ゲスト
(ka0000)
【郷祭】郷祭奉納武闘大会
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/11/25 07:30
- 完成日
- 2018/12/11 22:43
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「だからね、ハンターの参加者募るんだけど、ガチの試合じゃなくて奉納神事の一環だから見て楽しいものじゃないと駄目なわけ」
「う、うん。それは分かるんだけど、どうして私が出場しないといけないわけ?」
丁寧に説明するポルカ・ポルテに、改めて南那初華(kz0135)が疑問を投げかけた。
ここは、同盟領は農業推進地「ジェオルジ」。毎年恒例の【郷祭】の会場の一角に出店している街角屋台「Pクレープ」の店頭。カントリー風メイド服姿の初華に、出資者たるポルカ商会一人息子のポルテが話をしている。
で、そのポルテが人差し指を立ててにっこり。
「女性が出場すれば一気に華やいでお客さんは千客万来。初華さんみたいに可愛い娘がいればなおよし!」
「……やっぱり。いつものパターンね~」
初華、がっくり。
「いや、ホントに初華さんは適任なんだって! 第一、勝つ気ないでしょ?」
「うん」
……いかがなものか。
「そしてここが重要だけど、真面目にやっても勝てないでしょ?」
「うんっ!」
本当にいかがなものか!
「ほらね。初華さんは誰か知人と対戦してキレイに負けて、後はお好み焼きを焼いて売り上げアップをお願いしたいんだよ」
「あー。その武闘大会、観戦は無料で飲食で稼ぐ、ってことね。で、ポルテさんはその飲食屋台の仲間じゃないからお色気担当の出場者を確保する事で仲間に入れてもらったのね」
「話が早くていいね! でもお色気担当は違うかな。ただ、いま着てるメイド服で出場すればいいだけ!」
「勝てる勝てないは別にして、それはそれで武闘大会を冒涜してない?」
「いつも本当にその服着て戦ってるのに何をいまさら」
とりあえず、話はまとまったようで。
「大会はまず一対一で戦って、勝った人がオマケでバトルロイヤル。怪我しないよう、観客を魅了するよう戦ってもらって、優勝者も流れで決着をつけてもらうんだって」
「盛り上げた人が勝ち、か……」
ぽわわん、と分かった風な初華。
「うん。だから最初に負けた人の方がお好み焼きと酒をやりながら観戦できるからお得な仕様になってるんだ」
「……そのお好み焼き、私が焼くのよね? 客の分とは別に」
「うん、頑張って。ちゃんと華麗に負けて、初華さんの本当の戦いに備えてね!」
「ひっどぉい……。ん、いいもん。お好み焼き焼くのもお友達に手伝ってもらうんだから!」
というわけで、負けた人の中から手伝ってもらうことにする初華だったり。なお、お好み焼きは広島風の肉玉そばである。
というわけで、10スクエア四方程度の舞台上で戦い流れの中で適当に勝敗を付け、勝った人はさらにバトルロイヤル(適当に25スクエア四方程度?)して一人の勝者を決め、初戦の敗者たちは初華の焼くお好み焼きを味わったりお酒を飲んだり手伝ったりして会場を盛り上げてくれる人、求ム。
なお、会場にある祭壇や観客を戦闘の被害に巻き込むと普通に失敗判定になります。スキルや武器をその条件でえらんで下さい。初華は銃を持ちますが、リアルブルーの中学校の体育で習った柔道(ただし、ドジっ娘)で戦います。基本の受け身はバッチリです。
「う、うん。それは分かるんだけど、どうして私が出場しないといけないわけ?」
丁寧に説明するポルカ・ポルテに、改めて南那初華(kz0135)が疑問を投げかけた。
ここは、同盟領は農業推進地「ジェオルジ」。毎年恒例の【郷祭】の会場の一角に出店している街角屋台「Pクレープ」の店頭。カントリー風メイド服姿の初華に、出資者たるポルカ商会一人息子のポルテが話をしている。
で、そのポルテが人差し指を立ててにっこり。
「女性が出場すれば一気に華やいでお客さんは千客万来。初華さんみたいに可愛い娘がいればなおよし!」
「……やっぱり。いつものパターンね~」
初華、がっくり。
「いや、ホントに初華さんは適任なんだって! 第一、勝つ気ないでしょ?」
「うん」
……いかがなものか。
「そしてここが重要だけど、真面目にやっても勝てないでしょ?」
「うんっ!」
本当にいかがなものか!
「ほらね。初華さんは誰か知人と対戦してキレイに負けて、後はお好み焼きを焼いて売り上げアップをお願いしたいんだよ」
「あー。その武闘大会、観戦は無料で飲食で稼ぐ、ってことね。で、ポルテさんはその飲食屋台の仲間じゃないからお色気担当の出場者を確保する事で仲間に入れてもらったのね」
「話が早くていいね! でもお色気担当は違うかな。ただ、いま着てるメイド服で出場すればいいだけ!」
「勝てる勝てないは別にして、それはそれで武闘大会を冒涜してない?」
「いつも本当にその服着て戦ってるのに何をいまさら」
とりあえず、話はまとまったようで。
「大会はまず一対一で戦って、勝った人がオマケでバトルロイヤル。怪我しないよう、観客を魅了するよう戦ってもらって、優勝者も流れで決着をつけてもらうんだって」
「盛り上げた人が勝ち、か……」
ぽわわん、と分かった風な初華。
「うん。だから最初に負けた人の方がお好み焼きと酒をやりながら観戦できるからお得な仕様になってるんだ」
「……そのお好み焼き、私が焼くのよね? 客の分とは別に」
「うん、頑張って。ちゃんと華麗に負けて、初華さんの本当の戦いに備えてね!」
「ひっどぉい……。ん、いいもん。お好み焼き焼くのもお友達に手伝ってもらうんだから!」
というわけで、負けた人の中から手伝ってもらうことにする初華だったり。なお、お好み焼きは広島風の肉玉そばである。
というわけで、10スクエア四方程度の舞台上で戦い流れの中で適当に勝敗を付け、勝った人はさらにバトルロイヤル(適当に25スクエア四方程度?)して一人の勝者を決め、初戦の敗者たちは初華の焼くお好み焼きを味わったりお酒を飲んだり手伝ったりして会場を盛り上げてくれる人、求ム。
なお、会場にある祭壇や観客を戦闘の被害に巻き込むと普通に失敗判定になります。スキルや武器をその条件でえらんで下さい。初華は銃を持ちますが、リアルブルーの中学校の体育で習った柔道(ただし、ドジっ娘)で戦います。基本の受け身はバッチリです。
リプレイ本文
●
郷祭会場の特設広場には、すでに多くの人だかりができていた。
ある人は円形に並ぶ屋台から漂う匂いに導かれ、また広場中央に据えられたステージに期待した人もいるだろう。
「いつものように修行してもいいのですが……」
ふらっと会場に訪れそんなことを口走る男は、鳳城 錬介(ka6053)。普段は修行と称して屋台を開いたりもしている。
「今日はこっちの修行、ですかね」
錬介、手にした聖盾剣「アレクサンダー」を立てるようにがしりと地に付ける。
そのまま広場奥の運営テントに向かうのだが……。
ざっ、と錬介より一足先に到着してそそり立つ姿があった。
「ここですか」
白い衣装に小麦色の肌の女性は、シレークス(ka0752)である。
そしてとどめていた言葉を続けた!
「……流浪のエクラ教シスターとしての闘いの場は!」
ばばん、と言い放つ!
「えーと。エクラ教はちょっと違うような……」
でもって偶然シレークスの近くにいたメイド服の女性、南那初華(kz0135)がやんわりと彼女の勘違いを正そうとした時だった。
「さーて、受付終了。早速演出について運営に提案しないとね」
白いチャイナドレスに桃色の長髪を颯爽となびかせる女性、ウーナ(ka1439)がシレークスと初華の前を横切った。
それをディーナ・フェルミ(ka5843)がてててーっと追い掛け声をかける。
「ウーナちゃんも参加なの? 鑑さんも?」
「鑑センセはいないからあたしが青竜紅刃流の代表かな?」
その言葉にディーナ、しょぼん。が、すぐに明るく顔を上げた。
「だったら私はタスカービレ村のエクラ教代表なの! いっぱいエクラ教布教するの!」
「後で鑑センセを探して説教だね。『こんな機会を見逃すな』って」
ディーナ、いつも前向きである。ウーナも前向き、元気いっぱい。ここにいない約一名は後から大変そうだが。
で、ウーナとディーナを見ていたシレークス。
「やっぱりエクラ教布教の場でやがりますかだまされるとこだったじゃねーですか。か弱い身ではありますが、全力で闘らせて頂くですよ! っしゃおらぁ!」
「えええっ! ちょっと待ってちょっと待って!」
ぐ、と拳を固めるシレークス。その腕に抱き着き止める初華。
で、また新たな人影が。
「参加者は一枚タロットを選ぶこと、か……じゃ、僕はこれにするよ」
霧雨 悠月(ka4130)である。ふらっとやって来て摘まみ上げたカードは「【4】皇帝」。
「マイナスイメージが付く数字ではあるけど、それを覆せるようなイメージを……あれ?」
横を向いた悠月の傍に、キーリ(ka4642)が佇んでいた。やや納得できない様子。
「んーむ、私なんで演武にエントリーしたのかしら……」
「キーリさんも戦うの?」
悩めるキーリに悠月が根本的なことを問う。
「お好み焼きに釣られたのは覚えてる。やるわね運営」
「キーリさんらしいね……」
ぐぐぐ、と拳を固めて少しだけ悔しがるキーリに、汗たら~な悠月だったり。
で、これを見たシレークス。
「一枚タロットを選ぶでやがりすか……」
おや。
何かこそこそしている様子。幸い、初華は新たにやって来た人物と話している。
「初華さん、屋台の手伝いに来たんだよ~」
狐中・小鳥(ka5484)である。
「あ、小鳥さん。いい所に。実はね、武闘大会に出場する人が一人足りないの。私の予定だったんだけど、屋台の売り子さんに無理はさせられないからって、最初の模範演武に回されちゃって、その分一人出場者が必要なんだって」
助けて、な感じでウインクする初華。どうやら人数合わせで一人必要なようで。
「屋台のお手伝いだけのつもりだったけど、それなら私も出場しないとだね♪」
小鳥、戦うなら初華とかなと思っていたが、困っていると聞き快諾した。
「やっほー、初華さーん♪」
ここでメルクーア(ka4005)がやって来た。
「やっほー……って、なんでお酒!」
初華、ががん。
「いやほら、戦うんでしょ? あたしは今回「酔拳」でいくわ」
「お祭りっていいよね、みんなで楽しめる様ざくろも盛り上げられたらって思って」
いたず゛らっぽく言うメルクーア。そこに時音 ざくろ(ka1250)も来た。
で、ざくろ、シレークスの手元を見た。
「あ、恋人たちって、いいよね」
「み、見るなでやがりますっ」
シレークス、手にした「【6】恋人たち」のカードを隠した。
「エクラ教シスターとしてこういう場に立ち会うのは当然のことで……」
とかごにょごにょ。
そこへ、天竜寺 舞(ka0377)が登場。
「奉納神事の武闘大会かー」
きょろきょろしていたが決断した様子。
「剣舞みたいのをやればいいのかな? ま、細かい事は気にせずやってみるか」
「猛者ばかりだけど、頑張るぜ!!」
ちょうどやって来た雪ノ下正太郎(ka0539)も受付へ急ぐ。
で、聖盾剣「アレクサンダー」を立てて一部始終を眺めていた錬介。
「にぎやかになりそうですね」
「よっ」
呟いたところで背後から声をかけられた。
振り向くと、筋肉マッチョのテンガロンハット男性がいた。
トリプルJ(ka6653)である。
「あんたも出るのかい? 急いだほうが良さそうだぜ」
くい、と自分の背後を肩越しに親指でさす。屋台に並んでいた客たちがおおむね美味しいものを手にしたようで、中央のステージの方に注目し開催を待ちわびていた。
「そうですね」
もちろん錬介、頷く。
Jとともに受付へ急いだ。
●
そして舞台に司会が上がり、本日の説明を開始した。
ごちゃごちゃとお偉い様方の挨拶があり、精霊の巫女たちが舞を踊るなど神事がつつがなく進んだ。
でもって、奉納武闘大会の幕が切って落とされた。
「それでは奉納模範演武、開始!」
まずは初華がステージに上がった。反対側からは武術の達人っぽいおじいさんが上がる。
「これなら何とかなるかも!」
初華、リボルバーを構え発射。ぱーんと空砲の音だけ響くが……。
「ほへ?」
何と、相手は素早く前転して初華の胸の前に潜り込んでいた!
「んあっ! ちょっと!」
――びたーん!
初華が狼狽した時にはすでにぐるんと視界が回転。ひらめくフリルのスカートの軌道のとおり、優しく派手に投げられたのだ。
――わあっ!
観客は、この分かりやすい拳銃対素手の対決に拍手喝采。
「いたた……」
初華、見事最初の盛り上がり役を務めたようで。
「では一回戦開始!」
司会のコールで登場したのは、悠月。
「さて、誰かな。『【4】皇帝』を選んで僕と戦うのは」
タロットを指先で摘まんで口元で、ひらり。いつもライブでするように魅力的なSTAND・BY。ライブではないのでBEATは響かないが……。
「ええっと。わたし、かな?」
赤いチャイナ服のDANCERが上がる。SLITから白い太股・CHIRARI☆。
小鳥である。持ってた【4】のタロットを白い胸の間に挟む。
同時に試合開始のドラが鳴った!
♪
用意はいいかい、高鳴る鼓動……
♪
悠月、DANCABLEに斬りかかった!
「よっ、と……」
STEP・STEP。小鳥は演舞を舞いこれをかわす。
♪
いいね、いいね、ノッてきたよ!
♪
悠月は歌う、斬る、踊る!
♪
え、ええと……剣の舞なら任せろー、なんだよ
♪
小鳥もばりばりーと応えてマルチステップ。
これに悠月も付き合いSTEP。キンカンと打ち鳴らされる剣。刻むステップでめまぐるしく位置を変える。
片や悠月の斬魔刀「祢々切丸」。大きな刃が良く動く。
片や小鳥は魔剣「バルムンク」と妖刀「村正」の二刀流。巨大な斬魔刀の勢いを小気味よい動きで弾いて、いなして……そして斬る!
――キンッ!
「…ふふ、ゾクゾクするね」
「剣士としてもアイドルとしても、皆を魅了するよう、舞い戦わせて貰わないとね♪」
刃を盾のようにして防いだ斬魔刀越しに微笑する悠月に、無邪気な笑みで返す小鳥。
一瞬の後にはまた円舞を展開する。
手に汗握る目まぐるしい展開に観客たちは手に汗握った。
やってる二人もライブと同様、汗の粒を散らしている。
「あっ!」
幕切れは突然に訪れた。
小鳥の衣裳の裾がひらりと舞い、スリットから太腿がCHIRARI☆。
やはり持った剣の不幸属性はあるようで、不運にも小鳥が床の汗で足を滑らせたのだ。
「残念だけど、終演かな?」
尻餅をついた小鳥に、切っ先を向けて髪をかき上げる悠月。上気した肌に色気がCHIRARI☆。
わあっ、と観客は沸いた。
●
二回戦は、ざくろとメルクーアだ。
「『【21】世界』のカードに導かれ……って、メルクーア?」
ざくろのセリフが止まったのは、メルクーアが手にしたブランデーの瓶からちびりとやり、ふらっと体勢を崩したから。
「あ。酔っぱらってるわけじゃないわよ~。あたしは今回「酔拳」でいくわ」
心配そうなざくろにメルクーアは再びゆらゆらしたあとにびしっと構える。
「知り合いだからって手加減しないよ、楽しい戦いにしようね」
ざくろ、納得。魔導剣「カオスウィース」を構えた。顔は、にこっ。
「それじゃざくろん、よろしくねー♪」
対するメルクーア、またもゆらゆらっと幻惑した動きからぴしっと拳を構える。
「やあっ!」
「何の~」
突っ込むざくろに背の低さを生かして脇をすり抜けるメルクーア。
「やるね」
背中越しに覚悟を決めたざくろが振り向くと、背中の盾を構えて振り向き再び前進。
そして一気にラッシュ!
「ほい、はいっ、と♪」
軽快にかわすメルクーアだが、やがてざくろの狙いに気付いた。
「あらら。舞台の角……」
「酔拳でももう逃げられないよっ!」
これで決まりだとざくろが迫る!
もう後がないメルクーア。
このまま食らうか転落か……。
「ほいっ、と♪」
あ。
ざくろの股の下を抜けた。
「おお~っ!」
観客からは見事な窮地脱出に拍手喝采。
逆に、ざくろが転落のピンチ!
「何の!」
メルクーアの攻撃は盾で受け流し、攻性防壁で遠くに弾き飛ばした。
距離が空いたぞ?
「酒が足りないわ……それっ!」
「何の!」
両端に分かたれ二人だが、メルクーアが酒をちびりとやってアルコール補充しジェットブーツ。ざくろもジェットブーツで応じた。
――ガシッ!
共に盾で激しくぶつかるが、メルクーアがややいなした。
再び背後を取るメルクーアだが……。
「行け! 機械化怪鳥「Lo+」」
「クェェッ!」
何とざくろ、奥の手のファミリアアタック。
ペットを体当たりさせてメルクーアをノックアウトした!
「焼き鳥なら食らうわね~」
メルクーア、飲兵衛として悔いはない。
機械の鳥だが。
続いて、ディーナが舞台に上がった。
何やら巨大な武器を出して指を口に添えているぞ?
「奉納……ウコンバサラの方が良いかなぁ? でもエクラ教いっぱい布教するならこっちかなぁ?」
星神器「ウコンバサラ」とホーリーメイス「レイバシアー」をじーっと見比べて迷っている。
その時、上空を見上げた観客がざわついていた。
湯費指す先に、きらっと旋回して急降下しつつ迫って来る姿が!
「こちら『エンゼルユニット』、ひねってから舞台上空をフライ・パスするよ!」
高度を提げながら速度を上げ、足を投げ出し方向転換。舞台正面から奥の祭壇までの一直線ルートに乗ると、一直線に飛び抜けた。
「うわあ、なのー」
舞台の上ではウーナの軌跡を目で追うディーナが両手を胸の前で組み合わせお目めキラキラ。
やがて着地するウーナ。ディーナはホーリーメイスをつかみエンジェルフェザーの幻影の翼、展開。
ともに戦闘準備、完了!
「青竜紅刃流、ウーナ・イ寺! 推して参るっ」
ウーナ、バックステップから魔導拳銃剣「エルス」を抜いて早撃ち!
「鎚頭の聖印に導いてもらうのー」
ディーナの方はホーリーメイス「レイバシアー」を横薙ぎにして突撃。迫るペイント弾はフェザーの効果もありハズレ。
が、ウーナも機動力を生かしてかわした。
「今度こそなの~」
ブオンとレイバシアーの薙ぐ音が響く。
「何の!」
今度はいい流れ。先と違って綺麗に間合いが詰まった!
――ガキッ!
「え、なの?」
ウーナ、エルスを剣モードにしてがっちり防いでいた。
「青竜紅刃流……派手に魅せるよ!」
そこから踏み込んで斬る・斬る!
「大変なの、守るのー」
ディーナ、パリィグローブ「ディスターブ」で障壁を生み出し受ける・受ける。
下がったところで……。
「青竜紅刃流・射の型!」
「こうなったら、これなの~!」
ディーナ、大回転。そのまま突っ込む。
エルスを剣から銃に戻し撃つが、振りつつ回転するメイスに命中。
そのまま突撃と、円舞の回避。
――どしーん。
「ふにゃあなの~」
ディーナ、目を回して舞台下でのびていた。
●
「次は俺だ。猛者ばかりだけど、頑張るぜ!!」
続いて、正太郎がライオン丸……もとい、覚醒してライオン人間の姿になり登場。花道を歩くように舞台の端から端まで歩き「【13】死神」のタロットカードを掲げつつ両手を大きく振り観客からの声援にこたえる。ちびっ子たちからの声援も多いぞ!
さて、相手は。
「ん?」
「あら?」
舞台に同時に二人が足を掛けて止まっていた。
方や、重鎧「不壊不動」に身を包んだ錬介。
方や、体に巻き付けるような着衣のキーリ。
「おや?」
「何よ、死神三人? 大人気ね。ま、私はそこまでこだわってないから二人で……」
キーリは気を利かして下りようとするが、錬介の方が言葉もなく素早く譲って下りていた。
「どういうこと?」
「いや、こういうので争うのはちょっとね……」
睨むキーリに頭をかく錬介。
その時、傍に誰かが立った。
「ちょうど残りも三人だし……」
「ま、それ以外と戦うということでもいーんじぇねぇか? 要は組み合わせのための選択だったんだろ?」
「【17】星のカード」の舞と、「【11】力のカード」のJだ。
でもって、その隙に誰かが舞台に上がったぞ?
「とっととやるでやがりますっ!」
シレークスである。
「何のカード選んだの?」
下から舞が聞いた。すると途端に動揺し困ったように身をくねらせるシレークス。
「そ、そりゃ、愛の誓いを見届けるたちばですから……」
あ。
どうやら【6】恋人たち」だったようで。
「誰が相手でもクリーンファイト。相手が強いほど闘志が燃えるぜ」
舞台上ではライオン丸、正太郎が腕を高々と上げて対戦OKの意を表した。わあっ、と子供中心に盛り上がる観客。
「流浪のエクラ教シスター、シレークスが参りましたですっ。応援、宜しくお願いしますですっ♪」
あ。
正太郎の観客受けに闘争心を燃やした……ではなく布教精神を燃やしたか、シレークスも観客達に手を振って大きな胸を揺らしながら魅力的に応えた。酔っ払いのおっさんを中心に絶大な歓声が沸く。
というわけで、子供のヒーロー・正太郎対助平親父のアイドルシスター・シレークスの戦いの銅鑼が鳴らされた!
「っしゃおらぁ!」
ゴングとともにリング中央に駆け出すシレークス。振り上げる腕には機甲拳鎚「無窮なるミザル」。しかもシレークス式聖闘術『怒りの日』で筋骨隆々に……。
って、なにこの殴り合いこそ祈りの本質的な装備は!
「ぉおおお……」
正太郎も引く気はなく金剛。引いて構えたナックル「セルモクラスィア」に熱気が籠り、リング中央に走るとともに、迫るシレークスを射抜くように拳を繰り出す。
もちろんシレークスも殴りかかっている!
――ガシィ!
激しく拳が相打ちしともに後ろに下がるが、そこから共にラッシュ・ラッシュ。殴打の応酬となる。
が、一瞬のタメに正太郎が合わせた!
相手の腕に取りつきひらりと身を浮かせると足を絡めた!
「ここだ!」
逆海老固めの形の老流龍固めのムーブだ!
「やりやがりますねっ!」
シレークス、慌てて身をひねり脱出。
いや、その動きから腕を極めに来たっ!
「くっ、老流龍使いとは!」
おっと。
正太郎も間一髪で脱出した。改めて間合いを取る。技を知る者同士の攻防に大きな拍手が送られた。
「それならっ!」
「っしゃ、らぁ!」
再び組み付く二人。
「これならどうだ!」
正太郎、カチ上げ一発かまして相手が前のめりになったところを股下に迎えるように背中をホールドしリフトアップ。そのままふわっと上体が浮くシレークス。おっきな胸もゆらり。
「お?」
シレークス、不意を突かれた顔をしたが、すぐににやり。
「柔能剛制パワーボム!」
――どしーん!
「あっ!」
決まったと思った観客は、目を疑った。
何と、シレークスは打ち付けられた反動を利用し背筋を伸ばしてホールドを脱出。そのまま寝そべったまま、ふらりと立ち上がる正太郎の首を両脚先でがっちり捕えた。
「……捕まえやがりましたよ、ふふふふ」
「これは……柔能剛制?」
「せりゃぁっ!!」
同じ使い手、と悟った正太郎に対し、思いっきり身をひねるシレークス。
そのまま正太郎をリング外に投げ飛ばすのだった。
●
「いい感じに盛り上がってきたじゃねぇか」
正太郎とシレークスの格闘技路線にうずうずしていた男が、続いてリングに上がった。
Jである。手には「【6】力」のカード。
テンガロンハットにチョッキ姿で上半身は裸。腹筋のシックスパックがまぶしい。
「俺が行かなきゃアンフェアなような気がします」
錬介が応じて上がる。キーリとは体重が違い過ぎるから、という気遣いだ。
「「【13】死神」の戦士の武器がそれかい?」
「まあ、ふさわしいものですね」
からかうJに、錬介は手にした聖盾剣「アレクサンダー」を逆さ十字にして持つ。刃がぎらり。
そして錬介、少し構えを解いた。
「……何で戦うんです?」
問われたJ、にやり。
「ルチャリブレ。……テクニコだから安心しとけ」
そこまで言って動くJ。
はっとする錬介だが、もう遅い。直立する首にJが飛びつき足が絡んだ!
「ティヘラは使うがな!」
J、体重を後ろに預けて身をひねった。
先のシレークスの見せた投げ技と似ている。
「あっ!」
ヘッドシザースホイップである!
シレークスや正太郎が投げたスキル依存の技と違い、Jの技は武術知識と立体感覚に依存したものだ。
――ずしん……。
リング中央からなのでリングアウトはない。
「くっ!」
「お?」
錬介、素早く立ち上がると同時に……周りに闇の刃が一瞬浮かんだ。
これでJも追撃の動きを止めていた。
「プルガトリオですが……」
「そうはさせねェ」
Jはファントムハンドを出し周囲を払った。
もちろん、そうせずともプルガトリオは味方と思っている者には刺さらず一瞬で消える。それに合わせて安心してファントムハンドで払ったのだ。
知らない観客は幻影の攻防におおー、と歓声。
「続けて行くぜ?」
J、跳躍しての二段蹴り。これは錬介が聖盾剣の盾で受ける。
「受けだけとは思わないでください」
そして錬介、反撃。
盾を構えて押してきた。
が、入れ替わられる。
背後から膝を狙われ中腰になると背中に圧迫感を感じ、首を取られて弓ぞりになっていた。
「すまねぇ、カベルナリアを使っちまった」
錬介、タップして勝敗が決する。
「なにかプロレスづいてるわねー」
続いて、キーリが上がる。
「希望を持ってりゃ変わって来るでしょ?」
相手は、舞。ぴらぴらと「【17】星」のカードを振っている。
「じゃ、とりあえず持ち込んだ魔法をパパーっと使うけども……」
「もちろん問題ないよ」
聖書「クルディウス」を持ち出したキーリに対し、肩でぽんぽんともてあそんでいた木刀を構える舞。
「それじゃ、行くよ」
舞、一礼。
「ん」
キーリもちょこんと会釈。
戦闘開始だ!
「最初は石つぶてから?」
「効果ないけどね」
キーリがアースバレットを放つが舞がばしばし木刀で叩き落とす。
(ま、木刀狙ってんだけどねー)
とかいうキーリの苦労はもちろん舞も感じ取った。
が、それはそれ。ドッジダッシュでもう目の前だ。
「近寄られると詰むのよ、私」
――ぞぞぞっ!
というわけで、アースウォールの壁を正面に。
この隙に距離をとるキーリだが、舞は軽やかに舞うようなステップで回り込んでいた。
「えらくリズミカルね」
「日本舞踊だよ」
キーリ、問い掛けて注意をそらしつつ、リトルファイヤ発射。
が、すでに舞はそこにはいない。
――ひらっ。
ドッジダッシュで跳躍して……。
――どしっ!
「ちょっと、人を踏み台にする?」
キーリの肩に蹴り……ではなく着地の足場にした。
そのまま上空にジャンプ。迎撃のウインドスラッシュはやっぱり木刀で払った。
「ホークウィングっての着てるしさ」
鷹のように上空から獲物を狙いつつ下降して……。
――がきっ、ばしっ……どだーん。
キーリ、奥の手のガントレットで舞の木刀を防いだ。
が、舞が本当に狙っていたのは武器の書物。キーリはこれを取り落とした。
「いたた……」
「できるだけ傷つけないように、って思ったけどこれは仕方ないよね?」
上空からの急降下攻撃で舞はキーリを手篭めに……ではなく、優しく組み敷いていた。
「はいはい、負け負け。もうちょっと踊るように戦いたかったわねー」
「立ち上がってやってもいいよ?」
ご機嫌斜めなキーリに、やりすぎちゃったかなと反省する舞。
「これだけ観客が盛り上がって、実は無傷でしたもう一度ーってのはないわー」
「ま、そりゃそうだね」
舞、それだけ言い残して一人で立ち上がると木刀を儀式めかして振り、鞘に納めるような動きをした。
格式の感じられる、優雅な動きである。
観客はそれが奉納舞の終わりを示しているのだと理解し、惜しみない拍手を送った。
●
そんなこんなで、メーンの奉納武闘会が終わり、舞台では勝者たちによるバトルロイヤルが繰り広げられている。
一方で、初華はお好み焼き屋台に戻って焼いて売ってと大忙し。
「正太郎さ~ん、焼けたわよ~」
「おー、ありがとだぜっ」
初華からお好み焼きを受け取る正太郎。
「お好み焼き美味しそうよね、海鮮系はあるかしら? ソース多めで」
入れ替わりで今度はキーリが焼き上がりを待つ。
正太郎は皆の所へ。
「熱々で中にいろいろ入ってておいしいの。やっぱり屋台で食べる雰囲気は大事なの」
すでにディーナははふはふもぐもぐ。……あーあー。幸せそうに食べるのはいいけど、口の端にソース付けちゃって。
「早いとこ食べてから初華さん手伝わないとなんだよ」
小鳥も舞台が見えるところでまずは腹ごしらえしているようだ。
「味が濃くって結構お酒が進むわねぇ。お肉も入ってるし、ワインなら赤ワインが合うかしら?」
メルクーアもお好み焼きを堪能中。お酒も一緒に堪能しているが。
「こういう屋台料理もあるんですね」
錬介はぺろっと小麦粉を焼いた衣をめくって中身を確認してみたり。広島風は混ぜ焼きのお好み焼きと違って重ね焼きなのでそういうこともできる。中は野菜とソバがたっぷり。肉はそこまで入ってない。
「おー、うまい。……それよりどうなってる?」
正太郎もここに座って食しつつ、バトルロイヤルの様子を聞いてみる。
さて、舞台では。
「こらーっ、私ばっかり狙うんじゃなーい!」
「つってもよー、空飛んでりゃ逃げないようにこうするしかねぇぜ?」
空中に浮くウーナの足をJがファントムハンドでつかんでいた。
このチャンスにざくろがジャンプ。
「届け、じぇっどブーツ……そして錬力解放!」
「え? ちょっと……」
ざくろの魔導剣「カオスウィース」が巨大化する!
「……超・重・斬!!」
――バシィィィン!
「そりゃ、ちょっとは食らってあげないとって思ったけど……」
場の盛り上がりのため少しは攻撃を食らおうかな、とか思っていたウーナ、いきなりそれかとか思いつつ脱落。
で、着地したざくろ。
「ここしかないでやがります。っしゃおらぁ!」
――ずずーん!
止まったところをシレークスに仕留められたり。
で、シレークス自身も超重量攻撃。ざくろを仕留めた時に隙ができる。
「はいはい、ゴメンね~」
――ごーん……。
舞の木刀がシレークスの背後から襲う。
「さてと、後二人かな?」
「一人だけどね」
立ち上がる舞の背後に、悠月がいた。足元には、J。
「しょーがねぇだろ。ファントムハンド出した時に狙われたんだよ」
空気を読んで適当にやられていたようで。
「歌って踊って……ふふふ、ぞくぞくするね?」
「じゃ、付き合いましょうか」
悠月の構えに応じる舞。
いや。悠月がちょっと待ったしたぞ?
観客の方を振り返って呼び掛けている。
「さ、皆んなはこの歌知ってる? 最後までノッて行こうっ」
「……ちょっと、本当に歌う気?」
というわけで、楽しく歌って踊って戦う悠月。右に左に動いて流れて。ついでに攻撃も。
それに付き合う舞のほうは日本舞踊風で。
「ユッキー、楽しそうじゃない。……それにしても、外で食べる料理ってなんでこう美味しいのかしらねー」
観戦していたキーリ、もぐもぐゆっくり食べている。
「さて、ごちそうさまなんだよー。初華さん、手伝うんだよ♪」
「いつもありがとね、小鳥さん」
小鳥は食事を終えて屋台の手伝いに。
「それじゃいつものように注文取って回ろうかしらね~」
「お好み焼き美味しいの。みんなで食べるの」
メルクーアが売り子で、ディーナは呼び込み。
「あ、錬介さん?」
「屋台なら心得はある。手伝いますよ」
錬介は調理へ。
「えっと俺は……」
正太郎、何を手伝おうかと迷っていたところ。
――くいくい。
「え?」
袖を引かれて振り返ると、子供たちがにこーっと見上げていた。がおー、がおーとかも口走っている。
「仕方ない」
もう一回覚醒してライオン丸風のいで立ちになる正太郎だったり。
すっかり子供のファンができたようで。
そうこうする間に勝ち残り組も戻って来た。
「よう初華、繁盛してるか」
「あ、Jさん。忙しすぎなのーっ!」
「任せとけって。……らっしゃいらっしゃい、小腹がすいたらお好み焼きだ! 今回は広島焼きだぜっ!」
J、なんか忙しさに拍車を掛けてるような?
「さーて、屋台だ屋台♪」
「ウーナちゃん、鑑さんさがしにいくの」
ウーナはお好み焼きを受け取るとディーナと知人探しに。
「おー、繁盛してやがるです」
「初華、僕にも一つ!」
シレークスとざくろも戻って来た。
で、悠月と舞。
♪
胸が高鳴る、鼓動が騒ぐ……嗚呼、僕はこの瞬間を生きている
♪
悠月が歌い、舞がダンスしていた。
「なかなかやるじゃない」
「そっちもね」
踊る背中越しにウインクする舞に、ウインクで返す悠月。
「……すっかり歌と舞の奉納しちゃってるし」
キーリ、お好み焼きはむはむ。
「ま、観客が楽しんでるからいいんだけど」
そう。
観客も沸いて、全体の屋台売り上げも上々。
精霊への奉納イベント、大成功である。
郷祭会場の特設広場には、すでに多くの人だかりができていた。
ある人は円形に並ぶ屋台から漂う匂いに導かれ、また広場中央に据えられたステージに期待した人もいるだろう。
「いつものように修行してもいいのですが……」
ふらっと会場に訪れそんなことを口走る男は、鳳城 錬介(ka6053)。普段は修行と称して屋台を開いたりもしている。
「今日はこっちの修行、ですかね」
錬介、手にした聖盾剣「アレクサンダー」を立てるようにがしりと地に付ける。
そのまま広場奥の運営テントに向かうのだが……。
ざっ、と錬介より一足先に到着してそそり立つ姿があった。
「ここですか」
白い衣装に小麦色の肌の女性は、シレークス(ka0752)である。
そしてとどめていた言葉を続けた!
「……流浪のエクラ教シスターとしての闘いの場は!」
ばばん、と言い放つ!
「えーと。エクラ教はちょっと違うような……」
でもって偶然シレークスの近くにいたメイド服の女性、南那初華(kz0135)がやんわりと彼女の勘違いを正そうとした時だった。
「さーて、受付終了。早速演出について運営に提案しないとね」
白いチャイナドレスに桃色の長髪を颯爽となびかせる女性、ウーナ(ka1439)がシレークスと初華の前を横切った。
それをディーナ・フェルミ(ka5843)がてててーっと追い掛け声をかける。
「ウーナちゃんも参加なの? 鑑さんも?」
「鑑センセはいないからあたしが青竜紅刃流の代表かな?」
その言葉にディーナ、しょぼん。が、すぐに明るく顔を上げた。
「だったら私はタスカービレ村のエクラ教代表なの! いっぱいエクラ教布教するの!」
「後で鑑センセを探して説教だね。『こんな機会を見逃すな』って」
ディーナ、いつも前向きである。ウーナも前向き、元気いっぱい。ここにいない約一名は後から大変そうだが。
で、ウーナとディーナを見ていたシレークス。
「やっぱりエクラ教布教の場でやがりますかだまされるとこだったじゃねーですか。か弱い身ではありますが、全力で闘らせて頂くですよ! っしゃおらぁ!」
「えええっ! ちょっと待ってちょっと待って!」
ぐ、と拳を固めるシレークス。その腕に抱き着き止める初華。
で、また新たな人影が。
「参加者は一枚タロットを選ぶこと、か……じゃ、僕はこれにするよ」
霧雨 悠月(ka4130)である。ふらっとやって来て摘まみ上げたカードは「【4】皇帝」。
「マイナスイメージが付く数字ではあるけど、それを覆せるようなイメージを……あれ?」
横を向いた悠月の傍に、キーリ(ka4642)が佇んでいた。やや納得できない様子。
「んーむ、私なんで演武にエントリーしたのかしら……」
「キーリさんも戦うの?」
悩めるキーリに悠月が根本的なことを問う。
「お好み焼きに釣られたのは覚えてる。やるわね運営」
「キーリさんらしいね……」
ぐぐぐ、と拳を固めて少しだけ悔しがるキーリに、汗たら~な悠月だったり。
で、これを見たシレークス。
「一枚タロットを選ぶでやがりすか……」
おや。
何かこそこそしている様子。幸い、初華は新たにやって来た人物と話している。
「初華さん、屋台の手伝いに来たんだよ~」
狐中・小鳥(ka5484)である。
「あ、小鳥さん。いい所に。実はね、武闘大会に出場する人が一人足りないの。私の予定だったんだけど、屋台の売り子さんに無理はさせられないからって、最初の模範演武に回されちゃって、その分一人出場者が必要なんだって」
助けて、な感じでウインクする初華。どうやら人数合わせで一人必要なようで。
「屋台のお手伝いだけのつもりだったけど、それなら私も出場しないとだね♪」
小鳥、戦うなら初華とかなと思っていたが、困っていると聞き快諾した。
「やっほー、初華さーん♪」
ここでメルクーア(ka4005)がやって来た。
「やっほー……って、なんでお酒!」
初華、ががん。
「いやほら、戦うんでしょ? あたしは今回「酔拳」でいくわ」
「お祭りっていいよね、みんなで楽しめる様ざくろも盛り上げられたらって思って」
いたず゛らっぽく言うメルクーア。そこに時音 ざくろ(ka1250)も来た。
で、ざくろ、シレークスの手元を見た。
「あ、恋人たちって、いいよね」
「み、見るなでやがりますっ」
シレークス、手にした「【6】恋人たち」のカードを隠した。
「エクラ教シスターとしてこういう場に立ち会うのは当然のことで……」
とかごにょごにょ。
そこへ、天竜寺 舞(ka0377)が登場。
「奉納神事の武闘大会かー」
きょろきょろしていたが決断した様子。
「剣舞みたいのをやればいいのかな? ま、細かい事は気にせずやってみるか」
「猛者ばかりだけど、頑張るぜ!!」
ちょうどやって来た雪ノ下正太郎(ka0539)も受付へ急ぐ。
で、聖盾剣「アレクサンダー」を立てて一部始終を眺めていた錬介。
「にぎやかになりそうですね」
「よっ」
呟いたところで背後から声をかけられた。
振り向くと、筋肉マッチョのテンガロンハット男性がいた。
トリプルJ(ka6653)である。
「あんたも出るのかい? 急いだほうが良さそうだぜ」
くい、と自分の背後を肩越しに親指でさす。屋台に並んでいた客たちがおおむね美味しいものを手にしたようで、中央のステージの方に注目し開催を待ちわびていた。
「そうですね」
もちろん錬介、頷く。
Jとともに受付へ急いだ。
●
そして舞台に司会が上がり、本日の説明を開始した。
ごちゃごちゃとお偉い様方の挨拶があり、精霊の巫女たちが舞を踊るなど神事がつつがなく進んだ。
でもって、奉納武闘大会の幕が切って落とされた。
「それでは奉納模範演武、開始!」
まずは初華がステージに上がった。反対側からは武術の達人っぽいおじいさんが上がる。
「これなら何とかなるかも!」
初華、リボルバーを構え発射。ぱーんと空砲の音だけ響くが……。
「ほへ?」
何と、相手は素早く前転して初華の胸の前に潜り込んでいた!
「んあっ! ちょっと!」
――びたーん!
初華が狼狽した時にはすでにぐるんと視界が回転。ひらめくフリルのスカートの軌道のとおり、優しく派手に投げられたのだ。
――わあっ!
観客は、この分かりやすい拳銃対素手の対決に拍手喝采。
「いたた……」
初華、見事最初の盛り上がり役を務めたようで。
「では一回戦開始!」
司会のコールで登場したのは、悠月。
「さて、誰かな。『【4】皇帝』を選んで僕と戦うのは」
タロットを指先で摘まんで口元で、ひらり。いつもライブでするように魅力的なSTAND・BY。ライブではないのでBEATは響かないが……。
「ええっと。わたし、かな?」
赤いチャイナ服のDANCERが上がる。SLITから白い太股・CHIRARI☆。
小鳥である。持ってた【4】のタロットを白い胸の間に挟む。
同時に試合開始のドラが鳴った!
♪
用意はいいかい、高鳴る鼓動……
♪
悠月、DANCABLEに斬りかかった!
「よっ、と……」
STEP・STEP。小鳥は演舞を舞いこれをかわす。
♪
いいね、いいね、ノッてきたよ!
♪
悠月は歌う、斬る、踊る!
♪
え、ええと……剣の舞なら任せろー、なんだよ
♪
小鳥もばりばりーと応えてマルチステップ。
これに悠月も付き合いSTEP。キンカンと打ち鳴らされる剣。刻むステップでめまぐるしく位置を変える。
片や悠月の斬魔刀「祢々切丸」。大きな刃が良く動く。
片や小鳥は魔剣「バルムンク」と妖刀「村正」の二刀流。巨大な斬魔刀の勢いを小気味よい動きで弾いて、いなして……そして斬る!
――キンッ!
「…ふふ、ゾクゾクするね」
「剣士としてもアイドルとしても、皆を魅了するよう、舞い戦わせて貰わないとね♪」
刃を盾のようにして防いだ斬魔刀越しに微笑する悠月に、無邪気な笑みで返す小鳥。
一瞬の後にはまた円舞を展開する。
手に汗握る目まぐるしい展開に観客たちは手に汗握った。
やってる二人もライブと同様、汗の粒を散らしている。
「あっ!」
幕切れは突然に訪れた。
小鳥の衣裳の裾がひらりと舞い、スリットから太腿がCHIRARI☆。
やはり持った剣の不幸属性はあるようで、不運にも小鳥が床の汗で足を滑らせたのだ。
「残念だけど、終演かな?」
尻餅をついた小鳥に、切っ先を向けて髪をかき上げる悠月。上気した肌に色気がCHIRARI☆。
わあっ、と観客は沸いた。
●
二回戦は、ざくろとメルクーアだ。
「『【21】世界』のカードに導かれ……って、メルクーア?」
ざくろのセリフが止まったのは、メルクーアが手にしたブランデーの瓶からちびりとやり、ふらっと体勢を崩したから。
「あ。酔っぱらってるわけじゃないわよ~。あたしは今回「酔拳」でいくわ」
心配そうなざくろにメルクーアは再びゆらゆらしたあとにびしっと構える。
「知り合いだからって手加減しないよ、楽しい戦いにしようね」
ざくろ、納得。魔導剣「カオスウィース」を構えた。顔は、にこっ。
「それじゃざくろん、よろしくねー♪」
対するメルクーア、またもゆらゆらっと幻惑した動きからぴしっと拳を構える。
「やあっ!」
「何の~」
突っ込むざくろに背の低さを生かして脇をすり抜けるメルクーア。
「やるね」
背中越しに覚悟を決めたざくろが振り向くと、背中の盾を構えて振り向き再び前進。
そして一気にラッシュ!
「ほい、はいっ、と♪」
軽快にかわすメルクーアだが、やがてざくろの狙いに気付いた。
「あらら。舞台の角……」
「酔拳でももう逃げられないよっ!」
これで決まりだとざくろが迫る!
もう後がないメルクーア。
このまま食らうか転落か……。
「ほいっ、と♪」
あ。
ざくろの股の下を抜けた。
「おお~っ!」
観客からは見事な窮地脱出に拍手喝采。
逆に、ざくろが転落のピンチ!
「何の!」
メルクーアの攻撃は盾で受け流し、攻性防壁で遠くに弾き飛ばした。
距離が空いたぞ?
「酒が足りないわ……それっ!」
「何の!」
両端に分かたれ二人だが、メルクーアが酒をちびりとやってアルコール補充しジェットブーツ。ざくろもジェットブーツで応じた。
――ガシッ!
共に盾で激しくぶつかるが、メルクーアがややいなした。
再び背後を取るメルクーアだが……。
「行け! 機械化怪鳥「Lo+」」
「クェェッ!」
何とざくろ、奥の手のファミリアアタック。
ペットを体当たりさせてメルクーアをノックアウトした!
「焼き鳥なら食らうわね~」
メルクーア、飲兵衛として悔いはない。
機械の鳥だが。
続いて、ディーナが舞台に上がった。
何やら巨大な武器を出して指を口に添えているぞ?
「奉納……ウコンバサラの方が良いかなぁ? でもエクラ教いっぱい布教するならこっちかなぁ?」
星神器「ウコンバサラ」とホーリーメイス「レイバシアー」をじーっと見比べて迷っている。
その時、上空を見上げた観客がざわついていた。
湯費指す先に、きらっと旋回して急降下しつつ迫って来る姿が!
「こちら『エンゼルユニット』、ひねってから舞台上空をフライ・パスするよ!」
高度を提げながら速度を上げ、足を投げ出し方向転換。舞台正面から奥の祭壇までの一直線ルートに乗ると、一直線に飛び抜けた。
「うわあ、なのー」
舞台の上ではウーナの軌跡を目で追うディーナが両手を胸の前で組み合わせお目めキラキラ。
やがて着地するウーナ。ディーナはホーリーメイスをつかみエンジェルフェザーの幻影の翼、展開。
ともに戦闘準備、完了!
「青竜紅刃流、ウーナ・イ寺! 推して参るっ」
ウーナ、バックステップから魔導拳銃剣「エルス」を抜いて早撃ち!
「鎚頭の聖印に導いてもらうのー」
ディーナの方はホーリーメイス「レイバシアー」を横薙ぎにして突撃。迫るペイント弾はフェザーの効果もありハズレ。
が、ウーナも機動力を生かしてかわした。
「今度こそなの~」
ブオンとレイバシアーの薙ぐ音が響く。
「何の!」
今度はいい流れ。先と違って綺麗に間合いが詰まった!
――ガキッ!
「え、なの?」
ウーナ、エルスを剣モードにしてがっちり防いでいた。
「青竜紅刃流……派手に魅せるよ!」
そこから踏み込んで斬る・斬る!
「大変なの、守るのー」
ディーナ、パリィグローブ「ディスターブ」で障壁を生み出し受ける・受ける。
下がったところで……。
「青竜紅刃流・射の型!」
「こうなったら、これなの~!」
ディーナ、大回転。そのまま突っ込む。
エルスを剣から銃に戻し撃つが、振りつつ回転するメイスに命中。
そのまま突撃と、円舞の回避。
――どしーん。
「ふにゃあなの~」
ディーナ、目を回して舞台下でのびていた。
●
「次は俺だ。猛者ばかりだけど、頑張るぜ!!」
続いて、正太郎がライオン丸……もとい、覚醒してライオン人間の姿になり登場。花道を歩くように舞台の端から端まで歩き「【13】死神」のタロットカードを掲げつつ両手を大きく振り観客からの声援にこたえる。ちびっ子たちからの声援も多いぞ!
さて、相手は。
「ん?」
「あら?」
舞台に同時に二人が足を掛けて止まっていた。
方や、重鎧「不壊不動」に身を包んだ錬介。
方や、体に巻き付けるような着衣のキーリ。
「おや?」
「何よ、死神三人? 大人気ね。ま、私はそこまでこだわってないから二人で……」
キーリは気を利かして下りようとするが、錬介の方が言葉もなく素早く譲って下りていた。
「どういうこと?」
「いや、こういうので争うのはちょっとね……」
睨むキーリに頭をかく錬介。
その時、傍に誰かが立った。
「ちょうど残りも三人だし……」
「ま、それ以外と戦うということでもいーんじぇねぇか? 要は組み合わせのための選択だったんだろ?」
「【17】星のカード」の舞と、「【11】力のカード」のJだ。
でもって、その隙に誰かが舞台に上がったぞ?
「とっととやるでやがりますっ!」
シレークスである。
「何のカード選んだの?」
下から舞が聞いた。すると途端に動揺し困ったように身をくねらせるシレークス。
「そ、そりゃ、愛の誓いを見届けるたちばですから……」
あ。
どうやら【6】恋人たち」だったようで。
「誰が相手でもクリーンファイト。相手が強いほど闘志が燃えるぜ」
舞台上ではライオン丸、正太郎が腕を高々と上げて対戦OKの意を表した。わあっ、と子供中心に盛り上がる観客。
「流浪のエクラ教シスター、シレークスが参りましたですっ。応援、宜しくお願いしますですっ♪」
あ。
正太郎の観客受けに闘争心を燃やした……ではなく布教精神を燃やしたか、シレークスも観客達に手を振って大きな胸を揺らしながら魅力的に応えた。酔っ払いのおっさんを中心に絶大な歓声が沸く。
というわけで、子供のヒーロー・正太郎対助平親父のアイドルシスター・シレークスの戦いの銅鑼が鳴らされた!
「っしゃおらぁ!」
ゴングとともにリング中央に駆け出すシレークス。振り上げる腕には機甲拳鎚「無窮なるミザル」。しかもシレークス式聖闘術『怒りの日』で筋骨隆々に……。
って、なにこの殴り合いこそ祈りの本質的な装備は!
「ぉおおお……」
正太郎も引く気はなく金剛。引いて構えたナックル「セルモクラスィア」に熱気が籠り、リング中央に走るとともに、迫るシレークスを射抜くように拳を繰り出す。
もちろんシレークスも殴りかかっている!
――ガシィ!
激しく拳が相打ちしともに後ろに下がるが、そこから共にラッシュ・ラッシュ。殴打の応酬となる。
が、一瞬のタメに正太郎が合わせた!
相手の腕に取りつきひらりと身を浮かせると足を絡めた!
「ここだ!」
逆海老固めの形の老流龍固めのムーブだ!
「やりやがりますねっ!」
シレークス、慌てて身をひねり脱出。
いや、その動きから腕を極めに来たっ!
「くっ、老流龍使いとは!」
おっと。
正太郎も間一髪で脱出した。改めて間合いを取る。技を知る者同士の攻防に大きな拍手が送られた。
「それならっ!」
「っしゃ、らぁ!」
再び組み付く二人。
「これならどうだ!」
正太郎、カチ上げ一発かまして相手が前のめりになったところを股下に迎えるように背中をホールドしリフトアップ。そのままふわっと上体が浮くシレークス。おっきな胸もゆらり。
「お?」
シレークス、不意を突かれた顔をしたが、すぐににやり。
「柔能剛制パワーボム!」
――どしーん!
「あっ!」
決まったと思った観客は、目を疑った。
何と、シレークスは打ち付けられた反動を利用し背筋を伸ばしてホールドを脱出。そのまま寝そべったまま、ふらりと立ち上がる正太郎の首を両脚先でがっちり捕えた。
「……捕まえやがりましたよ、ふふふふ」
「これは……柔能剛制?」
「せりゃぁっ!!」
同じ使い手、と悟った正太郎に対し、思いっきり身をひねるシレークス。
そのまま正太郎をリング外に投げ飛ばすのだった。
●
「いい感じに盛り上がってきたじゃねぇか」
正太郎とシレークスの格闘技路線にうずうずしていた男が、続いてリングに上がった。
Jである。手には「【6】力」のカード。
テンガロンハットにチョッキ姿で上半身は裸。腹筋のシックスパックがまぶしい。
「俺が行かなきゃアンフェアなような気がします」
錬介が応じて上がる。キーリとは体重が違い過ぎるから、という気遣いだ。
「「【13】死神」の戦士の武器がそれかい?」
「まあ、ふさわしいものですね」
からかうJに、錬介は手にした聖盾剣「アレクサンダー」を逆さ十字にして持つ。刃がぎらり。
そして錬介、少し構えを解いた。
「……何で戦うんです?」
問われたJ、にやり。
「ルチャリブレ。……テクニコだから安心しとけ」
そこまで言って動くJ。
はっとする錬介だが、もう遅い。直立する首にJが飛びつき足が絡んだ!
「ティヘラは使うがな!」
J、体重を後ろに預けて身をひねった。
先のシレークスの見せた投げ技と似ている。
「あっ!」
ヘッドシザースホイップである!
シレークスや正太郎が投げたスキル依存の技と違い、Jの技は武術知識と立体感覚に依存したものだ。
――ずしん……。
リング中央からなのでリングアウトはない。
「くっ!」
「お?」
錬介、素早く立ち上がると同時に……周りに闇の刃が一瞬浮かんだ。
これでJも追撃の動きを止めていた。
「プルガトリオですが……」
「そうはさせねェ」
Jはファントムハンドを出し周囲を払った。
もちろん、そうせずともプルガトリオは味方と思っている者には刺さらず一瞬で消える。それに合わせて安心してファントムハンドで払ったのだ。
知らない観客は幻影の攻防におおー、と歓声。
「続けて行くぜ?」
J、跳躍しての二段蹴り。これは錬介が聖盾剣の盾で受ける。
「受けだけとは思わないでください」
そして錬介、反撃。
盾を構えて押してきた。
が、入れ替わられる。
背後から膝を狙われ中腰になると背中に圧迫感を感じ、首を取られて弓ぞりになっていた。
「すまねぇ、カベルナリアを使っちまった」
錬介、タップして勝敗が決する。
「なにかプロレスづいてるわねー」
続いて、キーリが上がる。
「希望を持ってりゃ変わって来るでしょ?」
相手は、舞。ぴらぴらと「【17】星」のカードを振っている。
「じゃ、とりあえず持ち込んだ魔法をパパーっと使うけども……」
「もちろん問題ないよ」
聖書「クルディウス」を持ち出したキーリに対し、肩でぽんぽんともてあそんでいた木刀を構える舞。
「それじゃ、行くよ」
舞、一礼。
「ん」
キーリもちょこんと会釈。
戦闘開始だ!
「最初は石つぶてから?」
「効果ないけどね」
キーリがアースバレットを放つが舞がばしばし木刀で叩き落とす。
(ま、木刀狙ってんだけどねー)
とかいうキーリの苦労はもちろん舞も感じ取った。
が、それはそれ。ドッジダッシュでもう目の前だ。
「近寄られると詰むのよ、私」
――ぞぞぞっ!
というわけで、アースウォールの壁を正面に。
この隙に距離をとるキーリだが、舞は軽やかに舞うようなステップで回り込んでいた。
「えらくリズミカルね」
「日本舞踊だよ」
キーリ、問い掛けて注意をそらしつつ、リトルファイヤ発射。
が、すでに舞はそこにはいない。
――ひらっ。
ドッジダッシュで跳躍して……。
――どしっ!
「ちょっと、人を踏み台にする?」
キーリの肩に蹴り……ではなく着地の足場にした。
そのまま上空にジャンプ。迎撃のウインドスラッシュはやっぱり木刀で払った。
「ホークウィングっての着てるしさ」
鷹のように上空から獲物を狙いつつ下降して……。
――がきっ、ばしっ……どだーん。
キーリ、奥の手のガントレットで舞の木刀を防いだ。
が、舞が本当に狙っていたのは武器の書物。キーリはこれを取り落とした。
「いたた……」
「できるだけ傷つけないように、って思ったけどこれは仕方ないよね?」
上空からの急降下攻撃で舞はキーリを手篭めに……ではなく、優しく組み敷いていた。
「はいはい、負け負け。もうちょっと踊るように戦いたかったわねー」
「立ち上がってやってもいいよ?」
ご機嫌斜めなキーリに、やりすぎちゃったかなと反省する舞。
「これだけ観客が盛り上がって、実は無傷でしたもう一度ーってのはないわー」
「ま、そりゃそうだね」
舞、それだけ言い残して一人で立ち上がると木刀を儀式めかして振り、鞘に納めるような動きをした。
格式の感じられる、優雅な動きである。
観客はそれが奉納舞の終わりを示しているのだと理解し、惜しみない拍手を送った。
●
そんなこんなで、メーンの奉納武闘会が終わり、舞台では勝者たちによるバトルロイヤルが繰り広げられている。
一方で、初華はお好み焼き屋台に戻って焼いて売ってと大忙し。
「正太郎さ~ん、焼けたわよ~」
「おー、ありがとだぜっ」
初華からお好み焼きを受け取る正太郎。
「お好み焼き美味しそうよね、海鮮系はあるかしら? ソース多めで」
入れ替わりで今度はキーリが焼き上がりを待つ。
正太郎は皆の所へ。
「熱々で中にいろいろ入ってておいしいの。やっぱり屋台で食べる雰囲気は大事なの」
すでにディーナははふはふもぐもぐ。……あーあー。幸せそうに食べるのはいいけど、口の端にソース付けちゃって。
「早いとこ食べてから初華さん手伝わないとなんだよ」
小鳥も舞台が見えるところでまずは腹ごしらえしているようだ。
「味が濃くって結構お酒が進むわねぇ。お肉も入ってるし、ワインなら赤ワインが合うかしら?」
メルクーアもお好み焼きを堪能中。お酒も一緒に堪能しているが。
「こういう屋台料理もあるんですね」
錬介はぺろっと小麦粉を焼いた衣をめくって中身を確認してみたり。広島風は混ぜ焼きのお好み焼きと違って重ね焼きなのでそういうこともできる。中は野菜とソバがたっぷり。肉はそこまで入ってない。
「おー、うまい。……それよりどうなってる?」
正太郎もここに座って食しつつ、バトルロイヤルの様子を聞いてみる。
さて、舞台では。
「こらーっ、私ばっかり狙うんじゃなーい!」
「つってもよー、空飛んでりゃ逃げないようにこうするしかねぇぜ?」
空中に浮くウーナの足をJがファントムハンドでつかんでいた。
このチャンスにざくろがジャンプ。
「届け、じぇっどブーツ……そして錬力解放!」
「え? ちょっと……」
ざくろの魔導剣「カオスウィース」が巨大化する!
「……超・重・斬!!」
――バシィィィン!
「そりゃ、ちょっとは食らってあげないとって思ったけど……」
場の盛り上がりのため少しは攻撃を食らおうかな、とか思っていたウーナ、いきなりそれかとか思いつつ脱落。
で、着地したざくろ。
「ここしかないでやがります。っしゃおらぁ!」
――ずずーん!
止まったところをシレークスに仕留められたり。
で、シレークス自身も超重量攻撃。ざくろを仕留めた時に隙ができる。
「はいはい、ゴメンね~」
――ごーん……。
舞の木刀がシレークスの背後から襲う。
「さてと、後二人かな?」
「一人だけどね」
立ち上がる舞の背後に、悠月がいた。足元には、J。
「しょーがねぇだろ。ファントムハンド出した時に狙われたんだよ」
空気を読んで適当にやられていたようで。
「歌って踊って……ふふふ、ぞくぞくするね?」
「じゃ、付き合いましょうか」
悠月の構えに応じる舞。
いや。悠月がちょっと待ったしたぞ?
観客の方を振り返って呼び掛けている。
「さ、皆んなはこの歌知ってる? 最後までノッて行こうっ」
「……ちょっと、本当に歌う気?」
というわけで、楽しく歌って踊って戦う悠月。右に左に動いて流れて。ついでに攻撃も。
それに付き合う舞のほうは日本舞踊風で。
「ユッキー、楽しそうじゃない。……それにしても、外で食べる料理ってなんでこう美味しいのかしらねー」
観戦していたキーリ、もぐもぐゆっくり食べている。
「さて、ごちそうさまなんだよー。初華さん、手伝うんだよ♪」
「いつもありがとね、小鳥さん」
小鳥は食事を終えて屋台の手伝いに。
「それじゃいつものように注文取って回ろうかしらね~」
「お好み焼き美味しいの。みんなで食べるの」
メルクーアが売り子で、ディーナは呼び込み。
「あ、錬介さん?」
「屋台なら心得はある。手伝いますよ」
錬介は調理へ。
「えっと俺は……」
正太郎、何を手伝おうかと迷っていたところ。
――くいくい。
「え?」
袖を引かれて振り返ると、子供たちがにこーっと見上げていた。がおー、がおーとかも口走っている。
「仕方ない」
もう一回覚醒してライオン丸風のいで立ちになる正太郎だったり。
すっかり子供のファンができたようで。
そうこうする間に勝ち残り組も戻って来た。
「よう初華、繁盛してるか」
「あ、Jさん。忙しすぎなのーっ!」
「任せとけって。……らっしゃいらっしゃい、小腹がすいたらお好み焼きだ! 今回は広島焼きだぜっ!」
J、なんか忙しさに拍車を掛けてるような?
「さーて、屋台だ屋台♪」
「ウーナちゃん、鑑さんさがしにいくの」
ウーナはお好み焼きを受け取るとディーナと知人探しに。
「おー、繁盛してやがるです」
「初華、僕にも一つ!」
シレークスとざくろも戻って来た。
で、悠月と舞。
♪
胸が高鳴る、鼓動が騒ぐ……嗚呼、僕はこの瞬間を生きている
♪
悠月が歌い、舞がダンスしていた。
「なかなかやるじゃない」
「そっちもね」
踊る背中越しにウインクする舞に、ウインクで返す悠月。
「……すっかり歌と舞の奉納しちゃってるし」
キーリ、お好み焼きはむはむ。
「ま、観客が楽しんでるからいいんだけど」
そう。
観客も沸いて、全体の屋台売り上げも上々。
精霊への奉納イベント、大成功である。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 12人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/22 18:26:26 |