ゲスト
(ka0000)
【陶曲】古代遺跡への誘惑
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2019/02/11 07:30
- 完成日
- 2019/02/21 00:13
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
自由都市同盟。
数か月前から、魔術師協会広報室の魔術師たちが、カッツォ・ヴォイによって占拠されようとしていた山脈の遺跡を調査していた。
魔術師スコットは「カッツォの遺跡」と呼んでいたが、多数の魔術師たちに「その名前だと、すでにカッツォに奪われているようで気分が悪い」との意見が殺到……相談の末、調査中の遺跡は『宝石の遺跡』と呼ぶことになった。
大地の裂け目で見た遺跡らしいものとは、別の遺跡だった。
「大広間は、負のマテリアルで汚染されているようだ。『過去』の調査では、そのような報告はなかったはずだが……時間が経過していくうちに、蓄積した可能性もあるな」
スコットは、浄化術が使えるハンターを募集して、大広間の浄化をする依頼を出すことにした。
隠し通路には、トパーズの精霊カイゼルに似た石像が均等に並んでおり、その奥には隠し部屋があり、古い文献や美術品、装飾品などが見つかった。
「かなりの数だが、できるだけ遺跡の外へ運び出したい。装飾品には宝石が多いのも気になる。カッツォは、宝石を利用したヴォイドを使うことがあるらしいからな」
スコットの言葉に、調査に参加していたオートマトンの少年、ディエス(kz0248)は隠し部屋から遺跡の外へと古い文献などを運ぶ手伝いをすると言い出した。
「ボクにも、できることだから……だけど、ボク一人だけだと時間がかかりそうだから、本部でハンターさんたちに声をかけてみるよ」
ディエスは本部へと戻り、依頼に参加してくれるハンターたちを探していた。
●
一方、ラキ(kz0002)は、遺跡の奥に『自動兵器の倉庫』がある場所を発見した。
マッピングシートにルートを書き記してから、遺跡の外へと出た。
「スコット、遺跡内部に、オート・パラディンがいる大きな部屋を見つけたよ。そこまでのルートは、紙にも書いておいたけど……やっぱりさ、パラディンを野放しにしておくのは、危険だよね」
倉庫まで辿り着いたのは良いが、ラキだけではパラディンを全て退治することができず、内部の大きさまで確認する余裕もなかった。少なくとも、オート・パラディンが5体いることだけは分かった。
「そうだな。カッツォの行方は未だ不明だが、オート・パラディンが遺跡内部に残っているのが気になる。カッツォが現れる前に、パラディンは全て破壊してしまった方が良いだろうな」
とは言え、オート・パラディンは割と強い敵だ。スコットは、パラディンを破壊する依頼も出すことにした。
果たして、『宝石の遺跡』とは何か?
その『機能』や『精霊との関わり』については、あまり知られていなかった。
数か月前から、魔術師協会広報室の魔術師たちが、カッツォ・ヴォイによって占拠されようとしていた山脈の遺跡を調査していた。
魔術師スコットは「カッツォの遺跡」と呼んでいたが、多数の魔術師たちに「その名前だと、すでにカッツォに奪われているようで気分が悪い」との意見が殺到……相談の末、調査中の遺跡は『宝石の遺跡』と呼ぶことになった。
大地の裂け目で見た遺跡らしいものとは、別の遺跡だった。
「大広間は、負のマテリアルで汚染されているようだ。『過去』の調査では、そのような報告はなかったはずだが……時間が経過していくうちに、蓄積した可能性もあるな」
スコットは、浄化術が使えるハンターを募集して、大広間の浄化をする依頼を出すことにした。
隠し通路には、トパーズの精霊カイゼルに似た石像が均等に並んでおり、その奥には隠し部屋があり、古い文献や美術品、装飾品などが見つかった。
「かなりの数だが、できるだけ遺跡の外へ運び出したい。装飾品には宝石が多いのも気になる。カッツォは、宝石を利用したヴォイドを使うことがあるらしいからな」
スコットの言葉に、調査に参加していたオートマトンの少年、ディエス(kz0248)は隠し部屋から遺跡の外へと古い文献などを運ぶ手伝いをすると言い出した。
「ボクにも、できることだから……だけど、ボク一人だけだと時間がかかりそうだから、本部でハンターさんたちに声をかけてみるよ」
ディエスは本部へと戻り、依頼に参加してくれるハンターたちを探していた。
●
一方、ラキ(kz0002)は、遺跡の奥に『自動兵器の倉庫』がある場所を発見した。
マッピングシートにルートを書き記してから、遺跡の外へと出た。
「スコット、遺跡内部に、オート・パラディンがいる大きな部屋を見つけたよ。そこまでのルートは、紙にも書いておいたけど……やっぱりさ、パラディンを野放しにしておくのは、危険だよね」
倉庫まで辿り着いたのは良いが、ラキだけではパラディンを全て退治することができず、内部の大きさまで確認する余裕もなかった。少なくとも、オート・パラディンが5体いることだけは分かった。
「そうだな。カッツォの行方は未だ不明だが、オート・パラディンが遺跡内部に残っているのが気になる。カッツォが現れる前に、パラディンは全て破壊してしまった方が良いだろうな」
とは言え、オート・パラディンは割と強い敵だ。スコットは、パラディンを破壊する依頼も出すことにした。
果たして、『宝石の遺跡』とは何か?
その『機能』や『精霊との関わり』については、あまり知られていなかった。
リプレイ本文
●大広間
古代遺跡の大広間は、負のマテリアルで汚染地帯になっていた。
「トラップ解除してから、進みまちゅ」
北谷王子 朝騎(ka5818)はキューピッドボウを構え、鏑矢を番えて放った。矢の音が鳴り、壁に命中するとダメージを与えることはなかったが、罠が作動して壁の隙間から毒槍が飛んできた。
毒槍が飛んだ方向は、ハンターたちがいる場所から北……大広間の奥へと飛んでいくのが見えた。
「奥の方に飛ぶなんて、怪しいですぅ。祭壇とか、そういう類のものがあるんじゃないでしょぉかぁ」
星野 ハナ(ka5852)が『御霊符』から式神を出現させ、真っ直ぐ歩くようにと指示した。10メートルほど進んだ式神が床に触れると罠が作動……天井から複数の毒針が飛び、式神に命中すると消滅していった。
「大広間に負のマテリアルが発生したのは、遺跡に祀られている何か、だろうな」
八島 陽(ka1442)は運命符「銀天球」を装備し『占術』を行った。大広間で発見すべき重要対象の位置・方向は……曖昧としていたが、大広間のどこかにあるらしいという結果になった。占術は必ず当たるものではないが、参考にはなりそうだった。
ヴィリー・シュトラウス(ka6706)が罠を警戒しながら剣先で床の隙間を軽く突いてみた。
「隙間は、特に異変はないみたいだね。やっぱり床を踏むと作動する罠なのかな?」
ロニ・カルディス(ka0551)は、ハナの式神が通った場所を杖で叩いていたが、8メートル先まで進んだ床には、罠が作動しなかった。
「式神が消えた床は、注意した方が良さそうだな」
罠が作動した手前で止まるロニ。
「この遺跡は、神殿の様にも、高貴な方のための施設の様にも思えますね」
玲瓏(ka7114)が『ピュリフィケーション』を発動させると、入口付近が浄化されていった。
「高い所とか手が届かない所をやりますね」
アシェ-ル(ka2983)は、宝玉「天梅雨」を用いた『エクステンドレンジ』で魔法の射程を伸ばして、入口付近の天井に漂っている負のマテリアルを『浄化の祈り』で回復させていく。
朝騎が『御霊符』で召喚した式神が、さらに先へと進んでいく。8メートル移動した先で罠が作動し、壁の隙間から毒槍が飛ぶが、北の方角へと向かっていた。
「今のところ、罠が作動しても、毒槍は奥の方へ飛んでいきまちゅね」
ハナは、朝騎の式神が作動させた罠の手前で立ち止まり、『浄龍樹陣』を発動させ、範囲内に漂っている負のマテリアルを取り除いていく。
「なんだか、空気が綺麗になったみたいですぅ」
気のせいではなく、実際、周囲の負のマテリアルは浄化されていた。
陽は、ハナから少し離れた場所を指定して『機導浄化術・白虹』を活性化させ、周囲のマテリアルを浄化していく。
「少しずつ進みながら、浄化していくか。向かう先は、大広間の奥だな」
予想通りならば、奥に何かあるかもしれない。期待と不安が入り混じる。
ヴィリーは万が一に備え、仲間に『茨の祈り』を付与していた。
「皆さんが作業に専念できるように、手伝うね」
浄化作業は仲間に任せ、ヴィリーは援護に徹することにした。
ロニは錫杖「伽藍」を用いた『ピュリフィケーション』を発動させ、前方の指定した空間を浄化していくことができた。
「汚染の原因は、分からないが、このまま放っておくと、さらに汚染が広がる可能性もある。浄化する甲斐がある広さだな」
「天井の辺りは、任せてくださいね」
アシェ-ルが落とし穴対策として魔箒「Shooting Star」に乗って飛行し、ロニの上空に漂っていた負のマテリアルに対して『浄化の祈り』を発動させ、指定の範囲内を浄化していくことができた。
玲瓏は、朝騎が召喚した式神が消滅した床から少し離れた場所に立ち、右側に向って神楽鈴を鳴らし、『ピュリフィケーション』を発動させた。
「鈴が音を 響(とよ)ませ ここに 在りと在る 凝りませる 穢れ 隈無く 祓い浄めて」
清らかな調べに乗せて、玲瓏を中心にして、負のマテリアルが浄化されていく。
「罠を巡らせてあるとすれば、人が寄り付かないようにしたとも。遺跡に眠る宝を暴かれないようにともとれますね……浄化をしていけば、揺り起こされる何かがありましょうか」
ハンターたちは、罠を見つけてから浄化術を施し、先へと真っ直ぐに移動していった。
「予感的中ですぅ。祭壇がありましたぁ」
ハナが『御霊符』で召喚した式神が、祭壇へと向かって移動していくが、後もう少しというところで罠が作動し、壁の隙間から毒槍が飛んできた。
「こっちに飛んできましたけどぉ」
パリィグローブ「ディスターブ」で毒槍を受け払うハナ。
「キャハ、これくらいなら余裕ですぅ」
朝騎もまた『御霊符』で式神を召喚……祭壇の手前まで式神が進むと、床の罠が作動して、式神は落とし穴に落ちていった。
「落とし穴は、そのまま開いたままでちゅね」
「念の為、式神のルートを確かめてみる」
陽は絶火剣「ティトゥレル」の剣先で床を叩きながら、式神が通った箇所を慎重に歩いていく。
「ここまでは、罠は作動しないようだな」
落とし穴の手前で立ち止まる陽。
ロニが錫杖「伽藍」による『ピュリフィケーション』を施し、前方の空間が浄化されていった。
「よし、もう少しで祭壇に辿り着くな」
「天井の辺りも綺麗にしますね」
魔箒「Shooting Star」に乗ったアシェ-ルが、祭壇近くの天井まで飛行し、『浄化の祈り』を発動させ、周囲の汚染を回復させていった。
玲瓏は落とし穴の前で立ち止まり、左側に向かって『ピュリフィケーション』を発動させ、指定した範囲内を浄化していく。
「祭壇があるということは、やはり隠された何かがあるのでしょうか」
「だろうな。ここが精霊を祀る祭壇なら、手掛かりがありそうだ」
隣にいた陽が、右側を指定して『機導浄化術・白虹』を発動……周囲のマテリアル汚染を専用のカートリッジに吸収し、封印することができた。
朝騎はフライングスレッドに騎乗して飛行していたこともあり、落とし穴に落ちることはなかった。
「今までのルートを記録しておきまちゅね」
マッピングセットを持っていた朝騎が、大広間の地図と祭壇までのルートをマッピングシートに書き記していた。
「祭壇の上にある壁に、紫水晶の宝玉がありますぅ。あれが、ヒントでしょうかぁ」
ハナが注意深く周囲を見渡し、宝玉の存在に気が付いた。
「あれが、汚染源か?」
陽も気にはなっていたが、浄化するには届かない位置にあった。
「壁の宝玉、取ってきますね」
アシェ-ルが『マジックフライト』を唱えると、装備していたルーンソード「アマネセル」で飛行することができた。
ルーンソード「アマネセル」に乗ったアシェ-ルが紫水晶の宝玉がある付近まで接近すると、『浄化の祈り』を施し、周囲の汚染を回復することができた。
「まずは深呼吸……いきます」
壁に張り付いた紫水晶の宝玉を取り外すアシェ-ル。
と、罠が作動して天井から複数の毒針が飛んできた。アシェ-ルは受けも回避もできず、毒針が胴部に突き刺さるが、鎧「聖光の守護」を装備していたこともあり、軽傷で済んだ。
必死に紫水晶の宝玉を抱えたまま、祭壇近くまで降りていくアシェ-ル。ルーンソード「アマネセル」は浮遊したままだった。
玲瓏は『ピュリフィケーション』を発動させ、アシェ-ルの毒を解除した。
「アシェ-ル様、体調の方はいかがでしょうか」
「大丈夫です。ありがとうございます」
アシェ-ルが満悦の笑みを浮かべると、玲瓏は安堵して微笑んだ。
「お手柄だな。アシェ-ル」
ロニはそう言いながら、念の為、アシェ-ルが持っている宝玉に対して『浄化の祈り』を施した。
浄化はできたようだが、宝玉の色は鈍く見えた。
「この宝玉が、精霊を祀ることと関係しているのかもしれないな」
陽が『機導浄化術・白虹』を発動させ、カートリッジに吸収された負のマテリアルを封印することができた。宝玉の色が鮮やかに変化したようにも思えた。
「この遺跡、誰が住んでたんでちゅかね?」
朝騎は疑問に思いつつも、陰陽符「四境」を取り出して『浄龍樹陣』の浄化結界を作り出した。自分を中心にした結界内の、負のマテリアルによる汚染を取り除くことができた。
「噂では、カッツォがいたらしいですぅ。今は行方不明らしいですからぁ、今のうちに宝玉を持ち帰ってしまうのが得策だと思いますよぉ」
ハナも本来の勘が戻ってきたのか、ワクワクした微笑みを浮かべていた。
「そうだな。戻った方が良いだろうな」
ロニが頷く。
玲瓏たちは、朝騎のマッピングシートを頼りに、帰りは罠に引っかかることもなく、無事に遺跡の外へと出ることができた。
●隠し部屋
別班のハンターたちが、隠し部屋へと辿り着いた。
時音 ざくろ(ka1250)は罠を警戒しつつ、部屋の中まで入るが、少し進んだ場所で壁の隙間から毒槍が飛んできた。
「冒険には、危険がつきものだよ!」
聖盾「コギト」で毒槍を受け払うざくろ。
「まずは、文献をなんとかしないと」
ディエスは、古い文献を噛み千切っている野生の鼠たちが気になって仕方なかった。
同行していたジャック・エルギン(ka1522)が、少し心配そうに声をかける。
「ディエス、平気か? この遺跡はお前がカッツォと居た場所でもあるだろ」
「……ジャックさんたちのおかげで、ボク、気が付いたんだ。過去を怖がってばかりじゃ何も変わらないって。だから、この遺跡を調査して、カッツォがここで何をしていたのか、知りたいんだ」
ディエスが、強い眼差しで応えた。
ジャックは、彼が少しずつ成長していることを実感して、うれしそうに微笑んでいた。
「お前が決めたことなら、俺も手伝うぜ」
「ディエス様、私もお手伝いいたします。今日は頑張りましょうね」
フィロ(ka6966)が温和な笑みを浮かべると、ディエスは少し恥ずかしそうに笑っていた。
「ありがとう、フィロさん」
「まずは、目につく品から撮影して、記録に残しておきますね」
フィロは、入口付近に置いてあった古い壺を魔導カメラで撮影していた。
トリプルJ(ka6653)と言えば、文献を優先して運び出そうとしていたが、うっかり罠が作動して、落とし穴に落ちていた。
「ふぅ、これで少しは頭も冷えたな。活字中毒の俺様にとっちゃ、文献はお宝だからな」
トリプルJは『天駆けるもの』を発動させ、背中に翼の幻影を纏い、飛行しながら落とし穴から抜け出すと、古い文献が乱雑に置かれている棚の辺りまで移動していった。
一方、クリスティア・オルトワール(ka0131)が、部屋の入口付近に持参していたパンとチーズを細かく千切って、床に撒いていた。匂いに釣られたのか、5匹の鼠が集まり、餌を食べていた。
「これで少しは、文献を噛む鼠が減ると良いのですけど」
Gacrux(ka2726)は、魔導カメラで室内の撮影をしていた。文献などを運び出す前に、元の位置を記録しておきたかったからだ。
「品定めは、運び出した後でもできますから、さっさと片付けましょうか」
「文献かみかみは辛いので、できれば文献を優先して運び出したいですね」
アンネマリー・リースロッド(ka0519)は、鼠に文献が噛まれてしまうのが気掛かりだった。
遺跡の年代を特定するにしても、罠を発見して槍の加工技術や毒の精製からその年代の気候や植物分布を調査するには、依頼期間内では終わらない作業だ。
まずは、できることから始めなれば調査は進まない。アンネマリーは文献を紐解きたい気持ちを懸命に堪えて、魔術師協会広報室の魔術師たちと協力して運搬用の箱を準備する手伝いをしていた。
ジャックが部屋の入口に設置した松明が燈る中、作業は続いていた。
「ん? この床、他の場所より浮いてる気がするな」
罠のある場所を確認するように、ジャックは浮いた石畳を見つけると、ディエスとフィロに注意を促してから、自分から石畳を踏んだ。壁の隙間から毒槍がジャック目掛けて飛んできた。これは、ガウスジェイルで毒槍を引き寄せたのだ。
とっさに聖盾「コギト」で毒槍を受け流すジャック。
「罠が作動した場所は、ざくろがメモしておくからね」
冒険と言えば、マッピングセットは欠かせない道具の一つだ。ざくろは筆記用具でマッピングシートに罠の場所を書き記していた。ルートを確保するためにも、皆で共有できるマッピングシートがあれば、作業も円滑になるはずだ。
トリプルJは『天駆けるもの』で飛行しながら、背負っていた大籠に、ひょいひょいと文献を入れていく作業を優先していた。
「俺様がいる限り、文献は鼠どもの好きにはさせねぇからな!」
鼠はトリプルJの気配を感じて棚の後ろに隠れていたが、突然、パーンと鳴る音に驚いて、一目散に逃げていった。
「やれやれ、罠は飛んでいれば引っかかることはありませんが、意外と鼠の方が厄介かもしれませんね」
ハリセンで棚を叩き、鼠を追い払っていたのは、小型飛行翼アーマー「ダイダロス」を装備して飛行していたGacruxだった。
フィロが、持っていたナッツを部屋の外へと置いていたこともあり、隠し通路へと逃げ出す鼠もいた。
「侵入者は、私達ですから」
クリスティアが手に持つ錬金杖「ヴァイザースタッフ」は『シャイン』の魔法で光を照らしていた。
「装飾品の宝石は……紫水晶が多いですね。見たところ、綺麗ですけど」
魔術師協会広報室の魔術師たちが、装飾品の宝石を運び出したのを見て、クリスティアも手伝うことにした。
アンネマリーは部屋の外で待機し、トリプルJが運んできた文献を受け取ると、保存状態によって入れる箱を選別していた。
「これは、かなり古い文献……読み取るのに時間がかかりそうです」
そうした保存状態が悪いものは、丁寧に箱に詰めていくアンネマリー。
ジャックは主に落とし穴の場所を皆と共有するため、マッピングセットを使い、簡易的なマップを作っていた。
「俺が印した場所は、避けて通ってくれ」
クリスティアは、ジャックが書き記したマッピングシートを参考にしながら移動して、装飾品の宝石を運び出していた。
「大きな壺もありますが、どうやって運びましょうか?」
「ああ、それなら俺様が運ぶぜ」
トリプルJは『怪力無双』で筋力を爆発的に増加させ、軽々と大きな壺を持ち上げると、小脇に一つずつ抱えて運んでいく。
「カイゼル様に似た銅像は、私が運びますね」
フィロが『怪力無双』を発動……銅像を肩に背負い、これまた軽々と運び出していく。
Gacruxはハリセンを鳴らし、鼠を追い払っていた。そのおかげもあり、他の仲間たちは運ぶ作業に専念できた。
「鼠は放置しておくと、数が増えていきますからね」
ハリセンの音で払うという作戦は、功を奏していた。駆除するか否か、意見が分かれていたが、どちらにしろ、鼠を部屋から追い払うことは必要不可欠なことであった。
「罠は飛行していれば問題ありませんし、文献や物品は、他の方達が運んでいますし……そうなると俺が必然的に、鼠を追い払うことになりますね」
分担して作業するならば、Gacruxは鼠を追い払うことになっていた。
「まあ、良いでしょう。効率よく作業することを考えるならば、鼠を追い払うことも、また良しと」
自嘲気味に笑うGacrux。
ざくろは、機械化怪鳥「Lo+」に命じて鼠を追い払っていた。「Lo+」はクェーと鳴きながら飛んでいたこともあり、罠に引っかかることはなかったが、一匹ずつ鼠を嘴で捕まえて、ざくろの元へと運んでいた。
「鼠を駆除するのではなく、助けたいってことだね?」
『クェー、クェー』
「そうか。分かったよ。鼠は捕まえて、遺跡の外へ逃がしてやろうね」
『クェー、クェー』
実際、「Lo+」が何を言っているのか不明ではあるが、ざくろは納得したように微笑んでいた。
いくつかの美術品は遺跡内部に残っていたが、文献と宝石を優先して遺跡の外へと運び出したこともあり、およそ八割ほどの品は確保することができた。
アンネマリーとクリスティアが、文献や装飾品などの目録を作成していた。Gacruxは、箱の中身が分かるように物品を収める前に魔導カメラで文献等を撮影していた。
「これで、本部に持ち帰っても、後の作業も少しは楽になるでしょう」
本部にいる専門家が鑑定し易いように、Gacruxは取り計らっていたのだ。
ジャックは運び出した宝石を見て、紫水晶が多いことに気が付いた。
「アメジストで思い出したぜ。カッツォは以前から、アメンスィの眷属である精霊を狙ってたな」
「でしたら、カイゼル様にも危険が?」
フィロは、トパーズの精霊カイゼルとの出会いを思い出した。
「カイゼル様は、カッツォに力を奪われてしまったことがありましたね」
「ああ、カイゼルを助けたことで、あの時、アメンスィが現れた……とすれば」
思いを巡らすジャック。
数か月前、カッツォやクラーレが配下を率いてまで奪いに来た理由があるとすれば、アメンスィに関わる何かが古代遺跡にあるのかもしれない。
「どうやら、カッツォは現れませんでしたが、お二人の話から推測できるのは、この古代遺跡には、大精霊アメンスィに関わる物があるのでしょうね」
Gacruxはそう言いながら、遺跡の入口を眺める。フィロはカイゼルを想い、入口の手前にワインを捧げていた。
●謎の倉庫
さらに別班のハンターたちは、ラキ (kz0002)の案内で大きな倉庫に辿り着いた。
マルカ・アニチキン(ka2542)は倉庫の入口に陣取り、『アースウォール』を発動させ、土の壁を作っていた。
「私は撤退時に備えて、入口を守りますね」
マルカが、タクティカルヘルメット「3Ws-Rush PM」に備え付けられている通信機器で、仲間に知らせる。
「罠を特定するには、まずはこれか」
アーサー・ホーガン(ka0471)が、倉庫の入口から発煙手榴弾を点火せずに中へと転がしていく。床に転がる発煙手榴弾に反応して、罠が3つ作動……壁の隙間から毒槍が飛ぶトラップが2つ、天井から複数の毒針が飛んでくるトラップが1つ。
中にいたオート・パラディンは、転がってきた発煙手榴弾に狙いをつけてマテリアルレーザーを発射し、爆発が起こった。発煙手榴弾がレーザーの攻撃で破壊されたのだ。
「うわ、いきなり爆発か。だけど、ラキちゃんが掴んでくれた情報を活かすためにも、内部は確認しておかないとね」
灯火の水晶球を身体に付けたアリア(ka2394)は『マーキス・ソング』を唱え、『壁歩き』を発動させながら床を踏みつけるように移動していく。2つのトラップが作動した。壁の隙間から毒槍が飛んできたが、アリアは軽々と回避。一歩進んだ先に落とし穴が開くが、アリアは壁歩きで床に張り付いてたため、地下に落下することはなかった。
「床は落とし穴の蓋みたいになってて、開いても床に張り付いていれば大丈夫みたいだよ」
「でしたら、壁歩きがあれば、罠はそれほど気にする必要はないようですね」
ユウ(ka6891)は『アクセルオーバー』で加速して『壁歩き』を駆使して中へと移動していく。アリアとアーサーが作動させた罠は避けて、ユウは奥へと目指していた。
「私が踏んだ床は、罠が作動しませんでした」
ユウが魔導パイロットインカムを使い、仲間へと報告する。
「ユウさん、ありがとう。パラディンが倉庫からでないのは、何かを守るため?」
鞍馬 真(ka5819)が『修祓陣』を発動させ、ユウが通ったルートを進んでいく。確かに罠はなかった。
神代 誠一(ka2086)もまた、奥には何かあると推測していた。
「奥になにかあったとしても、まずはパラディンを全て倒す必要があるな」
誠一は『アクセルオーバー』を纏い、『ナイトカーテン』を発動させ、真と同じルートを駆ける。誠一が、ユウがいる手前で止まる。オート・パラディンの姿が見えたからだ。
レイア・アローネ(ka4082)が、前方へと移動し、星神器「天羽羽斬」に『ソウルエッジ』を纏わせる。オート・パラディンを狙うには、距離が離れ過ぎていた。
「あ……しまった?!」
レイアが立ち止った床は、落とし穴だった。落下していくレイア。
イツキ・ウィオラス(ka6512)が、レイアを救出するため、ユウが通ったルートを駆けていく。
オート・パラディン一体が、イツキを狙ってマテリアルレーザーを放った。紙一重で回避するイツキ。
「こちらイツキ、私はレイアさんを救出します」
魔導スマートフォンを使い、仲間に連絡するイツキ。
応答したのは、ヴァイス(ka0364)だ。
「こちらヴァイス、了解した。俺はパラディンに攻撃をしかけてみる」
フォースリングを発動体とした『マジックアロー』を放つヴァイス。
前衛にいたオート・パラディン一体に、複数のマジックアローが突き刺さり、ダメージを与えていた。
「大精霊が見たら、どう思うか」
アーサーは魔箒「Shooting Star」に騎乗して飛行し、星神器「アンティオキア」の鉾先で、前方の床を突いていた。トラップが2つ作動……毒槍が飛んできたが、アーサーは『鎧受け』で受け流し、落とし穴は魔箒「Shooting Star」に乗って飛行していたため、地下に落下することはなかった。
「ここからだと、パラディンの動きが丸見えだな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が、グラヴィティブーツ「カルフ」を用いた『壁歩き』で天井にぶら下っていた。唯一、罠の弱点に気が付いたのは、レイオスだった。天井を壁歩きで移動しても罠は発動しないのだ。
レイオスは闘旋剣「デイブレイカー」を構えて、パラディン一体に狙いを定めて『衝撃波』を解き放った。射程のある攻撃ならば、天井に足を固定した状態でもグラヴィティブーツ「カルフ」による壁歩きで攻撃を行っても落下することはないのだ。
レイオスの放った衝撃波はパラディン一体に命中して、かなりのダメージを与えていた。
オート・パラディン5体が、レイオスの存在に気付き、マテリアルレーザーを発射してきた。敵からの射撃攻撃を全て回避するレイオス。
「パラディンが、集まってきましたね!」
百鬼 一夏(ka7308)が、聖拳「プロミネント・グリム」による『青龍翔咬波』を繰り出した。直線状にいたパラディン2体が一夏の攻撃に巻き込まれ、ダメージを受けていた。
「逃がさないからね」
アリアはウィップ「フィーニクス」で攻撃をしかけるが、パラディン一体が回避……その時、『エンタングル』が発動して、アリアの鞭がパラディンの行動に合わせて打ち鳴り、敵を牽制することがてきた。
「今ならいける」
真はソウルエッジを纏った魔導剣「カオスウィース」と響劇剣「オペレッタ」の『二刀流』を繰り出し、パラディン一体の胴部に命中しダメージを与えると、さらに『アスラトゥーリ』の連撃が放たれ、『リバースエッジ』を解き放った。連撃に耐え切れず、パラディン一体が粉々に砕け散り、爆発して消え去った。
「これで1つ。確実に仕留めていこう」
真の言葉に、誠一が頷く。
「カッツォの企みを阻止するためにも、な」
誠一が『飛蝗』によって別のパラディン一体をマテリアルの紐で引き付けられるように移動していくと、苦無「狩牙」による『広角投射』を繰り出し、範囲内にいたパラディン一体に多大なダメージを与えていた。苦無「狩牙」は広角投射によって攻撃終了後、弾数はすべて消費していたため、「影祓」は発動しなかった。
「罠があると、迂闊に接近できんな。ならば……」
ヴァイスは、身捧の腕輪によるソウルエッジ『蒼炎~極~』を纏った魔鎌「ヘクセクリンゲ」を構え『徹刺』を繰り出した。射程の伸びた刺突が迸り、直線状にいるパラディンたちを貫いていく。ダメージは喰らっていたが、パラディンたちは倒れることはなく、立ち尽くしていた。
落とし穴から抜け出したレイアが、ソウルエッジを纏った星神器「天羽羽斬」を構えてパラディン一体に狙いを定めて『オロチアラマサ』を繰り出す。神刃による高速連撃によってパラディンは切り刻まれ、多大なダメージを受けると爆発して、消え去っていた。
「これで、二つ目だな」
「残りは、三体……」
イツキは蛇節槍「ネレイデス」を構え、『青龍翔咬波』を放った。パラディン2体が攻撃に巻き込まれたが、なかなか敵も倒れない。と、そこへ。
「援護します!」
一夏が『瞬迅の構え』からの『白虎神拳』を繰り出し、強烈な一撃を放つ。その衝撃により、パラディン一体が行動不能になった。
ユウは『アクセルオーバー』の残像を纏い、別のパラディンを狙って魔剣「バルムンク」を掲げて、斬り付けるが、まだ敵はユウを狙ってマテリアルレーザーを放ってきた。回避するユウ……『瞬影』でパラディンの攻撃をいなし、さらに魔剣「バルムンク」で攻撃をしかけるが、パラディンが倒れる様子はなかった。
「少し時間が、かかり過ぎてしまいましたね」
「さっさと、片付けるか」
レイオスはグラヴィティブーツ「カルフ」による壁歩きの効果が続いていたこともあり、天井にぶら下がった状態で、ソウルエッジを纏った闘旋剣「デイブレイカー」で『衝撃波』を放ち、パラディン2体が攻撃を喰らい、続けて『リバースエッジ』の連撃がパラディン一体に叩き込まれ、その威力は凄まじく、粉々になって消え去っていた。
余談だが、フォトンバインダー「フロックス」でソウルエッジは発動させることはできるが、ベノムエッジを使うには、直後に行うメインアクションの攻撃の際、使用条件を揃える必要がある。
「あと一体か。歪虚の人形劇に使われるより、ここで破壊される方がきっとマシなはずさ」
レイオスは、部屋の奥には何かあると予想していた。だからこそ、罠を回避するように天井から進むことにしたのだろう。
レイアが、残り一体になったパラディン目掛けて接近していく……が、途中で両脚に踏む感触がなくなっていた。
「わっ?!」
気が付けば、レイアは落とし穴の底に落ちていた。
「また、やってしまったか」
「レイアさん、これ使って」
アリアが、背負っていた箒を穴に落した。
「助かる、アリア」
レイアが受け取ったのは、飛行できる魔箒「Shooting Star」だった。
パラディンに接近できたのは、一夏だった。先の攻撃で、対象のパラディンを行動不能にして、隣接していたのだ。
「この技なら、私にもできるのです!」
一夏が『柔能制剛』を発動させ、巨大なパラディンを豪快に投げ倒す。
「イツキさん、お願いします!」
「この位置なら、いけます」
イツキは蛇節槍「ネレイデス」を七節棍に変形させ、『雪華纏槍・結明紡』を一気に解き放った。直線上にいたパラディンが、見る見るうちに砕け散り、爆発して消滅していった。
アーサーは万が一に備えて攻撃手段もあったのだが、仲間たちがパラディン攻撃に専念してくれたこともあり、自身は罠の対策を優先することができた。
「やっと、目印が付けられるぜ」
オートマチック「ミッテツィールS2」を構え、ペイント弾を放つアーサー。
「インクの付いてる床は、特に注意しろ。何度も罠が作動するからな」
「アーサーさん、助かるよ。皆がパラディンを倒してくれたから、倉庫の中も調べることができるよ」
真の目的は、精霊に影響を与えるような機能を見つけることだった。
「同盟の大精霊と言えば、アメンスィだよね」
真がそう告げると、誠一が考え込むように両腕を組んだ。
「アメンスィか。以前、トパーズの精霊と飲み会をしたことがあるんだが、その時、アメンスィが姿を現したことがあったな」
「誠一さん、この古代遺跡、もしかしたらアメンスィと関わりがある物があるかもしれないよ」
「あ、そう言われてみれば……。真、さすがだな」
「んー、そう言うのは、実物を見つけてからでいいよ」
「そ、そうか。すまない。まずは、探してみるか」
誠一と真は、倉庫の奥を見て廻っていた。アリアが魔導スマートフォンのカメラ機能を使い、周囲を記録するため撮影していた。イツキはヒーリングポーションを飲んだ後、周囲を警戒。
一時間後。埃塗れになった誠一と真が、倉庫の隅で見つけたのは、紫水晶の宝玉だった。
「カッツォが利用していたのは、紫水晶の宝玉?」
誠一の呟きに、真が応じた。
「私には詳しいことは分からないが、精霊に影響を与えるような機能を隠していた可能性はあるね。それが紫水晶の宝玉なら、これ以上、悪用させないように本部へ持ち帰った方が得策だろうね」
「確かに、カッツォに利用されていたとしたら、癪だな」
誠一と真は、紫水晶の宝玉を持ち帰ることにした。
倉庫の入口は、マルカが常に見張っていたこともあり、特に異状はなかった。
「皆さん、お疲れ様です」
「マルカさん、入口を守ってくれて、ありがとうございます」
一夏は、遺跡が壊れる危険も考え、退路のことも考えていたのだ。
「入口が塞がれてしまったら、一大事ですからね。何事もなく、一安心です」
マルカが安堵の溜息をつく。しばらくすると、紫水晶の宝玉を抱えた真がやってきた。
「その宝玉は?」
すかさず魔導カメラで撮影するマルカ。
真から事情を聞いたマルカは、少し興奮したように告げた。
「そのような大切な物なら、魔術師教会が調査してくださるはずです」
その後、発見した紫水晶の宝玉は、本部へと持ち込まれることになった。
古代遺跡の大広間は、負のマテリアルで汚染地帯になっていた。
「トラップ解除してから、進みまちゅ」
北谷王子 朝騎(ka5818)はキューピッドボウを構え、鏑矢を番えて放った。矢の音が鳴り、壁に命中するとダメージを与えることはなかったが、罠が作動して壁の隙間から毒槍が飛んできた。
毒槍が飛んだ方向は、ハンターたちがいる場所から北……大広間の奥へと飛んでいくのが見えた。
「奥の方に飛ぶなんて、怪しいですぅ。祭壇とか、そういう類のものがあるんじゃないでしょぉかぁ」
星野 ハナ(ka5852)が『御霊符』から式神を出現させ、真っ直ぐ歩くようにと指示した。10メートルほど進んだ式神が床に触れると罠が作動……天井から複数の毒針が飛び、式神に命中すると消滅していった。
「大広間に負のマテリアルが発生したのは、遺跡に祀られている何か、だろうな」
八島 陽(ka1442)は運命符「銀天球」を装備し『占術』を行った。大広間で発見すべき重要対象の位置・方向は……曖昧としていたが、大広間のどこかにあるらしいという結果になった。占術は必ず当たるものではないが、参考にはなりそうだった。
ヴィリー・シュトラウス(ka6706)が罠を警戒しながら剣先で床の隙間を軽く突いてみた。
「隙間は、特に異変はないみたいだね。やっぱり床を踏むと作動する罠なのかな?」
ロニ・カルディス(ka0551)は、ハナの式神が通った場所を杖で叩いていたが、8メートル先まで進んだ床には、罠が作動しなかった。
「式神が消えた床は、注意した方が良さそうだな」
罠が作動した手前で止まるロニ。
「この遺跡は、神殿の様にも、高貴な方のための施設の様にも思えますね」
玲瓏(ka7114)が『ピュリフィケーション』を発動させると、入口付近が浄化されていった。
「高い所とか手が届かない所をやりますね」
アシェ-ル(ka2983)は、宝玉「天梅雨」を用いた『エクステンドレンジ』で魔法の射程を伸ばして、入口付近の天井に漂っている負のマテリアルを『浄化の祈り』で回復させていく。
朝騎が『御霊符』で召喚した式神が、さらに先へと進んでいく。8メートル移動した先で罠が作動し、壁の隙間から毒槍が飛ぶが、北の方角へと向かっていた。
「今のところ、罠が作動しても、毒槍は奥の方へ飛んでいきまちゅね」
ハナは、朝騎の式神が作動させた罠の手前で立ち止まり、『浄龍樹陣』を発動させ、範囲内に漂っている負のマテリアルを取り除いていく。
「なんだか、空気が綺麗になったみたいですぅ」
気のせいではなく、実際、周囲の負のマテリアルは浄化されていた。
陽は、ハナから少し離れた場所を指定して『機導浄化術・白虹』を活性化させ、周囲のマテリアルを浄化していく。
「少しずつ進みながら、浄化していくか。向かう先は、大広間の奥だな」
予想通りならば、奥に何かあるかもしれない。期待と不安が入り混じる。
ヴィリーは万が一に備え、仲間に『茨の祈り』を付与していた。
「皆さんが作業に専念できるように、手伝うね」
浄化作業は仲間に任せ、ヴィリーは援護に徹することにした。
ロニは錫杖「伽藍」を用いた『ピュリフィケーション』を発動させ、前方の指定した空間を浄化していくことができた。
「汚染の原因は、分からないが、このまま放っておくと、さらに汚染が広がる可能性もある。浄化する甲斐がある広さだな」
「天井の辺りは、任せてくださいね」
アシェ-ルが落とし穴対策として魔箒「Shooting Star」に乗って飛行し、ロニの上空に漂っていた負のマテリアルに対して『浄化の祈り』を発動させ、指定の範囲内を浄化していくことができた。
玲瓏は、朝騎が召喚した式神が消滅した床から少し離れた場所に立ち、右側に向って神楽鈴を鳴らし、『ピュリフィケーション』を発動させた。
「鈴が音を 響(とよ)ませ ここに 在りと在る 凝りませる 穢れ 隈無く 祓い浄めて」
清らかな調べに乗せて、玲瓏を中心にして、負のマテリアルが浄化されていく。
「罠を巡らせてあるとすれば、人が寄り付かないようにしたとも。遺跡に眠る宝を暴かれないようにともとれますね……浄化をしていけば、揺り起こされる何かがありましょうか」
ハンターたちは、罠を見つけてから浄化術を施し、先へと真っ直ぐに移動していった。
「予感的中ですぅ。祭壇がありましたぁ」
ハナが『御霊符』で召喚した式神が、祭壇へと向かって移動していくが、後もう少しというところで罠が作動し、壁の隙間から毒槍が飛んできた。
「こっちに飛んできましたけどぉ」
パリィグローブ「ディスターブ」で毒槍を受け払うハナ。
「キャハ、これくらいなら余裕ですぅ」
朝騎もまた『御霊符』で式神を召喚……祭壇の手前まで式神が進むと、床の罠が作動して、式神は落とし穴に落ちていった。
「落とし穴は、そのまま開いたままでちゅね」
「念の為、式神のルートを確かめてみる」
陽は絶火剣「ティトゥレル」の剣先で床を叩きながら、式神が通った箇所を慎重に歩いていく。
「ここまでは、罠は作動しないようだな」
落とし穴の手前で立ち止まる陽。
ロニが錫杖「伽藍」による『ピュリフィケーション』を施し、前方の空間が浄化されていった。
「よし、もう少しで祭壇に辿り着くな」
「天井の辺りも綺麗にしますね」
魔箒「Shooting Star」に乗ったアシェ-ルが、祭壇近くの天井まで飛行し、『浄化の祈り』を発動させ、周囲の汚染を回復させていった。
玲瓏は落とし穴の前で立ち止まり、左側に向かって『ピュリフィケーション』を発動させ、指定した範囲内を浄化していく。
「祭壇があるということは、やはり隠された何かがあるのでしょうか」
「だろうな。ここが精霊を祀る祭壇なら、手掛かりがありそうだ」
隣にいた陽が、右側を指定して『機導浄化術・白虹』を発動……周囲のマテリアル汚染を専用のカートリッジに吸収し、封印することができた。
朝騎はフライングスレッドに騎乗して飛行していたこともあり、落とし穴に落ちることはなかった。
「今までのルートを記録しておきまちゅね」
マッピングセットを持っていた朝騎が、大広間の地図と祭壇までのルートをマッピングシートに書き記していた。
「祭壇の上にある壁に、紫水晶の宝玉がありますぅ。あれが、ヒントでしょうかぁ」
ハナが注意深く周囲を見渡し、宝玉の存在に気が付いた。
「あれが、汚染源か?」
陽も気にはなっていたが、浄化するには届かない位置にあった。
「壁の宝玉、取ってきますね」
アシェ-ルが『マジックフライト』を唱えると、装備していたルーンソード「アマネセル」で飛行することができた。
ルーンソード「アマネセル」に乗ったアシェ-ルが紫水晶の宝玉がある付近まで接近すると、『浄化の祈り』を施し、周囲の汚染を回復することができた。
「まずは深呼吸……いきます」
壁に張り付いた紫水晶の宝玉を取り外すアシェ-ル。
と、罠が作動して天井から複数の毒針が飛んできた。アシェ-ルは受けも回避もできず、毒針が胴部に突き刺さるが、鎧「聖光の守護」を装備していたこともあり、軽傷で済んだ。
必死に紫水晶の宝玉を抱えたまま、祭壇近くまで降りていくアシェ-ル。ルーンソード「アマネセル」は浮遊したままだった。
玲瓏は『ピュリフィケーション』を発動させ、アシェ-ルの毒を解除した。
「アシェ-ル様、体調の方はいかがでしょうか」
「大丈夫です。ありがとうございます」
アシェ-ルが満悦の笑みを浮かべると、玲瓏は安堵して微笑んだ。
「お手柄だな。アシェ-ル」
ロニはそう言いながら、念の為、アシェ-ルが持っている宝玉に対して『浄化の祈り』を施した。
浄化はできたようだが、宝玉の色は鈍く見えた。
「この宝玉が、精霊を祀ることと関係しているのかもしれないな」
陽が『機導浄化術・白虹』を発動させ、カートリッジに吸収された負のマテリアルを封印することができた。宝玉の色が鮮やかに変化したようにも思えた。
「この遺跡、誰が住んでたんでちゅかね?」
朝騎は疑問に思いつつも、陰陽符「四境」を取り出して『浄龍樹陣』の浄化結界を作り出した。自分を中心にした結界内の、負のマテリアルによる汚染を取り除くことができた。
「噂では、カッツォがいたらしいですぅ。今は行方不明らしいですからぁ、今のうちに宝玉を持ち帰ってしまうのが得策だと思いますよぉ」
ハナも本来の勘が戻ってきたのか、ワクワクした微笑みを浮かべていた。
「そうだな。戻った方が良いだろうな」
ロニが頷く。
玲瓏たちは、朝騎のマッピングシートを頼りに、帰りは罠に引っかかることもなく、無事に遺跡の外へと出ることができた。
●隠し部屋
別班のハンターたちが、隠し部屋へと辿り着いた。
時音 ざくろ(ka1250)は罠を警戒しつつ、部屋の中まで入るが、少し進んだ場所で壁の隙間から毒槍が飛んできた。
「冒険には、危険がつきものだよ!」
聖盾「コギト」で毒槍を受け払うざくろ。
「まずは、文献をなんとかしないと」
ディエスは、古い文献を噛み千切っている野生の鼠たちが気になって仕方なかった。
同行していたジャック・エルギン(ka1522)が、少し心配そうに声をかける。
「ディエス、平気か? この遺跡はお前がカッツォと居た場所でもあるだろ」
「……ジャックさんたちのおかげで、ボク、気が付いたんだ。過去を怖がってばかりじゃ何も変わらないって。だから、この遺跡を調査して、カッツォがここで何をしていたのか、知りたいんだ」
ディエスが、強い眼差しで応えた。
ジャックは、彼が少しずつ成長していることを実感して、うれしそうに微笑んでいた。
「お前が決めたことなら、俺も手伝うぜ」
「ディエス様、私もお手伝いいたします。今日は頑張りましょうね」
フィロ(ka6966)が温和な笑みを浮かべると、ディエスは少し恥ずかしそうに笑っていた。
「ありがとう、フィロさん」
「まずは、目につく品から撮影して、記録に残しておきますね」
フィロは、入口付近に置いてあった古い壺を魔導カメラで撮影していた。
トリプルJ(ka6653)と言えば、文献を優先して運び出そうとしていたが、うっかり罠が作動して、落とし穴に落ちていた。
「ふぅ、これで少しは頭も冷えたな。活字中毒の俺様にとっちゃ、文献はお宝だからな」
トリプルJは『天駆けるもの』を発動させ、背中に翼の幻影を纏い、飛行しながら落とし穴から抜け出すと、古い文献が乱雑に置かれている棚の辺りまで移動していった。
一方、クリスティア・オルトワール(ka0131)が、部屋の入口付近に持参していたパンとチーズを細かく千切って、床に撒いていた。匂いに釣られたのか、5匹の鼠が集まり、餌を食べていた。
「これで少しは、文献を噛む鼠が減ると良いのですけど」
Gacrux(ka2726)は、魔導カメラで室内の撮影をしていた。文献などを運び出す前に、元の位置を記録しておきたかったからだ。
「品定めは、運び出した後でもできますから、さっさと片付けましょうか」
「文献かみかみは辛いので、できれば文献を優先して運び出したいですね」
アンネマリー・リースロッド(ka0519)は、鼠に文献が噛まれてしまうのが気掛かりだった。
遺跡の年代を特定するにしても、罠を発見して槍の加工技術や毒の精製からその年代の気候や植物分布を調査するには、依頼期間内では終わらない作業だ。
まずは、できることから始めなれば調査は進まない。アンネマリーは文献を紐解きたい気持ちを懸命に堪えて、魔術師協会広報室の魔術師たちと協力して運搬用の箱を準備する手伝いをしていた。
ジャックが部屋の入口に設置した松明が燈る中、作業は続いていた。
「ん? この床、他の場所より浮いてる気がするな」
罠のある場所を確認するように、ジャックは浮いた石畳を見つけると、ディエスとフィロに注意を促してから、自分から石畳を踏んだ。壁の隙間から毒槍がジャック目掛けて飛んできた。これは、ガウスジェイルで毒槍を引き寄せたのだ。
とっさに聖盾「コギト」で毒槍を受け流すジャック。
「罠が作動した場所は、ざくろがメモしておくからね」
冒険と言えば、マッピングセットは欠かせない道具の一つだ。ざくろは筆記用具でマッピングシートに罠の場所を書き記していた。ルートを確保するためにも、皆で共有できるマッピングシートがあれば、作業も円滑になるはずだ。
トリプルJは『天駆けるもの』で飛行しながら、背負っていた大籠に、ひょいひょいと文献を入れていく作業を優先していた。
「俺様がいる限り、文献は鼠どもの好きにはさせねぇからな!」
鼠はトリプルJの気配を感じて棚の後ろに隠れていたが、突然、パーンと鳴る音に驚いて、一目散に逃げていった。
「やれやれ、罠は飛んでいれば引っかかることはありませんが、意外と鼠の方が厄介かもしれませんね」
ハリセンで棚を叩き、鼠を追い払っていたのは、小型飛行翼アーマー「ダイダロス」を装備して飛行していたGacruxだった。
フィロが、持っていたナッツを部屋の外へと置いていたこともあり、隠し通路へと逃げ出す鼠もいた。
「侵入者は、私達ですから」
クリスティアが手に持つ錬金杖「ヴァイザースタッフ」は『シャイン』の魔法で光を照らしていた。
「装飾品の宝石は……紫水晶が多いですね。見たところ、綺麗ですけど」
魔術師協会広報室の魔術師たちが、装飾品の宝石を運び出したのを見て、クリスティアも手伝うことにした。
アンネマリーは部屋の外で待機し、トリプルJが運んできた文献を受け取ると、保存状態によって入れる箱を選別していた。
「これは、かなり古い文献……読み取るのに時間がかかりそうです」
そうした保存状態が悪いものは、丁寧に箱に詰めていくアンネマリー。
ジャックは主に落とし穴の場所を皆と共有するため、マッピングセットを使い、簡易的なマップを作っていた。
「俺が印した場所は、避けて通ってくれ」
クリスティアは、ジャックが書き記したマッピングシートを参考にしながら移動して、装飾品の宝石を運び出していた。
「大きな壺もありますが、どうやって運びましょうか?」
「ああ、それなら俺様が運ぶぜ」
トリプルJは『怪力無双』で筋力を爆発的に増加させ、軽々と大きな壺を持ち上げると、小脇に一つずつ抱えて運んでいく。
「カイゼル様に似た銅像は、私が運びますね」
フィロが『怪力無双』を発動……銅像を肩に背負い、これまた軽々と運び出していく。
Gacruxはハリセンを鳴らし、鼠を追い払っていた。そのおかげもあり、他の仲間たちは運ぶ作業に専念できた。
「鼠は放置しておくと、数が増えていきますからね」
ハリセンの音で払うという作戦は、功を奏していた。駆除するか否か、意見が分かれていたが、どちらにしろ、鼠を部屋から追い払うことは必要不可欠なことであった。
「罠は飛行していれば問題ありませんし、文献や物品は、他の方達が運んでいますし……そうなると俺が必然的に、鼠を追い払うことになりますね」
分担して作業するならば、Gacruxは鼠を追い払うことになっていた。
「まあ、良いでしょう。効率よく作業することを考えるならば、鼠を追い払うことも、また良しと」
自嘲気味に笑うGacrux。
ざくろは、機械化怪鳥「Lo+」に命じて鼠を追い払っていた。「Lo+」はクェーと鳴きながら飛んでいたこともあり、罠に引っかかることはなかったが、一匹ずつ鼠を嘴で捕まえて、ざくろの元へと運んでいた。
「鼠を駆除するのではなく、助けたいってことだね?」
『クェー、クェー』
「そうか。分かったよ。鼠は捕まえて、遺跡の外へ逃がしてやろうね」
『クェー、クェー』
実際、「Lo+」が何を言っているのか不明ではあるが、ざくろは納得したように微笑んでいた。
いくつかの美術品は遺跡内部に残っていたが、文献と宝石を優先して遺跡の外へと運び出したこともあり、およそ八割ほどの品は確保することができた。
アンネマリーとクリスティアが、文献や装飾品などの目録を作成していた。Gacruxは、箱の中身が分かるように物品を収める前に魔導カメラで文献等を撮影していた。
「これで、本部に持ち帰っても、後の作業も少しは楽になるでしょう」
本部にいる専門家が鑑定し易いように、Gacruxは取り計らっていたのだ。
ジャックは運び出した宝石を見て、紫水晶が多いことに気が付いた。
「アメジストで思い出したぜ。カッツォは以前から、アメンスィの眷属である精霊を狙ってたな」
「でしたら、カイゼル様にも危険が?」
フィロは、トパーズの精霊カイゼルとの出会いを思い出した。
「カイゼル様は、カッツォに力を奪われてしまったことがありましたね」
「ああ、カイゼルを助けたことで、あの時、アメンスィが現れた……とすれば」
思いを巡らすジャック。
数か月前、カッツォやクラーレが配下を率いてまで奪いに来た理由があるとすれば、アメンスィに関わる何かが古代遺跡にあるのかもしれない。
「どうやら、カッツォは現れませんでしたが、お二人の話から推測できるのは、この古代遺跡には、大精霊アメンスィに関わる物があるのでしょうね」
Gacruxはそう言いながら、遺跡の入口を眺める。フィロはカイゼルを想い、入口の手前にワインを捧げていた。
●謎の倉庫
さらに別班のハンターたちは、ラキ (kz0002)の案内で大きな倉庫に辿り着いた。
マルカ・アニチキン(ka2542)は倉庫の入口に陣取り、『アースウォール』を発動させ、土の壁を作っていた。
「私は撤退時に備えて、入口を守りますね」
マルカが、タクティカルヘルメット「3Ws-Rush PM」に備え付けられている通信機器で、仲間に知らせる。
「罠を特定するには、まずはこれか」
アーサー・ホーガン(ka0471)が、倉庫の入口から発煙手榴弾を点火せずに中へと転がしていく。床に転がる発煙手榴弾に反応して、罠が3つ作動……壁の隙間から毒槍が飛ぶトラップが2つ、天井から複数の毒針が飛んでくるトラップが1つ。
中にいたオート・パラディンは、転がってきた発煙手榴弾に狙いをつけてマテリアルレーザーを発射し、爆発が起こった。発煙手榴弾がレーザーの攻撃で破壊されたのだ。
「うわ、いきなり爆発か。だけど、ラキちゃんが掴んでくれた情報を活かすためにも、内部は確認しておかないとね」
灯火の水晶球を身体に付けたアリア(ka2394)は『マーキス・ソング』を唱え、『壁歩き』を発動させながら床を踏みつけるように移動していく。2つのトラップが作動した。壁の隙間から毒槍が飛んできたが、アリアは軽々と回避。一歩進んだ先に落とし穴が開くが、アリアは壁歩きで床に張り付いてたため、地下に落下することはなかった。
「床は落とし穴の蓋みたいになってて、開いても床に張り付いていれば大丈夫みたいだよ」
「でしたら、壁歩きがあれば、罠はそれほど気にする必要はないようですね」
ユウ(ka6891)は『アクセルオーバー』で加速して『壁歩き』を駆使して中へと移動していく。アリアとアーサーが作動させた罠は避けて、ユウは奥へと目指していた。
「私が踏んだ床は、罠が作動しませんでした」
ユウが魔導パイロットインカムを使い、仲間へと報告する。
「ユウさん、ありがとう。パラディンが倉庫からでないのは、何かを守るため?」
鞍馬 真(ka5819)が『修祓陣』を発動させ、ユウが通ったルートを進んでいく。確かに罠はなかった。
神代 誠一(ka2086)もまた、奥には何かあると推測していた。
「奥になにかあったとしても、まずはパラディンを全て倒す必要があるな」
誠一は『アクセルオーバー』を纏い、『ナイトカーテン』を発動させ、真と同じルートを駆ける。誠一が、ユウがいる手前で止まる。オート・パラディンの姿が見えたからだ。
レイア・アローネ(ka4082)が、前方へと移動し、星神器「天羽羽斬」に『ソウルエッジ』を纏わせる。オート・パラディンを狙うには、距離が離れ過ぎていた。
「あ……しまった?!」
レイアが立ち止った床は、落とし穴だった。落下していくレイア。
イツキ・ウィオラス(ka6512)が、レイアを救出するため、ユウが通ったルートを駆けていく。
オート・パラディン一体が、イツキを狙ってマテリアルレーザーを放った。紙一重で回避するイツキ。
「こちらイツキ、私はレイアさんを救出します」
魔導スマートフォンを使い、仲間に連絡するイツキ。
応答したのは、ヴァイス(ka0364)だ。
「こちらヴァイス、了解した。俺はパラディンに攻撃をしかけてみる」
フォースリングを発動体とした『マジックアロー』を放つヴァイス。
前衛にいたオート・パラディン一体に、複数のマジックアローが突き刺さり、ダメージを与えていた。
「大精霊が見たら、どう思うか」
アーサーは魔箒「Shooting Star」に騎乗して飛行し、星神器「アンティオキア」の鉾先で、前方の床を突いていた。トラップが2つ作動……毒槍が飛んできたが、アーサーは『鎧受け』で受け流し、落とし穴は魔箒「Shooting Star」に乗って飛行していたため、地下に落下することはなかった。
「ここからだと、パラディンの動きが丸見えだな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が、グラヴィティブーツ「カルフ」を用いた『壁歩き』で天井にぶら下っていた。唯一、罠の弱点に気が付いたのは、レイオスだった。天井を壁歩きで移動しても罠は発動しないのだ。
レイオスは闘旋剣「デイブレイカー」を構えて、パラディン一体に狙いを定めて『衝撃波』を解き放った。射程のある攻撃ならば、天井に足を固定した状態でもグラヴィティブーツ「カルフ」による壁歩きで攻撃を行っても落下することはないのだ。
レイオスの放った衝撃波はパラディン一体に命中して、かなりのダメージを与えていた。
オート・パラディン5体が、レイオスの存在に気付き、マテリアルレーザーを発射してきた。敵からの射撃攻撃を全て回避するレイオス。
「パラディンが、集まってきましたね!」
百鬼 一夏(ka7308)が、聖拳「プロミネント・グリム」による『青龍翔咬波』を繰り出した。直線状にいたパラディン2体が一夏の攻撃に巻き込まれ、ダメージを受けていた。
「逃がさないからね」
アリアはウィップ「フィーニクス」で攻撃をしかけるが、パラディン一体が回避……その時、『エンタングル』が発動して、アリアの鞭がパラディンの行動に合わせて打ち鳴り、敵を牽制することがてきた。
「今ならいける」
真はソウルエッジを纏った魔導剣「カオスウィース」と響劇剣「オペレッタ」の『二刀流』を繰り出し、パラディン一体の胴部に命中しダメージを与えると、さらに『アスラトゥーリ』の連撃が放たれ、『リバースエッジ』を解き放った。連撃に耐え切れず、パラディン一体が粉々に砕け散り、爆発して消え去った。
「これで1つ。確実に仕留めていこう」
真の言葉に、誠一が頷く。
「カッツォの企みを阻止するためにも、な」
誠一が『飛蝗』によって別のパラディン一体をマテリアルの紐で引き付けられるように移動していくと、苦無「狩牙」による『広角投射』を繰り出し、範囲内にいたパラディン一体に多大なダメージを与えていた。苦無「狩牙」は広角投射によって攻撃終了後、弾数はすべて消費していたため、「影祓」は発動しなかった。
「罠があると、迂闊に接近できんな。ならば……」
ヴァイスは、身捧の腕輪によるソウルエッジ『蒼炎~極~』を纏った魔鎌「ヘクセクリンゲ」を構え『徹刺』を繰り出した。射程の伸びた刺突が迸り、直線状にいるパラディンたちを貫いていく。ダメージは喰らっていたが、パラディンたちは倒れることはなく、立ち尽くしていた。
落とし穴から抜け出したレイアが、ソウルエッジを纏った星神器「天羽羽斬」を構えてパラディン一体に狙いを定めて『オロチアラマサ』を繰り出す。神刃による高速連撃によってパラディンは切り刻まれ、多大なダメージを受けると爆発して、消え去っていた。
「これで、二つ目だな」
「残りは、三体……」
イツキは蛇節槍「ネレイデス」を構え、『青龍翔咬波』を放った。パラディン2体が攻撃に巻き込まれたが、なかなか敵も倒れない。と、そこへ。
「援護します!」
一夏が『瞬迅の構え』からの『白虎神拳』を繰り出し、強烈な一撃を放つ。その衝撃により、パラディン一体が行動不能になった。
ユウは『アクセルオーバー』の残像を纏い、別のパラディンを狙って魔剣「バルムンク」を掲げて、斬り付けるが、まだ敵はユウを狙ってマテリアルレーザーを放ってきた。回避するユウ……『瞬影』でパラディンの攻撃をいなし、さらに魔剣「バルムンク」で攻撃をしかけるが、パラディンが倒れる様子はなかった。
「少し時間が、かかり過ぎてしまいましたね」
「さっさと、片付けるか」
レイオスはグラヴィティブーツ「カルフ」による壁歩きの効果が続いていたこともあり、天井にぶら下がった状態で、ソウルエッジを纏った闘旋剣「デイブレイカー」で『衝撃波』を放ち、パラディン2体が攻撃を喰らい、続けて『リバースエッジ』の連撃がパラディン一体に叩き込まれ、その威力は凄まじく、粉々になって消え去っていた。
余談だが、フォトンバインダー「フロックス」でソウルエッジは発動させることはできるが、ベノムエッジを使うには、直後に行うメインアクションの攻撃の際、使用条件を揃える必要がある。
「あと一体か。歪虚の人形劇に使われるより、ここで破壊される方がきっとマシなはずさ」
レイオスは、部屋の奥には何かあると予想していた。だからこそ、罠を回避するように天井から進むことにしたのだろう。
レイアが、残り一体になったパラディン目掛けて接近していく……が、途中で両脚に踏む感触がなくなっていた。
「わっ?!」
気が付けば、レイアは落とし穴の底に落ちていた。
「また、やってしまったか」
「レイアさん、これ使って」
アリアが、背負っていた箒を穴に落した。
「助かる、アリア」
レイアが受け取ったのは、飛行できる魔箒「Shooting Star」だった。
パラディンに接近できたのは、一夏だった。先の攻撃で、対象のパラディンを行動不能にして、隣接していたのだ。
「この技なら、私にもできるのです!」
一夏が『柔能制剛』を発動させ、巨大なパラディンを豪快に投げ倒す。
「イツキさん、お願いします!」
「この位置なら、いけます」
イツキは蛇節槍「ネレイデス」を七節棍に変形させ、『雪華纏槍・結明紡』を一気に解き放った。直線上にいたパラディンが、見る見るうちに砕け散り、爆発して消滅していった。
アーサーは万が一に備えて攻撃手段もあったのだが、仲間たちがパラディン攻撃に専念してくれたこともあり、自身は罠の対策を優先することができた。
「やっと、目印が付けられるぜ」
オートマチック「ミッテツィールS2」を構え、ペイント弾を放つアーサー。
「インクの付いてる床は、特に注意しろ。何度も罠が作動するからな」
「アーサーさん、助かるよ。皆がパラディンを倒してくれたから、倉庫の中も調べることができるよ」
真の目的は、精霊に影響を与えるような機能を見つけることだった。
「同盟の大精霊と言えば、アメンスィだよね」
真がそう告げると、誠一が考え込むように両腕を組んだ。
「アメンスィか。以前、トパーズの精霊と飲み会をしたことがあるんだが、その時、アメンスィが姿を現したことがあったな」
「誠一さん、この古代遺跡、もしかしたらアメンスィと関わりがある物があるかもしれないよ」
「あ、そう言われてみれば……。真、さすがだな」
「んー、そう言うのは、実物を見つけてからでいいよ」
「そ、そうか。すまない。まずは、探してみるか」
誠一と真は、倉庫の奥を見て廻っていた。アリアが魔導スマートフォンのカメラ機能を使い、周囲を記録するため撮影していた。イツキはヒーリングポーションを飲んだ後、周囲を警戒。
一時間後。埃塗れになった誠一と真が、倉庫の隅で見つけたのは、紫水晶の宝玉だった。
「カッツォが利用していたのは、紫水晶の宝玉?」
誠一の呟きに、真が応じた。
「私には詳しいことは分からないが、精霊に影響を与えるような機能を隠していた可能性はあるね。それが紫水晶の宝玉なら、これ以上、悪用させないように本部へ持ち帰った方が得策だろうね」
「確かに、カッツォに利用されていたとしたら、癪だな」
誠一と真は、紫水晶の宝玉を持ち帰ることにした。
倉庫の入口は、マルカが常に見張っていたこともあり、特に異状はなかった。
「皆さん、お疲れ様です」
「マルカさん、入口を守ってくれて、ありがとうございます」
一夏は、遺跡が壊れる危険も考え、退路のことも考えていたのだ。
「入口が塞がれてしまったら、一大事ですからね。何事もなく、一安心です」
マルカが安堵の溜息をつく。しばらくすると、紫水晶の宝玉を抱えた真がやってきた。
「その宝玉は?」
すかさず魔導カメラで撮影するマルカ。
真から事情を聞いたマルカは、少し興奮したように告げた。
「そのような大切な物なら、魔術師教会が調査してくださるはずです」
その後、発見した紫水晶の宝玉は、本部へと持ち込まれることになった。
依頼結果
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面白かった! | 15人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/02/08 17:07:04 |
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質問卓 北谷王子 朝騎(ka5818) 人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2019/02/08 15:01:21 |
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相談卓 北谷王子 朝騎(ka5818) 人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2019/02/09 22:46:16 |