聖導士学校――祝福と呪いの結婚式

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/12/11 22:00
完成日
2018/12/19 00:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 小鳥は歌い。
 芽生えた麦は緑に光り。
 猫はにゃんと鳴いて精霊と飯を奪い合う。
 いつも通りの平和な光景だ。
 ただ1点、精霊が飯争奪戦に勝利したのがいつもと異なっていた。

●朝
「おはようございます!」
 訓練に備え屈伸中の生徒が元気に挨拶し。
「おはようございます。今日は奥様も一緒で……え? まだ? すみません」
 教官であり護衛でもある聖堂戦士が失言を謝罪する。
 挨拶をされ挨拶をしているのは2人の男女だ。
 男は元王国騎士の現農業法人社長。
 背が高いだけでなくスーツを内側から押し上げる筋肉が凄まじく、非常に大きく見える。
 女は農業法人の社員。
 目には深い知性があり、落ち着いた色の服が地味さではなく上品さを感じさせる。
 2人が校舎の中に消えた後、準備運動を終えた生徒たちが不思議そうな顔をした。
「作業着以外も着るんだ」
 重々しい咳払いが1つ響き、後遺症の残らない絶妙な力加減の拳骨が生徒の数繰り返される。
「普段から食事で世話になっている相手になんだその態度は!」
 この日の訓練は3割増しだった。

●はるかなる結婚式
「司教はすぐに参ります」
「いや、別に急がなくても……」
 応接室で頭を下げられ、農業法人社長が慌てた様子で頭を振った。
 何度もネクタイに手を伸ばして全く落ち着かない。
 接待役を任された助祭は澄まし顔だ。
「お待たせして申し訳ない」
 校長でもある司教が入室し、かなり深く頭を下げた。
「いやいやいや、私が、その、私達が予定より早く来過ぎた訳で」
 混乱して要領を得ない社長に対し、司教は暖かな微笑みを向けた。
「いよいよですかな」
「ええまあその、はい」
 結婚式の相談であった。
「1組織の長の婚儀となると準備も大変でしょう。王都の式場ならいくつか押さえることができますが」
 司教に穏やかに提案され、緊張しきった男は助けを求めるように女へ目を向けた。
「もしよければ、ルル様の見える場所で式をあげたいと思います」
「それは素晴ら……」
 司教の声が不自然に途切れる。
 男女に一言断りを入れてから、何もない場所に対して静かに語りかける。
「ルル様、何をしているのです」
 女性の横1メートルの空間に、ぽん、とTVゲームじみた音を伴いエルフ少女(に見える精霊)が現れた。
「ごえい!」
 ぽん、ともう1回。
 2Pカラーの精霊が女性の後方1メートルに現れ、マテリアルでつくった小さい羽をぱたぱたさせながらぷひーとラッパを鳴らす。
 女性がはっとして顔を赤らめる。
 司教が再度祝いを述べて、部屋を暖かくするよう助祭に指示をする。
 ただ1人、新たな父親だけが状況を理解できていなかった。

●引継開始
「この地の最高権威のもとで式をあげることで、財力を補強する権威を手に入れる……という意図なのでしょうか」
 助祭が緊張した面持ちでそう言うと、OJTを担当する司祭はペンを止めずに軽くうなずいた。
「その理解で問題ありません。司教様は協力を約束するでしょう。その後私がすることは?」
 ハンターにときどきいる絶世の美女には及ばないが、この司祭は淑やかで優しげな女性に見える。
 だがその表情も声も全て作ったものだ。
 中身は武断派とも過激派ともいわれる派閥の幹部であり、甘さなどどこにもない。
「社長夫妻にアポイントメントをとります。約束の時間までに式の案を複数作成した上で、おそらくその場にいると思われるルル様からも希望を聞き取ります」
 肝は冷えているのに頭は熱い。
「案の原型は」
 上司は目を向けすらしない。
 傲慢ではあるがそれが許される地位の差がある。
「伝統的な案は既存の資料をもとに作成します。今風の案は、校長は結婚事業に疎いのであの聖堂の司教に協力を依頼します。……ハンター不在時は、ですが」
 司祭がペンを置きこちらを見る。
 微笑んでいるようにしか見えない緑の目が怖い。
「大変結構」
 安堵の息を堪えるのが大変だった。
 司祭は気付いていない風を装い、己の脈を測ってため息をつく。
「マティ助祭、今回の件は貴方が責任を負いなさい。成功すれば来年末に司祭です」
 超スピード出世ではある。
 1年前なら素直に喜べたろうが、求められる能力と実績が一段階増えることを考えると正直逃げたくなる。
「承知しました」
 だが逃げられない。
 逃げれば二度と上への階段は現れない。
「期待していますよ、マティ」
 その日のうちに司祭は体調を崩し、医者から面会謝絶を厳命された。

●呪い
 光が増せば闇も濃さを増す。
 もはや何も生み出せなくなったものが、微かな光を消そうと触手を伸ばし始めた。

●依頼票
 臨時教師または歪虚討伐
 またはそれに関連する何か


●地図(1文字縦2km横2km)
 abcdefghijkl
あ畑畑畑畑農川畑畑畑畑川川 
い平平平学薬川川川川川川平 平=平地。低木や放棄された畑があります。かなり安全
う□平畑畑畑畑平□平平×× 学=平地。学校が建っています。緑豊か。北側に劇場と関連施設あり
え平平平平平平森木墓△△△ 薬=平地。中規模植物園あり。猫が食事と引換に鳥狩中
お平□□□果果林□□△△△ 農=農業法人の敷地。宿舎、各種倉庫、パン生産設備有
か□□□林平丘林□□△△○ 畑=冬小麦と各種野菜の畑があります
き□□□□湿湿林林林△△■ 果=緩い丘陵。果樹園。柑橘系。休憩所有
く■■□□□林□□□△△■ 丘=平地。丘有り。精霊のおうち
け○■■□□林□□□□□■ 湿=湿った盆地。安全。精霊の遊び場
こ■■■■■□■■■□□■ 川=平地。川があります。水量は並
さ■■■■■□■■■■■■ 林=平地。祝福された林。歪虚が侵入し辛く、歪虚から攻撃され難い
し■◇■■■■■■■■■■ 木=東西に歩道がある他は林と同じ
す■■◇■■■■■■■■■ 森=辛うじて森と呼べる規模にまで育ちました
せ■◎■■■■■■◎◎■■
そ■■■■■■■■◎◎■■ 墓=平地。遠い昔に悲劇があった場所。墓碑複数有。定期的に掃除
た■■■■■■■■■■■■

□=平地。負のマテリアルによる軽度汚染
■=未探索地域。基本的に平地。詳しい情報がない場所です
△=未探索地域。負マテリアル濃度が激減。歪虚密度が上昇
◇=荒野。負のマテリアルによる重度汚染
○=歪虚出現地点
◎=深刻な歪虚出現地点
×=歪虚に制圧された平地。負マテリアル濃度が上昇中


gえ=木の成長速度が一定に。法人が肥料投入を継続
kこ=1箇所に留まる積乱雲が発生中。衰える様子がありません。ここと隣接マスで、これまで降らなかった雨が降ることも
fさ=周辺、特に南側隣接地域の負マテリアル濃度が高く、fさ自体の負マテリアル濃度も上昇中


 た行から南に4~8キロ行くと隣領。領地の境はほぼ無人地帯。闇鳥、目無し烏は出没せず
 地図の南3分の1の地上は、汚染の影響で遠くからは見辛い
 丘から学校にかけて狼煙台あり。学校から北へ街道あり

リプレイ本文

●現代の力
 負マテリアルの濁流が押し寄せる。
 密度も高いが最大の脅威はその量だ。
「マジかよ」
 防御にも定評のあるボルディア・コンフラムス(ka0796)でも巻き込まれたら死ぬ。
 CAM並の体格の歪虚20数体が全力を振り絞った、ブレス一斉砲撃であった。
 黒いCAMが手振りで合図する。
 ボルディアを乗せたワイバーンが速度を馬程度まで落としてCAMの後ろに回り込み。
 黒いCAMの背部円形エンハンサーが膨大なマテリアルを吐き出す。
 正マテリアルは強い光を帯び、大きく左右に広がりハンターたちを濁流から庇った。
「被弾」
 エルバッハ・リオン(ka2434)が無意識につぶやく。
 ドラゴン型歪虚のそれと比べると遅いブレスの集合体が、ブラストハイロゥによる光翼に触れられずに左右と上に分かれて無害化される。
「なし」
 受け止めて防ぐのではなく、光壁から後ろを攻撃対象にさせないのがブラストハイロゥだ。
 歪虚が身を削り放って程度のブレスでは、撃ち抜くことなどできはしない。
 とはいえHMDに表示される警告が多すぎる。
 前方百数十メートルから地平線までの大集団だけでなく、手を上げれば当たる距離から上空1キロの高度まで歪虚が蠢いている。
 控えめに表現して地獄のような……歪虚の強弱を考えなければ邪神がいる戦場を思わせる光景だった。
「ブラストハイロゥが切れるのが早いか気付かれるのが早いか」
 極めて有用なスキルではあるが無敵ではない。
 エルバッハなら、光翼中央の手前にファイアーボールを打ち込むだけでブラストハイロゥを攻略できる。
 無差別に広がる爆風までは防げないのだ。
「もっとも」
 攻略法に気付くのも、その攻略法を周囲に伝えるのも、周囲を攻略法に従わせるのも時間がかかる。
 難なくこなせるのは各国の軍やハンターくらいのものだ。
 指揮能力のある無色の歪虚がいないこの地の歪虚には、ブラストハイロゥが切れるまで延々攻撃するという選択肢しかない。
「歪虚はこういうもんだよな」
 ボルディアが鼻を鳴らす。
 この地の歪虚は、過去の王国の人間に滅ぼされたエルフが切っ掛けで生じたものだ。
 人間や聖堂教会関係者を狙うという性質があるとはいえ、基本は生者に対する憎しみと殺意である。
 目の無い烏としか形容するしかない歪虚が次々と降ってくる。
 本体の強さは並の雑魔を下回る。
 しかし位置エネルギーを速度に変えた結果、当たれば高位の覚醒者でも危ない威力があった。
「ヒデェ見た目だ」
 当然のように当たらず地面で無意味に砕ける。
 光翼は内側の人間やユニットを攻撃対象にさせない。
 烏1羽が地面で砕けても爆風のような破壊力はない。
 せいぜい土煙で装甲や鎧を汚すことしかできないのだ。
 光翼の輝きが強くなる。
 左右の端から粘性の高い負マテリアルが零れ、光翼の上に飛び散る飛沫が風に溶けていく。
 ブレス一斉砲撃の2回目だった。
「3度目が来る前に接敵します」
 通信機を耳元に近付けないとエルバッハの声が聞き取れない。
 上空からの自爆攻撃は酷く五月蠅く地面を掘り返している。
「分かった」
 ボルディアはワイバーンから飛び降りた。
 転倒しないだけでも凄まじいのに、転倒した後CAMに遅れずついて行くのは驚異的だ。
 この程度の力が無ければ、歪虚の大集団への突撃は自殺行為だ。
「あわせる」
「はい」
 全高10メートル近い闇鳥の群れが急速に近づいて来る。
 ブレスで全力以上の力を使ったため、随分と痩せこけ頼りない見た目になっている。
 ただ、眼窩で燃える炎からはこれまで以上の憎しみを感じる。
「さすがに解除はできませんね」
 光壁を止めてファイアーボールを撃ちたくなるが我慢する。
 強力な歪虚を10体滅ぼせても反撃のブレスでCAMごと焼かれるのは避けたい。
 だからエルバッハは、CAMウィザードに光翼を展開させたまま歪虚と正面衝突した。
 それは奇妙な衝突だった。
 敵味方どちらにもダメージはない。
 鳥を巨大化して悪意で歪ませた体格の歪虚はCAMに近付けず、CAMの側も歪虚が邪魔で前には進めない。
 均衡は数秒で崩れ去る。
 光の壁から、ボルディアがたった一人で平然と進み出たのだ。
 速度は並の馬程度に速く、しかし馬よりは小さいので大型歪虚と歪虚の間を苦も無くすり抜ける。
「素人かよ」
 ボルディアの体の奥、魂の奥深くから炎が噴き上がる。
 限界まで強化されたはずの魔斧モレクがきしみ、この世の物とは思えぬほどに鍛えられた体が倍ほどに大きく見える。
「俺にはテメェ等の声も聞こえねぇし、姿だって見えやしねえ」
 ボルディアに向けられる膨大な憎悪の中に、微かな知性を感じる。
 それは、手を止める理由にはなり得ない。
「言いたい事があンなら体で言いにこい!」
 正マテリアルの塊が横回転を開始する。
 並のCAMを上回るほど強靱な歪虚が、マテリアルに込められた熱に焼かれ鋭くも分厚い刃に押し裂かれ肉も骨も纏めて切断される。
 90度回った時点でも速度は衰えない。
 ボルディアは柄をしっかりと構えて支え、常に力を加え続けることで威力と攻撃範囲の維持をする。
 歪虚がどれだけ強かろうが頑丈だろうがそれを上回る強さと堅さには叶わない。
 人口密集地に解き放たれれば単独で町1つ滅ぼすことも可能な闇鳥が、十把一絡げに斬られ砕かればらばらになって周囲へ飛び散った。
 360度の回転を終えるまで、2秒もかからなかった。
「よし」
 一斉砲撃の20数体のうち20体と、その周囲の闇鳥十数体をまとめて滅ぼしても終わりではない。
 恐怖に駆られた闇鳥たちが、狙っても無駄な光翼ではなくボルディアただ1人を狙って大口を開ける。
 口の中の注視する余裕があれば、歪虚の一部が崩壊してブレス用の負マテリアルに変わるのが見えただろう。
「来い!」
 ハンターが全力であるように歪虚も必死で全力なのでエルバッハ機による援護も間に合わない。
 周囲にいる闇鳥だけでなく、視界内の歪虚の大部分によるブレスがたった1人のハンターへ集中した。

●現代の戦士
 地面が揺れてキノコ雲じみた土煙があがる。
 その根元から、人間離れした速度でボルディアが駆け去る。
 さすがに無傷ではないが重体では無く重傷ですらない。
「誰も心配していませんでしたが」
 清楚なソプラノに凶悪な光の波動が続いた。
 全てを捨てて全力疾走してきた闇鳥も、それと連携して空から片道攻撃を仕掛けた目無し烏たちも、球形に広がる光を避けきれず直撃を浴びる。
 避けることも困難だが耐えることは不可能だ。
 聖堂戦士団の1部隊を骨まで焼ける威力があり、雑魔は一瞬も耐えられずに蒸発し闇鳥も元の負マテリアルに戻り急速に形を失う。
「ボルディアさんが十分に引きつけてくれました。始めなさい」
 Volcaniusはエステル(ka5826)に忠実に従った。
 対ボルディア一斉射撃のため複数箇所にそれぞれ固まっている闇鳥に対し、容赦なく炸裂弾を送り込む。
 主ほどの攻撃力はなくても射程距離が凄まじい。
 闇鳥が散開を始めるまでに、2桁中盤のスコアと3桁直前の重軽傷歪虚をうみだした。
「いくらなんでも数が多くないですか」
 飛んできたブレスを回避せずに盾で受けながら、カイン・A・A・マッコール(ka5336)が至極当然の問いを発する。
「全部倒せば浄化も進んでイコニアさんの負担も軽くなりますね」
「ああ、そういうことであれば」
 なんだか丸め込まれている気もするが、これ以上気にしても仕方が無い。
 歪虚の多くがVolcaniusに気付いた。
 複数の戦場で歪虚を大量虐殺し、しかし近づかれると脆い存在であるゴーレムに気付いて戦力を差し向けたのだ。
 ブレスも殴り合いも弱い代わりに速度に優れた闇鳥が、自律自走砲を倒すため全力以上を絞り出して突撃した。
「お前たちの復讐心も怨念も肯定しないだけど否定もしない」
 カインが存在感を増す。
 移動に力を使い過ぎ人格の残滓すら消えてしまった闇鳥は、ソウルトーチによる簡単な挑発にも引っかかる。
「ハンターとして」
 脆いゴーレムを庇うため、躱しはせずに盾と鎧で受ける。
「潰すだけだ」
 痛みに耐えて分厚い戦場刀を振るう。
 速度と多少の攻撃力以外を切り捨てた歪虚は持ち堪えることもできず、左右に両断されて息絶えた。
 左右はエステルとカインが固め、上に対してはスラスターライフル装備のオートソルジャーという防御は予想以上にうまくいった。
 Volcaniusが健在なまま時間が過ぎていく。
 ハンターもユニットも1人も倒れず歪虚だけが消えていく。
 既に最初の歪虚の倍近く倒している。
 しかし敵の数はまだ多い。
 ここでハンターを仕留めようと、周辺地域から歪虚の増援が現れ続けている。
「移動力の確保のためとはいえ、強化した重機関銃を置いてきたの不安要素です」
 30ミリ弾が移動中の目無し烏を砕く。
 エルバッハ本人の意識としては戦闘ではなく作業だ。
 機体のセンサーを使って歪虚の位置と移動速度を読み取り、確実に勝てる相手に近づき射撃で仕留めるだけだ。
「友軍次第でこれほど楽になるとは」
 1回ごとの移動距離はかなり短い。
 敵の数が多いだけでなく、エルバッハが進路の選択に頭を使っているからだ。
 戦闘自体は簡単だ。
 インストール済みの射撃動作を実行するだけで当たる程度の敵ばかりだった。
「おや?」
 ボルディアからの通信があった。
 回復スキルも尽きる直前。撤退準備を始める。
 エステルとカインは弾切れVolcaniusを護衛して退却済み。
 ボルディアのワイバーンはダメージは小さいがそろそろ体力が尽きる。
「そろそろ本番ですね」
 エルバッハが行動パターンを切り替えた。
 CAMが脚を止める。
 西日が遠くまで影を延ばす。
 エルバッハは生き残りの闇鳥最大集団を待ち受ける。
 ボルディアもVolcaniusも直接目にしていないため、歪虚集団の士気は高いままだ。
 消耗していない太い体でブレスのチャージを開始。
 歪虚は最初の斉砲撃を再現するつもりだ。
 使い尽くしているので防御にブラストハイロゥは使えない。
「進路Bの19」
 エルバッハは仕掛けない。
 歪虚が自らを砕き始めたのを確認してから全速で後ろへ下がる。
「マテリアルカーテン展開準備。反転」
 一斉射撃。
 エルバッハ機は安定した地面の上で向き直り、数は多くても対単体攻撃でしかないブレスを次々に避け、稀に当たったときも斬艦刀で受けて被害を極限する。
 その中で、最初から外れたブレスが半数を超えている。
 長距離で確実に当てるほどの技術は闇鳥にはないのだ。
「再接近」
 今度は近づく。
 懲りずに一斉砲撃をしようとした歪虚からまた距離をとり、負マテリアルを無駄に使わせる。
 砲撃集団以外の歪虚がいれば足止めされ砲撃でやられていたかもしれないが、そんな歪虚は全てこれまで戦いで消えている。
「再接近」
 また近づく。
 今度はブレスは使わず力を温存しようとした闇鳥たちは、そのまま反転せず突っ込んで来たウィザードに不意を打たれた。
「ウィンドガスト、後1回」
 スキルを使い機体に接近戦闘可能な回避能力を維持させる。
「機体が壊れるまでは」
 傷ついた歪虚複数をまとめて火球で吹き飛ばす。
「付き合ってもらいます」
 闇鳥全滅時点で、ファイアーボール残弾0、ウィンドスラッシュ残弾4。
 歪虚の重要拠点の前面と側面の歪虚が、文字通りの意味で全滅した。


●フィーナの1日
 ハンター4人の機甲部隊じみたパーティーが暴れている頃、歪虚としての本能に従った闇鳥複数が人間の本拠に向かっていた。
 聖堂教会謹製の結界が負マテリアルを削り心身に深刻なダメージを与える。
 だが歪虚は足を止めない。
 西に行けば、抵抗力が弱い割に正マテリアルが豊富な人間の子供を食えると直感しているのだ。
 頭上から降り注ぐ炎に焼かれるまで、古エルフの残滓は二度と表に出なかった。
 学校の前にワイバーンが着陸する。
 最近バイトの内容の変わったエルフがぎょっとして回れ右した。
「何かあった?」
 フィーナ・マギ・フィルム(ka6617)がワイバーンに乗ったまま移動してくる。
「今ありました! 殺気出してませんか今っ!?」
 フィーナは無言で瞬きする。
 意識して息を吸って吐き、今日の午前の出来事も思い出す。
「問題ない」
 ちょっと心がささくれていただけだ。
 フィーナは後のことをSchwarzeに任せて約束の教室へ向かった。
「早いですね。早速始めましょう」
 普段は一般教養を担当している教師だ。
 貴族の次男次女から文盲に近い元浮浪児まで実質数ヶ月で最低限の教養を仕込むだけあって、知識はとてつもなく深い。
「王国の勢力拡張の歴史ですが、当時としては普通の手段で……現代基準だと悪鬼の所業を繰り返していますね」
 この地を守り導いてきたハンターの1人であると認識しているため、口調は穏やかだが遠回しな言い方はしない。
「ここと同じように?」
「同程度なのも多いですね。方向性はどれも異なりますが」
 粉飾した郷土資料からでも情報を得られるこの教師にとっては秘密でもなんでもない。
「まあ慰霊は飛び抜けて酷かったです。慰霊の手抜きでここ以上の場所は2~3箇所でしょう」
 一度領地が崩壊するまでの話だ。
 聖堂教会がこの地を引き受けてからは並程度にはしているし、ハンターが主導するようになってからは格別に手厚い。
「短時間で説明するならこの程度ですね」
「進路指導で忙しい中、感謝する」
「いえいえ、この程度ならいつでもどうぞ」
 実に友好的な態度で、教師はフィーナを残して教室を後にした。
 フィーナは席についたまま動けない。
 ここに来る前、王国で面会した記者を思い出して怒りとも苛立ちともつかないものに苦しめられる。
「真実は……」
 必ずしも心地よいものではない。
 真実を求めることは正しいかもしれないがその手段が万人に受け入れられる訳でもない。
 フィーナが会った、真実のみを追い求めるジャーナリストはその典型だ。
 自他の破滅を目指す訳ではないが、過程で破滅を撒き散らすのも厭わない人間だった。
「予想される王国の圧力に屈しないのはいい。でもそれ以外が」
 フィーナは情報公開する場合でも内容と速度とタイミングを配慮する。
 だがあれは、正義感も善意も悪意もなく他者を傷つける。
「ふぃーな? えーと、フィーナどうしたの?」
 丘精霊ルルがノックもせずにドアを透過して現れる。
 実体のある体の使い方に慣れてきたようで発音もかなり滑らかだ。
「校長から聞きました」
 ルルが笑顔のまま後退し、透過するのを忘れてドアに後頭部を直撃させた。
「過剰な祝福は産まれてくる子をこの地に縫い止めてしまうことになる。私みたいに望むものならそれでもいいけど」
 胎児に強制しちゃ駄目。
 そう言ってハンカチで涙を拭いてやると、フィーナに似た姿を好んでとる精霊は素直にうなずくのだった。

●結婚式数日前
 校舎が消えていた。
 立身のため自らの心身をいじめ抜く生徒の姿もなく、一流デザイナーによるカソック風衣装の少年少女が立ち働いている。
「エステル殿っ! 一体何が起きているのです!?」
 新郎新婦の同僚であり農業法人立ち上げの同志である元王国騎士が、子供に見せられない顔でエステルに詰め寄った。
「マティ助祭の仕事です」
「イコニア司祭の助手の?」
 無骨な顔が不思議そうに傾く。
「まだ見習いと聞いていましたが」
「見習いでいられる余裕が聖堂教会にないようです。今回は同期の手を借りたようですね」
 現在王国で最も稼いでいる結婚式場の1つに、幹部候補として勤めている同期たちだ。
 彼等は2年間生死を共にした者同士の気安さでマティから予算を分捕り、インテリアの運び込みと全体的な配置換えを行い校舎を立派な結婚式場に変えた。
「それは、すごいですな」
 無骨一辺倒の男でもその程度は分かる。
「はい。招待客の皆様も徐々に到着しています。食事の用意されていますので」
 都合良く……たぶんルルの悪戯心でそよ風が吹き匂いを運ぶ。
 男の腹から可愛らしい音が響いた。
「君、これはなんだね」
 控え室として扱われている広間。
 横柄なのに悪意のない、少しだけイコニアに似た顔立ちの男がカインにたずねていた。
「この地の麦を使ったピザです。野菜を使ったものは」
 生徒が大皿を運んで来る。
 普段は訓練で汗まみれな少女が、今は控えめなお洒落で澄まし顔だ。
 内心は緊張で焦りまくってカインに仕込まれた仕草を思い出すので精一杯だが。
「ほう」
 指を汚さず1切れ摘まむ。
 態度は悪いが見苦しくはなく咀嚼の音も聞こえない。
「ご苦労」
 おそらく礼のつもりなのだろう。
 爵位持ち貴族はそれきりカインに興味を失い別の招待客と話を始めた。
「お疲れ」
 カインが囁くと少女がよろめいた。
「少し休んでいて。後であとで賄いでなにか作るからね」
 自然な動きで客の視線から庇う。
 今日もまた、無自覚にフラグを建設するカインであった。
 その隣の部屋に、馬鹿馬鹿しいほどに大きなテーブルが運び込まれる。
「どこに置くの?」
 特大テーブルは、女性として常識的な体格でしかないユウ(ka6891)1人が運んでいる。
「は、はい、他領の領主様が使いますのでそこへ……」
 聖堂という名の結婚式場勤めの元生徒は動揺している。
 ユウは重機じみた力を持つだけでなく、高価な荷物に一切傷つけず運ぶ技術も備えている。
 それが戦いに活かされればどうなるか簡単に想像できる。
「これで大きな物は全部済んだかな?」
「はい、後は在校生で運べますので」
「ん。ルル様の面倒は見ておくね」
「助かります」
 元生徒が深く頭を下げる。
 どう見ても戦士の身のこなしではないが、ブライダル業界という戦場で戦う者らしい存在感はあった。
 ユウは招待客の護衛と挨拶を交わしながら厨房へ向かう。
 農業法人の厨房と比べると小規模ではあるが、教職員と生徒全員の食事を作れるだけあってかなり大きい。
 今は、オードブルの補充や各種飲み物……茶や酒やノンアルコール飲料の用意で大忙しだ。
「そろそろ焼けると思うんだけど」
 中身の見えないオーブンの前で止まり、覚醒者の鋭敏な臭覚で感じ取る。
「うん」
 分厚いミトンをはめて、それ以上に分厚い鉄扉を開けさらに分厚く大重量の鉄板を取り出す。
 焼きたての甘さは暴力的とすらいえる。
 作業中の生徒の視線が集まり、ケーキの近くに丘精霊がいきなり出現する。
「今日は色違いなんですね」
 ナイフとフォークでケーキに迫るルルをわずか1言で制する。
「ウェディングケーキですよ」
 ルルが停止した。
「作成の手伝いをすれば喜ばれると思いますよ。普段、肩車と護衛をしてくれる社長さんへのお礼を添えると喜ばれるかも」
「ユウすごいね」
 きらきらした目でユウを見上げた。
 妊娠発覚以後に上がりっぱなしだったテンションが少しだけ落ち着き、自分用のエプロンを取りにいく。
「しさいもももっとお礼言えばいいのに」
 ユウの表情が一瞬陰ったことに、丘精霊は気付かなかった。
「やっほールルさん」
 メイム(ka2290)が厨房に顔を出す。
 ルルは、珍しくつまみ食いを我慢しているのに手にも顔にも生クリームが大量についている。
 あまり器用ではないのだ。
 だからユウが任せたのは試作品で、本命完成後はルルのおやつになる予定だ。
「管理人さん達忙しそうだね。つかまらないよ」
 聖堂教会が王宮に提出している書類では、この地での農業を任された土地の管理人ということになっている。
「かまってくれないの。……てーせー。忙しくしていて私を構ってくれないので困ります」
 ケーキから体を離して、私困っていますというポーズをとる。
 どうやらイコニアの言動を真似ているらしい。
「ユウ?」
 何故かしゅんとしてしまったユウに気づき、助けを求める視線をメイムに向けた。
「個人間の関係だからね~」
 ユウの気遣いを結果的に無視して過労で倒れ、恥ずかしさと情けなさでユウをまともに見られない某司祭。
 ユウは嫌われたのかと不安に思い、目を逸らされたりイコニアの気配を感じるたびにこの状況だ。
「ルルさんは、式でも羽目を外さない様にね。銀髪蒼眼のエルフとか生まれてきたら皆びっくりするからー」
「フィーナにも似たようなことを言われたような気がしま……このしゃべり方めんどくさーい」
 精霊の気配がゆるくなる。
「ごめん。フィーナの一緒にいて楽しかったことしか覚えてないや。いちおー気をつけるね」
 ドラグーンの細く優美な指が精霊の肩にめり込んだ。
 メイムも無言で精霊の頬をむにむにする。
「ルル様、お二人の赤ちゃんを祝うのはとても素敵なことだと思います」
 穏やかな口調なのに、ルルは怖くてたまらない。
 自己を構成する非人間的部分に助けを求めても、無理だ諦めろという意味の答えしか返ってこない。
「へんじは~♪」
「反省します絶対気をつけますっ。黒毛の人間のまま産まれるようしますーっ」
 丘精霊は、9歩下がって10歩進むペースで成長していた。

●舞台裏
 瀟洒なグラスが勢いよく置かれ、透明な氷が軽やかな音を立てた。
「こんなことになると分かっていたら誘いになんて乗りませんでした」
 結婚年齢が早い傾向のある農村なら、生徒と同じ年齢の子供がいてもおかしくない女性だ。
 ルルのお世話係と化した社長に代わって采配を振るうこともある女傑であり、精霊に妊娠を告げられるという特異な経験をした妊婦でもある。
 アリア・セリウス(ka6424)は静かに続きを促しながら、女性に気付かれないように目配せをした。
「あの人もね。農業で起業したいからっていきなり村に来て、元騎士だってことを信じてもらえずうろうろして」
 カインがほぼノンアルコールなカクテルを差し出す。
 勢いよく煽る彼女には、普段の威厳も知性も感じられない。
「根暗でガリ勉の行き遅れを押しつけられてこうですよこうっ」
 ハンターが一定の安全を確保し、最初期メンバーが新たな人材を求めた際に最初に呼ばれて応じた結果が現状だ。
 行儀悪くげっぷを1回。
 それが切っ掛けとなり、直前までの醜態が嘘のように冷たく制御されたアルカイックスマイルに戻る。
「ありがとうございます。おかげでストレスを解消できました」
 アリアの美貌にも、アリアの魔性の声にすら耐える非覚醒者だ。
 彼女が落ち着いたのなら本来の仕事にとりかかることができる。
「この地で新しく紡がれて進み、産まれていく幸せと命に」
 耳の感覚を、禁忌とされることもあるところに向ける。
「何を祈り、願い、込めた式にしたいのかという理想」
 それを持たないなら参加しても大勢の不幸を招くことになる。
 そう、音楽的に響く声で精霊と人間に問いかけた。
「みんななかよくです。人間にあわせた思考ができなかった頃から変わりません」
 ルルが姿を現し、その言葉がアリアの耳から心に届く。
「この子を守るためです」
 妊婦が腹に手を置き断言する。
「あの人と私の年齢を考えると立場も財も継承に失敗する危険が大きい。故に」
 貴賓相手の挨拶回りを終え、短時間の休憩をするためやってきたマティを視線で捕獲する。
「夫婦と子供の3人でお世話になりますね」
 マティは、表情筋の制御に失敗した。
「来年にはマティ様も司祭様でしょうか」
 エステルが微笑む。
 花嫁やイコニアとは比較にならないほど温和な性格だが、両者が酷すぎるのでマティにとっての救いにはならない。
「さて、マティ様としては何が重要だと思われますか?」
 エステルは一線級の聖導士であり、この地での教師の実績もあるハンターであり、聖堂教会の一派閥から司祭位と引き替えにハンター廃業を望まれる覚醒者だ。
 王国で生きていくつもりならエステルの問いを拒否できない。
「人を正しく選び、協力を得ることです」
 花嫁の笑みが濃くなる。
「若いと評するのは失礼でしょうね」
 エステルが軽くうなずくと、マティの額にじわりと汗か浮かんだ。
「及第点としましょう」
 意識せず安堵の息が漏れ、倒れかかったところをカインに支えられる。
「出席者が集まるまで後数日かかりますが」
 花嫁後援者としてマティも属する派閥から役職持ちの司祭複数、花婿関係者として王国騎士他、農業法人関係者として王国内の様々な派閥から貴族や豪商。
 参加者の格を考えると大聖堂でも問題ない。
「正式な席順は当日とはいえ素案は必要です。見せて頂いても?」
 マティは、イコニアがどのようにして鍛えられどのようにして神経をすり減らしていったか分かった気がした。
「敵対派閥や今まで関係のなかった派閥の関係に少しの変化が起きるかもしれませんね」
 ある分野で盟友関係でも別の分野では仇敵同士ということがあり得るのがややこしい。
「この方と、この方。この方達も。前の世代からの確執があるかもしれません」
「すぐに確認します。失礼しますっ」
 確認するのはイコニアから渡された引き継ぎ資料。
 政治を志す者にとって垂涎の情報の山であり、扱いを間違えれば普通に死ぬこともできなくなる危険物だった。

●さらに裏
「お入り下さい」
 許可は予想以上に簡単に出た。
「お邪魔するよー」
 医療棟の中は匂いが薄い。
「おはようイコニアさん。少しでも休めた?」
 寝たままの司祭が薄らと目を開く。
 奥歯を噛んで身を起こそうとして、結局起き上がることができず力を抜いた。
「ルルさんユウさんにも協力して貰うけど、あの雲のの浄化をお願いしたい」
 壁に設置されたディスプレイを起動する。
 繋ぎっぱなしのPDAから画像が読み込まれ、不自然な動きをする積乱雲が移り出される。
「前回の調査も鑑みて今回を逃せばイコニアさんは手出しできなくなるよ」
 寒いし風も徐々に強まっている。
 もともと体力が足りないイコニアでは、体調が全快しても近づく前に限界を迎えてしまう。
「ユウさんの観測では雑魔も散見しているし汚濁の術式っぽい、その内歪虚化するよ」
 司祭のまぶたがぴくりと動く。
「座して待つなんてらしくない」
 気遣うように言う。
 歪虚殺しをあらゆる面で好むイコニアにとっては、人格の核を嘲笑われるに等しい暴言であり挑発だ。
「イコニアさん」
 ここに来てもずっと考え込んでいたイツキ・ウィオラス(ka6512)が、決然と口を開く。
「体調を聞いてもいいですか」
 司祭は己の喉にゆっくりと指を伸ばし、何度か咳き込んでから声の調子を確かめる。
「疲れを自覚できる程度には回復しました。スキルだけはまだ使えるようです」
 頭の向きを変える力もなく声も小さい。
 ただ、目には力がありそれがイツキにとっての最後の後押しになった。
「浄化担当として同行してください」
 その程度の余裕ならあると判断した。
 イコニアには自らを守る力がなく、事故があれば再起不能や戦死もあり得ると理解した上での要請だ。
「――犠牲は、出るものです。けれど、犠牲を強いる事は、かつてこの地で起きた悲劇と同じ」
 反論は無い。
 加害者の記憶も、おそらく加害者の魂も持っているイコニアが否定できる訳がない。
「お願いします」
 この作戦によりイコニアに後遺症が残るなら、生涯を賭してでも彼女と地の為の剣となる決意であった。
「お願いするのは私の方です」
 目を向けることもできない状態で目だけで笑う。
「私の法術を活かせる歪虚がこの時期に登場するなんて、エクラの采配を信じたくなるくらいです」
 不安を感じてしまうほどに透明な笑みなのに、何故か酷い禍々しさが感じられた。

●日常
「なーんか物騒な話になってる気がするぜ」
 医療棟の1つ横の棟は明らかに平和で、同時に騒がしい。
 鎧ではなく事務用の装備というか道具を身につけたボルディアが、否応なく慣れてしまった手つきで書類の束を抜き取っては目を通す。
「あわねぇなぁ」
 優れた身体的素質を持つ生徒が事務仕事を希望したり、どう考えても交渉に向いていない生徒が営業的な部署を目指したりしている。
「色々仕込んだからある程度やれてしまうのが拙いんだよな」
 最初は良くても途中で出世が頭打ちになる。
 いくらやる気があっても、いくら努力で補っても無理なものは無理なのだ。
 しかし向いてはいるがやる気が出ない職につかせても別の問題がある。
 途中で腐って努力を止めてしまえば優れた素質も無意味に終わる。
「先生たちに頑張ってもらうとしても……こいつとこいつは無理だろうな。気が強い上不器用だからなぁ」
 訓練場で何度もしごいてやったことがあるので、生徒の性根もある程度なら分かる。
 特徴的な生徒は特によく分かる。
「ある程度希望に添わせるとして」
 事務がある戦闘職と、営業の役割が少しだけある部署を紹介することにする。
「あー」
 気疲れを自覚して椅子の背にもたれかかる。
 窓の向こうで、ワイバーンのシャルラッハが我関せずと装備の手入れをしていた。
「お前剣ってどこに持ってたっけ」
 ワイバーンは、剣を固定する装備を身につけた腕や背中を面倒臭そうに見せた。
 微かな音が聞こえた。
 魔導トラックのエンジン音とタイヤが地面を押す振動だ。
「ひぇぇぇ」
 校舎の近くで停止すると同時に、若いエルフ数人が転がるようにトラックから逃げ出す。
 完全に腰が抜けているようで、四つん這いで恐怖に震える様はほとんど喜劇じみている。
「そんなに怯えなくてもいーじゃんか」
 運転席から降りてきたのは宵待 サクラ(ka5561)だ。
 ちらりと南を見ると、鎧とメイス装備の子供達がかなりの速度で向かって来ていた。
「地平線に歪虚が蠢いているのが見えるんですよっ、生きた心地がしませんでしたよっ!」
 ドラム担当エルフが涙目で叫ぶ。
 なお、リーダーは無言で目を閉じぷるぷる震えている最中だ。
「見えたの?」
 サクラの目が細められ、無数の難事を解決していたハンターの目つきに変わる。
「そりゃ見えますよ! え、見えない?」
 他のメンバーの否定の言葉を聞いて困惑する。
「血筋かもね」
 口外しないように伝えてから、ようやく薄目を開けたリーダーの前に回り込む。
「結婚式で子供達にエルフの歌も聖歌も歌ってほしいからねー。明日もお願いね? ついでに丘で歌えばルル様の覚えが目出度くなってみんなハッピーだと思うよ」
「ちくしょうっ! 恩がある社長が何も言わないなら違約金叩きつけて帰れるのにっ」
 大の大人が泣いていた。
 だって怖いのだ。
 ハンターが纏めてなぎ倒す闇鳥は、人里に出現したらその日のうちに村や町が消えるのを覚悟する必要のある脅威だ。
 それがうようよいる場所で活動するのは精神的にも肉体的にも辛すぎる。
「ひょっとしてリーダーも見えた? そう」
 エルフにだって血の交流はあるだろう。
 この2人、この地の古エルフの血を引いているのかもしれない。
「ただ今戻りましたー!」
 生徒の声が遠くから届いた瞬間、エルフミュージシャンの全員から情けない声が聞こえなくなる。
 何事もなかったように立ち上がり、陽気で愉快なエルフとして子供たちを待ち受ける。
 大したプロ意識であった。
「時代が変われば価値観も変わるのかな?」
 古エルフとは何もかもが違う。
 メンタリティは王都の都市住民のそれに近い。
 良くも悪くも変わらない聖堂戦士団や王国と比較しながら、サクラは一度風呂に入ってから医療棟へ向かう。
「安心したよ」
 数日の寝たきりで固くなった体をマッサージでほぐす。
 される側の司祭は痛みに耐えようとするが時折妙に色っぽい声が出る。
「食事も残さなくなったしね」
「食べないと動きませんから」
 そういうイコニアは動けていない。
 変わったのは上昇した体温と多少大きくなった声くらいだ。
 全て、サクラが食べさせていた。
「そう言えばそろそろ子供達の就職先呼ぶじゃん? 多目に宿泊費とるとか、泥縄だけど寄付募るとか……今を乗りきることだけに注力するならちょっとはありかなって思うんだ」
 副作用も分かっているのでサクラは下を向いてしまう。
「泥は私が被ります。悪評覚悟でお金をとっても全然足りないのが問題ですけど」
「そうなんだよねー。話は変わるけど出版は売らない方が良いと思う。ペンは剣より強しって言葉がリアルブルーにはあってさ、将来的に情報操作しなきゃならない時やうちだって情報操作できるんだぞって相手に思わせる時に使えると思う」
「たまにそういう話は聞くのですが」
 ヨーグルトをこぼしてしまい、情けなさそうに眉を寄せる。
「そこまで深刻な問題なのですか? サクラさんが言っているから確保し続けていますが、正直なところ手放すつもりでした。手放しても依頼はできますし」
「んー、そこは知識がじゃなくて実体験の違いかな。破滅した人も得をした人も大勢いたから」
 清潔な布巾で拭いてやる。
「寧ろ農業法人絡みで利益還元ってできないかな。精霊が歩く地の小麦でできたパン、とか付加価値つけられないかな」
 サクラの声に期待の感情はない。
「ルル様が土地に引っ込んだときのことを考えると躊躇してしまいますね」
「だよねー。友好的ではあるけど精霊には精霊の事情があるだろうし」
「サクラさんが付きっきりで事業や売り込みの面倒見てくれるなら紹介しますけど」
 紹介即ち幹部として就職ということだ。
「この状況でハンターを辞められる訳ないでしょーが」
 地球は月しか残っていない。
 いつ再び邪神が現れるか分からない。
「意外と責任感強いですよね」
「イコちゃんほどじゃねーよ」
 遠慮容赦なく笑い合う2人の距離は、精神的にも肉体的にも近かった。
「お邪魔でしたか?」
 銀の盆を持つカインに、サクラが悪意なく噴き出した。
「ごめんごめん、イコちゃんせいぜい頑張んなよ?」
「茶化さないで下さい。よっ……と」
 歯を食いしばって上体を起こす。
 じゃあねと言って立ち去るサクラを見送り、ほっと柔らかな息を吐く。
「ありがとうございます。私の次であるマティもお世話になっているようで」
「そういう意味で手伝っている訳ではありません」
 カインの声は柔らかいが返事は断固としていた。
「僕は」
 カインにとり当たり前の事を口に出そうとして直前で踏みとどまる。
「いえ、まずはあなたのことです」
 少し乱れたシーツをかけ直してやり、水差しを中身ごと新しいものに変え、イコニアを観察して体調を推測する。
 嫌な予感がある。
 いつも通りに見えるのに終わりが近づいているかのような、二度と味わいたくなかった感覚だ。
「柑橘系の香りは大丈夫ですか?」
「え」
 イコニアの表情が一瞬だけ年相応のものに戻り、しかしすぐに完全に制御された表情に戻る。
「ずっとベッドの上なので暇にしていたのです。お願いできますか」
 カインは恭しく答えて、万が一にもイコニアに害がないよう控えめに熱して香りを出す。
 イコニアは上体を起こしたまま目を閉じる。
 化粧ができていないので不健康な白の肌がよく分かる。
「体調がよい時に食べて下さい。キャラメルミルクラテと」
 タンブラーをサイドテーブルへ置き。
「固めのプリンです。サクラさんと医者の先生にも相談してつくりました。固めですから食べた気がすると思いますよ」
 保冷剤を入れた小箱をその隣へ置いた。
「この前頂いたサンドイッチと紅茶のお礼です、お口に合うか分かりませんが」
「プロから言われると恥ずかしいです。花嫁修業なんてしなくなったのですっかり腕が鈍っていて」
 普段ほどの気力体力がないので、いつもは避けている話題を振ってしまう。
 カインは、一瞬だけ考えた後に反応しないことにした。
 行動を起こすには、まだ少し距離がある。
「また作ってくださいね、僕が食べた中でも一番美味しかったので、特に紅茶は僕より上手い」
 本心だ。
 イコニアの技術に粗があると理解した上で、心からそう思ったのだ。
「あの」
「歪虚への警戒に出ます。動きが活発化していますし、万が一にも襲われる訳にはいきませんから。……結婚式も、あなたも」
 顔を赤らめることすらなく言い切り、医者に挨拶をした上で外へ出る。
 小さな雪が、冷たい風に舞っていた。

●古エルフ
 イェジドが猛り吼えている。
 魔を祓う咆哮が闇鳥の動きを乱し、威力優先の短距離ブレスを当たらないブレスに変える。
 それは副産物でしかない。
 本来の目的は主の攻撃支援だ。
 銀水晶の騎士剣と双龍剣が軽やかに舞い、高密度負マテリアルをまるで気体であるかのように切り裂く。
 大柄な闇鳥1羽を左右の連撃で仕留めても攻撃は終わらない。
 2剣の間に生じた衝撃波が、神秘的な月光の刃と化してアリアの視線の先を切り裂いた。
「小型闇鳥もいたわね」
 見えていた闇鳥以外の手応えがあった。
 以前此処にいた小型闇鳥とは異なり、潜んでいても隠しきれない殺意が放たれていた。
「素直すぎる精霊に接していたのだから」
 槍に構え直して鋭く踏み込む。
 闇鳥ではあるが濃さも重さも足りない固体が3体纏めて貫かれる。
「良い意味でも悪い意味でも影響を受けたということかしら」
 強く愛し。
 強く悲しみ。
 歪虚に成り果てても変わらない。
 剣と槍の届く距離から歪虚を駆逐した後、周辺への警戒はイェジドに任せて鎮魂の歌を歌う。
 歪虚をあぶり出す効果は無いが、動きの鈍った歪虚に隠密に失敗させる程度の効果はあった。
「また」
 イツキの目には数百年前の光景が重なって映っている。
 人間に森を焼かれ森を追われたエルフが、肩を寄せあい暮らしている光景だ。
 重なって見える闇鳥のもとが経験したことで、この闇鳥が現実と思い込んでいる過去だ。
「抜け出せなくなってしまうわよ」
「アリアさんには、聞こえているのですか」
 闇鳥の体当たりをイェジドのステップで避け、青龍翔咬波を横から貫通させて確実に止めを刺す。
 重なって見えるエルフの少年が、無音のまま悲鳴をあげて倒れた。
「イツキには見えているのね」
 イェジド2頭が同時に吼える。
 非常に広い範囲にウォークライが響く。
 懲りずに入り込んできた歪虚が影響を受け、そこにアリアの星神器が炸裂してまとめて滅ぼした。
「はい」
 1言口にするのに、大きな力が必要だった。
「慣れてしまったのかもしれないわ」
 悪意にだ。
 感性が鈍ったわけではないが、慣れてしまい必要以上に悩まない癖がついてしまう。
「私はっ」
「無理に言葉にする必要はないわ」
 言葉で穏やかに止め、そうしている間も刃を振るって歪虚を撃ち減らす。
「決めつけてしまえば他の道が見えづらくなる。じっくり考えなさい」
 古エルフの悲鳴が聞こえているはずなのに、アリアは疲れを表に出さずイツキとお互い援護しあっていた。
「私は、皆さんは」
 今穂先にかけている歪虚もエルフだったのだ。
 正確にはエルフの残滓が含まれているだけだが実質は変わらない。
 彼らは村に居た。
 悲憤を抱いたまま、哭いていた。
「何かが、彼らを縛り付け、より深い闇を呼んでいるのなら」
 イツキが討つべきものは、其れに他ならない。
 だが、そんなものが存在するのか。
 存在するとしても1個人の手が届く存在なのか。
 若く純粋なイツキは若さと純粋さ故にへこたれずそれ故に前へ進めない。
 負マテリアルの気配が増す。
 アリアが星神器を手にしかけて元の位置に戻す。
 無色透明なその歪虚は、現代のエルフの前に何度か姿を現した小型歪虚であった。
「悪夢の続きは、私が引き継ぎます」
 萎えそうになる手足に力を込め、群青の魔槍を両手で構えて歪虚に向ける。
 歪虚は攻撃してこない。
 それでいて自ら滅びを受け入れようともしない。
「だから、せめて」
 これ以上憎しみに囚われない、優しい夢を――。
 魂を削るようにして繰り出された槍が、強いとはいえただの歪虚のはずの闇鳥に柔らかく受け止められ防がれた。
「望むなら受け取れ」
 アリアの耳には明瞭に、イツキの耳には途切れ途切れに、歪虚の声が届いた。
 歪虚であることを拒否した闇鳥が崩れていく。
 負マテリアルが霧散し、核となっていた記憶だけが抜け出て漂う。
 イツキに避ける気はない。
 質量を持たない想いを真正面から受け止め。
 数秒後、喉を大きく逸らして悲鳴をあげた。
 怖い。
 痛い。
 遠い祖先から繋がってきた流れが断絶するという感覚が現実として流れ込んでくる。
 足場が消え心から無くなっていく実感がただ恐ろしい。
 無意識に救いを求める視線を北に向けると、今度は虚ろを満たすほどの膨大な憎悪が噴き出す。
 人間の損得のみで判断し古エルフを滅びに追いやった彼奴が難い。
 輪廻を放棄し歪虚に堕ちででも絶対に報復する。
 これ等全てが、古エルフが抱え一部イツキに移された想いである。
「見ろ」
 古エルフ覚醒者の最後の言葉が内側から届く。
 遠いはずの積乱雲がイツキの目に近く見える。
「あれは、産まれてくるはずだった子供達への想いだ」
 愛。
 絶望。
 憤怒。
 どれか1つでも強すぎて、イツキは己が消えないよう耐えるので精一杯だった。

●呪い
「イコちゃん大丈夫かなー」
 もはや台風じみるまで成長した積乱雲の下で、サクラとイェジドが真上を見上げている。
 雲に見えるのは正負のマテリアル。
 中央の空洞部分、台風でいう目の部分に新たな気配がうまれつつある。
 スキルで浄化するには距離がありすぎ、地面を浄化しても思ったような効果はなかった。
「西風がんばれー」
 帝国でキャリアーとしての訓練を受けたグリフォンが、荷物の重みに耐えきれなくなる直前だった。
 それほどに風が強くしかも不規則だ。
「イコニアさんまだ生きてるー?」
 司祭の体調はヒールで治るようなものではない。
 だからメイムは声だけかけてみた。
 返事は聞こえない。
 イコニアの声は風に負けていた。
「口動いているからまだ生きてるね。浄化術が使えるようになったら言ってねー♪」
 グリフォンが覚悟を決めて翼を広げる。
 風が1頭と3人の重量を軽々と飛ばす。
 メイムとグリフォンは全神経を飛行に集中せざるを得ず歪虚への警戒が薄くなる。
「クウ!」
 空色のワイバーンが鋭角に進路を変える。
 南から殺到してきた目無し烏に向かいファイアブレスを連発してその数を減らす。
 しかし多すぎる。
 100を超える集団が3つ、イコニア1人を狙って加速する。
 途中で集団同士がぶつかり20、30と激突して落ちていっても全く止まらない。
「失礼します」
 ユウが籠から身を乗り出す。
 全長2メートルの魔剣を素晴らしい速さで振って仕留めるが対単体攻撃でしかない。
 イコニアへの直撃を防ぐのが精一杯で、強風で逸れたり最初から外れコースだった烏がユウやグリフォンに当たりかける。
 ユウは足場最悪なこの状況でも躱せるのだがグリフォンはそうはいかない。
 飛行時には回避他の能力が下がるためかなりの確率で被弾する。
 ライフリンクを繋いでいるメイムから凄い勢いで生命力が引き出され、メイムは生命力の回復に専念するしかなくなる。
 そこまでして飛び続ける甲斐はあった。
 イコニアから禍々しいほど荒々しい正マテリアルが噴き上がり、緻密な陣が宙に組み上げられていく。
 ユウが目を見開いた。
 時折触れあっているのにイコニアの体温が感じられない。
「駄目ですっ。これ以上は」
 残念ながら歪虚相手の防戦に忙殺されているため、イコニアを止める余裕はない。
 メイムは一瞬だけ迷い、負担をかけない速度での降下を命じてから歌い始める。
「行くよキノコ。遠き同胞聴いて欲しい始めは竜の子鎮めの唄、続くは只人が、澱みを濯ぐ祈念の声♪」
 対象に活力を与える歌だ。
 ほぼ荷物扱いで運ばれてきたパルムが元気に踊り、消えかけの蝋燭の如く輝く司祭を手助けする。
「今日の良き日に」
 陣が一瞬光って消えた。
 正のみのマテリアルが正負入り乱れる流れに介入する。
「歪虚の滅びを」
 聖堂教会司祭が厳かに宣言。
 正マテリアルに戦意が注がれる。
 一定の距離をとっていた負マテリアルに襲いかかり、分断し、食らいついて効率よく相殺していく。
 積乱雲の一角が消滅する。
 マテリアルの流れが狂う。
 中央に注がれる力が消え逆に周囲へ流出を始める。
 産まれかけていたものが悶え、密度が下がっていった。
「次はあそこです」
 爛爛と輝く緑の瞳が反対側の雲へと向く。
「だめ」
 メイムが浄化術を使って司祭の体の汚染を排除する。
 心音がない。
 回復しない。
「駄目です!」
 メイムがイコニアに抱きつき背中で歪虚を防ぐ。
 透明な涙を浮かべながら、一切の容赦なく心臓をマッサージし再起動させる。
 止まっていた呼吸も再開し、司祭の体から拡散しかけていた魂とマテリアルも元へ戻った。
「このまま医療棟までいくよー」
 グリフォンが高度を下げる。
 風の勢いはますます強くなる。
 上空の負マテリアル濃度は勢いよく下がる。
 そして、ハンターと司祭が今回手を出さねば臨界に達するはずだった愛憎の炉から、純白の毛で覆われた巨大な何かが現れた。
「白……鳥?」
 姿形だけなら愛嬌を感じる。
 だが歪虚だ。
 数百メートル離れたこの距離からでも分かる殺意を感じる。
「下っ」
 メイムが二十四郎に気付き、ユウがイコニアを抱えて空渡で宙を駆け下りる。
「よろしくお願いします!」
 イェジドは主も置いて全力で駆け出した。
「あれを倒せばおわり~?」
 グリフォンが180度旋回して上昇する。
 まるで要人を乗せでもしているかのように絶対に危険な場所には近づかなかったワイバーンと速度をあわせる。
 ワイバーンの上、フィーナの隣で、丘精霊ルルが今にも泣き出しそうな顔で白鳥を凝視している。
 古の怨嗟がどのようなものであるのか、どれだけのものであるのか、ルルはついに理解した。
 白鳥はハンターに気付かず闇鳥最大拠点へ去る。
 彼あるいは彼女を祝福するはずだった存在は、もはやこの世には存在しない。

●祝い
 ハンドベルの音が厚みを増していた。
 苦しみを知った上で喜び祝福する、余計な装飾のない祝いの音楽だ。
 この結婚式はこの地の精霊に祝福されたものとして認識してもらわなくてはならない。
 式場のすぐ外はハンターが、そこから数キロ地点まで魔導トラックに乗った聖堂戦士団が巡回と警戒を行っている。
「続いてハンターの言葉、なのっ」
 何故か精霊本人が司会をしている。
 台詞を間違い、進行を間違い、来賓の名前を間違うことも複数。
 それでも誰も止めようとはせず微笑ましく見守っている。
 祝福の気持ちだけは誰より強い。
「はい」
 司祭の上座の席を押しつけられたエステルが起立してマイクを受け取り、ルルを誘導しつつ無難な挨拶を終える。
「両腕が塞がるのはよくないの」
 アリアから贈られた言葉を自分なりに理解し消化したものを3人に贈る。
「片手が開いてるから新しいものを掴めて、産み出せるの」
 これまでハンターに守られてきた丘精霊は、今はもう自ら動いていた。

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MVP一覧

  • 聖堂教会司祭
    エステルka5826
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウスka6424
  • 闇を貫く
    イツキ・ウィオラスka6512

重体一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • 闇を貫く
    イツキ・ウィオラスka6512

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    シャルラッハ(ka0796unit005
    ユニット|幻獣
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ナライ
    西風(ka2290unit006
    ユニット|幻獣
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ウィザード
    ウィザード(ka2434unit003
    ユニット|CAM
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    レドリックス
    レドリックス(ka5336unit019
    ユニット|自動兵器
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ハタシロウ
    二十四郎(ka5561unit002
    ユニット|幻獣
  • 聖堂教会司祭
    エステル(ka5826
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ヴォルカヌス」
    刻令ゴーレム「Volcanius」(ka5826unit004
    ユニット|ゴーレム
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    コーディ
    コーディ(ka6424unit001
    ユニット|幻獣
  • 闇を貫く
    イツキ・ウィオラス(ka6512
    エルフ|16才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    エイル
    エイル(ka6512unit001
    ユニット|幻獣
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    シュヴァルツェ
    Schwarze(ka6617unit002
    ユニット|幻獣
  • 無垢なる守護者
    ユウ(ka6891
    ドラグーン|21才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    クウ
    クウ(ka6891unit002
    ユニット|幻獣

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アイコン 相談卓
カイン・A・A・カーナボン(ka5336
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/12/10 22:10:57
アイコン イコニアに質問!
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/12/10 15:58:59
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/06 22:28:47