• 王戦

【王戦】歪虚CAM軍団

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
4日
締切
2019/02/27 07:30
完成日
2019/03/04 02:26

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 全高20メートルの巨体が音も音も無く飛ぶ。
 暴虐の竜とは思えぬほど殺意が研ぎ澄まされていた。
 武の心得のない者には穏やかに見えてしまうようで、頭上数十メートルを小鳥がのんきに飛んでいる。
 鋭い呼気。
 この時点でようやく小鳥が異常に気づく。
 竜の爪先が音を置き去りにして、小柄な竜の首を横から刈ろうとした。
 小柄な竜が消えた。
 下に避けたのは分かっている。
 極限まで加速した意識では、かつて誇りであった巨体は重りでしかない。
 眼球が向きを変える速度に絶望しそうになる。
「ガァッ!!」
 殺気とマテリアルを喉奥でぶつける。
 精妙な操作により10を超える極細ブレスに変え、喉と顎を焼きながら散弾として放つ。
 だが届かない。
 ようやく下を向いた眼球が、泥にまみれて這うように飛ぶ黒竜の姿を捉える。
 翼の皮膜に3つの穴。
 背中の鱗に1つの焼け焦げ。
 それが、命を賭けて挑んだ結果であった。
 爪の先に違和感。
 この感触は、竜の、尻尾の、先だ。
「受け身をとれ」
 爪が引っ張られる。
 肘、肩、背中と意図せぬ動きが大きくなる。
 重力の方向を見失ったのは何百年ぶりだろうか。
 炎竜の体が土砂を押し退け岩盤にめり込んだ。

●黒竜の旅立ち
「おゥ意識があるのか」
 全高10メートルほどしかないドラゴンが、鋭角に進路を変えて炎竜の頭の前に舞い降りる。
「殺セ」
「自殺するなら自分でやれ」
 尻尾を器用に使って傷口をつつく黒竜に、炎竜が目に憤怒を浮かべる。
「嬲ルカッ」
「敗者を生かすも殺すも勝者の自由って奴よ」
「貴様ッ、何ヲッ」
 怒り以上に失望が強い。
 災厄の十三魔として知られ恐れられてきた同属が、今では歪虚王とはいえ傲慢に屈してへらへらしている。
 あまりに情け無い。
 かつての憧れが憎悪に変わり、半死半生の体に力を与える。
「ようやく一皮剥けやがったか。戦闘中の回復くらできねぇと大物とは戦えないぜ」
 炎竜は怒りのあまり人語を離せない。
 我が身を燃やし、跳ね起きる勢いのままガルドブルムへ襲いかかった。
「技が抜けてるぞ」
 翼も使わず足を使ったステップだけで易々躱し、回し蹴りの要領で尻尾を振るう。
 先端が絶妙に力加減で炎竜の顎に当たり、脳を揺らされた巨竜が再び地面に沈んだ。
「何故、傲慢、ナドニ」
「強いからだ。見て強さを盗むもよし、お前達のように挑むよし。最高だろ」
 ぐるりと見渡すと、受け身をとりきれず気絶した竜が20ほど転がっていた。
「隙ヲ、伺ッテ?」
 理性が戻った炎竜が、縋るような声で言う。
「いや全く。だがハンターと戦う邪魔になるのに気付いてなァ」
 楽しげな笑い越えが響く。
「だから今から頭数集めて王女を食いに行く」
 竜達の目が覚める。
 ドラゴンとして、王女という存在には非常に惹かれる。
 主に捕食対象としてだが。
「その足でイヴを襲って次は邪神だ。ハンターともどこかで戦えるだろ」
 邪魔は歓迎するが手は抜くなと言い残し、黒竜は颯爽と王国の空に消えた。

●悪のデュミナス
「また例の歪虚CAMです!」
 ハンターズソサエティーが大騒ぎになっている。
「大型ブースター付デュミナスだとっ。あんな骨董品をどこから引っ張り出した!」
 魔導型デュミナスがハンターに貸与される直前に、流星のように現れ消え去った機体だ。
 ブースターでマテリアルを大量消費する割に飛行どころか浮遊もできないう問題児だった。
「映像届きました」
「再生しろっ」
 立体ディスプレイで平面的な動画が映し出された。
「観光地?」
 緑豊かな整備された公園に見える。
 注視してみると、瀟洒な墓が広い間隔で並ぶ墓地であることが分かる。
「いったい……」
 大理石が墓石に集まっていく。
 繋がりあい、溶け合い、どこか見覚えのある滑らかな形に近づいていく。
 上半身だ。
 大理石色の胸部から腰が生え、砂利が脚になり芝生を踏みつける。
「嘘、だろ」
 以上は一箇所だけではなかった。
 墓石の3分の1がデュミナスに変わり、残りが半分ずつ大型ブースターとCAM用兵器に変わる。
 豪華な墓所はほんの数分で消え去り、代わりに1個中隊の歪虚CAMが出現した。
「映像はここまでです」
「そうか。危険を冒して撮影してくれた勇士の遺族に補償を……」
「生きています。高画質で録画したのでここまでしか撮れなかったそうで」
「そ、そうか」
 居心地の悪い沈黙は、たった数秒で破られた。
「デュミナス型歪虚CAMの目撃情報が届きましたっ」
「既に届いているぞ?」
「別の場所ですっ」
「あの、私も王国から……」
 伝令が途切れない。
 目撃情報を王国の白地図に記入していくと、傲慢の戦力も王国の有力部隊もいない、文字通りの戦力の空白地帯に新たな軍勢が現れたことが分かる。
「続報は! 歪虚がどこに向かった分からないのか!」
 戦闘能力が外見通りだとしたら、一線のハンターにとっては雑魚でも王国の一般部隊にとっては強敵だ。
「発生の目撃情報しかないんです!」
 かひゅう、と不気味な呼吸音が不吉に響く。
「部隊、いや、軍隊としての行動だと。ハンターに知らせろ! 王国軍は現代の戦術に対応できんっ。歪虚CAMを1機でも多く破壊し、予想される被害を少しでも減らせ!」
 外交問題級の発言ではあるが、王国から出向ですら全面的には反論できない。
 一部の部門や諸侯は素晴らしい成果をあげてはいるが、王国の大部分は遅れたままなのだから。

●歪虚CAM遭遇戦
 あなたは今王国にいる。
 乏しい情報をもとに駆け回り、移動中の歪虚、あるいは出現直後の歪虚に奇襲する機会を得た。
 一撃離脱に徹してもよい。
 敵も味方も逃れられぬ激戦を挑んでもよい。
 この場にいる敵は全体の一部分でしかないが少ない戦力でも無い。
 倒せば、戦局に影響を与えられるはずだ。

リプレイ本文

●黒竜の傘下
 竜が踊るように飛んでいる。
 装甲板の切れ端が零れていく。
 微量でも質は高い負マテリアルが付着していて、墓石が纏う正マテリアルを食らい歪虚CAMへ変わる。
「ガルドブルムも何考えてんだか」
 ウーナ(ka1439)の口元が無意識に吊り上がっている。
「また顔も出さずに」
 飛天真如の称号が泣く逃げ隠れはこれまで通りだ。
 しかし気配が違う。
 おそらく秘蔵である技術を隠しもせずにばらまき、大量の歪虚CAMを新たに生み出した。
 あの黒竜は戦力を並べて悦に入る性格ではない。
 まず間違いなく、大きな戦を仕掛けてくる。
「うーん?」
 対照的にリリティア・オルベール(ka3054)は困惑中だ。
 超低空で飛ぶ彼女の視線の先には豪華な墓地がある
 そこに漂う祈りあるいは欲望がデュミナスの形になっていくのだが、デュミナスの形をしたそれは酷く鈍く見える。。
「これ、彼の手勢なんですかね?」
 だとしたら期待外れだ。
 あれだけ大口を叩いて初期型のCAM未満の手勢を慌てて集めるなど、自分自身の目が曇ったのかと思えてしまう。
 なお、この時点で歪虚CAMの総数は3桁に達し加速度に増え続けているが、王国の情報収集体制の不備によりリリティアの元まで情報が届いていない。
「おー、いるいる」
「倶利伽羅」
「それじゃ、はじめよっか?」
「行きますよ」
 急な坂道から白と桃の塗装のオファニムが飛び出すのと、黒々としたワイバーンが高度を上げその頭上を飛び越えるのは同時であった。
「ホゥ!」
 あまりにも眩しいマテリアルに惹かれ、次の場へ向かっていた竜が猛加速で戻ってくる。
 速度と加速だけでなく動きも素晴らしい。
 内に秘めたマテリアルは高位歪虚の域にある。
 竜は負マテリアルの密度を無理矢理高めて無数の礫として口から吐き出す。
 生身のリリティアならともかく、非常に強いとはいえワイバーンの域を超えていない倶利伽羅では躱しきれない。
 だから倶利伽羅は、兜と一体化した武器で受けると同時に防いで耐えることで速度を落とさなかった。
「届いた」
 長くて固くて鋭いだけにも見える刃が、リリティアの技術と体力により致死の2連撃に変わる。
 青黒いドラゴンは、巨体から想像し辛いほどの素早さで初撃を回避する。
 しかし続く一閃は躱すことも逸らすこともできず、受けた左の爪ごと腕の3分の1を斬り飛ばされた。
「感謝スルゾ大将ォッ!」
 竜が笑った。
 美姫の姿に伝説級の戦士の力を兼ね備えた彼女はまさに竜種の理想そのものであり、戦闘欲と食欲が最高潮に燃え上がる。
「ドラゴンってのはどいつもこいつも」
 オファニム、個体名ラジエルは歪虚CAMのど真ん中に着地した。
 咄嗟に突き出されるカタナ型の石塊を、全高約8メートルの巨体から見ても大きな兵器を抱えたままするりと躱す。
「やり易くってたまんないわ!」
 対VOIDミサイルが肩の発射筒から発進。
 反動で後へずれる動きで左右からのカナタを空振りさせ、しゃがみ込み衝撃を受け流す動作を活かして発射筒を別方向に向ける。
 空間認識能力だか未来予知だか分からない水準まで高められたウーナの感覚が、王都方向へ発進しようとしていた歪虚CAM複数班を捉えていた。
 そのうちの1つにミサイルが着弾。
 撒き散らされるプラズマが、火の付いた大型ブースターを爆発する残骸へ変える。
「もう1発」
 ラジエルの通常スラスターだけでなく、機体をとりまくマテリアルオーラがウーナ機に異様な加速を与える。
 地面にすれすれに飛ぶように跳び、散弾ブレスを躱しながら最後のミサイルを撃ち放った。
「次ハ戦場デ不意打チヲ狙ウッ。精々気ヲ付ケロッ」
 竜が高く飛翔する。
 情け無いことを言ってるはずなのに異様なほど堂々としている。
 リリティアを己より格上と判断しているのだ。
 20メートルを超す体から大量の装甲片が零れ、綺麗な白砂利を上に散らばり砂利全体が蠢いた。
「刈り取りたかったですが」
 敵の動きにアクセルオーバーの要素を見いだし、竜は竜なりに頑張っているのだなと思うリリティアであった。
「倶利伽羅、追う必要はありません。あれは勝手に寄ってきます」
 ワイバーンが高度を無理矢理気味に下げる。
 歪虚に変じかかっていた砂利が風圧で飛び散り、歪虚の要素を喪い霧散する。
「敵第3集団撃破」
 ウーナ機が発射筒を捨てる。
 デュミナス型歪虚が抗戦の無意味を悟って大型ブースターに点火。
 その隙をリリティアが見逃すはずもなく、連撃を単一の対象ではなく2つの対象に対して振り下ろす。
 躱すとか受けるとかそういうレベルの話ではない。
 銃弾にもVOIDの牙にも耐えるはずのデュミナスの装甲が、フレームごと切り裂かれて墓地の中に転がった。
 敵の残りは4機。
 元が20機あったことを考えると全滅同然だ。
 しかし別々の方向に飛び立つ彼等は小集落なら全滅させることは容易く、結果として王国の部隊1つを拘束しうる。
「逃すかぁっ!」
 無論そんなことは許さない。
 発射頻度以外の全てを捨てたマルチロックオンを強行。
 ルギートゥスD5と2つの銃弾が2股の巨大槍と化して後ろから歪虚CAMを撃つ。
 1つは稼働中の大型ブースターを貫かれて爆発四散。
 もう1機は肩を貫かれバランスを崩して、墓石の無い墓に不時着した。
「こいつら殴り倒してけば、出てくるかな?」
「どうでしょうか。足止めに使うための戦力かもしれません」
 リリティアはブースターが無事な1機を追う。
 ブースターは連続使用できないので、ワイバーンの速度と彼女の戦闘力があれば逃がすことはあり得ない。
「ラジエル、限界まで速度を出すよ」
 飛行手段を無くしたデュミナスは無視してもう1機の無事な機体を追う。
 歪虚CAMとは違って飛行可能時間は非常に限られる。
 しかし1分程度であれば歪虚CAM上回るし、それだけ時間があれば十分過ぎる。
「ロック完了」
 敵があまりに遅く鈍く、狙いをつけるのが簡単過ぎた。
 機体前方の幾何学円状を砲弾が通過し加速。
 遠くにいた機体に背中から当たって動力炉に当たる部位を押し潰す。
 振り返りざま1歩横へ。
 歪虚の最後の反撃は墓地の地面に傷をつけるだけで終わり、ラジエルの射撃により仕留められた。

●人竜CAM乱戦
「粗悪品とはいえCAMを大量生産するとは」
 敵にぎりぎり対抗可能な質を、敵を圧倒可能な数揃える。
 近衛 惣助(ka0510)の知る正攻法の1つであり、実現する前に潰さねば必敗確実の戦略であった。
「これ以上集結する前に撃破するぞ、勿論全部な」
 彼の得物は無銘。
 ハンター向けに先行配備された30機の内の1機であり、オファニムに改造されるまで改造されてからの調整で原型とは別物と化している。
「配置に着いた、いつでも行けるぞ」
「こちらも準備完了だよ」
「なかなかに小賢しい敵ではないか。嫌いではないがな」
 音を出すのを嫌った同行者が文字データで合図を送ってくる。
「了解、始める」
 何の感慨も戸惑いもなく、惣助は愛機と共へ死地へ踏み込んだ。
「敵ダト」
「小癪ナ」
 竜2体は即応したが歪虚CAMは大混乱だ。
 遠く離れたハンターにカタナを構える個体、アサルトライフルを構えようとして取り落とす個体など、リアルブルーの軍なら新兵でもしない無様を晒している。
 少数だけだが動けたデュミナスもいる。
 リアルブルーでは1小隊として扱われることもある4機で無銘に仕掛けた。
 だが攻撃を仕掛けたときには無銘は間合いの外にいる。当然のようにカタナは空を切り30mm弾は勢いを失う。
 脚部大型ローラーによる高移動力と機体各所に増設したスラスターを駆使した結果だ。
 ただ、機体が高性能な分乗り手への負担は大きい。酷使された脳味噌だ茹だるような感覚すらある。
「残念だが、そこはまだ射程内だ」
 勝ち目無しと判断し逃げにかかったデュミナスを銃撃する。
 背中の大型ブースター以外には当たりようがなく、マルチロックオンで威力が低下した砲弾でも機能停止にまで追い込めた。
 それでも敵の数は圧倒的だ。
 数の差に気付いたデュミナスは落ち着きを取り戻し、俊敏な無銘は無理でも鈍く見えるR7を仕留めようと集中攻撃する。
 その攻撃は半ば成功した。
 一見無謀に見える突撃をするR7に、28射のうち3割程度が当たって火花を散らした。
「全機1手無駄にしたなぁっ」
 コクピットでルベーノ・バルバライン(ka6752)が獰猛に笑う。
 回避能力をほどほどにした分装甲は分厚く、ほとんどの衝撃を受け流す。
 万一急所に当たっても問題は無い。
 マテリアルカーテンは絶好調で、急所への打撃を軽減するだけでなく装甲の守りを鉄壁にまで高めている。
 なので30mm弾が直撃しようがコクピットの中には届かない。
「しばらく遊んでやろう」
 無骨な指が流麗に動く。
 外側の機体は、異様に大きなバズーカを素晴らしく滑らかに扱う。
 内側にルベーノごと機体を砕く威力を秘めているのを感じさせない。
「まず1機」
 滑るように移動しながらロケット弾を発射。
 狙い通りにデュミナスとデュミナスの間をすり抜けさせ、歪虚CAMの機体バランスを崩すブースターに直撃させる。
 鼻を鳴らす。
 ルベーノから見れば気が抜けたにも程がある斬撃を回避。
 次の30mm弾を爪で受け最後の突きは脚を止めて空振りさせる。
「2機」
 今度はブースターではなく脚に当たった。
 右脚が拉げて体勢が崩れ、ブースターを地面にぶつける寸前に中に集めた力を放出する。
「古いが良い機体よな」
 並の歪虚なら潰れる一撃を浴びせているのに耐えている。
 ルベーノ達一線のハンターにとっては力不足でも、大量に敵にまわすとなると面倒な敵だった。
「だが」
 紫色の光がデュミナスの群れを貫いた。
 運良く惣助機の攻撃に耐えた歪虚CAMも、ロケット弾で全身が歪んだデュミナスも次々限界を超え両膝から倒れていく。
 巨体故に範囲攻撃がよく効く。
「スコアを貰ってしまったね?」
 悠然とコメントする久我・御言(ka4137)に、歪虚の敵意の籠もった視線が集中した。
「さて」
 御言は複数の行動を同時に行っている。
 1つは自身の戦闘。30mm弾があちこちから飛んでくるので一瞬も気を抜けない。
 もう1つは味方へのデータ送信。変動する敵の情報を送ることが命中率と威力向上に繋がるが、かなり面倒な計算が必要となる。
 最後の1つは、こちらを伺うドラゴンへの警戒だ。
「ヤルカ?」
「次ニ撒ク場ガ決マッテイル」
 2体は冷静に会話しているつもりだが本能を抑え切れていない。
 ハンターが放置しても逃げない。これなら攻撃を仕掛けない限りしばらく攻撃してこないよう思えた。
「さて。行こうか月光」
 マテリアルエンジンの出力を調節する。
 遠方で飛び立つ直前のデュミナスから、最も動きがよく知性を感じる2つを選んでルギートゥスD5を向ける。
 発射のための信号を送った瞬間手応えがあった。
 遠方で発生した2つの火球が、月光の艶やかな装甲を禍々しく朱に染める。
「全機倒すのは難しそうだ。だが……」
「ソノ命貰ッタゾハンター!」
 不意打ちの竜の蹴りをポレモスSGSで受ける。
 そのタイミングで展開した攻性防壁が竜を痺れさせ並程度まで技量を下げさせる。
「熱心なお誘いは嬉しいが他の用があってね。しばらく休んでいたまえ」
 絶好の攻撃の機会だが御言は優先順位を間違えない。
 仕留めるには3人がかりの総攻撃が必要な竜種相手には防戦に徹し、運が良ければ一撃で倒せる、ハンター以外にとっては脅威のデュミナスを手際よく仕留めていく。
「貴様ニ決メタ!」
 竜がやる気になっている。
 躱し難いにも程がある散弾ブレスを乱射しながら、CAMを上回る巨体で月光に迫った。
「歪虚CAMが3機逃走」
 アクティブスラスター発動。
 装甲を煌めかせながら月光がぎりぎりでブレスを躱す。
「竜種を逃がさない限り許容範囲ではあるが」
 大量の細いブレスが月光の右半身に着弾する。
 装甲は分厚く防御にも成功したが、小破水準の損害があった。
「イツマデ無視デキルト……何ィッ!?」
 竜は3度目の命中でようやく異常に気付いた。
 職人芸じみた技で、初期型とは別物といっていい物に改造された魔導型デュミナスのダメージコントロールが行われている。
 これでは危険を冒して攻撃した意味が無い。
「判断を誤ったなぁっ!」
 ルベーノ機が撃ち尽くしたバズーカを捨てる。
 単独スコアは1のみだが与えたダメージは4機分。
 逃げ腰になりブースターを使おうとするデュミナスへスライディングで急接近。
 凄まじい摩擦があるはずなのに何故か滑らかで、歪虚CAMに接触する瞬間などデュミナスの装甲が機能していないかのように見えた。
 歪虚CAMの右脚が押し折れ90度以上曲がる。
 無傷のデュミナス数機が、大技直後で動きの止まったルベーノ機を凝視する。
 狙ってもまず当たらない無銘や月光とは違い、今攻撃すれば倒せて食らえるのではないかと考えてしまった。
「そうだ、来い!」
 ルベーノが呵々と笑う。
 30mm弾の豪雨をマテリアルカーテンと脚爪「モーンストルム」で防いで本体へのダメージを小破程度に止め。
「攻めが温すぎ欠伸がでるわ!」
 ルベーノ本人の動きを8割方再現した動作でR7が跳ね起き、飛行機能と地面を蹴っての加速を組み合わせることで空高く跳躍。
 不意打ちしたつもりの竜種の真上へ回り込む。
「これも自爆のバリエーションの1つよ。遠慮せず受け取れ!」
 両腕を揃えて構える。
 敢えて飛行状態を解除し、その上で下向きに加速。
 龍の頭を首ごともぎ取る勢いで接触激突する。
「正気カァッ!」
「常に正気だともっ!」
 衝撃に負けてR7の両腕がもげた。
 竜もただではすまず、首の筋と骨に深刻なダメージを受け翼が小刻みに震え出す。
 地面にぶつかるコクピットの中で、ルベーノは重体で済む程度に受け身をとっていた。
「いやはや元気だね。私としてはもう帰ってくれて良いよ? このまま戦っても負ける気はないがね」
 御言の挑発は自然すぎて、竜が理解し激怒するまで数秒の時間が必要だった。
 その間も御言の攻撃は続く。
 長距離移動手段を潰せば長期戦に持ち込み簡単に倒すことができるので、ブースターに当たれば撃破にこだわらず次の個体を狙う。
「ココマデ舐メラレテ逃ガストデモッ」
 悪寒を感じて横に跳ぶ。
 だが無銘の射撃の方が早く、比較的薄い腹を凹ませ内臓を傷つける。
「敵は素早い、タイミングを合わせて畳みかけるぞ」
「雑魚ナドイナクテモッ」
 歪虚CAMの大部分は倒され少数は逃げ去った。
 最低限の目標は達成できたのだが、頭に血の上った竜は目の前の鉄巨人へブレスも使わず飛び掛かる。
 それを御言が迎撃。
 攻性防壁による電撃が竜の内部に浸透した。
 竜が舌打ちを1つ。
 立て直すため空へ飛んだタイミングで再び腹に銃撃を受ける。
「逃がすか、空が飛べるのはお前らだけじゃない」
 飛行に向かない形をした黒い巨体が、エンジン出力と惣助の技術のみにより驚くほど安定して飛んでいる。
 竜が惣助機を見る。
 射程と速度勝る惣助が一方的に攻撃するものの、相手も竜とは思えない水準の体術を使うのでなかなか当たらない。
 竜が反撃に移る。
 射程が短い代わりに威力と命中率に優れたブレスを放ち、しかしゲシュペンストによる残像に惑わされ攻撃に失敗する。
「時間切レカ」
 目を屈辱の色に染め、竜は重体状態のもう1体を連れて一直線に上に向かう。
 無制限に飛べる竜とは違い惣助のスキルには限りがある。
 途中で追撃を諦め、ルベーノとそ機体を回収して帰路につくのだった。

●竜
 マテリアルの弾丸が飛行中のデュミナスを直撃する。
 ハンターの攻撃ならブースターに当たらなくても落ちそうなものだが、軟着陸に成功する程度しか体勢が崩れない。
「迷イ込ンダカ?」
 だから竜も脅威とは判断せず、2桁の墓地に散布した疲れを癒やすため翼と脚を止めのんびり眺めた。
 そこからは泥仕合だ。
 デュミナス型の歪虚は移動を止めて射撃を行い、重装甲のオートソルジャーがしぶとく耐えて反撃を行う。
 躱さなければ当たるのが当然な高位ハンターや高位歪虚とは異なり、そもそも滅多に当たらず流れ弾で墓地が廃墟に変わっていく。
 交戦距離がゆっくりと縮まっていく。
 オートソルジャーの命中率も上がるが被弾数はそれ以上に急上昇し、後30秒もあればスクラップと化すように思われた。
「十分よ」
 魔導ママチャリと共に凹みに伏せていた八原 篝(ka3104)が起き上がる。
 純白の和弓に張られた弦はマテリアル製だ。
 そこに5本も矢をつがえているのに違和感はなく、ひょうと放った5本全てが放物線を描いてデュミナスの装甲へ突き刺さる。
 弱いとはいえCAMだ。
 対単体攻撃で一撃必殺するならリリティアやアルトのような攻撃力が必要で、篝の矢にはそこまで攻撃力はない。
 だが別の能力がある。
「ム」
 万全な状態でも鈍い動きのデュミナスが、攻撃も防御も無残なほどに雑になる。
 篝が慣れた手つきで次の5本を番える。
 無事だった残り5体にも突き立ち、歪虚CAM6機が木偶同然の6機へ成り果てる。
「バジン、わたしを守るのは諦めて後退」
 有無を言わさず命じられてオートソルジャーが後退。
 篝は移動力と射程の圧倒的な差を活かし、時折リトリビューションで状態異常をかけ直して常時優勢を保つ。
「勝テハスルガ」
「なーに? 今からするの?」
 篝による挑発。
 しかし竜は興味深げに篝を観察するだけで攻撃してこない。
 いや、篝の弓と指を凝視しながら、視線すら向けず炎をバジンに浴びせた。
「オ前ヲ食ウ時間ガ惜シイ。……勇敢ナ手下ハ大事ニスルノダナ」
 飛び去る竜を、篝は見送ることしかできなかった。
 なお、戦い自体は優勢から圧倒的優勢に変化した。
 デュミナスが撤退を決断するまでに6機を倒し、7機目を飛び立つ前に撃破させ、8機目以降に最後の状態異常攻撃を浴びせる。
 宙で転倒して地面にぶつかり砕けたのが1機、不時着してブースターを壊したのが1機、無事なのが1機だ。
 無事な1機に1人で急行して仕留め、地上の鈍足1機を片付けて敵一層に成功する。
「あんたも災難よね。わたしの所に来てしまうなんて」
 ブレスでで炙られた装甲をコツンと叩く。
 バジンは寡黙に、護衛を続けていた。

●人竜決戦
 食欲を誘う香りだったのだ。
 膨大なマテリアルを秘めた若い肉。
 それを舌より早く竜の本能で感じたのだ。
 今もそれを感じている。
 そしてそれ以上に、生命の絶望的危機を感じていた。
「息継ギスルナ」
「分カッテイルッ」
 ブレスを吐きながらの発声だ。
 全高10メートルを超える竜2体という大戦力であるはずなのに、2体の目に侮りはなく、2回りは小さなエクシアに散弾ブレスを浴びせ続けている。
 マント状のマテリアルが激しく揺れる。
 R7を8割方隠すほど大きな盾が、別の生き物じみた軌道でブレスの大部分を受け止める。
 反撃が始まる。
 スラスターライフルが大量の銃弾を吐き出す。
 優れた素質を長年磨いてきた竜達にとっては紛れ当たり以外当たらない。
「時間ガッ」
 だが竜の攻撃も有効ではない。
 威力と当たりやすさを兼ね備えた極細ブレスの弾幕が、マテリアルと大盾と何より乗り手の技術に半ば無効化されている。
 半ばだ。
 全てではない。
 1軍が全滅するに足る攻撃を受け続けたR7がようやく限界を迎えた。
 脚と盾の動きは変わらない。だが頭部センサの光が消え、微かに……本当に微かにだが動きが乱れた。
 竜が思考よりも早く跳ぶ。
 中身を食らうなどという悠長な思考は既に消えている。
 一瞬でも早くCAMを潰し、次の強敵に備えるつもりだった。
「通常射撃じゃ」
 R7の胸元が内側から盛り上がる。
 歪んだ装甲板が砕けて破片が宙に舞う。
「当たらない予感が」
 亀裂から見えたのは、片面が斧で片面が棍の独特な形状の武器だ。
 鉄壁に思えたR7を内側から砕いて空気穴兼のぞき穴が開けられる
 細められた紫の瞳と目が合い、ドラゴンの危機意識と食欲が過去最高に刺激された。
「当たったの!」
 HMDをつけたディーナ・フェルミ(ka5843)が脳波だけで機体を操る。
 ライフルから超々重斧に持ち替えたエクスシアが、必殺の間合で上段から振り下ろす。
 ドラゴンは危なげ無く躱す。
 ハンターと同様に、ただ強いだけの一撃が通じるほど甘くはない。
「死ィ」
 岩盤すら貫く爪撃が星神器「ウコンバサラ」にぺちんと打ち落とされる。
「避ケロォッ!!」
 2体目の竜が相棒の腹に蹴りを入れて数メートル蹴り飛ばす。
 次の瞬間、彼等の背後を固めていた歪虚CAMが音もなく崩れ、宙にある残骸の間をすり抜け黒い死が訪れた。
「待たせたな」
 深紅の騎士刀が啼く。
 いくら吸い上げても尽きぬマテリアルに溺れながら、並の覚醒者では扱いきれぬ力を際限なく送り出す。
 持ち手のアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)はさらに凄まじい。
 優れた筋力と感覚と技術を精妙に組み合わせることで、試作法術刀「華焔」を限界ぎりぎりまで酷使し歪虚に行使する。
 その結果が断ち割られた歪虚CAMの隊列だ。
 打撲でも切断でもなく、刃に触れた箇所が崩壊するという形で3機が致命傷を浴びていた。
「オォ!」
 竜が唱和する。
 ディーナ機に背を向けた結果後頭部に斧を浴びてもアルトから視線を外さない。
 外せば何もなせずに滅ぶことは分かっている。
 生存に必要な負マテリアルを燃やした散弾ブレス2連撃。
 狙うのは黒き死ではなくその騎獣グリフォン。
 追い詰められようが圧倒されようが常に有効な手を選択する、古強者らしい嫌らしい行動だった。
「悪くはないが」
 グリフォンもまた吼える。
 噴き出す正マテリアルが尻尾先端部の白い箇所を眩く輝かせ、もともと厳重に防御された四肢と胴を恐るべき強度で守る。
 アルトの剣が止まるまでに、竜の片翼の先端部が文字通り消し飛ばし竜の背に浅い傷をつけた。
「見るべき技はないな」
 彼女から見ると竜の使う技はどう解釈しても拙い。
 ハンターの技を無理矢理竜のそれに翻案したような歪さがある。
 それでも高位竜種の地力に技が加わると脅威だ。
 これと比べると歪虚CAMも雑魚に等しい。
「退ケッ、ボスニ連絡ヲ」
 言われた1体は奥歯を噛みしめ砕きながら空へ飛ぶ。
 が、グリフォンからひょいと降りてからのアルトの速度は圧倒的だった。
 不用意にも晒してしまった腹から股間まで下から切り裂き尻尾まで両断する。
 断末魔をあげる時間も与えられなかった。
「しかし鍛える竜っていうのは珍しいな」
 血振るいはしない。
 高位の竜は負マテリアルの塊に等しく、アルトの濃密なマテリアルに当てられ瞬く間に揮発する。
 生き残りの竜は生を諦めた。
 故に理解する。
 この状況でも勝利への渇望は消えず、全てを戦いにつぎ込む感覚がこの上なく楽しい。
 もう言葉はない。
 己を解いて力に変え、その過程で劇的に存在と戦力を向上させながらブレスを撃ち放つ。
 ブレスは散弾ではなく濁流を思わせる規模であり、アルトであっても防御はできても回避はできない空間への攻撃であった。
 ディーナ機が割り込み壁になる。
 まずは1人と判断するドラゴンだが、ディーナの生の輝きがいつまでたっても消えない。
 よく見ると、マテリアルに使った装甲が崩れながら別の形に組み上がって防御能力を維持していた。
「帰ったらフレームまで総取っ替えなの」
 嘆くディーナが使っているのは法術だ。
 人体再生の秘儀とも言える技を、兵器に使って延命させている。
 赤き刃が迫ってくる。
 竜は既に全力以上を振り絞った。
 最早思考を維持することも難しく、己の死を見据えることしかできない。
 だが、それでも。
「コレヲ」
 黒竜を真似た尻尾のカウンターが、アルトに一歩斜め前に移動されるだけで無効化される。
 首ごと命を刈り取られた竜は、楽しげに微笑んだまま事切れていた。
「まずいな」
 一瞬の目礼の後アルトが渋い表情になる。
 鍛え上げた技も装備も違和感なく機能している。
 もう一桁上の数でこいと思えてしまう。
「自惚れないようにはしないとな。したらそこで技が腐る」
 息も乱さず、残りの敵へ向かった。

●歪虚CAMの最期
 ポロウがほぅと鳴いた。
 決して大きくはないが鋭い力が現実をわずかに曲げて結界を完成させる。
 戦闘動作は工場出荷状態のデュミナスそのままの歪虚CAMが混乱する。
 必要な射撃諸元が集まらない。
 素早い行動が最優先なため不十分なまま射撃を余儀なくされ、距離もあったせいで目標に当たりかける確率も3割を切っていた。
「さて、死地だが……まぁ、死なん程度にやるか」
 メンカル(ka5338)は気配を消した。
 敵が逃げずにこちらに向かって来るなら、危険なガウスジェイルを使う必要は無い。
 マテリアルのオーラ歪虚の認識から外れたまま歩み寄り、ひたすら大きなブースターに一撃ずつ剣を叩き込んでいく。
 このまま一撃ずつ入れた後アルトあたりに任せればその時点で依頼が完了しそうだが、メンカルには依頼達成と同様以上に重視する事柄があった。
「ふーむ、ちょっとダーリン側の来賓者が多いのであるー」
 黒い女がきょろきょろ周囲を見回している。
 無傷の竜2体が向かい合っているが緊張を隠せていない。
 白兵戦であれば単独でも仕留める自信はある。
 しかしこの、魂が軋むほどの恐怖は何なのだろうか。
「ご祝儀は汝達の魂? お肉? そっか!だから此処は墓地なのな!」
 童女の様な微笑みで艶やかな声を奏でる。
 竜達は覚悟を決め、一欠片の油断も無く距離をとったまま散弾ブレスを放つ。
 黒の夢(ka0187)がくるくると回る。
 黒い飛龍が頑張ってバレルロールを行い、凶悪な命中率を誇るブレスをなんとか回避する。
「大丈夫よ大丈夫、我輩好き嫌いは少ないの」
 歌うような声で朗らかに笑う。
 美しい黒肌に金の呪文が踊り、やや負に傾いたマテリアルが背中から翼のように伸びる。
「あ、でも機械にお肉はないのな……飾りにいいかな」
 殺気。
 燃え上がる正と負のマテリアル。
 そして発動のタイミングで安定した足場に着地したワイバーン。
 全てが噛み合い、巨体ほど回避し辛い巨大な炎が戦場を覆う。
 そのタイミングでメンカルが竜翼1つを切り裂いていたことに、焼かれる竜自身も気付けなかった。
「やりたいことがあるんだな? 存分にやるといい。足を引っ張らんようにだけ気を付けるさ」
 惚れた弱みだなと内心ぼやきながら、メンカルは淡々とゲリラ的な攻撃を繰り返す。
 さすがに竜達は気付いた。
 しかし威力は高くない彼よりも黒の夢に脅威を感じているため、メンカルへの対応は歪虚CAMに任せきってしまう。
 この時点で勝敗は確定した。
 勝つか逃げるつもりがあるなら、他の全てより優先して彼を殺すべきだったのだ。
「ねーえ、それからCAMが新しく生まれるの? それとも継ぎ足してるの?」
 防御面ではワイバーンが頑張っているため、竜2体がどれだけ頑張っても黒の夢の命には届かない。
「あら意地悪ね」
 爪による斬撃。
 ワイバーンの鱗と黒の夢の血と皮膚が飛び散る。
 駆け出しの術者であれば即死しただろうが、百戦錬磨な彼女にとってはちょっと痛い程度だ。
「でも――結婚式を挙げるまで……少なくとも此処は、まだ我輩の死に場所ではないから大丈夫」
 メンカルが無言で刃を振り下ろす。
 精妙な動きを助けるための翼が裂かれ、大きく体勢を崩した爆撃の直撃を浴びた。
 致命の一撃であった。
 ちょうど内蔵を押し潰す形になり、最期のブレスもメンカルの打撃により無意味な場所へと誘導される。
「あっ」
 欲求に逆らえずに黒の夢が跳躍。
 一瞬困惑した竜の背に乗った半秒後に振り払われ打撲傷を受けつつ地面で受け身をとる。
「うぐぐ……ダーリン以外の負のマテリアルなんかに負けない! もー! ダーリンのは気持ちいいのに!!」
「何ガドウナッテイル」
 殺意も戦意もそのままに、竜は痴情のもつれを疑い混乱した。
 黒の夢の微笑みは途絶えない。
 救済とは己の我が胎に収まる事。
 永く生きる我の中にあるのが最も安全。
 故に。
「いっしょにいて?」
 暴虐に押し潰された竜のマテリアルが、黒の夢へと漂っていった。
 1分後。
 メンカルは安全な……紛れ当たりに紛れ当たりが重ならない限り壊れそうにない小屋に黒の夢を放り込んだ。
 いくら高位覚醒者でもあれだけ無茶をすれば重体になる。黒の夢は素直に従いのんびり寛ぐ。
「ペインだったか。余力があるなら協力しろ」
 うなずくワイバーンは少し安堵しているようにも見えた。
 数十機の歪虚CAMかポロウ1羽にほぼ無力化されている。
 アルト達が竜を仕留めて対処を始めたので、全滅まで時間はかからないだろう。
 敵が逃げなければ、だが。
「全く……俺も堅い方じゃないんだ、あまり無茶をさせるな」
 ガウスジェイルによる結界を展開する。
 追撃に耐えるために密集隊形を保ったまま逃げようとしていたデュミナス達が、押し合いへし合いしながらメンカルへ向き直り突進する。
 彼では極短時間耐えることしかできない。
 せめて盾でも持ったいればましだったのだが、攻撃力を優先したため槍と投擲用武器しか持っていないのだ。
 瞬く間に傷つき血が流れる。
 その間、ガウスジェイルの効果範囲外の歪虚CAMが逃げようとするが槍でブースターを壊されているので飛べず低速で走るしかない。
「まぁ、体を張るのはいつもの事だ」
 増援が到着する。
 瞬く間に蹂躙されていく歪虚を眺め、メンカルは薄く笑うのだった。

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  • 黒竜との冥契
    黒の夢ka0187
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバラインka6752

参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ペイン
    ペイン(ka0187unit004
    ユニット|幻獣
  • 双璧の盾
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    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
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    ムメイ
    無銘(ka0510unit003
    ユニット|CAM
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    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
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    ユニット|CAM
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    倶利伽羅(ka3054unit001
    ユニット|幻獣
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    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
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    ユニット|自動兵器
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    人間(紅)|21才|女性|疾影士
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    ジュリア
    ジュリア(ka3109unit003
    ユニット|幻獣
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    久我・御言(ka4137
    人間(蒼)|21才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ゲッコウ
    月光(ka4137unit004
    ユニット|CAM
  • 胃痛領主
    メンカル(ka5338
    人間(紅)|26才|男性|疾影士
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    エーギル
    エーギル(ka5338unit003
    ユニット|幻獣
  • 灯光に託す鎮魂歌
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    人間(紅)|18才|女性|聖導士
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    人間(紅)|26才|男性|格闘士
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マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
八原 篝(ka3104
人間(リアルブルー)|19才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2019/02/24 13:50:48
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/23 11:55:38
アイコン 相談卓
リリティア・オルベール(ka3054
人間(リアルブルー)|19才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2019/02/27 01:34:50