ゲスト
(ka0000)
【初夢】鋼鉄の鴎達
マスター:小宮山

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2015/01/04 19:00
- 完成日
- 2015/01/17 21:18
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
とある戦場。今、街の一つが脅威にさらされていた。
「司令! 第一小隊は爆弾積載ミスで空爆に失敗! 第二小隊は空中変形中に大破分解多数で戦力になりません!!」
「ええい! 敵の対空戦力は無尽蔵か?! っておい待て、空中分解ってなんだ!?」
「こちらの指示を無視して独断で行ったものと思われます。当然の報いですね」
「第三小隊、巨大兵器の運用を試しましたが、運搬中に射撃されて誘爆! 全滅です!!」
「この基地にはポンコツしかおらんのか!!」
「エースパイロットのスポティーなアレが部品不足で動かせませんから……」
「そもそもあれは水中用だろう……」
緊張感が有るのか無いのか解らない司令部に色々な情報が飛び交う。
巨大な正面モニターには巨大な狼の様な異形が怪獣映画のごとく街を薙ぎ倒している姿が映し出されている。
「このままでは最終防衛線突破まで30分と持ちません! 司令!!」
「……この駐屯地から投入出来る戦力はあとどれくらいだ……?」
「ディアブロ、ディスタン、ワイバーンが各二機だけです……それよりもパイロットが殆ど居ません」
「最前線とはいえ、僻地の守備防衛隊だからな……腕に覚えのある奴らなら傭兵でも構わん。集められるか?」
「多少時間を頂ければ……それまで持つでしょうか?」
司令と呼ばれたサングラスの男は俯き、手を組んで答える。
「──大佐ミサイルを、使用する」
「司令……ッ?!」
「解っている。色んな意味で危険な賭けだ。恐らく奴にダメージを与えることは難しいだろう。だが、足止めにはなる」
大佐ミサイル。それは偶然に開発された大量殺戮兵器である。
実際の使用はされた事が無い為、数値上の火力でしか推し量れない。
「武器庫担当に通信を繋げ」
司令の前にある小さなモニターに武器庫との通信が表示される
「今から6機分の武装を用意できるか? 有るだけで構わん」
「防衛用の汎用兵装くらいしか残ってませんよ!!」
「その中で使えそうな物をかき集めろ!! ついでに武装も振り分けてハンガーの機体にセッティングだ!!」
「わ、解りました!!」
慌ただしく通信の切れたモニターをため息とともに司令が眺める。
撤退も時間の問題か──そう考え始めた時、オペレータから声が上がる。
「司令! 傭兵6名、確保できました!!」
「即ハンガーへ送れ!! 状況は移動中に通信で伝える。無線機を持たせろ!!」
「了解!!」
「さて、傭兵の諸君。状況は知っての通り絶望的。背水の陣と言うやつだ。君たちの活躍に期待する」
ハンガーの担当者から機体の状況、戦況、その他の情報が慌ただしく流れ込んでくる。
かき集められた傭兵達の耳に流れる情報と共に、激しい爆発音が何度か聞こえてくる。
恐らく戦地の中継が激しくなっているのだろう。状況は悪く、恐らく撤退の時間も無いだろう。司令の言葉通り背水の陣──
そしてハンガーの扉がモーター音とともに開き、傭兵達の前に一時限りの無骨な相棒達が姿を現した。
「司令! 第一小隊は爆弾積載ミスで空爆に失敗! 第二小隊は空中変形中に大破分解多数で戦力になりません!!」
「ええい! 敵の対空戦力は無尽蔵か?! っておい待て、空中分解ってなんだ!?」
「こちらの指示を無視して独断で行ったものと思われます。当然の報いですね」
「第三小隊、巨大兵器の運用を試しましたが、運搬中に射撃されて誘爆! 全滅です!!」
「この基地にはポンコツしかおらんのか!!」
「エースパイロットのスポティーなアレが部品不足で動かせませんから……」
「そもそもあれは水中用だろう……」
緊張感が有るのか無いのか解らない司令部に色々な情報が飛び交う。
巨大な正面モニターには巨大な狼の様な異形が怪獣映画のごとく街を薙ぎ倒している姿が映し出されている。
「このままでは最終防衛線突破まで30分と持ちません! 司令!!」
「……この駐屯地から投入出来る戦力はあとどれくらいだ……?」
「ディアブロ、ディスタン、ワイバーンが各二機だけです……それよりもパイロットが殆ど居ません」
「最前線とはいえ、僻地の守備防衛隊だからな……腕に覚えのある奴らなら傭兵でも構わん。集められるか?」
「多少時間を頂ければ……それまで持つでしょうか?」
司令と呼ばれたサングラスの男は俯き、手を組んで答える。
「──大佐ミサイルを、使用する」
「司令……ッ?!」
「解っている。色んな意味で危険な賭けだ。恐らく奴にダメージを与えることは難しいだろう。だが、足止めにはなる」
大佐ミサイル。それは偶然に開発された大量殺戮兵器である。
実際の使用はされた事が無い為、数値上の火力でしか推し量れない。
「武器庫担当に通信を繋げ」
司令の前にある小さなモニターに武器庫との通信が表示される
「今から6機分の武装を用意できるか? 有るだけで構わん」
「防衛用の汎用兵装くらいしか残ってませんよ!!」
「その中で使えそうな物をかき集めろ!! ついでに武装も振り分けてハンガーの機体にセッティングだ!!」
「わ、解りました!!」
慌ただしく通信の切れたモニターをため息とともに司令が眺める。
撤退も時間の問題か──そう考え始めた時、オペレータから声が上がる。
「司令! 傭兵6名、確保できました!!」
「即ハンガーへ送れ!! 状況は移動中に通信で伝える。無線機を持たせろ!!」
「了解!!」
「さて、傭兵の諸君。状況は知っての通り絶望的。背水の陣と言うやつだ。君たちの活躍に期待する」
ハンガーの担当者から機体の状況、戦況、その他の情報が慌ただしく流れ込んでくる。
かき集められた傭兵達の耳に流れる情報と共に、激しい爆発音が何度か聞こえてくる。
恐らく戦地の中継が激しくなっているのだろう。状況は悪く、恐らく撤退の時間も無いだろう。司令の言葉通り背水の陣──
そしてハンガーの扉がモーター音とともに開き、傭兵達の前に一時限りの無骨な相棒達が姿を現した。
リプレイ本文
「大佐ミサイル、発射まで10秒を切りました。5、4、3……」
傭兵達はコクピットの中で武装の確認をしつつ出撃の号令を待つ。
司令部の中継モニター映像が、ホログラフィでコックピット内に映されていた。
そこには大佐ミサイルと言う大仰な名とは裏腹に、全長2m程のコンパクトなミサイルが厳戒態勢で発射シークエンスを迎えていた。
「大佐ミサイルまで持ち出すなんて……相手は正真正銘の化け物ですね」
コーネリア・デュラン(ka0504)は純白に塗装されたワイバーンの中で独り言ちる。
少し前に、ワイバーンの準備担当官から塗装色の意見聞き間違いで平謝りされたのはまた別のお話。
「ワイバーン1、機体チェック完了。いつでも行けます!」
コーネリアの発言とほぼ同時に、大佐ミサイルが盛大に火を噴き発射された。
「話には聞いてたっすけど、何であのミサイル人型なんすかね……っと、着弾したっすね。あ、ディアブロ2、機体チェック完了っす」
無限 馨(ka0544)が計器の確認チェックをしながらモニターを眺めて感想を述べる。
「チェック完了。慣らす時間はないが、全開で回して問題ないな?」
「整備だけは完璧です。ご武運を!」
シュタール・フラム(ka0024)は整備兵と最終チェックを終えて市街地戦迷彩に塗装されたワイバーンのシートに身体を潜り込ませて、大佐ミサイル着弾の様子を眺める。盛大な爆煙を見る限り相当な威力の様だが、風で爆煙が流された中に残るシルエットが確認出来た。
「また随分と頑丈なデカブツだな。こいつは手応えがありそうだ」
「うっへぇ、責任重大っすね。けど、最終防衛戦を守るって響き格好いいっすね。まさに最後の希望って感じ?」
爆煙がうっすらと残る中、未だ元気に動いている影を眺めて無限が声を上げた。
「デカイ=ヤバイとは限らん。大佐ミサイルと相性が悪かっただけかもしれないしな。……が、さて、どんなものか……」
バレル・ブラウリィ(ka1228)が機体チェックを終え、通信に声を流す。と、同時に司令部からの通信が入った。
「各機チェック完了、出撃タイミングは傭兵の諸君に任せる。支援もロクに出来ない背水の陣で申し訳ないが……最高の戦果を期待する」
「それでも……ここで退くわけにはいかない……ここで、仕留めましょう! ワイバーン1、出ます!!」
「コーネリアの言う通りだ。後ろは無いんだしな。ワイバーン2、出るぞ!!」
白とグレー、二機のワイバーンがカタパルトから火花を上げて発進する。
カタパルトが元の位置へ戻り、第二波発進の為に二機のディスタンがスタンバイに入る。
「背水の陣……後が無い分、する事はシンプルですか……手段も問えませんし」
灰色に塗装されたディスタンの中で天央 観智(ka0896)が独り言ちた。
その隣では黒に塗装されたディスタンがスタンバイ状態に入る。
「デカブツ相手か、だが……イケるな? アンバー・アイ」
バレルは操縦桿を握り、暗示の様に呟いた。
「発進準備完了です!!」
天央が管制官にハンドサインを送り、スロットルを煽る。
「ディスタン2、出ます」
「同じくディスタン1、出る!」
先程と同じく、カタパルトの炸薬が盛大に火花を散らせながらディスタン二機を弾き出した。
「しっかし、ビームやらが実用化されてるのに、ここのカタパルトは炸薬式なんすね……アナログの安心感ってのもあるんすけど」
無限がスタンバイしながらアナログなカタパルトに感想を漏らす。隣のカタパルトにもエリオット・ウェスト(ka3219)が搭乗するディアブロがスタンバイに入っている。
「素の状態で良かったんですか? まあ、塗装と言ってもコーティングじゃないですから、特別効果はありませんが……」
「いいっすよ、時間も無いし。もう一機は反応無いけど……動いてるという事は問題無いんすかね」
「管制には応答がある様ですので、問題は無い様です」
「そんじゃま。無限馨、出るっすよ!」
無限の声と共にカタパルトによって機体が叩き出される様に加速する。通信には「うわ、うわあ!」とエリオットの叫び声が響いていた。
「ワイバーン1、挟撃で撹乱、行けるか?」
コーネリアのコクピットにシュタールの声が響く。
「ディスタンとディアブロが追いつくまでに撹乱、ですね」
「……無理はすんなよ?」
「はい!!」
半ば瓦礫の山と化した街の中を、二機のワイバーンが駆ける。
猟犬の形を模したそれは、文字通り猟犬の様に瓦礫を避け、遮蔽物を利用しながら巨大狼を挟撃するためのポジションへと向かう。
「ワイバーン1、ポジションに到達しました」
「ワイバーン2、こちらも到達した。そんじゃまあ、一足先におっ始めるか」
コーネリアとシュタールのワイバーンが、崩れかけたピルの残骸の陰から飛び出し、バルカンでの牽制を始める。
乾いた撃発音がパラパラと鳴り響き、戦闘の開始を宣言している様だった。
「始まった様だな。そろそろチェーンガンの射程に入る」
「こちらもそろそろですね。射程に入り次第攻撃を開始します」
バレルと天央のディスタン二機、そしてその後ろにディアブロ。同時に戦域へと到着しつつあった。
「敵に高熱源反応! 来るっすよ!!」
見れば巨大狼の背にあるキャノン砲が赤熱している。まとまっていれば一撃でなぎ払われかねない。
「散会!!」
天央の声とほぼ同時にキャノン砲が光を発する。
「あっぶねー……文字通り大鑑巨砲っすね……」
「フン……当たらなければただの飾りだ」
無限とバレルが大きく避けつつ感想を漏らす。視線を泳がせると天央とエリオットの姿が見えない。
「……まさか?!」
慌てて通信を飛ばす。
「ディアブロ1! ディスタン2! 生きてるか?!」
「──大丈夫です。少しダメージを受けましたが。それよりも、エリオット君の反応がありません」
その時、エリオットは戦闘の恐怖のあまり失神していた。そして、失神している口元が無機質に言葉を発する。
『仮想人格「DW」システム、プログラムスタート』
一瞬の間の後、反応の無かったディアブロ1が盾代わりに瓦礫を拾い上げて弾かれた様に敵へと突進する。
「けひゃひゃひゃひゃ~! 我輩の敵はどこかね~? そこか~!」
「……なんだアレ……」
バレルが呆気にとられて思わず口走る。
「生きていて戦力になるなら問題無いでしょう……ですが、このままでは死にに行くのと同義です」
「こりゃまた変わった試合開始のホイッスルっすね……! ディスタン1・2、背中は任せるっすよ!!」
無限は気持ちを切り替えてエリオットの後を追う。
「全機に通達、ディアブロ1、エリオット機に異常発生。例の仮想人格とやらだと思われる」
天央の声に全機から返答。そしてバレルと天央のチェーンガンが無機質な機械音と共に頼もしい撃発音を奏でる。
「ようやくパーティの開始って奴だな……!!」
ディスタンの射撃位置をモニターで確認し、ロックしながら市街地迷彩のワイバーンが駆ける。チェーンガンで破損した装甲部ならバルカンで貫けるかと考えての行動である。
シュタールの指がトリガーにかかり、射程突入のアラートが鳴る。
「単独は無理でも、合わせ技ならどうだ?」
バルカンの乾いた発射音が響き、走行破損部分に命中するが──
「くそっ! 豆鉄砲かよ!!」
バルカンの命中精度では、どうしても着弾点がバラけてしまい、与えられるダメージはほぼ無い様だった。
「バルカンは牽制にしか使えませんね……零距離でない限り、一箇所に集中させる事が出来そうにないです!!」
巨大狼の足による薙ぎ払いをジグザグに躱しながら、同じくバルカンでの装甲貫通を試したコーネリアが声をあげる。
「支援射撃はディスタン隊に任せて、俺は砲塔を叩く事にする!!」
「了解です!!」
二機の猟犬は、襲いかかる時と同じ様に瞬間で距離を取り、獲物を狙う様に狙いを定める。
「バルカンで無理なら、近接でやるっすよ!!」
ワイバーンが引いた瞬間に、無限のディアブロが砂げ無理を巻き上げて高周波ブレードで切りつける。
花火の様に火花を散らしながら、高周波ブレードが巨大狼の装甲を削る。
「堅ってぇー! やっぱ装甲のないとこ狙わないと決定打は与えられないっすね」
無限は苦虫を噛み潰した様な顔で独り言ちた。
近接攻撃を始めた相手に反撃する為に、これまで射撃に対して悠長に構えていた巨大狼の動きも激しくなっていく。
「けひゃ! けひゃひゃひゃ〜!! ここかね〜?」
人が変わった様な口調のエリオットが、高周波ブレードと残骸を持った二刀流で砲塔へと飛び掛り、切りつける。
ギャンギャンと硬質な金属音を鳴らし砲塔に傷をつける物の、武装の相性が悪為か、砲塔の機能不全にまでは追い込めない。
「攻撃箇所の分散は危険です。先ずは確実にダメージを与えられる場所を作りましょう!」
「ンな事言ったって……よ!!」
天央の声に巨大狼から狙いを絞られたシュタールが前足で叩かれた様に打撃を受けて盛大にアスファルトへ爪痕を付けて立て直す。
「可能な限りで構いませんから……!! シュタールさんと可能な方は引きつけを。ディスタン隊は距離を詰めて肩口に攻撃を集中させましょう。行けますか? バレルさん」
「了解した!」
バレルの返事と共に、ディスタンがチェーンガンでの牽制を行いながら、徐々に距離を詰めていく。距離が近付くにつれて命中精度と威力が上がり、巨大狼がついに身を捩りながらシュタールからディスタン達へと標的を変える。
「──私も、居るんですよ!!」
牽制から一旦距離を置き、遮蔽物からの急襲に攻撃スタイルを変更したコーネリアが、隙の生まれた巨大狼の臀部、装甲の無い部分に向かってビームクロウを突き立て、切り裂いた。
「ふぅ……一先ず俺は休憩s……おっと、フラグが立っちまう。気は抜けないねぇ!!」
狙いから外れたシュタールは一瞬気を抜きそうになるが、ニヤリと笑みを浮かべて狙いを定めていた砲塔へと飛び掛る。
シュタール機のビームクロウが砲塔を捉えると、大きな切り込みが入る。
どうやら装甲部と材質が違うらしく、同じ近接武器である高周波ブレードと相性が違う様だった。
「おっし! 敵右舷砲塔、使い物にならなくなったぜ!」
「成る程、部位によって武器の相性が違うんっすね……装甲はチェーンガン、ビームクロウは砲塔、高周波ブレードは……? 天央さん、データ収集頼めるっすか?」
無限が巨大狼の各部を攻撃しつつ、通信を飛ばす。
「了解です。と言っても、僕も戦闘しながらになりますが」
「一人より二人っす!」
形勢が変わりつつある、傭兵達がそう感じ始めた時、ひとつの大きな動きが起こる。
武装からの破壊を目指していたエリオット機が残った砲塔を攻撃する為、切り込みが入って歪んだ砲塔に足をかけていたその時だった。
「エリオットさん! 砲塔はワイバーンに任せて下さい!! 武器の相性が……!!」
エリオットは既に攻撃態勢に入っており、武器を振りかぶっていた。
右手に高周波ブレード、左手に残骸であろう鉄骨。
「クロ〜ス スラッs」
残骸を横振りした瞬間、その時だった。
歪んで使い物にならなくなっているであろう砲塔に熱源。
つまり、狼が壊れた砲塔を自ら暴発させ、その爆発にエリオットが巻き込まれたのである。
至近距離でキャノン砲の爆発を受けたエリオットのディアブロは、四肢を吹き飛ばされた上にコクピットブロックのキャノピーすらも吹き飛ばされていた。
「エリオットさん──!!」
遮蔽物からの一撃を狙っていたコーネリアが悲痛な声を上げ、モニターにエリオット機をズームアップする。
そこには辛うじて原型を留めたコクピット。モニターされているバイタルサインは微小でcautionサインが点滅していた。
「ワイバーン1。落ち着いて、まずエリオットのバイタルモニタを閉じて下さい。どのみちこの狼を倒さなければ助ける事も出来ません」
「……はい!」
「無限さん、収集したデータをそちらに送ります。あまり役に立たないものと成りましたが……」
天央は目の端でアラートの止まったcautionサインを見て無限に伝える。
「……ちょっと考えがあるんで、10……いや5秒だけ隙を作って貰えないっすか?」
「了解だ。ワイバーン1、行けるな?」
「…………」
シュタールが問いかけるが、返事が無い。
「コーネリア、どうした?」
「は、はい! 行けます!!」
動揺を隠す様にコーネリアが返答し、バレルが音頭を取る。
ディスタンからの援護でワイバーンが牽制して隙を作る。これでいいな? 無限」
「……頼むっす!」
無限の返答と共にチェーンガンの掃射が始まり、二機のワイバーンが飛び出す。
遅れてディアブロが進み、やや脇に逸れたルートを取って行った。
「(エリオットさん──仇は、取りますから)」
天央に言われたのだが、仲間の安否が気になっていたコーネリアは、ウィンドウを閉じていなかった。つまり、cautionサインが止まった事を目にしてしまったのだ。
動揺させまいとしてウィンドウを閉じろと言われた事は解っていても──
「絶対、許さない──!!」
チェーンガン掃射に合わせたワイバーン二機からバルカンの追撃、そして、ビームクロウによる有効部分への攻撃。
「待て!!──正面からのジャンプはマズい──」
シュタールがそう声を上げようとしたその時、純白の猟犬は砲塔によって横薙ぎに弾き飛ばされていた。
「砲身で──」
コーネリア機が瓦礫に激突する瞬間、無限のディアブロが、白いワイバーンを左手で受け止める。
重量と勢いを殺しきれず、ディアブロの左手は引き千切られるが、バイタルを見る限りコーネリアは無事な様だ。
砲身を大きく振りぬいたせいで横を向いた巨大狼の腹へ、無限が突進する。
「砲塔も装甲も通らないなら、ココしかないっすよね……!!」
滑りこんだ腹部に全力で高周波ブレードを突き立てる無限。しゃがみ込んだ姿勢で頭部が腹に擦れる位置──
「釣りはくれてやるっすよ!!」
全力で押し込んだ高周波ブレードが、巨大狼の心臓部に達する。そしてその傷口に向かってのバルカンの掃射。
巨大な狼は身を捩る間も無く、瞬間体を痙攣させただけで崩れ落ちた。
「……無限?!」
狼の下敷きになった無限のバイタルを慌てて確認するが、息はある様だった。ノイズと共に無限の声が通信に入る。
「へへ……死に損なっちまったっす」
──ハンター達の夢に、仮面を付けた女性が現れ、声が響く──
どうでしたか?良い初夢は見れましたか?
私は誰か?
──私の名はオリム。
あなた方を現実に引き戻す役割を担う者です。
さあ……目覚めなさい……全ては夢なのです……
女性が近づき、仮面を外す──そして、意識は白く染まった。
──いい夢は、見れましたか?
傭兵達はコクピットの中で武装の確認をしつつ出撃の号令を待つ。
司令部の中継モニター映像が、ホログラフィでコックピット内に映されていた。
そこには大佐ミサイルと言う大仰な名とは裏腹に、全長2m程のコンパクトなミサイルが厳戒態勢で発射シークエンスを迎えていた。
「大佐ミサイルまで持ち出すなんて……相手は正真正銘の化け物ですね」
コーネリア・デュラン(ka0504)は純白に塗装されたワイバーンの中で独り言ちる。
少し前に、ワイバーンの準備担当官から塗装色の意見聞き間違いで平謝りされたのはまた別のお話。
「ワイバーン1、機体チェック完了。いつでも行けます!」
コーネリアの発言とほぼ同時に、大佐ミサイルが盛大に火を噴き発射された。
「話には聞いてたっすけど、何であのミサイル人型なんすかね……っと、着弾したっすね。あ、ディアブロ2、機体チェック完了っす」
無限 馨(ka0544)が計器の確認チェックをしながらモニターを眺めて感想を述べる。
「チェック完了。慣らす時間はないが、全開で回して問題ないな?」
「整備だけは完璧です。ご武運を!」
シュタール・フラム(ka0024)は整備兵と最終チェックを終えて市街地戦迷彩に塗装されたワイバーンのシートに身体を潜り込ませて、大佐ミサイル着弾の様子を眺める。盛大な爆煙を見る限り相当な威力の様だが、風で爆煙が流された中に残るシルエットが確認出来た。
「また随分と頑丈なデカブツだな。こいつは手応えがありそうだ」
「うっへぇ、責任重大っすね。けど、最終防衛戦を守るって響き格好いいっすね。まさに最後の希望って感じ?」
爆煙がうっすらと残る中、未だ元気に動いている影を眺めて無限が声を上げた。
「デカイ=ヤバイとは限らん。大佐ミサイルと相性が悪かっただけかもしれないしな。……が、さて、どんなものか……」
バレル・ブラウリィ(ka1228)が機体チェックを終え、通信に声を流す。と、同時に司令部からの通信が入った。
「各機チェック完了、出撃タイミングは傭兵の諸君に任せる。支援もロクに出来ない背水の陣で申し訳ないが……最高の戦果を期待する」
「それでも……ここで退くわけにはいかない……ここで、仕留めましょう! ワイバーン1、出ます!!」
「コーネリアの言う通りだ。後ろは無いんだしな。ワイバーン2、出るぞ!!」
白とグレー、二機のワイバーンがカタパルトから火花を上げて発進する。
カタパルトが元の位置へ戻り、第二波発進の為に二機のディスタンがスタンバイに入る。
「背水の陣……後が無い分、する事はシンプルですか……手段も問えませんし」
灰色に塗装されたディスタンの中で天央 観智(ka0896)が独り言ちた。
その隣では黒に塗装されたディスタンがスタンバイ状態に入る。
「デカブツ相手か、だが……イケるな? アンバー・アイ」
バレルは操縦桿を握り、暗示の様に呟いた。
「発進準備完了です!!」
天央が管制官にハンドサインを送り、スロットルを煽る。
「ディスタン2、出ます」
「同じくディスタン1、出る!」
先程と同じく、カタパルトの炸薬が盛大に火花を散らせながらディスタン二機を弾き出した。
「しっかし、ビームやらが実用化されてるのに、ここのカタパルトは炸薬式なんすね……アナログの安心感ってのもあるんすけど」
無限がスタンバイしながらアナログなカタパルトに感想を漏らす。隣のカタパルトにもエリオット・ウェスト(ka3219)が搭乗するディアブロがスタンバイに入っている。
「素の状態で良かったんですか? まあ、塗装と言ってもコーティングじゃないですから、特別効果はありませんが……」
「いいっすよ、時間も無いし。もう一機は反応無いけど……動いてるという事は問題無いんすかね」
「管制には応答がある様ですので、問題は無い様です」
「そんじゃま。無限馨、出るっすよ!」
無限の声と共にカタパルトによって機体が叩き出される様に加速する。通信には「うわ、うわあ!」とエリオットの叫び声が響いていた。
「ワイバーン1、挟撃で撹乱、行けるか?」
コーネリアのコクピットにシュタールの声が響く。
「ディスタンとディアブロが追いつくまでに撹乱、ですね」
「……無理はすんなよ?」
「はい!!」
半ば瓦礫の山と化した街の中を、二機のワイバーンが駆ける。
猟犬の形を模したそれは、文字通り猟犬の様に瓦礫を避け、遮蔽物を利用しながら巨大狼を挟撃するためのポジションへと向かう。
「ワイバーン1、ポジションに到達しました」
「ワイバーン2、こちらも到達した。そんじゃまあ、一足先におっ始めるか」
コーネリアとシュタールのワイバーンが、崩れかけたピルの残骸の陰から飛び出し、バルカンでの牽制を始める。
乾いた撃発音がパラパラと鳴り響き、戦闘の開始を宣言している様だった。
「始まった様だな。そろそろチェーンガンの射程に入る」
「こちらもそろそろですね。射程に入り次第攻撃を開始します」
バレルと天央のディスタン二機、そしてその後ろにディアブロ。同時に戦域へと到着しつつあった。
「敵に高熱源反応! 来るっすよ!!」
見れば巨大狼の背にあるキャノン砲が赤熱している。まとまっていれば一撃でなぎ払われかねない。
「散会!!」
天央の声とほぼ同時にキャノン砲が光を発する。
「あっぶねー……文字通り大鑑巨砲っすね……」
「フン……当たらなければただの飾りだ」
無限とバレルが大きく避けつつ感想を漏らす。視線を泳がせると天央とエリオットの姿が見えない。
「……まさか?!」
慌てて通信を飛ばす。
「ディアブロ1! ディスタン2! 生きてるか?!」
「──大丈夫です。少しダメージを受けましたが。それよりも、エリオット君の反応がありません」
その時、エリオットは戦闘の恐怖のあまり失神していた。そして、失神している口元が無機質に言葉を発する。
『仮想人格「DW」システム、プログラムスタート』
一瞬の間の後、反応の無かったディアブロ1が盾代わりに瓦礫を拾い上げて弾かれた様に敵へと突進する。
「けひゃひゃひゃひゃ~! 我輩の敵はどこかね~? そこか~!」
「……なんだアレ……」
バレルが呆気にとられて思わず口走る。
「生きていて戦力になるなら問題無いでしょう……ですが、このままでは死にに行くのと同義です」
「こりゃまた変わった試合開始のホイッスルっすね……! ディスタン1・2、背中は任せるっすよ!!」
無限は気持ちを切り替えてエリオットの後を追う。
「全機に通達、ディアブロ1、エリオット機に異常発生。例の仮想人格とやらだと思われる」
天央の声に全機から返答。そしてバレルと天央のチェーンガンが無機質な機械音と共に頼もしい撃発音を奏でる。
「ようやくパーティの開始って奴だな……!!」
ディスタンの射撃位置をモニターで確認し、ロックしながら市街地迷彩のワイバーンが駆ける。チェーンガンで破損した装甲部ならバルカンで貫けるかと考えての行動である。
シュタールの指がトリガーにかかり、射程突入のアラートが鳴る。
「単独は無理でも、合わせ技ならどうだ?」
バルカンの乾いた発射音が響き、走行破損部分に命中するが──
「くそっ! 豆鉄砲かよ!!」
バルカンの命中精度では、どうしても着弾点がバラけてしまい、与えられるダメージはほぼ無い様だった。
「バルカンは牽制にしか使えませんね……零距離でない限り、一箇所に集中させる事が出来そうにないです!!」
巨大狼の足による薙ぎ払いをジグザグに躱しながら、同じくバルカンでの装甲貫通を試したコーネリアが声をあげる。
「支援射撃はディスタン隊に任せて、俺は砲塔を叩く事にする!!」
「了解です!!」
二機の猟犬は、襲いかかる時と同じ様に瞬間で距離を取り、獲物を狙う様に狙いを定める。
「バルカンで無理なら、近接でやるっすよ!!」
ワイバーンが引いた瞬間に、無限のディアブロが砂げ無理を巻き上げて高周波ブレードで切りつける。
花火の様に火花を散らしながら、高周波ブレードが巨大狼の装甲を削る。
「堅ってぇー! やっぱ装甲のないとこ狙わないと決定打は与えられないっすね」
無限は苦虫を噛み潰した様な顔で独り言ちた。
近接攻撃を始めた相手に反撃する為に、これまで射撃に対して悠長に構えていた巨大狼の動きも激しくなっていく。
「けひゃ! けひゃひゃひゃ〜!! ここかね〜?」
人が変わった様な口調のエリオットが、高周波ブレードと残骸を持った二刀流で砲塔へと飛び掛り、切りつける。
ギャンギャンと硬質な金属音を鳴らし砲塔に傷をつける物の、武装の相性が悪為か、砲塔の機能不全にまでは追い込めない。
「攻撃箇所の分散は危険です。先ずは確実にダメージを与えられる場所を作りましょう!」
「ンな事言ったって……よ!!」
天央の声に巨大狼から狙いを絞られたシュタールが前足で叩かれた様に打撃を受けて盛大にアスファルトへ爪痕を付けて立て直す。
「可能な限りで構いませんから……!! シュタールさんと可能な方は引きつけを。ディスタン隊は距離を詰めて肩口に攻撃を集中させましょう。行けますか? バレルさん」
「了解した!」
バレルの返事と共に、ディスタンがチェーンガンでの牽制を行いながら、徐々に距離を詰めていく。距離が近付くにつれて命中精度と威力が上がり、巨大狼がついに身を捩りながらシュタールからディスタン達へと標的を変える。
「──私も、居るんですよ!!」
牽制から一旦距離を置き、遮蔽物からの急襲に攻撃スタイルを変更したコーネリアが、隙の生まれた巨大狼の臀部、装甲の無い部分に向かってビームクロウを突き立て、切り裂いた。
「ふぅ……一先ず俺は休憩s……おっと、フラグが立っちまう。気は抜けないねぇ!!」
狙いから外れたシュタールは一瞬気を抜きそうになるが、ニヤリと笑みを浮かべて狙いを定めていた砲塔へと飛び掛る。
シュタール機のビームクロウが砲塔を捉えると、大きな切り込みが入る。
どうやら装甲部と材質が違うらしく、同じ近接武器である高周波ブレードと相性が違う様だった。
「おっし! 敵右舷砲塔、使い物にならなくなったぜ!」
「成る程、部位によって武器の相性が違うんっすね……装甲はチェーンガン、ビームクロウは砲塔、高周波ブレードは……? 天央さん、データ収集頼めるっすか?」
無限が巨大狼の各部を攻撃しつつ、通信を飛ばす。
「了解です。と言っても、僕も戦闘しながらになりますが」
「一人より二人っす!」
形勢が変わりつつある、傭兵達がそう感じ始めた時、ひとつの大きな動きが起こる。
武装からの破壊を目指していたエリオット機が残った砲塔を攻撃する為、切り込みが入って歪んだ砲塔に足をかけていたその時だった。
「エリオットさん! 砲塔はワイバーンに任せて下さい!! 武器の相性が……!!」
エリオットは既に攻撃態勢に入っており、武器を振りかぶっていた。
右手に高周波ブレード、左手に残骸であろう鉄骨。
「クロ〜ス スラッs」
残骸を横振りした瞬間、その時だった。
歪んで使い物にならなくなっているであろう砲塔に熱源。
つまり、狼が壊れた砲塔を自ら暴発させ、その爆発にエリオットが巻き込まれたのである。
至近距離でキャノン砲の爆発を受けたエリオットのディアブロは、四肢を吹き飛ばされた上にコクピットブロックのキャノピーすらも吹き飛ばされていた。
「エリオットさん──!!」
遮蔽物からの一撃を狙っていたコーネリアが悲痛な声を上げ、モニターにエリオット機をズームアップする。
そこには辛うじて原型を留めたコクピット。モニターされているバイタルサインは微小でcautionサインが点滅していた。
「ワイバーン1。落ち着いて、まずエリオットのバイタルモニタを閉じて下さい。どのみちこの狼を倒さなければ助ける事も出来ません」
「……はい!」
「無限さん、収集したデータをそちらに送ります。あまり役に立たないものと成りましたが……」
天央は目の端でアラートの止まったcautionサインを見て無限に伝える。
「……ちょっと考えがあるんで、10……いや5秒だけ隙を作って貰えないっすか?」
「了解だ。ワイバーン1、行けるな?」
「…………」
シュタールが問いかけるが、返事が無い。
「コーネリア、どうした?」
「は、はい! 行けます!!」
動揺を隠す様にコーネリアが返答し、バレルが音頭を取る。
ディスタンからの援護でワイバーンが牽制して隙を作る。これでいいな? 無限」
「……頼むっす!」
無限の返答と共にチェーンガンの掃射が始まり、二機のワイバーンが飛び出す。
遅れてディアブロが進み、やや脇に逸れたルートを取って行った。
「(エリオットさん──仇は、取りますから)」
天央に言われたのだが、仲間の安否が気になっていたコーネリアは、ウィンドウを閉じていなかった。つまり、cautionサインが止まった事を目にしてしまったのだ。
動揺させまいとしてウィンドウを閉じろと言われた事は解っていても──
「絶対、許さない──!!」
チェーンガン掃射に合わせたワイバーン二機からバルカンの追撃、そして、ビームクロウによる有効部分への攻撃。
「待て!!──正面からのジャンプはマズい──」
シュタールがそう声を上げようとしたその時、純白の猟犬は砲塔によって横薙ぎに弾き飛ばされていた。
「砲身で──」
コーネリア機が瓦礫に激突する瞬間、無限のディアブロが、白いワイバーンを左手で受け止める。
重量と勢いを殺しきれず、ディアブロの左手は引き千切られるが、バイタルを見る限りコーネリアは無事な様だ。
砲身を大きく振りぬいたせいで横を向いた巨大狼の腹へ、無限が突進する。
「砲塔も装甲も通らないなら、ココしかないっすよね……!!」
滑りこんだ腹部に全力で高周波ブレードを突き立てる無限。しゃがみ込んだ姿勢で頭部が腹に擦れる位置──
「釣りはくれてやるっすよ!!」
全力で押し込んだ高周波ブレードが、巨大狼の心臓部に達する。そしてその傷口に向かってのバルカンの掃射。
巨大な狼は身を捩る間も無く、瞬間体を痙攣させただけで崩れ落ちた。
「……無限?!」
狼の下敷きになった無限のバイタルを慌てて確認するが、息はある様だった。ノイズと共に無限の声が通信に入る。
「へへ……死に損なっちまったっす」
──ハンター達の夢に、仮面を付けた女性が現れ、声が響く──
どうでしたか?良い初夢は見れましたか?
私は誰か?
──私の名はオリム。
あなた方を現実に引き戻す役割を担う者です。
さあ……目覚めなさい……全ては夢なのです……
女性が近づき、仮面を外す──そして、意識は白く染まった。
──いい夢は、見れましたか?
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依頼相談卓 バレル・ブラウリィ(ka1228) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/01/04 18:40:18 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/03 15:11:11 |