ゲスト
(ka0000)
【陶曲】InfluenceJourney
マスター:風亜智疾

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/01/22 22:00
- 完成日
- 2019/01/30 23:46
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
■
『大地の裂け目』と呼ばれるその地に向けて、様々なルートから調査に派遣される予定のハンターたちの中に、その男はいた。
古びたロングストールに灰色の髪。切れ長の赤い瞳が見つめているのは受付担当のバルトロが渡した資料たち。
「……成程な。つまり、正規のルート案はあれども、不意を突く一手が欲しい、ということか」
ディーノ・オルトリーニ(kz0148)に渡された資料には、可能な限り敵の少ないルートの探索と、可能であればルート上の敵の一定排除を行うメンバーの引率を行うようにと記載されていた。
「大がかりな調査はそれなりに大きな部隊が行くだろう。こっちが手を付けるとするなら、この裏道とでもいうべきか、抜け道というべきか。そういうルートの開拓だ」
「まぁ、大人数で行けば抜け道にはならなくなるだろうな」
他にも様々な部隊がルート開拓と『大地の裂け目』探索を行っている。
大きな動きが起きている今ならば、ひっそりと少人数で進み、敵の少ないルートを見つけ出すことも可能だろうという判断だった。
「構わんが……出る敵の情報はこれで全部なんだな」
「あぁ。他の場所と違い、今回向かってもらう道に出るのはよく見られるゴーレムばかりだ」
「その先に行く必要も、ないんだな」
「もちろんだ。少人数で深追いすれば無事に帰ってこれなくなる可能性が非常に高い」
「……分かった。なら、人数を集めてくれ。道案内と援護は、俺がする」
小さく頷くディーノの表情は、常の仏頂面そのままだった。
■
そのルートは荒野に続く道の中でも、比較的枯れ木や背の高い草が生えているルートだった。
曲がりくねり細い道幅ということもあって、見通しがいいかと言われれば否と答えるしかない。
だが、逆に言えばそれは相手側も同じということだ。
他にルートがあるのなら、大きな敵を中心に布陣する場合はそちらに重点を置くだろう。
まるで、獣道のようなこのルートに、そんな大きな敵は入れない上に動くことすら困難だということくらい、誰だって解るのだから。
アメンスィ相手に長年にらみ合ってきたという嫉妬王ーーラルヴァがそんなことに気付かないわけがない。
ならば今のうちに、そのルートをこちら側のものにしてしまえば、いざという時の切り札になるかもしれない。
事態は急を要していた。
『大地の裂け目』と呼ばれるその地に向けて、様々なルートから調査に派遣される予定のハンターたちの中に、その男はいた。
古びたロングストールに灰色の髪。切れ長の赤い瞳が見つめているのは受付担当のバルトロが渡した資料たち。
「……成程な。つまり、正規のルート案はあれども、不意を突く一手が欲しい、ということか」
ディーノ・オルトリーニ(kz0148)に渡された資料には、可能な限り敵の少ないルートの探索と、可能であればルート上の敵の一定排除を行うメンバーの引率を行うようにと記載されていた。
「大がかりな調査はそれなりに大きな部隊が行くだろう。こっちが手を付けるとするなら、この裏道とでもいうべきか、抜け道というべきか。そういうルートの開拓だ」
「まぁ、大人数で行けば抜け道にはならなくなるだろうな」
他にも様々な部隊がルート開拓と『大地の裂け目』探索を行っている。
大きな動きが起きている今ならば、ひっそりと少人数で進み、敵の少ないルートを見つけ出すことも可能だろうという判断だった。
「構わんが……出る敵の情報はこれで全部なんだな」
「あぁ。他の場所と違い、今回向かってもらう道に出るのはよく見られるゴーレムばかりだ」
「その先に行く必要も、ないんだな」
「もちろんだ。少人数で深追いすれば無事に帰ってこれなくなる可能性が非常に高い」
「……分かった。なら、人数を集めてくれ。道案内と援護は、俺がする」
小さく頷くディーノの表情は、常の仏頂面そのままだった。
■
そのルートは荒野に続く道の中でも、比較的枯れ木や背の高い草が生えているルートだった。
曲がりくねり細い道幅ということもあって、見通しがいいかと言われれば否と答えるしかない。
だが、逆に言えばそれは相手側も同じということだ。
他にルートがあるのなら、大きな敵を中心に布陣する場合はそちらに重点を置くだろう。
まるで、獣道のようなこのルートに、そんな大きな敵は入れない上に動くことすら困難だということくらい、誰だって解るのだから。
アメンスィ相手に長年にらみ合ってきたという嫉妬王ーーラルヴァがそんなことに気付かないわけがない。
ならば今のうちに、そのルートをこちら側のものにしてしまえば、いざという時の切り札になるかもしれない。
事態は急を要していた。
リプレイ本文
■隠密
その道は確かに細めの獣道だった。
周囲の草木が徐々に枯れ始めているのを確認する限り、負のマテリアルが濃くなっていっているのが分かる。
「この先はどんどん濃くなるみたいですし、気を付けないとですね」
全員生きて帰るのが目標だからと、クレール・ディンセルフ(ka0586)はレンジャーキットの中から軍手や紐を取り出していく。
草木をかき分けるのに大事な準備だ。
一方マッピングの準備をしていた神代 誠一(ka2086)は、全員にもう一度今回の注意点を告げていく。
「抜け道としての活用が出来るよう、可能な限り自分たちの痕跡は残さないこと。不要な植物の伐採や破壊は慎むこと」
「長い探索と戦闘で疲労が溜まり過ぎないよう……適時入れ替わったり休憩をいれましょ……」
そう言ったのは今回の班で治療を担当するドゥアル(ka3746)だ。
「なァに、ココをガーッと行きゃズバッと相手方の首を狩れる……かもしれねェってコトだよな」
呵々っと豪快に笑うのは万歳丸(ka5665)。自分の拳をガツンと合わせつつ、自信に満ちた言葉を放った。
「いっちょ一切合切ふっとばしてやろうじゃねェか!」
「みんなのサポートはパティにお任せネ。ディーノは道案内、お世話になるんダヨっ」
元気よく、それでも凛とした意思を持った瞳を持ったパトリシア=K=ポラリス(ka5996)の言葉に、案内役のディーノが小さく頷いた。
「道は最後まで続いているのが1本とはいえ、途中で行き止まりになる脇道もある」
「そのためのざくろたちだよ」
ディーノの言葉に応えた時音 ざくろ(ka1250)が連れているのは、相棒である漆黒の首の長い機械化された鳥だ。
『Lo+』と名付けられたざくろだけの相棒は、自分の役割と出番をじっと待っている。
「途中での休憩はリュミアちゃんにお任せなんだよ!」
リュミア・ルクス(ka5783)のかばんに入っているものはみんなを元気づけるための必殺アイテム『甘いもの』がたっぷりだ。
「軽食なら私が振舞おうかしらね」
休憩を取れるところがあればいいけれど、とアルスレーテ・フュラー(ka6148)が口にしたのを聞いて、ざくろは頷く。
「それも確認していくよ」
「よろしくね」
全員が準備を整えたところで、最後の確認にディーノが告げる。
「全員のうち、半数が戦闘不能になった段階で撤退だ。これは覆らん。気を付けるように」
さて、6体のゴーレムを倒して行けるところまで行くのが先が、それとも。
■探索
「ざくろが一番小さい……地味に、地味に悔しいっ……」
「アー……早いとこ戦闘になってくんねェと、腰曲げっぱなしで進むのはキツイなァ」
「!!」
なんて、ちょっとした会話が起こりつつ。気を取り直したざくろは咳ばらいを一つしてからすっと手を伸ばした。
「Lo+セットアップ……今、ざくろ達の絆は結ばれた!」
彼だけの相棒と視界がリンクする。
草の背丈から高く飛び過ぎると敵が気づいてしまうかもしれない。
冒険家のざくろは経験豊富だ。だからこそ、相棒になるべく低めに飛ぶように指示を出し先行してもらうのだ。
先頭に万歳丸とアルスレーテ。二列目にざくろとクレール。三列目に誠一とパトリシア。四列目にドゥアルとリュミア。そして最後尾にディーノ。
狭い道だからこそ、一列ではなく二列で。戦闘時は常に交代できるスペースを確保。
全員での作戦だ。ちなみに最後尾のディーノは保険と撤退条件の見極めである。
「神代さん、左は草むらが続いてて、8m先枯れ木から道が分かれてる。ちょっと待ってて」
「了解」
ざくろが相棒とリンクさせた視界を元に、マッピングセットを使って記入していく誠一は、更に自分が目視した範囲を詳細に書き加えていく。
精密に。草むらの向こうに道はないか。動きはないかを頭の中に空間を展開し、立体的に。
ふとそんなとき、後方から小さめの声ではあったが歌が聞こえてくる。
「りゅっみりゅっみりゅーみあー 道をーゆくー」
リュミア作詞作曲の『ぼうけんのうた』だ。
元気があるのはいい事だ。小声なのは本人なりに気を使ってのことだろう。それでも、今回は隠密行動が基本。
「「リュミアさん、しーっ」」
何人かのメンバーに人差し指を立てたジェスチャーをされ、リュミアはしょんぼり肩を落とした。
「元気が出る歌ナラ、心の中デ歌うといいヨ」
笑いながらそう言ったパトリシアに渋々頷いて、リュミアは前を向く。
心の中で、元気に歌を続けながら。
■
ざくろの相棒が先行し道を確認し、誠一が詳細に地図へ記す。
最低限どうしても進むのに邪魔な草木は、折らないよう抜かないようクレールたちがかき分けていたその時。
「……来るよっ」
ざくろのLo+がその視界に石の塊を映した。
「数は……4体。それほど間が空いてないから、倒し切る前にもしかしたら2体同時に相手しなきゃいけなくなるかも」
敵と敵の間。ざっと4mずつといったところか。
「ランダム……いや確かに、ランダムですけど。間隔狭過ぎませんか?」
「ランダム、だからな……間隔がある以上、同時ではない」
「ざくろ。今は相棒を消耗させるにゃ早い。敵の攻撃が届かねェようにしといてくれ」
敵がいるならもう捕捉も何もない。先にこちらが見つけたのだ、このまま進めば必ず敵に当たる。
万歳丸は屈めていた背をぐっと起こし、ざくろはその言葉に応じて相棒を敵の手の届かないところまで高度を上げる。
ここで更に追撃が来ないか、遠くを確認することが出来るからだ。
後方で射程のあるメンバーも身構える。
眼前に現れたゴーレム達は、多少その間隔がある。
しかし正面から見ると、道幅も狭い場所にまるで壁に見えるような状態で現れた。
「脇をすり抜けて、は無理ですね」
「シショーに聞いたことあるヨ。えーっと、ヌリカメ?」
「ぬりかべ、かな」
さほど知能があるゴーレムではないらしい。とにかくこの先に進ませまいとする。それが目的なのだろう。
それでも両腕は自由に動くだろう。それだけの間隔はある。
再度ガツンと拳を合わせ、呵々と万歳丸は笑う。
「なァんだって構やしねぇよ! ぶっ飛ばしてお終ぇだ!」
「私は手前、そっちは奥をお願いね」
「応っ」
最前衛のアルスレーテと万歳丸が一気にゴーレムへと駆け込んでいく。
とにかく、後衛まで敵の射程範囲に収められたら困るのだ。片方を全力で叩いている間に、寄ってこられたらたまらない。
前衛を援護するように、クレールは狙いを定める。
手にした武器は自分だけの魔道機械『カリスマス・クレール』。
鍛冶屋の家系に生まれた彼女が、全身全霊を込めて作り上げ『カリスマス』の銘をつけた、自身の最高傑作。
「先は長いんです。とにかく完勝で終わらせます!」
放たれたマテリアルエネルギーは、一直線に万歳丸が向かう敵へと向かいその腹を貫いた。
それに合わせて、ぐっと身を低くした万歳丸が、にぃと口角を上げて笑ってみせた。
「てめェが石だかなンだか知らねェが、俺ァ金剛かつ黄金よォ……!」
繰り出された攻撃をいなしつつ、一気に投げ飛ばす。吹っ飛ばされたゴーレムにとどめを刺したのは、リュミアだった。
「ふはははー! 竜の腕に抱かれて果てるがよーい!」
同時に繰り出された合計6爪の光が、ゴーレムを粉々に引き裂いた。
クレールの攻撃と同時に放たれた輝く一線がアルスレーテの向かう敵を貫いていく。
貫く軌跡に引かれるように、地を蹴り上げるように一気に跳躍しアルスレーテの隣に立ったのは誠一だ。
「援護しますよ」
ゴーレムはどこから攻撃を食らったのか分かっていない様子だ。
眼前に彼がいても気づかないということは、彼が今認識阻害を実行しているからだろう。
「私、か弱いお姉さんだからおあんまり強い敵と戦ったらやられちゃうし?」
「ご冗談を」
そんな二人の会話を耳にしながら、パトリシアは箒で空へと上がり観察する。
前衛に対して護法籠手から解放した術式で防御力を引き上げつつ、状況を見定めていく。
(まるたちの敵から見て、硬さはそこまでじゃなさソウ)
そこでぐっと体を低くした最初のゴーレムが、大きく右腕を引き下げた。
次の瞬間、その巨体からは想像出来ない勢いで真正面向けて拳を突き出した。
行先はアルスレーテか。
回避は間に合わない。一か八か、マテリアルを込めた拳でその攻撃を打ち抜こうとして。
「……っ」
競り負けたのは、アルスレーテの方だった。
がくりと膝をつき身動きが取れなくなったところをみると、どうやら敵のBSを受けてしまったらしい。
「次の敵が来るヨっ!」
そう言って箒の上からパトリシアが鼓舞するように歌を紡ぎ、敵のマテリアルを威圧していく。
敵を確認する限りあと2体は無傷で寄ってくる。万歳丸たちが1体相手しても、もう1体はこっちに来る可能性がある。
「大丈夫です……回復しますよ……」
動いたのはドゥアルだ。
ドゥアルから放たれた光がアルスレーテを包み、静かにその体の不調を回復していく。
その間に敵の認識から外れ続けている誠一の放った広角投射によって、先に戦っていたゴーレムと、次に射程内に近づいたゴーレムが攻撃を受ける。
不調から回復したアルスレーテはぐっと拳を握りしめた。
「やられたからにはやりかえしますよ。お姉さんですからね!」
一気に振りぬいた拳は、相手に災いをもたらす必殺の一撃。
崩れ落ちていくゴーレムに見向きもせず、アルスレーテは次の敵へと向かっていく。
回復担当、戦闘担当、援護担当。
其々の役目をしっかりと分け、情報分析も行った結果だろう。
次の2体はあっけなく倒されることとなった。
■ツナサンドもぐもぐ
「ここから少し行ったところに、少し開けたところがあるよ。休憩にはちょうどいいかも」
「マテリアルの濃さが気になってきますね。そこについたらスキル使いますね」
そんな会話をしつつ。敵の強さも最初こそ不明だったからこそ手探りだったが、分かればさほど脅威でもないと把握して。
開けた視界の場所で、警戒は怠らずに休憩となった。
クレールがカリスマスを使用しつつ浄化術を施し、その中で行われたのは。
まさかのツナサンド作成とお茶会である。
「食べた後の痕跡はしっかり消さないといけませんね」
「まァ今は食って腹ァ膨らませようぜ! ……ツナサンド、うめェな……」
「甘いものいっぱい持ってきてるからね!」
「ツナサンド、美味しいですね!」
探索中、だったよな? なんて。
思わずディーノが脱力したのは秘密だ。だって彼だってちゃっかりツナサンドをもらっていたのだから。
■後半戦
地図は詳細に埋まり始めた。
ざくろの相棒の目と、誠一のマッピング。
周囲を警戒する他のメンバーによる目視からの情報も含めて、どんどんとそのルートが確定していく。
分かれ道はいくつかあるが、その全てを確認してどのルートが最後まで続いているのか、一目瞭然の地図になり始めた。
敵が現れた場所も正確に記載されている。倒した場所まで、しっかりと。
敵の情報はマップの余白に書き込み、それも情報にしていく。
そうして先に進んでいった、次の瞬間。
「Lo+!」
咄嗟に叫んだざくろに、メンバーが一気に戦闘態勢を取る。
草むらから突然拳が突き出してきたかと思うと、先行していたざくろの相棒をかすめたのだ。
「左から1体、右から1体!」
咄嗟に相棒に距離を取るよう指示を出したざくろの前に立ち、認識阻害を纏った誠一が再度広角投射を行う。
2体同時に攻撃を食らい、草むらから姿を現したゴーレムは確かに2体。
負のマテリアルの濃度からいって、これ以上先は難しい。恐らくここで最後だろう。
パトリシアが複数の符を展開し、魔法の結界を張りつつ2体同時に攻撃を加えていく。
「クレール!」
「はいっ!」
クレールのマテリアルエネルギーがゴーレムの腕を貫く。
もう一体の方には万歳丸とざくろ、アルスレーテが向かう。
細かい負傷はドゥアルがエレオスを利用したヒールで随時癒していくため、攻撃メンバーは全力で敵へと向かうことが出来た。
「Lo+、バードアタック!」
ざくろが相棒とシンクロし、魔力を纏ったLo+が敵の足を貫いていく。
体勢を崩した敵へ接近したアルスレーテが、再度災いをもたらす拳を打ち込むが、微かに浅かったのか打ち抜くまではいかなかった。
「竜の息吹で吹っ飛ぶがいいんだよ! せーのっ。ぎゃー、おー!!」
箒に乗って空に上がっていたリュミアが射線を確保し、まるでブレスのような雷撃を放つ。
左腕を見事に吹き飛ばし、更に体勢を崩した敵へと向き直ったのは万歳丸だ。
「土に還って寝ときなァ!!」
未来の大英雄と豪語する彼の一撃は、敵を吹き飛ばさん限りの勢いを持ってゴーレムを突き崩す。
一方、クレールが腕を打ち抜いた敵が微かによろめいたのを確認した誠一は、武器を流星錘へと持ち帰る。
よろめいた足元を狙い、巻き取るように絡めとる。力を込めて引き、転倒させようと試みるが、相手は石の塊。流石に一筋縄では倒れない。
「……っそ!」
力比べの均衡を崩したのは、誠一と――その後ろで彼の体を引っ張った、灰色の中年男だった。
「引け」
大の男二人がかりで足元を引っ張ることで、遂にゴーレムは転倒する。
ディーノを下敷きにした状態から身を起こしつつ、誠一は声を上げる。
「任せた!」
「任されました!」
ディセンフルコートを短剣に変形させると、倒れたゴーレムに乗り上げ一気に突き砕いた。
■その先はまだ
そこからもう少し進んだ辺り。
「……ここまでだな」
ディーノが一行の足を止めるべく声を上げた。
あまりの重圧。あまりの負のマテリアル。これ以上の進軍は不可能だ。今、この状況では。
目標の数の敵も殲滅した。ルートの確認と地図の作製も完了。
ならば、今は引き返すのみだ。
「任務は達成だ。一度引き返し、時期を待つ」
一同は頷きつつ、遥か前方を睨むのだった。
END
その道は確かに細めの獣道だった。
周囲の草木が徐々に枯れ始めているのを確認する限り、負のマテリアルが濃くなっていっているのが分かる。
「この先はどんどん濃くなるみたいですし、気を付けないとですね」
全員生きて帰るのが目標だからと、クレール・ディンセルフ(ka0586)はレンジャーキットの中から軍手や紐を取り出していく。
草木をかき分けるのに大事な準備だ。
一方マッピングの準備をしていた神代 誠一(ka2086)は、全員にもう一度今回の注意点を告げていく。
「抜け道としての活用が出来るよう、可能な限り自分たちの痕跡は残さないこと。不要な植物の伐採や破壊は慎むこと」
「長い探索と戦闘で疲労が溜まり過ぎないよう……適時入れ替わったり休憩をいれましょ……」
そう言ったのは今回の班で治療を担当するドゥアル(ka3746)だ。
「なァに、ココをガーッと行きゃズバッと相手方の首を狩れる……かもしれねェってコトだよな」
呵々っと豪快に笑うのは万歳丸(ka5665)。自分の拳をガツンと合わせつつ、自信に満ちた言葉を放った。
「いっちょ一切合切ふっとばしてやろうじゃねェか!」
「みんなのサポートはパティにお任せネ。ディーノは道案内、お世話になるんダヨっ」
元気よく、それでも凛とした意思を持った瞳を持ったパトリシア=K=ポラリス(ka5996)の言葉に、案内役のディーノが小さく頷いた。
「道は最後まで続いているのが1本とはいえ、途中で行き止まりになる脇道もある」
「そのためのざくろたちだよ」
ディーノの言葉に応えた時音 ざくろ(ka1250)が連れているのは、相棒である漆黒の首の長い機械化された鳥だ。
『Lo+』と名付けられたざくろだけの相棒は、自分の役割と出番をじっと待っている。
「途中での休憩はリュミアちゃんにお任せなんだよ!」
リュミア・ルクス(ka5783)のかばんに入っているものはみんなを元気づけるための必殺アイテム『甘いもの』がたっぷりだ。
「軽食なら私が振舞おうかしらね」
休憩を取れるところがあればいいけれど、とアルスレーテ・フュラー(ka6148)が口にしたのを聞いて、ざくろは頷く。
「それも確認していくよ」
「よろしくね」
全員が準備を整えたところで、最後の確認にディーノが告げる。
「全員のうち、半数が戦闘不能になった段階で撤退だ。これは覆らん。気を付けるように」
さて、6体のゴーレムを倒して行けるところまで行くのが先が、それとも。
■探索
「ざくろが一番小さい……地味に、地味に悔しいっ……」
「アー……早いとこ戦闘になってくんねェと、腰曲げっぱなしで進むのはキツイなァ」
「!!」
なんて、ちょっとした会話が起こりつつ。気を取り直したざくろは咳ばらいを一つしてからすっと手を伸ばした。
「Lo+セットアップ……今、ざくろ達の絆は結ばれた!」
彼だけの相棒と視界がリンクする。
草の背丈から高く飛び過ぎると敵が気づいてしまうかもしれない。
冒険家のざくろは経験豊富だ。だからこそ、相棒になるべく低めに飛ぶように指示を出し先行してもらうのだ。
先頭に万歳丸とアルスレーテ。二列目にざくろとクレール。三列目に誠一とパトリシア。四列目にドゥアルとリュミア。そして最後尾にディーノ。
狭い道だからこそ、一列ではなく二列で。戦闘時は常に交代できるスペースを確保。
全員での作戦だ。ちなみに最後尾のディーノは保険と撤退条件の見極めである。
「神代さん、左は草むらが続いてて、8m先枯れ木から道が分かれてる。ちょっと待ってて」
「了解」
ざくろが相棒とリンクさせた視界を元に、マッピングセットを使って記入していく誠一は、更に自分が目視した範囲を詳細に書き加えていく。
精密に。草むらの向こうに道はないか。動きはないかを頭の中に空間を展開し、立体的に。
ふとそんなとき、後方から小さめの声ではあったが歌が聞こえてくる。
「りゅっみりゅっみりゅーみあー 道をーゆくー」
リュミア作詞作曲の『ぼうけんのうた』だ。
元気があるのはいい事だ。小声なのは本人なりに気を使ってのことだろう。それでも、今回は隠密行動が基本。
「「リュミアさん、しーっ」」
何人かのメンバーに人差し指を立てたジェスチャーをされ、リュミアはしょんぼり肩を落とした。
「元気が出る歌ナラ、心の中デ歌うといいヨ」
笑いながらそう言ったパトリシアに渋々頷いて、リュミアは前を向く。
心の中で、元気に歌を続けながら。
■
ざくろの相棒が先行し道を確認し、誠一が詳細に地図へ記す。
最低限どうしても進むのに邪魔な草木は、折らないよう抜かないようクレールたちがかき分けていたその時。
「……来るよっ」
ざくろのLo+がその視界に石の塊を映した。
「数は……4体。それほど間が空いてないから、倒し切る前にもしかしたら2体同時に相手しなきゃいけなくなるかも」
敵と敵の間。ざっと4mずつといったところか。
「ランダム……いや確かに、ランダムですけど。間隔狭過ぎませんか?」
「ランダム、だからな……間隔がある以上、同時ではない」
「ざくろ。今は相棒を消耗させるにゃ早い。敵の攻撃が届かねェようにしといてくれ」
敵がいるならもう捕捉も何もない。先にこちらが見つけたのだ、このまま進めば必ず敵に当たる。
万歳丸は屈めていた背をぐっと起こし、ざくろはその言葉に応じて相棒を敵の手の届かないところまで高度を上げる。
ここで更に追撃が来ないか、遠くを確認することが出来るからだ。
後方で射程のあるメンバーも身構える。
眼前に現れたゴーレム達は、多少その間隔がある。
しかし正面から見ると、道幅も狭い場所にまるで壁に見えるような状態で現れた。
「脇をすり抜けて、は無理ですね」
「シショーに聞いたことあるヨ。えーっと、ヌリカメ?」
「ぬりかべ、かな」
さほど知能があるゴーレムではないらしい。とにかくこの先に進ませまいとする。それが目的なのだろう。
それでも両腕は自由に動くだろう。それだけの間隔はある。
再度ガツンと拳を合わせ、呵々と万歳丸は笑う。
「なァんだって構やしねぇよ! ぶっ飛ばしてお終ぇだ!」
「私は手前、そっちは奥をお願いね」
「応っ」
最前衛のアルスレーテと万歳丸が一気にゴーレムへと駆け込んでいく。
とにかく、後衛まで敵の射程範囲に収められたら困るのだ。片方を全力で叩いている間に、寄ってこられたらたまらない。
前衛を援護するように、クレールは狙いを定める。
手にした武器は自分だけの魔道機械『カリスマス・クレール』。
鍛冶屋の家系に生まれた彼女が、全身全霊を込めて作り上げ『カリスマス』の銘をつけた、自身の最高傑作。
「先は長いんです。とにかく完勝で終わらせます!」
放たれたマテリアルエネルギーは、一直線に万歳丸が向かう敵へと向かいその腹を貫いた。
それに合わせて、ぐっと身を低くした万歳丸が、にぃと口角を上げて笑ってみせた。
「てめェが石だかなンだか知らねェが、俺ァ金剛かつ黄金よォ……!」
繰り出された攻撃をいなしつつ、一気に投げ飛ばす。吹っ飛ばされたゴーレムにとどめを刺したのは、リュミアだった。
「ふはははー! 竜の腕に抱かれて果てるがよーい!」
同時に繰り出された合計6爪の光が、ゴーレムを粉々に引き裂いた。
クレールの攻撃と同時に放たれた輝く一線がアルスレーテの向かう敵を貫いていく。
貫く軌跡に引かれるように、地を蹴り上げるように一気に跳躍しアルスレーテの隣に立ったのは誠一だ。
「援護しますよ」
ゴーレムはどこから攻撃を食らったのか分かっていない様子だ。
眼前に彼がいても気づかないということは、彼が今認識阻害を実行しているからだろう。
「私、か弱いお姉さんだからおあんまり強い敵と戦ったらやられちゃうし?」
「ご冗談を」
そんな二人の会話を耳にしながら、パトリシアは箒で空へと上がり観察する。
前衛に対して護法籠手から解放した術式で防御力を引き上げつつ、状況を見定めていく。
(まるたちの敵から見て、硬さはそこまでじゃなさソウ)
そこでぐっと体を低くした最初のゴーレムが、大きく右腕を引き下げた。
次の瞬間、その巨体からは想像出来ない勢いで真正面向けて拳を突き出した。
行先はアルスレーテか。
回避は間に合わない。一か八か、マテリアルを込めた拳でその攻撃を打ち抜こうとして。
「……っ」
競り負けたのは、アルスレーテの方だった。
がくりと膝をつき身動きが取れなくなったところをみると、どうやら敵のBSを受けてしまったらしい。
「次の敵が来るヨっ!」
そう言って箒の上からパトリシアが鼓舞するように歌を紡ぎ、敵のマテリアルを威圧していく。
敵を確認する限りあと2体は無傷で寄ってくる。万歳丸たちが1体相手しても、もう1体はこっちに来る可能性がある。
「大丈夫です……回復しますよ……」
動いたのはドゥアルだ。
ドゥアルから放たれた光がアルスレーテを包み、静かにその体の不調を回復していく。
その間に敵の認識から外れ続けている誠一の放った広角投射によって、先に戦っていたゴーレムと、次に射程内に近づいたゴーレムが攻撃を受ける。
不調から回復したアルスレーテはぐっと拳を握りしめた。
「やられたからにはやりかえしますよ。お姉さんですからね!」
一気に振りぬいた拳は、相手に災いをもたらす必殺の一撃。
崩れ落ちていくゴーレムに見向きもせず、アルスレーテは次の敵へと向かっていく。
回復担当、戦闘担当、援護担当。
其々の役目をしっかりと分け、情報分析も行った結果だろう。
次の2体はあっけなく倒されることとなった。
■ツナサンドもぐもぐ
「ここから少し行ったところに、少し開けたところがあるよ。休憩にはちょうどいいかも」
「マテリアルの濃さが気になってきますね。そこについたらスキル使いますね」
そんな会話をしつつ。敵の強さも最初こそ不明だったからこそ手探りだったが、分かればさほど脅威でもないと把握して。
開けた視界の場所で、警戒は怠らずに休憩となった。
クレールがカリスマスを使用しつつ浄化術を施し、その中で行われたのは。
まさかのツナサンド作成とお茶会である。
「食べた後の痕跡はしっかり消さないといけませんね」
「まァ今は食って腹ァ膨らませようぜ! ……ツナサンド、うめェな……」
「甘いものいっぱい持ってきてるからね!」
「ツナサンド、美味しいですね!」
探索中、だったよな? なんて。
思わずディーノが脱力したのは秘密だ。だって彼だってちゃっかりツナサンドをもらっていたのだから。
■後半戦
地図は詳細に埋まり始めた。
ざくろの相棒の目と、誠一のマッピング。
周囲を警戒する他のメンバーによる目視からの情報も含めて、どんどんとそのルートが確定していく。
分かれ道はいくつかあるが、その全てを確認してどのルートが最後まで続いているのか、一目瞭然の地図になり始めた。
敵が現れた場所も正確に記載されている。倒した場所まで、しっかりと。
敵の情報はマップの余白に書き込み、それも情報にしていく。
そうして先に進んでいった、次の瞬間。
「Lo+!」
咄嗟に叫んだざくろに、メンバーが一気に戦闘態勢を取る。
草むらから突然拳が突き出してきたかと思うと、先行していたざくろの相棒をかすめたのだ。
「左から1体、右から1体!」
咄嗟に相棒に距離を取るよう指示を出したざくろの前に立ち、認識阻害を纏った誠一が再度広角投射を行う。
2体同時に攻撃を食らい、草むらから姿を現したゴーレムは確かに2体。
負のマテリアルの濃度からいって、これ以上先は難しい。恐らくここで最後だろう。
パトリシアが複数の符を展開し、魔法の結界を張りつつ2体同時に攻撃を加えていく。
「クレール!」
「はいっ!」
クレールのマテリアルエネルギーがゴーレムの腕を貫く。
もう一体の方には万歳丸とざくろ、アルスレーテが向かう。
細かい負傷はドゥアルがエレオスを利用したヒールで随時癒していくため、攻撃メンバーは全力で敵へと向かうことが出来た。
「Lo+、バードアタック!」
ざくろが相棒とシンクロし、魔力を纏ったLo+が敵の足を貫いていく。
体勢を崩した敵へ接近したアルスレーテが、再度災いをもたらす拳を打ち込むが、微かに浅かったのか打ち抜くまではいかなかった。
「竜の息吹で吹っ飛ぶがいいんだよ! せーのっ。ぎゃー、おー!!」
箒に乗って空に上がっていたリュミアが射線を確保し、まるでブレスのような雷撃を放つ。
左腕を見事に吹き飛ばし、更に体勢を崩した敵へと向き直ったのは万歳丸だ。
「土に還って寝ときなァ!!」
未来の大英雄と豪語する彼の一撃は、敵を吹き飛ばさん限りの勢いを持ってゴーレムを突き崩す。
一方、クレールが腕を打ち抜いた敵が微かによろめいたのを確認した誠一は、武器を流星錘へと持ち帰る。
よろめいた足元を狙い、巻き取るように絡めとる。力を込めて引き、転倒させようと試みるが、相手は石の塊。流石に一筋縄では倒れない。
「……っそ!」
力比べの均衡を崩したのは、誠一と――その後ろで彼の体を引っ張った、灰色の中年男だった。
「引け」
大の男二人がかりで足元を引っ張ることで、遂にゴーレムは転倒する。
ディーノを下敷きにした状態から身を起こしつつ、誠一は声を上げる。
「任せた!」
「任されました!」
ディセンフルコートを短剣に変形させると、倒れたゴーレムに乗り上げ一気に突き砕いた。
■その先はまだ
そこからもう少し進んだ辺り。
「……ここまでだな」
ディーノが一行の足を止めるべく声を上げた。
あまりの重圧。あまりの負のマテリアル。これ以上の進軍は不可能だ。今、この状況では。
目標の数の敵も殲滅した。ルートの確認と地図の作製も完了。
ならば、今は引き返すのみだ。
「任務は達成だ。一度引き返し、時期を待つ」
一同は頷きつつ、遥か前方を睨むのだった。
END
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/01/19 20:10:17 |
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相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2019/01/22 20:53:33 |