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【CF】ラブラブなクリスマスを

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/12/08 07:30
完成日
2018/12/17 14:54

このシナリオは5日間納期が延長されています。

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オープニング

●受付嬢のケーキ屋さん「オフィスの森」
「クリスマスって、凄いのですね……」
 ケーキの売れ行きを確認しながら紡伎 希(kz0174)は呟いた。
 店頭に並んでいる商品はクリスマスに相応しい出来栄えと――価格。
 希が幼い時、ウィンドウ越しにしか見られなかった物だ。
「財布の紐も緩くなっちゃうからね~!」
 営業スマイルのままでニコニコとしながら客との撮影を終えたルミ・ヘヴンズドア(kz0060)。
 サンタライクにアレンジされた受付嬢の制服は、それはそれで可愛いのだが、ルミが着ると更に可愛さが倍増しているように見える。
 強調された胸、色っぽさ溢れるスカートにキュっと締まった腰のライン。
 思わず、自身の胸に視線を落とし、希はため息をつく。
「噂に聞いたのですが、リアルブルーのある国では、クリスマスは恋人達にとって“特別”だと」
「そうよ! それはもういろいろと盛り上がるよ~! 希ちゃんには、そんな相手はいるの?」
「いえ、私にはいませんよ」
 キッパリと即答する希。
 気になる相手……という意味では、大事な人は居る……もっとも、相手は人間ではないが。
「勿体ないっ~! 希ちゃんは可愛いんだから~!」
 ググっと迫るように顔を近づけるルミの勢いに希は圧倒され、思わず後ずさる。
「い、今は……今は、やらなければいけない事があるので……」
「フフ~ン」
「な、なんでしょうか?」
 ルミの態度に狼狽える希。
 いいのよいいのよそうだよねなどと笑顔で呟くルミ。
「“恋”してるって顔していたからぁ~!」
 いたずら好きな子供の様に、ちょっとだけ舌を出し、ルミは店の奥へと消える。
 何か言い返そうとした希だが、ちょうど、次の客が入って来たので、ぎこちない営業スマイルを浮かべたのであった。

●脚本家の苦悩
 その若き脚本家は頭を悩ませていた。
 恋愛に時期などない――バレンタインデーにホワイトデー、ジューンブライドと続けば、暑く熱い夏の季節。
 秋は絶好の行楽シーズンだし、ハロウィンだってある。
 そして、季節は冬。クリスマスは、それはそれは恋人達にとって大事な日だろう……。
「毎年毎年、もう、ネタがない~」
 頭を掻きむしりながら脚本家は叫んだ。
 幾枚もの紙が宙を舞う。それいずれもが彼が必死に考えた“ネタ”が記されてた。
「叫びたい気持ちも分かるが、我が親友よ。こちらの状況もある。急いで欲しいな」
 静かに告げたのは若き脚本家の親友を自称する衣装屋の青年だった。
 クリスマス当日の日に合わせた特別な舞台。その舞台の衣装を一手に引き受けていた。
 問題なのは、その舞台の脚本が急遽差し替えになった事だ。
「あのストーリーじゃダメなんですか?」
「何度も言わすな。クライアントからの要望だ」
「……渾身の内容だったのに……」
 差し替えになったのはクライマックスのところだけだ。
 主人公がヒロインと共に沈みゆく太陽を見届け、抱擁しつつ、幕が下りるのだが……。
 もう少し、インパクトがあるものを希望してしているらしい。
「我が親友らしい、良いクライマックスだと思う。だが、クライアントの言い分もある」
「分かっています……ですが、何も浮かびません」
 落胆する脚本家の肩を、トンと衣装屋が叩いた。
「なに、問題はないさ。ようは、こちらの努力を認めさせればいいのだ」
「だけど、どうやって?」
「以前やったように、ハンター達に依頼を出す。お前はハンター達の行動を舞台のネタにすればいい」
 時には死地にも向かうような者達だ。
 ハンターの中には“恋人”同士という者もいるだろうし、恋人とは言わずとも、気の知れた“相棒”だっているかもしれない。
「けど、デート内容を逐一観察するというのも……」
「大丈夫だ。観察はパルムが行うからな。という事で、早速だが、依頼は出してきている」
「早いって!」
 驚く脚本家に衣装屋は誇らしげに胸を張った。
「そうでなければ、商売などやってられんからな」
 そういう訳で、ハンター達の“恋バナ”をパルムがこっそりと観察するという依頼がオフィスに張り出されたのであった。

リプレイ本文

●ラブラブなクリスマスを
 待ち合わせ場所の広場には大勢の人々の姿があった。
 こんなに集まって祭りか商売か、何かあるのだろうかと、リンゴ(ka7349)は思いながら、通りに面した店内に置かれた時計に視線を向けた。
 もう暫く経てば、“主”との約束の時間だからだ。
「お待たせ、リンゴ。早いね」
 時計の針の動きに魅入っていたら“主”である、時音 ざくろ(ka1250)の声。
 リンゴは振り返って“主”の姿を確認したら、表情一つ変えずに深々と頭を下げた。
「いえ、主様との約束に万が一でも遅れる訳にはいきませんので。それに主様もまだ約束の時間ではありませんが?」
「ざくろは予定していた依頼が早く終わったからね……リンゴはいつからここに?」
「はい。数刻ほど前から」
 その台詞にざくろは思わず耳を疑った。
 そんな前からここで待っていたというのか。万が一でも遅れる訳にはいかないというらしいので、それだけ、何か期待をされているのだろうか。
「あ、ありがとう、リンゴ。今日、実は逢って貰ったのは他でもないんだ」
「主様の命とあれば、いかなる事も」
 それが自分の存在意義だといわんばかりの態度でリンゴは言った。
「良かった。それじゃあ、ざくろと一緒に街に行こっか? クリスマスを教えてあげるよ」
「“くりすます”……でございますか?」
 満面の笑みのざくろに対し、リンゴは首を傾げた。
 何か特別な仕事なのだろうか。そういえば、主様はオフィスから依頼を受けたと言っていた。これの事なのだろうか。
「主様、一つ問題が」
「どうしたの、リンゴ?」
「リンゴは“くりすます”が何か分かりません」 
 至って真面目な顔のまま、リンゴがそんな言葉を口にした。
 彼女自身はその育ちの影響の為、季節の行事など知らない事が多い。クリスマスが何かを知らなくても仕方ない事だろう。
「問題ないよ。ざくろが教えてあげるから!」
「ご教授よろしくお願いします、です」
 再び頭を下げたリンゴの手をざくろは手に取った。
 彼女の手は異様な程、冷たかった。長い時間、広場で待っていたのだろうか。
「まずは、甘い物でも食べにいこう」
 あったまるような飲み物と合うようなスイーツが良いだろうかと、ざくろは頭の中で考えるのであった。

 装飾品雑貨とカフェが一つになったような店に、ざくろとリンゴは入った。
 クリスマスらしい赤と白を基調とした腕輪を、ざくろはペアセットで頼む。一方のリンゴは色々な雑貨を、真顔で手にとっては、置くを繰り返していた。
(季節限定の品物を買うという行事なのでしょうか、“くりすます”とは)
 そんな事を思いつつ、棚に並ぶ品々に視線を向ける。
 あれもこれも似たような配色で統一され、所々に『クリスマス限定』というポップが目立つ。
「リンゴ、席が取れたよ」
 ざくろからの呼び掛けに「はい、主様」と応えると、二人はテーブルについた。
 正面に向き合うようなテーブルではなく、ふかふかのソファーに横に並ぶ。
 姿勢正しくソファーに浅く座っているリンゴの手をざくろは取ると優しく持ち上げ、スッと腕輪を通した。
「主様、これは?」
「クリスマスプレゼントだよ」
「そ、そんな、主様に恵んでいただくなど、恐れ多いです」
 遠慮するような声をあげるリンゴ。
 しかも、貰うだけではなく、“主”も一緒の物を身に着けているのをリンゴは見逃さなかった。
「クリスマスは、サンタさんからプレゼントを貰うんだよ。今は、ざくろがその代わり」
「……そういうこと、でしたら」
 落ち着きなさそうに腕輪をくるくると回しながらリンゴが渋々、受け入れる。
「大事に。生涯大事にします」
「うん、良かった。ざくろの故郷だと、クリスマスは恋人と過ごす日なんだよ……あっ」
 照れたようなリンゴの姿が嬉しくて、つい、何気なしに言った一言だったが、台詞が意味する事にざくろは気が付いた。
「恋人と……? あ……あぅ」
 ざくろの言葉に動揺を隠しきれないリンゴ。
 真面目な表情のまま顔も耳も真っ赤に染まっていた。

 恥ずかしいやらなにやらで、急に無言になるリンゴ。
 甘い物は大好きなはずなのに、あんまり味を楽しめないまま、店を出た。
 通りはクリスマスを楽しむ人々でごった返していた。はぐれないようにとざくろがサッとリンゴに手を握る。
「あっ、あっちの公園。飾り付けが綺麗みたいだし、いっ、行ってみよ」
「は、はいっ!」
 握った手から高まる心臓の音が聞こえないかと心配するざくろと、手を握られた事と話し掛けられた事が重なり、思わず大きな声を出したリンゴ。
 リンゴの頭の中には先程のざくろの台詞がずっと繰り返されていた。
 変に意識してしまう――が、握ってくるざくろの手を放したくない。
 温かく、優しいざくろの手。
 それを強く意識した瞬間、リンゴは足を止めた。手で繋がっているざくろも止まる。
 大きなツリーの下で身動きを止めた二人は、まるで時間も止まったかのようだ。
 止まったまま見つめ合う二人。ややしてからリンゴが口を開く。
「主様……私などが、主様を独り占めしてしまってよろしかった、でありましょうか?」
「どうして?」
「クリスマスは恋人と過ごす日でありましたら、別の方の方が……」
 よろしかったのではないのでしょうか――と続けられず、目を伏せて弱気に呟くリンゴ。
 “主”には沢山の素晴らしい女性が居る。私でなくとも……いや、私じゃない方が、もっとクリスマスを楽しめたのではないのだろうかと。
「……リンゴ」
 主の呼び掛けに、リンゴは顔を上げた。
 真っ直ぐに真剣な眼差しでざくろは彼女を見つめてから告げる。
「そんな事ない……ざくろ、リンゴと来たかったから」
 自分の事を慕ってくれるリンゴの事が嬉しく、また、意識し始めていた。
 初めて会った時は少年かと間違い、自宅のお風呂を貸した時の事が今でも鮮明に思い出される。
 安心させるように微笑を浮かべるざくろに、リンゴは言葉を返そうとしたが、なかなか言葉が出ない。
 言葉よりも早く、涙がポロポロっと零れ落ちた。
「ありがとうございます、です」
 ざくろはゆっくりとリンゴを抱き締める。
 触れたリンゴの肌は、やっぱり冷たいままだった。
 ざくろは自身のマフラーを外すと、リンゴに巻く。
「こんなに冷えたままで。どう? 温かい?」
「はい。温かい、なのでございます」
 いつもなら、“主”が冷えないようにと遠慮する所かもしれないが、“主”の行動を否定してくもなく、リンゴはマフラーに顔を埋める。
「リンゴ、今日はありがとう。一緒に過ごせて凄く楽しかった……大好きだよ]
 頭を撫でながら、ざくろはリンゴの額に軽く唇を当てた。冷たい額を温まらせてあげたい……そんな気分になる。
 恋愛事とか疎い子だから、緊張の余り倒れてしまわないようにしたつもりのざくろだったが、リンゴの耐久ゲージは既に振り切っていたようだ。
「リ、リンゴも、で……す……」
「あわわわわ。リ、リンゴ~」
 林檎のように真っ赤になった彼女の意識は限界を迎え、ざくろに寄り掛かるように倒れ込む。
 その動きはきっと大丈夫だろうと思っていたざくろの不意を突き、二人は植え込みへと仲良くダイブしたのであった。


●聖なる日に
 受付嬢のケーキ屋さん「オフィスの森」で紡伎 希(kz0174)からケーキを二人分買った瀬織 怜皇(ka0684)とUisca Amhran(ka0754)。
「お買い上げ、ありがとうございます」
 希が怜皇にケーキが入った箱を怜皇に手渡す。
「お仕事、ご苦労様」
「ノゾミちゃんも、メリークリスマス」
 怜皇とUiscaは希にそう告げて店から出た。
 希の店に行った後は今日の予定は特に決まっていない。クリスマスカラーに染まった街を散歩するのもいいだろう。
「レオ」
 Uiscaがキュっと怜皇の腕を引き寄せる。
 カップルのお手本かなという雰囲気でくっつくように並んで歩く二人。
 幾つかのお店を巡り、買い物や食事を楽しもうかなと思っていた矢先、路地を抜けようとした所で、4、5歳位の男の子が泣いていた。
「どうしたんだい?」
 怜皇がしゃがんで優しく呼び掛けると、男の子は泣きながら答える。
「おか、お母ちゃん、どっか、いっちゃった……」
「迷子みたいね」
 心配するようなUiscaの台詞に怜皇は頷く。
 男の子の頭をポンポンと手を置いてから、怖がらせないように怜皇は微笑みながら尋ねた。
「君の名前は? お母さんはどんな人かな?」
「え、えとね……」
 男の子の名前と母親の特徴を聞き出す怜皇。
 外套を外して男の子に掛けてあげると、立ち上がりつつ、Uiscaに言った。
「確か、この先に詰所があったはずだから、イスカはこの子を連れて行ってくれないか?」
「レオは?」
「この子の母親を探してみるよ。連絡は伝話で」
 魔導スマホを持っている事を確認してから、怜皇は路地から飛び出した。

 クリスマスで賑わっている事もあり、男の子の母親を探すのは大変で、運良く、男の子の母親を見つけた時には、夕焼けが美しい時間となっていた。
 何度も振り返って頭を下げて立ち去っていく親子を、怜皇とUiscaは手を振って見送る頃には、太陽の姿は消えていた。
「見つかって、良かったね、レオ。お疲れ様」
「イスカもありがとう」
 Uiscaは男の子の子守を続けていたのだ。
 母親を連れて来た頃には、泣き止んで、楽しそうな顔をしていたので、Uiscaが男の子を飽きさせないように気を遣ってくれていたのだろう。先程買ったケーキの一つを男の子は美味しく食べたようで、緑髪の受付嬢の砂糖菓子は食べずに握り締めていた。
「夜になるし、帰ろうか。ケーキも一つ残ってるし、一緒に食べよう」
 Uiscaの手を確りと握る怜皇。
 二人はゆっくりとギルド区画に向けて歩き出した。
 冷たい風が吹き抜け、二人は身を寄せ合う。
「……ごめんね、イスカ。折角のクリスマスに」
 清々しい気持ちで親子を見送ったが、買い物巡りもスイーツ食べ放題も、色々とやろうとした事が、何一つ出来なかった事を、怜皇は思い出した。
「そんな事ないよ」
「衛兵に任せても良かったんだけど、なんだか、あの男の子が自分と重なってさ」
 その理由は言われるまでもなくUiscaは分かっていた。
 転移者として、この世界にやって来た怜皇は右も左も分からない状態だった。そんな彼を支えたのは、Uisca自身なのだから。
「レオらしいなって思う」
 嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、Uiscaは怜皇に抱き着いた。
 悲しみや苦しみを知っているからこそ、人に優しく接する事が出来る。
 泣いている幼い子供を無視するような人だったら、今、こうしてはいないだろう。
「ありがとう」
 抱き着いてきたUiscaを、怜皇は包み込むように抱き締める。
 良き理解者が一番身近に居る。それはとても素晴らしい事だ。
「愛してるよ、イスカ」
「レオ、愛してる」
 二人は見つめ合ってから、それぞれの想いを伝えるのであった。
 自然と唇が重なった二人を祝福するかのように、夜の訪れを告げる鐘が鳴り響いた。

●鳴月家にて
 エトファリカ武家四十八家門の第五家門鳴月家の屋敷に龍崎・カズマ(ka0178)はやって来ていた。
 表向きは、鳴月家当主にリアルブルーでの出来事を伝える為に鳴月 牡丹(kz0180)が連れてきたハンターという事だが、屋敷にいる者達は誰一人として、そんな目で見ていなかった。
「……なるほど。それで大精霊は眠り、異世界の大精霊が味方となった訳か」
 カズマから【空蒼】の一連の話を聞き、当主は大いに納得したようだった。
 当主が欲しかった情報は得られたのであろう。
 東方は現在、憤怒残党との戦いに追われている。他の世界に目を向けている場合ではないが、知っておこうとする姿勢は大切だ。
 そういう意味で言うと、ハンターを呼んでまで、流石、上位武家という事だろうか。
「ところで、龍崎殿。早速だが、本題に入ろうか」
「……初めてお会いするというのに、この様子で申し訳ございません」
 カズマは礼儀正しく頭を下げた。
 というのも、さっきから牡丹が身体にしがみついているからだ。
 せめて、時と場所をわきまえて欲しかったが、牡丹が言う事を聞かなかった。
「いいじゃん! ようやく、一緒になれたんだから!」
 まるで吠えまくっている犬のような牡丹に、当主もカズマも、同席している鳴月家の幹部も苦笑を浮かべた。
 当主の傍に控えていた女性――恐らく、牡丹の従姉――が注意をする。
「牡丹、離れなさい。話が進みません」
「べー!」
 どうも、わがままに育った娘は、家の中でも自由奔放のようだ。
 無理矢理、引き剥がそうにも、相手は牡丹だ。一筋縄ではいかないだろう。
 誰も動けないので、当主は諦めて話をカズマに振る。
「大体、話は牡丹から聞いているが……改めて、我が義娘に対する龍崎殿のお気持ちを聞かせて貰いたい」
 ついに来たかとカズマは覚悟を決めた。
 当主だけではなく、鳴月家の幹部も幾人もいる中で、宣言しなければならないのだ。牡丹に対する想いを。
 嫌という訳ではない。通しておかなければいけない筋である。
「……俺が、牡丹に対して出来ることはあまりないかもしれない。でも、牡丹の全てが好きです。牡丹との明日が欲しい。これからも共に歩みたいです」
 牡丹に告げた時とほぼ同じ内容をカズマは恥ずかしい素振りを一つも見せず、言い放った。
 ――隣で牡丹が歓声を上げてのたうち回っているが、それをそのままにして、姿勢を正すと、当主に頭を下げる。
「牡丹との付き合い、認めて頂ければと!」
「“我々”の答えは決まっている。龍崎殿、我が娘を頼む……が、一つ、条件がある」
 どんな条件や試練であっても、全力で満たすだけだとカズマは決意していたので、望む所だ。
 だが、当主の言う条件は意外なものであった。
「条件とは“我々”鳴月家の者になるという事だ。そうなれば、将来、龍崎殿を次期当主として迎え入れる可能性もある」
「それは……どういう事でしょうか?」
 驚くカズマに対し、当主が丁寧に説明する。
 鳴月家は、血筋による世代交代ではなく、過去、その世代における優秀な人物を迎え入れて存続している家である事。
 領地経営は当主主体ではなく、武家内での合議制による運営が主体となっている事。
 つまり、鳴月家とは『家』というよりかは『カンパニー』に近いものであり、そして、それこそが、鳴月家が上位武家で勢力を持ち続ける理由なのかもしれない。
「どうするかは今、この場で決めなくても良いが……良い返事を期待しているよ、龍崎殿」
 なにか……とんでもない事になりそうな予感がしているカズマの腕を牡丹が掴む。
「話は終わったから、早く部屋に戻ろうよ!」
 当主に返事をするまでもなく、牡丹に引きずられて退席するカズマであった。


 おしまい。

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参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 聖なる焔預かりし者
    瀬織 怜皇(ka0684
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 何時だってお傍に
    時音 リンゴ(ka7349
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/04 18:40:45
アイコン 【確認用】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/12/06 22:13:00