ゲスト
(ka0000)
【陶曲】魔導トラック野郎だぜ!
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2019/02/25 07:30
- 完成日
- 2019/03/05 01:41
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
♪
木々の緑の輝く影で 謎の笑いがこだまする
里から里に泣く人の 涙背負って歪虚の始末
兵飛神速マッハ・リー お呼びとあらば即・参上!
♪
「……いや。即・参上はいいんだがねぇ、マッハの旦那」
「どうしたというんだ、戦場詩人」
赤いバイクに乗って大声で歌っていた自称「兵飛神速」マッハ・リーが、同じくバイクに乗って併走しつつ口を挟んできた自称「戦場詩人」ダイン・グラマンに問い返した。
ききっ、とダインがバイクを止めた。やや行き過ぎてマッハも止まる。
「敵さんとの予想遭遇地点はとうに過ぎたように思うんだがねぇ」
「わざわざ歌までうたって隙を見せたんだがな。敵は我々の力量を正確に判断したということだろう」
ま・それも仕方ないことだが、と悦に入るマッハ。
「馬車やトラックみたいな荷駄の有無で襲うかどうか判断している、ということだろうねぇ」
「仕方ない、狩られる側から狩る側に作戦を変更する。先日荷駄隊を襲ったのはトルネード・イーグルだ。上空で発見したときにはもう遅いぞ。ウイリーやアクセルターンで突撃をかわしてその隙を撃て」
という訳で先日、魔術師協会などが作戦を展開する「大地の裂け目」への補給部隊を襲った鳥形歪虚を討伐すべく、マッハ・リーとダイン・グラマンは索敵を続けた。
が、敵は現れず。
「こりゃ次の輸送隊はいつ襲われるか分からない状況での強硬突破になりそうだねぇ」
「そのためのハンタードライバー輸送隊だろう?」
やれやれ、なダインに鼻息の荒いマッハ。
なお、正確には「次の物資輸送は一般人の荷馬車ではなくハンターの運転する魔導トラックにより歪虚の出没する地点の強行突破を目指しつつ、討伐を狙ってもらう」という作戦が立てられていた。これに街角屋台「Pクレープ」の南那初華(kz0135)が魔導トラック運転歴を買われて参加することになっていた。これに、いつもPクレープのとなりで自転車修理屋台をやってそれとなく初華を保護していたダインがマッハとともに先行偵察とあわよくば討伐を申し出て今に至っていたりする。
「……あの娘、こういうことにはことごとく巻き込まれるからねぇ」
「えらく気にするじゃないか、戦場詩人。まさか惚れたのか? 親と娘の歳の差ではないか」
呟くダインにからかうマッハ。
「こだわりはなんだ?」
「好きだった作家の、最後に読んだ新作シリーズの主人公とまったく同じ名前なんでね」
マッハ、にやり。
「……脇役人生の男には、うってつけの居場所かもねぇ」
「この、ロマンチストめ」
わははとまんざらでもなく笑うマッハである。
♪
木々の緑の輝く影で 謎の笑いがこだまする
里から里に泣く人の 涙背負って歪虚の始末
兵飛神速マッハ・リー お呼びとあらば即・参上!
♪
「……いや。即・参上はいいんだがねぇ、マッハの旦那」
「どうしたというんだ、戦場詩人」
赤いバイクに乗って大声で歌っていた自称「兵飛神速」マッハ・リーが、同じくバイクに乗って併走しつつ口を挟んできた自称「戦場詩人」ダイン・グラマンに問い返した。
ききっ、とダインがバイクを止めた。やや行き過ぎてマッハも止まる。
「敵さんとの予想遭遇地点はとうに過ぎたように思うんだがねぇ」
「わざわざ歌までうたって隙を見せたんだがな。敵は我々の力量を正確に判断したということだろう」
ま・それも仕方ないことだが、と悦に入るマッハ。
「馬車やトラックみたいな荷駄の有無で襲うかどうか判断している、ということだろうねぇ」
「仕方ない、狩られる側から狩る側に作戦を変更する。先日荷駄隊を襲ったのはトルネード・イーグルだ。上空で発見したときにはもう遅いぞ。ウイリーやアクセルターンで突撃をかわしてその隙を撃て」
という訳で先日、魔術師協会などが作戦を展開する「大地の裂け目」への補給部隊を襲った鳥形歪虚を討伐すべく、マッハ・リーとダイン・グラマンは索敵を続けた。
が、敵は現れず。
「こりゃ次の輸送隊はいつ襲われるか分からない状況での強硬突破になりそうだねぇ」
「そのためのハンタードライバー輸送隊だろう?」
やれやれ、なダインに鼻息の荒いマッハ。
なお、正確には「次の物資輸送は一般人の荷馬車ではなくハンターの運転する魔導トラックにより歪虚の出没する地点の強行突破を目指しつつ、討伐を狙ってもらう」という作戦が立てられていた。これに街角屋台「Pクレープ」の南那初華(kz0135)が魔導トラック運転歴を買われて参加することになっていた。これに、いつもPクレープのとなりで自転車修理屋台をやってそれとなく初華を保護していたダインがマッハとともに先行偵察とあわよくば討伐を申し出て今に至っていたりする。
「……あの娘、こういうことにはことごとく巻き込まれるからねぇ」
「えらく気にするじゃないか、戦場詩人。まさか惚れたのか? 親と娘の歳の差ではないか」
呟くダインにからかうマッハ。
「こだわりはなんだ?」
「好きだった作家の、最後に読んだ新作シリーズの主人公とまったく同じ名前なんでね」
マッハ、にやり。
「……脇役人生の男には、うってつけの居場所かもねぇ」
「この、ロマンチストめ」
わははとまんざらでもなく笑うマッハである。
リプレイ本文
●
「積み荷、急げ!」
「車両四台の少数編成だ。後の便でいいものは載せるなよ」
出発を前にトラックターミナルは積載貨物の移動などで騒がしい。
そんな喧噪を背に、南那初華(kz0135)が地図を広げていた。
「今回のルートはこれ。最短距離を突っ切るから途中は道なき道を行くみたいだけど、トルネード・イーグルに襲われる前も使ってたから轍が残ってるらしいよ……って、ほへ? どしたの、小鳥さん?」
「ええと、初華さんがクレープ以外でトラック走らせるのって珍しい感じがっ」
初華に顔を覗かれた狐中・小鳥(ka5484)、慌てていつもの笑顔になる。真顔で心配していたようで。
「最初のころは戦闘とクレープ販売のお仕事だったもんねぇ」
懐かしむ初華。もともと赤字覚悟のクレープ販売と抱き合わせでいろんな仕事を取っていたのだったり。
「ともあれ、私も輸送し隊の隊長としては、今回の依頼はきっちり成功させないとだね♪」
「……初華さん、ルートの特徴や敵の出やすい地帯はどうでしょう?」
ぐ、と拳を固める小鳥の横で、レオナ(ka6158)が思案していた顔を上げた。その横からトリプルJ(ka6653)がレオナの手元を覗き込んでいる。
「ほー、マッピングセットか」
感心するJ。どうやらレオナ、初華の広げたマップを簡単に写し取っていたようだ。
「うん。前はこの広いところで襲われて、さらにこの森の中の直線でも攻撃を受けたんだって」
「荒野は視界が広いですから警戒はしやすいですが、森の中は難しいですね」
「おっきな車載砲つけてるから直線なら任せてなんだよ♪」
地図を指差し説明する初華。レオナは色を変えて危険個所などをマップに落とし込んでいる。その横で小鳥が薄い胸を張って自信たっぷりに。
「一列縦隊時の順番はどうしましょう? 私のヴィリーはオフロードに特化していますが」
顔を上げて確認するレオナ。
「私のはフルアーマーカスタムだけどスピードも出るよ!」
小鳥、はいはいと挙手して盛り上がる。
「あー、言いにくいんだが……」
ここでJが改まって口を挟む。
「俺のは運搬能力は高めてるがそれ以外は……まあ、俺は正直数合わせだからなあ。いざとなったら置いて走ってってくれや」
悪ぃなあ、とJ。
場は一瞬静かになるが……。
「大丈夫だよ。私のもPクレープ以外はいじってないから、今回使うのはほとんどノーマルだし!」
「初華さん、あまり威張るところじゃないような気がするんだよ……」
「離れるよりはある程度はまとまって移動が良いかと思っています。移動力低めのトリプルJさんを先頭に、2番目に初華さん、最後に小鳥さんと私とで交替で前後しながら進めたらどうかと思うのですが如何でしょうか?」
一瞬でわいわいと活気が戻る。
「いや、気にせず走ってくれ。本当にただの数合わせだからよ」
「んもー、一匹オオカミ気取っても駄目だからねっ。一緒に行くのっ!」
「初華さんのいう通りで、輸送隊はみんなそろって目的地に着いて任務完了なんだよ」
「時間を気にするのでありましたら、昼食は移動しながら取ることにしましょう」
「オイ……なんだよ、えらく人情深いな……おっと、サンドイッチなら俺も持ってくぜ!」
「ほへ? あ、私も用意する~」
「わわ。レオナさん、ハチミツとツナを持参してるんだよ……」
あ。
食べ物の話になったらなんだか議論そっちのけになったようで。
とにかく出発である。
●
というわけで、荒野。
Jが自らの魔導トラック(ka6653unit007)を駆り、隊列の戦闘を走っている。
「いやっ、ほぅ!」
地面の起伏を利用して、ジャンプ。
無事に着地したところに、横から初華の魔導トラックがぴたり。
「ジャンプする必要ないんじゃない?」
「ロマンだ、ロマン。そういう初華だってインカムから連絡できるのにわざわざ横に付いて顔色うかがってんじゃねぇか」
そんなやり取りをする間に、今度は反対側から小鳥の魔導トラック(ka5484unit001)が上がって来て、やはり横にぴたり。
「通信の声が少しおかしいと思ったら、煙草吸ってたんだよ……」
小鳥、運転席のJの姿を確認して汗たら~。
「ロマンだよ、ロマン。ガンガン吸うぜ」
なおJ、元ヘビースモーカーだったり。もちろん眠気覚ましになったりと実益もある。
そんなJの前に、ブロン、と一台の魔導トラックが横から入って来る。
「……広いと前に出やすくていいですね」
レオナの魔導トラック「ヴィリー」(ka6158unit001)だ。
彼女としてはからかったわけでも楽しんだわけでもなく、いざという時に前に出る練習をしたのだが……。
「おっ、と。こっちもまだまだスピードは出せんだぜ?」
アクセルべた踏みするJ。一気に先頭に出る。
「煙草だけじゃなく競争心にも火が付いたみたいなんだよ……」
「ちょっとJさん、次は岩場を避けるカープがあるのにっ!」
小鳥と初華も加速して追う!
「大丈夫でしょうか? 速度を出しすぎのような気もします」
とかなんとか心配しつつも自分もその速度でぴたりと追うレオナ。
「心配いらねえって。見てろ」
――ガリガリガリ……。
J、カーブに入りテールを流した。荒野の小砂利がタイヤに削られ派手に散る。グリップを失った車体が横に流れる。
「いやっほー、なんだよ」
「きゃーっ、小鳥さん近い近いっ!」
「……その隙間、私も同じにした方が綺麗ですよね」
あー。
結局四台連なってドリフトで急カーブをクリア。並びや距離感、車体を斜めにして踏ん張りつつ流れる様子が無駄に美しい。というか、制御しにくい状態で流れているので至近並びのドリフトで初華がビビるのは無理もないことだったりもする。
「って、ちょっと! ギリギリじゃない?」
「確かに制御不能手前だったんだよ」
「あんだけ尻振っておいてコケなかったら大したもんじゃねーか?」
「何気に問題発言だと思いますよ……」
んもうとぷんすかする初華にうーんと控えめに同意する小鳥。Jの言い分は車のテールの事を差す表現ではあるのだが、運悪く女性ばかりなのでレオナの呟きは妥当だったり。初華あたりは、別にお尻振ってたわけじゃないよう、とか勘違いして運転席でお尻をもじもじさせて言い返している。
とにかくテールランプを揺らしながら体勢を落ち着けてカーブから立ち上がり直線加速。エンジンの回転数を落としてない分、タイヤのグリップが戻れば段違いに伸びる。
再びJ、初華、小鳥、レオナの順でかっ飛ばす。
並びは結構バラバラだったりするが、やがて初華が、小鳥が、そしてレオナが大きく動いて中央に絞り軸を一直線にした。
間髪入れず、周りの景色が緑の木々に。
左右の視界からばっさぱっさとものすごいスピードで枝が迫って来る迫力。
森の中の道に入ったのだ。
ここでは先のように左右に広がって走ることはできない。少し軸を外すと一気にコースアウトしてクラッシュもある。
――ぶおん、ぶおん……ぶおん!
右に左に曲がる道をクリアする四台。
「ちっ……後ろ、離れねぇな」
「結構いっぱいいっぱいよぅ!」
「引き離すつもりで走らなくても、なんだよ……」
「ですが、これなら時間的な余裕はできそうです」
なんだかんだで楽しそうな序盤である。
●
で、再び四連ドリフトしながら森を出た。
「ま、こんなもんだろ」
「ふぅ……やれやれねー」
運転しながら煙草の灰を灰皿に落とすJに、肩の力を抜く初華。
再び荒野に出たのでかなり視界が広がり高速運転も楽になる。
「ですが、敵の遭遇地点ですので気を付けましょう」
「……早速きたのかな、かな?」
マップに目を落としたレオナ。その隙に小鳥が左手前方遠くに鳥の飛ぶ影を発見。
「様子見だな。とにかく走るぜ」
「あー……なんだか前に回り込むような動きしてない? あの鳥たち」
知らんふりするJだが、初華の言う通り明らかに鳥たちの動きが変わった。
「敵は三匹みたいですね。目立つ動きで隠れようともしていませんが」
「正々堂々、正面攻撃なのかな?」
不審に思うレオナ。小鳥はむしろ好都合といった感じだ。
やがて、肉眼でも鳥が歪虚であり不気味な姿をしていることを確認。嘴も爪も鋭そうだ。
「……俺に考えがある。突っ込むから後頼むぜ」
「えーっ! 私、どうすればいい?」
「一列で走って、敵が来たら横にずれて二番目からの鳥を誘導してほしいんだよ」
「それでは私が撃ち漏らしを仕留めます」
囮にJが突っ込み、初華は追走。小鳥が前方攻撃し、レオナが敵の動きの変化に合わせる作戦を打ち合わせた。
とりあえず最初のフォーメーションは一列縦隊。
果たして敵、来るッ!
敵三体は一匹を先頭に三角編隊。横からの攻撃をせずに縦からの連撃を狙っている可能性が高い。
「いっくぜぇぇ!」
ぐしゃっ、と吸ってたまだ長い煙草を灰皿に擦りつけて消し、Jが加速した。
先手は、J。
運転席から腕を出しオートマチック拳銃「チェイサー」を適当に乱射。威嚇射撃する。
敵の先頭はさらに加速しJを狙い突っ込むがこの時、二列目の初華が軸を外して左に車体を出した!
「こ、これでいい? 小鳥さん」
連絡する初華。目の前では敵右翼がJのトラックへの攻撃軸を外して初華にロックオンしていた。
「ばっちりだよ、初華さん」
小鳥、三列目から左に出す。
「私の役目は二匹ですね」
最後方のレオナ、敵の先頭と敵左翼の動きに集中する。
そして考える。
(敵の攻撃は体当たりと聞きます……)
観察すると確かにくちばしが鋭い。
しかし、いくら鋭く速度を上げて全体の威力を高めても、自らが当たり負けすることはあるだろう。
(そうならないのであるなら、スキルを使っているはずです)
その点はこちらも同じです、と冷静に。
次の瞬間、その思案めいた表情がすっと和らいだ。
答えは、出たのだ。
その時、敵先頭は旋回飛行してJのトラックに体当たりをしていた。
――がきっ、がりがりがりっ!
「おら、網にかかりやがれ!」
Jは当たり負けしないよう、必死にハンドルを固定する。
なお、Jのトラックには幌と投網が被されていた。
軍用トラックのように枝や葉を絡めて迷彩にする用途ではなく、体当たりする敵をこれで絡めようとしたのだが……。
「この手ごたえ、引っかかったけど突破しやがったな」
とはいえ、ユニット本体は攻撃には耐え抜いた。敵二列目の運転席攻撃も何とかキャノピーを割られずに済んだ。
この時、敵右翼。
「あ、狙われてる!」
「大丈夫、前を取られたって対応出来るんだよ♪ フルパワーで突撃、フェニックスチャージだよー!」
体当たりの軸線に乗った敵に対し身の危険を感じる初華。
その後ろからマテリアルの炎を纏った小鳥のトラックが急加速で初華のトラックを抜き去った!
そのまま突撃を――というか、正面での鉾盾対決……ではなく、鉾鉾対決を試みるッ!
「小鳥さん!」
「このトラックの防御を舐めないで欲しいんだよ!」
――ガキッ! ぶろん……。
「勝った!」
「まだまだなんだよ!」
敵も小鳥のトラックも吹っ飛んだだけではあるが、初華は勝利を確信して歓喜の声を上げていた。
なぜなら、双方飛び抜けたのではなく回転してブレイクしたから。
だから、仕事の残っている小鳥は忙しい。
「これで……墜ちるんだよ~っ」
機器を操作し車載砲「パンテレスD7」の照準をすぐに合わせ、どうんと一撃。巨砲の発射にサスが沈み込みその衝撃を和らげる。
どごん、ともろに受ける敵。
突撃の勢いはどこへやら、ふらふらと態勢を整えようとしていたところにモロに食らって吹っ飛んだ。
そして、Jを襲った二匹がヒットアンドアウェーで後方に飛び抜けようとしている。
そこに、ヴィリーに乗ったレオナ。
「Jさんのおかげで敵の纏った攻撃用のマイナスマテリアルは消えています」
最後尾で待っていたレオナ、停車してすべての準備を終えていた。
樹木の精霊への祈りを捧げた後の清々しさに包まれ、さらなるスキルで大地から美しい光が立ち上っている。
そして本命の符を指先で優雅に摘まみ、運転席から外へと放つ。
「なるべく多くを、符の範囲に入るように……」
複数の符が舞い、いま、結界となる。
刹那、目もくらむばかりの光。
五色光符陣だ。
「……追撃も、必要ねぇようだな」
ききっ、とターンしていたJが姿を消す敵を見て銃を収めていた。
●
「さっきのはちょうどいい休憩になったよね」
「まーな。それでもランチってわけにゃいかねぇが」
再び出発した車内で、初華とJがそんな会話をしながらサンドイッチもぐもぐ。
「止まって戦闘しなかった分、余裕ができましたから」
「止まって戦闘してたら、どうなってたのかな?」
レオナと小鳥も運転しながらサンドイッチもぐもぐ。
「横に動かれると照準の面で不利になりますから戦闘が長引いていた可能性があります」
「だから男は正々堂々、正面からなんだぜ? 初華」
「私、女だもん」
レオナの説明にそういうこった、とJ。話を振られた初華、何を勘違いしたから口をとがらせていたり。
「フレームを重装化改造にして防御を上げてるから手っ取り早く叩き合いができるんだよ」
「私はカバードコーティング「クレーディト」ですね。防御力向上は」
小鳥とレオナが魔導トラック改造談議に。
そうこうする間に、再び道は森の中に。
「そろそろ食事も煙草も控えめにお願いします」
レオナ、マップを確認。
「敵の出る地域かな?」
「そうだねっ。油断なく行こっ!」
小鳥の初華の会話を最後に、気軽な通信はなくなった。
隊列は狭い森の中を行く。
「あっ!」
「どうした、レオナ?」
最後方からのレオナの通信。気にする先頭のJ。
その時には全車両、衝撃を受けていた。
「今度は後ろから、か……」
「視界が限られてるから後ろに付かれると見えにくいんだよ」
会話を交わす初華の小鳥の目の前を、トルネード・イーグル三匹が攻撃して前に逃げて行く。さらに上空で横に逃げるのであっさり視界から消えた。
「後ろから来られるとやっかいだね」
「後ろに攻撃することもできると知らせましょう」
初華のぼやきに反応したレオナ、シグナルバレットをわざと後方に発射した。上空からでも斜め後方への射線は見えるだろう。念のために二発、三発と。
これが奏功し、今度は敵は前から来た。
「つっても、こりゃどうしようもねぇぜ!」
「まさか上に逃げるなんてだよ」
耐えるJに見上げる小鳥。
そう。
敵は先のシグナルバレットを見て、飛び抜け後の追撃を避けるべく先頭のJだけ狙ってすぐに上空に急上昇したのだ。
「卑怯だよね~」
「先頭が頓挫すれば後続も道連れですからね」
むー、と唇を尖らせる初華。レオナは敵の戦略に感心する。
「でも、手はあるんだよ。このまま行って大丈夫!」
「ま、言われずともそのつもりだがよ」
策ありの小鳥。Jは信頼しそのまま走る。
で、また敵三匹が三角編隊で真正面に周り森の中の直線の道――というか、天井だけ空いたパイプラインに入って来た。
「ま、俺を攻撃力の低いいいカモだと思っておきゃいい」
J、仲間のために我慢の走行。敵の攻撃三回を耐える。
その後、敵はやはり急上昇しての離脱を図ろうとしている。
「んあっ! 逃げるよ?!」
初華、前の小鳥の戦法ができずに悔しがっている。
が、その小鳥。
「空中戦だって出来るんだよ! この子をただのトラックだと思わないでよね♪」
叫ぶ小鳥。スイッチ・オン。
がこんとタイヤ部分を変形させ、魔導エンジンから供給されるマテリアルエネルギーをド派手に噴射!
「な、なになに?」
「さっきは火の鳥だったけど、今度はジェットなんだよっ!」
後方の気配にうろたえる初華の上を、小鳥の魔導トラックが跳躍一番、飛び立った!
さらにその後方。
「小鳥さんより高く飛ぶ必要がありますね……」
レオナもジェットドライブで跳躍。
ただし、二人の目的は違った。
「よし! 体当たりできたんだよ!」
先頭に降り立ち加速した小鳥は、体当たりよりもこの位置取りにこだわったようで。
「一匹落としました」
小鳥の後ろに着地したレオナは、跳躍中に車載のアサルトライフル「ヘルハウンドE84」で攻撃。無防備な敵一匹を墜としていた。
隊列は新たに、小鳥、レオナ、J、初華の順になる。
戦場は引き続き、森の中の狭い一本道。
横にずれることも逃げることもできない。
ゆえに敵は前から仕掛けるが……。
「それだけこっちの攻撃も当たりやすいってことなんだよ!」
小鳥、敵が再び前から攻撃してきたところ、大口径の砲弾を撃ち込んだ!
――がこっ……どぉぉん……。
「一撃必殺を逃れようとするので後は狙いやすいですね」
もう一匹が軸をずらしたところ、二番目のレオナがライフルで狙撃。
「おいおい、これじゃ最初からコレの方が良かったんじゃねぇか?」
「えーっ、Jさんが戦闘で囮になってたから敵は前から攻撃してきたんじゃないかな」
少し不貞腐れたJを初華が慰め。
実際、小鳥の大砲の威力や性能を見ていたら敵は後ろからの攻撃を続けていただろう。
これで敵は全滅した。
「さあ、後は急ぐんだよ……わわっ!」
戦闘の小鳥が改めて声をかけた時だった。
――ばうん……どすっ。
何と、レオナがまたもジェットドライブで大跳躍し前に出た。
「どうかしたの、レオナさん?」
「少し先頭を走りたくなって……いけませんか、初華さん?」
レオナ、少し楽しそうな口調である。
「ま、食らい付いてくから好きに走ってくれていいぜ」
「森から出たらまた競争なんだよ!」
やれやれ、なJにわくわくしてる小鳥。
「ありがとうございます」
レオナ、右に思い切ってハンドルを切ってテールを流しドリフト。
この動きに後続三台が美しく続いている。
「運転、楽しいですね」
そんなこんなで、無事に「大地の裂け目」の調査部隊駐屯地まで無事に物資を届けた。
初華たちの運んだ量は魔導トラックの台数の問題でやや少なめではあったが、歪虚を征伐し到着も早かったのでその後の運搬計画も予定より進行。
後方部隊の準備がかなりはかどる結果となった。
「積み荷、急げ!」
「車両四台の少数編成だ。後の便でいいものは載せるなよ」
出発を前にトラックターミナルは積載貨物の移動などで騒がしい。
そんな喧噪を背に、南那初華(kz0135)が地図を広げていた。
「今回のルートはこれ。最短距離を突っ切るから途中は道なき道を行くみたいだけど、トルネード・イーグルに襲われる前も使ってたから轍が残ってるらしいよ……って、ほへ? どしたの、小鳥さん?」
「ええと、初華さんがクレープ以外でトラック走らせるのって珍しい感じがっ」
初華に顔を覗かれた狐中・小鳥(ka5484)、慌てていつもの笑顔になる。真顔で心配していたようで。
「最初のころは戦闘とクレープ販売のお仕事だったもんねぇ」
懐かしむ初華。もともと赤字覚悟のクレープ販売と抱き合わせでいろんな仕事を取っていたのだったり。
「ともあれ、私も輸送し隊の隊長としては、今回の依頼はきっちり成功させないとだね♪」
「……初華さん、ルートの特徴や敵の出やすい地帯はどうでしょう?」
ぐ、と拳を固める小鳥の横で、レオナ(ka6158)が思案していた顔を上げた。その横からトリプルJ(ka6653)がレオナの手元を覗き込んでいる。
「ほー、マッピングセットか」
感心するJ。どうやらレオナ、初華の広げたマップを簡単に写し取っていたようだ。
「うん。前はこの広いところで襲われて、さらにこの森の中の直線でも攻撃を受けたんだって」
「荒野は視界が広いですから警戒はしやすいですが、森の中は難しいですね」
「おっきな車載砲つけてるから直線なら任せてなんだよ♪」
地図を指差し説明する初華。レオナは色を変えて危険個所などをマップに落とし込んでいる。その横で小鳥が薄い胸を張って自信たっぷりに。
「一列縦隊時の順番はどうしましょう? 私のヴィリーはオフロードに特化していますが」
顔を上げて確認するレオナ。
「私のはフルアーマーカスタムだけどスピードも出るよ!」
小鳥、はいはいと挙手して盛り上がる。
「あー、言いにくいんだが……」
ここでJが改まって口を挟む。
「俺のは運搬能力は高めてるがそれ以外は……まあ、俺は正直数合わせだからなあ。いざとなったら置いて走ってってくれや」
悪ぃなあ、とJ。
場は一瞬静かになるが……。
「大丈夫だよ。私のもPクレープ以外はいじってないから、今回使うのはほとんどノーマルだし!」
「初華さん、あまり威張るところじゃないような気がするんだよ……」
「離れるよりはある程度はまとまって移動が良いかと思っています。移動力低めのトリプルJさんを先頭に、2番目に初華さん、最後に小鳥さんと私とで交替で前後しながら進めたらどうかと思うのですが如何でしょうか?」
一瞬でわいわいと活気が戻る。
「いや、気にせず走ってくれ。本当にただの数合わせだからよ」
「んもー、一匹オオカミ気取っても駄目だからねっ。一緒に行くのっ!」
「初華さんのいう通りで、輸送隊はみんなそろって目的地に着いて任務完了なんだよ」
「時間を気にするのでありましたら、昼食は移動しながら取ることにしましょう」
「オイ……なんだよ、えらく人情深いな……おっと、サンドイッチなら俺も持ってくぜ!」
「ほへ? あ、私も用意する~」
「わわ。レオナさん、ハチミツとツナを持参してるんだよ……」
あ。
食べ物の話になったらなんだか議論そっちのけになったようで。
とにかく出発である。
●
というわけで、荒野。
Jが自らの魔導トラック(ka6653unit007)を駆り、隊列の戦闘を走っている。
「いやっ、ほぅ!」
地面の起伏を利用して、ジャンプ。
無事に着地したところに、横から初華の魔導トラックがぴたり。
「ジャンプする必要ないんじゃない?」
「ロマンだ、ロマン。そういう初華だってインカムから連絡できるのにわざわざ横に付いて顔色うかがってんじゃねぇか」
そんなやり取りをする間に、今度は反対側から小鳥の魔導トラック(ka5484unit001)が上がって来て、やはり横にぴたり。
「通信の声が少しおかしいと思ったら、煙草吸ってたんだよ……」
小鳥、運転席のJの姿を確認して汗たら~。
「ロマンだよ、ロマン。ガンガン吸うぜ」
なおJ、元ヘビースモーカーだったり。もちろん眠気覚ましになったりと実益もある。
そんなJの前に、ブロン、と一台の魔導トラックが横から入って来る。
「……広いと前に出やすくていいですね」
レオナの魔導トラック「ヴィリー」(ka6158unit001)だ。
彼女としてはからかったわけでも楽しんだわけでもなく、いざという時に前に出る練習をしたのだが……。
「おっ、と。こっちもまだまだスピードは出せんだぜ?」
アクセルべた踏みするJ。一気に先頭に出る。
「煙草だけじゃなく競争心にも火が付いたみたいなんだよ……」
「ちょっとJさん、次は岩場を避けるカープがあるのにっ!」
小鳥と初華も加速して追う!
「大丈夫でしょうか? 速度を出しすぎのような気もします」
とかなんとか心配しつつも自分もその速度でぴたりと追うレオナ。
「心配いらねえって。見てろ」
――ガリガリガリ……。
J、カーブに入りテールを流した。荒野の小砂利がタイヤに削られ派手に散る。グリップを失った車体が横に流れる。
「いやっほー、なんだよ」
「きゃーっ、小鳥さん近い近いっ!」
「……その隙間、私も同じにした方が綺麗ですよね」
あー。
結局四台連なってドリフトで急カーブをクリア。並びや距離感、車体を斜めにして踏ん張りつつ流れる様子が無駄に美しい。というか、制御しにくい状態で流れているので至近並びのドリフトで初華がビビるのは無理もないことだったりもする。
「って、ちょっと! ギリギリじゃない?」
「確かに制御不能手前だったんだよ」
「あんだけ尻振っておいてコケなかったら大したもんじゃねーか?」
「何気に問題発言だと思いますよ……」
んもうとぷんすかする初華にうーんと控えめに同意する小鳥。Jの言い分は車のテールの事を差す表現ではあるのだが、運悪く女性ばかりなのでレオナの呟きは妥当だったり。初華あたりは、別にお尻振ってたわけじゃないよう、とか勘違いして運転席でお尻をもじもじさせて言い返している。
とにかくテールランプを揺らしながら体勢を落ち着けてカーブから立ち上がり直線加速。エンジンの回転数を落としてない分、タイヤのグリップが戻れば段違いに伸びる。
再びJ、初華、小鳥、レオナの順でかっ飛ばす。
並びは結構バラバラだったりするが、やがて初華が、小鳥が、そしてレオナが大きく動いて中央に絞り軸を一直線にした。
間髪入れず、周りの景色が緑の木々に。
左右の視界からばっさぱっさとものすごいスピードで枝が迫って来る迫力。
森の中の道に入ったのだ。
ここでは先のように左右に広がって走ることはできない。少し軸を外すと一気にコースアウトしてクラッシュもある。
――ぶおん、ぶおん……ぶおん!
右に左に曲がる道をクリアする四台。
「ちっ……後ろ、離れねぇな」
「結構いっぱいいっぱいよぅ!」
「引き離すつもりで走らなくても、なんだよ……」
「ですが、これなら時間的な余裕はできそうです」
なんだかんだで楽しそうな序盤である。
●
で、再び四連ドリフトしながら森を出た。
「ま、こんなもんだろ」
「ふぅ……やれやれねー」
運転しながら煙草の灰を灰皿に落とすJに、肩の力を抜く初華。
再び荒野に出たのでかなり視界が広がり高速運転も楽になる。
「ですが、敵の遭遇地点ですので気を付けましょう」
「……早速きたのかな、かな?」
マップに目を落としたレオナ。その隙に小鳥が左手前方遠くに鳥の飛ぶ影を発見。
「様子見だな。とにかく走るぜ」
「あー……なんだか前に回り込むような動きしてない? あの鳥たち」
知らんふりするJだが、初華の言う通り明らかに鳥たちの動きが変わった。
「敵は三匹みたいですね。目立つ動きで隠れようともしていませんが」
「正々堂々、正面攻撃なのかな?」
不審に思うレオナ。小鳥はむしろ好都合といった感じだ。
やがて、肉眼でも鳥が歪虚であり不気味な姿をしていることを確認。嘴も爪も鋭そうだ。
「……俺に考えがある。突っ込むから後頼むぜ」
「えーっ! 私、どうすればいい?」
「一列で走って、敵が来たら横にずれて二番目からの鳥を誘導してほしいんだよ」
「それでは私が撃ち漏らしを仕留めます」
囮にJが突っ込み、初華は追走。小鳥が前方攻撃し、レオナが敵の動きの変化に合わせる作戦を打ち合わせた。
とりあえず最初のフォーメーションは一列縦隊。
果たして敵、来るッ!
敵三体は一匹を先頭に三角編隊。横からの攻撃をせずに縦からの連撃を狙っている可能性が高い。
「いっくぜぇぇ!」
ぐしゃっ、と吸ってたまだ長い煙草を灰皿に擦りつけて消し、Jが加速した。
先手は、J。
運転席から腕を出しオートマチック拳銃「チェイサー」を適当に乱射。威嚇射撃する。
敵の先頭はさらに加速しJを狙い突っ込むがこの時、二列目の初華が軸を外して左に車体を出した!
「こ、これでいい? 小鳥さん」
連絡する初華。目の前では敵右翼がJのトラックへの攻撃軸を外して初華にロックオンしていた。
「ばっちりだよ、初華さん」
小鳥、三列目から左に出す。
「私の役目は二匹ですね」
最後方のレオナ、敵の先頭と敵左翼の動きに集中する。
そして考える。
(敵の攻撃は体当たりと聞きます……)
観察すると確かにくちばしが鋭い。
しかし、いくら鋭く速度を上げて全体の威力を高めても、自らが当たり負けすることはあるだろう。
(そうならないのであるなら、スキルを使っているはずです)
その点はこちらも同じです、と冷静に。
次の瞬間、その思案めいた表情がすっと和らいだ。
答えは、出たのだ。
その時、敵先頭は旋回飛行してJのトラックに体当たりをしていた。
――がきっ、がりがりがりっ!
「おら、網にかかりやがれ!」
Jは当たり負けしないよう、必死にハンドルを固定する。
なお、Jのトラックには幌と投網が被されていた。
軍用トラックのように枝や葉を絡めて迷彩にする用途ではなく、体当たりする敵をこれで絡めようとしたのだが……。
「この手ごたえ、引っかかったけど突破しやがったな」
とはいえ、ユニット本体は攻撃には耐え抜いた。敵二列目の運転席攻撃も何とかキャノピーを割られずに済んだ。
この時、敵右翼。
「あ、狙われてる!」
「大丈夫、前を取られたって対応出来るんだよ♪ フルパワーで突撃、フェニックスチャージだよー!」
体当たりの軸線に乗った敵に対し身の危険を感じる初華。
その後ろからマテリアルの炎を纏った小鳥のトラックが急加速で初華のトラックを抜き去った!
そのまま突撃を――というか、正面での鉾盾対決……ではなく、鉾鉾対決を試みるッ!
「小鳥さん!」
「このトラックの防御を舐めないで欲しいんだよ!」
――ガキッ! ぶろん……。
「勝った!」
「まだまだなんだよ!」
敵も小鳥のトラックも吹っ飛んだだけではあるが、初華は勝利を確信して歓喜の声を上げていた。
なぜなら、双方飛び抜けたのではなく回転してブレイクしたから。
だから、仕事の残っている小鳥は忙しい。
「これで……墜ちるんだよ~っ」
機器を操作し車載砲「パンテレスD7」の照準をすぐに合わせ、どうんと一撃。巨砲の発射にサスが沈み込みその衝撃を和らげる。
どごん、ともろに受ける敵。
突撃の勢いはどこへやら、ふらふらと態勢を整えようとしていたところにモロに食らって吹っ飛んだ。
そして、Jを襲った二匹がヒットアンドアウェーで後方に飛び抜けようとしている。
そこに、ヴィリーに乗ったレオナ。
「Jさんのおかげで敵の纏った攻撃用のマイナスマテリアルは消えています」
最後尾で待っていたレオナ、停車してすべての準備を終えていた。
樹木の精霊への祈りを捧げた後の清々しさに包まれ、さらなるスキルで大地から美しい光が立ち上っている。
そして本命の符を指先で優雅に摘まみ、運転席から外へと放つ。
「なるべく多くを、符の範囲に入るように……」
複数の符が舞い、いま、結界となる。
刹那、目もくらむばかりの光。
五色光符陣だ。
「……追撃も、必要ねぇようだな」
ききっ、とターンしていたJが姿を消す敵を見て銃を収めていた。
●
「さっきのはちょうどいい休憩になったよね」
「まーな。それでもランチってわけにゃいかねぇが」
再び出発した車内で、初華とJがそんな会話をしながらサンドイッチもぐもぐ。
「止まって戦闘しなかった分、余裕ができましたから」
「止まって戦闘してたら、どうなってたのかな?」
レオナと小鳥も運転しながらサンドイッチもぐもぐ。
「横に動かれると照準の面で不利になりますから戦闘が長引いていた可能性があります」
「だから男は正々堂々、正面からなんだぜ? 初華」
「私、女だもん」
レオナの説明にそういうこった、とJ。話を振られた初華、何を勘違いしたから口をとがらせていたり。
「フレームを重装化改造にして防御を上げてるから手っ取り早く叩き合いができるんだよ」
「私はカバードコーティング「クレーディト」ですね。防御力向上は」
小鳥とレオナが魔導トラック改造談議に。
そうこうする間に、再び道は森の中に。
「そろそろ食事も煙草も控えめにお願いします」
レオナ、マップを確認。
「敵の出る地域かな?」
「そうだねっ。油断なく行こっ!」
小鳥の初華の会話を最後に、気軽な通信はなくなった。
隊列は狭い森の中を行く。
「あっ!」
「どうした、レオナ?」
最後方からのレオナの通信。気にする先頭のJ。
その時には全車両、衝撃を受けていた。
「今度は後ろから、か……」
「視界が限られてるから後ろに付かれると見えにくいんだよ」
会話を交わす初華の小鳥の目の前を、トルネード・イーグル三匹が攻撃して前に逃げて行く。さらに上空で横に逃げるのであっさり視界から消えた。
「後ろから来られるとやっかいだね」
「後ろに攻撃することもできると知らせましょう」
初華のぼやきに反応したレオナ、シグナルバレットをわざと後方に発射した。上空からでも斜め後方への射線は見えるだろう。念のために二発、三発と。
これが奏功し、今度は敵は前から来た。
「つっても、こりゃどうしようもねぇぜ!」
「まさか上に逃げるなんてだよ」
耐えるJに見上げる小鳥。
そう。
敵は先のシグナルバレットを見て、飛び抜け後の追撃を避けるべく先頭のJだけ狙ってすぐに上空に急上昇したのだ。
「卑怯だよね~」
「先頭が頓挫すれば後続も道連れですからね」
むー、と唇を尖らせる初華。レオナは敵の戦略に感心する。
「でも、手はあるんだよ。このまま行って大丈夫!」
「ま、言われずともそのつもりだがよ」
策ありの小鳥。Jは信頼しそのまま走る。
で、また敵三匹が三角編隊で真正面に周り森の中の直線の道――というか、天井だけ空いたパイプラインに入って来た。
「ま、俺を攻撃力の低いいいカモだと思っておきゃいい」
J、仲間のために我慢の走行。敵の攻撃三回を耐える。
その後、敵はやはり急上昇しての離脱を図ろうとしている。
「んあっ! 逃げるよ?!」
初華、前の小鳥の戦法ができずに悔しがっている。
が、その小鳥。
「空中戦だって出来るんだよ! この子をただのトラックだと思わないでよね♪」
叫ぶ小鳥。スイッチ・オン。
がこんとタイヤ部分を変形させ、魔導エンジンから供給されるマテリアルエネルギーをド派手に噴射!
「な、なになに?」
「さっきは火の鳥だったけど、今度はジェットなんだよっ!」
後方の気配にうろたえる初華の上を、小鳥の魔導トラックが跳躍一番、飛び立った!
さらにその後方。
「小鳥さんより高く飛ぶ必要がありますね……」
レオナもジェットドライブで跳躍。
ただし、二人の目的は違った。
「よし! 体当たりできたんだよ!」
先頭に降り立ち加速した小鳥は、体当たりよりもこの位置取りにこだわったようで。
「一匹落としました」
小鳥の後ろに着地したレオナは、跳躍中に車載のアサルトライフル「ヘルハウンドE84」で攻撃。無防備な敵一匹を墜としていた。
隊列は新たに、小鳥、レオナ、J、初華の順になる。
戦場は引き続き、森の中の狭い一本道。
横にずれることも逃げることもできない。
ゆえに敵は前から仕掛けるが……。
「それだけこっちの攻撃も当たりやすいってことなんだよ!」
小鳥、敵が再び前から攻撃してきたところ、大口径の砲弾を撃ち込んだ!
――がこっ……どぉぉん……。
「一撃必殺を逃れようとするので後は狙いやすいですね」
もう一匹が軸をずらしたところ、二番目のレオナがライフルで狙撃。
「おいおい、これじゃ最初からコレの方が良かったんじゃねぇか?」
「えーっ、Jさんが戦闘で囮になってたから敵は前から攻撃してきたんじゃないかな」
少し不貞腐れたJを初華が慰め。
実際、小鳥の大砲の威力や性能を見ていたら敵は後ろからの攻撃を続けていただろう。
これで敵は全滅した。
「さあ、後は急ぐんだよ……わわっ!」
戦闘の小鳥が改めて声をかけた時だった。
――ばうん……どすっ。
何と、レオナがまたもジェットドライブで大跳躍し前に出た。
「どうかしたの、レオナさん?」
「少し先頭を走りたくなって……いけませんか、初華さん?」
レオナ、少し楽しそうな口調である。
「ま、食らい付いてくから好きに走ってくれていいぜ」
「森から出たらまた競争なんだよ!」
やれやれ、なJにわくわくしてる小鳥。
「ありがとうございます」
レオナ、右に思い切ってハンドルを切ってテールを流しドリフト。
この動きに後続三台が美しく続いている。
「運転、楽しいですね」
そんなこんなで、無事に「大地の裂け目」の調査部隊駐屯地まで無事に物資を届けた。
初華たちの運んだ量は魔導トラックの台数の問題でやや少なめではあったが、歪虚を征伐し到着も早かったのでその後の運搬計画も予定より進行。
後方部隊の準備がかなりはかどる結果となった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 12人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/02/24 07:44:31 |
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相談だよ♪ 狐中・小鳥(ka5484) 人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2019/02/24 23:43:19 |