ゲスト
(ka0000)
【CF】店員さん求む!
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/12/06 07:30
- 完成日
- 2018/12/12 22:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ファリフは久しぶりにリゼリオの街に現れた。
部族会議主催の『ウェルカムパーティ-』への顔出しだ。
とはいえ、ファリフは特にやることはなく、いつも同行しているトリシュヴァーナは逗留中の宿で休むと言ってのんびりしていた。
いつもある温かさがないファリフは寒さというか、寂しさにそっとため息をついた。
この時期は聖輝節で今年はケーキ屋台が並んでいる。
「あのケーキ、美味しかったなぁ……」
ほんわりと思い出すのは、バタルトゥ・オイマト(kz0023)が作ったケーキだ。
たまたま歩いていたファリフを見つけたヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)が呼び止め、リーダーをしているというチューダ(kz0173)が「味見させてやるであります!」と偉そうに言っていたのは見目美しい桃と胡桃をふんだんに使ったケーキ。
デザインはヴェルナーの好みが反映されていると当人より解説してもらった。とても綺麗でヴェルナーの趣味の良さがよくわかる。彼の指示を反映できるバタルトゥの腕前も素晴らしい。
特にスポンジの柔らかさと、桃の甘みを引き立ててとても美味しいとファリフは絶賛していた。
本当に素敵なケーキであることをヴェルナーとバタルトゥに伝えるべく、ファリフが持つ語彙の限り誉めつくした。因みに踏ん反りがえるチューダの分の味見はなかった模様。
皆に喜ばれるといいなぁ……と思いながらファリフは屋台通りを歩いていく。
メインストリートから離れたところに屋台があることにファリフは気づいた。
イートインスペースを併設したカフェのようだ。
その店舗内でため息をついている娘さんに気づいたファリフは声をかける。
「どうかしたの?」
店員らしき娘は照れ屋なのか、緊張たように顔を赤らめてしまう。
「その……一緒に屋台を出していた姉が風邪で倒れてしまって……」
娘の名はミアト。彼女は姉と共にカフェを出店していたが、姉が風邪で倒れてしまった。
料理担当はミアトなのだが、人見知りの為、接客が苦手らしい。接客担当の姉が倒れてしまって、屋台も満足に出来ない模様。
「そっかぁ……お店はどんなメニューを出しているの?」
尋ねるファリフにミアトはアップルパイを差し出す。今日はお店を開くことが出来ないからとミアトは言う。
テイクアウトできるようにパイで包んでいるタイプだ。
さっくりとした歯触りのパイからとろりと甘いりんごの甘煮と甘さ控えめのカスタードが入っていた。
「これ、美味しいっ」
無心に食べるファリフを見つめてたミアトは嬉しそうに見つめる。
「えと……甘いものが苦手な方もいると聞きましたので……サンドイッチも用意してます」
「わぁ、気が利くんだね。これならお客さん、喜ぶよ」
素直に誉められたミアトは顔をトマトのように赤くしてしまう。
「ボク、手伝うよ!」
「え、いいのですか……」
「でも、ボクも接客ができるかわからないけど……でも、ハンターオフィスに頼んでみようよ!」
「は、はい……」
善は急げといわんばかりにファリフはミアトをハンターオフィスへ連れて行った。
部族会議主催の『ウェルカムパーティ-』への顔出しだ。
とはいえ、ファリフは特にやることはなく、いつも同行しているトリシュヴァーナは逗留中の宿で休むと言ってのんびりしていた。
いつもある温かさがないファリフは寒さというか、寂しさにそっとため息をついた。
この時期は聖輝節で今年はケーキ屋台が並んでいる。
「あのケーキ、美味しかったなぁ……」
ほんわりと思い出すのは、バタルトゥ・オイマト(kz0023)が作ったケーキだ。
たまたま歩いていたファリフを見つけたヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)が呼び止め、リーダーをしているというチューダ(kz0173)が「味見させてやるであります!」と偉そうに言っていたのは見目美しい桃と胡桃をふんだんに使ったケーキ。
デザインはヴェルナーの好みが反映されていると当人より解説してもらった。とても綺麗でヴェルナーの趣味の良さがよくわかる。彼の指示を反映できるバタルトゥの腕前も素晴らしい。
特にスポンジの柔らかさと、桃の甘みを引き立ててとても美味しいとファリフは絶賛していた。
本当に素敵なケーキであることをヴェルナーとバタルトゥに伝えるべく、ファリフが持つ語彙の限り誉めつくした。因みに踏ん反りがえるチューダの分の味見はなかった模様。
皆に喜ばれるといいなぁ……と思いながらファリフは屋台通りを歩いていく。
メインストリートから離れたところに屋台があることにファリフは気づいた。
イートインスペースを併設したカフェのようだ。
その店舗内でため息をついている娘さんに気づいたファリフは声をかける。
「どうかしたの?」
店員らしき娘は照れ屋なのか、緊張たように顔を赤らめてしまう。
「その……一緒に屋台を出していた姉が風邪で倒れてしまって……」
娘の名はミアト。彼女は姉と共にカフェを出店していたが、姉が風邪で倒れてしまった。
料理担当はミアトなのだが、人見知りの為、接客が苦手らしい。接客担当の姉が倒れてしまって、屋台も満足に出来ない模様。
「そっかぁ……お店はどんなメニューを出しているの?」
尋ねるファリフにミアトはアップルパイを差し出す。今日はお店を開くことが出来ないからとミアトは言う。
テイクアウトできるようにパイで包んでいるタイプだ。
さっくりとした歯触りのパイからとろりと甘いりんごの甘煮と甘さ控えめのカスタードが入っていた。
「これ、美味しいっ」
無心に食べるファリフを見つめてたミアトは嬉しそうに見つめる。
「えと……甘いものが苦手な方もいると聞きましたので……サンドイッチも用意してます」
「わぁ、気が利くんだね。これならお客さん、喜ぶよ」
素直に誉められたミアトは顔をトマトのように赤くしてしまう。
「ボク、手伝うよ!」
「え、いいのですか……」
「でも、ボクも接客ができるかわからないけど……でも、ハンターオフィスに頼んでみようよ!」
「は、はい……」
善は急げといわんばかりにファリフはミアトをハンターオフィスへ連れて行った。
リプレイ本文
リゼリオのハンターオフィスでハンター達との顔合わせに人見知りのミアトは緊張の頂点という状態であった。
「大丈夫?」
マリィア・バルデス(ka5848)が心配すると、ミアトはこくこくと頷く。
「は、ひゃい……」
ミアトがカチコチに固まっている中、ファリフはオウガ(ka2124)とアイラ(ka3941)の再会の挨拶だけではなく、ハンターに囲まれている。
「こんな服とかどうかな」
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)が取り出したのはリアルブルーのサンタクロースのようなワンピース。厚手の布地で縁に白いファーがついた温かそうな色あいだ。
「温かそうだね」
「リアルブルーでいうところの聖輝節は、クリスマスっていうんだって」
クリスマスの言葉はファリフも聞いた事がある。
「こんな服はどうかな? フリルの服とかも似合うと思うけど」
サクラ・エルフリード(ka2598)が出してきたのは可愛らしいエプロンドレスだ。
「わぁ! ファリフくん、似合うよー!」
服を合わせてみて、アイラがはしゃぐ。中性的で可愛らしい顔立ちであるので、エプロンドレスも似合っている。
「着てみましょ。お店の店員だし、冒険者の服よりこっちのほうがお客も来やすいと思う」
フィリテ・ノート(ka0810)の助言にファリフはすぐに納得した。
「わかったよ。フィリテさん」
試着するんだなと気を利かせたクレイ・ルカキス(ka7256)が「廊下で待ってる」と言って廊下にてしばし待ってもらう。
ドアの向こうより女性陣の「可愛い」「こっちも!」というはしゃぐ声が普通に聞こえるのは不可抗力だ。
着替え終わったからと、男性陣が中へ戻れば、エプロンドレス姿で髪を梳かされているファリフがいた。
「フリルのある服に抵抗はないんだね」
鳳凰院ひりょ(ka3744)が言えば、ファリフは思考しつつ、首を傾げる。
「ボクは赤き大地の戦士だからね。服は動きやすくて丈夫なものがいいけど、戦いにはいついかなる場合にもあるから、どんな時でも備えないとね」
どうやら、細かいこだわりはないようだ。今着ているエプロンドレスも足元が温かくていいと、好感触だ。
「あの大精霊さんが気に入るのもわかるわー。とっても可愛いもの」
青灰の変態歪虚は置いといて……と、アイラは脳内に差し込む黒い目線入り某歪虚のシルエットを追い出しつつ、ファリフに抱きつく。
「お化粧もしない? 折角だもの」
アイラの提案にファリフは快諾した。
控えめな化粧を施してもらい、はねた横髪は耳の後ろで飾りピンで留めて貰う。
「ボクはこういうのがよくわからないけど、お客さん、来るかな?」
小首を傾げるファリフに全員が太鼓判を押す。
普段は赤き大地の戦士にして、有力部族を率いる族長であるファリフだが、今のように無垢で可愛らしい様子はまだまだ少女のようである。
可愛らしいカフェの女給娘さんとなったファリフ姿をカメラに映していく。
ハンターオフィスを出てから、ファリフの女給姿は人の目に止まっていた。
ミアトの屋台へ向かっている中、ファリフを知っている者が驚いた様子を見せていたりする。
「向こうのイートイン付き屋台にいるよ。後で来てね!」
すかさずピアレーチェが手を振り、宣伝をする。
「宣伝って大事だよね」
「まだ準備前なので、あまり派手に宣伝してはお客さんを待たせてしまうかもしれない」
納得するファリフにクレイがそっと止める。屋台のコンセプトを考えて、ファリフは開店してからした方がいいと納得した。
屋台はまだ片づけている状態で、まずはテーブルや椅子を出さなくてはならない。
「ミアト。さっそくだけど、メニューにある商品を一品ずつ、すぐに出せる?」
机を並べる前にマリィアが声をかけた。
「何を……?」
きょとんとするミアトにマリィアが向けたのは魔導カメラ。
「これで写真を撮って、即席の看板にするの。どういう物を販売しているのか、視覚に訴えた方が分かりやすいのよ。あと、味見をしてどんな味かというのを客に伝えるのも店員の仕事だしね。なんなら全種類1個分お金を払うから」
マリィアの説明にミアトは宣伝に気づき、「お代は大丈夫です。わかりました」と言って慌てて調理場に入って用意を始める。
「僕も手伝うよ」
調理場に飛び込んだミアトにクレイが声をかけていた。
「あ、ありがとうございます……」
緊張しながらもミアトはクレイへ手伝って貰もらう。
「試食の前に写真を撮らせて。お客に出す状態で撮りたいから。試食はその後で」
マリィアが言えば、客に出す状態の上で皿に出してきた。
「これ、借りてもいい?」
調理場とイートインを仕切るカウンター部分に置いてあったコーンスタンドをマリィアが手に取り、撮影用テーブルに置く。
「これもどうぞと……」
ミアトが差し出してきた折りたたんだ布を受け取ったクレイが広げる。
「ランチョンマットか」
「スタンドを使った撮影なら、コースターを敷いてもいいかもしれないな」
ひりょの提案にミアトはさっと布のコースター出してきた。
「色々とあるんだな」
ぽつりと呟くオウガの言葉にミアトが頷く。
「……リアルブルーの人が出しているお店に行ってて、研究しました……」
カジュアルであるながらもどこか洗練されたようなリアルブルー出身者のカフェはミアト姉妹にとって驚きだった模様。
今のリゼリオでは当たり前の光景ではあるが、地方から来た者にしたら、驚きはあるようだ。
写真映えの試行錯誤しつつ、商品をカメラに収めていく。
「わぁ、どれも美味しそうね」
一口サイズに切り分けられた商品を見つつアイラが呟いた。
「シナモンみたいな辛味が隠し味だな」
アップルパイを食べたひりょが言えば、ミアトは隠し味を当てられたことに嬉しそうにはにかむ。
「コーヒーは苦めの豆を使っているのね。そのままが好きな人には向くけど、そうでなかったらカフェオレがお勧めね」
「甘いのがお好きだったら、砂糖と牛乳を煮詰めたものを入れてます……」
どうやらカフェオレがお勧めの模様。
「こっちのパイはほくほくしたところと、とろとろしたところがあって食感が楽しいですね」
パンプキンパイの食感にサクラの笑顔が綻ぶ。
「オー君、どうぞ」
「ありがと」
フィリテがオウガに小皿を渡す様子をファリフがじっと見て、隣にいたアイラに「もしかして?」と耳打ちをする。
「そう、もしかして」
二人の事情を知るアイラが頷くと、ファリフは「おぉ」とどこか驚いたように目を見開く。
「テトから聞いてはいたけど、仲がいいなって」
「アイツ、何喋ってんだよ……」
当然聞こえており、オウガはどこか複雑そうに呟いた。
「テトからは色々と教えてもらってるんだ」
へへへと、ファリフはエンジェルスマイルを浮かべる。
商品の写真撮影の後、木の板に写真を貼り付けて、皆で味のコメントを書き込む。
「枯葉が多いですね」
冬に差し込んだ頃の為、木枯らしに吹かれた枯葉が流れてくるので、掃除はしっかりと。
「まだ日差しがあってよかったよ」
サクラとクレイが屋台の前で掃き掃除をしている。
即席看板は通り沿いの蹴られない場所にとマリィアが置いておく。
「お客さん、来るといいね」
ピアレーチェの言葉にミアトは顔を真っ赤にして「は、はい」と頷いた。
屋台の場所は屋台があるメインストリートから少し離れた方にあり、人目にあまりつかないこともあってかお客の入りは少ないとの事。
開店当初も人通りが少なく、メインストリートでも人気なところは木枯らしと共に声が流れてくる。
道に出て、宣伝するべきかと悩んだ頃、一人の若い女性が現れた。
「いらっしゃいませ」
ひりょが応対すると、何処か疲れたような様子を見せる女性は店員の多さに目を瞬く。
「こんにちは……?」
別の店にでも来たかのような様子に気づいたサクラが「今日はお姉さんがお休みでして」と簡潔に告げると、納得した。
「そうだったんですね」
カフェオレを注文した女性はイートイン席に移動して座る。
「どうぞ」
アイラがブランケットを差し出すと、女性は「ありがとう」と言って受け取った。注文したカフェオレで一息つくと、笑顔になった。
寒い中での屋台巡りは身体が冷えるので、温かい飲み物は癒しである。
「メインストリートはどうなっているのかな?」
ピアレーチェが尋ねると、女性は「いつもよりにぎやかです」と答えた。
聖輝節は恋人たちのイベントという認識があり、様々な状況があった模様。彼女は目的のケーキ屋台があり、それを横目に通り過ぎようとしたが、何かと巻き込まれたりしてこの店にたどり着いたようだ。
「それは災難だったね……」
クレイが気を遣うと、女性は慌てたように手を振る。
「大丈夫です。今日こそは限定のケーキを買ってきます! ミアトちゃん、またね」
今回のケーキ屋台では限定ものやら、コンテスト出品物などがあると聞く。
温かい飲み物と気遣いに気持ちが復活した女性は再びメインストリートへと飛び込んでいった。
最初の客が出た後、メインストリートを一通り見終わっただろう客達がミアトの屋台へと足を向けてきていた。
先ほどまで人が来ないと思っていたが、一気に客が来たのだ。
ケーキ屋台目当ての甘いもの好き同行した甘いものが苦手な人の休憩先というのがこの屋台の主な客層。
甘味ではないメニューが多く売れている。看板の効果があって、軽食を取り扱っている屋台と分かってくれたようだ。
「お腹が空いたんだけど、甘いものばかりで悩んでいたんだ」
助かったと言った男性客は恋人だろう女性客と一緒。
「そうでしたか、ここのサンドイッチの具はローストチキンで、とても柔らかくてボリュームもあります。コーヒーはしっかりとした苦みで、カフェオレにしても美味しいですよ」
接客担当のフィリテが勧めると、男性客はホットコーヒーとサンドイッチで、女性客はカフェオレを注文した。
待っている間も試飲という名目で小さなカップでコーヒーもしくは紅茶が客に振舞われる。
「サンドイッチの在庫大丈夫か?」
別の客からも注文を受けたオウガが調理場の方へ声をかける。
「それよりも、ホットドッグは後五個」
調理場に入っていたマリィアが紙の束をオウガに渡す。
「看板のホットドッグのところにこの紙を刺してほしいの。これであと何個かお客にもわかるでしょ」
「つまり、注文が入ると、その分減っていることがすぐに分かるわけってことか」
納得したオウガが看板に貼ってあるホットドックの写真の辺りに紙束をピンで刺す。
「オウガ、フィリテ。休憩入るといいよ」
客が使用したカップを回収していたひりょが声をかける。
「休憩ついでにお水貰ってきて。フィリテちゃんと遠回りしてきたら?」
ふふふ♪と、意味ありげに笑うアイラはフィリテにポットを渡す。受け取ったのはいいが、からかわれてしまったフィリテは顔を赤くして俯いてしまう。
「聖輝祭は恋人たちの催しなんでしょ? ゆっくり休憩しておいでよ」
アイラと顔を合わせて笑うファリフがホットドックの注文が入って、看板に貼り付けている紙を一枚破ってポケットの中に紙を入れていた。
「おい、ファリフっ」
まさかの揶揄いにオウガも驚きつつも照れて顔を赤らめる。
微笑ましい店員さん達のやり取りに客もくすくす笑い出してしまう。
「さっさと行こうぜ」
逃げるが勝ちといわんばかりにオウガがフィリテの手握って歩き出す。
「青春ですね」
微笑むサクラは少なくなっていたホットドッグの注文があったことを知らせる。
「そうだね」
ピアレーチェも楽しそうに笑いつつ、並ぶ客が増えてきた事に気づき、通行人の邪魔にならないように誘導した。
食器が回らなくなりそうなので、ひりょが洗いかごを持ってメンバーに声をかける。
「洗い物行ってくる」
「手伝います」
「頼むね」
サクラが手伝いを申し出てくれて、二人は指定されたレストランへと向かう。
レストランの勝手口で声をかけると、店員から「好きに使って」と言ってもらったので、手早く洗い物を終わらせる。
「ミアトちゃん、大丈夫かい?」
タイミングを見計らってレストランの従業員が声をかけてきた。
「頑張ってます」
サクラが答えると、「それはよかった」と従業員はロールパンと小瓶が入った籠を渡してくれた。
「皆で食べて」
「ありがとうございます。皆でいただきます」
意外な差し入れにサクラは礼を言う。ひりょも拭き終わった洗い物を籠に入れ終わって、従業員に礼を告げて二人はその場を辞した。
「瓶の中はなんだろう?」
「ジャムでしょうか……」
休憩のお楽しみを抱えて持ち場へ戻っていく。
ひりょ達が屋台へ戻ってきた頃にはカップが足りなく、待たせるところだった。
「危機一髪だな」
「ありがとう、助かったよ」
調理場にいたクレイが洗い終わった食器が入った籠を受け取った。マリィアは休憩中の模様。
客の入りも落ち着いてきていたようだ。
今、イートイン席にいるのは二組。
老夫婦と若い女性二人だ。
傍らに箱があるので、屋台で買い物をして休んでいるのだろう。楽しそうにメインストリートの屋台で売り出されているケーキの話をしていた。
相当賑やかだったのだろうという会話の間にそれはケーキなのかという屋台の話や、ボールサイズのハムスターが「親衛隊」なる者達を引き連れていたという話が聞こえる。
臨時店員達は「あいつか……」と心の中で異口同音で同一人物ならぬ、同一幻獣を思い出していた。
日が暮れるころになると、ホットドッグとローストサンド、アップルパイは完売となっていた。
レストランでもらったロールパンと瓶ジャムは交代でたべていた。瓶の中身は杏ジャム。
ふんわりとしたパンにあんずジャムをのせて食べていた。
「ありがとうございました」
クレイが最後の客を見送ると、店員たちだけになる。
テーブルを拭いていたピアレーチェが調理場の方を向くと、ミアトが疲れ切った様子だ。
「今日は疲れました……大目に作ってよかったです……」
いつもより大入りだったのだろう。看板の宣伝効果も狙って多めに食材を仕入れていたようだ。
「呼び込みする暇もなかったね」
あははと笑うピアレーチェ。
「店じまいはそろそろでしょうか?」
サクラが尋ねると、ミアトは「そうですね」と返す。
「……皆さん、今日はありがとうございました……っ!」
顔を赤くしつつ、ミアトが皆に礼を言う。
「こ、こんなにお客さんが来てくれたのは、皆さんのおかげです……」
人前で話すのは苦手なのだろう、ぷるぷる震えてて、今にも倒れそうなミアトにフィリテが微笑む。
「お姉さんが風邪で倒れて不安だったでしょう……ミアトさんもお疲れ様でした。これ、お姉さんへお土産にどうぞ」
茶葉を渡されて、ミアトは「ありがとうございます」と笑った。
「大丈夫?」
マリィア・バルデス(ka5848)が心配すると、ミアトはこくこくと頷く。
「は、ひゃい……」
ミアトがカチコチに固まっている中、ファリフはオウガ(ka2124)とアイラ(ka3941)の再会の挨拶だけではなく、ハンターに囲まれている。
「こんな服とかどうかな」
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)が取り出したのはリアルブルーのサンタクロースのようなワンピース。厚手の布地で縁に白いファーがついた温かそうな色あいだ。
「温かそうだね」
「リアルブルーでいうところの聖輝節は、クリスマスっていうんだって」
クリスマスの言葉はファリフも聞いた事がある。
「こんな服はどうかな? フリルの服とかも似合うと思うけど」
サクラ・エルフリード(ka2598)が出してきたのは可愛らしいエプロンドレスだ。
「わぁ! ファリフくん、似合うよー!」
服を合わせてみて、アイラがはしゃぐ。中性的で可愛らしい顔立ちであるので、エプロンドレスも似合っている。
「着てみましょ。お店の店員だし、冒険者の服よりこっちのほうがお客も来やすいと思う」
フィリテ・ノート(ka0810)の助言にファリフはすぐに納得した。
「わかったよ。フィリテさん」
試着するんだなと気を利かせたクレイ・ルカキス(ka7256)が「廊下で待ってる」と言って廊下にてしばし待ってもらう。
ドアの向こうより女性陣の「可愛い」「こっちも!」というはしゃぐ声が普通に聞こえるのは不可抗力だ。
着替え終わったからと、男性陣が中へ戻れば、エプロンドレス姿で髪を梳かされているファリフがいた。
「フリルのある服に抵抗はないんだね」
鳳凰院ひりょ(ka3744)が言えば、ファリフは思考しつつ、首を傾げる。
「ボクは赤き大地の戦士だからね。服は動きやすくて丈夫なものがいいけど、戦いにはいついかなる場合にもあるから、どんな時でも備えないとね」
どうやら、細かいこだわりはないようだ。今着ているエプロンドレスも足元が温かくていいと、好感触だ。
「あの大精霊さんが気に入るのもわかるわー。とっても可愛いもの」
青灰の変態歪虚は置いといて……と、アイラは脳内に差し込む黒い目線入り某歪虚のシルエットを追い出しつつ、ファリフに抱きつく。
「お化粧もしない? 折角だもの」
アイラの提案にファリフは快諾した。
控えめな化粧を施してもらい、はねた横髪は耳の後ろで飾りピンで留めて貰う。
「ボクはこういうのがよくわからないけど、お客さん、来るかな?」
小首を傾げるファリフに全員が太鼓判を押す。
普段は赤き大地の戦士にして、有力部族を率いる族長であるファリフだが、今のように無垢で可愛らしい様子はまだまだ少女のようである。
可愛らしいカフェの女給娘さんとなったファリフ姿をカメラに映していく。
ハンターオフィスを出てから、ファリフの女給姿は人の目に止まっていた。
ミアトの屋台へ向かっている中、ファリフを知っている者が驚いた様子を見せていたりする。
「向こうのイートイン付き屋台にいるよ。後で来てね!」
すかさずピアレーチェが手を振り、宣伝をする。
「宣伝って大事だよね」
「まだ準備前なので、あまり派手に宣伝してはお客さんを待たせてしまうかもしれない」
納得するファリフにクレイがそっと止める。屋台のコンセプトを考えて、ファリフは開店してからした方がいいと納得した。
屋台はまだ片づけている状態で、まずはテーブルや椅子を出さなくてはならない。
「ミアト。さっそくだけど、メニューにある商品を一品ずつ、すぐに出せる?」
机を並べる前にマリィアが声をかけた。
「何を……?」
きょとんとするミアトにマリィアが向けたのは魔導カメラ。
「これで写真を撮って、即席の看板にするの。どういう物を販売しているのか、視覚に訴えた方が分かりやすいのよ。あと、味見をしてどんな味かというのを客に伝えるのも店員の仕事だしね。なんなら全種類1個分お金を払うから」
マリィアの説明にミアトは宣伝に気づき、「お代は大丈夫です。わかりました」と言って慌てて調理場に入って用意を始める。
「僕も手伝うよ」
調理場に飛び込んだミアトにクレイが声をかけていた。
「あ、ありがとうございます……」
緊張しながらもミアトはクレイへ手伝って貰もらう。
「試食の前に写真を撮らせて。お客に出す状態で撮りたいから。試食はその後で」
マリィアが言えば、客に出す状態の上で皿に出してきた。
「これ、借りてもいい?」
調理場とイートインを仕切るカウンター部分に置いてあったコーンスタンドをマリィアが手に取り、撮影用テーブルに置く。
「これもどうぞと……」
ミアトが差し出してきた折りたたんだ布を受け取ったクレイが広げる。
「ランチョンマットか」
「スタンドを使った撮影なら、コースターを敷いてもいいかもしれないな」
ひりょの提案にミアトはさっと布のコースター出してきた。
「色々とあるんだな」
ぽつりと呟くオウガの言葉にミアトが頷く。
「……リアルブルーの人が出しているお店に行ってて、研究しました……」
カジュアルであるながらもどこか洗練されたようなリアルブルー出身者のカフェはミアト姉妹にとって驚きだった模様。
今のリゼリオでは当たり前の光景ではあるが、地方から来た者にしたら、驚きはあるようだ。
写真映えの試行錯誤しつつ、商品をカメラに収めていく。
「わぁ、どれも美味しそうね」
一口サイズに切り分けられた商品を見つつアイラが呟いた。
「シナモンみたいな辛味が隠し味だな」
アップルパイを食べたひりょが言えば、ミアトは隠し味を当てられたことに嬉しそうにはにかむ。
「コーヒーは苦めの豆を使っているのね。そのままが好きな人には向くけど、そうでなかったらカフェオレがお勧めね」
「甘いのがお好きだったら、砂糖と牛乳を煮詰めたものを入れてます……」
どうやらカフェオレがお勧めの模様。
「こっちのパイはほくほくしたところと、とろとろしたところがあって食感が楽しいですね」
パンプキンパイの食感にサクラの笑顔が綻ぶ。
「オー君、どうぞ」
「ありがと」
フィリテがオウガに小皿を渡す様子をファリフがじっと見て、隣にいたアイラに「もしかして?」と耳打ちをする。
「そう、もしかして」
二人の事情を知るアイラが頷くと、ファリフは「おぉ」とどこか驚いたように目を見開く。
「テトから聞いてはいたけど、仲がいいなって」
「アイツ、何喋ってんだよ……」
当然聞こえており、オウガはどこか複雑そうに呟いた。
「テトからは色々と教えてもらってるんだ」
へへへと、ファリフはエンジェルスマイルを浮かべる。
商品の写真撮影の後、木の板に写真を貼り付けて、皆で味のコメントを書き込む。
「枯葉が多いですね」
冬に差し込んだ頃の為、木枯らしに吹かれた枯葉が流れてくるので、掃除はしっかりと。
「まだ日差しがあってよかったよ」
サクラとクレイが屋台の前で掃き掃除をしている。
即席看板は通り沿いの蹴られない場所にとマリィアが置いておく。
「お客さん、来るといいね」
ピアレーチェの言葉にミアトは顔を真っ赤にして「は、はい」と頷いた。
屋台の場所は屋台があるメインストリートから少し離れた方にあり、人目にあまりつかないこともあってかお客の入りは少ないとの事。
開店当初も人通りが少なく、メインストリートでも人気なところは木枯らしと共に声が流れてくる。
道に出て、宣伝するべきかと悩んだ頃、一人の若い女性が現れた。
「いらっしゃいませ」
ひりょが応対すると、何処か疲れたような様子を見せる女性は店員の多さに目を瞬く。
「こんにちは……?」
別の店にでも来たかのような様子に気づいたサクラが「今日はお姉さんがお休みでして」と簡潔に告げると、納得した。
「そうだったんですね」
カフェオレを注文した女性はイートイン席に移動して座る。
「どうぞ」
アイラがブランケットを差し出すと、女性は「ありがとう」と言って受け取った。注文したカフェオレで一息つくと、笑顔になった。
寒い中での屋台巡りは身体が冷えるので、温かい飲み物は癒しである。
「メインストリートはどうなっているのかな?」
ピアレーチェが尋ねると、女性は「いつもよりにぎやかです」と答えた。
聖輝節は恋人たちのイベントという認識があり、様々な状況があった模様。彼女は目的のケーキ屋台があり、それを横目に通り過ぎようとしたが、何かと巻き込まれたりしてこの店にたどり着いたようだ。
「それは災難だったね……」
クレイが気を遣うと、女性は慌てたように手を振る。
「大丈夫です。今日こそは限定のケーキを買ってきます! ミアトちゃん、またね」
今回のケーキ屋台では限定ものやら、コンテスト出品物などがあると聞く。
温かい飲み物と気遣いに気持ちが復活した女性は再びメインストリートへと飛び込んでいった。
最初の客が出た後、メインストリートを一通り見終わっただろう客達がミアトの屋台へと足を向けてきていた。
先ほどまで人が来ないと思っていたが、一気に客が来たのだ。
ケーキ屋台目当ての甘いもの好き同行した甘いものが苦手な人の休憩先というのがこの屋台の主な客層。
甘味ではないメニューが多く売れている。看板の効果があって、軽食を取り扱っている屋台と分かってくれたようだ。
「お腹が空いたんだけど、甘いものばかりで悩んでいたんだ」
助かったと言った男性客は恋人だろう女性客と一緒。
「そうでしたか、ここのサンドイッチの具はローストチキンで、とても柔らかくてボリュームもあります。コーヒーはしっかりとした苦みで、カフェオレにしても美味しいですよ」
接客担当のフィリテが勧めると、男性客はホットコーヒーとサンドイッチで、女性客はカフェオレを注文した。
待っている間も試飲という名目で小さなカップでコーヒーもしくは紅茶が客に振舞われる。
「サンドイッチの在庫大丈夫か?」
別の客からも注文を受けたオウガが調理場の方へ声をかける。
「それよりも、ホットドッグは後五個」
調理場に入っていたマリィアが紙の束をオウガに渡す。
「看板のホットドッグのところにこの紙を刺してほしいの。これであと何個かお客にもわかるでしょ」
「つまり、注文が入ると、その分減っていることがすぐに分かるわけってことか」
納得したオウガが看板に貼ってあるホットドックの写真の辺りに紙束をピンで刺す。
「オウガ、フィリテ。休憩入るといいよ」
客が使用したカップを回収していたひりょが声をかける。
「休憩ついでにお水貰ってきて。フィリテちゃんと遠回りしてきたら?」
ふふふ♪と、意味ありげに笑うアイラはフィリテにポットを渡す。受け取ったのはいいが、からかわれてしまったフィリテは顔を赤くして俯いてしまう。
「聖輝祭は恋人たちの催しなんでしょ? ゆっくり休憩しておいでよ」
アイラと顔を合わせて笑うファリフがホットドックの注文が入って、看板に貼り付けている紙を一枚破ってポケットの中に紙を入れていた。
「おい、ファリフっ」
まさかの揶揄いにオウガも驚きつつも照れて顔を赤らめる。
微笑ましい店員さん達のやり取りに客もくすくす笑い出してしまう。
「さっさと行こうぜ」
逃げるが勝ちといわんばかりにオウガがフィリテの手握って歩き出す。
「青春ですね」
微笑むサクラは少なくなっていたホットドッグの注文があったことを知らせる。
「そうだね」
ピアレーチェも楽しそうに笑いつつ、並ぶ客が増えてきた事に気づき、通行人の邪魔にならないように誘導した。
食器が回らなくなりそうなので、ひりょが洗いかごを持ってメンバーに声をかける。
「洗い物行ってくる」
「手伝います」
「頼むね」
サクラが手伝いを申し出てくれて、二人は指定されたレストランへと向かう。
レストランの勝手口で声をかけると、店員から「好きに使って」と言ってもらったので、手早く洗い物を終わらせる。
「ミアトちゃん、大丈夫かい?」
タイミングを見計らってレストランの従業員が声をかけてきた。
「頑張ってます」
サクラが答えると、「それはよかった」と従業員はロールパンと小瓶が入った籠を渡してくれた。
「皆で食べて」
「ありがとうございます。皆でいただきます」
意外な差し入れにサクラは礼を言う。ひりょも拭き終わった洗い物を籠に入れ終わって、従業員に礼を告げて二人はその場を辞した。
「瓶の中はなんだろう?」
「ジャムでしょうか……」
休憩のお楽しみを抱えて持ち場へ戻っていく。
ひりょ達が屋台へ戻ってきた頃にはカップが足りなく、待たせるところだった。
「危機一髪だな」
「ありがとう、助かったよ」
調理場にいたクレイが洗い終わった食器が入った籠を受け取った。マリィアは休憩中の模様。
客の入りも落ち着いてきていたようだ。
今、イートイン席にいるのは二組。
老夫婦と若い女性二人だ。
傍らに箱があるので、屋台で買い物をして休んでいるのだろう。楽しそうにメインストリートの屋台で売り出されているケーキの話をしていた。
相当賑やかだったのだろうという会話の間にそれはケーキなのかという屋台の話や、ボールサイズのハムスターが「親衛隊」なる者達を引き連れていたという話が聞こえる。
臨時店員達は「あいつか……」と心の中で異口同音で同一人物ならぬ、同一幻獣を思い出していた。
日が暮れるころになると、ホットドッグとローストサンド、アップルパイは完売となっていた。
レストランでもらったロールパンと瓶ジャムは交代でたべていた。瓶の中身は杏ジャム。
ふんわりとしたパンにあんずジャムをのせて食べていた。
「ありがとうございました」
クレイが最後の客を見送ると、店員たちだけになる。
テーブルを拭いていたピアレーチェが調理場の方を向くと、ミアトが疲れ切った様子だ。
「今日は疲れました……大目に作ってよかったです……」
いつもより大入りだったのだろう。看板の宣伝効果も狙って多めに食材を仕入れていたようだ。
「呼び込みする暇もなかったね」
あははと笑うピアレーチェ。
「店じまいはそろそろでしょうか?」
サクラが尋ねると、ミアトは「そうですね」と返す。
「……皆さん、今日はありがとうございました……っ!」
顔を赤くしつつ、ミアトが皆に礼を言う。
「こ、こんなにお客さんが来てくれたのは、皆さんのおかげです……」
人前で話すのは苦手なのだろう、ぷるぷる震えてて、今にも倒れそうなミアトにフィリテが微笑む。
「お姉さんが風邪で倒れて不安だったでしょう……ミアトさんもお疲れ様でした。これ、お姉さんへお土産にどうぞ」
茶葉を渡されて、ミアトは「ありがとうございます」と笑った。
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相談 フィリテ・ノート(ka0810) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/12/06 02:17:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/12/05 08:29:27 |