ゲスト
(ka0000)
【陶曲】大地の裂け目への誘惑
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/01/20 09:00
- 完成日
- 2019/01/28 23:54
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
自由都市同盟。
魔術師協会広報室に所属する魔術師たちは、「大地の裂け目」と呼ばれる場所の現地調査を行っていた。調査隊を指揮しているのは、ユージィン・モア(kz0221)だ。
「曾祖父が調査した文献を頼りに、ここまで来てみたが……やはり何もない荒地だな」
「……不毛の地か。どこにでもありそうで、いざ探してみると、なかなか見つからない場所か」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、護衛として調査に参加していた。ユージィンの言う通り、何もない荒地だった。草木さえも生えていない。
それでも、ユージィンは魔術師たちと協力して、荒地のどこかに異変がないか、地道に調査を続けていた。
●
深い深淵の底。
クラーレ・クラーラ(kz0225)は、少し苛立っていた。
「……テリトリーに入ってくる人間たちが、増えてきましたねぇ」
何やら閃くと、静かな微笑みを浮かべるクラーレ。
「せっかく来たのですから、遊んであげましょうか」
クラーレの掌には、硝子が浮かび上がっていた。
やがて、その姿は巨人へと変化して、地に降り立つ。
「今回のドミニオンは、空を飛べるようにしてみましょう。さて……」
クラーレの指示で、硝子ゴーレムが動き出し、歪虚CAMが飛び立った。
●
数日後のことだった。
マクシミリアンが警戒して、日本刀を構えた。
「何もない荒地にしては、ああいう輩が出てくるとはな」
硝子で作られたゴレームが三体、ゆっくりと近づいてきた。
「……空中からも……あれは、外見はドミニオンだが歪虚CAMだな。……面倒なことだけは勘弁だ」
ユージィンは溜息をつきながらも、杖を掲げ、上空にいる歪虚CAMに狙いを定めてブリザードを放った。氷の嵐は歪虚CAMに命中してダメージを与えることができたが、消え去る気配はなかった。
むしろ、歪虚CAMはユージィンを狙って、空中からマテリアルライフルを放ってきた。
「まったく、だから面倒なことは勘弁だと言ってるだろう」
マテリアルライフルから放たれた砲弾を回避するユージィン。
調査隊の魔術師たちは、徐々に歪虚CAMと硝子ゴーレムに追い込まれていく。
「妙だな。あいつらは、ユージィンを狙っているように感じるが、思い当たることはあるか?」
マクシミリアンの問いに、ユージィンが即答する。
「あり過ぎて、分からないほどだ。なにせ、ずっと大地の裂け目を調査しているからな」
「……敵が多いということか」
詳しいことは分からないが、マクシミリアンは直感的に納得していた。
敵がユージィンを狙っているのは、調査隊のリーダーだからだろうか?
「さっさと倒して、調査を続けたいところだが、そう簡単にはいかないということか」
護衛として加わっていたハンターたちが、攻撃体勢に入った。
不毛の地に、嫉妬の歪虚たちが現れたのは、何かの導きなのだろうか。
ユージィンは、逃げも隠れもする気はなかった。
もう少しで、大地の裂け目へと行けるかもしれないからだ。
それを知ってか知らずか、嫉妬の歪虚たちはユージィンを狙っていた。
魔術師協会広報室に所属する魔術師たちは、「大地の裂け目」と呼ばれる場所の現地調査を行っていた。調査隊を指揮しているのは、ユージィン・モア(kz0221)だ。
「曾祖父が調査した文献を頼りに、ここまで来てみたが……やはり何もない荒地だな」
「……不毛の地か。どこにでもありそうで、いざ探してみると、なかなか見つからない場所か」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は、護衛として調査に参加していた。ユージィンの言う通り、何もない荒地だった。草木さえも生えていない。
それでも、ユージィンは魔術師たちと協力して、荒地のどこかに異変がないか、地道に調査を続けていた。
●
深い深淵の底。
クラーレ・クラーラ(kz0225)は、少し苛立っていた。
「……テリトリーに入ってくる人間たちが、増えてきましたねぇ」
何やら閃くと、静かな微笑みを浮かべるクラーレ。
「せっかく来たのですから、遊んであげましょうか」
クラーレの掌には、硝子が浮かび上がっていた。
やがて、その姿は巨人へと変化して、地に降り立つ。
「今回のドミニオンは、空を飛べるようにしてみましょう。さて……」
クラーレの指示で、硝子ゴーレムが動き出し、歪虚CAMが飛び立った。
●
数日後のことだった。
マクシミリアンが警戒して、日本刀を構えた。
「何もない荒地にしては、ああいう輩が出てくるとはな」
硝子で作られたゴレームが三体、ゆっくりと近づいてきた。
「……空中からも……あれは、外見はドミニオンだが歪虚CAMだな。……面倒なことだけは勘弁だ」
ユージィンは溜息をつきながらも、杖を掲げ、上空にいる歪虚CAMに狙いを定めてブリザードを放った。氷の嵐は歪虚CAMに命中してダメージを与えることができたが、消え去る気配はなかった。
むしろ、歪虚CAMはユージィンを狙って、空中からマテリアルライフルを放ってきた。
「まったく、だから面倒なことは勘弁だと言ってるだろう」
マテリアルライフルから放たれた砲弾を回避するユージィン。
調査隊の魔術師たちは、徐々に歪虚CAMと硝子ゴーレムに追い込まれていく。
「妙だな。あいつらは、ユージィンを狙っているように感じるが、思い当たることはあるか?」
マクシミリアンの問いに、ユージィンが即答する。
「あり過ぎて、分からないほどだ。なにせ、ずっと大地の裂け目を調査しているからな」
「……敵が多いということか」
詳しいことは分からないが、マクシミリアンは直感的に納得していた。
敵がユージィンを狙っているのは、調査隊のリーダーだからだろうか?
「さっさと倒して、調査を続けたいところだが、そう簡単にはいかないということか」
護衛として加わっていたハンターたちが、攻撃体勢に入った。
不毛の地に、嫉妬の歪虚たちが現れたのは、何かの導きなのだろうか。
ユージィンは、逃げも隠れもする気はなかった。
もう少しで、大地の裂け目へと行けるかもしれないからだ。
それを知ってか知らずか、嫉妬の歪虚たちはユージィンを狙っていた。
リプレイ本文
徐々に追い込まれていく調査隊の魔術師たち。
「調査の邪魔をしてくると言う事は、絶対大事な何かがあるに違いないもの。邪魔は正義のニンジャがさせないんだからっ!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が搭乗するコンフェッサーCAMの飛忍『セイバーI』がスキルトレースLv15を起動させ、メモリーカード「インカンテージモ」を発動体とした『禹歩』による占いで、危難を避けることができるようにと試みる。
「ニンジャシステム発動……セイバーIちゃん、私達に勝利の未来を見せて」
ルンルンの祈りにより禹歩の結果は、吉。先手を取ることができた。この機を狙い、ユージィン・モア(kz0221)を守るための陣形を作っていく。
「ルンルン忍法、機忍法超分身の術!」
CAMの飛忍『セイバーI』がシールド「スプートニク」を発動体とした『マテリアルバルーン』を発生させ、硝子ゴーレムの進路を塞ぐように疑似機体を4体、出現させた。硝子ゴーレム目指して移動するCAMの飛忍『セイバーI』。ユージィンを守ることを優先して、ルンルンが禹歩で先手を取ったことにより、硝子ゴーレムの射線を妨害することができた。
なんと賽の目が良いのか……ルンルン曰く「正義のニンジャは、時として運さえも味方に付けることがあります。今回は、稀なラッキー・デーです」ということだろうか。
「こんな処まで出張ってくるとしたら、カッツォか、クラーレの可能性もあるぜェ。そうなると、まずは、守りだなァ」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)は刻令ゴーレム「Gnome」の鉄心に指示を出し、大壁盾「庇護者の光翼」を装備したCモード「Wall」によって風属性の壁を作り上げていた。
R7エクスシアのスカラーV2に搭乗しているのはラスティ(ka1400)だ。『連結通話』を発動させ、魔導パイロットインカムを使い、ユージィンとコンタクトを取る。
「こちらラスティ、同盟では嫉妬の眷属に硝子のヴォイドがいるっていう噂を聞いたことがあるが、硝子ゴーレムはメジャーなのか? それとも、名のあるヤツが作ったとかなのか……で、アンタが狙われる理由でその辺りの嫉妬の眷属に心当たりはねェか?」
トランシーバーで応答するユージィン。
『ユージィンだ。過去に硝子の巨人兵士が同盟に現れたことがあったが、誰が送り込んだのかまでは、特定できていない。今回、出現したゴーレムは、硝子の巨人兵士とは別の個体だとも考えられる。悪いが、狙われる理由は俺には分からないな』
ユージィンは情報としては知っていたが、硝子ゴーレムと遭遇したのは初めてだった。
「見た感じ、私の予想だと、カッツォなんかが操ってるような、嫉妬型っぽいかな。まあ、誰がボスだろうと、この場はこいつらを倒すだけだよね」
夢路 まよい(ka1328)が騎乗したグリフォンのイケロスが『飛翔の翼』を駆使して上空へと飛び上がり、まよいは『エクステンドキャスト』でマテリアルを練り上げていた。
「マクシミリアン、あの敵、前にも見たことがあるぜ」
ジャック・エルギン(ka1522)は、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に魔導短伝話を手渡す。
「伏兵がいる恐れもあるから、ユージィンを連れて後退してくれると助かる。ドミニオン型の歪虚CAMと硝子のゴーレムは、クラーレの刺客である可能性もあるからな」
そう告げた後、ジャックの騎乗するグリフォンのオストロが『飛翔の翼』で飛び、イケロスの近くまで移動していく。
「了解だ。ジャック、無理はするなよ」
マクシミリアンはユージィンを守るために、共に後方へと下がっていく。魔術師たちも、後衛から援護する体勢に入った。
「私は、空の敵を叩こう。行くぞ、アウローラ」
レイア・アローネ(ka4082)はワイバーンのアウローラに騎乗……『飛翔の翼』で上空を駆り、歪虚CAMを目指して飛行していく。
リュー・グランフェスト(ka2419)が騎乗しているイェジドの紅狼刃は、狼嗅覚で周囲の臭いを嗅いでいたが、様々な人間の臭いが有り過ぎて、近くに別の敵がいるのかさえ判別することができなかった。
紅狼刃が首を傾げているのに気がついたリューが、優しく声をかけ、頭を撫でる。
「以前から、不毛の大地には観光や調査で、いろんな人間が出入りしているから、臭いが多過ぎたみたいだな」
狼嗅覚と言えども、万能ではない。匂いだけで、近くに何もいない事までは分からないのだ。
だが、ユージィンを守る陣形を取っている仲間たちがいるおかげで、リューはとても心強く感じていた。
上空の歪虚CAMは、ユージィンを目指して飛行していた。地上にいた硝子ゴーレムたちが、一斉に雷の嵐を放ってきた。狙いは、ワイバーンのアウローラだ。
とっさに『バレルロール』で身体を回転させるアウローラ。飛行を維持することができたが、ダメージを喰らってしまう。
「すぐに巻き返す」
レイアの掛け声で、アウローラは『サイドワインダー』で歪虚CAM一体に奇襲をしかけた。
「接近できれば、こちらのものだ」
レイアが身捧の腕輪による『ソウルエッジ』を纏った魔導剣「カオスウィース」、星神器「天羽羽斬」による『二刀流』を繰り出す。歪虚CAMの胴部に命中しダメージを与え、さらに『アスラトゥーリ』の追撃を放った。胴部にダメージを受ける歪虚CAMに対して、『リバースエッジ』の鋭い一撃が叩き込まれ、歪虚CAM一体は抵抗する術もなく、爆発して消滅していった。
アウローラは『姿勢制御』で体勢を整えることができた。
イケロスが『フライングファイト』の体勢を取り、間合いを見計らったまよいが錬金杖「ヴァイザースタッフ」を掲げ、エクステンドキャストからの『七芒星』を解き放つ。
「流星よ、嫉妬に狂いし歪虚を打ち払いたまえ!」
上空にいた歪虚CAM二体が七芒星のメテオスウォームに巻き込まれ、多大なダメージを受けていたが、まだ消える様子はなく、空中で防御態勢を取っていた。イケロスは、ホバリングで飛行状態を続けていた。
「シガレット、地上の硝子ゴーレムは任せるぜ。歪虚CAMを叩き落とせたら、なるべく加勢に入るからな」
通信機で連絡し合うジャックとシガレット。
飛行しているオストロに騎乗したジャックは、七芒星でダメージを受けていた歪虚CAM一体に狙いを定めて、ヘビーガトリング「イブリス」を用いた『制圧射撃』を放った。ジャックが放った弾丸は、歪虚CAM一体に命中……行動不能になった歪虚CAMは体勢を維持できなくなり、墜落していく。地面に叩きつけられた歪虚CAMは、その衝撃でダメージを受けていた。オストロはホバリングで飛行を維持していた。
「うまいこと硝子ゴーレムに当たればと思ったが、そこまで上手くはいかないか」
ジャックが前もって魔導パイロットインカムを使い、仲間に敵の墜落を報告したこともあり、地上にいたハンターたちが巻き込まれることはなかった。
「マジックエンハンサー起動……電磁加速砲、射出ッ!!」
ジェネレーター「マヒアサリーダ」を装備したスカラーV2は『マジックエンハンサー』を起動させ、試作電磁加速砲「ドンナー」を構えて、弾丸を放った。地面に落ちた歪虚CAM一体に命中し、敵は爆発して粉々に砕け散っていった。
「よし、一つ消えたな。ドミニオンとはなかなか良い趣味してるが……まぁ、歪虚CAMじゃな。精々この手で撃墜してやるのが、せめてもの情けってモンだ」
操縦席にいたラスティは、モニター越しから歪虚CAM一体が消滅していくのを確認していた。久し振りのCAM実戦ということもあり、ラスティは少し緊張しつつも、気持ちが昂っていた。
刻令ゴーレム「Gnome」の鉄心は、最初の指示通りに壁となる構造物を作り続けていた。
シガレットは幻盾「ライトブロッカー」を構え、硝子ゴーレムが射程に入ると法術縛鎖「アルタ・レグル」による『プルガトリオ』を放ち、無数の刃で串刺しにしていた。空間に縫い付けられるように移動ができなくなる硝子ゴーレムが二体。さらに『ジャッジメント』を放ち、別の硝子ゴーレムに命中すると、敵は移動不能になった。
「プルガトリオで二体、ジャッジメントで一体、抑えておいたぜェ」
シガレットは次の攻撃に備えて、体勢を整えていた。
「いくぞ、紅狼刃」
リューを乗せたイェジドの紅狼刃は、硝子ゴーレム目指して走り寄り、リューが星神器「エクスカリバー」を振り下ろすと『衝撃波』が迸る。範囲内にいた硝子ゴーレムが衝撃波を喰らうが、ダメージを受けても体勢を崩すことはなかった。
「セイバーIちゃん、いきます!」
ルンルンが搭乗したCAMの飛忍『セイバーI』がジェネレーター「マヒアサリーダ」を装備した『マジックエンハンサー』を起動させ、シールド「スプートニク」による『マテリアルバルーン』の疑似機体が出現……さらにスキルトレースLv15によるメモリーカード「インカンテージモ」を触媒とした『風雷陣』が放たれ、硝子ゴーレムに狙いを定めた稲妻が貫く。
「これが偉大なるニンジャの力、轟け雷鳴……ブレイクサンダー!」
風雷陣によってダメージを受ける硝子ゴーレムだが、まだ倒れる様子はなかった。
「だからって、諦めたりしません。何故なら、正義のニンジャですから!」
マテリアルバルーンで、射線の妨害をされていたこともあり、硝子ゴーレムは、後方にいるユージィンに接近することが難しくなっていた。
「範囲魔法は難しい距離になったわね。だったら、これね」
フライングファイトの効果が続いているイケロスに騎乗したまよいが『ダブルキャスト』を発動させ、『マジックアロー』が二本浮かび上がる。フォースリングの効果によって複数の魔法矢が歪虚CAM二体の全身に突き刺さっていく。
複数のマジックアローによって、空中にいた歪虚CAM二体が爆発して消滅していった。
「やったわ、二丁あがりっと♪」
まよいの攻撃手順は的確だ。空中の歪虚CAMを優先して攻撃したこともあり、空からの脅威は歪虚CAM一体のみとなった。
「この一撃、無駄にはしない」
飛行したワイバーンに騎乗したレイアは、星神器「天羽羽斬」を構え『オロチアラマサ』の荒ぶる力を解放した。歪虚CAM一体は、レイアの凄まじい連撃を多大に喰らい、一瞬にして消え去っていく。
「これで残りは、地上のゴーレムだけだな」
グリフォンのオストロはジャックを乗せたまま『フライングファイト』で一気に加速し、硝子ゴーレムに狙いを定めて『ツイスター』による小型竜巻を発生させた。範囲内にいた硝子ゴーレムは、ツイスターに巻き込まれ、ダメージを喰らうが、その場に立ち尽くしていた。
「たくっ、しぶとい連中だな」
ジャックが思わず呟く。硝子ゴーレムはシガレットの魔法で移動不能にはなっていたが、移動ができないだけで、攻撃はできるのだ。
オストロを狙って、硝子ゴーレムたちが雷の嵐を放った。一撃目、二撃目の攻撃は回避できたオストロであったが、三撃目の雷が胴部に命中してダメージを受けてしまうが、『姿勢制御』によって体勢を立て直すことができた。
「ふぅ、間一髪だぜ」
安堵するジャック。だが、まだ油断はできないと感じていた。
フライトシールド「プリドゥエン」を装備したスカラーV2が『フライトシステム』で空中に舞い上がる。だが、同じタイミングのスキルであるフーファイターは発動しない。そのことに気が付いたラスティが、コックピット内部で溜息をつくが、すぐさま気を取り直してスティックを握り『マテリアルライフル』を発射した。
スカラーV2から放たれた紫色の光線が一直線上に迸っていく。マテリアルライフルが魔法攻撃であったことが幸いした。何故なら、スカラーV2は魔法命中が高いからだ。命中が高い方が当たる確率も上がるが、一概に魔法攻撃が硝子ゴーレムの弱点であるとは限らない。
移動不能の硝子ゴーレム一体にマテリアルライフルの光線が命中し、貫かれた衝撃で爆発して消え去っていった。残り二体の硝子ゴーレムは、マテリアルライフルの攻撃範囲内にはいなかったため、攻撃に巻き込まれることはなかった。
「敵が動き出す前に、もう一度、撃っておくかァ」
シガレットは硝子ゴーレム二体に狙いを付けて、法術縛鎖「アルタ・レグル」による『プルガトリオ』を放った。無数の刃で串刺しになったかと思うと、空間に縫い付けられるように移動ができなくなる硝子ゴーレムたち。
「リューさん、頼んだぜェ」
「おう、シガレットのおかげで、遠慮なく、この技が使えるな。いくぜ!」
リューは『紋章剣』のソウルエッジを纏った星神器「エクスカリバー」を構え、超々重鞘「リミット・オーバー」を装備することによって威力が増す刺突一閃の『竜貫』を繰り出した。大きく踏み込みながら突き出した星神器「エクスカリバー」が軌道上にいた硝子ゴーレムを鋭く刺し、貫いた瞬間、凄まじい威力に耐え切れなくなった硝子ゴーレム一体が粉々に砕け散り、消滅していった。
「この世に、悪が蔓延る限り、正義のニンジャ、ここにあり! 一点のヒビからガラスは砕け散るもの……ニンジャランス一点突破っ!!」
機甲槍「ワルキューレの騎行」を構えたCAMの飛忍『セイバーI』が、ルンルンの操縦に合わせて『マテリアルフィスト』を発動……バリアを纏った機甲槍が、硝子ゴーレムの胴部を貫き、その衝撃と同時にマテリアルを流し込み、敵の防御力を貫通してダメージを与えた刹那、硝子ゴーレムは木端微塵となり、塵と化して消滅していった。
●
ジャックの予想は、的中した。
突如、上空にドミニオン型の歪虚CAMが一体、出没した。
敵が出現した位置は、後方へと移動していたユージィンたちに近かった。
「ユージィンには、指一本、触れさせねーからな!」
グリフォンのオストロに騎乗したジャックは、『クイックリロード』を駆使してヘビーガトリング「イブリス」の弾を充填し、すぐさま『制圧射撃』を放った。歪虚CAMに命中し、抵抗ができなかったのか、行動不能になった歪虚CAMが地面へと落下して墜落……地面に衝突した勢いでダメージを受けていた。
「ユージィンに接近する前に、撃ち落せたが……気がつくのが遅かったら、ヤバかったかもな」
ジャックは内心、冷や冷やしていた。歪虚CAMが落下した位置は、ユージィンがいる調査隊から30メートルほど離れていた。
CAMの飛忍『セイバーI』が駆けつけ、シールド「スプートニク」を発動体とした『マテリアルバルーン』を出現させ、ユージィンを守るための陣形を維持していく。
「ルンルン忍法とCAMの飛忍『セイバーI』ちゃんのコンビネーションで、ユージィンさんは絶対に守ります!」
「ここは壁を作った方が得策かァ」
シガレットの指示で、刻令ゴーレム「Gnome」の鉄心が、大壁盾「庇護者の光翼」を装備したCモード「Wall」を発動させ、風属性の壁を作っていく。
イェジドの紅狼刃が『フェンリルライズ』を解放させた。紅狼刃に騎乗していたリューは、(フェンリルライズと同じタイミングのナイツ・オブ・ラウンドは発動しなかったが)星神器「エクスカリバー」と超々重鞘「リミット・オーバー」による『散華』を繰り出し、歪虚CAMに多大なダメージを与えていた。だが、歪虚CAMの防御が高いのか、破壊できるまでには至らなかった。
「なんて、硬い装甲なんだ」
固唾を飲むリュー。
ラスティが搭乗するスカラーV2はフライトシステムの効果が続いていたこともあり、空中にいた。
「このタイミングだな」
機体が飛行状態……ラスティが『フーファイター』を発動させると、スカラーV2のスキルトレースLv20が起動し、『デルタレイ』による光の三角形が現れた。その頂点から光が伸びていき、歪虚CAMが光に貫かれていく。ダメージを与えることができたが、歪虚CAMは地面に倒れた状態で、耐え忍んでいた。
「不毛の大地だけあって、障害物がないから、狙い易いわね」
イケロスに騎乗したまよいは、調査隊を背にした位置から歪虚CAMに狙いを定めて、エクステンドキャストによる『七芒星』を放った。次々と火球が降り注ぎ、歪虚CAMが爆炎に包まれて、装甲が剥がれ落ち、コックピックが剥き出しになると、無人の操縦席が爆発……機体もろとも、粉々に砕け散り、消滅していった。
「これで一件落着だと良いけど」
●
リューに同行していたイェジドの紅狼刃は、狼嗅覚で地面の臭いを嗅ぎ分けていたが、敵なのか味方なのか、判別できないほどの多くの臭いがあったせいか、特定の臭いまでは分からなかった。
出没した敵と仲間以外の存在を対象とした場合、あまりにも膨大の数を嗅ぎ分けることになり、依頼期間中では全ての臭いを判別ことは困難だ。これでは、追跡することもできない。
紅狼刃は、申し訳なさそうに項垂れていた。リューが元気づけるように紅狼刃の頭と背中を撫でた。
「俺のために、ここまで来てくれて、ありがとな」
紅狼刃が顔を上げると、リューの笑顔があった。思わず、紅狼刃はうれしそうに目を細めていた。
「なんにせよ、敵が消えている隙に、先へ急ぐことにしよう」
ユージィンは、調査隊の魔術師たちを引き連れて、さらに奥へと進むことにした。ハンターたちも、護衛の任務があることもあり、共に進むことになった。
道中、周囲を警戒しつつも、ジャックが気になっていたことを告げた。
「今回、出没した歪虚、クラーレ配下の可能性があるぜ。来た方角を調べてみちゃどうだ?」
「来た方角となると、ヴァリオス方面だが、敵が出現した場所には惑わされないようにした方が良いだろう。それこそ、敵の思う壺だ。歪虚CAMと硝子ゴーレムが、クラーレ配下である可能性があるならば、尚更だろう」
マクシミリアンが応じた。
実際、ユージィンが目指している場所と、敵が出没した位置は逆方向だった。
一時間ほど、進んだ頃だろうか。
広大な不毛の大地に渓谷が垣間見えたが、肌に突き刺さるような強い風が吹き荒れていた。
ただの風ではない。
覚醒者ならば、感じるほどの強いプレッシャーだ。
それは、この場にいるハンターたち全員が感じ取っていた。
……重い、苦しい、あらゆる負の感情が押し寄せ、苦痛さえ覚えるほどであった。
「今は、これ以上、近づくのは危険だ。一旦、本部に戻った方が良さそうだ」
ユージィンは、マッピングシートに目印を付けていた。
ハンターたちが、目の当たりにしたのは、禍々しい風の奥に、石作りの遺跡のようなもの。
それが何か。そこまでは、分からなかった。
「……この感覚……寒気がするわね」
まよい自身、魔術師ということもあり、『大地の裂け目』の調査については気になっていた。
いざ、辿り着いた場所からは、覚醒者を阻むような『何か』を感じた。
熟練のハンターだからこそ分かる。
ここから先は、確かに危険だ。震えがくるほどに……。
一歩間違えば、最悪の事態も考えられた。
「この寒気、あくまでも勘だが、自然現象じゃあないぜェ。ユージィンさんの言う通り、引き返した方がいいだろうなァ」
シガレットが煙草を吸わない。ということは、これで終わりではないということかもしれない。
ほんのわずかな時間しか見ることができなかったが、ユージィンたちはハンターたちの護衛もあり、無事に本部へと戻ることができた。
「調査の邪魔をしてくると言う事は、絶対大事な何かがあるに違いないもの。邪魔は正義のニンジャがさせないんだからっ!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が搭乗するコンフェッサーCAMの飛忍『セイバーI』がスキルトレースLv15を起動させ、メモリーカード「インカンテージモ」を発動体とした『禹歩』による占いで、危難を避けることができるようにと試みる。
「ニンジャシステム発動……セイバーIちゃん、私達に勝利の未来を見せて」
ルンルンの祈りにより禹歩の結果は、吉。先手を取ることができた。この機を狙い、ユージィン・モア(kz0221)を守るための陣形を作っていく。
「ルンルン忍法、機忍法超分身の術!」
CAMの飛忍『セイバーI』がシールド「スプートニク」を発動体とした『マテリアルバルーン』を発生させ、硝子ゴーレムの進路を塞ぐように疑似機体を4体、出現させた。硝子ゴーレム目指して移動するCAMの飛忍『セイバーI』。ユージィンを守ることを優先して、ルンルンが禹歩で先手を取ったことにより、硝子ゴーレムの射線を妨害することができた。
なんと賽の目が良いのか……ルンルン曰く「正義のニンジャは、時として運さえも味方に付けることがあります。今回は、稀なラッキー・デーです」ということだろうか。
「こんな処まで出張ってくるとしたら、カッツォか、クラーレの可能性もあるぜェ。そうなると、まずは、守りだなァ」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)は刻令ゴーレム「Gnome」の鉄心に指示を出し、大壁盾「庇護者の光翼」を装備したCモード「Wall」によって風属性の壁を作り上げていた。
R7エクスシアのスカラーV2に搭乗しているのはラスティ(ka1400)だ。『連結通話』を発動させ、魔導パイロットインカムを使い、ユージィンとコンタクトを取る。
「こちらラスティ、同盟では嫉妬の眷属に硝子のヴォイドがいるっていう噂を聞いたことがあるが、硝子ゴーレムはメジャーなのか? それとも、名のあるヤツが作ったとかなのか……で、アンタが狙われる理由でその辺りの嫉妬の眷属に心当たりはねェか?」
トランシーバーで応答するユージィン。
『ユージィンだ。過去に硝子の巨人兵士が同盟に現れたことがあったが、誰が送り込んだのかまでは、特定できていない。今回、出現したゴーレムは、硝子の巨人兵士とは別の個体だとも考えられる。悪いが、狙われる理由は俺には分からないな』
ユージィンは情報としては知っていたが、硝子ゴーレムと遭遇したのは初めてだった。
「見た感じ、私の予想だと、カッツォなんかが操ってるような、嫉妬型っぽいかな。まあ、誰がボスだろうと、この場はこいつらを倒すだけだよね」
夢路 まよい(ka1328)が騎乗したグリフォンのイケロスが『飛翔の翼』を駆使して上空へと飛び上がり、まよいは『エクステンドキャスト』でマテリアルを練り上げていた。
「マクシミリアン、あの敵、前にも見たことがあるぜ」
ジャック・エルギン(ka1522)は、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に魔導短伝話を手渡す。
「伏兵がいる恐れもあるから、ユージィンを連れて後退してくれると助かる。ドミニオン型の歪虚CAMと硝子のゴーレムは、クラーレの刺客である可能性もあるからな」
そう告げた後、ジャックの騎乗するグリフォンのオストロが『飛翔の翼』で飛び、イケロスの近くまで移動していく。
「了解だ。ジャック、無理はするなよ」
マクシミリアンはユージィンを守るために、共に後方へと下がっていく。魔術師たちも、後衛から援護する体勢に入った。
「私は、空の敵を叩こう。行くぞ、アウローラ」
レイア・アローネ(ka4082)はワイバーンのアウローラに騎乗……『飛翔の翼』で上空を駆り、歪虚CAMを目指して飛行していく。
リュー・グランフェスト(ka2419)が騎乗しているイェジドの紅狼刃は、狼嗅覚で周囲の臭いを嗅いでいたが、様々な人間の臭いが有り過ぎて、近くに別の敵がいるのかさえ判別することができなかった。
紅狼刃が首を傾げているのに気がついたリューが、優しく声をかけ、頭を撫でる。
「以前から、不毛の大地には観光や調査で、いろんな人間が出入りしているから、臭いが多過ぎたみたいだな」
狼嗅覚と言えども、万能ではない。匂いだけで、近くに何もいない事までは分からないのだ。
だが、ユージィンを守る陣形を取っている仲間たちがいるおかげで、リューはとても心強く感じていた。
上空の歪虚CAMは、ユージィンを目指して飛行していた。地上にいた硝子ゴーレムたちが、一斉に雷の嵐を放ってきた。狙いは、ワイバーンのアウローラだ。
とっさに『バレルロール』で身体を回転させるアウローラ。飛行を維持することができたが、ダメージを喰らってしまう。
「すぐに巻き返す」
レイアの掛け声で、アウローラは『サイドワインダー』で歪虚CAM一体に奇襲をしかけた。
「接近できれば、こちらのものだ」
レイアが身捧の腕輪による『ソウルエッジ』を纏った魔導剣「カオスウィース」、星神器「天羽羽斬」による『二刀流』を繰り出す。歪虚CAMの胴部に命中しダメージを与え、さらに『アスラトゥーリ』の追撃を放った。胴部にダメージを受ける歪虚CAMに対して、『リバースエッジ』の鋭い一撃が叩き込まれ、歪虚CAM一体は抵抗する術もなく、爆発して消滅していった。
アウローラは『姿勢制御』で体勢を整えることができた。
イケロスが『フライングファイト』の体勢を取り、間合いを見計らったまよいが錬金杖「ヴァイザースタッフ」を掲げ、エクステンドキャストからの『七芒星』を解き放つ。
「流星よ、嫉妬に狂いし歪虚を打ち払いたまえ!」
上空にいた歪虚CAM二体が七芒星のメテオスウォームに巻き込まれ、多大なダメージを受けていたが、まだ消える様子はなく、空中で防御態勢を取っていた。イケロスは、ホバリングで飛行状態を続けていた。
「シガレット、地上の硝子ゴーレムは任せるぜ。歪虚CAMを叩き落とせたら、なるべく加勢に入るからな」
通信機で連絡し合うジャックとシガレット。
飛行しているオストロに騎乗したジャックは、七芒星でダメージを受けていた歪虚CAM一体に狙いを定めて、ヘビーガトリング「イブリス」を用いた『制圧射撃』を放った。ジャックが放った弾丸は、歪虚CAM一体に命中……行動不能になった歪虚CAMは体勢を維持できなくなり、墜落していく。地面に叩きつけられた歪虚CAMは、その衝撃でダメージを受けていた。オストロはホバリングで飛行を維持していた。
「うまいこと硝子ゴーレムに当たればと思ったが、そこまで上手くはいかないか」
ジャックが前もって魔導パイロットインカムを使い、仲間に敵の墜落を報告したこともあり、地上にいたハンターたちが巻き込まれることはなかった。
「マジックエンハンサー起動……電磁加速砲、射出ッ!!」
ジェネレーター「マヒアサリーダ」を装備したスカラーV2は『マジックエンハンサー』を起動させ、試作電磁加速砲「ドンナー」を構えて、弾丸を放った。地面に落ちた歪虚CAM一体に命中し、敵は爆発して粉々に砕け散っていった。
「よし、一つ消えたな。ドミニオンとはなかなか良い趣味してるが……まぁ、歪虚CAMじゃな。精々この手で撃墜してやるのが、せめてもの情けってモンだ」
操縦席にいたラスティは、モニター越しから歪虚CAM一体が消滅していくのを確認していた。久し振りのCAM実戦ということもあり、ラスティは少し緊張しつつも、気持ちが昂っていた。
刻令ゴーレム「Gnome」の鉄心は、最初の指示通りに壁となる構造物を作り続けていた。
シガレットは幻盾「ライトブロッカー」を構え、硝子ゴーレムが射程に入ると法術縛鎖「アルタ・レグル」による『プルガトリオ』を放ち、無数の刃で串刺しにしていた。空間に縫い付けられるように移動ができなくなる硝子ゴーレムが二体。さらに『ジャッジメント』を放ち、別の硝子ゴーレムに命中すると、敵は移動不能になった。
「プルガトリオで二体、ジャッジメントで一体、抑えておいたぜェ」
シガレットは次の攻撃に備えて、体勢を整えていた。
「いくぞ、紅狼刃」
リューを乗せたイェジドの紅狼刃は、硝子ゴーレム目指して走り寄り、リューが星神器「エクスカリバー」を振り下ろすと『衝撃波』が迸る。範囲内にいた硝子ゴーレムが衝撃波を喰らうが、ダメージを受けても体勢を崩すことはなかった。
「セイバーIちゃん、いきます!」
ルンルンが搭乗したCAMの飛忍『セイバーI』がジェネレーター「マヒアサリーダ」を装備した『マジックエンハンサー』を起動させ、シールド「スプートニク」による『マテリアルバルーン』の疑似機体が出現……さらにスキルトレースLv15によるメモリーカード「インカンテージモ」を触媒とした『風雷陣』が放たれ、硝子ゴーレムに狙いを定めた稲妻が貫く。
「これが偉大なるニンジャの力、轟け雷鳴……ブレイクサンダー!」
風雷陣によってダメージを受ける硝子ゴーレムだが、まだ倒れる様子はなかった。
「だからって、諦めたりしません。何故なら、正義のニンジャですから!」
マテリアルバルーンで、射線の妨害をされていたこともあり、硝子ゴーレムは、後方にいるユージィンに接近することが難しくなっていた。
「範囲魔法は難しい距離になったわね。だったら、これね」
フライングファイトの効果が続いているイケロスに騎乗したまよいが『ダブルキャスト』を発動させ、『マジックアロー』が二本浮かび上がる。フォースリングの効果によって複数の魔法矢が歪虚CAM二体の全身に突き刺さっていく。
複数のマジックアローによって、空中にいた歪虚CAM二体が爆発して消滅していった。
「やったわ、二丁あがりっと♪」
まよいの攻撃手順は的確だ。空中の歪虚CAMを優先して攻撃したこともあり、空からの脅威は歪虚CAM一体のみとなった。
「この一撃、無駄にはしない」
飛行したワイバーンに騎乗したレイアは、星神器「天羽羽斬」を構え『オロチアラマサ』の荒ぶる力を解放した。歪虚CAM一体は、レイアの凄まじい連撃を多大に喰らい、一瞬にして消え去っていく。
「これで残りは、地上のゴーレムだけだな」
グリフォンのオストロはジャックを乗せたまま『フライングファイト』で一気に加速し、硝子ゴーレムに狙いを定めて『ツイスター』による小型竜巻を発生させた。範囲内にいた硝子ゴーレムは、ツイスターに巻き込まれ、ダメージを喰らうが、その場に立ち尽くしていた。
「たくっ、しぶとい連中だな」
ジャックが思わず呟く。硝子ゴーレムはシガレットの魔法で移動不能にはなっていたが、移動ができないだけで、攻撃はできるのだ。
オストロを狙って、硝子ゴーレムたちが雷の嵐を放った。一撃目、二撃目の攻撃は回避できたオストロであったが、三撃目の雷が胴部に命中してダメージを受けてしまうが、『姿勢制御』によって体勢を立て直すことができた。
「ふぅ、間一髪だぜ」
安堵するジャック。だが、まだ油断はできないと感じていた。
フライトシールド「プリドゥエン」を装備したスカラーV2が『フライトシステム』で空中に舞い上がる。だが、同じタイミングのスキルであるフーファイターは発動しない。そのことに気が付いたラスティが、コックピット内部で溜息をつくが、すぐさま気を取り直してスティックを握り『マテリアルライフル』を発射した。
スカラーV2から放たれた紫色の光線が一直線上に迸っていく。マテリアルライフルが魔法攻撃であったことが幸いした。何故なら、スカラーV2は魔法命中が高いからだ。命中が高い方が当たる確率も上がるが、一概に魔法攻撃が硝子ゴーレムの弱点であるとは限らない。
移動不能の硝子ゴーレム一体にマテリアルライフルの光線が命中し、貫かれた衝撃で爆発して消え去っていった。残り二体の硝子ゴーレムは、マテリアルライフルの攻撃範囲内にはいなかったため、攻撃に巻き込まれることはなかった。
「敵が動き出す前に、もう一度、撃っておくかァ」
シガレットは硝子ゴーレム二体に狙いを付けて、法術縛鎖「アルタ・レグル」による『プルガトリオ』を放った。無数の刃で串刺しになったかと思うと、空間に縫い付けられるように移動ができなくなる硝子ゴーレムたち。
「リューさん、頼んだぜェ」
「おう、シガレットのおかげで、遠慮なく、この技が使えるな。いくぜ!」
リューは『紋章剣』のソウルエッジを纏った星神器「エクスカリバー」を構え、超々重鞘「リミット・オーバー」を装備することによって威力が増す刺突一閃の『竜貫』を繰り出した。大きく踏み込みながら突き出した星神器「エクスカリバー」が軌道上にいた硝子ゴーレムを鋭く刺し、貫いた瞬間、凄まじい威力に耐え切れなくなった硝子ゴーレム一体が粉々に砕け散り、消滅していった。
「この世に、悪が蔓延る限り、正義のニンジャ、ここにあり! 一点のヒビからガラスは砕け散るもの……ニンジャランス一点突破っ!!」
機甲槍「ワルキューレの騎行」を構えたCAMの飛忍『セイバーI』が、ルンルンの操縦に合わせて『マテリアルフィスト』を発動……バリアを纏った機甲槍が、硝子ゴーレムの胴部を貫き、その衝撃と同時にマテリアルを流し込み、敵の防御力を貫通してダメージを与えた刹那、硝子ゴーレムは木端微塵となり、塵と化して消滅していった。
●
ジャックの予想は、的中した。
突如、上空にドミニオン型の歪虚CAMが一体、出没した。
敵が出現した位置は、後方へと移動していたユージィンたちに近かった。
「ユージィンには、指一本、触れさせねーからな!」
グリフォンのオストロに騎乗したジャックは、『クイックリロード』を駆使してヘビーガトリング「イブリス」の弾を充填し、すぐさま『制圧射撃』を放った。歪虚CAMに命中し、抵抗ができなかったのか、行動不能になった歪虚CAMが地面へと落下して墜落……地面に衝突した勢いでダメージを受けていた。
「ユージィンに接近する前に、撃ち落せたが……気がつくのが遅かったら、ヤバかったかもな」
ジャックは内心、冷や冷やしていた。歪虚CAMが落下した位置は、ユージィンがいる調査隊から30メートルほど離れていた。
CAMの飛忍『セイバーI』が駆けつけ、シールド「スプートニク」を発動体とした『マテリアルバルーン』を出現させ、ユージィンを守るための陣形を維持していく。
「ルンルン忍法とCAMの飛忍『セイバーI』ちゃんのコンビネーションで、ユージィンさんは絶対に守ります!」
「ここは壁を作った方が得策かァ」
シガレットの指示で、刻令ゴーレム「Gnome」の鉄心が、大壁盾「庇護者の光翼」を装備したCモード「Wall」を発動させ、風属性の壁を作っていく。
イェジドの紅狼刃が『フェンリルライズ』を解放させた。紅狼刃に騎乗していたリューは、(フェンリルライズと同じタイミングのナイツ・オブ・ラウンドは発動しなかったが)星神器「エクスカリバー」と超々重鞘「リミット・オーバー」による『散華』を繰り出し、歪虚CAMに多大なダメージを与えていた。だが、歪虚CAMの防御が高いのか、破壊できるまでには至らなかった。
「なんて、硬い装甲なんだ」
固唾を飲むリュー。
ラスティが搭乗するスカラーV2はフライトシステムの効果が続いていたこともあり、空中にいた。
「このタイミングだな」
機体が飛行状態……ラスティが『フーファイター』を発動させると、スカラーV2のスキルトレースLv20が起動し、『デルタレイ』による光の三角形が現れた。その頂点から光が伸びていき、歪虚CAMが光に貫かれていく。ダメージを与えることができたが、歪虚CAMは地面に倒れた状態で、耐え忍んでいた。
「不毛の大地だけあって、障害物がないから、狙い易いわね」
イケロスに騎乗したまよいは、調査隊を背にした位置から歪虚CAMに狙いを定めて、エクステンドキャストによる『七芒星』を放った。次々と火球が降り注ぎ、歪虚CAMが爆炎に包まれて、装甲が剥がれ落ち、コックピックが剥き出しになると、無人の操縦席が爆発……機体もろとも、粉々に砕け散り、消滅していった。
「これで一件落着だと良いけど」
●
リューに同行していたイェジドの紅狼刃は、狼嗅覚で地面の臭いを嗅ぎ分けていたが、敵なのか味方なのか、判別できないほどの多くの臭いがあったせいか、特定の臭いまでは分からなかった。
出没した敵と仲間以外の存在を対象とした場合、あまりにも膨大の数を嗅ぎ分けることになり、依頼期間中では全ての臭いを判別ことは困難だ。これでは、追跡することもできない。
紅狼刃は、申し訳なさそうに項垂れていた。リューが元気づけるように紅狼刃の頭と背中を撫でた。
「俺のために、ここまで来てくれて、ありがとな」
紅狼刃が顔を上げると、リューの笑顔があった。思わず、紅狼刃はうれしそうに目を細めていた。
「なんにせよ、敵が消えている隙に、先へ急ぐことにしよう」
ユージィンは、調査隊の魔術師たちを引き連れて、さらに奥へと進むことにした。ハンターたちも、護衛の任務があることもあり、共に進むことになった。
道中、周囲を警戒しつつも、ジャックが気になっていたことを告げた。
「今回、出没した歪虚、クラーレ配下の可能性があるぜ。来た方角を調べてみちゃどうだ?」
「来た方角となると、ヴァリオス方面だが、敵が出現した場所には惑わされないようにした方が良いだろう。それこそ、敵の思う壺だ。歪虚CAMと硝子ゴーレムが、クラーレ配下である可能性があるならば、尚更だろう」
マクシミリアンが応じた。
実際、ユージィンが目指している場所と、敵が出没した位置は逆方向だった。
一時間ほど、進んだ頃だろうか。
広大な不毛の大地に渓谷が垣間見えたが、肌に突き刺さるような強い風が吹き荒れていた。
ただの風ではない。
覚醒者ならば、感じるほどの強いプレッシャーだ。
それは、この場にいるハンターたち全員が感じ取っていた。
……重い、苦しい、あらゆる負の感情が押し寄せ、苦痛さえ覚えるほどであった。
「今は、これ以上、近づくのは危険だ。一旦、本部に戻った方が良さそうだ」
ユージィンは、マッピングシートに目印を付けていた。
ハンターたちが、目の当たりにしたのは、禍々しい風の奥に、石作りの遺跡のようなもの。
それが何か。そこまでは、分からなかった。
「……この感覚……寒気がするわね」
まよい自身、魔術師ということもあり、『大地の裂け目』の調査については気になっていた。
いざ、辿り着いた場所からは、覚醒者を阻むような『何か』を感じた。
熟練のハンターだからこそ分かる。
ここから先は、確かに危険だ。震えがくるほどに……。
一歩間違えば、最悪の事態も考えられた。
「この寒気、あくまでも勘だが、自然現象じゃあないぜェ。ユージィンさんの言う通り、引き返した方がいいだろうなァ」
シガレットが煙草を吸わない。ということは、これで終わりではないということかもしれない。
ほんのわずかな時間しか見ることができなかったが、ユージィンたちはハンターたちの護衛もあり、無事に本部へと戻ることができた。
依頼結果
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ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/01/20 08:28:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/01/18 09:53:45 |