我が名はルミナちゃん

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/24 07:30
完成日
2014/06/26 06:35

みんなの思い出

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オープニング

●暴れん坊陛下
「――書類仕事、飽きた」
 つい先ほどまで淀みなく動き続けていたペンが止まると同時、女の口から飛び出したのはふてくされたセリフであった。
 ヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)はゾンネンシュトラール帝国の皇帝だ。独裁国家における最高権力者であり、全軍権を掌握する絶対者である。
 その言葉は帝国に置いて何よりも尊重される。強く凛々しい、賢しく大胆なその一挙一動には憧れる者も多い。だが……。
「……あん? 今なんつった?」
「皇帝の言葉を聞き返すなオズワルド。だが私は優しいので二度でも三度でも語ろう。書類仕事飽きた……とな」
 執務室で仕事をしていたヴィルヘルミナの傍には同じく書類に目を通すオズワルド(kz0027)の姿があった。
 今の今までこの部屋にはペンが走る音と書類を捲る音しか存在しなかった。だがこの瞬間より、二人の武人が激しく意志の火花を散らす戦場と化したのである。
「お前自分が何言ってるのかわかってんのか? お前はこれから死ぬまでずっとこの仕事すンだぞ? 人生に飽きたの? 死ぬの?」
「そうではないよ。ただ今この瞬間仕事をしたくないと決定的に感じた。その心の囁きを私は尊重したい」
 ゆっくりと席を立つヴィルヘルミナ、その喉元に側面から槍が突きつけられる。オズワルドの目は本気だ。
「座りな。そのお喋りな口を閉じて」
 目を細め腰を落とすヴィルヘルミナ。次の瞬間女はペンに手を伸ばし……それを指先で弾いた。
 絶妙な加減で放たれたペンは回転しながらインクを飛ばしつつオズワルドに迫る。男は瞬きもせず飛んでくるインクもペンもかわしながら槍の一撃を放つ。ヴィルヘルミナは右足に椅子の足をひっかけ持ち上げると同時に片手で支え、迫る突きを椅子の背もたれに当て、ぎりぎりで頬の横に逸らした。
 すかさず第二、第三の突きが迫る。尋常ならざる速さの連撃、これをヴィルヘルミナは椅子で受け流すが、横に薙ぎ払うような一撃で椅子は木端微塵に粉砕された。ついでに書類が空を舞う中、ヴィルヘルミナは背後に跳び、すかさず窓から離脱を謀る。
「逃げられるとでも思ってんのか!?」
「君に私は殺せんよオズワルド。殺せば君の負担が倍増するだけだからな」
 目を見開くオズワルド。その手の中でピタリと槍が動きを止めた。それは刹那の戸惑いであったが、ヴィルヘルミナには十分すぎる暇だった。
 窓を突き破り飛び出す皇帝を目で追うオズワルド。その騒ぎを聞きつけカッテ・ウランゲル(kz0033)が飛び込んでくる。
「何事ですか、陛下!? ……あれ? 陛下?」
「……くそっ! また逃げ出しやがったあのクソ小娘!」
 投げつけた槍が壁にストンと刺さるのを横目に肩を落とすカッテ。もう大体把握した。
「今度はどこに行ったんですか? またリゼリオでしょうか?」
「知るか! クソッ! もう勝手にしろ! 俺は知らん! あんなバカ女の面倒見切れるか!」
 壁を蹴りまくるオズワルド。カッテは深々と溜息を零す。
「まあ……姉上の奔放さは今に始まった事ではありませんから……」
「お前の姉貴だろ! 何とかしろカッテ! 俺はいつまでウランゲルの血に振り回されにゃならんのだ!?」
「それが出来たらもうしてますよ。満足したら戻ってくるでしょうから、少し好きにさせておきましょう」
 帝国ではよくあること。そんな感じに肩を竦めるカッテであった。
「……ん? そういやお前は何しに来たんだ?」
「あ、はい。追加の書類を持ってきたんですけど……陛下がいないのでは仕方有りませんね。オズワルド、目を通してもらえますか?」
「ちょっとあのバカ女捕まえてくるわ。心配するな、機動力は俺の方が上だ」
「落ち着いてくださいオズワルド! あなたまでいなくなったら誰が今日の仕事を済ませるんですか! 大丈夫です、私も半分手伝いますから!」
 目が血走っているオズワルドに背後から縋り付くカッテ。バルトアンデルス城は今日も平和であった。

●スタイリッシュお忍び
「すまない。これとこれと……あとこれをくれないか?」
 城下町に出たヴィルヘルミナはとりあえず食べ歩きをしながら変装用の服装を購入した。髪型もポニーテールに変え、メガネをかけ本人的には大満足の変装が完了した。
「うむ、やはり身動きのとりやすい格好に限るな。最良は全裸だが、防御力という問題点がある……すまない、会計は帝国軍第一師団長オズワルドにツケておいてくれ」
 変装後のヴィルヘルミナはその辺の冒険者、或いはハンターにしか見えない……と本人は思っている。安物の剣を腰に差し、納得したように頷く。
「何という事だ……惚れ惚れするほど別人ではないか。ここまで全くの別人になってしまっては、最早誰も私がヴィルヘルミナ・ウランゲルだとはわからんだろうな……。では世話になったな。行ってくる」
「い、行ってらっしゃいませ……陛下……」
 ショップを後にしたヴィルヘルミナが取り出したのは先の騒動で舞ってた書類の一つだ。脱出の際に回収していたらしい。
「ふむ……雑魔の出現報告か。適当に依頼をでっち上げるには丁度いいな」
「ヴィルヘルミナ様、ご機嫌麗しゅう!」
「ああ、皆も息災で何より」
「陛下! ご出陣でありますか!?」
「いや、息抜きだ。しかし警邏任務ご苦労である」
「きゃー、ヴィルヘルミナ様ー! お芋食べてかなーい!?」
「五つください」
 兵士や民衆に声をかけられ、芋を食べながら進む。目指す先はハンターズオフィス、その帝国支部である。
「さて、適当に居合わせたハンターに声をかけるとしよう。偽名は……そうだな。またルミナちゃんでいいか……考えるのも面倒だし、まず絶対にバレる事はないだろうからな」
 只ならぬ覇気を纏った冒険者風の女の登場に騒めくオフィス。ルミナちゃんは颯爽と髪を靡かせ、視線のド真ん中を進んで行く……。

リプレイ本文

「あれー? ルミナだ! どしたのー? またお仕事飽きておしのびさん?」
 帝都の支部で見覚えのある顔を見つけたテルヒルト(ka0963)。依頼人であるルミナは声に振り返る。
「テルヒルトか、久しぶりだな。今日は仕事の依頼で来たのだよ」
 親しげに話すテルヒルトとルミナ。どうも二人は以前にどこかで面識があるらしい。
 ルミナは支部に居合わせたハンター達に依頼内容を語った。承諾を申し出たのは八名で、共に現地へ向かう事になった。
「私の名はルミナ。気安くルミナちゃんとでも呼んでくれ」
「ルミ……ナちゃん、ね。あ、うん、宜しくね」
 キヅカ・リク(ka0038)は途切れ途切れに応じる。やっぱりどー見てもどっかで見たような顔なのだから無理もない。
「よよ、よ、よろしくお願いします! ルミナチャン……さん?」
「ルミナチャンではなくて、ルミナという名前にちゃん付けなんだと思うよ」
「あ、え? あれ? じゃじゃ、じゃあ……ルミナさんで、良いかな?」
 猫背に顔色を窺いつつ話すマコト・タツナミ(ka1030)。ティアナ・アナスタシア(ka0546)はその横で苦笑を浮かべ会話に混ざっている。
「ルミナちゃんって言うの? この仕事片付いたら、一緒にご飯でもいかない? 奢るよー? まぁ、元は君のお金なんだけどね」
「確かにかわいこちゃんだな。しっかし、誰かに似ているような……?
 馴れ馴れしく声をかけるラン・ヴィンダールヴ(ka0109)の横でルオ(ka1272)が腕を組む。しかしすぐに思い直したように笑い。
「ま、誰でもいいか! 何にせよ怪我させないようにしないとな!」
 背後で思わずずっこけるキヅカ。わなわなと立ち上がるその背中をマッシュ・アクラシス(ka0771)が軽く叩いた。
「突っ込むだけ時間の無駄ですよ」
「って事は、もしかして気づいてる?」
「一応、この国の出身ですからね。しかし本人は見ての通りの様子。口出ししても徒労を重ねるだけです」
 ルミナはすっかりハンター達に馴染んでいる。その様子をを眺めるキヅカの視線に気づいたのか、女は振り返る。
「どうかしたか?」
「いや、その……」
 思案し、それから爽やかな笑顔でキヅカは言う。
「……ちなみに芋は生のまま紙位に薄く切って油で揚げて塩掛けると死ぬほど旨いよ。おうち帰ったらやってみな。ポテチっていうんだ」
「ほう、それは興味深いな」
「だろ? うまいんだよね~、ははは!」
 ――ここで騒いでも仕方がない。もうどうにでもなれと覚悟を決め、少年はまた少し大人になった。



 お目当ての村は既に雑魔の彷徨う異様な状態にあった。
 キヅカの提案でまずは周囲の雑魔を先に片付ける事にした一行。敵が集中していると予測される教会以外の敵は単独でいる事が多く、始末は容易かった。
「どう、ルミナちゃん。俺も中々のもんだろ?」
 ゾンビを斬り倒したルオが振り返りしたり顔でウインクする。が、まだゾンビは完全に無効化されてはいなかった。オキクルミ(ka1947)がゾンビの首を刎ね飛ばし、肩に斧を乗せて振り返る。
「ゾンビは胴体を切断されてもまだ動くから気を付ける事だね。両腕と頭を落としてしまえば少なくとも攻撃される事はなくなるから」
「あ、ああ……。こういうの見るとファンタジーな世界に来ちゃったんだなぁ……とあらためて実感が沸くぜ」
 戦いはゲームとは違う。それはあのLH044の戦いでとっくに気づいている。ここは異世界、油断はしないようにと改めてルオは己に言い聞かせた。
「スケルトンも腰骨や背骨なんかを破壊してしまえばかなり行動を制限できる筈だから、狙ってみるといいだろうね」
「正解だ、オキクルミ。まともに奴らの相手をしては消耗するだけだ。多数の敵を相手にするのなら、効率を意識する事だ」
 ルミナに褒められVサインを作るオキクルミ。スケルトンもゾンビも事前に対策を練る事が出来た以上、落ち着いて対処できるだろう。
「後に増援として出現しそうな敵を排除しておくと言う意味でも、キヅカの案は素晴らしい。良く考えたな」
「いやまあ、それほどでも……。大体済んだし、そろそろ教会へ行こうか」
 教会裏の墓地が歪虚の発生源だと予想されていた。ハンター達はまず教会の屋根という安全地帯を確保し、そこに護衛対象であるルミナと遠距離攻撃や支援能力を持つハンターを待機させ、優位な状況を作り敵を誘導する作戦を立てていた。
「やはり小さな教会、屋根裏に続く梯子がありますね」
 マッシュは教会の中に梯子を発見。屋根裏から更に屋根の上に出るのはさほど難しくないようだ。
「なんだ、登るのに時間かかるかと思ったが、杞憂だったかね。一応ロープも持ってきたんだが」
「念の為預かっておくよ。何かの役に立つかもしれないからね」
 ルオからロープを受け取るティアナ。ここでハンター達は二つのチームに戦力を分担する。
 屋根の上に移動したのは依頼人であるルミナを含み、キヅカ、マコト、ティアナの四名。残りは地上で敵を誘き出し殲滅する役割を担うのだ。
「おーおー、いるいる。冴えない面したザコがぞろぞろと」
「数は……ゾンビが7、スケルトンが3か。まだ増えるのかな?」
「埋まっている可能性はあるでしょうね」
 様子を伺うランとテルヒルト。マッシュはバスタードソードを抜き、淡々と戦闘準備を始める。
「やる気あるねー? さーて、久しぶりの仕事だ仕事だ。ちゃちゃっと解決しますか!」
「そうだね。そろそろ狩りを始めよう! ……その前に、戦いやすい場所に誘き出そうっと」
 その辺に落ちていた石を投げつけるオキクルミ。ゾンビに命中し一匹が振り返ると、全ての雑魔がリンクしたように歩き出した。
「うわー、一気にきた」
「表に引き出しましょう」
 慌てて走り出すテルヒルトとマッシュ。五人はぐるっと教会の周囲を移動し正面へ。雑魔の集団はそれを追いかけてゾロゾロやってくるが、そこへ頭上から光が降り注いだ。
「ここからなら一方的に攻撃出来る……行くよ!」
 デバイスに電流が走り、キヅカの掌に光が収束する。雷光のように降り注いだ機導砲はゾンビの頭部を吹っ飛ばした。
「成程、ここからならば頭部を狙いやすいというわけか……ふっ、面白い」
 みるみるうちにティアナの髪が白く染まっていく。ロッドを高々と掲げ、その先端にホーリーライトの光を宿し笑った。
「さあ、準備は整った!護衛は我らに任せて、存分に剣を振るうのだ!」
「あ、ひ、ティアナさん、急に別人のように……!?」
「我の光の一撃とくと味わうがいい! ホーリーライト!」
 白い光がゾンビの集団に着弾する。まとまっているので外しようがない。高笑いしながら攻撃するティアナにマコトは小刻みに震えていた。
 敵は上からの攻撃に気づいて教会に近づいてくるが、壁を登る事も出来ず遠距離攻撃も持たない。ただ壁にぶつかるゾンビ達、そこへ地上のハンター達が一気に襲い掛かる。
「どこを見ているのですか?」
「これなら首だろうがどこだろうが、攻撃し放題だぜ!」
 背後からゾンビへ駆け寄り首を刎ね飛ばすマッシュとルオ。オキクルミは斧を思い切り叩き付けゾンビを頭から胴体までかち割った。
「あははは! どんどん行くよ!」
 スケルトンの頭を横からレイピアで貫くラン。テルヒルトはゾンビの手足を切り落とし動きを封じる。
 襲撃を受けてゾンビ達は振り返る。地上班が一度背後へ飛ぶと、上から援護攻撃が降り注ぎ、またそれが敵の不意を衝く形で命中した。
「ふん……学習能力のない奴らめ。所詮はただの死体か」
「上手く行きすぎてて怖いくらいだよ」
 次々に敵を射抜くティアナとキヅカ。戦況はかなり一方的、ハンターの優位で進んでいる。
「あ、わ、私も頑張らないと……えっと……ごめんなさーい!」
 思い切りナイフを投擲するマコト。ゾンビの額に突き刺さったナイフを見つめ、ゆっくり首を傾げる。
「んー……? あれ?」
 ナイフは投げたら取りに行かないといけないのだ。ゾンビの中に取りに行くのは流石に危険ですよ。
 慌てふためくマコト、その肩をルミナは叩き落ち着かせるようにゆっくりと語り掛ける。
「ナイフは後で拾えば良い。それに君は機導師だ。剣がなくても出来る事は幾らでもある」
「そ、そうでした! デバイスさえあれば……っ」
「落ち着いて状況を把握すれば自分が何をすべきか分かるはずだ。失敗を恐れるな。君は一人ではないのだから」
 くしゃくしゃとマコトの頭を撫でるルミナ。努めて落ち着きを取り戻したマコトの目に映ったのは墓地から出現する新手の姿だった。
「あ、新しい敵……! ティアナさん!」
「わかった。皆、敵の増援だ! こちらで合流まで時間を稼ぐ! マコト、やれるな?」
「は、はいっ!」
 二人はそれぞれスキルを発動。作り出した光を増援に向かって降り注がせる。
「ごめん、倒れてーっ!」
 はじけ飛ぶゾンビ。一方地上では残敵と交戦中。上のメンバーは増援を抑えているので援護は期待できない。
 素早く敵の懐に飛び込み剣で切り裂くマッシュ。ゾンビは反撃しようとするが、その腕をランのレイピアが貫いた。
「囲まれたりしないように、連携は必要でしょ?」
「それもそうですね」
 二人は視線を交わし、同時に止めの一撃を放った。そのまま背中合わせに構え直す。
「マッシュ君、改めてよろしくねー?」
「これで依頼人をナンパするような輩でなければもっと信用出来るのですが」
「あはは! まあまあ、そう言わずにさ。がんばろーかー!」
 再び二人はお互いに迫る敵へと走り出す。一方ルオとテルヒルトはヒット&アウェイで削りに徹し、敵の中を素早く駆け回る。
「実戦で使うのははじめてだが、いっちょ試してみるか!」
 一気に距離を詰め、思い切り刃を振り下ろすルオ。マテリアルの光を帯びた剣はゾンビの身体を袈裟に切り裂いた。
「うおっ、すげえ威力!? 人間の力じゃないよな……!」
 テルヒルトはゾンビの腕を掻い潜り、すれ違いざまに足を切り裂く。更に振り返ると同時にナイフを投げつけ頭を貫いた。
 更に襲い掛かるスケルトンの振り下ろす刃を交わすと、横から斧を引きずるように駆けつけたオキクルミが骨の腰を文字通り粉砕する。
「死者の尊厳を穢す輩を許す謂れは無いね」
 倒れた所に斧を叩き付けバラバラに吹き飛ばす。粗方片付いた所で地上班も増援の対処へ向かった。
「既にダメージは与えてある! 集中攻撃で一気に片付けよう!」
 頭上からのキヅカの声。新たに出現したゾンビは教会の上にあがろうと必死に壁を叩いている。
「倒してくれって言ってるようなもんだよねー!」
「突っ込むぜ、皆!」
 ランとルオが声を上げる。地上班がそれぞれゾンビに一撃加え、更に頭上からマテリアルの光が降り注ぐ。一斉攻撃に耐えきれず、歪虚達は次々に塵へ帰って行った。
「神の御許に行けるよう、お祈りぐらいはしてあげるよ」
 屋根の上から地上に上がる黒い塵を見下ろし、キヅカは十字を切る。
「Holy(この)Shit(糞野郎)」
 塵は空へ舞い上がり、光となって消えていく。こうして依頼は無事に完了されたのであった。



「墓地、このままでいいのかな?」
「ああ。負のマテリアルの発生源が消滅した以上、特別な措置は必要ないだろう」
 ルミナの説明を受けながらオキクルミは祈りを捧げる。それはこの忘れられた村に眠る人々へ届くだろうか。
「優しいのだな、君は」
「人間の流儀は知らないからボクらの部族式だけどね」
 腰に手を当て微笑むルミナ。マコトは遠巻きにその横顔を眺める。
「ルミナさん……何者なんだろう?」
 どうにも只者ならぬ気配しかしないし、戦闘中も自分より遥かに落ち着いていた。
「何か、深い事情があるのかな……?」
「いえ、多分ないと思いますよ」
 マッシュの声にびくりと背筋を震わせるマコト。一方ランは気さくにルミナに声をかける。
「さぁて、じゃ、なにか美味しい物でも食べにいこっかー?」
「そういえばお腹すいたね。初めてでやっぱり緊張したみたいだ」
 お腹を撫でながら苦笑するティアナ。そのままルミナに歩み寄る。
「折角だし、私も同行して構わないかい?」
「もちろん! 可愛い女の子、大歓迎ー!」
 両手を広げて抱き付く動きを見せるランをすっとかわすティアナ。
「ハイハ~イ! その前にお風呂入りたいな! ゾンビ汁でベトベトだし……ルミナちゃんも一緒に入ろうよ! そんで洗いっこしよう!」
「ああ、構わないよ。皆もどうだ?」
「えっ、いいのー!?」
「駄目ですよ」
「……なんでマッシュ君がダメ出しするのー?」
 ルミナの腕を取りはしゃぐオキクルミ。まさかの提案に大喜びのランであったが、その夢はどうも叶わないらしい。
「まあ、確かにアンデッド退治の後にすぐ食事というのもね……」
「それじゃあ、身体を洗ってからごはんにしよっか」
 服のにおいを気にしながら呟くティアナ。テルヒルトは背後で手を組みながら笑う。
「皆でシャワー浴びてたる所にこわいおじちゃんたちが探しに来たりしないといいねー?」
「ふむ……。あいつらならやりかねんからな」
「見張っておきますよ。その第三者も」
 無表情に頷くマッシュ。第三者以外にも見張る必要があると言わんばかりだ。
「俺達も行くか。流石に少し疲れたな。こんな調子でいつリアルブルーに帰れるやら」
「僕も色々調べたんだけど、今の所クリムゾンウェストからリアルブルーへ転移したって話は聞いたことがないね」
「やっぱりそうなのか……。ついでだ、他に何か知っている事があれば聞かせてくれるか?」
 同じく元の世界への帰還という目的を持つルオとキヅカ。二人にとっては少し真面目な話も混じる食事になりそうだが……。
「丁度おいしい葡萄酒を用意してあるから、お風呂上がりに一緒に飲もうね♪」
「それは楽しみだな……ところでオキクルミ、何故さっきからくっついているんだ?」
「えー? なんでもないよー?」
 ルミナの左右を歩くテルヒルトとオキクルミ。いよいよ帰ろうと言う時、マコトが声を上げた。
「……あぁっ!? ナイフ拾ってくるの忘れてました! ちょ、ちょっとだけ待っててください!」
「ちゃんと待ってるから、そう慌てずに……ああ」
 石に躓いて転んだマコトを見かねて駆け寄るティアナ。ランとマッシュは何かシャワー室がどうのこうのという話をしている。
「賑やかな依頼だったな。それにしても、やっぱりルミナの顔……」
 口元に手を当て思案するルオ。キヅカは何かを期待するように視線を向ける。
「……かわいいよな!」
 思い切りずっこけるキヅカ。こうしてハンター達はバルトアンデルスへの帰路に着くのであった。

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  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • 答の継承者
    オキクルミka1947

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士
  • ホワイト・ライト
    ティアナ・アナスタシア(ka0546
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 皇帝の飲み友達
    テルヒルト(ka0963
    エルフ|15才|女性|疾影士
  • スカイブルーゲイル
    マコト・タツナミ(ka1030
    人間(蒼)|21才|女性|機導師
  • 帰還への一歩
    ルオ(ka1272
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 答の継承者
    オキクルミ(ka1947
    エルフ|16才|女性|霊闘士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/19 21:41:20
アイコン 相談卓
テルヒルト(ka0963
エルフ|15才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/06/23 23:55:45