ゲスト
(ka0000)
【HW】ファナブラ・オブ・ザ・デッド
マスター:三田村 薫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/11/07 12:00
- 完成日
- 2018/11/12 23:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●目覚め
あなたが目を覚ますと、そこは病院の処置室の様な部屋だった。あなたはここに来た覚えはない。頭痛と吐き気がする。ベッドサイドのテーブルに、未開封のミネラルウォーターがあった。あなたがそれを一息に飲むと、頭痛と吐き気は少しずつ収まった。
具合が良くなったあなたは、自分が病衣を着ていることに気付いた。自分の服はどこだろう。あちこち探していると、ベッドの下の荷物入れにきちんと畳まれて入っていた。
拳銃と一緒に。
拳銃の上にはさらにカードが乗っており、「健闘を祈る。A」と書かれている。
あなたは、服を着替えると拳銃を持って部屋を出た。すると、あなたと同じように、拳銃を持って処置室から出てくる人たちと顔を合わせる。どうやら、皆あなたと同じような状態で目が覚めたらしい。
そこで、あなたはカードの裏を見た。するとそこには、
「AZ済」
そう書かれている。
AZ……A to Zだろうか? それにしても「済」とは何だろう。
●Anti Zombie
あなたたちは「事務室」と書かれた扉が意味深に開いているのを発見した。中に入ると、一台のパソコンが煌々とモニターを光らせている。
動画再生ソフトが起動していた。あなたたちはその再生ボタンを押す。
すると、八歳くらいの、白衣を着た茶色い髪の少女が画面に現れる。画面の右側から、断続的にノックの音が聞こえて来ていた。
「こんにちは。私は開発責任者のアウグスタよ」
彼女はあなたたちに以下のようなことを告げた。
曰く、この世界はゾンビに覆い尽くされてしまった。
曰く、しかしながら、サンダーソン製薬の尽力によりアンチゾンビワクチンが開発された。
曰く、それをあなたたちに施した。
曰く、ここから出て世界を救って欲しい。
曰く、屋上にヘリがある。
「じゃあね。私、パパとママの所に行かなくちゃ。さよなら。どうぞお元気で」
アウグスタはカメラを止めるためだろう、こちらに手を伸ばした。その腕には、包帯が巻かれている……。
そこで、動画は終わった。
どうやら、AZ済とは、アンチゾンビワクチンを接種済みと言う意味らしい。あなたたちは、ゾンビに多少噛まれたところでゾンビになることはないのだ!
その時、外でうめき声が聞こえた。生存者かと思ってあなたたちが部屋から出ると……そこには病衣を来たゾンビが立っていた!
あなたたちの内の一人が、ゾンビに向かって発砲した。ゾンビは頭を撃ち抜かれて、糸の切れた人形の様に倒れ伏す。
どうやら、ゾンビがいると言うのは本当の事らしい。病院の患者たちも例外ではないようだ。あなたたちはここを脱出できるのだろうか。
あなたが目を覚ますと、そこは病院の処置室の様な部屋だった。あなたはここに来た覚えはない。頭痛と吐き気がする。ベッドサイドのテーブルに、未開封のミネラルウォーターがあった。あなたがそれを一息に飲むと、頭痛と吐き気は少しずつ収まった。
具合が良くなったあなたは、自分が病衣を着ていることに気付いた。自分の服はどこだろう。あちこち探していると、ベッドの下の荷物入れにきちんと畳まれて入っていた。
拳銃と一緒に。
拳銃の上にはさらにカードが乗っており、「健闘を祈る。A」と書かれている。
あなたは、服を着替えると拳銃を持って部屋を出た。すると、あなたと同じように、拳銃を持って処置室から出てくる人たちと顔を合わせる。どうやら、皆あなたと同じような状態で目が覚めたらしい。
そこで、あなたはカードの裏を見た。するとそこには、
「AZ済」
そう書かれている。
AZ……A to Zだろうか? それにしても「済」とは何だろう。
●Anti Zombie
あなたたちは「事務室」と書かれた扉が意味深に開いているのを発見した。中に入ると、一台のパソコンが煌々とモニターを光らせている。
動画再生ソフトが起動していた。あなたたちはその再生ボタンを押す。
すると、八歳くらいの、白衣を着た茶色い髪の少女が画面に現れる。画面の右側から、断続的にノックの音が聞こえて来ていた。
「こんにちは。私は開発責任者のアウグスタよ」
彼女はあなたたちに以下のようなことを告げた。
曰く、この世界はゾンビに覆い尽くされてしまった。
曰く、しかしながら、サンダーソン製薬の尽力によりアンチゾンビワクチンが開発された。
曰く、それをあなたたちに施した。
曰く、ここから出て世界を救って欲しい。
曰く、屋上にヘリがある。
「じゃあね。私、パパとママの所に行かなくちゃ。さよなら。どうぞお元気で」
アウグスタはカメラを止めるためだろう、こちらに手を伸ばした。その腕には、包帯が巻かれている……。
そこで、動画は終わった。
どうやら、AZ済とは、アンチゾンビワクチンを接種済みと言う意味らしい。あなたたちは、ゾンビに多少噛まれたところでゾンビになることはないのだ!
その時、外でうめき声が聞こえた。生存者かと思ってあなたたちが部屋から出ると……そこには病衣を来たゾンビが立っていた!
あなたたちの内の一人が、ゾンビに向かって発砲した。ゾンビは頭を撃ち抜かれて、糸の切れた人形の様に倒れ伏す。
どうやら、ゾンビがいると言うのは本当の事らしい。病院の患者たちも例外ではないようだ。あなたたちはここを脱出できるのだろうか。
リプレイ本文
●わからない状況
動画を見た一同は真剣な面持ちで集まっていた。
「わ、私たち以外の人はどうしたんでしょう? 他の場所にいるんでしょうか……」
ゾンビなどのホラー要素が大の苦手である沙織(ka5977)が震える声で疑問を発した。今のところ、集まっているのはこの六人。他に生きた人間が出てくる気配はない。
「どうだろう。私たちは皆ほぼ同時に起きたから、目覚めるのも同じタイミングってことじゃないかな?」
鞍馬 真(ka5819)が思案げに言う。
「なんだか訳がわからねえが、こんな訳の判らん内にゾンビにやられちゃたまんねえ! 何がなんでも生き抜いてやるぜ!」
熱く宣言するのはリュー・グランフェスト(ka2419)。彼は、世界がゾンビに覆い尽くされたと言う動画の声を聞いても、その明るさを失わなかった。
「本当に笑えないわ。でも、こうして生きてる上に、ゾンビにならないっていうのなら、存分に生き足掻いてみせるわよ」
同じように闘志を燃やしているユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)。
(ゾンビが沢山って、リアルブルーの映画と言うノデは良くあるパターンらしいネ、コウ言うノ)
一人、アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)には夢の自覚があった。
(夢の中ナラ映画の様に遊べるのカナ?)
「とりあえず、私たちはここで協力した方が良いと思う。孤立するのは危険だ……あれ? もう一人、ディーナさんは?」
真は、一言も喋らないディーナ・フェルミ(ka5843)がいつの間にかその場からいなくなっていたことに気付いた。
●状況整理
ディーナを探しに行ったユーリは、彼女が浅い息を吐きながらトイレで手を洗っているのを発見した。手がすり切れそうなくらい洗っている。
「ディーナさん。ここにいたのね。突然いなくなるから心配したわ。皆でいた方が安心だと思って探しに来たのよ」
「うう……」
「どうしたの?」
そこでディーナは語った。ワクチンの副作用なのか、自分が誰なのかも忘れてしまったこと、処置室を出たところで別のゾンビに出くわし、銃が当たらず最終的に殴って倒したこと、その際に腐ってねばつくゾンビの体組織が手にべったりと貼り付いてしまったことを話した。
「そう……怖かったわね……」
「この人数で世界中のゾンビを倒せなんて……何の呪いなの」
「そうね。まったく面白くないわ。でも、生きているんですもの。戦いましょう」
ユーリに肩を抱かれて、ディーナは頷きながら水を止めた。
一方、リューと真は玄関の様子を確認していた。用意されていた拳銃を持って、警戒しながら進む。
「……駄目か」
リューが眉間に皺を寄せた。玄関は鎖が幾重にも巻かれて施錠されており、さらにその向こうからは何人ものうめき声と、断続的に扉を叩く音がしている。
「恐らく、ここを開けた途端ゾンビが雪崩を打って入り込んでくるだろうね……戻ろう。やっぱり屋上のヘリを目指すしかないみたいだ」
「診察室は何かないかな?」
と、帰りに診察室をいくつか覗くが、パソコンは軒並みなぎ倒され荒れ放題という有様。
「パソコンも使えねぇか」
二人は仲間たちの元に戻った。ディーナはどこか放心した様子で戻ってきており、傍らにはユーリがついていた。
「駄目だ。玄関は厳重に封鎖されている上にゾンビが押し寄せている。動画の言うとおり、屋上を目指すしかない」
「そうだネ。脱出できるならその方が良いだろうシ」
アルヴィンは、どこかしらで調達してきた消火器を武器として選んだらしい。ディーナはきょろきょろと当たりを見回して、折りたたみ椅子を手に取った。
彼らの目的はただ一つ。ゾンビをなぎ倒して生き残り、屋上のヘリに乗ってここを離れる。
行動開始だ。
●受付
何か情報が欲しい、と言うことでアルヴィンは受付に寄ることを提案した。
「もしかしたら生存者もいるかも知れないしネ。落とし物でも使えるものがあれば儲けもじゃないカナ?」
と、言うことで一行はリューとユーリを先頭にして受付に向かった。
「う……」
沙織とディーナが口元を覆う。酷い有様の死体が転がっていたのだ。リューとユーリが拳銃を構える。真がドアノブに手を掛けて、目配せすると一気にドアを開けた。二人は強く前を睨んで敵襲に備えたが、ゾンビが飛び出して来ることはない。
「ふー……」
リューが息を吐いた。すぐに切り替えて、先頭を歩く。
「皆なすすべもなくやられてしまったのカナ? 一人くらいゾンビに太刀打ちしてもおかしくなさそうだけド」
「うう……」
「おい」
リューがこちらを振り返った。
「見ろよ、これ」
彼が持ち上げたのはマシンガンだった。他にもないかと全員で事務所内を探したところ、何故か人数分のマシンガンが発見された。この状況に関する資料は見当たらない。
「ど、どうして六挺もマシンガンが……」
「中から施錠した人はいるわけだし、もしかしたらその人たちの……?」
真も仮説を立てながら困惑の表情だ。
「うう……」
「沙織さん、大丈夫なの?」
「え? 今のは私じゃ……」
ディーナと沙織が不思議そうに互いを見ていると、銃声がすぐ傍で轟いた。
「きゃーっ!」
沙織が悲鳴を上げる。撃ったのはユーリだ。そちらを見ると、事務員の制服を着たゾンビが五人ほど立っている。その内一体はユーリの銃弾を受けてよろけた。
「太刀打ちどころかゾンビの仲間入りか!」
リューも銃を構えた。ゾンビはゆっくりと迫ってくる。
「向こうのを頼む!」
真が飛び出した。彼は手近にいる一体に蹴りを叩き込むと、ユーリが撃った一体に足払いを掛けた。ユーリは自分の足下に倒れ込んだそれを、起き上がれぬように踏みつけると、もたげる頭に銃口を突きつけてとどめを刺した。
リューは真のリクエストに応えた。一番遠くにいる一体に発砲する。その間に、残りの二体がこちらに迫って来ている。遅いは遅いが数が脅威だ。
「こう狭いとやりにくいネ!」
その内一体は、アルヴィンの消火器に頭を潰された。
「アルヴィンさん! 伏せてください……!」
沙織が叫んだ。アルヴィンはそれに従って身を伏せる。彼女は発砲した。リューの腕の下、アルヴィンの頭上を越えて、最後の一人に当たる。
「うう……!」
ディーナは勇気を振り絞って椅子を叩きつけた。骨がひしゃげて肉の破れる音がする。彼女は身を震わせた。
「……行こう」
真が眼鏡を直しながら言う。先頭にリューが立ち、ユーリが後に、ディーナ、沙織、アルヴィンを挟んで殿に真が立った。
倒したゾンビたちに起き上がる気配はない。
彼らは階段を上がった。
●感染病棟
二階病棟に到着すると、病衣や白衣を着たゾンビがうろうろしている。十は超えているだろう。
今上がって来た階段は、崩れてしまっていて二階より上に行けない。だから、反対側の階段を使うしかないのだが、それにはこのゾンビの群を突破していかなくてはならない。
リューは後ろの仲間たちに目配せした。ユーリ、アルヴィン、真は即座に、沙織とディーナは震えながら頷く。
「行くぞ!」
リューは扉を開けた。気配に気付いたゾンビがこちらを向く。前歯が抜けかかったその口に一発ぶち込んだ。更に別の一体に肘打ちを食らわせる。アルヴィンが駆け寄って、トドメを引き受けた。
「そんなに死へと引きずりたいのかしら? 生憎と、引きずり込むのは私の方よ?」
居並ぶゾンビに、鉛弾と蹴りを食らわせながらユーリが高らかに宣言する。彼女を包囲するには、ゾンビの動きは遅かった。まだ立っているゾンビには、遠くから沙織が狙い撃ちにして片付ける。
真は先ほどと同じように蹴りで対応した。銃の扱いに少々自信がないのもあるが、頼れるのは己の肉体であると彼は確信している。身軽さを生かし、カウンターに飛び乗る。自分が受け持つべき射程のゾンビに次々と弾丸を撃ち込むと、床に下りて近いものから蹴りで沈めていった。
「おおっと!」
つかみかかるゾンビを消火器で軽くいなしてから、アルヴィンはレバーを引いた。白い消化剤がゾンビの顔面を直撃する。風圧で後ろによろめくゾンビ。その白い的に、沙織が発砲した。
ディーナは怖気と戦いながら、折りたたみ椅子を叩きつける。ゾンビと一緒に椅子もひしゃげてしまった。もう使い物にならない。
「嫌だよぅ、怖いよぅ……エクラさまぁ……」
怯えて泣きながら、知らぬ名を呟く。そこでふっと顔を上げた。
「エクラ、さま?」
誰のことだろう。でも、とても大事な名前であることはわかる。背中がすっと伸びた。その足下に、消火器が転がってくる。アルヴィンがウィンクした。
「軽くしておいたからサ!」
彼は点滴棒を拾い上げている。頭上で軽く回転させると、勢いを乗せてゾンビに叩きつける。
アルヴィンの点滴棒にぶら下がっていた輸液とラインは、ユーリが拾った。まだ点滴の中身は残っている。彼女はそれを振り回すと、投げ縄の如くゾンビの首に巻き付けた。勢いよく引く。下がった頭に銃口を向けた。発砲。ゾンビが倒れる勢いで点滴ラインはちぎれる。
「さぁ、今夜はクリミナルパーティーよ。盛大かつ派手に行きましょう」
ただのビニールの紐になったチューブを投げ捨てながら、高らかに宣言。
「数は減った!行け!」
リューが合図する。病棟の反対側へ。ナースステーションを通り過ぎようとした一行は、方々にグレネードが置かれていたことに気付いた。一人二個持って丁度良い。
「ここに武器を置いて行った人たちはどうなったんでしょうか」
沙織が心細げに、グレネードとマシンガンを抱きしめながら呟く。
「無事だと良いよな……」
●戦意
ユーリはマシンガンを希望者に渡すと言った。それに挙手したアルヴィンは、三階に着くと、居並ぶゾンビに向けて両手で二挺のマシンガンを発射する。
「うーん、映画の様だネ!」
軽快な銃声と共に、ゾンビが片っ端からふらふらとよろめく。彼が引き金から指を離し、銃口を天井に向けると、他のメンバーが各々飛び出した。
ユーリは一体の頭に蹴りを入れると、そのまま倒して踏み抜き、その向こうにいるゾンビに発砲した。真はつかみかかってきたゾンビの攻撃を、頭を下げて避け、つんのめった相手の勢いを利用して蹴りを叩き込む。リューはそれより先に行くと、仲間を制してグレネードを放り投げた。爆発。これでかなりの数が減らせた。
「これでも食らえなのー!」
さっきまでとは打って変わって、ディーナは勇ましく消火器をゾンビに叩きつけた。次々とゾンビを殴り倒す。しぶといゾンビは沙織が追撃を加える。
「ディーナさんどうしたんですか……」
「心境の変化カナ?」
「怖くないんだったら良いんだけど……沙織さんは大丈夫?」
「は、はい大丈夫です……」
沙織は頷いてから、思ったよりゾンビが近くにいるのに気付いて悲鳴を上げた。すぐに発砲したあたり、彼女もこの状況に慣れ始めているようである。
●屋上へ
病棟での死闘を乗り越えて、遂に六人は屋上に到着した。あれが動画で言っていたヘリか。
「誰か、操縦できる?」
真が仲間たちを振り返る。沙織が手を挙げた。
「やってみます」
「お願いし……ってまだ来た!?」
真が叫んだ通り、階下からぞろぞろとゾンビたちが押し寄せている。一体どこに潜んでいたと言うのだ!
「先に乗れ!」
リューが発砲しながら声を張る。
「わかりました!」
「ボクは副操縦士になろうかナ。前の席は片方空けておいてホシイ」
「あなたたちはどうするの?」
ユーリが二人を見る。
「ちゃんと乗るから心配するな! それより乗るのがあと俺たちだけって状態にしてくれ!」
「わかったわ。さあ、皆乗りましょう!」
ユーリの先導で、真、ディーナ、沙織が次々とヘリに乗り込む。沙織はスイッチやレバーを操作した。各種計器やメーターが動き出す。
アルヴィンは点滴棒でゾンビを押し返した。プロペラが回転して風を切る、高い音が鳴り始める。
「出ます! 二人とも乗ってください!」
「すぐ行く! 出てくれ!」
沙織は戸惑ったようだったが、すぐにヘリが浮かび始めた。アルヴィンは点滴棒をゾンビにくれて走り出す。リューはグレネードのピンを抜いてその後を追った。二人揃ってヘリコプターの脚にしがみつく。アルヴィンはユーリが引き上げて、副操縦席に収まった。
「リューさん!」
リューは振り返らなかった。こちらに手を伸ばすゾンビ、その一番近い手に持っていたものをレバーごと握らせる。それからディーナと真に助けられてヘリに乗り込んだ。
「沙織、下で爆発するから備えてくれ!」
「爆発……!? わ、わかりました!」
ヘリは急上昇した。
グレネードを持たされたゾンビは、不思議そうにそれをしげしげと眺めた。だが、すぐに興味を失ったらしい。それを足下に放り出す。
それがどう言うことなのか、もう彼らにはわからないだろう。
ゾンビの群の中で爆発が起きた。リューがゾンビに握らせたグレネードが爆発したのだ。わずかに爆風が届いたが、パイロット二人はそれに動揺してヘリを落とすようなヘマはしない。
「どうなってんだろうな、他の場所。なんとか乗り切ったけど、世界皆ゾンビ、とか嫌だぜ、おい」
リューは煙を上げる病院屋上を眺めながら呟いた。
「なるようになるさ」
真が肩を竦める。ディーナが前を見ながら毅然として言った。
「それでも、行きましょう。生存者が私たちを待っているの」
ヘリコプターは飛んでいく。
ゾンビから世界を救うために……。
●夢オチ
「……はっ! 寝てた!」
リューはがばりと起き上がった。
「もう! 皆寝ちゃうんだから!」
と文句を言ったのはオフィスの青年職員。リューははて、と次第を思い出す。そうそう、厄介な依頼が成功したもんだからその打ち上げに来たんだった。疲れもあって談笑している内に眠くなってしまい……全員で寝落ちしたらしい。
「ディーナがうなされてたんだよね」
彼は気遣わしげにディーナを見る、その内、めいめいが目を覚まして、口々に「ゾンビが……」と口にするものだから、リューは首を傾げた。
「……まさか、全員ゾンビの夢見てた?」
「そうみたいだ」
真も苦笑する。
「ゾンビ怖かったです……」
沙織は思い出しているのか震えた。だがどこか達成感のある表情をしている。
「夢とハ言え貴重な体験だったヨ」
アルヴィンはご満悦だ。最初から夢だとわかっていた感がある。
「自分が誰かわからなくても、エクラのお導きはあったの」
夢で何かの啓示でも受けたのか、ディーナは厳かに言う。
「存分にあがいたけど、夢だったのね……」
大暴れしたらしいユーリは、どこか拍子抜けした顔をしている。そんな仲間たちの様子を見て、どこか安心したような笑顔でリューが言った。
「自分だけの夢でも誰か怪我するのヤだけど、皆同じ夢見て帰って来れたんだったら良かったよな」
動画を見た一同は真剣な面持ちで集まっていた。
「わ、私たち以外の人はどうしたんでしょう? 他の場所にいるんでしょうか……」
ゾンビなどのホラー要素が大の苦手である沙織(ka5977)が震える声で疑問を発した。今のところ、集まっているのはこの六人。他に生きた人間が出てくる気配はない。
「どうだろう。私たちは皆ほぼ同時に起きたから、目覚めるのも同じタイミングってことじゃないかな?」
鞍馬 真(ka5819)が思案げに言う。
「なんだか訳がわからねえが、こんな訳の判らん内にゾンビにやられちゃたまんねえ! 何がなんでも生き抜いてやるぜ!」
熱く宣言するのはリュー・グランフェスト(ka2419)。彼は、世界がゾンビに覆い尽くされたと言う動画の声を聞いても、その明るさを失わなかった。
「本当に笑えないわ。でも、こうして生きてる上に、ゾンビにならないっていうのなら、存分に生き足掻いてみせるわよ」
同じように闘志を燃やしているユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)。
(ゾンビが沢山って、リアルブルーの映画と言うノデは良くあるパターンらしいネ、コウ言うノ)
一人、アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)には夢の自覚があった。
(夢の中ナラ映画の様に遊べるのカナ?)
「とりあえず、私たちはここで協力した方が良いと思う。孤立するのは危険だ……あれ? もう一人、ディーナさんは?」
真は、一言も喋らないディーナ・フェルミ(ka5843)がいつの間にかその場からいなくなっていたことに気付いた。
●状況整理
ディーナを探しに行ったユーリは、彼女が浅い息を吐きながらトイレで手を洗っているのを発見した。手がすり切れそうなくらい洗っている。
「ディーナさん。ここにいたのね。突然いなくなるから心配したわ。皆でいた方が安心だと思って探しに来たのよ」
「うう……」
「どうしたの?」
そこでディーナは語った。ワクチンの副作用なのか、自分が誰なのかも忘れてしまったこと、処置室を出たところで別のゾンビに出くわし、銃が当たらず最終的に殴って倒したこと、その際に腐ってねばつくゾンビの体組織が手にべったりと貼り付いてしまったことを話した。
「そう……怖かったわね……」
「この人数で世界中のゾンビを倒せなんて……何の呪いなの」
「そうね。まったく面白くないわ。でも、生きているんですもの。戦いましょう」
ユーリに肩を抱かれて、ディーナは頷きながら水を止めた。
一方、リューと真は玄関の様子を確認していた。用意されていた拳銃を持って、警戒しながら進む。
「……駄目か」
リューが眉間に皺を寄せた。玄関は鎖が幾重にも巻かれて施錠されており、さらにその向こうからは何人ものうめき声と、断続的に扉を叩く音がしている。
「恐らく、ここを開けた途端ゾンビが雪崩を打って入り込んでくるだろうね……戻ろう。やっぱり屋上のヘリを目指すしかないみたいだ」
「診察室は何かないかな?」
と、帰りに診察室をいくつか覗くが、パソコンは軒並みなぎ倒され荒れ放題という有様。
「パソコンも使えねぇか」
二人は仲間たちの元に戻った。ディーナはどこか放心した様子で戻ってきており、傍らにはユーリがついていた。
「駄目だ。玄関は厳重に封鎖されている上にゾンビが押し寄せている。動画の言うとおり、屋上を目指すしかない」
「そうだネ。脱出できるならその方が良いだろうシ」
アルヴィンは、どこかしらで調達してきた消火器を武器として選んだらしい。ディーナはきょろきょろと当たりを見回して、折りたたみ椅子を手に取った。
彼らの目的はただ一つ。ゾンビをなぎ倒して生き残り、屋上のヘリに乗ってここを離れる。
行動開始だ。
●受付
何か情報が欲しい、と言うことでアルヴィンは受付に寄ることを提案した。
「もしかしたら生存者もいるかも知れないしネ。落とし物でも使えるものがあれば儲けもじゃないカナ?」
と、言うことで一行はリューとユーリを先頭にして受付に向かった。
「う……」
沙織とディーナが口元を覆う。酷い有様の死体が転がっていたのだ。リューとユーリが拳銃を構える。真がドアノブに手を掛けて、目配せすると一気にドアを開けた。二人は強く前を睨んで敵襲に備えたが、ゾンビが飛び出して来ることはない。
「ふー……」
リューが息を吐いた。すぐに切り替えて、先頭を歩く。
「皆なすすべもなくやられてしまったのカナ? 一人くらいゾンビに太刀打ちしてもおかしくなさそうだけド」
「うう……」
「おい」
リューがこちらを振り返った。
「見ろよ、これ」
彼が持ち上げたのはマシンガンだった。他にもないかと全員で事務所内を探したところ、何故か人数分のマシンガンが発見された。この状況に関する資料は見当たらない。
「ど、どうして六挺もマシンガンが……」
「中から施錠した人はいるわけだし、もしかしたらその人たちの……?」
真も仮説を立てながら困惑の表情だ。
「うう……」
「沙織さん、大丈夫なの?」
「え? 今のは私じゃ……」
ディーナと沙織が不思議そうに互いを見ていると、銃声がすぐ傍で轟いた。
「きゃーっ!」
沙織が悲鳴を上げる。撃ったのはユーリだ。そちらを見ると、事務員の制服を着たゾンビが五人ほど立っている。その内一体はユーリの銃弾を受けてよろけた。
「太刀打ちどころかゾンビの仲間入りか!」
リューも銃を構えた。ゾンビはゆっくりと迫ってくる。
「向こうのを頼む!」
真が飛び出した。彼は手近にいる一体に蹴りを叩き込むと、ユーリが撃った一体に足払いを掛けた。ユーリは自分の足下に倒れ込んだそれを、起き上がれぬように踏みつけると、もたげる頭に銃口を突きつけてとどめを刺した。
リューは真のリクエストに応えた。一番遠くにいる一体に発砲する。その間に、残りの二体がこちらに迫って来ている。遅いは遅いが数が脅威だ。
「こう狭いとやりにくいネ!」
その内一体は、アルヴィンの消火器に頭を潰された。
「アルヴィンさん! 伏せてください……!」
沙織が叫んだ。アルヴィンはそれに従って身を伏せる。彼女は発砲した。リューの腕の下、アルヴィンの頭上を越えて、最後の一人に当たる。
「うう……!」
ディーナは勇気を振り絞って椅子を叩きつけた。骨がひしゃげて肉の破れる音がする。彼女は身を震わせた。
「……行こう」
真が眼鏡を直しながら言う。先頭にリューが立ち、ユーリが後に、ディーナ、沙織、アルヴィンを挟んで殿に真が立った。
倒したゾンビたちに起き上がる気配はない。
彼らは階段を上がった。
●感染病棟
二階病棟に到着すると、病衣や白衣を着たゾンビがうろうろしている。十は超えているだろう。
今上がって来た階段は、崩れてしまっていて二階より上に行けない。だから、反対側の階段を使うしかないのだが、それにはこのゾンビの群を突破していかなくてはならない。
リューは後ろの仲間たちに目配せした。ユーリ、アルヴィン、真は即座に、沙織とディーナは震えながら頷く。
「行くぞ!」
リューは扉を開けた。気配に気付いたゾンビがこちらを向く。前歯が抜けかかったその口に一発ぶち込んだ。更に別の一体に肘打ちを食らわせる。アルヴィンが駆け寄って、トドメを引き受けた。
「そんなに死へと引きずりたいのかしら? 生憎と、引きずり込むのは私の方よ?」
居並ぶゾンビに、鉛弾と蹴りを食らわせながらユーリが高らかに宣言する。彼女を包囲するには、ゾンビの動きは遅かった。まだ立っているゾンビには、遠くから沙織が狙い撃ちにして片付ける。
真は先ほどと同じように蹴りで対応した。銃の扱いに少々自信がないのもあるが、頼れるのは己の肉体であると彼は確信している。身軽さを生かし、カウンターに飛び乗る。自分が受け持つべき射程のゾンビに次々と弾丸を撃ち込むと、床に下りて近いものから蹴りで沈めていった。
「おおっと!」
つかみかかるゾンビを消火器で軽くいなしてから、アルヴィンはレバーを引いた。白い消化剤がゾンビの顔面を直撃する。風圧で後ろによろめくゾンビ。その白い的に、沙織が発砲した。
ディーナは怖気と戦いながら、折りたたみ椅子を叩きつける。ゾンビと一緒に椅子もひしゃげてしまった。もう使い物にならない。
「嫌だよぅ、怖いよぅ……エクラさまぁ……」
怯えて泣きながら、知らぬ名を呟く。そこでふっと顔を上げた。
「エクラ、さま?」
誰のことだろう。でも、とても大事な名前であることはわかる。背中がすっと伸びた。その足下に、消火器が転がってくる。アルヴィンがウィンクした。
「軽くしておいたからサ!」
彼は点滴棒を拾い上げている。頭上で軽く回転させると、勢いを乗せてゾンビに叩きつける。
アルヴィンの点滴棒にぶら下がっていた輸液とラインは、ユーリが拾った。まだ点滴の中身は残っている。彼女はそれを振り回すと、投げ縄の如くゾンビの首に巻き付けた。勢いよく引く。下がった頭に銃口を向けた。発砲。ゾンビが倒れる勢いで点滴ラインはちぎれる。
「さぁ、今夜はクリミナルパーティーよ。盛大かつ派手に行きましょう」
ただのビニールの紐になったチューブを投げ捨てながら、高らかに宣言。
「数は減った!行け!」
リューが合図する。病棟の反対側へ。ナースステーションを通り過ぎようとした一行は、方々にグレネードが置かれていたことに気付いた。一人二個持って丁度良い。
「ここに武器を置いて行った人たちはどうなったんでしょうか」
沙織が心細げに、グレネードとマシンガンを抱きしめながら呟く。
「無事だと良いよな……」
●戦意
ユーリはマシンガンを希望者に渡すと言った。それに挙手したアルヴィンは、三階に着くと、居並ぶゾンビに向けて両手で二挺のマシンガンを発射する。
「うーん、映画の様だネ!」
軽快な銃声と共に、ゾンビが片っ端からふらふらとよろめく。彼が引き金から指を離し、銃口を天井に向けると、他のメンバーが各々飛び出した。
ユーリは一体の頭に蹴りを入れると、そのまま倒して踏み抜き、その向こうにいるゾンビに発砲した。真はつかみかかってきたゾンビの攻撃を、頭を下げて避け、つんのめった相手の勢いを利用して蹴りを叩き込む。リューはそれより先に行くと、仲間を制してグレネードを放り投げた。爆発。これでかなりの数が減らせた。
「これでも食らえなのー!」
さっきまでとは打って変わって、ディーナは勇ましく消火器をゾンビに叩きつけた。次々とゾンビを殴り倒す。しぶといゾンビは沙織が追撃を加える。
「ディーナさんどうしたんですか……」
「心境の変化カナ?」
「怖くないんだったら良いんだけど……沙織さんは大丈夫?」
「は、はい大丈夫です……」
沙織は頷いてから、思ったよりゾンビが近くにいるのに気付いて悲鳴を上げた。すぐに発砲したあたり、彼女もこの状況に慣れ始めているようである。
●屋上へ
病棟での死闘を乗り越えて、遂に六人は屋上に到着した。あれが動画で言っていたヘリか。
「誰か、操縦できる?」
真が仲間たちを振り返る。沙織が手を挙げた。
「やってみます」
「お願いし……ってまだ来た!?」
真が叫んだ通り、階下からぞろぞろとゾンビたちが押し寄せている。一体どこに潜んでいたと言うのだ!
「先に乗れ!」
リューが発砲しながら声を張る。
「わかりました!」
「ボクは副操縦士になろうかナ。前の席は片方空けておいてホシイ」
「あなたたちはどうするの?」
ユーリが二人を見る。
「ちゃんと乗るから心配するな! それより乗るのがあと俺たちだけって状態にしてくれ!」
「わかったわ。さあ、皆乗りましょう!」
ユーリの先導で、真、ディーナ、沙織が次々とヘリに乗り込む。沙織はスイッチやレバーを操作した。各種計器やメーターが動き出す。
アルヴィンは点滴棒でゾンビを押し返した。プロペラが回転して風を切る、高い音が鳴り始める。
「出ます! 二人とも乗ってください!」
「すぐ行く! 出てくれ!」
沙織は戸惑ったようだったが、すぐにヘリが浮かび始めた。アルヴィンは点滴棒をゾンビにくれて走り出す。リューはグレネードのピンを抜いてその後を追った。二人揃ってヘリコプターの脚にしがみつく。アルヴィンはユーリが引き上げて、副操縦席に収まった。
「リューさん!」
リューは振り返らなかった。こちらに手を伸ばすゾンビ、その一番近い手に持っていたものをレバーごと握らせる。それからディーナと真に助けられてヘリに乗り込んだ。
「沙織、下で爆発するから備えてくれ!」
「爆発……!? わ、わかりました!」
ヘリは急上昇した。
グレネードを持たされたゾンビは、不思議そうにそれをしげしげと眺めた。だが、すぐに興味を失ったらしい。それを足下に放り出す。
それがどう言うことなのか、もう彼らにはわからないだろう。
ゾンビの群の中で爆発が起きた。リューがゾンビに握らせたグレネードが爆発したのだ。わずかに爆風が届いたが、パイロット二人はそれに動揺してヘリを落とすようなヘマはしない。
「どうなってんだろうな、他の場所。なんとか乗り切ったけど、世界皆ゾンビ、とか嫌だぜ、おい」
リューは煙を上げる病院屋上を眺めながら呟いた。
「なるようになるさ」
真が肩を竦める。ディーナが前を見ながら毅然として言った。
「それでも、行きましょう。生存者が私たちを待っているの」
ヘリコプターは飛んでいく。
ゾンビから世界を救うために……。
●夢オチ
「……はっ! 寝てた!」
リューはがばりと起き上がった。
「もう! 皆寝ちゃうんだから!」
と文句を言ったのはオフィスの青年職員。リューははて、と次第を思い出す。そうそう、厄介な依頼が成功したもんだからその打ち上げに来たんだった。疲れもあって談笑している内に眠くなってしまい……全員で寝落ちしたらしい。
「ディーナがうなされてたんだよね」
彼は気遣わしげにディーナを見る、その内、めいめいが目を覚まして、口々に「ゾンビが……」と口にするものだから、リューは首を傾げた。
「……まさか、全員ゾンビの夢見てた?」
「そうみたいだ」
真も苦笑する。
「ゾンビ怖かったです……」
沙織は思い出しているのか震えた。だがどこか達成感のある表情をしている。
「夢とハ言え貴重な体験だったヨ」
アルヴィンはご満悦だ。最初から夢だとわかっていた感がある。
「自分が誰かわからなくても、エクラのお導きはあったの」
夢で何かの啓示でも受けたのか、ディーナは厳かに言う。
「存分にあがいたけど、夢だったのね……」
大暴れしたらしいユーリは、どこか拍子抜けした顔をしている。そんな仲間たちの様子を見て、どこか安心したような笑顔でリューが言った。
「自分だけの夢でも誰か怪我するのヤだけど、皆同じ夢見て帰って来れたんだったら良かったよな」
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
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