ゲスト
(ka0000)
家族の仇を討つために
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/12 19:00
- 完成日
- 2015/01/13 02:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「お兄ちゃん、本当に怖くないの?」
「嘘なんかつかないよ! 俺、前から知ってたんだ!」
山の奥深く、村の大人達も近づかない不思議な場所があった。
そこはまるでリアルブルーの景色を丸ごと切り取って貼り付けたような、古ぼけた鳥居の並ぶ小さな神社。
村人達は以前からその場所を気味悪がり近づこうとしなかったし、子供達にもそれを徹底していた。
実際そこは狐が変貌した雑魔の根城であり、それをハンター達が討伐したのが少し前の事。そしてその狐が元は精霊であり、精霊と共に神社で暮らしていた覚醒者、小夜子の存在が明らかになったのはごく最近の事だ。
「動物を撫でる手つきがとっても優しそうだったし、お化けじゃないよ、あの人」
「なんで神社に一人でいるの?」
「そりゃ、わかんないけどさ……」
狐面で顔を覆った異世界の風貌に村の大人達はやはり不気味さを感じているようだった。しかし子供達にとっては別。
「動物も自分から近づいて行ってたし。あの人は悪い人じゃないよ」
鳥居の影から見た女は、精霊と寄り添いただ静かに時を過ごしていた。その姿を美しく感じる事はあっても、大人達が遠ざけたがる理由は理解できなかった。
「お父さん達も説明すればわかってくれる。だから村に連れて行くんだ」
その時、幼い兄妹の足が止まった。二人の目の前に大きな鹿が立ち塞がったのだ。
その目は正気を失い、威嚇するように前足を振り上げている。震える妹を庇う少年へ鹿が突進しようとしたその時、氷を研ぐような鋭い音が響いた。
抜刀と同時に鹿を切り裂いたのは大人達が気味悪がっていた女であった。鹿が倒れるのを確認し、女は切っ先の血を振り払う。
「こんな所にまで……。村に降りるのは時間の問題か」
「あ、あの……」
「去れ。そしてこの山には近づくな。心配せずとも事は私一人で片付けよう。春の息吹を感じる頃には、森も元に戻っている筈だ」
刃を鞘に納め、女は振り返らずに立ち去っていく。兄妹は礼も言い出せぬまま、その背中をじっと見つめていた。
――この山に一人転移してからどれ程の月日が流れただろう。
この地の事ならばなんでも知っている。春も夏も秋も冬も。それらの時のめぐりを眺める他に、時を紛らす方法もなかった。
そう、だから知っている。この山には既に放棄された、何時の時代の物かもわからぬ廃墟があり、“敵”が根城にするとしたらそこしかないという事も。
冬の山には雪が降り始めていた。面から漏れ出す息は白く空に昇り、帰らぬ日々を過ぎらせる。
右も左もわからぬ異世界で、ただ“力”だけを求める人々の目の中を逃げるように駆け込んだ山の中で、小夜子は一人その身の不幸を呪い続けた。
故郷に帰れる目処はなく。異界の人間と共存する方法もわからない。山の中を彷徨い、ただ生を繋ぐ為だけの日々。
そんな時だ。ちょうどこんな雪の降る寒い日の事だった。狐の精霊が姿を見せ、二人が共存するようになったのは。
言葉は交わせなかったが、逆にそれが心地よかった。小夜子は口数の多い人間ではなかったから。
精霊だろうがなんだろうが、一人ではないというだけで救われた。山はただ糧を得るためだけの土塊ではなく、色鮮やかな庭に変わった。
あんな日々がずっと続けばいいと思っていた。しかしささやかな願いは、あっさりと打ち砕かれてしまった……。
「貴方が人を憎み、殺してくれれば手間が省けたのですがね。まさかなれ合いに走るとは……」
半分崩れかけた廃墟には空から雪が入り込む。その奥にある暗がりに小夜子は目を凝らす。
「折角貴方の家族を私の力で雑魔に変えて憎しみを煽ったというのに殺し合いが起きないとは、ね。
まぁ、それはいいでしょう。神霊樹の分樹……若木が貴方のよくいる、祠の奥にあるそうですね。この地は動物をすべて雑魔化して剣妃オルクス様に捧げさせて頂きます。
若木とはいえ神霊樹があるなら色々と使いどころがありそうですからね」
「その案をはいそうですかと聞かなければいけない理由はないな。……貴様を倒す理由が腐るほどあるのは理解したが」
大切な者を失ったこの山にもう未練はない。だがけじめはきちんとつけなければならない。
雑魔と化した家族を討つことを恐れてこの地から離れた。だがきっと家族だった狐は自分の手でその苦しみを終わらせてほしいと願っていたに違いない。
そんな弱さもここで終わりにしよう。誰かの助けを待つのでも、不幸を呪うのでもなく、今度こそ自分の手で。
「つれないお方だ……交渉決裂、ですね。自分を殺す相手の名前くらいは知っておきたいでしょう。私の名はラキエル。では死になさい」
ラキエルが西洋剣を、小夜子が日本刀を構える。敵意を面で隠し、小夜子は友の為に戦いへ挑む。
「どうもね、結構ややこしいことになってるみたいでね。剣妃オルクスの手先がこの間和解した……小夜子、だっけ。あの人の住んでる山の動物にちょっかい出してるみたいで。
そこかしこで動物が雑魔化してるんだよね。そのうち一体は彼女が討伐して村人を救ってくれたんだけど、自分が何とかするから、の一点張りらしくて。
命の恩人でもあるし、でもまだ本当に味方かはわからないし、何より数が多いし。
そんなわけで雑魔討伐と小夜子の救出をお願いしたいんだ。
雑魔は山に住んでる鹿とか狼とか熊とか。大型だったり攻撃力に秀でるものだったりするのが十体前後。もしかするともっと増えてるかもしれない。
小夜子の方はねぇ……居場所がはっきり掴めてないから討伐しながら、討ち漏らしがないか確認。その合間に探してもらうってことになるのかな。
ちょっとやることが多くて大変なんだけどこれだけ雑魔が同時に大量発生してるとなると原因の歪虚と接触するチャンスになるかもしれない。
山の中をあっちこっち移動するのは骨だろうけどさ、歪虚の足取りを掴むためにもぜひお願いするよ」
「嘘なんかつかないよ! 俺、前から知ってたんだ!」
山の奥深く、村の大人達も近づかない不思議な場所があった。
そこはまるでリアルブルーの景色を丸ごと切り取って貼り付けたような、古ぼけた鳥居の並ぶ小さな神社。
村人達は以前からその場所を気味悪がり近づこうとしなかったし、子供達にもそれを徹底していた。
実際そこは狐が変貌した雑魔の根城であり、それをハンター達が討伐したのが少し前の事。そしてその狐が元は精霊であり、精霊と共に神社で暮らしていた覚醒者、小夜子の存在が明らかになったのはごく最近の事だ。
「動物を撫でる手つきがとっても優しそうだったし、お化けじゃないよ、あの人」
「なんで神社に一人でいるの?」
「そりゃ、わかんないけどさ……」
狐面で顔を覆った異世界の風貌に村の大人達はやはり不気味さを感じているようだった。しかし子供達にとっては別。
「動物も自分から近づいて行ってたし。あの人は悪い人じゃないよ」
鳥居の影から見た女は、精霊と寄り添いただ静かに時を過ごしていた。その姿を美しく感じる事はあっても、大人達が遠ざけたがる理由は理解できなかった。
「お父さん達も説明すればわかってくれる。だから村に連れて行くんだ」
その時、幼い兄妹の足が止まった。二人の目の前に大きな鹿が立ち塞がったのだ。
その目は正気を失い、威嚇するように前足を振り上げている。震える妹を庇う少年へ鹿が突進しようとしたその時、氷を研ぐような鋭い音が響いた。
抜刀と同時に鹿を切り裂いたのは大人達が気味悪がっていた女であった。鹿が倒れるのを確認し、女は切っ先の血を振り払う。
「こんな所にまで……。村に降りるのは時間の問題か」
「あ、あの……」
「去れ。そしてこの山には近づくな。心配せずとも事は私一人で片付けよう。春の息吹を感じる頃には、森も元に戻っている筈だ」
刃を鞘に納め、女は振り返らずに立ち去っていく。兄妹は礼も言い出せぬまま、その背中をじっと見つめていた。
――この山に一人転移してからどれ程の月日が流れただろう。
この地の事ならばなんでも知っている。春も夏も秋も冬も。それらの時のめぐりを眺める他に、時を紛らす方法もなかった。
そう、だから知っている。この山には既に放棄された、何時の時代の物かもわからぬ廃墟があり、“敵”が根城にするとしたらそこしかないという事も。
冬の山には雪が降り始めていた。面から漏れ出す息は白く空に昇り、帰らぬ日々を過ぎらせる。
右も左もわからぬ異世界で、ただ“力”だけを求める人々の目の中を逃げるように駆け込んだ山の中で、小夜子は一人その身の不幸を呪い続けた。
故郷に帰れる目処はなく。異界の人間と共存する方法もわからない。山の中を彷徨い、ただ生を繋ぐ為だけの日々。
そんな時だ。ちょうどこんな雪の降る寒い日の事だった。狐の精霊が姿を見せ、二人が共存するようになったのは。
言葉は交わせなかったが、逆にそれが心地よかった。小夜子は口数の多い人間ではなかったから。
精霊だろうがなんだろうが、一人ではないというだけで救われた。山はただ糧を得るためだけの土塊ではなく、色鮮やかな庭に変わった。
あんな日々がずっと続けばいいと思っていた。しかしささやかな願いは、あっさりと打ち砕かれてしまった……。
「貴方が人を憎み、殺してくれれば手間が省けたのですがね。まさかなれ合いに走るとは……」
半分崩れかけた廃墟には空から雪が入り込む。その奥にある暗がりに小夜子は目を凝らす。
「折角貴方の家族を私の力で雑魔に変えて憎しみを煽ったというのに殺し合いが起きないとは、ね。
まぁ、それはいいでしょう。神霊樹の分樹……若木が貴方のよくいる、祠の奥にあるそうですね。この地は動物をすべて雑魔化して剣妃オルクス様に捧げさせて頂きます。
若木とはいえ神霊樹があるなら色々と使いどころがありそうですからね」
「その案をはいそうですかと聞かなければいけない理由はないな。……貴様を倒す理由が腐るほどあるのは理解したが」
大切な者を失ったこの山にもう未練はない。だがけじめはきちんとつけなければならない。
雑魔と化した家族を討つことを恐れてこの地から離れた。だがきっと家族だった狐は自分の手でその苦しみを終わらせてほしいと願っていたに違いない。
そんな弱さもここで終わりにしよう。誰かの助けを待つのでも、不幸を呪うのでもなく、今度こそ自分の手で。
「つれないお方だ……交渉決裂、ですね。自分を殺す相手の名前くらいは知っておきたいでしょう。私の名はラキエル。では死になさい」
ラキエルが西洋剣を、小夜子が日本刀を構える。敵意を面で隠し、小夜子は友の為に戦いへ挑む。
「どうもね、結構ややこしいことになってるみたいでね。剣妃オルクスの手先がこの間和解した……小夜子、だっけ。あの人の住んでる山の動物にちょっかい出してるみたいで。
そこかしこで動物が雑魔化してるんだよね。そのうち一体は彼女が討伐して村人を救ってくれたんだけど、自分が何とかするから、の一点張りらしくて。
命の恩人でもあるし、でもまだ本当に味方かはわからないし、何より数が多いし。
そんなわけで雑魔討伐と小夜子の救出をお願いしたいんだ。
雑魔は山に住んでる鹿とか狼とか熊とか。大型だったり攻撃力に秀でるものだったりするのが十体前後。もしかするともっと増えてるかもしれない。
小夜子の方はねぇ……居場所がはっきり掴めてないから討伐しながら、討ち漏らしがないか確認。その合間に探してもらうってことになるのかな。
ちょっとやることが多くて大変なんだけどこれだけ雑魔が同時に大量発生してるとなると原因の歪虚と接触するチャンスになるかもしれない。
山の中をあっちこっち移動するのは骨だろうけどさ、歪虚の足取りを掴むためにもぜひお願いするよ」
リプレイ本文
●この刃は護るために
家族のような存在だった精霊を雑魔に変えた剣妃の手先を倒すために、小夜子は一人雑魔の跋扈する山に向かった。
今回、ハンターたちに依頼されたのは彼女の救出と剣妃の手先によって雑魔にされた山の動物たちの討伐だった。
「雑魔と化した動物たちが住まう山に一人でですか。あまりにも危険極まりないのは間違いないですが、それ以上にそれ以上に剣妃オルクスの手先が、元凶を作っていたなんて……。
余程、他者の命を弄ぶのが好きな様ですね……。
とはいえ、剣妃の眷属に一人で戦いを挑むのは無謀以外何者でもありません。何としても止めないと……」
しかし、とユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は同時に相反する心境にもなっていた。
「ですが……彼女が一人で戦いを挑んだ理由、何となく分かる気がします。
彼女にとって大切なものを奴等に奪われた、傷つけられたからでしょう……。
だとしたら、なおさら彼女をここで死なせる訳にはいきません。
……一人で背負い込む必要なんて無いですから」
大切なものを奪われた時背を向けてしまったから、その償いに自分一人でケリをつけようと背負い込む小夜子の心情を、ユーリはほぼ正確に読み取っていた。
「一人で暴走して良いようにはなりませんから……止めなければ……」
シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)の表情はヘルメットのようなものに隠れて見えないが声は真摯だった。
「今回の一連の騒動……この山に何かあるのか?」
ヴァイス(ka0364)が僅かに眉をひそめて呟きながら木々についた新しい傷を中心に辺りを探索する。
奇襲を警戒する対策の一つとして愛犬のワンコに捜索時、周囲の警戒を頼み、異変があれば知らせてもらうつもりだった。
「大型の獣の足跡がある。雪が隠していないからまだ新しそうだな……周囲に注意してくれ」
ヴァイスの言葉に空気が張りつめたような錯覚が生まれるほど、ハンターたちの表情が険しくなる。
ワンコがグルグルと唸り声を上げ、警戒のレベルは更に一段階上がった。
ワンコと違う、それよりずっと低く獰猛な唸り声が前方から複数聞こえ、やがて現れたのは雑魔化している狼が五体。
月護 紫苑(ka3827)が最前線に立つことが推測されるヴァイスにプロテクションをかける。
光が彼の全身を覆い、防御力が上昇すると同時に狼たちが襲い掛かってきた。
「来るぞ、囲まれないように気をつけろ」
機動力がある敵とみなし、手裏剣で足を狙うヴァイス。
シルヴィアが別の個体をリアルブルーで作られた、主に歩兵が用いるライフルでやはり脚部を狙う。
「急いでいますので邪魔者の排除に遠慮はしません……」
言葉通り急いではいるものの、今後のことを考えて彼女が選んだ戦法は敵を素早く倒すことより見方が消耗しないことを考えてのもの。
ユーリもまたこちらのほうが数で劣っていることから無理に突撃はせず、近づいてきた敵をコアとなる剣を中心に、複数の剣が組合わせられた特殊な形状の剣で迎え撃つ。
「効率を考えて二手に分かれましたが……いっぺんに五体来られると少々厄介ですね」
誘い込んだ一体からの攻撃を受け流し、その時にできた隙を狙って眉間に剣を突き刺し絶命させる。
シルヴィアが心臓の辺りを狙って撃った一撃がもう一体を倒し、残りの二体はヴァイスが八方向に広がる星の形をした黒い手裏剣でその偽りの命を終わらせた。
「お怪我はありませんか? 新手の襲撃は今のところないようですし……治療が必要でしたらヒールかマテリアルヒーリングをかけますが……」
幸い大きな怪我をしたメンバーはおらず、紫苑は胸をなでおろす。
「一度雑魔になってしまったら、もう元には戻らないとうかがっているので……倒して解放してあげるのが、せめてもの救い、ということは分かっています。
でも、助けてあげることはできなくても……せめて倒した後、祈るくらいのことは……させて、下さい」
「情報では十数体ということだったな。念のため別方向を探索しているメンバーと連絡を取ってみてくれるか? 祈りたいなら、その間に済ませてくれ。小夜子の行方が分からない以上あまり時間は割けないからな」
「……分かりました。ありがとう、ございます」
ヴァイスの要請を受けてシルヴィアがトランシーバーで連絡を取る。
此方で五体の雑魔を仕留めたこととまだ小夜子の足取りはつかめていないことを報告すると、向こうからは雑魔と遭遇していないこと、小夜子の足取りは同じくつかめていないことが報告された。
「……分かりました。周囲を警戒しながら、こちらも探索を続けます。約半数の雑魔は倒していますが新手が生まれている可能性もありますから、そちらもお気をつけて」
通信を切った後四人は再び雑魔からの襲撃を警戒しながら小夜子の足取りを追いはじめたのだった。
「そうか、向こうで五体が無力化されたのか。ボクたちも捜索しながら行きあったら討伐しなければな」
スノウ・ウァレンティヌス(ka3852)がトランシーバーで聞いたことを自班のメンバーに伝えるとディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が口を開いた。
「今探してる小夜子って人、一緒に遊ぶお友達いなくなっちゃったんだよね? 私でよかったら遊びに来たし、友達を奪った相手をやっつける、とかでも付き合うのに。
一人で背負い込まないで相談してくれれば力になってくれる人はたくさんいたはずなのにね。見つけたらそのことは知ってもらわないとちょっと危なっかしいかな」
鋭敏視覚を使って周囲に気を配りながら夢路 まよい(ka1328)がひとり言のように呟く。
物音がしないか周りの音に気を配りながら歩いているとそのうち楽しくなるタイプらしく、鼻歌を歌いだすと周りの音が聞こえなくなるから止めるように注意を受ける。
「たまにくらい、いいんじゃない? 私たちのほ~から出した音が何かに聞こえたら、反応あるかもだし?」
「そうはいってもなー、下手に雑魔の大群とか来られると面倒だからなー。まぁ、少しずつ来てくれて、奇襲かけられないなら向こうから来た方が手っ取り早いんだけどなー」
武神 守悟(ka3517)が困ったように頬をかくとまるでその言葉を聞いていたかのように鹿の雑魔が六体姿を現した。
耳が警戒を示すようにぴくぴくと動いている。
「……大所帯だな。まぁ、十体以上で来るようなことがなかっただけマシか。失われた命を悼むのはこの場を乗り切ってからだ」
スノウが柄に紫の宝石のはめ込まれた、黒い刀身のバスターソードを構える。
「そんなになっちゃってまで起きてるの、疲れない? もうお休みしちゃおうよ。
私がいい夢見せてあげる……スリープクラウドッ!!」
まよいが雑魔が密集している内に、と空間に青白い雲状のガスを広げる。
眠りに引き込むそのガスは鹿の半数を一時的な行動不能にした。
スリープクラウドの影響を受けなかった鹿の一頭が不意打ちに苛立ったように突撃してきて、角でディアドラを傷つけようとするがディアドラは盾でそれを防ぐ。
体格で言えば鹿のほうが圧倒的に有利なはずなのだが小柄なディアドラに押し負けた鹿が攻めあぐねて一度下がろうとしたところをすかさず武器を大きく振り回し、勢いと力で相手の体勢を崩しながら攻撃を仕掛けた。
頭部に強撃を受けて脳震盪のような症状を引き起こしたらしい鹿に守悟が手裏剣で止めを刺す。
「寝ていれば痛みを感じる前に追われたのに、ね……っ」
まよいが意識を保っていた二頭の内一頭に向けて鋭い風を放ち、鹿の身体を切り裂く。
スノウが持ち主に厄災を持ち込むといわれる怪しげな雰囲気の剣で弱った鹿を冥府へ送り、その間にディアドラのカウンターによる攻撃とまよいのウィンドスラッシュで意識のある鹿は全滅。
眠りの世界へと引き込まれたままの鹿たちはせめて苦しみが少ないようにと急所を狙って一撃で仕留めた。
黙祷を捧げた後、小夜子の捜索に戻る四人。
しばらく山の中を歩き回ったところで今度は熊の雑魔と遭遇し、先ほどと同じ要領で倒した後更に奥に踏み入ると廃墟が見えた。
中から金属同士がぶつかり合う激しい音が聞こえ、どうやら小夜子と剣妃の手先が戦っている場所を発見したようだと当たりをつける。
急いで別行動中のメンバーに場所の詳細と特徴的な地形などを知らせ、合流。
全員が揃ったところで陣形を組み直し廃墟のドアを開くと中に突入する。
半分崩れかけた廃墟の、おそらく広間として使われていたらしい、入り口に近い場所に二つの人影があった。
片方は日本刀を手に、多くの傷を負いながらも屈服だけは死んでもしない、と言葉より雄弁に雰囲気で語る小夜子。
もう一方は必然的に剣妃の手先となるのだろう。
「おやおや、招かれざる客人がお越しのようだ」
クス、クス。喉で笑ってフェレライの歪虚が剣を引く。
「何のつもりだ」
怒りの炎を薄氷で閉じ込めたような小夜子の言葉に歪虚は再び形ばかりの笑みを作る。
「余興は此処までにしようかと思いましてね。次は本格的に潰しにかかるとしましょう。八人を新たに加えて遊ぶには熱が冷めてしまいましたので」
「逃がすとでも思っているのかっ……!」
「貴方は貴方の手で私を殺したいのでしょう? 今は引かせておいて傷を癒した後今度はそちらのお友達と最初から行動を共にするのが得策だと思いますが」
「戯言をっ」
「それでも貴方は刀を収めざるを得ませんよ。私が時間までに報告に戻らなければ下級のフェレライが大挙してこの山にやってきます。
……これ以上、無駄な血は流したくないのでは?」
「……小夜子さん、ですよね。ここは一度引きましょう。歪虚の言葉を信じるつもりはありませんが貴方が怪我をして心配する人たちがいるんです。
一人で歪虚に戦いを挑むのは無謀ですよ。何でも一人で抱え込む必要はないんです。
辛い時は誰かに頼る事も必要です。頼る相手がいないというなら、私がその相手になります」
ユーリがそっと小夜子が身に纏っている白拍子の衣装の袖を引き、シルヴィアが言葉を引き継ぐ。
「帰りましょう。貴方が一人でどうにかできる相手ではありません。本当に目的を果たしたいと思っているのであればここは引くべきです。
私たちも雑魔の討伐をしてきながらの探索だったため、万全ではありません。
次は最初から共に戦う準備をして、挑むべき敵です」
敵の能力を認めることも戦いの中で生き抜く手段の一つだ、と諭すシルヴィアに小夜子が身に纏っていた刺々しい雰囲気が揺らぐ。
「そちらの方々は物わかりが良いようですね。では私は失礼させて頂きますよ。ごきげんよう」
小夜子の気持ちが揺れている隙をついて歪虚が枠だけになっていた窓から身を躍らせ、姿をくらませる。
紫苑が小夜子の傷をヒールで癒しながら語りかけた。
「家族を失って悲しい気持ち……私にも覚えがあります……私も、ちっちゃい頃にりお父さんもお母さんもいなくなって……。
忘れて元気に、なんてとても言えません……私だって、辛くないなんて言ったら、嘘になりますから。
でもでもっ……それでも一度は独りになった私を温かく受け入れて下さった方々がいました。
小夜子さんの大切な子たちも、小夜子さんにいつかそんな日が来ること、願っていると思うのでっ……だからそれまで、ご自分のこと、大切になさってください」
必死に言い募る姿と、引き合いに出された言葉に今はもう隣にいない家族同然の存在を思い出したのだろうか、小夜子は刀を取り落した。
「……すまない。迷惑をかけた」
「まー俺ぁアンタの事なんも知らんが一個だけ。命の恩人のアンタの事心配してるって人もいるってよー、どーせあれやんならもーちょい誰かに頼んなって」
意地張ってる跳ねっ返りさんにゃどうでもいいことだったかね、と守悟が問いかけると狐面をつけたベルセルクの女性は静かに首を振って否定した。
「何はともあれ、無事でよかった。……一連の事件が奴の仕業だとして……何が狙いだ? 歪虚が執拗にこの地を狙う理由が分からないのだが」
ヴァイスが問いかけると小夜子は静かに口を開いた。
「私がよく家族と一緒に過ごしていた祠の奥に、神霊樹の若木が存在するんだ。それを含めてこの地一帯を生命の存在しない地に作り替え剣妃に差し出すのだと奴は言っていた」
「神霊樹の若木、かぁ。それは確かに狙われるねぇ……。なんかちょっと話しただけだけど嫌味な性格っぽいしアイツすっ飛ばしたらすかっとしそうだから手伝うよ?」
「神霊樹の若木や付近の村を護るのにハンターの力を借りたらどうだろう。奴と決着をつけるにしても一人では手に余る相手だと実感したんじゃないか?」
まよいとスノウの言葉に小夜子は少しためらったあと頷いた。
「では話も纏まったことだし人員を割いてもらうためにも共にオフィスへ報告に行こうじゃないか。あのフェレライについては道々聞かせてくれ」
ディアドラの言葉に小夜子は一度取り落した愛刀を再び手に取ると軽く手入れをして山を降りることに同意したのだった。
「……今度、奴……ラキエル、とかいう名だったと思うが……向き合う時はどうか、貴方たちの力を貸してほしい」
生きていくために。そう続けた小夜子に、ハンターたちは力強く頷くことで返事としたのだった。
家族のような存在だった精霊を雑魔に変えた剣妃の手先を倒すために、小夜子は一人雑魔の跋扈する山に向かった。
今回、ハンターたちに依頼されたのは彼女の救出と剣妃の手先によって雑魔にされた山の動物たちの討伐だった。
「雑魔と化した動物たちが住まう山に一人でですか。あまりにも危険極まりないのは間違いないですが、それ以上にそれ以上に剣妃オルクスの手先が、元凶を作っていたなんて……。
余程、他者の命を弄ぶのが好きな様ですね……。
とはいえ、剣妃の眷属に一人で戦いを挑むのは無謀以外何者でもありません。何としても止めないと……」
しかし、とユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は同時に相反する心境にもなっていた。
「ですが……彼女が一人で戦いを挑んだ理由、何となく分かる気がします。
彼女にとって大切なものを奴等に奪われた、傷つけられたからでしょう……。
だとしたら、なおさら彼女をここで死なせる訳にはいきません。
……一人で背負い込む必要なんて無いですから」
大切なものを奪われた時背を向けてしまったから、その償いに自分一人でケリをつけようと背負い込む小夜子の心情を、ユーリはほぼ正確に読み取っていた。
「一人で暴走して良いようにはなりませんから……止めなければ……」
シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)の表情はヘルメットのようなものに隠れて見えないが声は真摯だった。
「今回の一連の騒動……この山に何かあるのか?」
ヴァイス(ka0364)が僅かに眉をひそめて呟きながら木々についた新しい傷を中心に辺りを探索する。
奇襲を警戒する対策の一つとして愛犬のワンコに捜索時、周囲の警戒を頼み、異変があれば知らせてもらうつもりだった。
「大型の獣の足跡がある。雪が隠していないからまだ新しそうだな……周囲に注意してくれ」
ヴァイスの言葉に空気が張りつめたような錯覚が生まれるほど、ハンターたちの表情が険しくなる。
ワンコがグルグルと唸り声を上げ、警戒のレベルは更に一段階上がった。
ワンコと違う、それよりずっと低く獰猛な唸り声が前方から複数聞こえ、やがて現れたのは雑魔化している狼が五体。
月護 紫苑(ka3827)が最前線に立つことが推測されるヴァイスにプロテクションをかける。
光が彼の全身を覆い、防御力が上昇すると同時に狼たちが襲い掛かってきた。
「来るぞ、囲まれないように気をつけろ」
機動力がある敵とみなし、手裏剣で足を狙うヴァイス。
シルヴィアが別の個体をリアルブルーで作られた、主に歩兵が用いるライフルでやはり脚部を狙う。
「急いでいますので邪魔者の排除に遠慮はしません……」
言葉通り急いではいるものの、今後のことを考えて彼女が選んだ戦法は敵を素早く倒すことより見方が消耗しないことを考えてのもの。
ユーリもまたこちらのほうが数で劣っていることから無理に突撃はせず、近づいてきた敵をコアとなる剣を中心に、複数の剣が組合わせられた特殊な形状の剣で迎え撃つ。
「効率を考えて二手に分かれましたが……いっぺんに五体来られると少々厄介ですね」
誘い込んだ一体からの攻撃を受け流し、その時にできた隙を狙って眉間に剣を突き刺し絶命させる。
シルヴィアが心臓の辺りを狙って撃った一撃がもう一体を倒し、残りの二体はヴァイスが八方向に広がる星の形をした黒い手裏剣でその偽りの命を終わらせた。
「お怪我はありませんか? 新手の襲撃は今のところないようですし……治療が必要でしたらヒールかマテリアルヒーリングをかけますが……」
幸い大きな怪我をしたメンバーはおらず、紫苑は胸をなでおろす。
「一度雑魔になってしまったら、もう元には戻らないとうかがっているので……倒して解放してあげるのが、せめてもの救い、ということは分かっています。
でも、助けてあげることはできなくても……せめて倒した後、祈るくらいのことは……させて、下さい」
「情報では十数体ということだったな。念のため別方向を探索しているメンバーと連絡を取ってみてくれるか? 祈りたいなら、その間に済ませてくれ。小夜子の行方が分からない以上あまり時間は割けないからな」
「……分かりました。ありがとう、ございます」
ヴァイスの要請を受けてシルヴィアがトランシーバーで連絡を取る。
此方で五体の雑魔を仕留めたこととまだ小夜子の足取りはつかめていないことを報告すると、向こうからは雑魔と遭遇していないこと、小夜子の足取りは同じくつかめていないことが報告された。
「……分かりました。周囲を警戒しながら、こちらも探索を続けます。約半数の雑魔は倒していますが新手が生まれている可能性もありますから、そちらもお気をつけて」
通信を切った後四人は再び雑魔からの襲撃を警戒しながら小夜子の足取りを追いはじめたのだった。
「そうか、向こうで五体が無力化されたのか。ボクたちも捜索しながら行きあったら討伐しなければな」
スノウ・ウァレンティヌス(ka3852)がトランシーバーで聞いたことを自班のメンバーに伝えるとディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が口を開いた。
「今探してる小夜子って人、一緒に遊ぶお友達いなくなっちゃったんだよね? 私でよかったら遊びに来たし、友達を奪った相手をやっつける、とかでも付き合うのに。
一人で背負い込まないで相談してくれれば力になってくれる人はたくさんいたはずなのにね。見つけたらそのことは知ってもらわないとちょっと危なっかしいかな」
鋭敏視覚を使って周囲に気を配りながら夢路 まよい(ka1328)がひとり言のように呟く。
物音がしないか周りの音に気を配りながら歩いているとそのうち楽しくなるタイプらしく、鼻歌を歌いだすと周りの音が聞こえなくなるから止めるように注意を受ける。
「たまにくらい、いいんじゃない? 私たちのほ~から出した音が何かに聞こえたら、反応あるかもだし?」
「そうはいってもなー、下手に雑魔の大群とか来られると面倒だからなー。まぁ、少しずつ来てくれて、奇襲かけられないなら向こうから来た方が手っ取り早いんだけどなー」
武神 守悟(ka3517)が困ったように頬をかくとまるでその言葉を聞いていたかのように鹿の雑魔が六体姿を現した。
耳が警戒を示すようにぴくぴくと動いている。
「……大所帯だな。まぁ、十体以上で来るようなことがなかっただけマシか。失われた命を悼むのはこの場を乗り切ってからだ」
スノウが柄に紫の宝石のはめ込まれた、黒い刀身のバスターソードを構える。
「そんなになっちゃってまで起きてるの、疲れない? もうお休みしちゃおうよ。
私がいい夢見せてあげる……スリープクラウドッ!!」
まよいが雑魔が密集している内に、と空間に青白い雲状のガスを広げる。
眠りに引き込むそのガスは鹿の半数を一時的な行動不能にした。
スリープクラウドの影響を受けなかった鹿の一頭が不意打ちに苛立ったように突撃してきて、角でディアドラを傷つけようとするがディアドラは盾でそれを防ぐ。
体格で言えば鹿のほうが圧倒的に有利なはずなのだが小柄なディアドラに押し負けた鹿が攻めあぐねて一度下がろうとしたところをすかさず武器を大きく振り回し、勢いと力で相手の体勢を崩しながら攻撃を仕掛けた。
頭部に強撃を受けて脳震盪のような症状を引き起こしたらしい鹿に守悟が手裏剣で止めを刺す。
「寝ていれば痛みを感じる前に追われたのに、ね……っ」
まよいが意識を保っていた二頭の内一頭に向けて鋭い風を放ち、鹿の身体を切り裂く。
スノウが持ち主に厄災を持ち込むといわれる怪しげな雰囲気の剣で弱った鹿を冥府へ送り、その間にディアドラのカウンターによる攻撃とまよいのウィンドスラッシュで意識のある鹿は全滅。
眠りの世界へと引き込まれたままの鹿たちはせめて苦しみが少ないようにと急所を狙って一撃で仕留めた。
黙祷を捧げた後、小夜子の捜索に戻る四人。
しばらく山の中を歩き回ったところで今度は熊の雑魔と遭遇し、先ほどと同じ要領で倒した後更に奥に踏み入ると廃墟が見えた。
中から金属同士がぶつかり合う激しい音が聞こえ、どうやら小夜子と剣妃の手先が戦っている場所を発見したようだと当たりをつける。
急いで別行動中のメンバーに場所の詳細と特徴的な地形などを知らせ、合流。
全員が揃ったところで陣形を組み直し廃墟のドアを開くと中に突入する。
半分崩れかけた廃墟の、おそらく広間として使われていたらしい、入り口に近い場所に二つの人影があった。
片方は日本刀を手に、多くの傷を負いながらも屈服だけは死んでもしない、と言葉より雄弁に雰囲気で語る小夜子。
もう一方は必然的に剣妃の手先となるのだろう。
「おやおや、招かれざる客人がお越しのようだ」
クス、クス。喉で笑ってフェレライの歪虚が剣を引く。
「何のつもりだ」
怒りの炎を薄氷で閉じ込めたような小夜子の言葉に歪虚は再び形ばかりの笑みを作る。
「余興は此処までにしようかと思いましてね。次は本格的に潰しにかかるとしましょう。八人を新たに加えて遊ぶには熱が冷めてしまいましたので」
「逃がすとでも思っているのかっ……!」
「貴方は貴方の手で私を殺したいのでしょう? 今は引かせておいて傷を癒した後今度はそちらのお友達と最初から行動を共にするのが得策だと思いますが」
「戯言をっ」
「それでも貴方は刀を収めざるを得ませんよ。私が時間までに報告に戻らなければ下級のフェレライが大挙してこの山にやってきます。
……これ以上、無駄な血は流したくないのでは?」
「……小夜子さん、ですよね。ここは一度引きましょう。歪虚の言葉を信じるつもりはありませんが貴方が怪我をして心配する人たちがいるんです。
一人で歪虚に戦いを挑むのは無謀ですよ。何でも一人で抱え込む必要はないんです。
辛い時は誰かに頼る事も必要です。頼る相手がいないというなら、私がその相手になります」
ユーリがそっと小夜子が身に纏っている白拍子の衣装の袖を引き、シルヴィアが言葉を引き継ぐ。
「帰りましょう。貴方が一人でどうにかできる相手ではありません。本当に目的を果たしたいと思っているのであればここは引くべきです。
私たちも雑魔の討伐をしてきながらの探索だったため、万全ではありません。
次は最初から共に戦う準備をして、挑むべき敵です」
敵の能力を認めることも戦いの中で生き抜く手段の一つだ、と諭すシルヴィアに小夜子が身に纏っていた刺々しい雰囲気が揺らぐ。
「そちらの方々は物わかりが良いようですね。では私は失礼させて頂きますよ。ごきげんよう」
小夜子の気持ちが揺れている隙をついて歪虚が枠だけになっていた窓から身を躍らせ、姿をくらませる。
紫苑が小夜子の傷をヒールで癒しながら語りかけた。
「家族を失って悲しい気持ち……私にも覚えがあります……私も、ちっちゃい頃にりお父さんもお母さんもいなくなって……。
忘れて元気に、なんてとても言えません……私だって、辛くないなんて言ったら、嘘になりますから。
でもでもっ……それでも一度は独りになった私を温かく受け入れて下さった方々がいました。
小夜子さんの大切な子たちも、小夜子さんにいつかそんな日が来ること、願っていると思うのでっ……だからそれまで、ご自分のこと、大切になさってください」
必死に言い募る姿と、引き合いに出された言葉に今はもう隣にいない家族同然の存在を思い出したのだろうか、小夜子は刀を取り落した。
「……すまない。迷惑をかけた」
「まー俺ぁアンタの事なんも知らんが一個だけ。命の恩人のアンタの事心配してるって人もいるってよー、どーせあれやんならもーちょい誰かに頼んなって」
意地張ってる跳ねっ返りさんにゃどうでもいいことだったかね、と守悟が問いかけると狐面をつけたベルセルクの女性は静かに首を振って否定した。
「何はともあれ、無事でよかった。……一連の事件が奴の仕業だとして……何が狙いだ? 歪虚が執拗にこの地を狙う理由が分からないのだが」
ヴァイスが問いかけると小夜子は静かに口を開いた。
「私がよく家族と一緒に過ごしていた祠の奥に、神霊樹の若木が存在するんだ。それを含めてこの地一帯を生命の存在しない地に作り替え剣妃に差し出すのだと奴は言っていた」
「神霊樹の若木、かぁ。それは確かに狙われるねぇ……。なんかちょっと話しただけだけど嫌味な性格っぽいしアイツすっ飛ばしたらすかっとしそうだから手伝うよ?」
「神霊樹の若木や付近の村を護るのにハンターの力を借りたらどうだろう。奴と決着をつけるにしても一人では手に余る相手だと実感したんじゃないか?」
まよいとスノウの言葉に小夜子は少しためらったあと頷いた。
「では話も纏まったことだし人員を割いてもらうためにも共にオフィスへ報告に行こうじゃないか。あのフェレライについては道々聞かせてくれ」
ディアドラの言葉に小夜子は一度取り落した愛刀を再び手に取ると軽く手入れをして山を降りることに同意したのだった。
「……今度、奴……ラキエル、とかいう名だったと思うが……向き合う時はどうか、貴方たちの力を貸してほしい」
生きていくために。そう続けた小夜子に、ハンターたちは力強く頷くことで返事としたのだった。
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作戦相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/01/12 09:40:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/09 17:52:27 |