サツマイモ堀は甘くない

マスター:春秋冬夏

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~9人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/09/29 19:00
完成日
2018/10/05 10:22

みんなの思い出

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オープニング

「今年も良く育ったなぁ……」
 暑さも過ぎ、過ごしやすくなって少し経った頃。今日も農家は元気に畑仕事。生い茂った蔓に手をかけて、腰を落として引き抜いた。
「うんうん、これなら十分に売れるだろう」
 男が満足そうに見つめるのは立派に育ったサツマイモ。一つの蔓にいくつもの実がついてずしりと重い。今年の成果を早速運び出し、後は市場に持って行くだけ、という時だ。まだ収穫は少し先の畑で、蠢く影がある。
「なんだあれ……まさか、泥棒?」
 農家は慎重に近づいて、一歩進むごとに違和感を覚える。最初は人影かと思ったが、それにしては妙に細い。
「人じゃないな……一体何が……あっ」

「という具合に、畑にサツマイモのような雑魔が湧いていてな……」
 全身泥まみれの男性は疲れ切った様子で事の次第を語り出す。
「根を張っているのかどうか知らないが、畑から動くことはないけど、代わりに畑に踏み込むと地面の下から不意打ちで襲いかかってくるんだ。そのまま蔓に捕まって引きずり回されてこの様だよ……」
 幸い、手入れの行き届いた畑と合って土は見事に耕されており、無傷で済んだらしいが、今後もそうなるとは限らないし、純粋にこのままでは収穫が進まない。
「どうにかしてくれないか? もし上手く片付けてくれたら、普通の報酬とは別にサツマイモも食べさせてあげるからさ……」
 君たちは困り果てた彼の頼みを聞いてもいいし、何も聞かなかった事にしてカフェに栗のスイーツを食べに行ってもいい。

リプレイ本文

●皆察しが良くて助かるよ
「そっかー、別にカフェに栗のスイーツを食べに行ってもいいのか~……って、こういうのは、そうしてもいいって言われても、した結果の保証まではしてくれないってとこまでが定石だからね」
 ははは、夢路 まよい(ka1328)ちゃんのように勘のいい子どもは大好きだよ。
「歪虚を倒して現物支給まで……なんてすばらしい依頼なのっ。貴方にはエクラさまの御加護があるのっ」
「おろろぉろぉろぉろぉおおう!?」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)! 感極まって依頼人の両手を掴んで上下に振り回すのはそのくらいに……!
「サツマイモのオヤツが私を呼んでますぅ。時間があればごはんのおかずも作れますけどぉ。さっさとオヤツを作るためにも雑魔は全ブッコロ一択ですよぅ」
 星野 ハナ(ka5852)はあれかな? 一見食欲に憑りつかれた純粋無垢な女の子に見えて、実は割とえっぐい系なのかな? 食欲に憑りつかれた時点で純粋無垢って言っていいかどうか怪しいけども。
「さくっと雑魔を倒してお芋を堪能しましょう……」
 サクラ・エルフリード(ka2598)さん……?
「いえ、お芋でなく雑魔退治をメインで考えてますヨ……?」
 ちげーよ、参加者のほとんどが食べる事メインになってる事は既に覆しようがないからそこには突っ込まねぇよ。俺が聞きたいのは何でいかにも頑丈そうな鎧を脱いで、防御力どころか防寒力が足りなさそうな赤いビキニアーマーになってんのかって事だよ。
「泥で汚れたら……困りますから……」
 その恰好は泥以上に厄介なものに塗れませんかねぇ!?
「サツマイモの雑魔とか……本当なんでもありだな。強くはないのだろうが……厄介そうだ」
 レイア・アローネ(ka4082)、頼むぞ? 割と真面目に頼むぞ!? 今回の面子でまともなのお前だけだからな!?
「食えないかな?」
 ぱーどぅん?
「いや、食えないか。雑魔だものな……」
 フッ、鼻で笑って背を向けるレイアだが、この時点で今回まともな奴がいない事が確定してしまっ……。
「そんなことはどうでもいいの!」
 よくねーよ!?
「いかに仕事にカロリー掛けずに食事にカロリー掛けるか、大食漢の真価が問われる事態なの! さっさと倒してさっさと収穫してさっさとイモパーティなの、さっさと」
 重要な事なのか、「さっさと」が一回多いディーナ。そうとう急がせたいらしいが……一個いいか?
「なんなの?」
 お前、大食『漢』やないやろ?
「細かい事は気にしないの!!」
 ゴフゥ!?
「というか、そもそも大食漢は一般的に男性に使うだけで、男性限定というわけではないの」
 だからって腹パンはあかんよ……。
「歪虚は生命感知に反応しませんからぁ、ここはもう漢探知で行っちゃえばいいんじゃないですぅ?」
 ハナは畑を目視できる距離になるなり、早速双眼鏡で畑の様子を確認。畑の上を蔓がうごうご、ゆっくりと徘徊している様子が見て取れた。
「あれが噂の蔓ですかぁ……うーん、餌を引き込む為の囮にしてはぁ、ちょっと地味ですねぇ……」
 などと、ハナが真面目に考察してくれてる傍らで食欲の権化ことディーナさんは。
「あれがサツマイモの見せパン……参考になるの」
 何をどう考えたらそういう評価になるんですかねぇ!?
「確か依頼人さんはぁ……」
 ハナは口元に指を添えて、依頼人から聞いたあちらの有効射程? 的なものと引きまわされる距離を思い返し、脳内に畑を中心にした危険区域の線を引いて、雑魔が動く距離を推察しようとするのだが。
「さあ、来い! 辺境では芋など普通に食されているのだ。恐れるものではない」
「土の中にいようと攻撃する時は出てくるはず……そこを狙って貰えば何とかなるでしょう……」
 何という事でしょう。意味不明な例えを引っ張り出し無防備に畑にズンズン踏み込んでいくレイアと、まよいが高純度マテリアル鉱石を用いた木製の杖に腰かけて、ふわりと空へ舞い上がる姿を見送ってから踏み込んでいくサクラ。
 なんでお前らどんどん突っ込んじゃうのさ!?
「私達は前衛……この身を持って、仲間を守ります……」
「そうでなくても、飛び道具なんて持ってないからな! 守るにせよ攻めるにせよ、踏み込まなくては始まらない」
「……えっ」
「え?」
 キリッとしたレイアを、サクラがじー。その反応に釣られてレイアもじー。
「私……魔法、ありますよ? 捕まったら近距離攻撃は難しいかもしれませんし……」
「……な、何とかして見せるとも、うん!」
 さーて、レイアちゃんの腕がいかほどか、見ものですねこれは。

●ビキニと畑は犠牲になった
「えぇい、来るなら来い! むしろ私から行くぞ!!」
 その身を灯火の如く輝かせ、レイアが畑に飛び込めば規則性もなく徘徊していた蔓の塊がレイアを認識したらしく、ぎゅるんと向き直る。
「覚悟ッ!!」
 血色の長剣に合わせて純白の刃を抜き放てば、二つの得物が呼応したかのように真紅に染まる。赤い軌跡を二つ引きながら、先手必勝と言わんばかりに蔓の塊に跳びかかって……。
「ふみゅ!?」
 足元から湧いた蔓に捕まり、顔面から行った。主に地面に。
「なんのこれし……うわぁああああ!?」
 すぐ起き上がろうとするレイアだったが、畑の中を散々引きずる回されて泥まみれにされた挙句、畑の外にポーン……べちゃ。潰れた蛙のような恰好で投げ捨てられてしまう。
「は、腹が……」
 そうね、ビキニアーマーじゃモロにお腹打つよね。
「どうでしょう……狙えそうですか……?」
 様子を覗っていたサクラが上空を見上げると、まよいは虚空に一本の光の矢を生み、その上を銀の指輪をはめた手で撫でると、広がるようにして五本に増える。
「大丈夫、かなりランダムに動きはするけど、要は適当に引きずり回して追い出すだけみたいね。それなら引き回されてる間に撃ち抜けると思うわ」
「そうですか……では、お願いします……」
 コクリ、小さく頷いてサクラが踏み込むと、先にレイアが動いた事で雑魔もまた臨戦態勢を整えていたのだろう。今度は脚と言わず全身目がけて蔓が伸び、両脚と両手首を絡めとられて畑に引き倒されてしまった。手首は同じ蔓に絡まれて、頭の方に引っ張られるようにしているが、脚は左右で違う蔓に囚われて、股を開く様な格好で引っ張られてしまっている。
「く、何か見た目的にアレですが今です……!」
 泥と恥辱に塗れつつ、サクラが指示を飛ばせばまよいが矢を放つ。三本用いてサクラを解放し、残り二本が蔓の塊を襲う!
「やったのかしら? だとしたらあんまりにも手ごたえがないけれど……」
 容易くちぎれて倒れてしまった塊にまよいがきょとんと首を傾げると、案の定周りの蔓が寄せ集まって新たな人型っぽいけど、それにしちゃー細すぎる塊を作る。
「一撃じゃ厳しいみたいね……そもそも、あれが本体であってるのかしら?」
「分からないなら、とにかく暴れてみるの! 適当にやってれば、そのうち出てくるはずなの!!」
 などととんでもない脳筋発言をしたディーナは塊とか放置して、周囲の蔓を自らを起点にして放つ輝きで焼き払ってしまった。当然地面がむき出しになるが、その地面ごと薙ぎ払われて、畝の痕跡すら残ってない平坦な畑に。
「……お芋は、無事なはずなの!」
 自分に言い聞かせて次から次へと蔓を焼き払うディーナの暴走っぷりに、慌てて蔓の塊が止めようとするが、その前に戻ってきたレイアが立ちはだかる。
「輪切り、否! 千切りにしてやろう!」
 二刀流ったって、どんだけ斬る気だよ!?

●言ってる事おかしいけどやってる事正しい
「くーらーえー!!」
 踏み込むなり左右からの交差斬り、四つに分断された蔓の塊を更に片脚を軸に回転して、地面と水平に並べた二つの得物で更に両断。細切れにされた蔓の塊は霧散して、また新たな蔓が伸びて塊を形成すると、レイアの背後から無数の蔓が伸び、四肢を絡めとる。
「クッ、この程度で倒される私ではぁあああぁぁぁ……」
 ずしゃぁあああ……っぽーん。畑の外に投げ捨てられたレイアに代わり、サクラが肉薄。再び四方から蔓が殺到し、両手を後ろに縛られて、脚は膝を折った形で太腿と脛をまとめるように括られてしまい、身動きが取れず股を開いた格好で転がされる。
「どうしてこう……微妙に説明しづらい格好にされるんでしょうか……」
 奥歯を噛んで羞恥に耐えるサクラだったが、その体に御札がペタリ。見れば、ハナがニコッと微笑んで。
「大丈夫ですよぉ、敵にしか当たりませんからねぇ」
 カッ!! 貼りついた御札から激しい閃光がサクラを襲う!
「クラクラします……」
 サクラを拘束していた蔓は掻き消されるし、実際彼女は無傷だが、それはそれとして至近距離で眩い光とか、普通に眩しい。ぽてっと倒れてしまったサクラへ蔓が伸びるが。
「本体はどこなのー!?」
 ディーナがもはや歩く閃光爆弾と化して畑に絨毯爆撃? をし始める暴挙に出た。彼女を最優先排除対象をして、蔓の塊が襲いかかろうとして、上空から五本の矢に射抜かれ消えていく。再び蔓が寄り集まって人型を編み上げるが、最初に比べるとかなり細々としたものに。
「そろそろ終わりそうね……」
 まよいが再び五本の矢を番えると、不意に蔓の塊は上空を見やる。
「あ、こっちに気づいたかしら?」
 まよいが冷や汗を流し、上空の彼女目がけて蔓が伸ばされるが、空に向かって伸ばされる蔓を見逃す程地上組は甘くない。
「させん!」
 戻ってきたレイアが蔓を掴むなり腕に絡ませて巻き取って、強引に引き留める。
「くっ、中々に強い引きじゃないか……!」
 ――いや、待て。
 戦士としての勘のようでそうでもない何かがレイアに囁いたらしい。
「相手は芋だ。雑魔とはいえ芋だ。それが地中にもぐったならなお一層芋以外のなんだというのだろう?」
 つまり?
「掘り出せる!!」
 何がどうしてそうなったのかは分からないが、レイアは畑の外に向かって走り出す。途中から抵抗するように蔓が彼女を引き寄せようとするが、その根元に対して剣を投擲。ザクッと明らかに土とは違う音がしたかと思うと、抵抗が弱まった。
「ぉおおおお!!」
 雄叫びと共にレイアの筋肉が隆起する。腕力と脚力に腰の捻りを加え、背負い投げるようにして蔓を引けば、土を巻き上げて無数の目を持つ芋のような何かが飛び出し、ディーナがにっこりと身の丈はあろうかというメイスを振りかぶる。
「イ~モ~パ~~ティ~なの~~!」
 ボゴッ!! 聖印の輝きと共に殴られた芋は鈍い音を残して砕け散り、畑に広がっていた蔓が朽ち果てていく。跡にはひっくり返された地面と、ゴロゴロと転がるサツマイモが残った。
「あ、さっさと収穫手伝うのさっさと」
 それまで無邪気な少女のような笑みを浮かべていたのに、唐突に真顔になったディーナはえげつない速さでサツマイモの回収を始めた。

●ハナちゃんのサツマイモクッキング
「料理のお時間ですぅ」
 事後処理が片付くと、ハナはサツマイモを洗ってスティック状に切り、塩水に晒すとその間に油を加熱。温まるのを待っている様子を見て、サクラも包丁を手に。
「切るだけ、そう……落ち着いて、切るだけ……」
「うぉ!?」
 タンッ、タタタタタァン!!
 上下の硬い部位を落とそうとすると、切った端っこは部屋の中を跳弾して回り、レイアの眉間に迫るが、彼女はそれを片手で掠め取って難を逃れる。
「棒状にするだけなら……私だって……」
 ツルッ。刃を立てるまでは問題なかったが、芋を切ろうとした途端に包丁は彼女の手を逃れ、高速回転しながら飛び立って行き。
「まずは焼きいもな……」
 ドスッ!
「のー!?」
 ディーナが食べようとした焼き芋に突き刺さった。
「やっぱりこっちで……」
「ぶ、武器はどうかと思うわよ……?」
 スイートポテトを頬張っていたまよいへ、サクラは蒼白の長剣を手に、キリッ(とした雰囲気で)。
「大丈夫です……斬る前にちゃんと洗って来ましたから……」
「そ、そういう問題なのかしら……」
 複雑な表情で見守るまよいの前で、サクラはトントントントン……リズミカルにスティックを量産して塩水へ。
「なんで武器だと料理上手になるんでしょぉ……」
 苦笑するハナはサツマイモに片栗粉を塗して、少ない油でカラッと仕上げると、サッと塩を一つまみ。
「サツマイモスティック完成で……」
「美味しいのっ、美味しいのっ!」
「すぅ……」
 ハナが言い終える前にディーナがつまんでた。
「滑らかなのもいいけど、カリカリなのもいいわね……」
 コリコリコリコリ、揚げたてで熱いという事もあり、まよいはちょっとずつ、小動物のように食べ進める。その姿にレイアは柔らかな微笑みを浮かべて静かに見つめていた。
「では皆さんが召し上がっている内に、もう一品作りましょうかぁ」
 ハナは小麦粉を水で練って薄く伸ばした生地の真ん中に、スイートポテトに使うマッシュサツマを乗せるとそこにチョコを一欠片。後は四隅を持ち上げて、真ん中で合わせると水を少しだけつけて綺麗に留めて。
「後はこれをじっくりとぉ……」
 竃にいれて、焦がさないように慎重に焼き上げれば。
「一口サツマイモパイですぅ」
「ん、旨いな……」
 レイアが一つ口にすれば、コンガリと小麦色に染まった生地の中で滑らかな舌触りのサツマイモの上に蕩けたチョコがかかり、サツマイモの優しく穏やかな甘味の中にチョコの濃厚な甘味が加わって、そこにパリッとした生地の食感がアクセントを加える一品に。
「お芋、美味しいですね……全部甘いですが、それはそれで問題ないです……甘い物は大好きですし……」
 サクラは静かに食べ進め、途中でハッと我に帰り食べ過ぎる前に手を引っ込めるのだった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 君たちはどうする?
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/09/29 12:30:49
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/29 10:09:58