【初夢】CAMは電気未年の夢を見るのか

マスター:篠崎砂美

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~15人
サポート
0~15人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2015/01/08 15:00
完成日
2015/01/14 18:32

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「メインジェネレータ、出力安定。各部アクチュエータ正常。音響モニタ、光学センサー、オンへ。オートバランサー正常。ハンガーフック、オフ。バランス異常なし」
 輸送時固定用ハンガーのフックが外れ、CAMの機体が自由になり、自分の二本の足で床を踏みしめる。
「対物センサー解析終了。ルートマッピング完了。移動を開始する」
 そばにいるメカニックに外部音声スピーカーで報告すると、パイロットはゆっくりとCAMを前進させた。輸送用コンテナから、巨大な人型機械が港町へと進んでいく。
「じゃあ、行ってくる」
 右手で荷物のバランスを取りつつ、あいている左手でCAMがメカニックたち合図を送った。そのままヴァリオスの大通りをゆっくりとした歩行で移動していく。

「何かしら、朝から変な音が聞こえるけれど……」
 重い物で道路の地ならしでもしているような音が、間断なく聞こえてくる。近所迷惑だと、少女が部屋の窓を開けた。
「ああ、いいところへ。魔術学院って、どっちの方ですか?」
 箱の中の椅子に座った、ぴっちりした服装の若者が、唐突気味に少女に訊ねてきた。
「ええっと、この先を右ですけど……。でも、ここ、三階……」
「どうもありがとうございます」
 そう若者が言うと、箱の蓋が閉まって、大きな顔が現れた。
「鉄の巨人!?」
 驚く少女を残して、CAMが魔術学院の方へと去って行く。
 多数の人々の注目を集めつつ、CAMは魔術学院に辿り着いた。
「来た来た、もう、待ちくたびれたわよ」
 わらわらと魔術学院の教師や生徒たちが建物から出てくる。その眼前に、CAMが、運んできた荷物をそっと下ろした。
「ええと、ラーメン100人前でしたね。器は明日引き取りにおうかがいします。では、まいどありー」
 出前のパイロットがそう言うと、CAMは反転して港へと戻っていった。

「って、なんなんだあ、この夢は!」
 サルヴァトーレ・ロッソの官舎で飛び起きたパイロットが、勢いよく二段ベッドの上段の底に頭をぶつけてうずくまった。
 新年早々、へんてこな夢を見たものだ。だいたいにして、なんでCAMでラーメンを出前しなくてはならない。絶対に正夢にはなってほしくない……、ああ、でも、夢に出てきた女の子は可愛かったとちょっと考えなおす。なぜか、彼女が住んでいた建物は鮮明に覚えていた。
「今度の休みに、ちょっとヴァリオスに行ってみるかな……」

リプレイ本文

●夢の1
 これは、夢?
 いや、そうであって、そうではない。
 このCAMは、夢で操縦するのだ。
 特殊なベッドの中で、クオン・サガラ(ka0018)は思考した。
 クリムゾンウエストで完成されたCAMノイ・ヴァルキュリア。
 従来より小型なこの機体は、コックピットを持たない。アバターシステムという特殊なベッドの中から、思考で遠隔操作するのだ。
「リンク、スタート。各部同期チェック。システム、オールグリーン。出撃する」
 クオンの思考を読みとって、スムーズにCAMが歩きだした。
 格納庫を出た所で、飛行に移行する。
 すぐに、僚機が編隊を組んできた。旧型機と比べ、疑似反重力で翼もなしで飛行するノイ・ヴァルキュリアは異質だ。女性的なフォルムは華奢だが、呪術的に精錬されたレアメタル装甲は頑強である。背部に翼状に装備された六つの大剣、ソードオブビクトリーは、パイロットの思考によって斬撃・実弾・ビームと、遠隔で多彩な自立同時多重攻撃ができる。
 まさに最強とも言えるが、その分扱いが繊細すぎた。ちょっとしたパイロットの思考の乱れをも拾ってしまうのだ。
『今日は、うまくやってくれよ』
 先日の模擬戦で串刺しにされかけた同僚が言ってきた。
「努力します」
 クオンの返答に、同僚の苦笑が漏れ聞こえてきた。やがて、演習場である都市の廃墟に到着する。そして、敵が現れた。

●夢の2
「完成だあ~」
 アレア=レアーレ(ka1339)が、思わずバンザイをする。
 ついにオリジナルイコンを完成させたのだ。
 ミサイルランチャーにパイルバンカー。もちろん、自爆装置は基本である。オプションとしては、大出力のレールガン。ロマン武装は必要だ。そうだ、隠し機能もつけよう。
「ハーイテンショーン!!」
 一週間の完徹の頭は、すでに制御不能である。
 最終的に完成した物は、巨大重装甲な自走要塞砲だった。だが、あくまでもこれはCAMだと言いはろう。
 後は実戦あるのみ。それには、あの女が最適だろう。彼女であれば、たとえ自爆装置で吹き飛んでも、アレアは欠片も良心の呵責を感じないはずだ。その名は……。
「敷島 吹雪(ka1358)、行くであります!」
 吹雪の雄叫びで、砲台CAMが移動を開始する。
「ここはコンクリートでできたジャングルであります。どこからゲリラが襲ってくるか分からないであります。よって、すべてを殲滅するのであります!」
 言うなり、吹雪が、全砲門一斉発射で周囲を焼き払った。半分崩れかかったビル群が粉々に吹き飛び、その場にいたCAMの部隊をも、一撃で葬り去った。
「バカな、これは模擬戦のはずでは……」
 爆散した僚機を見て、クオンが絶句した。
「街を火の海にできるなんて、とても楽しいであります! おや、まだCAMがいるであります? 自分の攻撃を避けるだなんて、憎い、憎いであります!!」
 吹雪が、クオンにむかって、ミサイルを全弾発射した。
 即座に、クオンが分離したSOVのビームでミサイルを迎撃する。ならばと、レールガンを発射しながら、吹雪が突っ込んできた。
 予測不可能な機動で回避しながら、クオンが一気に接近する。大型武器しかない敵など、接近してしまえば何もできないはずだった。
「甘いであります」
 吹雪のパイルバンカーがノイ・ヴァルキュリアの脇腹に押しつけられた。決まったかと思われたが、SOVの実弾が、パイルバンカーごと腕を吹き飛ばしていた。
「だが、しかし、であります!」
 まさに奥の手を出して、吹雪が六本の隠し腕でノイ・ヴァルキュリアの機体を押さえ込んだ。
「自爆!?」
 突然の高エネルギー反応に、クオンがSOVを敵に突き立てて隠し腕を切り離した。即座にその場から離れる。
「リア充爆発しろであります!」
 意味不明の言葉と共に、吹雪が自爆した。

●夢の3
「次はこちらです」
 旗を持ったガイドさんの先導で、レホス・エテルノ・リベルター(ka0498)たちはサルヴァトーレ・ロッソの格納庫を移動していった。
 ああ、今はCAMの見学会なのだと、レホスが唐突に思い出す。
「わあ、凄い。これがCAMなんですよね。もっと近くで見てもよろしいでしょうか」
 マルカ・アニチキン(ka2542)が、キラキラと目を輝かせて叫んだ。
 見学者はみんなクリムゾンウエストの人たちのようで、初めて見るCAMに興味津々のようだ。マルカなど、CAMの周囲をグルグル回ったり、機体に恐る恐るさわったりしている。
 自分が初めてCAMを見たときのことを思い出して、レホスがマルカに微笑んだ。
 そういえば、最後にCAMを見たのはいつだっただろうかとレホスは思う。確か、あれは船を下りる前……。
 格納庫は、そのころとあまり変わりがないように見える。
 居ならぶCAMの数々……。それらをフェオ(ka2556)が、せわしなくメンテナンスを行っていた。
「まったく、なんでこんなに壊れているんです。直しても直しても追いつかないじゃないですか」
 いつの間にか三人に分裂したフェオがぶつぶつと文句を言った。優秀なので、並のメカニック三人分と言うことらしい。
「まだ二十機もあるらしいですよ」
「えー、冗談じゃないです」
「もう部品ありませんよ」
 空っぽの工具箱を蹴飛ばして、フェオ3がフェオ1とフェオ2に言った。
「じゃあ、このいかれた関節はどうするんですか」
「だいたい、こんな使い方をするパイロットはお仕置きです」
「うんうん」
 困った困ったと言いながら、三人のフェオが額を寄せ合った。
 そんな格納庫の隅に、レホスは懐かしい機体を見つけた。
「あれは、ボクの乗っていたデュミナス?」
 その機体は、まるで時間が止まっていたかのように、最後の出撃で受けた損傷がそのまま残されていた。
「君はまだ直してもらえてないんだね」
 傷だらけの装甲にそっと手をおいて、レホスはつぶやいた。資材不足の中、ともすれば分解されて保守部品になっていたかもしれないのに、この機体はここにあった。いや、ここで待っていてくれた。
 冷えた装甲板にさわっていると、昔の光景が思い出される。地球は今どうなっているのだろうか。親しかった人たちは無事なのだろうか。ボクは今、誰かを守れているのだろうか。CAMを降りた自分は、これで正しかったのだろうか。
 そんなことを思っていると、ふいに装甲板が暖かくなってきた。手のぬくもりが伝わっただけなのかもしれないが、なんとなく、デュナミスが息を吹き返したようで、レホスはそっと目を細めた。
「またいつか、キミと一緒に戦えるといいな」

●夢の4
「みんなー! 今日は来てくれてありがとー!」
 ショッキングピンクに塗られたCAMの前にあるステージで、コリーヌ・エヴァンズ(ka0828)が観客たちに呼びかけた。
 キャミーと名づけたCAMと結成したアイドルコンビのコンサートの真っ最中だ。
『ありがとー』
 目映いスポットライトの中、コリーヌと一緒にキャリーが観客たちにむかって手を振る。搭載されたAIのおかげで、自立行動や会話もできる歌って踊れるCAMなのだ。
 廃棄されたCAMだが、コリーヌの魔改造のおかげで、非戦闘用アイドルCAMとして再デビューしたのだ。
「みんなのために、私もキャミーちゃんも全力で頑張っちゃうんだよー! じゃあ一曲目だよ!」
 大音響の音楽と共に、コリーヌが踊りだした。それに合わせて、後ろでキャリーも踊りだす。コリーヌが歌いだせぱ、キャリーもバックコーラスをつける。まさに、二人はコンビだ。
 生き生きとコンサートを続ける二人に、観客も熱狂していた。今日も、コンサートは大成功だ。

 熱狂が冷め、二人の周りはのどかな静けさに満ちていた。コンサートが終わってから大して時間は経っていないのに、すでにちょっと懐かしい。
「今日も頑張っちゃったねー、キャミーちゃん」
 CAMの肩に乗って、コリーヌが言った。夕日に照らされて、今は二人共同じオレンジ色だ。
『肯定です。よく頑張りました。でも、マスター。最後の方、一回だけミスしましたね?』
「あーうー、相変わらずチェックが厳しいんだね……」
 容赦のない相棒の突っ込みに、てへへっとコリーヌが頭を掻いてごまかした。

●夢の5
 歪虚との戦いにおいて、人類は規模においても個体能力においても劣勢を強いられてきていた。総力戦となれば、勝ち目はない。だが、それをひっくり返す存在、それがCAMであった。
 人類は新たなるCAMの開発を急ぎ、魔導アーマーとの技術統合、新たなエネルギー鉱脈の発見、生産工場の建設など、その配備に努力してきた。おかげで、現在はCAMの総数も揃い、個人で所有する者も多数現れた。
 反攻の機は整ったのだ。
『フォーメーションを組め。我が傭兵隊は制空権を確保する』
 隊長機からの命令が響き渡る。
「了解」
 サルバトーレ・ロッソを発進したザレム・アズール(ka0878)のCAMは、空中で僚機と隊形を整えた。CAMを個人所有するハンターたちの傭兵部隊、その中核の存在としてザレムはここにいる。
『ファーストターゲット、敵ワイバーン集団。カトンボ共を叩き落とせ!』
 一斉にCAMの編隊がアフターバーナーを開いた。
 新型のフライトユニットによって、CAMはクリムゾンウエストの大空を支配する存在となっていた。ワイバーンなど、一捻りだ。
「だが、油断は禁物だ……」
 ザレムが何を感じとったとき、僚機が火炎の直撃を受けた。
「下がれ! あいつは……」
 僚機に後退を命じたザレムが、前方のひときわ大きな敵を見据えた。ドラゴンだ。そして、その背に乗る巨大な人影。いや、それは人ではない。今まで何度もザレムに煮え湯を飲ませた、仲間たちの仇……。
「今日こそは!」
 ライフルとブレスを互いに放ちつつ、めまぐるしい機動で両者が戦いを始めた。まるでこの世に上下などないような戦いは、他者の入り込む余地を見せない。やがて間合いが詰まり、鋼鉄の爪と高周波の唸りをあげる剣が激突し、凄まじい火花を周囲に撒き散らした。
 その瞬間、敵の口角がわずかにあがるのを見て、ザレムが大声でその名を叫んだ。

●夢の6
「オウル1より各機へ。敵ヴォイド集団を発見。これより情報収集行動に移る」
 強行偵察小隊を率いていたアバルト・ジンツァー(ka0895)が、配下の各CAMに命じた。
 この宙域でのヴォイド発見報告は多い。何かしらの巣があるのではないかとも言われている。
 小惑星に身を隠しながら、アバルトの小隊は、ヴォイドとの距離をつめていった。
 発見されるぎりぎりの距離を保ちながら、ベテランの偵察小隊は情報収集を続けていった。だが、今日は全機がベテランというわけではなかった。
「なんだ、今の爆発は!?」
 突然起きる爆発の閃光に、アバルトが怒鳴った。
 たまさかこちらをむいた敵に、発見されたと判断した新人のオウル4が、先制攻撃をしかけたのだ。
 判断は素早い。だが、その判断は、偵察小隊としてはとても正しいと言えるものではなかった。
 当然のように、オウル4は宙域のすべての敵に、その存在を知られてしまった。
「発砲は許可していないぞ! 各機、即時離脱行動に移れ。オウル2は、自分と一緒に牽制攻撃を行う。追ってくる敵があれば、オウル3が狙撃せよ」
 素早く指示を与えると、アバルトたちがミサイルを発射した。爆発の閃光と共に、砕けた小惑星の破片が、ヴォイドたちへの目くらましとなった。
「隊長、私は……」
「全機撤退。殿は自分が務める」
 自らも戦おうとするオウル4を無視して、アバルトが命じた。
 全力で宙域を離脱し、サルヴァトーレ・ロッソの勢力内へと帰り着く。全員生還できたのは、奇跡と言ってよかった。
「生きて帰れて何よりだ。だが、オウル4、今回は運がよかった。次はないと肝に銘じておけ」
 アバルトは、そうオウル4に強く言った

「まいったな。今ごろ、あのときの夢を見るとは。だが、夢はしょせん夢だ……」
 目を覚ましたアバルトは、疲れたように言った。
 あのとき、奇跡などは起きなかった。
 他の部下の命を守るため、被弾したオウル4を切り捨てたのだ。あの娘は、あのとき、どう思っていたのだろうか。
 だが、それすらも、無数にある悲劇の一つでしかなかった。
「何も、特別な夢ではない……な」
 アバルトは、そう自分自身に言い聞かせた。

●夢の7
「なるほど。これがすべての鍵なのですね」
 CAMの心臓部、禁断のブラックボックスを前にして、天央 観智(ka0896)が感嘆の声をあげた。
 CAMは異質なのだ。どのような原理で動いているのか、動力のマテリアルエンジンからして不思議である。化石燃料を精製する燃料にしても、その原理を知る者は誰もいない。いや、ただ一人、トマーソ教授だけであるが、彼がいない今となっては、確ためる術はない。
 CAMだけではない。反重力機関の謎もまた、深い闇の中である。
 いったい、地球の技術だけで、どうやってこれらを実現したのであろうか。
 それらの秘密を暴くことができれば、今現在サルヴァトーレ・ロッソやCAMを縛っている制約がなくなる。
 ブラックボックスの中に、すべての答えがあるのだ。
 それを求めて、観智はブラックボックスを開いた。
「えっ? いや~ん」
 ブラックボックスの中にいた小人さんが、恥ずかしそうに観智を見あげた。

●夢の8
「状況終了……」
 メリエ・フリョーシカ(ka1991)は、殲滅された敵ヴォイド群を見渡した。CAMによる攻撃によって、原形を残している敵は一つもない。
 もう、CAMがいればすべていいんじゃないかと思う。だが、だとしたら、私たちはなんなのだろうか。あのカラクリ仕掛けが到着するための時間稼ぎの捨て駒。それだけの存在か。
 CAMが普及してからずいぶんと経つ。今や、戦闘の花形はすべてCAMだ。喝采を浴びるのもCAMだけである。
 それは、勝利は私たちの物だ。CAMも、共に戦った仲間……だ。
 いや、本当にそうだろうか。CAMのパイロットたちは、本当にそう思っているのだろうか。
 少なくとも、私は……、そうは……思っては……いない。
『下がれ! 後は俺たちに任せろ!』
 この言葉に、すべてが込められてはいないだろうか。
 いくらCAMが普及したからと言って、すべてのハンターがそれを所持しているわけではない。
 だから、なんだと言うのだ。
 きっと、これは……。

「また、なんだって、こんな夢を見るかな……」
 目を覚ましたメリエは、軽く額を押さえた。
 CAMを見る度にかかえるこの思い、その正体に気づいたからだ。それは、嫉妬だった。

●夢の9
「それで、どうしてこうなったのですか……」
 目の前にでーんとそびえ立つCAMを見あげて、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)が絶句した。
 確か、愛用の斧をアイテム強化に出したら、大きくなったので宅配しておきますとは聞いたのだが。なぜ、斧がドミニオンに変化する……。
「これは、なんですか?」
 そこへレイの姉であるガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)がやってきた。
「……か、川で、拾いました」
 思わず、レイがごまかした。
「まあ、川で。わたくしも同じ物がほしいでございます、姉上」
 いつの間にか、庭で芝刈りをしていたメリル・E・ベッドフォード(ka2399)までもがやって来た。CAMを見て、物欲しそうにガーベラに言ったが、華麗にスルーされた。
「そうですか。では、拾ってきたあなたが面倒をみるのですよ」
 自宅の隣にある巨大な犬小屋を指して、ガーベラがレイに言った。
「わ、分かりました……」
 引きつりながらレイが答える。
「仕方がございません。わたくしの分は、自分で拾いに行って参ります」
 無視されたメリルが、諦めて一人で川の方へとむかった。
「あら、でも、このCAMには着る物がなくてはおかしいですわね」
 唐突に、ガーベラが変なことを言いだす。
「用意なさい」
 ガーベラがそう言うと、いつの間にかできていた研究所と書かれた建物の中へ、召し使いのゴーレムが何やら怪しい液体を運び込んでいった。研究所の中から、怪しい臭いと、ごーりごーりという嫌な音が聞こえてくる。
「まあ、レイの家族になるのですか」
『はい』
 なぜか、ガーベラがなんの疑問もいだかずにCAMと会話している。というか、なぜ返事をする、CAMよ。
「のぞいてはダメですよ」
 そう言って、ガーベラがCAMと一緒に中へ入る。ダメと言われれば、見たくなるものだ。レイは、そっと中をのぞいた。
「でも、0時になる前に、この服を着たままここへ戻ってくるのですよ。そうでないと……」
 中では、キラキラひらひらの爆発装甲をつけたCAMがクルクルと回っていた。
『見ましたね』
 レイに気づいたCAMが振り返った。ガラスの靴を履いたCAMが、靴を踏み砕いて倒れる。
『あっ』
 そのとたん、すべてが吹っ飛んだ。

「ふんふふん♪」
 巨大な魔方陣を前にして、メリルが鼻歌を歌っていた。
 魔方陣の中にはレイとガーベラが横たえられていて、結界の中には特製のスリープクラウドが充満している。
 はずだったのだが、どこかから漏れているらしく、スリープクラウドは部屋中に充満していた。
 当然、メリルもバッタリ倒れて夢の中へ直行である。
 いや、この実験自体も夢の中の出来事ではないのか?
 いったい、現実はどこにあるのだろう。

●夢10
「はははは、これぞ、究極のカスタム機だ」
 サーキットのピットに停められたレーシング用CAMの足を叩いてピットクルーが言った。
「ボディはすべてドライカーボン製。フレームはアルミ製。腕はカーボンフレームだ」
 要は極薄装甲のハリボテのような物だ。
 ピットに並んでいるCAMは、各ワークスチームごとに異なるデザインに仕上げられていた。それらを見ているだけでも楽しい。
「じゃあ、さっそく乗ってみます」
 わくわくしながら、ミネット・ベアール(ka3282)がコックピットに滑り込んだ。
 シートが固い……。それ以外にも、FCSはない、武器はない、何もないのないないづくしで、徹底した軽量化が行われていた。これは、戦闘以前に、長時間の操縦もきつそうだ。
 エンジンが始動する。爆音が響いた。静音やステルスなど、この機体の辞書にはない言葉だった。
「もっと回転数あげないと、動かねえぞ!」
 クルーに言われて、ミネットがスロットルを開く。爆音が轟音になった。
「行きます……きゃあ!!」
 発進したとたん、凄まじい加速にミネットが顔をゆがめた。シュタタタタタと、CAMがありえないスピードでサーキットを走る。
「す、凄いです……速く走るためだけのCAM……こんなの扱いきれません……」
 そのまま、カーブも曲がらずにミネットはどこまでもまっすぐに走っていった。

●夢11
 なんだろう、今すぐ側を凄くうるさいCAMが猛スピードで走り抜けていったような気がする……。
 野原に停めたCAMのコックピットの中で寝っ転がっていたルドガー・フィン・ガーランド(ka3876)が、迷惑そうに視線を動かした。
 胸部ハッチはオープンにしているので、周囲の音や風がよく分かる。
 なにか、遠くの方で爆発音が聞こえたような気もするが、まあ、半分眠りこけているので、夢か何かだろう。どこかの研究所が吹っ飛んだとしても、気にすることもない。
 変なBGMとともに、別の研究所がパカッと割れて、中から変な重装備CAMが出てきたような気もするが、すぐに吹き飛んだので、これも夢だ。夢だ、夢。
 空の彼方で閃光が燦めき、遠く明るい歌が聞こえてくる。
「人は、夢が見られるだけ、幸せだな」
 大きくアクビをしながら、ルドガーはそうつぶやいた。

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重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 理由のその先へ
    レホス・エテルノ・リベルター(ka0498
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 蝶のように舞う
    コリーヌ・エヴァンズ(ka0828
    エルフ|17才|女性|霊闘士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • カラミティ
    アレア=レアーレ(ka1339
    人間(蒼)|14才|女性|機導師

  • 敷島 吹雪(ka1358
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォード(ka2398
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 闊叡の蒼星
    メリル・E・ベッドフォード(ka2399
    人間(紅)|23才|女性|魔術師

  • ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401
    人間(紅)|28才|女性|聖導士
  • 弔いの鐘を鳴らした者
    フェオ(ka2556
    人間(蒼)|19才|女性|魔術師
  • ♯冷静とは
    ミネット・ベアール(ka3282
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士

  • ルドガー・フィン・ガーランド(ka3876
    人間(紅)|21才|男性|闘狩人

サポート一覧

  • マルカ・アニチキン(ka2542)

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談卓】新年に良い夢を
レホス・エテルノ・リベルター(ka0498
人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/01/07 23:48:31
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/07 12:56:43