ゲスト
(ka0000)
とてもくさい
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/11/14 07:30
- 完成日
- 2018/11/15 09:50
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●誰だ! 屁をこいたのは!
その街は、平和な街だった。
今まで雑魔らしい雑魔など、多くても数えるほどしか見ていないし、大多数は一度も見たことがない者ばかりだった。
それでも常識として雑魔の脅威というのは知識として知っていたから、雑魔がもし街に出現した時の対策は立てられており、いつでも即応体勢が取られるようになっていた。
そんな街の昼下がりに、井戸端会議に興じていた奥様方のうち、誰かが不意に眉をひそめる。
「ねえ、何だかくさくない?」
「誰かおならでもした?」
「わ、私はしてないわよ!」
「サツマイモが美味しい季節だし、食べすぎちゃったの?」
「プークスクス」
秋といえば実りの秋。実りの秋といえばサツマイモ。
実際この街がある地方ではサツマイモがよく収穫されて親しまれていたため、この時期に食卓に並ぶ芋といえば、圧倒的にサツマイモだった。
そんな井戸端会議に興じる奥様方の傍を、どこからか迷い込んできたらしいスカンク型の雑魔が、サツマイモを食べながら物凄い臭いのおならを巻き散らしつつ通り過ぎていく。
「くさっ! 物凄くくさっ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 雑魔よ雑魔!」
「どうしてこんな街中に!?」
「知らないわよ!? 雑魔もサツマイモが食べたかったんじゃないの!?」
「雑魔なのに!?」
「と、とにかく人を呼ばなきゃ! 兵隊さーん!」
井戸端は混乱の渦と化した。
●誰だ! 今度こそ屁をこいたのは!
同じ町の商店街で、男たちが働いていた。
男たちはその多くが、井戸端会議をしていた奥様方の夫だった。
「おい、誰か屁をこいただろ。くさいぞ」
「お前じゃないか?」
「お、俺じゃないぞ!」
「サツマイモが美味いからって食べすぎるからこうなるんだぞ。食べすぎはよくない」
「ゲラゲラゲラ」
男たちは自分の妻たちがしていた会話とほぼ同じ内容の会話をしていた。
ある意味では全員とても息の合った夫婦といえるかもしれない。
そんな男たちの傍を、どこからか迷い込んできたらしいカメムシ型の雑魔が、サツマイモを食べながら物凄い悪臭を巻き散らしつつ通り過ぎていく。
「くせぇっ! 物凄くくせぇっ! ゴミムシの臭いがぷんぷんするぜ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ! 雑魔だろ今の!」
「どうしてこんな街中に雑魔が!?」
「知るか! 雑魔もサツマイモが食べたかったんじゃないのか!?」
「雑魔なのに!? ていうかカメムシみたいだったぞ! そもそもサツマイモ食えるのか!?」
「どうでもいいだろそんなこと! とにかく人を呼べ! どこに行ったか突き止めろ! ハンターに退治を頼むんだ!」
商店街は騒然となった。
●屁をこいた犯人は
食欲の秋である。
サツマイモは、違ったジェーンは午後の休憩にサツマイモを練り込んだパウンドケーキを食べていた。
「ジェーンちゃん……君、食べすぎじゃない?」
「そうですか?」
上司に呆れられて首を傾げるも、フォークを動かすジェーンの手の動きは止まらず、パウンドケーキの形がみるみるうちに欠けて小さくなっていく。
「そうだよ。今日だけで焼き芋三つも食べてたじゃない。多いよ」
「だって美味しいんですもん」
けろりとした顔で、ジェーンはサツマイモのパウンドケーキを完食する。
さらに同じパウンドケーキを二つ平らげ、さて仕事に戻ろうかとジェーンが立ち上がったところで、ハンターズソサエティに大量の男女が押し寄せてきた。
「大変だ! サツマイモを喰い過ぎて雑魔が大量におならをぶち込んで倉庫に立てこもった!」
「どういうことですかそれ」
「たぶん、情報がどこかで錯綜してねじ曲がってるんじゃないかな……」
意味不明な通報に、唖然とするジェーンに対し上司は鋭く真実を言い当てた。
どうやら、生前の習性かどうかは分からないが、雑魔が街中に迷い込み、生前の習性で餌となるサツマイモを食べながら徘徊。街の人間たちが怪我人を出しつつも、町はずれにある倉庫に閉じ込めることに成功したらしい。
しかし混乱のせいでよりにもよって収穫したサツマイモを一時保管していた倉庫に間違って閉じ込めてしまい、早急にハンターたちに退治してもらいたいようだ。
「あ、ちなみに雑魔はスカンク型雑魔とカメムシ型雑魔で、倉庫の中は悪臭で凄いことになってます」
「……では早急に依頼を手配しますね」
うさんくさい表情の裏で、自分が同行を命じられずに済んだことを、ジェーンは心の底から喜んでいた。
その街は、平和な街だった。
今まで雑魔らしい雑魔など、多くても数えるほどしか見ていないし、大多数は一度も見たことがない者ばかりだった。
それでも常識として雑魔の脅威というのは知識として知っていたから、雑魔がもし街に出現した時の対策は立てられており、いつでも即応体勢が取られるようになっていた。
そんな街の昼下がりに、井戸端会議に興じていた奥様方のうち、誰かが不意に眉をひそめる。
「ねえ、何だかくさくない?」
「誰かおならでもした?」
「わ、私はしてないわよ!」
「サツマイモが美味しい季節だし、食べすぎちゃったの?」
「プークスクス」
秋といえば実りの秋。実りの秋といえばサツマイモ。
実際この街がある地方ではサツマイモがよく収穫されて親しまれていたため、この時期に食卓に並ぶ芋といえば、圧倒的にサツマイモだった。
そんな井戸端会議に興じる奥様方の傍を、どこからか迷い込んできたらしいスカンク型の雑魔が、サツマイモを食べながら物凄い臭いのおならを巻き散らしつつ通り過ぎていく。
「くさっ! 物凄くくさっ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 雑魔よ雑魔!」
「どうしてこんな街中に!?」
「知らないわよ!? 雑魔もサツマイモが食べたかったんじゃないの!?」
「雑魔なのに!?」
「と、とにかく人を呼ばなきゃ! 兵隊さーん!」
井戸端は混乱の渦と化した。
●誰だ! 今度こそ屁をこいたのは!
同じ町の商店街で、男たちが働いていた。
男たちはその多くが、井戸端会議をしていた奥様方の夫だった。
「おい、誰か屁をこいただろ。くさいぞ」
「お前じゃないか?」
「お、俺じゃないぞ!」
「サツマイモが美味いからって食べすぎるからこうなるんだぞ。食べすぎはよくない」
「ゲラゲラゲラ」
男たちは自分の妻たちがしていた会話とほぼ同じ内容の会話をしていた。
ある意味では全員とても息の合った夫婦といえるかもしれない。
そんな男たちの傍を、どこからか迷い込んできたらしいカメムシ型の雑魔が、サツマイモを食べながら物凄い悪臭を巻き散らしつつ通り過ぎていく。
「くせぇっ! 物凄くくせぇっ! ゴミムシの臭いがぷんぷんするぜ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ! 雑魔だろ今の!」
「どうしてこんな街中に雑魔が!?」
「知るか! 雑魔もサツマイモが食べたかったんじゃないのか!?」
「雑魔なのに!? ていうかカメムシみたいだったぞ! そもそもサツマイモ食えるのか!?」
「どうでもいいだろそんなこと! とにかく人を呼べ! どこに行ったか突き止めろ! ハンターに退治を頼むんだ!」
商店街は騒然となった。
●屁をこいた犯人は
食欲の秋である。
サツマイモは、違ったジェーンは午後の休憩にサツマイモを練り込んだパウンドケーキを食べていた。
「ジェーンちゃん……君、食べすぎじゃない?」
「そうですか?」
上司に呆れられて首を傾げるも、フォークを動かすジェーンの手の動きは止まらず、パウンドケーキの形がみるみるうちに欠けて小さくなっていく。
「そうだよ。今日だけで焼き芋三つも食べてたじゃない。多いよ」
「だって美味しいんですもん」
けろりとした顔で、ジェーンはサツマイモのパウンドケーキを完食する。
さらに同じパウンドケーキを二つ平らげ、さて仕事に戻ろうかとジェーンが立ち上がったところで、ハンターズソサエティに大量の男女が押し寄せてきた。
「大変だ! サツマイモを喰い過ぎて雑魔が大量におならをぶち込んで倉庫に立てこもった!」
「どういうことですかそれ」
「たぶん、情報がどこかで錯綜してねじ曲がってるんじゃないかな……」
意味不明な通報に、唖然とするジェーンに対し上司は鋭く真実を言い当てた。
どうやら、生前の習性かどうかは分からないが、雑魔が街中に迷い込み、生前の習性で餌となるサツマイモを食べながら徘徊。街の人間たちが怪我人を出しつつも、町はずれにある倉庫に閉じ込めることに成功したらしい。
しかし混乱のせいでよりにもよって収穫したサツマイモを一時保管していた倉庫に間違って閉じ込めてしまい、早急にハンターたちに退治してもらいたいようだ。
「あ、ちなみに雑魔はスカンク型雑魔とカメムシ型雑魔で、倉庫の中は悪臭で凄いことになってます」
「……では早急に依頼を手配しますね」
うさんくさい表情の裏で、自分が同行を命じられずに済んだことを、ジェーンは心の底から喜んでいた。
リプレイ本文
●臭う依頼
まず、顔を合わせたハンターたちにリュー・グランフェスト(ka2419)は自己紹介をした。
「俺はリュー。リュー・グランフェストだ。よろしくな」
雑魔退治はハンターの仕事とはいえ、内容としてはあまりよろしくない依頼である。
(なんてーか面倒な話だなあ)
選択の自由があるので、避けられるなら避けたいと思うのは当たり前だ。
レイア・アローネ(ka4082)が皆に声をかける。
「さて、いくか。まよい、リュー、多由羅、シレークス」
そのまま、とても自然に仕事に戻ろうとしたジェーン・ドゥの手を取った。
「え、あの、ちょっと?」
「ジェーン、サツマイモだよ? ……この前はお芋に飛びついてたのに、今度は来ないの?」
「何を他人の顔をしている。お前この間土産の栗を食ってたろう。付き合え」
「これはジェーン様、お久しぶりですね。噂で聞いたのですが随分と腕が立つとの事で。武人として些か興味がありました。さあ、いきましょう!」
受付嬢ジェーンは斡旋して自分だけ逃げようとしたが、そうは問屋が卸さない。
レイアと夢路 まよい(ka1328)、多由羅(ka6167)のトリオからは逃げられなかった。
というわけで同行が決まる。
現場に着くと、まよいは閉め切られている倉庫から漏れる悪臭を感じ取った。
(これが本当の鼻つまみ者……? 実際、鼻をつままないとやってられないよ、こんなの)
外から既にこの状態なのだから、中は推して知るべし。
(食べ物を粗末にするのは、聖職者として憚られやがりますが……。ああなってしまった以上、割り切るしかねーですよねぇ。あぁ、勿体ねぇです)
シレークス(ka0752)は流浪のエクラ教シスターである。
「よりにもよって、どうしてそんな組み合わせになっちまったんですかねぇ?」
これも人々の為であると、今回の依頼に参加した。
(心頭滅却すれば火もまた涼し、屁もまた香し。屁如きに怯んでいては剣士の名折れ。街を騒がす雑魔を倒すのは我々の役目です)
キリッとした表情の多由羅は、無駄に凛々しい。
さあ、依頼の始まりだ!
●臭い雑魔たちを退治せよ
さて、まずは作戦を決めなければならない。
街に被害が出る恐れがあるので逃がすのは論外だが、そこは話し合いや対策次第だ。
逃走の危険を考えるならば、一気に決着をつけるのが一番だということは、この場にいる皆が同意するだろう。
まずはシレークスが依頼人の一人でもある倉庫所有者に交渉を行う。
「あのような雑魔達に占拠されてしまえば、倉庫の中身は絶望的でやがります。逃がせば周囲に被害が拡大する危険もありますが、何より早く片付けてしまわないと、悪臭が建物自体に染み付いてしまいかねません」
エクラ教シスターとして、憐れむような表情を浮かべるシレークスは、倉庫所有者の両手をそっと握り、自らの豊満な身体でグイグイと至近距離で密着する。
倉庫所有者の鼻の下が伸びていく。
リューとしては食べ物を粗末にすることが気にはなるものの、仲間の意向を無視するのも何なので交渉に参加する。
「仮にこの中の作物を無事取り返せたとして、どうするんだ? 売り物にはできないんじゃないかと思うんだが」
レイアも質問を挟む。
「問題はサツマイモの犠牲を許容するかだが……。主人、そもそもこの在庫は売り物になるのか?」
二人の疑問はもっともだ。
「芋をどうするか、ですか? む……勿体なくはあるのですが……どうでしょう?」
多由羅も首を傾げ、考え込む。
倉庫は閉まっているのに既に異臭を感じる。
中の芋も異臭漬けになっているだろう。
「そこなんですよね。そちらで食べますか?」
「いや、それは」
思わずレイアが口ごもる。
「ですよねぇ。私たちで食べますよ」
「……マジか」
依頼人たちの判断に感嘆するリューだった。
「売り物にできないんだから多少は目を瞑ってくれないか?」
「構いません。この中に入りたくないのは皆一緒ですからな」
頼み込むリューにほっほっほと依頼人の一人が笑っているが、笑いごとではない。
レイアとしては倉庫に突入して乱戦でも構わないとはいえ、より楽に倒せるのならそちらを取る。
範囲攻撃ならまよいの魔法が頼りになるだろう。
「倉庫の中は悪臭が凄いことになってると聞いたのだが……。なら雑魔退治の必要経費という事で芋代はオフィスに負担してもらう方がマシではないか? そこら辺どうなのだろう、ジェーンよ?」
「構いませんよ。乗りかかった船ですし、事務手続きや上司への根回しも引き受けましょう」
さすがのジェーンも、ここまで来て逃走したりはしないらしい。
「というかそもそも食べられますかね? 倉庫の外からでも悪臭が染み出してくるようなのですが。芋好きのジェーン様などはそれでも食すのでしょうか?」
「それはちょっと……」
多由羅から皮肉ではなく素で尋ねたことが分かってしまうほど純粋な瞳を向けられ、ジェーンの表情が引きつる。
(中に入らずに済ませられるなら、外から範囲魔法を撃ち込んで済ませたいけどなーこれ)
まよいの気持ちは皆と一緒だ。
「もし悪臭ガスに晒されたことのあるサツマイモを売りに出したりしたら、悪評つくよ?」
一応依頼主の一人でもある倉庫の持ち主に忠告をしておく。
多由羅が胸を張った。
「術は得意ではありませんが、芋を犠牲にしていいのなら私にも手はあります。一瞬扉を開けて、中に次元斬を叩き込むのです」
次元斬というのは便利なスキルだ。障害物で視線が通らず遮蔽された状態でも、ちゃんと空間さえ指定すればその向こう側で発動してくれる。
それ故味方もろとも斬ってしまう危険性があるものの、今回はその場にいないことが分かり切っているので、心配はない。
大前提として、絶対に逃してはいけない。
街中にでも逃げられれば大惨事だからだ。
「まずは力仕事でやがりますね!」
シレークスは倉庫所有者を初めとする依頼人たちに提供してもらい、周りの倉庫にあった大きな荷物で脱出経路を塞いで回る。
「あ~もう、こんなくせーのはもう懲り懲りでやがります」
中から漂ってくる臭いに辟易するシレークスだった。
リューは仲間に先制の範囲攻撃を任せ、そのどさくさで出てきたのを追い詰め倒すことにした。
許可が取れたので、多由羅も先制攻撃に参加する。
目を閉じたまよいが静かに集中力を高め始めた。
同時にまよいの身体を流れるマテリアルが励起し、その勢いを増していく。
循環するマテリアルは奔流となり、やがてまよいの身体から勢いよく噴き上がる。
そのまま空気中に霧散しそうになるマテリアルを周囲に留め、まよいは多くのマテリアルを練り上げ魔力へと変換していった。
「準備オーケーだよ。開けちゃって」
「よし、やってくれ、まよい!」
目を開けたまよいが合図を出し、レイアが扉を開く。
溢れてくる刺激臭にまよいと一緒に涙目になりながらも、多由羅が斬魔刀で斬撃を繰り出し空間ごと断つ。
壁の向こう側なので見えないが、何か複数のものを同時に断つ感触があった。
比較的柔らかいものと硬いもの。スカンク型雑魔とカメムシ型雑魔のようだ。
もしかしたら芋も混じっているかもしれない。
まよいは完成させた魔法を発動した。
「全てを無に帰せ……ブラックホールカノン!」
禍々しいうごめく紫色の球体が倉庫内に放たれる。
着弾点には雑魔が一体いた。
その雑魔を中心に、強力な重力波が倉庫内に発生した。
重力の歪みが異音となって響き、巻き込まれたスカンク型雑魔やカメムシ型雑魔は体液を巻き散らし、一緒に悪臭も巻き散らして潰れ、消えていく。
展開された重力場のせいで、魔法の効果が消えるまで、雑魔たちの移動が制限される。
間髪入れずレイアが飛び込み、生体マテリアルを魔導剣に流し込んで強化し、攻めに意識を注力して構え、薙ぎ払う。
手応えに一体取ったことを確信すると、左手で星神器を引き抜き二刀で別の敵に連続攻撃を仕掛け、加速されたオーラの三撃目を叩き込んだ。
それでも辛うじて範囲から逃れた個体が飛び出てくるが、予測済みだ。
外に飛び出て慌てふためくスカンク型雑魔に対し、リューは剛刀で狙い済ました衝撃波を放つ。
過たず、スカンク型雑魔を撃ち抜いた。
物陰に隠れて逃げようとする個体に対し、倉庫の壁を蹴って立体的な三角飛びを行い、立ち塞がる。
攻撃を警戒して構え、案の定繰り出された攻撃を受け止め、渾身の力で反撃した。
リューの全力を受ければ、雑魔なと文字通り弾け飛ぶ。
雑魔たちが全滅するまで、そう時間はかからなかった。
●戦闘終了
染み付いた残り香にリューは苦笑する。
(酷い悪臭だなぁ……即行風呂入って念入りに洗わねえと。八つ当たりに夕食には芋でも食ってやろうか畜生)
戦闘の余波でボロボロになったサツマイモをレイアが差し出す。
「……ジェーン、食うか?」
「……せめて焼いてください」
「……食うのか」
唖然とするレイアだった。
「という冗談はさておき、皆さんちょっと注目をお願いします」
帰り支度を始めていたシレークス、まよい、多由羅を含め、ジェーンが皆を呼び止めた。
「実はこの近くに良い温泉宿があるんです。温泉のみの利用も可能ですので、どうせなら寄ってさっぱりしてから帰りましょう。風呂代は奢らせていただきますよ」
臭いに辟易していたハンターたちから、歓声が上がった。
これにて、今回の依頼は終了である。
まず、顔を合わせたハンターたちにリュー・グランフェスト(ka2419)は自己紹介をした。
「俺はリュー。リュー・グランフェストだ。よろしくな」
雑魔退治はハンターの仕事とはいえ、内容としてはあまりよろしくない依頼である。
(なんてーか面倒な話だなあ)
選択の自由があるので、避けられるなら避けたいと思うのは当たり前だ。
レイア・アローネ(ka4082)が皆に声をかける。
「さて、いくか。まよい、リュー、多由羅、シレークス」
そのまま、とても自然に仕事に戻ろうとしたジェーン・ドゥの手を取った。
「え、あの、ちょっと?」
「ジェーン、サツマイモだよ? ……この前はお芋に飛びついてたのに、今度は来ないの?」
「何を他人の顔をしている。お前この間土産の栗を食ってたろう。付き合え」
「これはジェーン様、お久しぶりですね。噂で聞いたのですが随分と腕が立つとの事で。武人として些か興味がありました。さあ、いきましょう!」
受付嬢ジェーンは斡旋して自分だけ逃げようとしたが、そうは問屋が卸さない。
レイアと夢路 まよい(ka1328)、多由羅(ka6167)のトリオからは逃げられなかった。
というわけで同行が決まる。
現場に着くと、まよいは閉め切られている倉庫から漏れる悪臭を感じ取った。
(これが本当の鼻つまみ者……? 実際、鼻をつままないとやってられないよ、こんなの)
外から既にこの状態なのだから、中は推して知るべし。
(食べ物を粗末にするのは、聖職者として憚られやがりますが……。ああなってしまった以上、割り切るしかねーですよねぇ。あぁ、勿体ねぇです)
シレークス(ka0752)は流浪のエクラ教シスターである。
「よりにもよって、どうしてそんな組み合わせになっちまったんですかねぇ?」
これも人々の為であると、今回の依頼に参加した。
(心頭滅却すれば火もまた涼し、屁もまた香し。屁如きに怯んでいては剣士の名折れ。街を騒がす雑魔を倒すのは我々の役目です)
キリッとした表情の多由羅は、無駄に凛々しい。
さあ、依頼の始まりだ!
●臭い雑魔たちを退治せよ
さて、まずは作戦を決めなければならない。
街に被害が出る恐れがあるので逃がすのは論外だが、そこは話し合いや対策次第だ。
逃走の危険を考えるならば、一気に決着をつけるのが一番だということは、この場にいる皆が同意するだろう。
まずはシレークスが依頼人の一人でもある倉庫所有者に交渉を行う。
「あのような雑魔達に占拠されてしまえば、倉庫の中身は絶望的でやがります。逃がせば周囲に被害が拡大する危険もありますが、何より早く片付けてしまわないと、悪臭が建物自体に染み付いてしまいかねません」
エクラ教シスターとして、憐れむような表情を浮かべるシレークスは、倉庫所有者の両手をそっと握り、自らの豊満な身体でグイグイと至近距離で密着する。
倉庫所有者の鼻の下が伸びていく。
リューとしては食べ物を粗末にすることが気にはなるものの、仲間の意向を無視するのも何なので交渉に参加する。
「仮にこの中の作物を無事取り返せたとして、どうするんだ? 売り物にはできないんじゃないかと思うんだが」
レイアも質問を挟む。
「問題はサツマイモの犠牲を許容するかだが……。主人、そもそもこの在庫は売り物になるのか?」
二人の疑問はもっともだ。
「芋をどうするか、ですか? む……勿体なくはあるのですが……どうでしょう?」
多由羅も首を傾げ、考え込む。
倉庫は閉まっているのに既に異臭を感じる。
中の芋も異臭漬けになっているだろう。
「そこなんですよね。そちらで食べますか?」
「いや、それは」
思わずレイアが口ごもる。
「ですよねぇ。私たちで食べますよ」
「……マジか」
依頼人たちの判断に感嘆するリューだった。
「売り物にできないんだから多少は目を瞑ってくれないか?」
「構いません。この中に入りたくないのは皆一緒ですからな」
頼み込むリューにほっほっほと依頼人の一人が笑っているが、笑いごとではない。
レイアとしては倉庫に突入して乱戦でも構わないとはいえ、より楽に倒せるのならそちらを取る。
範囲攻撃ならまよいの魔法が頼りになるだろう。
「倉庫の中は悪臭が凄いことになってると聞いたのだが……。なら雑魔退治の必要経費という事で芋代はオフィスに負担してもらう方がマシではないか? そこら辺どうなのだろう、ジェーンよ?」
「構いませんよ。乗りかかった船ですし、事務手続きや上司への根回しも引き受けましょう」
さすがのジェーンも、ここまで来て逃走したりはしないらしい。
「というかそもそも食べられますかね? 倉庫の外からでも悪臭が染み出してくるようなのですが。芋好きのジェーン様などはそれでも食すのでしょうか?」
「それはちょっと……」
多由羅から皮肉ではなく素で尋ねたことが分かってしまうほど純粋な瞳を向けられ、ジェーンの表情が引きつる。
(中に入らずに済ませられるなら、外から範囲魔法を撃ち込んで済ませたいけどなーこれ)
まよいの気持ちは皆と一緒だ。
「もし悪臭ガスに晒されたことのあるサツマイモを売りに出したりしたら、悪評つくよ?」
一応依頼主の一人でもある倉庫の持ち主に忠告をしておく。
多由羅が胸を張った。
「術は得意ではありませんが、芋を犠牲にしていいのなら私にも手はあります。一瞬扉を開けて、中に次元斬を叩き込むのです」
次元斬というのは便利なスキルだ。障害物で視線が通らず遮蔽された状態でも、ちゃんと空間さえ指定すればその向こう側で発動してくれる。
それ故味方もろとも斬ってしまう危険性があるものの、今回はその場にいないことが分かり切っているので、心配はない。
大前提として、絶対に逃してはいけない。
街中にでも逃げられれば大惨事だからだ。
「まずは力仕事でやがりますね!」
シレークスは倉庫所有者を初めとする依頼人たちに提供してもらい、周りの倉庫にあった大きな荷物で脱出経路を塞いで回る。
「あ~もう、こんなくせーのはもう懲り懲りでやがります」
中から漂ってくる臭いに辟易するシレークスだった。
リューは仲間に先制の範囲攻撃を任せ、そのどさくさで出てきたのを追い詰め倒すことにした。
許可が取れたので、多由羅も先制攻撃に参加する。
目を閉じたまよいが静かに集中力を高め始めた。
同時にまよいの身体を流れるマテリアルが励起し、その勢いを増していく。
循環するマテリアルは奔流となり、やがてまよいの身体から勢いよく噴き上がる。
そのまま空気中に霧散しそうになるマテリアルを周囲に留め、まよいは多くのマテリアルを練り上げ魔力へと変換していった。
「準備オーケーだよ。開けちゃって」
「よし、やってくれ、まよい!」
目を開けたまよいが合図を出し、レイアが扉を開く。
溢れてくる刺激臭にまよいと一緒に涙目になりながらも、多由羅が斬魔刀で斬撃を繰り出し空間ごと断つ。
壁の向こう側なので見えないが、何か複数のものを同時に断つ感触があった。
比較的柔らかいものと硬いもの。スカンク型雑魔とカメムシ型雑魔のようだ。
もしかしたら芋も混じっているかもしれない。
まよいは完成させた魔法を発動した。
「全てを無に帰せ……ブラックホールカノン!」
禍々しいうごめく紫色の球体が倉庫内に放たれる。
着弾点には雑魔が一体いた。
その雑魔を中心に、強力な重力波が倉庫内に発生した。
重力の歪みが異音となって響き、巻き込まれたスカンク型雑魔やカメムシ型雑魔は体液を巻き散らし、一緒に悪臭も巻き散らして潰れ、消えていく。
展開された重力場のせいで、魔法の効果が消えるまで、雑魔たちの移動が制限される。
間髪入れずレイアが飛び込み、生体マテリアルを魔導剣に流し込んで強化し、攻めに意識を注力して構え、薙ぎ払う。
手応えに一体取ったことを確信すると、左手で星神器を引き抜き二刀で別の敵に連続攻撃を仕掛け、加速されたオーラの三撃目を叩き込んだ。
それでも辛うじて範囲から逃れた個体が飛び出てくるが、予測済みだ。
外に飛び出て慌てふためくスカンク型雑魔に対し、リューは剛刀で狙い済ました衝撃波を放つ。
過たず、スカンク型雑魔を撃ち抜いた。
物陰に隠れて逃げようとする個体に対し、倉庫の壁を蹴って立体的な三角飛びを行い、立ち塞がる。
攻撃を警戒して構え、案の定繰り出された攻撃を受け止め、渾身の力で反撃した。
リューの全力を受ければ、雑魔なと文字通り弾け飛ぶ。
雑魔たちが全滅するまで、そう時間はかからなかった。
●戦闘終了
染み付いた残り香にリューは苦笑する。
(酷い悪臭だなぁ……即行風呂入って念入りに洗わねえと。八つ当たりに夕食には芋でも食ってやろうか畜生)
戦闘の余波でボロボロになったサツマイモをレイアが差し出す。
「……ジェーン、食うか?」
「……せめて焼いてください」
「……食うのか」
唖然とするレイアだった。
「という冗談はさておき、皆さんちょっと注目をお願いします」
帰り支度を始めていたシレークス、まよい、多由羅を含め、ジェーンが皆を呼び止めた。
「実はこの近くに良い温泉宿があるんです。温泉のみの利用も可能ですので、どうせなら寄ってさっぱりしてから帰りましょう。風呂代は奢らせていただきますよ」
臭いに辟易していたハンターたちから、歓声が上がった。
これにて、今回の依頼は終了である。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/11/14 06:29:34 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/14 03:00:11 |