! ツヴァイシュとっツァーンアックシュ……シュもード! ってこんな滑舌悪い名前にしやがって!」
またちょっと噛みつつ、クラッシュブロウを女王蟻の大きな頭にたたき込んだ。
暴れながら、何とか反撃しようとする女王蟻だが……ばちん! その三本目の脚を霧華のワイヤーが切断する。
「これでもう、まともに歩けもしませんね」
「よし、あとは――本体を狙うだけだな」
真司が、身動きもままならなくなった女王蟻の巨体に、銃口を向ける。
後方では、他班が敵の退治間近のようだった。だが、彼らの増援に頼る必要はなさそうだ。
ばすっ、ばすっ、と真司は銃弾を女王蟻へ撃ち込んだ。同時、霧華は大鎌に切り替えると――踏込から渾身撃を繰り出し、女王蟻の体を切り裂いてゆく。その傷をさらにえぐるのは、ジュンの斧だ。
体液をしたたらせ、瀕死となった女王蟻へ――真司は最後の狙撃を行った。
つらぬいた銃弾が、女王蟻の体を粉砕。虚空へと、消滅させた。
戦いが終わると、皆で合流した。
「大体は退治できたと思うが。どうだ?」
そしてヴァイスの言葉に、それぞれ成果の検分をする。
すると完全な全滅、とまではいかないものの、各々の班で働き蟻の数匹程度を討ち漏らしたに留まったことがわかった。
それらは散り散りになって森から逃げたようだが……女王も親衛隊もいなくては、またやってきたとて退治されるのは時間の問題だろう。
そして水源に被害は全く及ばず、人が傷つくこともなかった。
脅威は、消えたと言っていいだろう。
「ひとまずは、成功ですね」
ミリアの言葉に、皆はそれぞれ、頷いた。
そして、成果を報告するため……ハンターたちは森からの帰還を果たすのだった。
(代筆:松尾京)
「――見えた。情報通り数が多いな」
蟻の進行予測地点に来たハンターたちは、レイス(ka1541)の言葉に顔を向ける。
森の中。木々の間からうかがえば……ほどなく、北からやってくる黒い軍勢が見えた。
10人は素速く左右に分かれ、木陰や樹上に身を潜めた。待ち伏せる態勢だ。
向かって左側、仲間と頷きあったヴァイス(ka0364)はトランシーバーを取り出す。
「こっちはいつでも合図で飛び出せるぜ」
「こちらも状態は万全です。息を合わせて、参りましょう」
同じくトランシーバーで答えたのは、反対側の藤田 武(ka3286)。皆に合図を出せる位置で木に隠れていた。
すると、がしがし、かちかち、と――大音を上げて木を倒し、草を切り裂きながら、黒の軍団が目の前にやってきた。
先頭部分だけでも10匹を越える働き蟻の群れ――それを見送り、より大きな体を持った親衛隊蟻隊が見えたとき。
タイミングを合わせたヴァイスと武が合図すると……ばさっ! 左右から挟み込むように、10人のハンターは一斉に飛び出した。
親衛隊は……一瞬のことに、まだ反応を見せない。
そこを最初に襲ったのは、ジーナ(ka1643)の銃撃だった。
「ここで止まって果ててもらうぞ」
どうっ! リボルバーの弾丸が、左側の親衛隊蟻の1匹を穿つ。その個体は、防御も出来ず衝撃に煽られた。
同時、柊 真司(ka0705)もアサルトライフルの引き金に指をかけている。
「ここで一気にやらせてもらうぜ」
ばすっ! と胴にさらなる銃弾を受けた親衛隊蟻は、顎を鳴らしながら不意打ちにあえぐ。
それでもすぐに、態勢を直そうとするようだったが――
「そんな隙、与えると思うか!」
肉迫するのは、ヴァイス。紅蓮のオーラを身に纏いながら、打ち込むのは魔導機械による強打だ。
がぁんと音を立て、親衛隊蟻の巨体は大きく倒れ込んでいく。
その反対、右側で先陣を切ったのはレイスだ。瞬間、瞳を朱く染め、体を黒炎で覆うと――マテリアルを込めた素速い動きで、右端の1匹に樹上から接近。
「貴様らの進軍も、ここまでだ」
戦槍によるスラッシュエッジをたたき込む。関節に喰らった親衛隊蟻は半ば横倒れになってしまう。
そこへ走り込むのは、上霧 鋭(ka3535)。
「アリのバケモノ、な。だったらオレは、カミキリムシのバケモノだぜ」
ぽつりと呟いている。覚醒している鋭は、全身を黒い外骨格で覆い、体躯も長身となっていた。
腕と同化した武器で振り抜くのは、クラッシュブロウ。倒れた親衛隊の頭部に強烈な一撃を加えた。
左側では、働き蟻が異変に気付きはじめていた。かさかさと、親衛隊を守りに入るが――ずおん! その先頭がジュン・トウガ(ka2966)の斧になぎ払われた。奥に控える巨体――女王蟻を目指すジュンには、働き蟻も親衛隊もとにかく邪魔な障害物でしかない。
「ちっ、めんどいな。……というか、大量にワラワラ出てくるといえば、大量のGが伝統かとも思ってたんだが」
「むしろ、Gとか蜘蛛とか、そういうのじゃないだけマシじゃありません?」
右側からジュンに返すのは白神 霧華(ka0915)だ。霧華もウォーミングアップとばかり、奇襲を邪魔する働き蟻に、大鎌を振り回す。刃に狩られ、蟻は一撃で撃退されていた。
その間、瀕死ながらも起き上がろうとする左側の親衛蟻隊だが――ミリア・コーネリウス(ka1287)がそれを許さない。
「これでまず――1匹、頂きますよ」
両目を紅く輝かせると、剣形の紋章が浮かぶ右手を振り上げ――踏み込んで、渾身撃。ずおっ! 強力な斬撃は、弱った蟻を断ち切り――その黒い体を消滅させた。
右側では、頭部にダメージを受けた親衛隊蟻に、武がロッドを振りかぶり、打撃を与えていた。
「攻撃としては多少、浅いかも知れませんが――」
それでも、ダメージに加え、体勢を崩すことに成功していた。
そこを、柊 紅葉(ka3799)のオートマチックが正面から狙っていた。
どん、と強弾が命中。それは相当のダメージではあったが――
「こちらはまだ、倒すには至らないみたいですね」
紅葉の言葉通り、こちらの親衛隊蟻はまだ息がある。すぐに起き上がり、鎌を構えてきた。
紅葉は即座に後退。深追いはしない。
「では私たちは、働き蟻を対処しに行きますね」
言うと同時、紅葉だけではなく、女王蟻へ向かう者、ここへ残る者、働き蟻を引きつける者――全員が三班へと素速く分かれた。奇襲は、終わりだ。
「みんな、それぞれ、頼んだぜ!」
真司が走りながら声をあげる。ハンターたちは頷くと、すぐに第二の戦闘へと入った。
●軍団討伐
紅葉、ジーナ、武の3人は南側を向いていた。
働き蟻の群れが女王や親衛隊を守るため、引き返そうとしている。ジーナはそこに立ちふさがり、他班を邪魔する蟻から狙っていた。
ばすっ! ばすっ! 奇襲時から続けてリボルバーを撃ち、一体、また一体と消滅させてゆく。
「しかし、やはり数は多いな。掃討しようと思えば楽ではなさそうだ」
「とりあえずは、足止めを目標にしましょう。サポートさせて頂きます」
武が答えると、きら――と魔法の光でジーナを覆った。
プロテクション。ジーナは働き蟻の攻撃が無視できるまで防御が強まったのを実感する。
「ありがとう、助かるよ」
いいえ、と言うと武は、自身も蟻の進行を阻むように距離を置いて戦いはじめた。
ジーナの横で強弾を放ち続ける紅葉は――脇から北上を目指す働き蟻を発見する。
「あれを放っておくわけにはいきませんね。引きつけてきます」
ジーナが頷くのを背に、紅葉は木立に入り、蟻を誘導した。
(初めての依頼で雑木林とか……もっと綺麗なところに出て欲しいよね~……)
正直そんなことを思う紅葉だったが――まあ、雑魔との戦いも、つまらなくはなさそうだから。
「足を引っ張らない程度には、頑張ってみますか。……一応、村の人達のためにもね」
ばん、と紅葉の銃弾がその1匹を塵へと変えた。
ミリアとヴァイス、そして鋭とレイスは、親衛隊と戦うため、残っていた。
他班の移動と同時に、4人も交戦を続けようとする――が、先制したのは親衛隊蟻だった。
びゅおっ! 奇襲でダメージを負った1匹が反撃とばかり、至近の鋭に鎌を浴びせた。
「ぐっ……と!」
鋭はわずかに後退する……が、ダメージは無いに等しい。動物霊の力で高めていた防御力があり、うまく受け身も取れていた。
逆に、こちらから敵へクラッシュブロウを打ち込んだ。
「残念だな。オレの勝ちだ」
瀕死のその個体は防ぎきれず、散り散りになって消滅した。
「これであと2匹ですね」
ミリアが言いながら、構える。親衛隊蟻2匹は、既に群れを取り巻く異常に気付き、敵意をあらわにしていた。
1匹は即座に女王の元へ参じようとするが――ざすっ! ミリアがその個体へ、横から斬撃を喰らわせる。
さらに、ヴァイスが立ちはだかる。
「悪いが、女王の元へは行かせないぜ」
ぎぃん、と正面から親衛隊蟻を強打ではじき返していた。
もう1匹には、レイスと鋭が向かい合う。
この個体は、かちかち、と顎を鳴らすとすぐにレイスに突進してきていた。
だがレイスは退かず、素速い動きで槍を突き出すと……ずんっ!
前肢と胴体の継ぎ目に一撃を喰らわせた。
「さて、役割としては足止めだが――別に、全てを倒してしまっても構わんのだろう?」
ちゃき、と槍を構え直すレイス。鋭と共に、その蟻の逃げ道を塞ぐように立った。
ジュンと霧華、真司の3人は、女王蟻にたどり着いていた。
「うわ、デカ……」
見上げ、思わず呟くのはジュンだ。現れたその巨体、親衛隊よりも大きく、まさに女王の威容である。
女王蟻は、親衛隊が守りに来ないと見ると――自ら、牽制するように脚を振り回していた。だが、ジュンは臆したりはせず、すぐに武器を取っている。
「まあ、とにかくコレを叩き潰せばいいんだろ。やってやるよ。このアッくシュシュブりェード、で……って、噛みやすくて長い! 早口言葉かよ!」
武器名をちょっと噛みつつ、眼前の働き蟻1匹をなぎ払い――女王蟻へ突進。
そのまま懐に飛び込み、ずばっ、と斧で切り込んだ。
同時、真司は接近のリスクを避け、ライフルで脚部を狙っている。
「逃すわけにはいかねぇからな。まずは、機動力――脚を破壊させて貰うぜ」
どうっ! 強烈な威力の銃弾が的中、女王の脚の一本が、ばきんとはじけ飛んだ。
「では、私はこちらから弱体化させてもらいますね」
しゅる、と霧華が操るのはワイヤーウィップ。リーチを生かして女王の触覚に巻き付ける。
びっ、と引くと、その一本の先端をちぎるように破壊した。
と――その直後。女王が体を反らせ腹をふくらませていた。
ずおおっ! 霧華に向けて吐き出されたのは……強力な粘液のビーム。
高速で飛来するそれを、しかし霧華はとっさに前転してよけた。
ばぁん! と、当たった地面は大きくえぐれている。だが、立ち上がった霧華は無傷で、冷静であった。
「中々、面白いじゃないですか。じゃあ――こちらもさらに反撃させてもらいますね」
●激化
南方、武は仲間の支援を続けている。
祈りをかけると、柔らかく温かい光が、先頭で戦うジーナの傷を癒していく。ジーナは働き蟻に応戦しながらも振り返った。
「こちらを支援してくれるのは嬉しい、が、自身のことに気を使っているか?」
「ええ。私も、無謀なことばかりは、いたしません」
言いながら、武は迫る蟻をロッドで押し戻す。武自身、蟻を数多引きつけているが……主眼は、時間稼ぎだ。
出来ることを最大限に。これが武のハンターとしての戦い方だった。
ジーナは、その直前からリボルバーをレイピアに持ち替えている。
それで迫る蟻を――ざすっ! 1匹1匹、確実に貫いていった。
「やはり、こちらの方が本領発揮できるな」
手にしっくりと来るその剣を握って、また攻撃。そのうち、蟻は大幅に数を減らしてゆく。
そこで、紅葉が合流した。
紅葉は、木立で引きつけた蟻の群れを一通り、退治してきていた。
「紅葉、体力は平気か?」
「回復しながらですから。おそらく蟻が逆側にもいると思うのでそちらへ行きます」
ジーナに答えつつ、紅葉はすぐに反対へ向かう。
「お気をつけください。――神よ、われらに祝福を」
武が紅葉にプロテクションをかける。紅葉はありがとうございます、と応えつつ、木立に入った。
先ほどより少ないが、こちらにも蟻は潜んでいた。
「邪魔させてもらいますね~」
紅葉は円を描くように動き、木々の間を縫って蟻を翻弄しながら、どんっ、どんっ、と狙撃していく。
ほどなくその群れは全滅するが――紅葉はそこで気付いた。
遠く、親衛隊に応戦する面々に、後ろから働き蟻が迫るのが見えたのだ。
紅葉は、慌てず伝話を取り出し状況を伝える。向こうで伝話を持つメンバーが振り返るのを確認すると――自分も木立を走り、銃撃。
対親衛隊班の対処も間に合い、すぐにその蟻はいなくなった。
働き蟻の群れはもはや、風前の灯火だ。
レイスと鋭は親衛隊蟻との戦闘を継続している。
この蟻は――今度は鎌を振り回し、レイスを切り刻もうと突っ込んできていた。よりどう猛な動きだったが……レイスはそれらの攻撃を全て紙一重で回避している。
反撃するのは、後方から木を蹴って跳躍する、鋭だ。
「背中見せるなんて、殴ってくれって言ってるようなもんだぜ」
勢いをつけて、祖霊の力を纏った一撃――クラッシュブロウ。ばきん、と甲殻ごと衝撃を与えられ、親衛隊蟻は藻掻くように体を鳴動させた。
そこへレイスもすかさず戦槍での突きを入れた。
――ぎんっ! そこで親衛隊蟻が死にものぐるいで体をよじり、甲殻の硬い部分で威力を相殺した。
レイスは焦らず、間合いを取る。
「流石に、硬いところもあるか。だが、やりようはいくらでもあるぞ」
そこで、伝話に紅葉の連絡が入る。やり取りを聞いた鋭と目配せすると――レイスは背後の働き蟻が襲うと同時、身をかわし、親衛隊蟻と激突させた。
一瞬の隙に、鋭がさらなるクラッシュブロウで親衛隊蟻をふらつかせ――その体に飛び乗ったレイスが、頭部の付け根に槍を突き込む。
ずん、と槍に貫通された親衛隊蟻は……ほどなく、塵となって消滅した。
「鋭、うまく連携を取ってもらった。礼を言う」
「うまくやったのは、おまえだろ。オレはまあ、アリに負けるわけにはいかなかっただけだよ」
ヴァイスとミリアも、逆側で親衛隊蟻と交戦している。この蟻は、しばらく逃げ道を探っていたようだが……2人に挟まれたと見ると、一転して鎌で斬りかかってきた。
突撃されたのはミリア。だが、ミリアは構えを解かず、よけもしない。
「はぁっ――!」
巧みに大剣を操り――きぃん! 鎌の攻撃をはじく。すると相手が追撃をするのを許さず、踏み込んで、突き。真正面から頭部へ重いダメージを与えた。
「アリごときに、この剣は折れませんよ」
衝撃でたたらを踏む親衛隊蟻を横から追撃するのは、ヴァイス。
「逆に、こいつを真っ二つにしてやろう」
リボルビングソーによる強打を打ち込んだ。ずん、と甲殻ごとねじ伏せるような威力の一撃は、蟻の体力を一気にもぎ取る。
そこで紅葉から連絡が入る。背後からの、働き蟻の残党だ。
ヴァイスが親衛隊を警戒しつつもそれらを手早く仕留めていくと……親衛隊蟻はチャンスと見たか、女王の方へ素速く動きかけた。
だが――ミリアが立ちはだかり、またも正面から、大剣での一撃。
がきんっ! 防ぐ余裕もない親衛隊蟻は、鎌を綺麗に断ち切られた。
「この大剣に断てぬものなど……すいません今まで結構ありました」
「あるのかよっ」と小さく突っ込みを入れつつも、ヴァイスは大きな隙を見せる形となった親衛隊蟻の背を逃さない。
「眼前の敵から注意を逸らすのは……迂闊すぎだぜ!」
攻めの構えからの渾身撃。苦しむ間もなく、親衛隊蟻は藻屑のように消え去った。
●虚空へと
群れの北部では、女王蟻との交戦が続く。
脚の一本が消えた女王蟻を見ながら、真司は続けて照準を合わせていた。
「これで、そろそろ動きにくくなるだろうな」
ばきん! ライフルの銃弾で、女王蟻の二本目の脚が宙へ吹き飛ぶ。
がしがし、と苦悶にも似た仕草をする女王蟻だが、霧華が間髪入れず、ワイヤーウィップを繰っていた。
びしゅっ、と強く引くと、残った女王蟻の触覚が切断された。
「それにしても触覚落として脚落として、って冷静に考えると結構エグイですよね……。あの受付の方は好きそうですが」
距離を取って着地しつつ言う霧華。嬉しそうに蟻を語る受付嬢の姿が思い出されたが……今はそんなことを考えている場合ではない。
弱体化された女王だが……同時に平静さを失い、暴れるような動きをしはじめていた。
至近で斧での斬撃を喰らわせ続けていたジュンも、それには振り回される。
無論、それで攻撃をやめるジュンではない。斧を握り直し――ざすっ! 再び刃を打ち込んでゆく。
だが、興奮している女王蟻はそれで憤怒。残った脚でがむしゃらにジュンを蹴飛ばそうとした。しかし――
「防御障壁、展開!」
きぃん! 光の壁がジュンの前に現れ、攻撃を軽減して空中に霧散した。真司の防御障壁だ。
武器でもうまく防御していたジュンのダメージは、軽い。
「悪いな、助かったよ」
言うと、ジュンは剣形態にしていた武器を斧形態へ戻し、再度突撃。
「よし、このまま、殺す! ツヴァイシュとっツァーンアックシュ……シュもード! ってこんな滑舌悪い名前にしやがって!」
またちょっと噛みつつ、クラッシュブロウを女王蟻の大きな頭にたたき込んだ。
暴れながら、何とか反撃しようとする女王蟻だが……ばちん! その三本目の脚を霧華のワイヤーが切断する。
「これでもう、まともに歩けもしませんね」
「よし、あとは――本体を狙うだけだな」
真司が、身動きもままならなくなった女王蟻の巨体に、銃口を向ける。
後方では、他班が敵の退治間近のようだった。だが、彼らの増援に頼る必要はなさそうだ。
ばすっ、ばすっ、と真司は銃弾を女王蟻へ撃ち込んだ。同時、霧華は大鎌に切り替えると――踏込から渾身撃を繰り出し、女王蟻の体を切り裂いてゆく。その傷をさらにえぐるのは、ジュンの斧だ。
体液をしたたらせ、瀕死となった女王蟻へ――真司は最後の狙撃を行った。
つらぬいた銃弾が、女王蟻の体を粉砕。虚空へと、消滅させた。
戦いが終わると、皆で合流した。
「大体は退治できたと思うが。どうだ?」
そしてヴァイスの言葉に、それぞれ成果の検分をする。
すると完全な全滅、とまではいかないものの、各々の班で働き蟻の数匹程度を討ち漏らしたに留まったことがわかった。
それらは散り散りになって森から逃げたようだが……女王も親衛隊もいなくては、またやってきたとて退治されるのは時間の問題だろう。
そして水源に被害は全く及ばず、人が傷つくこともなかった。
脅威は、消えたと言っていいだろう。
「ひとまずは、成功ですね」
ミリアの言葉に、皆はそれぞれ、頷いた。
そして、成果を報告するため……ハンターたちは森からの帰還を果たすのだった。
(代筆:松尾京)
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作戦会議室 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/12/29 03:00:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/27 19:02:16 |