爆炎

マスター:とりる

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
6~15人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2019/02/21 07:30
完成日
2019/03/06 07:51

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 辺境某所――。
「青木殿だけでなくオーロラ殿も動いたか……まさに最終局面、といったところだな」
 古風な和服に身を包んだ長く美しい黒髪の少女が拠点内に設けられた椅子に腰を掛け、頬杖を突いて言った。
 少女……しかしその眼光は鋭く威厳すら感じさせるのは牙城・焔(kz0191)。怠惰の魔人、指揮官級の歪虚である。
「ビックマー殿のときのように静観……というわけにもいくまい。我とて怠惰の眷属ゆえ、真の王が動いたならば……」
「焔様……それでは……」
 傍に控えていた焔の側近筆頭、白川・桜が続けた。
「うむ。我々も動かざるを得まい。……これより我々は全戦力を以てハンター共……ノアーラ・クンタウへ攻撃を仕掛ける。緑、遥、よいな?」
「はっ、焔様のご命令のままに」
 側近二人、菊池・緑と球磨・遥は焔に対し頭を垂れた。
「それでは各自、出陣の準備にかかれ。火蜥蜴も全て連れてゆく」
(…………ハンター共、いよいよ我々は本気を出すぞ。どう対処する?)

 ***

「牙城・焔一派が動き出しました。青木 燕太郎(kz0166)や怠惰王・オーロラに呼応しての攻勢と思われます」
 辺境のハンターズソサエティにて、青い制服を着た黒髪ツインテールの受付嬢、クラヴィーア・キルシェ(kz0038)が真剣な面持ちで状況を説明する。
「敵は一直線にノアーラ・クンタウを目指しています。攻撃の激しさ、引き連れている火蜥蜴の数から見ても……敵は本気です」
 クラヴィーアはボードに貼られた地図を差し、現在の戦況説明に移る。
「既に即応として先発のハンター達が対処に当たっていますが……かなり苦戦しています。敵の総戦力が相手です、そう長くは持ちません」
 それにゆえにです、とクラヴィーアは続ける。
「こちらも出来得る限りの戦力を投入したいと思います。……どうか、ハンターの皆さん、長らく辺境を脅かしてきた牙城・焔一派を討つために、力を貸してください」
 クラヴィーアはぺこりと深く頭を下げる。そして頭を上げた後に言った。これは『決戦』であると。

 何度もハンター達とぶつかり、それを悉く退けてきた牙城・焔一派。本気を出した彼女らとの決戦が今、始まる。
 それは一体、どのような結果をもたらすのか。今はまだ、判らない――。

リプレイ本文


 要塞都市『ノアーラ・クンタウ』へ向けて一直線に進攻している多数の火蜥蜴を引き連れた牙城・焔(kz0191)の軍勢……。
 大きな危機が迫る中……蹂躙を阻止するため、ハンターズソサエティより迎撃の依頼を受けた十四人のハンターが集結!

「辺境の危機なのだ! ここでなんとしても食い止め……いや、ここで焔の軍勢と決着を付けるのだ!」
 決戦を前にしてネフィリア・レインフォード(ka0444)は硬い決意を固め、拳をぎゅっと握って空へ突き上げる。

「すべてを終わらせたいのはお互い様ということか。では今日ここで、この縁に終止符を打とう」
 やはりこの戦いを決戦と見ているロニ・カルディス(ka0551)は、心の中で静かに炎を燃やしていた……。

「王様より遅い登場たぁ、随分なご身分じゃねぇか。その余裕面、すぐに吠え面に変えてやるよ」
 旧怠惰王・対ビックマー戦、ベアーレヤクト時にも姿を見せなかった牙城・焔がついに動いた。
 これまで何度も敗北を喫した焔へ、ここで引導を渡すべく、ボルディア・コンフラムス(ka0796)はロニとは対照的に、明確にメラメラと闘志を燃やしている。

「前は小手調べだったけど、今度こそ牙城・焔一派をやっつけるよ!」
 随分と前になるが前回の戦闘では途中で撤退した牙城・焔とその側近達。しかしながら今回は向こうも決着を付けるつもりだろう。
 夢路 まよい(ka1328)は気合十分な様子。全力で臨む。

「二刀爆炎の焔、か。かなり厄介だとやりあった友人からは聞いている。相手に不足はなさそうだ」
 そのように言うリュー・グランフェスト(ka2419)。彼としては腕試しと言ったところか。

「火蜥蜴の群れはお任せください」
 エルバッハ・リオン(ka2434)は仲間が牙城・焔や側近達の相手に専念し易いように行動予定。
 前衛組の進路上に居る火蜥蜴群を排除し、味方の進行ルートを確保。
 また、仲間が牙城・焔や側近達と交戦中に火蜥蜴が邪魔に入らないよう、撃破していくつもりである。

(同行者達が取り巻きを倒す間、焔を抑えるのが私の役目だ)
 ハンター達が考案した今回の作戦は先に牙城・焔の側近を分断し各個撃破、その後集中的に牙城・焔へ攻撃を仕掛けるというもの。
 無論その間、牙城・焔を抑える必要があり、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)達はその役目を引き受ける。

(あの時はまだ私が未熟だった故、大きく不覚を取った。あれから牙城達も更に力をつけているだろう)
 レイア・アローネ(ka4082)は以前牙城・焔一派とやり合った依頼での出来事を思い返す……。
(だが私も遊んでいた訳ではない、策は練る、だが小細工はなしだ。以前の不覚を忘れた日はなかったぞ)
「私の力、貴様らがいなせるか試してみるといい――!」
 愛剣を握り締め、気力を迸らせるレイア。ここで牙城らを仕留めるという覚悟は十二分以上らしい。
「二刀流に加え灼導兵器というのが厄介だ。幸い、アレは威力が調節出来ないようだ」
 その後彼女は牙城・焔一派との戦闘が未経験の仲間へとアドバイスをしておく。
「射線上に立つのだけは気をつけろ。お前やアルトならきっと躱せる」

 言わずと知れた(?)死地好きバトルジャンキーのゾファル・G・初火(ka4407)。
「戦闘の熱気で俺様ちゃんを燃え上がらせてくれんだよなぁぁぁ、爆炎さんよぉ」
 歪虚との戦いも終焉が近いような気配が漂う昨今、以前にも増して過酷なあちらこちらの戦場へ頻繁に顔を出すようになった女傑……らしい。
 ゾファル的には辺境の危機やノアーラ・クンタウの防衛云々ではなく、正直に言えば真っ当なお題目とかはどうでもよくて、ただただ強い敵と命のやり取りをしたい模様。

「奴らも決死の覚悟で来るはずだ。死にたがり屋にはそれ相応の報いをくれてやる」
 敵が本気だと分かった以上、一切手加減はしない。逃げる間も与えず殲滅するのみ――。
 そのように考えるコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)。
 しかし敵の軍勢、特に牙城・焔とその側近達は高練度のハンター達を何度も退けてきたかなりの難敵……。激戦は必至だ。

(牙城・焔……以前は火蜥蜴を退かせた状態ですら危うかった……。今回は勝てるだろうか……いや、勝たねばならない……)
 周りが戦意旺盛な中、エメラルド・シルフィユ(ka4678)は若干不安そうな表情を浮かべていた。
 前回まともに牙城・焔一派とやり合った際に手痛い敗北を喫したためだろう。
 だが彼女とて今回が『決戦』であることは理解しており、可能な限り仲間の支援に動くつもりである。

「まずはやっかいな敵から倒すとしましょう」
 エルフの白巫女、夜桜 奏音(ka5754)はそのように言った。
 先にも述べたように、今回のハンター達の作戦はまずは牙城・焔の側近達を分断し各個撃破するというもの。
 そのためには奏音の白巫女の力が必要不可欠と言っても良いだろう。

「牙城・焔……ついに相まみえる時が来ましたか……。しかし屈辱ですが私では奴の首は取れません……。一人であればそれでも首を狙いに行ったでしょう」
 目を閉じ、静かに言葉を紡ぐのは多由羅(ka6167)。そして彼女は続ける。
「だけど今の私には仲間がいます。首級は皆に譲りましょう。代わりに私は彼女の側近達を狙います」
 パッと目を見開き、言い終えた後にきゅっと口元を結ぶ多由羅であった。

「あれが牙城・焔の軍勢……これだけの戦力をノアーラ・クンタウに近づけさせる分けには行きません、ここで何としても食い止めなくては」
 心優しきドラグーンの少女、ユウ(ka6891)は要塞都市を防衛するべく、敵が壁内部へ進入する前に決着を付けようと、事前準備としてインカムを無線機に設定。
 牙城・焔が『灼導兵器』を発動しようとした場合、直ぐに回避行動に移れるように情報伝達を徹底する。
 また、接敵直後の初手に相手が『灼導兵器』を使用してくることにも注意・警戒しておく。

 そしてハンター達は敵の進攻ルート上に防衛ラインを構築。なお、両翼は緊急展開したネレイド族の戦闘部隊が固め、万全の防衛態勢を敷いた。


 しばらくして…………だだっ広い草原にて、牙城・焔軍の先方、火蜥蜴群と接敵!

 まず前に出るのは火蜥蜴対応のまよいとエルバッハ。
「来たね……早期に敵の数を減らすことは戦闘を優位に進めるために必用なことだからね」
 まよいは守護者としての能力を解放するためのスキルである【超覚醒】を発動。
 守護者の絶大な力を得る代わりに高いリスクも生じるが――彼女は『ここが使いどころ』と判断したようだ。
 まずは【覇者の剛勇<イクタサ・アェヌプルペ>】を使用し、大精霊が司る『勇気』の力を解放、自分と周囲の仲間へ加護を与える。
(特に同じ火蜥蜴対応……エルバッハは魔術師だし、火蜥蜴からうっかり攻撃されて倒れないように加護を優先して付与していきたいね)

 まよいからの加護を受けたエルバッハ。呪文を詠唱し【ブリザード】を発動。進攻して来る火蜥蜴の群れに対して冷気の嵐を浴びせ、纏めて攻撃。
 高練度の魔術師であるエルバッハの【ブリザード】はかなりの威力を誇り、冷気の嵐を受けた火蜥蜴達は次々に伏し、黒い霧となり消滅。
 エルバッハは連続で【ブリザード】を詠唱・発動し、先方の火蜥蜴群を壊滅状態に追いやった。

 だが……敵も並大抵の覚悟で辺境の人類側の本拠地とも言える要塞都市『ノアーラ・クンタウ』へ進軍しているわけではない。
 先方を殲滅しても第二波がすぐにやって来た。これには火蜥蜴対応のまよいとエルバッハ以外のハンターも迎撃に参加。
 エルバッハは【ブリザード】を惜しみなく使用しつつ、多数の火蜥蜴が接近すれば攻撃範囲の広い【グラビティフォール】に切り替え、詠唱・発動。
 効果範囲内に紫色の光を伴う重力波が発生。重力は火蜥蜴それぞれを中心に収束し、圧壊させると同時に移動を制限させ、進攻を遅らせる。
 ……それでも火蜥蜴は数に物を言わせ進軍を緩めない。エルバッハが距離を詰められた場合には【アイスボルト】を詠唱・発動し、冷静に対処。

 エルバッハの【ブリザード】を主軸とし、押し寄せる火蜥蜴群をハンター達はひたすらに迎撃。
 火蜥蜴群の第三波を壊滅させた頃、ようやく後方に牙城・焔やその側近達の姿を確認。
 ハンター達はより攻勢を強め、敵将への道を切り開く――。

 ***

「いくぜ……! 待ってろよ焔ァ!!」
 ボルディアは【超覚醒】を発動。焔の前に、まずは側近三名のほうへ向かう。
 途中、当然ながら多数の火蜥蜴が群れているので【烽火連天】による範囲攻撃で薙ぎ払いつつ突き進む。

 少し時間は掛かったが敵陣中央へ到着。
 とりあえず焔は抑えの班の任せ、ボルディアは側近の三名を範囲内に収め、間髪を入れず――
 大精霊が司る『知恵』の力を解放し、守護者スキル【智の聖域<ガーデン・オブ・アメンスィ>】を発動。周囲の封印の波動を放つ。
 これはマテリアルの流れ、思考の動きを制限する魔法であり、非常に強力な封印であるため、集中しなければ行使は難しい。
 ゆえにボルディアは最大限の精神集中を以て【智の聖域】を発動――! 強力なバッドステータスである『智の封印』を側近三名に付与した。
 これは『スキル使用不能』『移動不能』『行動阻害』の三つを同時に付与するものであり、つまりは敵をほぼ無効化出来るということ。
 守護者のみに与えられた力……。また、ボルディアは側近三名が常に陣形を組んで戦闘を行うことも利用し、一気に側近三名を(一時的にではあるが)無効化せしめたのである。

 側近三名対応のハンター達はこの機を逃さず、一斉攻撃を開始。

 コーネリアは最初に魔法支援・回復役であり、厄介な菊池・緑に対し重機関銃『ラワーユリッヒNG5』を構えて【ナイトメアサンダー】を発動。
「奴らが慢心していないのは確かだ。ならば計算高さと執念の強さがモノを言う」
 天に向かって一斉に放たれた攻撃がマテリアルを纏い、光の雨となって降り注ぐ――。
 敵は火属性を持っているとコーネリアは推測。
 菊池に水属性にて火属性への効果が見込まれる(?)【フローズンパニッシャー】、及び防御低下効果を持つ【キラースティンガー】を叩き込む。

 ……ちなみに、牙城・焔、及び側近三名はまよいの検証により防御属性は火属性では無く、無属性の可能性が高いことが判明している。

 奏音は菊池に対し【白龍の息吹<テタラマウヘ>】を詠唱・発動し、攻撃。
「回復されると面倒なので抑えさせていただきます」
 光線が放たれると共に奏音の背に白龍にも似た虹色の翼が広がった。
 その後【ワイルドカード】【黒曜封印符】にて菊池を封じ、以後繰り返し。

 エメラルドは支援・回復役に専念。現在のところ側近は封じているのでダメージは火蜥蜴によるものである。
 焔の抑えにはロニが回っているため、エメラルドは対・側近班へのサポートを行う。
 ボルディア、多由羅、奏音に【ゴッドブレス】を詠唱・発動し付与する。

 多由羅も狙うは菊池。
「リュー様達が牙城焔を抑えているとは言え、例の兵器を放ってこられては厄介です。その前に側近を倒し、力の均衡を崩しましょう」
 斬魔刀『祢々切丸』を振るい、【一之太刀】から【終之太刀】にて斬撃を繰り出し、斬り付ける。
「長期戦になり敵が連携を取り始めれば不利になってきます」
 多由羅は再度斬撃を繰り出した。

 ***

「お前達の弱点は強過ぎることだ。これまで全ての敵を実力でねじ伏せてきたのだろう」
 レイアは球磨・遥と対峙。
「なるほど、武人としてお前達は誇り高いのかもしれないだがそれを人は『慢心』と呼ぶのだ……」
 封印され、動けない敵に向かって魔導剣『カオスウィース』の切っ先を突き付け、言い放つ。
「以前お前は言った、『我が側近達は一対一の戦いには向かない』そこを突かないと思ったか」
 レイアの言う通り、現在の側近三名は分断こそされていないものの、【智の聖域】他のバッドステータスにより無力化されている。
 ゆえに各個撃破出来る状況が現出しているのだ。火蜥蜴が邪魔をして来るものの、それは斬り捨てる。
「火蜥蜴をけしかけるなら好きにすればいい。それを相手に出来る仲間達がいる。お前達の連携と我々の連携、どちらが上か勝負だ!」
 レイアはそう言い、ゾファルと共に球磨・遥へ斬り掛かる。
(他の二人の援護に回られないよう引き剥がす──いや、我々で倒す)
【ソウルエッジ】【二刀流】【アスラトゥーリ】による斬撃の乱舞を喰らわせる。
「お前の障壁と私の剣、牙城の二刀を見てきているお前にどこまで通じるか試させて貰おう!」
 ……どうやらスキルが封じられているためか、ノックバックは発生しなかった。
 しかしながら敵は防御担当だけに、硬い。二枚の盾の上から何度も斬撃を喰らわせ、ダメージを蓄積させる。

 一方のゾファル。
「俺様ちゃんの最終技の実験台になってもらうじゃーん」
(めんどくさい兵器対策は焔ちゃん担当に任せて、俺様ちゃんは防御担当の球磨・遥狙いじゃーん)
 防衛担当=硬いということで、丁度良いと思ったらしい。
「硬いなら、割れるまでたたこうホトトギス」
 機甲拳鎚『無窮なるミザル』を装備した腕部にて拳による近接格闘戦を挑み、次々の二枚の盾の上から拳を打ち込んでいく。
「防御が高い? だったら物理パンチでぶち割ってやるくらいの勢いでいくじゃーん」

 ***

「焔の相手したい所だけど今回は我慢なのだっ。まずは周囲から削っていくのだっ」
 ネフィの目標は白川・桜。
「何とか近づかないと一方的にやられちゃうねー。何とか一気に接近してみるのだ!」
 念のため【地を駆けるもの】を使用し、ジグザグに動きながら接近を試みるが……相手は動けず、スキルも使えない。そもそもの行動が強く阻害されている。
 危なげなく霊斧槍『ピュールロコス』の間合いまで距離を詰めたネフィは容赦無く斧槍を振り上げ、振り下ろす。
「喰らうのだー!!」

 ネフィと同じく白川・桜対応のユウ。
 SA【アクセルオーバー】を常時使用し、全身をマテリアルのオーラで覆い、残像を纏って肉体を加速させる。
 そしてネフィと同時に【立体攻撃】からの全力移動で一気に白川との距離を縮める。
 続いて白川の弓を狙い、SA【立体攻撃】によるナイフ『ペルデール』での連続攻撃を叩き込む。
 更にSA【ソードブレイカー】を発動し武器の威力低下を狙った。

 ***

「これが守護者の力というものか……やってくれたなハンター共」
 蹴散らされる火蜥蜴、一方的に攻撃を受ける側近三名の様子に、指揮官級の歪虚である牙城・焔は怒りの炎を全身から発生させ、燃え上がらせる。
 本来ならばすぐにでも側近達の元へ駆け付け、側近達へ封印を行っているハンターを叩き斬り、紅蓮の業火で消し炭にするところだが――
 そのようなことはハンター達も予測済みであり、三名の高練度のハンター達が焔の抑えに当たっていた。

「進撃もここで終了だ。これ以上は、何も燃やさせるわけにはいかない」
 ロニは後衛に位置し、仲間への支援として【レクイエム】を詠唱・発動。
 焔を範囲に収めた上で他の敵も~と考えたが側近達と、焔とでは距離が離れている。巻き込めたのは火蜥蜴のみ。
 ……だがしかし、怒りのオーラによりステータスが恒常しているのか、焔には効果は見られない(火蜥蜴には効果有り)。
 諦めず、ロニは再度【レクイエム】を詠唱する。

 前衛を張るリューは星神器『エクスカリバー』を握り締め、近接し挨拶代わりに斬撃を放ち、初の対面となる焔がどれほどの腕かを図る。
「貴様も邪魔をするか! 【火龍爆炎剣】!!」
 焔は腰の二刀を抜き、その二刀へ龍の形をした炎を纏わせ、その斬撃を受け止める。
 だがしかし、リューが持つのは大精霊の力をインストールした星神器と呼ばれる武具であり、絶大な威力を誇る。
 これには怒り状態の焔とて無傷では済まず、多少以上のダメージを受けた。本人は意にも解さなかったが……。

 リューは【守りの構え】を取りつつ、それを最大限生かせるように【ケイオスチューン】を発動。
 体内で極限まで高めたマテリアルを解放しその身にオーラとして纏う。その状態で焔と何度も切り結ぶ。
(行きたい所へいかせない、したいことをさせない、それだけでもバランスは崩せるものだからな。何より他の連中との連携はさせないぜ)
「他が決着するまで俺達と遊んでてもらうぜ? もっとも、油断してるならそのまま倒しちまうけどな!」
「ほう、言うではないか。星神器……また厄介な物を持っているようだが、その減らず口、舌の根ごと燃やし尽くしてくれる」
「――っ!」
 絶大な威力を誇るのは星神器『エクスカリバー』だけではない、【火龍爆炎剣】を付加した焔の二刀も負けてはいなかった。
 リューと焔、二人が切り結び、鍔迫り合いを行うと、双方にダメージが入る。

 そしてその激しい近接格闘戦にアルトも加わる。
「二刀爆炎、強いらしいな、楽しみだ。たまには、守護者でも、傭兵でも、騎士でもなく、ただの戦士として強敵と戦い時があってな」
 アルトは試作法術刀『華焔』を抜き放ち、焔へと斬り掛かる。
「全力で付き合ってもらうぞ?」
 SA【飛花・焔】、炎の様なオーラを纏い、同時に体内のマテリアルも制御。自身の残像すらも吹き飛ばすかの勢いで、内外から強引に全身を超加速。
 その様は、紅き花弁が舞い散るかの如く――。
 かなりの高練度を誇るハンターのアルト、彼女の斬撃は威力だけならば星神器すら上回る。
 SA【踏鳴】により一気に間合いを詰め、【連華】を用いて斬り掛かる。
 剣閃【連華】――それはアルトが得意とする疾さの剣。 精度と威力は下がるが、補って余りある速さの高速連撃。
 その剣の閃きが戦場に一瞬の華を織り成すさまと、通り過ぎた戦場に血の華が咲き狂うことから同業者が名付けたらしい。

 斬撃を【火龍爆炎剣】で受け止める焔。それに対しアルトはSA【エンタングル】を発動。
 回避させ難くするが、焔はリューやアルトの力量を見極め、ハナから回避では無く受け止めるつもりらしい。
 攻撃後距離を取ろうとするアルトであったが、焔の二刀は【火龍爆炎剣】により、リーチ(射程)が伸びているため、まともに喰らってしまう。
「ぐうっ!?」
 なお、アルトの攻撃は初撃にて自身の間合いを見せることで戦闘が乱戦になった後もその距離だと後ろからでも斬りに行けるぞ?
 と、焔へ常に自分への警戒を少しでもさせることで他の仲間が戦い易くするという狙いがあった。

 再度リュー。アルトと共に近接格闘戦を行っている最中に【紋章剣】を発動。
 武器に覚悟を込めたマテリアルを宿す事で己の魂に同化させ、宿ったマテリアルが刀身に篝火を模した紋章を描き、陽炎の如く立ち昇る――。
 更に【散華】も発動。星神器『エクスカリバー』と超々重鞘『リミット・オーバー』にて同時に斬撃を放つ。
 超威力の斬撃を焔は炎の壁を何重にも発生させる【紅蓮防壁】により受け止め、威力を軽減。
 リューの攻撃はまだ続き、【星竜】を発動。二刀での連続攻撃の後、追撃を見舞った。

「…………。ふふ、やるではないか、ハンター共……ならば、我もここで全てを出し尽くそう」
 焔は二刀の鞘の下に装備した【灼導】兵器『跳躍装置』を展開、ノズルを出現させ、爆炎により上昇。
「灰燼と化せ! 奥義! 【火龍灼溶爆炎陣】!!」
 燃え上がる焔の身体から無数の、龍の形をした炎が出現し、それが焔の身体に巻き付いたかと思うと――、一気に凝縮し、大爆発。
 焔を中心として超高熱量の業火が巻き起こり、それはロニ、リュー、アルトを飲み込んだ。
 例え火属性の防護があってもそれごと燃やし尽くさんばかりの爆炎がしばし辺りを焼く……。


 焔が放った【火龍灼溶爆炎陣】により、焼け野原と化した元・草原の地に伏すロニ、リュー、アルトの三名。
「ほう……我が奥義を受けてもなお生きているとは……厄介を通り越して、もはや賞賛に値するな」
『跳躍装置』にて空中に浮遊していた焔は、飛行用の爆炎が切れたのか、地上に降り立つ。
 どうやら【火龍灼溶爆炎陣】は絶大な爆発力を生み出す代わりに無尽蔵とも思えた焔が生み出す爆炎の大半を消費してしまうらしい。

「ぐ、なんという熱量だ……」
 ロニは焔が『跳躍装置』で宙へ浮かび上がった瞬間、【ホーリーヴェール】を発動したのだが、軽減しても生命力の大半を失った。
 彼はすぐさま聖杖『クーラ』に持ち替え、【ファーストエイド】からの【フルリカバリー】を詠唱・発動し回復。

「かはっ……アレは灼導兵器じゃないのか? なんつー威力の炎だ……」
 リューも甚大なダメージを受けている。リューの疑問にはロニが「奴が飛行に使用したのは灼導兵器の一種だが攻撃用では無い」と答える。
「レイアから聞いた灼導兵器とかいう銃撃には注意してたんだが……」
 リューは、
(せっかく引き離した側近達への援護にアレをぶっ放されちゃ堪んねえ)
(構えようものなら腕を狙って的を絞らせねえ、聞いたところ凄え砲撃だっていうからな、正確に狙わないと味方も巻き込むだろう)
 などと思い、警戒はしていたものの、焔本人の奥義にてここまでのダメージを受けるとは予想していなかったらしい。
 彼は星神器『エクスカリバー』の権能を解放、【ナイツ・オブ・ラウンド】を発動し、回復を行う。

「くぅ……少し敵を侮っていたようだな……」
 アルトも【ハイ・マテリアルヒーリング】を発動し、生命力を回復させる――

 しかし。

 みすみすと態勢の立て直しを許す【二刀爆炎】の牙城・焔ではなかった。
「ふ、この奥義使用後は爆炎の再チャージが必要でな……しばらく爆炎技が使えん」
 焔は背負っていた武装コンテナを降ろす。
「打ち合ってみて理解した。貴様らは強い、認めよう」
 焔は武装コンテナから手榴弾と無反動砲を取り出す。
「ゆえに、ありったけの【灼導】兵器を使わせてもらおう」
 そして――まだ態勢の立て直しが出来ていないロニ、リュー、アルトへ向けて多数の手榴弾が降り注ぎ、焔が両手に持った無反動砲があるだけ放たれた。
 再び轟音と共に爆炎が巻き起こる。…………満足に回避行動が取れなかったロニ、リュー、アルトは戦闘不能。

 ***

 時は巻き戻り、牙城・焔対応班が奮戦中、側近対応班は――

「少しでも私が皆のために出来ることを……!」
 エメラルドは【スティグマータ】を使用しつつ【フルリカバリー】を詠唱・発動して回復支援。

「側近から倒していきますかね」
【智の聖域】のバッドステータスからようやく回復した菊池だったが奏音が発動した【ワイルドカード】【黒曜封印符】により再度封印。
「敵のスキルは封印しましたので攻撃お願いします」
 奏音は封印の意地に専念。攻撃は仲間が頼りだ。しかしながら菊池の周囲を浮遊する防御結晶は出現させられてしまった。

「以前の私であればボルディア様のフォローすら出来なかったでしょう……ですが、これが今の私の剣です。その目にとくと刻み付けなさい!」
 多由羅は距離を取ろうとする菊池を、ボルディアと共に挟撃。まずは周囲に漂う防御結晶を破壊する。
「距離は取らせません。ここで仕留めます!」
 その後に【紅蓮斬】を発動。腰を捻った低い姿勢から防御を捨て地面を擦り上げるように、結晶を失った菊池本体へ鋭い斬撃を見舞う。
 地面を刀が擦れた瞬間に摩擦熱で発火し、剣筋に赤い軌道が残った。

 ボルディアは【智の聖域】を使い切ったので星神器『ペルナクス』による【トールハンマー】を発動。
 再度菊池へ行動阻害のバッドステータスを付与。
 そして【烽火連天】を発動し、自身の炎のマテリアルを刹那――爆発させるようにして引き出し限界を超えた動きにて菊池を薙ぎ払う。
 その天をつんざくような気炎はあたかも敵を喰らい尽くさんとする獣にも見えた――。
「焔……さま……」
 ハンターの集中攻撃を受け、ダメージがかなり蓄積していた菊池はこれが致命打となり……蚊の鳴くような声で主の名を呼びながら黒い霧となって消滅した。
「雑魚に用はねぇ……俺が興味あンのは焔だけだ。テメェ等はお呼びじゃねえんだよ!」

 ***

 球磨・遥対応――。

 ゾファルは仲間と連携。レイアと歩調を合わせて波状攻撃を球磨へ見舞う。
 爆炎使いである焔の側近ということで耐熱マント『ブレイブ』を装備してきたゾファルだったが、対球磨戦での出番は無さそう?
【ソウルエッジ】を発動し、自身の拳武器を強化。物理攻撃が通り難い球磨へ威力を発揮する出来るように。
 ようやく【智の聖域】のバッドステータスから解放された球磨が距離を取れば、拳を振り抜き、【衝撃波】を発動し、攻撃を行いつつ距離を詰める。
 距離が縮まれば【天魔覆滅「如来掌」】を発動し、球磨の堅牢な防御の上からわざと拳を打ち込む。
「盾と矛どっちが勝るのか興味津々なんじゃーん」
(殴り勝てばさらに追撃でどかどか殴りつけるまでじゃーん)
「泣いて謝っても殴るのをやめないじゃーん」と、ゾファルはひたすらに相手の盾の上から殴り続ける。
 延々と拳を繰り出しつつ、【バトルジャンキーの眼光】を発動し、ゾファル特有の戦闘行為に飢えたバーサーカーの如き目力(めぢから)によって球磨に威圧を与える。

 レイアの斬撃と共にゾファルが【紅蓮魔障壁】のノックバックを気にせず喰らい付きながら盾を殴り続けていると――
 耐久力が限界に達したのか、二つの盾にピシリとヒビが入り、一部が欠け、破損。
 それを好機と見たレイアは星神器『天羽羽斬』による【オロチアラマサ】を発動。
「ここがお前の墓場だ、球磨・遥!!」
 叫びながら連続の斬撃を放つ。球磨は【紅蓮魔障壁】を展開しようとするも、最初の斬撃で二枚の盾が砕け散り、二撃目からは確実に球磨本体に斬撃が入った。
「これで終わりじゃーん!」
 レイアの斬撃に合わせたゾファルの拳も球磨の腹部に入り、連続攻撃をまともに受けた球磨は弾き飛ばされ、地に伏した。
「……盾を失えば……この様か……焔様、申し訳ありません……」
 球磨・遥は倒れたままぽつりと呟き、その身体はほどなく霧散した。

 ***

 白川・桜対応――。

 ネフィは仲間と共に白川を挟み込むように位置取りをし、距離を離さず近接格闘戦を挑む。
【闘心昂揚】や【倫理爆裂拳】を発動し、確実に白川へダメージを蓄積させる。
「頭のいい人ほど痛い技を食らうのだー! 倫理を破壊する拳、倫理爆砕拳……えいやー!!」
 側近の中でも筆頭であり、知性に優れた白川には有効な攻撃である。
 そこで白川も【智の聖域】のバッドステータスが解除。スキルによる反撃を行ってくる。
 ネフィは攻撃を受けつつも距離は話さず詰めたまま、回避を考え左右にステップを踏みつつ動きながら斧槍による一撃を加えていく。
 斧槍を突き入れたり横薙ぎに振る場合、相手が後ずさった場合には仲間の攻撃範囲内に入るよう、意識して攻撃。
 使うのが苦手な頭脳ををフルに使い、戦闘を行う。

「たとえ誰が新たな怠惰王になろうと同じだ。貴様らもあの熊の後を追わせてやる……!」
 コーネリアは対・菊池戦と同じく【フローズンパニッシャー】【キラースティンガー】によって攻撃。
「菊池と球磨は倒れましたか……ですが私を同じと思わないことです」
 白川・桜は曲がりなりにも攻撃担当。紅蓮魔矢による激しい反撃がハンター達を襲う。

 ユウはネフィと連携し、SA【立体攻撃】+魔剣『バルムンク』の連撃を白川に叩き込み、他の仲間を狙わせないよう妨害。
 距離を取るために残存の火蜥蜴を集結させ、壁とする白川。その後に紅蓮魔矢が飛ぶ。
「そんなに蜥蜴を密集させて大丈夫ですか?」
【アクセルオーバー】の効果中であったため、ユウは火蜥蜴対応班に自分ごと火蜥蜴を範囲攻撃で薙ぎ払ってもらう。

 しばしユウとネフィが近接格闘戦を仕掛け、コーネリアは撃ち合いを仕掛け、双方ともダメージを受け……ていると白川は膝を突き、肩で息をする。
「くっ、私もここまでですか……。しかし、犬死はしません。焔様、後は頼みます。お役に立てず申し訳ありません、お先に逝っております」
 そして白川は隠し持っていた側近でも使用可能ないように改良された【灼導】兵器の手榴弾を起爆し、自決したのだった……。
 近接していたネフィ、ユウは大ダメージ。少し離れていたコーネリアも無視出来ないダメージを被った。

 ***

 火蜥蜴対応――二人の範囲、及び複数体攻撃により火蜥蜴の数は大分減じている。

 まよいはSA【マジックアロー】を詠唱・発動、複数の火蜥蜴を同時に射抜く。
 自分の包囲を包囲された際には【我が正義の侭に<サンデルム・シュトラール>】を発動。
「この世界が好きっていう気持ちこそ私の正義だよ!」
 大精霊が司る『正義』のマテリアルを光に変え周囲に解き放ち、敵だけを焼き払う。敵味方識別可能な自分中心の範囲攻撃により火蜥蜴群を一掃。

 火蜥蜴の残数が残りわずかとなったころ、エルバッハは【集中】からの【アブソリュートゼロ】を詠唱・発動。牙城・焔へ不意打ちを喰らわせる。
 その後は、焔の注意をこちらに引き付けるため、「油断大敵ですね」と挑発。
 反撃の【紅蓮火球・連打】が飛ぶ。回避が難しいため、エルバッハはシールド『リパルション』を構えてなんとか受け止めるも大ダメージを受けた。

 その後二人は再び火蜥蜴対応に専念し、しばらくして火蜥蜴の殲滅を完了。


 先に菊池・緑や球磨・遥を撃破したハンター達と交戦中であった牙城・焔。
 彼女はふと、攻撃の手を止める(その間もハンターの攻撃は受け続ける)。
「緑…………遥…………そして桜も逝ったか…………」
 しばし動きを止める焔。全身の力が抜けたようになる。
 ハンター達は奥の手でもあるのか? と、最大の警戒。
「…………ふっ、もはやこのような玩具も要らぬか。しかし、手向けにはなるだろう」
 焔は後ろ腰から熱線砲を取り出し、その砲口をハンター達へ向ける。そして焔の身体は再び爆炎に包まれた。
「3・2・1……いくぞ」
 超高熱量の熱線が戦場を横断。ハンター達は回避行動を取るも少なからずダメージを受ける。
「……3、2、1、もう一つ」
 再び凄まじい熱線が飛ぶ。……しかし熱線砲の様子がおかしい。赤熱し、ところどころがひび割れている。
「最後だ、喰らえ」
 再度の熱線。それが放たれると同時に熱線砲は焔の手の中で自壊、粉々に砕け散った。
 三連続で放たれた熱線により、ハンター達は大ダメージを受け、膝を突いている者も居る。
「この兵器は本来ならば一発ごとに冷却が必要だったのだ。だが、それもうよい。やはり我にはこれだな」
 焔は腰から二刀を抜く。そして【火龍爆炎剣】を発動。
「往くぞ! ハンター共! 最後の“祭り”だ!!」

 ネフィは【現界せしもの】を発動して対抗。
「気合い入れて行くのだ! 今回で今までの分、しっかりお返ししないとなのだ!」

 焔はネフィの攻撃を受けつつも気にせず弾き飛ばす。

 ボルディアも星神器『ペルナクス』を力一杯握り締め、突撃。因縁の二人が激突する――!
「俺が今まで得た力、全部ここで使い切ってやる。テメェに俺の本気が受け止められんのかぁ!?」
「我も残りの力を全て使い切る。ボルディア、貴様の本気とやらを我の肉体が持つ限り受け止めて見せようぞ!」
 凄まじい剣戟の応酬。激しく火花が散る。

 ユウ、多由羅、レイア、ゾファルはボルディアの合間に焔へ近接攻撃を仕掛ける。ネフィも攻撃に復帰。

 エメラルドと奏音は支援。

 コーネリア、まよい、エルバッハは遠距離攻撃にて前衛を援護。

 全ての攻撃が焔へ命中するが、焔は、
「【紅蓮魔障壁】!!」
 それを展開し、受け止めた。
「【紅蓮魔球・放射】!!」
 続けて焔は刀の切っ先より魔球を飛ばし、閃光を発生させる。その隙に焔は、
「【紅蓮魔矢・剛力】!」
 刀の切っ先から大量の炎の矢を生み出し、後衛に向けて撃ち放つ。そして再び突撃して来たボルディアと二刀で打ち合う。
「側近の技の使えたのか焔ァ!」
「無論だとも。元々これら技は我が側近達へ与えた物だからな!」

 戦闘不能となった三名を除いた、ボルディアを初めとするハンターを一度に相手取り、生命力のほとんどを吹き飛ばして見せる焔。
 だが、ボルディアの一撃が焔を捉えた時――
 焔の肉体が……、はらはらと灰に変わり始める……。
「……どうやら、ここまでのようだな」
「まだだ! まだ闘い足りねぇぞ! 焔ァ!!!!」
「…………ふっ、こちらも限界のようだ」
 ボルディアの攻撃を受け止めた二刀、焔の代名詞であるそれが、二本とも刀身が粉々に砕け散る。
 衝撃を吸収し切れず、焔は弾き飛ばされ、地面に転がった。……焔は起き上がり、片膝を突く。
「我とてまだまだ闘い足りぬが、もはやこれまで、だな。しかし、最後の悪あがきをしてみせよう。……ハンター共はすぐにこの場を離れたほうが良いと言っておく」
 焔は灰となりサラサラと崩れていく肉体から最後の爆炎を生み出す。
「さらばだ、ハンター共。まあ、それなりに、恵まれた【人生】だったかもしれぬな……【火龍灼溶爆炎陣】」
 轟音と共に大爆発が巻き起こった。その閃光の中心にて、焔の肉体はついに消滅の時を迎える――。
(兄さま、焔はようやくあなたの元へ逝きます……)

 ***

 牙城・焔の軍勢と激戦を繰り広げた元・草原の焼け野原にて……。
 一応戦闘に参加したハンター達は、負傷者は出て、皆が重体一歩手前な状況だったが全員生還した。
 軍勢は首領の焔を初めとした全てが完全消滅。一片たりとも残っていない。【灼導】兵器も木端微塵で欠片すら無し。

「色々と考えすぎて頭から湯気が出そうなのだ。うー、依頼終わったら知恵熱で倒れちゃうかもっ」
 ネレイド族の戦闘部隊が急いで設営した救護テント内のベッドに寝そべっているネフィ。

「テメェは歪虚だったが、テメェとの戦いは俺をこれ以上ねぇくらい熱くさせてくれた。そこだけは認めてやる」
 全身包帯だらけのボルディアは……焔が最期に発動した【火龍灼溶爆炎陣】の爆心地に立ち、ぽつりと呟く。
「次があったら、今度は歪虚じゃなく、人間として生まれて来い。そしたらまた手合わせくれぇしてやるよ」
 そう言い残してその場を立ち去るボルディアであった……。

 こうして辺境地域を危機に晒した牙城・焔の軍勢による進攻はハンターによって防がれた。
 しかし、辺境での戦いは未だ絶えない……。

依頼結果

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MVP一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよいka1328
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音ka5754

重体一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよいka1328
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェストka2419
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニka3109

参加者一覧

  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • 秘剣──瞬──
    多由羅(ka6167
    鬼|21才|女性|舞刀士
  • 無垢なる守護者
    ユウ(ka6891
    ドラグーン|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/02/21 05:46:12
アイコン 質問卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/02/17 09:23:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/21 05:29:51