【初夢】独裁×偏執フェティシズム

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~4人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2019/01/06 22:00
完成日
2019/02/11 04:22

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング


 ――ああ、これは夢だ。

 目を閉じて見る夢の中で、今が夢だと自覚することがある。

 どうせ醒める夢ならば、あの人の傍に居たい。

 否、どうせ醒める夢ならば
 独占したい
 囚えてみたい
 その瞳に自分だけを映して欲しい
 愛しいその『  』に、思う様触れてみたい。

 そう思ったとして、何の罪になるだろう?



 薄闇が凝ったような地下室で、シャンカラ(kz0226)はじっと"その瞬間"を待ちわびていた。
 寝台の上、龍鉱石のあえかな光に照らされて、密かに想い続けてきた愛しい人が眠っている。
 秘密の部屋に囚われたことも、手首にかかる銀の鎖にも気付かないまま、安らかな寝息をたてて。
 そっと手を伸べ、頬に触れる。想像していたよりもずっと柔らかく滑らかな感触。唇へ指を這わせば、瑞々しい弾力が指先を押し返す。
 こうして触れることを幾度夢に見ただろう。けれど心はまだ満たされない。"その瞬間"を手繰り寄せようとその名を呼ぶ。

「――、――」

 すると長い睫毛が震え、うっすら瞼が開かれた。
 睫毛が落とす影の向こうからゆっくりと――邪な願望を見透かしているかのように、焦らすように少しずつ、潤んだ瞳が現れる。
 貴石のような瞳の中に、自分だけが映り込んでいる。他でもない自分だけが。
 得も言われぬ恍惚に肌が粟立つ。焦がれ続けたその瞳は、戸惑いに揺れる様さえ美しく、一瞬たりとも逃すまいと脳裏に灼きつける。

 ここは何処?

 当然の問いかけに、シャンカラは歓びに掠れた声で応じる。「誰も知らない部屋ですよ」と。
 徐々に状況を把握し、戸惑い揺れるばかりだった瞳に怒りと必死さが滲み始める。不当な扱いに抗議するのは当然のこと。だからこそシャンカラは"こうした"のだ。

 初めて会った時から、ずっとその瞳に惹かれていた。
 どこまでも深く澄み、語らう時は穏やかな色を湛え、微笑みに細められれば綺羅と輝くその瞳に。
 けれどそれはあくまで、憧れや憧憬といった類のものだった。
 それが執着に変わったのは、初めて共にした戦場でのこと。
 敵に据える鋭い眼差し。守るべきを守るため、苛烈な闘志に燃えた瞳の強かな美しさ。その瞳に捕われたい欲求に心が震えた。
 けれど歪虚に立ち向かう仲間である自分には、決して向けられることはない。

 だから。

「申し訳ありません、もうここからお出しするわけにはいかないんです。これからはずっとここで過ごして頂きます――僕とふたりきりで」

 質問詰問、拒絶に罵倒、あらゆる負の言葉を投げつけられてもシャンカラは動じない。むしろますます鋭くなる双眸をうっとりと眺め続ける。
 やがて絶望に塞がれた瞳から、一筋の涙が零れた。顔を近寄せ、その雫を恭しく唇で掬いとる。

「もう諦めてしまうんですか? らしくないじゃありませんか……もっと抵抗してください。決して赦さないでください、僕を。
 ――ほら、目を開けて?」

 濡れた唇を目許に押し当てると、湿った音が微かに響いた。


リプレイ本文


 夢と知りせば覚めざらましを
 夢然ればこそ覚むるものとて
 

●追憶虜囚
 誰にも暴かれずにいた安堵感と、一抹の罪悪感を喚起する解錠音に、ユリウス・ベルク(ka6832)は唇を歪ませた。けれどすぐに普段通りの微笑を作り部屋に踏み入る。
「ただいま、戻ったよ」
 品が良く、それでいて少女の好みそうな調度品を集めた瀟洒な部屋。少し薄暗く感じるのは、この部屋に不釣り合いな窓の鉄格子のせいだろう。
 揺り椅子にもたれていた少女は、彼を認めると愛らしく微笑んだ。

(ああ、)

 その眼差しに捉えられ、彼は暫時立ち尽くす。
 薄暗い部屋にあってなお眩い金の髪。小柄な身体を包むほど豊かに伸び、いっそ神々しささえ漂う。幼さを体現したような夢見がちな瞳、それを縁取る長い睫毛。柔らかな頬はほんのり上気して、唇は食みたい衝動を禁じ得ないほど瑞々しい。
 あと十年もすれば、良家からの縁談が引きも切らぬ美女になるだろう。
 けれどユリウスには今この瞬間の彼女が――稚く、世間というものに擦れておらず、汚い物事や非道いことなど知らないまま――綺麗なものと夢ばかりを胸に抱いているあどけない彼女こそが好ましく、慕わしくてならない。

 どうしたの、と問いたげに笑顔で小首を傾げる少女。彼は軽くかぶりを振って歩み寄る。
「櫛を買ってきたんだ。ほら、螺鈿細工が綺麗だろう?」
 七色に煌めく装飾を見、彼女はふわっと目を細めた。椅子の後ろへ回り込み、一筋一筋敬々しく梳いていく。楽しげに揺れる小さな爪先。時折覗く口許は、今にも歌を口遊みそうなほど楽しげで。
 鉄格子などまるで気付いていないかのような無邪気さに胸が詰まり、背中から抱きすくめた。
「ごめんね……本当はこんなことはしたくない。でも、こうしておかないと、君はすぐに居なくなってしまう気がして」
 身を切るような懺悔に対し、彼女はにこにこと微笑み続けている。その表情が少しも揺らがない事に妙な焦燥を感じ、
「ここへ君を押し込めてからどれくらい経つだろうね? でも僕はこれからもきっと君を離してあげられない。もう君をどこへも行かせない、家族の許へも友達の所へも」
 一層強い言葉で執着を示しても、幼い唇はにっこりと笑みを刻んだままだった。

 愛しくて堪らなかったその笑顔が、胸の芯を凍えさせる。
 こんな風に常に微笑んでいるばかりの子ではなかった、もっと沢山の魅力的な表情があったはずだ。
 ――そう、全て過去形。
 全ては彼の記憶の中の事。何故なら彼女はこの幼さで永遠に時を止めてしまったのだから。彼女が常に微笑んでいるのは、彼が彼女の笑い顔しか覚えていないからに他ならない。
 あんなに愛おしかった彼女の表情や仕草は、彼女が時を止めたあとも独り歩き続けてきた歳月に流され、思い出せなくなってしまった。彼女の笑顔はそんな不義理な自分を言外に責めているようで。
 固く目を閉ざし、嫌な想像を振り払う。そう感じるのは自責の念があるからだ。夢の中とはいえ、彼女をそんな風に歪めていることにも罪悪感がないわけではない。けれど、一種不可侵な清らかさと可憐さを秘めた微笑を見つめていると、胸を苛む一切の感情はたちどころに溶けていく。
 頬にひとつキスをして腕を解くと、再び髪を梳き始めた。彼女も何を尋ねるでもなくまた足を揺らせだす。
 どんなに不自然に歪んでいても、永久に失ったはずの彼女と居られる時間は得難く尊い。矛盾や後悔に目を塞ぎ、偽りの安らぎを享受する。

「ずっと一緒だよ。
 君とたくさんお喋りをして、君の頬にキスをして……ずっと、ずっと――」

 熱に浮かされたように囁く彼を、微笑の少女が振り返る。せめてこの表情だけは忘れまいと、彼は飽くことなく眺め続けた。



●鎖縛叙情
 素肌の胸に手を這わすと、厚みのある胸筋が手のひらを押し返す。指を滑らせればぴくりと跳ねる肩。愉しくて悪戯にくすぐっていると――突然、我に返った。

 胸?
 裸の?

 星野 ハナ(ka5852)は恐る恐る我が身を見下ろす。下着に包まれた自らの胸。付根まであらわな太もも。その太ももが跨っているのは横たわる誰かの、下着1枚着付けたきりの骨ばった腰。そこから続く割れた腹筋、胸板、碧い鱗に覆われた首――あられもない姿で四肢を拘束されたシャンカラ(kz0226)が、熱っぽい顔でハナを見上げていた。
「……うひゃらほげだばっ!?」
 全力で飛び退ったハナ、ベッドから転げ落ち強か後頭部を打つ。痛みと混乱で泣きじゃくり、床の上を転げ回る。
「うぇーーん、うわーーんっ! 何これぇ……記憶……あるよ、あるっ」
 たった今目覚めた心地なのに、この状況に至るまでの経緯を鮮明に思い出せてしまった。

 彼に一服盛るのは容易い事だった。胃袋はすでに掌握済み。いつものように差し入れた手料理を、彼は何の疑いもなく口にした。そうして意識を失った彼を部屋へ運び込んだのだ。
 そうして1枚1枚ゆっくりと服を脱がせた。日頃鎧や外套に包まれ殆ど露出のない肌を、徐々にあらわにしていく高揚感は思い返すだけで肌が粟立つ。手足を鎖でベッドに縛りつけると、自らも服を脱ぎ彼の腰に跨って――そこで我に返ったのだった。

「どうせ正気に戻すなら、もっと前かやっちゃった後が良かったよぅ、深紅ちゃ~ん!」
 守護者らしからぬ恨み言を零しても、大精霊は何も答えてくれない。
 そればかりか普段なら構い倒したくなる反応をする彼さえ、ツッコみひとつ返さない。まだ薬が残っているのか、ぼぅっと天井を仰いでいる。
 ハナは唇を噛む。
(ここがきっと分水嶺、ここを越えたらもう守護者じゃないっ。一線越える前に正気付かせてくれたのは、きっと深紅ちゃんの最後の慈悲――!)
 枕元へ膝でにじり寄る。鎖を解こうとしたはずみで彼の手に手が触れた。温もりに指が躊躇う。堪らなくなって、その手を両手で握りしめた。
「拉致監禁もダメだけど、無理やりも駄目だけど、ぎりぎり合意ならオッケーじゃないかと思うけどどうかなぁ! したいよぅ、貴方としたいよぅ! ディープキスもその先も、全部貴方としたいよぅ!」
 男女の駆け引きも恥じらいもかなぐり捨て、何もかもぶちまける。
「転移してから全然彼氏できないだもん! 好きな人に触りたいよぅ、触ってほしいよぅ、朝までずっと2人でベッドの中に居たいよぅ!」
 突然異世界に放り出された女の子の寄る辺なさは、故郷から殆ど出ずに生きてきた彼には共感し辛いかもしれない。耳に届いているかさえ定かでない。それでも構わず吐き出すと、ハナはぐしょぐしょの頬のまま彼の服を取ってきて、鎖を解き服を着せかける。
 それから自らにカチリと首輪を嵌め鎖に繋ぐと、鎖のもう一端を彼の手に握らせた。例え彼が聞こえていまいが覚えていまいが、良心に従い項垂れる。
「ごめんなさいぃ。官憲につき出すでも何でも。貴方の好きにして下さいぃ」

 と、
「そうですか」
 ぐっと鎖が引かれた。上体を崩した所を逞しい腕に攫われ、ベッドへ仰向けに転がされる。いつの間にか身を起こした彼がハナを見下ろしていた。
「へぁっ!? く、薬はぁ、」
「貴女を刺激しないよう大人しくしていただけです」
「は、」
 彼は不穏な熱を孕んだ眼つきで鎖の先を弄ぶ。
「とても不思議な気持ちです。いつも僕を翻弄するハナさんが、しおらしく僕に組み伏せられているなんて……ぞくぞくします」
 呟き、ハナの濡れた頬へ唇を寄せた。
「――では遠慮なく、好きにさせて頂きますね?」



●似葛戀草
 初めて見るダルマ(kz0251)の寝顔を、ファリン(ka6844)はうっとりと眺めていた。
 豪快な寝相、少々喧しいいびき、裸族に近しい格好で眠る事。彼らしい寝姿に頬が緩む。

 と、彼の右腕が寝台の外に投げ出された。手探りで探すような仕草をし、ぎょっとして跳ね起きる。
「俺の戦斧は!?」
 そしてファリンに気付き瞠目。彼が怒涛の質問を繰り出してくる前に、
「おはようございます、ダルマ様」
 とびきりの笑顔で機先を制した。出鼻を挫かれた彼は胡座に座り直して言う。
「何でお嬢が? つかココどこだ、俺の戦斧はどこやった?」
「まあ、ダルマ様は戦斧を傍に置いて眠るのですね」
「あのなァ、」
「ダルマ様の知らない場所、とだけ」
 ぽかんとした彼だったが、窓の外が明るい事に気付き、
「今何時だ!? ヤベェ、警邏の当番がっ!」
 慌てて髪を結いだしたその鼻先へ、ファリンは1枚の紙を差し出した。
「ご安心ください! 隊長様の許可は頂いています! 何か緊急事態とか無い限りは暫くダルマ様を独り占めです!」
 それは休暇申請書の写し。記されているのはダルマの名だが、その筆致は彼のものとは似つかぬ丁寧なもので。
「あァ!? 俺のきたねェ字とこれを見紛う隊長殿じゃねェだろうに!」
「そこはこうして、」
 ファリンは寝台の端に両手を揃えて置くと深々頭を下げて見せ、悪戯っぽく微笑む。
「お願いした時の隊長様の顔はなかなか面白かったですよ、ふふ」
「何だってそんな事、」
「ダルマ様の性格を顧み、脱出されないよう外堀から埋めました!」
 彼は疲れたように目頭を揉む。
「……状況は何となく理解した。だがお嬢の目的は何だ? 何だってこんな手の込んだマネをした?」
 怒らねェから言ってみろ。そう言って見据えてくる双眸に、ファリンの鼓動が跳ね上がる。
 年長者である彼の目はいつも、年若の龍騎士達やハンター――街へ出れば美しい女性へも――満遍なく配られていた。
 それが今、ファリンだけに据えられている。"独り占め"の言葉が一層の実感を伴って、甘く胸を疼かせる。

 ファリンは寝台へ上がると、仔猫のように手と膝でにじり寄り、彼の褐色の胸に触れた。
「――ダルマ様。私、貴方が大好きです」
 笑顔が好き、温かい声が好き。
 戦斧を振るうごつごつとした手が私に優しく触れてくれるのが好き。
 悩みに対し真摯に応えてくれる心が好き――
「貴方の事が大好きなの。私の事を愛してほしいの。誰も見ないで、私を見て……」
 耳許に唇を寄せ、秘めてきた想いを熱っぽく囁きかける。すると彼は慌てたように身体を離した。
「待て待て。気持ちは、その、嬉しいがよ。隊長殿にはまだ補佐が必要だ、元新米どもも目が離せねェ。いつまでもここに居るワケには、」
「承知の上です」
 挑むように言い、ファリンは服の留め具に手を掛けた。
「だから、短期決戦です」
「何?」
 恥じらいはあるけれど、彼のそういった思いを尊重するためには躊躇ってなんかいられない。怪訝そうに細まるその目の前で、魅せつけるように少しずつ肌をあらわにしていく。
「お迎えが来るまでに溺れさせてみせましょう。……大丈夫。私はじめてですが、自信があります」
 膝立ちになって彼の膝を跨ぎ、太い首へ腕を回す。その顔を胸へ誘おうとした時、ふいに腰を強く抱き寄せられた。驚き見やれば、
「ンな配慮と覚悟した上で拉致ってくれるなんざ、お嬢は俺が思ってたよりずっとオトナだったらしいな。お手並み拝見といこうじゃねェか」
 肉食獣めいて犬歯を見せて笑う彼へ、好戦的に微笑み返す。
「――絶対に逃がしませんからね」
 寝台の軋む音が、やけに大きく部屋に響いた。



●戀着双囚
 深い森の懐に抱かれるようにして、その小屋はあった。
 そこには類稀なる美貌のエルフの青年と、小麦色の肌の精悍な男がひっそり暮らしていた。
「もうご飯できるからね」
「この匂いはお得意のポトフだな」
「当たり。さあ、手を洗ってきて?」
 世間の喧騒から遠く隔たれた小屋には、常に満ち足りた空気が流れる。
 青年は男のため、栄養バランスに配慮した料理を毎食拵え卓に並べる。
 男はそれを実に旨そうに、苦手な野菜のひとかけらさえ残さず食べる。
 食べ終えたあとはふたり揃って皿を洗い、きちんと元の食器棚へ戻す。
 不穏な波風ひとつ立たぬ、健やかで安寧な一定の秩序が保たれた営み。

 ふたりの暮らしぶりを見て、一体誰が想像し得るだろう。
 男が青年に囚われていて、もう1年もこの森から出た事がないなんて。

 元々無二の相棒同士だったふたり。
 たおやかな青年が逞しい男を囚えてしまうのに、力など必要なかった。
 ここに留め続けるため、手錠や足枷を使おうなどと露ほども思わない。
 代わりに夜毎、まるで祈りの儀式のようにある行為を絶やさずにいた。


 夜も更け、青年が窓辺で風に当たっていると、男が連れにやって来た。屈強な腕に抱えられ寝室に運ばれると、まるで羽毛のように優しくシーツの上へ下ろされる。
 次いで、何の躊躇いもなく男が隣に入り込んできた。青年は男のシャツをぎゅっと握りしめ、いつものように囁く。

「――ねえ、ソル。私と一緒にいてね。
 寝ているときも、起きてからも、ずうっと一緒。
 朝起きて最初に私以外と喋っちゃだめだよ。
 ほかの誰かを見つめちゃ嫌だよ。
 もし……もし外へ行きたくなったら、私と手を繋いでね。
 大好きだから、私を拒否しないでね」

 夜毎繰り返す祈りに似た囁きで、男を束縛する。彼はいつも通り優しく髪に触れてくれ、
「ああ」
 短く応えを返し目を閉じた。
 彼は誠実さ故に、青年の懇願を無下にできない。
 そんな彼の気質を理解した上でこういう手段を用いるのだから、青年は自分の賢しさに苦い吐息を漏らした。
(こうするしか、ないもの……)
 彼の強い眼差しは、明日へと導いてくれるよすが。
 太陽のように温かで大きな手のひらに全てを預けてしまいたくなる。
 そんな頼もしい大人の男でありながら、時折見せる少年めいた表情も、愛称で優しく呼んでくれる声も、何もかもが慕わしい。
 もし彼を失ったらと思うだけで心が引き裂かれそうになる。
(ソルは、私のしていることをどう思っているのかな……。もし、もしソルが同じように私と一緒にいたいと思ってくれるなら、私は、何だって差し出すのに。でもきっとそうじゃないから……だから――、)

 やがて青年が眠りにつくと、ソルは密かに目を開けた。濡れた睫毛を拭ってやり苦笑する。
「可愛いことしてるよな。ルース、お前が望むんだったらいくらだって付き合ってやるのに」
 紫の双眸の奥、日中は決して覗かせぬ情を燻らせ、耳朶に吹き込むよう呟く。
「もしお前が俺を諦めようとするなら、その時は俺がお前を閉じ込めてやるよ」
 抱きしめて、目を塞がせて。ずっと繋いで、俺以外何もわからないように――その瞬間を思うと仄暗い愉悦が背筋を奔る。
「……ま、今はその時じゃないさ。じっくりと、その時を待とうじゃないか。今の生活は体が鈍りそうではあるが、お前が相手してくれるんだろ? ……まあそれもじっくりと、な?」

 リュンルース・アウイン(ka1694)とソレル・ユークレース(ka1693)。
 囚え囚われの囚人達は、互いを縛り合いながら今宵も夢へ堕ちていく。深い深い森の中、誰にも知られないままに。

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参加者一覧

  • 道行きに、幸あれ
    リュンルース・アウイン(ka1694
    エルフ|21才|男性|魔術師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

  • ユリウス・ベルク(ka6832
    人間(紅)|26才|男性|魔術師
  • 淡雪の舞姫
    ファリン(ka6844
    人間(紅)|15才|女性|霊闘士

サポート一覧

  • ソレル・ユークレース(ka1693)

マテリアルリンク参加者一覧

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/01/02 05:04:02