ゲスト
(ka0000)
【東幕】我が成すことは我のみぞ知る
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/03/13 19:00
- 完成日
- 2019/03/15 20:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
天ノ都に残された傷跡は、あまりにも大きかった。
幕府や朝廷の一部は破壊、要人も殺害。
更には立花院 紫草(kz0126)の安否が不明となっていた。
狐卯猾討伐の失敗。
だが、それでも諦める訳にはいかない。
帝スメラギ(kz0158)は、幕府と朝廷に残された戦力に加え、諸国への救援を打診。
ゲートを開く適切な場所として憤怒本陣を選んだ狐卯猾に、改めて討伐の命を下した。
東方に未来や新政府は後で語ればいい。
今は邪神召喚を目論む狐卯猾の野望を打ち砕く。
「敵もやりおるわ。あそこまで都を叩かれたなら、幕府も朝廷もあるまいて」
三条家軍師、水野 武徳(kz0196)はこの戦いが最後の機会だと考えていた。
幕府の主力が欠けば、今後東方の統治に影響は出る。それでもスメラギは地方への救援を求めた。歪虚は討ち果たさなければ、東方だけではなく世界が滅ぶ。
帝の呼び掛けに多くの諸国が動く結果となった。
「此度の策では真美様の結界で封じて敵の逃げ場を封じる、か」
武徳はスメラギが立てた策を思い返す。
狐卯猾を憤怒本陣へ封じ込め、一気に狐卯猾を叩く。スメラギらしい、『真っ直ぐ』な策だ。
「この戦に真美様も出陣されておる。戦に勝利すれば国内外に詩天に九代目ありと示せる上、この先に議会での発言力も変わるな」
捕らぬ狸の皮算用。
後が無い戦いでも、武徳は虎視眈々と機会を伺う。詩天を存続させる為にも、この戦いは決して負けられない。
「敵は憤怒本陣へと目指すはず。我らは敵の増援を阻止するのが目的。
……ヨアキム殿!」
「おう! こっちの準備は出来てるぜ!」
武徳の呼び掛けにヨアキム(kz0011)は答えた。
天ノ都や恵土城へ逃れた民は泰山龍鳴寺の武僧や楠木 香(kz0140)、ピリカ部隊とテルル(kz0218)が救援と護衛を行っている。
武徳は詩天と連合軍より送り込まれたヨアキムと共に憤怒本陣付近へと布陣してきた。攻め寄る増援を阻止する為だ。
「ロックワンバスターは壊れちまったけど、改良型の漢気全開機導砲は問題ねぇ。QSエンジンも絶好調だ!」
ヨアキムの傍らにあるのは大型の機導砲。
かつて辺境の巨人達を砲撃してきた大型機導砲でマテリアルを推進力へ変換。大岩を遠くまで発射していた。
今回の改良でQSエンジンを搭載する事でチャージ時間を短縮する事に成功していた。
「うむ。荒れ地と化している憤怒本陣故、敵は真っ直ぐに目標に向かって動くはずじゃ。憤怒本陣前に簡易の出城をこさえ、左翼から砲撃を仕掛ける。更に右翼からはワシが鉄砲隊を指揮して砲撃の合間を繋ぐ」
武徳の立てた策はこうだ。
荒れ地であろうとも、目標は一つ。憤怒本陣へ向かうと思われる高台に簡素な出城を形成。敵から見て左翼にヨアキムの機導砲が遠距離から砲撃。次の砲撃が始まるまでの間、武徳が指揮する右翼の鉄砲隊が一斉射撃。
この攻撃を数度繰り返して敵が疲弊した所をハンターを含む騎馬隊、足軽隊が突撃する手筈だ。
「敵を逃せば、必ずや詩天様のご負担になる。一人残らず討ち取るのじゃ!」
武徳の命に呼応して、兵士達が高らかに声を上げる。
士気も悪くない。
真美が健在な限り、ここで相応の戦火は期待できるだろう。
「ところで……」
武徳はヨアキムへ振り返った。
「ヨアキム殿の珍妙な姿は何じゃ?」
「これか? これはワシが開発したRX19-02『GAM強化コーティング』だ!」
それはヨアキムがCAMや魔導アーマーをよく知らない時代に製造した自称決戦兵器。
ショッキングピンクの騎士用鎧甲冑で、肩に装着したマントには『魔道海女』と書かれている。胸の部分にはデカデカと黒く太い文字で『GAM』と書かれている。
外見からセンスゼロの甲冑だが、ローラーダッシュも可能な推進力を誇る。残念なのは着用しているのがヨアキムである為、操縦系に大きな難がある。
「今回は東方で発見したくさや汁でGAMをコーティングしてみたぜ。臭いで奴らをビビらせてからぶん殴る。接近戦になったら、ワシがコイツで出撃するぞ」
「冷や酒が飲みたくなる臭いがすると思ったら、それのせいか。しかし、西方の兵器とは変わっておるのう」
ヨアキムを前に武徳は思い切り首を傾げた。
幕府や朝廷の一部は破壊、要人も殺害。
更には立花院 紫草(kz0126)の安否が不明となっていた。
狐卯猾討伐の失敗。
だが、それでも諦める訳にはいかない。
帝スメラギ(kz0158)は、幕府と朝廷に残された戦力に加え、諸国への救援を打診。
ゲートを開く適切な場所として憤怒本陣を選んだ狐卯猾に、改めて討伐の命を下した。
東方に未来や新政府は後で語ればいい。
今は邪神召喚を目論む狐卯猾の野望を打ち砕く。
「敵もやりおるわ。あそこまで都を叩かれたなら、幕府も朝廷もあるまいて」
三条家軍師、水野 武徳(kz0196)はこの戦いが最後の機会だと考えていた。
幕府の主力が欠けば、今後東方の統治に影響は出る。それでもスメラギは地方への救援を求めた。歪虚は討ち果たさなければ、東方だけではなく世界が滅ぶ。
帝の呼び掛けに多くの諸国が動く結果となった。
「此度の策では真美様の結界で封じて敵の逃げ場を封じる、か」
武徳はスメラギが立てた策を思い返す。
狐卯猾を憤怒本陣へ封じ込め、一気に狐卯猾を叩く。スメラギらしい、『真っ直ぐ』な策だ。
「この戦に真美様も出陣されておる。戦に勝利すれば国内外に詩天に九代目ありと示せる上、この先に議会での発言力も変わるな」
捕らぬ狸の皮算用。
後が無い戦いでも、武徳は虎視眈々と機会を伺う。詩天を存続させる為にも、この戦いは決して負けられない。
「敵は憤怒本陣へと目指すはず。我らは敵の増援を阻止するのが目的。
……ヨアキム殿!」
「おう! こっちの準備は出来てるぜ!」
武徳の呼び掛けにヨアキム(kz0011)は答えた。
天ノ都や恵土城へ逃れた民は泰山龍鳴寺の武僧や楠木 香(kz0140)、ピリカ部隊とテルル(kz0218)が救援と護衛を行っている。
武徳は詩天と連合軍より送り込まれたヨアキムと共に憤怒本陣付近へと布陣してきた。攻め寄る増援を阻止する為だ。
「ロックワンバスターは壊れちまったけど、改良型の漢気全開機導砲は問題ねぇ。QSエンジンも絶好調だ!」
ヨアキムの傍らにあるのは大型の機導砲。
かつて辺境の巨人達を砲撃してきた大型機導砲でマテリアルを推進力へ変換。大岩を遠くまで発射していた。
今回の改良でQSエンジンを搭載する事でチャージ時間を短縮する事に成功していた。
「うむ。荒れ地と化している憤怒本陣故、敵は真っ直ぐに目標に向かって動くはずじゃ。憤怒本陣前に簡易の出城をこさえ、左翼から砲撃を仕掛ける。更に右翼からはワシが鉄砲隊を指揮して砲撃の合間を繋ぐ」
武徳の立てた策はこうだ。
荒れ地であろうとも、目標は一つ。憤怒本陣へ向かうと思われる高台に簡素な出城を形成。敵から見て左翼にヨアキムの機導砲が遠距離から砲撃。次の砲撃が始まるまでの間、武徳が指揮する右翼の鉄砲隊が一斉射撃。
この攻撃を数度繰り返して敵が疲弊した所をハンターを含む騎馬隊、足軽隊が突撃する手筈だ。
「敵を逃せば、必ずや詩天様のご負担になる。一人残らず討ち取るのじゃ!」
武徳の命に呼応して、兵士達が高らかに声を上げる。
士気も悪くない。
真美が健在な限り、ここで相応の戦火は期待できるだろう。
「ところで……」
武徳はヨアキムへ振り返った。
「ヨアキム殿の珍妙な姿は何じゃ?」
「これか? これはワシが開発したRX19-02『GAM強化コーティング』だ!」
それはヨアキムがCAMや魔導アーマーをよく知らない時代に製造した自称決戦兵器。
ショッキングピンクの騎士用鎧甲冑で、肩に装着したマントには『魔道海女』と書かれている。胸の部分にはデカデカと黒く太い文字で『GAM』と書かれている。
外見からセンスゼロの甲冑だが、ローラーダッシュも可能な推進力を誇る。残念なのは着用しているのがヨアキムである為、操縦系に大きな難がある。
「今回は東方で発見したくさや汁でGAMをコーティングしてみたぜ。臭いで奴らをビビらせてからぶん殴る。接近戦になったら、ワシがコイツで出撃するぞ」
「冷や酒が飲みたくなる臭いがすると思ったら、それのせいか。しかし、西方の兵器とは変わっておるのう」
ヨアキムを前に武徳は思い切り首を傾げた。
リプレイ本文
「有象無象が斯様に揃い居って……醜悪でしか無いのう」
憤怒本陣へ向かうの荒野を前に蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、煙管「昔花」を片手に煙を燻らせる。
眼前に広がる一団はすべて歪虚の群れ。
餓鬼や骸骨武者が荒野を埋め付くさんばかりに突き進む。向かう先は狐卯猾がいる憤怒本陣。
狐卯猾討伐を妨害したいのか。
それとも狐卯猾に引かれたのか。
いずれにしても憤怒本陣は九代目詩天、三条 真美(kz0198)が結界を張っている最中。万一があれば、狐卯猾討伐失敗の可能性もある。少しでも憤怒本陣へ向かう歪虚達を討伐するのが、ハンター達の任務であった。
「……ところで、ヨアキムはドワーフ王であろ? 何故に斯様な異臭を放っておるのじゃ?」
ルージュは袖で口元を覆う。
その異臭の原因は数メートル先にいる辺境ドワーフの王ヨアキム(kz0011)であった。
連合軍からの要請を受けて東方を支援するヨアキムは、漢気全開機導砲で砲弾を撃ち出して歪虚の迎撃を開始。それは作戦通りなのだが、ヨアキムの着るショッキングピンクの甲冑から腐臭の香りが漂っているのだ。
「そりゃおめぇ、対歪虚用くさやコーティングをGAMに施したからな」
豪快な笑い声を上げるヨアキム。
ヨアキムが開発したRX19-02『GAM強化コーティング』は、東方で発見したくさやの汁を甲冑に塗っている。この為、周囲に腐臭が漂い、周囲にいたハンターには良い迷惑である。
「敵をビビらせるつもりで塗ったんだが、協力過ぎて味方にまで被害を出しちまったな」
「……うう、ちょっと辛いです」
ヨアキムから離れた位置でシルヴィア・オーウェン(ka6372)は、ヨアキムを一瞥する。
思うところがあって今回の迎撃戦に参戦したのだが、漢臭い男性が苦手なシルヴィアにとってヨアキムのGAMは公害その物。戦意を削がれる事請け合いな為、可能な限り距離を取っている。
「悪ぃな嬢ちゃん。今度は強化の仕方を考えるからよ」
「わ、分かりましたから近づかないで下さい」
近寄ってくるヨアキムをシルヴィアは必死で避ける。
ちょうど良いタイミングで砲弾のチャージが必要となるアラームが鳴った。
「お。QSエンジンの交換時間か」
ヨアキムは機導砲側面に装備されたQSエンジンを手早く交換し始める。
QSエンジンは内部に小型幻獣『キュウソ』が歯車を回す仕組みで、それをマテリアル変換している。一定時間の休憩を挟む必要があり、エンジン交換中は無防備となる。
それに呼応するかのように鉄砲隊が射撃を開始する。
「始まったようじゃな。では、こちらも」
鉄砲隊近くへ布陣したハンター達も攻撃を開始。
それを目視したルージュは攻撃へ参加するべく詠唱を開始する。
「彼方目指す蔓……」
集中力を高めながら、言葉が紡がれていく。
切って落とされた火蓋は、未だ焦臭い香りを放っていた。
●
「おっちゃん、まだか?」
「まだじゃな」
「……なあ、おっちゃん。もう行っていいか?」
「まだ早いな」
「早く早く早くぅ! ハリーハリーハリー!」
鉄砲隊が後退しながら銃撃を繰り返す最中、水野 武徳(kz0196)はゾファル・G・初火(ka4407)は我慢の限界が近づきつつあった。
死地へ飛び込んでいく事を至上とするゾファルにとって戦闘中の待機は我慢以外の何物でもない。今からでも戦地へ飛び込んで大暴れしたいのだが、武徳の作戦を壊す訳にもいかず、唇を噛み締めて必死で我慢している。
その少し先ではルージュの動きを見据えながら、メテオスウォームで押し寄せる敵を迎撃するエルバッハ・リオン(ka2434)の姿があった。
「いきます」
頭上に生まれた燃え盛る火球を、リオンは敵陣に向けて次々と落下させる。
爆炎に巻き込まれる多数の歪虚。餓鬼や骸骨武者は次々と炎の前に倒れていく。
「乱戦になった場合、敵味方の識別ができない種類の範囲攻撃スキルはやはり使いにくいです。初撃と二撃目に使うのは正解でした」
リオンはこの後の作戦で突撃が実施される事を見越して、鉄砲隊の攻撃タイミングに合わせてメテオスウォームによる迎撃を開始した。
味方を巻き込む可能性を排除して可能な限りダメージを与える作戦としては申し分ない。
ふとリオンは機導砲のある陣へ目を向ける。
そこではルージュの晦が敵陣に向けて放たれた瞬間だった。突撃前から確実に敵の戦力を減している。
「しかし、あれですな」
鉄砲隊に指示を出していた武徳の傍らでGacrux(ka2726)が声をかける。
「戦争とは、個々人の思惑が入り交じるようで。潔癖である程、自分を苦しめるようです」
Gacruxは大きな戦が引き起こされた東方において武徳に野心を感じ取っていた。
この状況に乗じて自らの野心に根ざした行動を引き起こす。
それは反乱か。それとも下剋上か。
一方、武徳は――。
「当然じゃ。戦の流れを読み、その流れに乗じて有効な手を打つ。
そうでなければ、この東方で生き残る事は不可能じゃ」
「生き残る?」
「お主等は知らぬであろうが、幕府が力を持つ前はこの辺も群雄割拠よ。いつ寝首をかかれるか分からん。詩天もこの間まで大きな戦があったからのう」
武徳の言葉にGacruxは心当たりがあった。
千石原の乱。真美と叔父が三条家を二分して戦った戦だ。古い将である武徳は、そうした長い戦乱で培った生き方を貫いているに過ぎない。
「ふん、わしに言わせれば生きる事に無頓着な者達の方が間抜けよ。お主も聖人君子を志す訳ではあるまい?」
「ええ。俺とて、正しい人間でありたいとは思いますよ。俺の欲は、女でしょうね」
「ならちと厄介じゃぞ。それはそう簡単には治らん」
Gacruxは肩を竦めて見せる。
武徳が真美に仕えている間は下手な事はしなそうだ。言い換えれば真美や三条家に手を出せば武徳が何をしでかすか分かった物ではない。
そんなGacruxとは別の意見を持つ者もいる。
「英雄よりも梟雄奸雄の方が人間味に溢れて面白い。そう思いませんか、水野様」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は、武徳に向かってはっきりとそう言い切った。
乱世の奸雄。
まるで武徳がそうであるかのような言い方であるが、決して貶している訳ではない。
「まあ、否定はせん。わしは英雄ではないからな」
「水野様。鉄砲は女子供でも使えます。練度や士気が低くても、敵の侵攻を食い止められるだけの柵を建て、多段撃ちで使えばそれなりの効果を上げられます。その分、変則的に有効活用しようと思うならば、移動しながらの弾込めや陣の維持変形などの修練が必要です」
ハンスは敢えて鉄砲の運用について武徳へ話した。
機導砲の合間に鉄砲を撃つのは良いが、餓鬼の大群が鉄砲隊へ押し寄せれば雑魔の餌になりかねない。事実、機導砲よりも鉄砲隊の方が歪虚からすれば近づきやすい。
「不安を抱くか。まあ、そうじゃろうな。
じゃが、この鉄砲隊のおかげで敵はまんまと前へ釣り出されおったわ」
武徳が指し示す先には鉄砲隊の陣を前に歪虚の群れが押し寄せていた。
機導砲の轟音に対して鉄砲隊の火力は低い。必然的に残った歪虚が火力の低い鉄砲隊の前へ集結していた。
「ここを騎馬隊と歩兵が蹂躙すれば良い。バラバラに憤怒本陣を目指す敵を叩くよりは容易であろう?」
「ですが、水野様の身が危険に晒されます。詩天様に亡くなられても困りますが、ここで水野様に亡くなられても困ります」
ハンスは武徳が自らの囮にしていた事に気付いた。
多数の歪虚を前に囮にするなど自殺行為。
しかし、武徳はあっさりと言ってのける。
「そこは織り込み済みよ。おぬしらハンターがおるのじゃ。下手な武将よりも各段に戦働きをしてくれよう」
●
シルヴィアが東方の戦いに参戦したのには理由がある。
天ノ都の戦いで友人の大切な人が散ったのだ。
友人の口から何かを聞いた訳ではない。だが、友人と大切な人の仲は周知の事実。友人の落ち込む様を、シルヴィアは見ていられなかった。
「戦ゆえ、仕方の無い事かとは思います。ですが、その想い誰かが受け継ぎ、果たさなければなりません」
シルヴィアは友の代わりに東方へ赴いた。
今は動けぬ友の想いを果たす為。
誰かの力になる為に家を飛び出し、富も名声も捨てたシルヴィアとして戦いへ赴く。
「鉄砲隊側の皆さんは迎撃をお願いします。こちらは敵の側面から強襲を仕掛けます」
武徳の狙いもあったのだろう。
敵は機導砲が届かない距離へ到達する頃には鉄砲隊の陣へ多く押し寄せていた。
「敵陣の一番厚い場所へ……突貫します」
納刀した状態で敵陣へ接近するシルヴィア。
接近に気付いた骸骨兵士が刀をシルヴィアへ振り下ろす。
この攻撃に合わせてグレートソード「エアリアル」を鞘から抜き放ったシルヴィアは、高速の抜刀術。骸骨兵士へ一刀を叩き込む。
そこから大きく踏み込み、強烈な突きを手近な餓鬼へと放つ。
「国を守る為に散った武士達も、自らの国を脅かしては無念でしょう……ここで、終わらせてあげます」
一方、ルージュは魔箒「Shooting Star」に乗ってシルヴィアの後方から支援を開始する。
「鉄砲隊は囮かえ? 危ないやり方じゃが、おかげで敵は塊になってくれたのう」
一団からはぐれた餓鬼を上空から雷霆で攻撃するルージュ。
可能な限り敵を一つにまとめながら、シルヴィアを後方から攻撃しようとする歪虚を駆逐するのが目的だ。
だが、ルージュには更なる目的があった。
「こちらの攻撃に気付いてくれれば、鉄砲隊の陣で仲間も反撃しやすかろう。
さて……」
ルージュは魔導パイロットインカムを通して仲間へ通信を始める。
上空にいる分、戦況を把握しやすい。シルヴィアが敵陣の側面を突いて混乱を引き起こしている隙に、仲間が騎馬隊で討って出るタイミングを打診するのだ。
「頭を垂れ、地に縋るが良い……それでも妾は、貴様等を許しはせぬ」
●
「騎馬隊、突撃開始じゃ。敵を蹂躙せい!」
武徳が号令を発すると同時に、鉄砲隊の陣後方から出発した騎馬隊が敵の群れへと襲い掛かる。
戦馬へ跨がったリオンは、仲間の騎馬と動きを合わせながら敵陣へ鋭く食い込んだ。
「深入りしないように注意して下さい。単独での行動は敵に狙われやすくなります」
戦馬の上からライトニングボルトを放つリオン。
一直線上に貫く電撃が、次々と歪虚を巻き込んでいく。
しかし、リオンは振り返ること無く騎馬を前へと走らせる。
敵陣を引き裂いて可能な限り敵を倒す。
今はその事に集中する時だ。
「うぉぉぉぉ!」
リオンの直ぐ脇ではヨアキムがGAMで敵に殴りかかっている。ショッキングピンクという異様な色は戦場でも無駄に目立つ。おそらく敵の注意を惹きつける効果があるのだろう。周辺の歪虚がヨアキムへ引き寄せられている。
「王に何を言っても無駄でしょうか。仕方ありません」
リオンは敵陣を抜けた後、ヨアキム救援に向けて再び突撃を開始した。
Gacruxもエクウスに乗って騎馬隊の中にあった。
エクウスが突撃する直前、Gacruxは腕に巻かれたリボンに視線を移した。
風になびくリボン。
そのリボンに込められた想いがそうさせたのか、『彼女』が共に騎馬で戦っている感覚。
錯覚か。
幻覚か。
それでもいい。
この感覚が、Gacruxの背中を更に押してくれる。
「さぁ、共に行きましょう。
――導きの星よ。俺達に道を示し給え」
敵陣に突貫したGacruxは、蒼機槍「ラナンキュラス」による連撃を繰り出す。
エクウスの勢いに乗じて放たれた強烈な突きが、瞬く間に骸骨兵士を葬り去る。
突撃した騎馬は敵陣を通り抜けた後、旋回して再び敵陣へ襲い掛かる。
気付けば敵陣は乱れ、混乱を引き起こしている。
さらに、この流れに乗じて敵陣へ別方向から突撃を敢行する者もいた。
「おっちゃん、死ぬなよぉぉぉ!」
ゾファルは弾けるが如く、単身で敵陣深くに突き刺さる。
我慢し続けたゾファルに突撃指示が出たのだ。今までの鬱憤を晴らすかのように雑魚を無視して進んでいく。
「これだけの敵陣じゃん。絶対、指揮官がいるはずじゃん」
ゾファルは闇雲に突っ込んだ訳ではなかった。
これだけの集団を憤怒本陣へ導くのであれば、必ず集団の中に指揮する存在がいるはずだ。特に中間の指揮官がいなければ細部にまで指示を出す事ができない。
ゾファルはその指揮官の撃破を狙っていた。
「あいつじゃん?」
ゾファルの視界に入ったのは、甲冑姿の骸骨武者。他の骸骨武者よりも豪華で頑丈そうな鎧を身につけている。ゾファルが武神到来拳「富貴花」を叩き込むには充分な相手だ。
「行くじゃん!」
直線上に指揮官を捉えたゾファルは、マテリアルを投擲。
敵がマテリアルを防ぐ隙に、敵を掻き分けて一気に間合いを詰める。
奥技「エアーマンは倒せない」で桜吹雪の幻影を起こして指揮官と周辺の敵を巻き込んでいく。
突如発生した桜吹雪に周辺の歪虚が一瞬怯む。その隙をついたゾファルが指揮官周辺の骸骨武者に対して素早い連撃を叩き込んでいく。
「俺様ちゃんに死地を見せてみろじゃん!」
「やれやれ。水野様も無茶をされます」
ハンスは鉄砲隊の前に立って陣を防衛していた。
ハンターを当てにして自らを囮にした武徳の尻拭いだが、頼られる事に悪い気はしていない。
陣に近づく餓鬼に対してハンスは聖罰刃「ターミナー・レイ」による次元斬を叩き込む。数体の餓鬼がまとめて斬られ、あっさりと地面に転がっていく。
「まあ、そう申すな。詩天様のお役に立つのは当然だが、前線で相応の戦果を上げねば今後に影響するのでな」
ハンスの後方には武徳。
既にルージュからも敵の群れは崩壊寸前だという連絡が入っている。圧倒的な戦力を持って敵の撃破を確信しているが、このまま手を緩める気はない。
「戦後の事をお考えでしたか」
「うむ。議会が始まるまで10年も待っておれん。この状況で幕府と朝廷をそのまま復興させる事もなかろう。詩天の存在を天下に示すには絶好の機会よ」
「帝をいただいて早々に新たな政治体制を模索、ですか」
「不要な血が無駄に流れたとせん為にも、生き残った者が新たな時代を築くしかあるまい」
武徳はそう呟いた。
奸雄と言われようとも、詩天を支える腹づもり。その為には、自分が如何に悪く言われようとも構わない。
「ハンター達に伝令。一匹残らず敵を蹂躙。この圧倒的勝利を……先の戦いで命を落とした者達の弔いとするのじゃ」
武徳は、勝利が確定した戦場で伝令にそう指示を出した。
憤怒本陣へ向かうの荒野を前に蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、煙管「昔花」を片手に煙を燻らせる。
眼前に広がる一団はすべて歪虚の群れ。
餓鬼や骸骨武者が荒野を埋め付くさんばかりに突き進む。向かう先は狐卯猾がいる憤怒本陣。
狐卯猾討伐を妨害したいのか。
それとも狐卯猾に引かれたのか。
いずれにしても憤怒本陣は九代目詩天、三条 真美(kz0198)が結界を張っている最中。万一があれば、狐卯猾討伐失敗の可能性もある。少しでも憤怒本陣へ向かう歪虚達を討伐するのが、ハンター達の任務であった。
「……ところで、ヨアキムはドワーフ王であろ? 何故に斯様な異臭を放っておるのじゃ?」
ルージュは袖で口元を覆う。
その異臭の原因は数メートル先にいる辺境ドワーフの王ヨアキム(kz0011)であった。
連合軍からの要請を受けて東方を支援するヨアキムは、漢気全開機導砲で砲弾を撃ち出して歪虚の迎撃を開始。それは作戦通りなのだが、ヨアキムの着るショッキングピンクの甲冑から腐臭の香りが漂っているのだ。
「そりゃおめぇ、対歪虚用くさやコーティングをGAMに施したからな」
豪快な笑い声を上げるヨアキム。
ヨアキムが開発したRX19-02『GAM強化コーティング』は、東方で発見したくさやの汁を甲冑に塗っている。この為、周囲に腐臭が漂い、周囲にいたハンターには良い迷惑である。
「敵をビビらせるつもりで塗ったんだが、協力過ぎて味方にまで被害を出しちまったな」
「……うう、ちょっと辛いです」
ヨアキムから離れた位置でシルヴィア・オーウェン(ka6372)は、ヨアキムを一瞥する。
思うところがあって今回の迎撃戦に参戦したのだが、漢臭い男性が苦手なシルヴィアにとってヨアキムのGAMは公害その物。戦意を削がれる事請け合いな為、可能な限り距離を取っている。
「悪ぃな嬢ちゃん。今度は強化の仕方を考えるからよ」
「わ、分かりましたから近づかないで下さい」
近寄ってくるヨアキムをシルヴィアは必死で避ける。
ちょうど良いタイミングで砲弾のチャージが必要となるアラームが鳴った。
「お。QSエンジンの交換時間か」
ヨアキムは機導砲側面に装備されたQSエンジンを手早く交換し始める。
QSエンジンは内部に小型幻獣『キュウソ』が歯車を回す仕組みで、それをマテリアル変換している。一定時間の休憩を挟む必要があり、エンジン交換中は無防備となる。
それに呼応するかのように鉄砲隊が射撃を開始する。
「始まったようじゃな。では、こちらも」
鉄砲隊近くへ布陣したハンター達も攻撃を開始。
それを目視したルージュは攻撃へ参加するべく詠唱を開始する。
「彼方目指す蔓……」
集中力を高めながら、言葉が紡がれていく。
切って落とされた火蓋は、未だ焦臭い香りを放っていた。
●
「おっちゃん、まだか?」
「まだじゃな」
「……なあ、おっちゃん。もう行っていいか?」
「まだ早いな」
「早く早く早くぅ! ハリーハリーハリー!」
鉄砲隊が後退しながら銃撃を繰り返す最中、水野 武徳(kz0196)はゾファル・G・初火(ka4407)は我慢の限界が近づきつつあった。
死地へ飛び込んでいく事を至上とするゾファルにとって戦闘中の待機は我慢以外の何物でもない。今からでも戦地へ飛び込んで大暴れしたいのだが、武徳の作戦を壊す訳にもいかず、唇を噛み締めて必死で我慢している。
その少し先ではルージュの動きを見据えながら、メテオスウォームで押し寄せる敵を迎撃するエルバッハ・リオン(ka2434)の姿があった。
「いきます」
頭上に生まれた燃え盛る火球を、リオンは敵陣に向けて次々と落下させる。
爆炎に巻き込まれる多数の歪虚。餓鬼や骸骨武者は次々と炎の前に倒れていく。
「乱戦になった場合、敵味方の識別ができない種類の範囲攻撃スキルはやはり使いにくいです。初撃と二撃目に使うのは正解でした」
リオンはこの後の作戦で突撃が実施される事を見越して、鉄砲隊の攻撃タイミングに合わせてメテオスウォームによる迎撃を開始した。
味方を巻き込む可能性を排除して可能な限りダメージを与える作戦としては申し分ない。
ふとリオンは機導砲のある陣へ目を向ける。
そこではルージュの晦が敵陣に向けて放たれた瞬間だった。突撃前から確実に敵の戦力を減している。
「しかし、あれですな」
鉄砲隊に指示を出していた武徳の傍らでGacrux(ka2726)が声をかける。
「戦争とは、個々人の思惑が入り交じるようで。潔癖である程、自分を苦しめるようです」
Gacruxは大きな戦が引き起こされた東方において武徳に野心を感じ取っていた。
この状況に乗じて自らの野心に根ざした行動を引き起こす。
それは反乱か。それとも下剋上か。
一方、武徳は――。
「当然じゃ。戦の流れを読み、その流れに乗じて有効な手を打つ。
そうでなければ、この東方で生き残る事は不可能じゃ」
「生き残る?」
「お主等は知らぬであろうが、幕府が力を持つ前はこの辺も群雄割拠よ。いつ寝首をかかれるか分からん。詩天もこの間まで大きな戦があったからのう」
武徳の言葉にGacruxは心当たりがあった。
千石原の乱。真美と叔父が三条家を二分して戦った戦だ。古い将である武徳は、そうした長い戦乱で培った生き方を貫いているに過ぎない。
「ふん、わしに言わせれば生きる事に無頓着な者達の方が間抜けよ。お主も聖人君子を志す訳ではあるまい?」
「ええ。俺とて、正しい人間でありたいとは思いますよ。俺の欲は、女でしょうね」
「ならちと厄介じゃぞ。それはそう簡単には治らん」
Gacruxは肩を竦めて見せる。
武徳が真美に仕えている間は下手な事はしなそうだ。言い換えれば真美や三条家に手を出せば武徳が何をしでかすか分かった物ではない。
そんなGacruxとは別の意見を持つ者もいる。
「英雄よりも梟雄奸雄の方が人間味に溢れて面白い。そう思いませんか、水野様」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は、武徳に向かってはっきりとそう言い切った。
乱世の奸雄。
まるで武徳がそうであるかのような言い方であるが、決して貶している訳ではない。
「まあ、否定はせん。わしは英雄ではないからな」
「水野様。鉄砲は女子供でも使えます。練度や士気が低くても、敵の侵攻を食い止められるだけの柵を建て、多段撃ちで使えばそれなりの効果を上げられます。その分、変則的に有効活用しようと思うならば、移動しながらの弾込めや陣の維持変形などの修練が必要です」
ハンスは敢えて鉄砲の運用について武徳へ話した。
機導砲の合間に鉄砲を撃つのは良いが、餓鬼の大群が鉄砲隊へ押し寄せれば雑魔の餌になりかねない。事実、機導砲よりも鉄砲隊の方が歪虚からすれば近づきやすい。
「不安を抱くか。まあ、そうじゃろうな。
じゃが、この鉄砲隊のおかげで敵はまんまと前へ釣り出されおったわ」
武徳が指し示す先には鉄砲隊の陣を前に歪虚の群れが押し寄せていた。
機導砲の轟音に対して鉄砲隊の火力は低い。必然的に残った歪虚が火力の低い鉄砲隊の前へ集結していた。
「ここを騎馬隊と歩兵が蹂躙すれば良い。バラバラに憤怒本陣を目指す敵を叩くよりは容易であろう?」
「ですが、水野様の身が危険に晒されます。詩天様に亡くなられても困りますが、ここで水野様に亡くなられても困ります」
ハンスは武徳が自らの囮にしていた事に気付いた。
多数の歪虚を前に囮にするなど自殺行為。
しかし、武徳はあっさりと言ってのける。
「そこは織り込み済みよ。おぬしらハンターがおるのじゃ。下手な武将よりも各段に戦働きをしてくれよう」
●
シルヴィアが東方の戦いに参戦したのには理由がある。
天ノ都の戦いで友人の大切な人が散ったのだ。
友人の口から何かを聞いた訳ではない。だが、友人と大切な人の仲は周知の事実。友人の落ち込む様を、シルヴィアは見ていられなかった。
「戦ゆえ、仕方の無い事かとは思います。ですが、その想い誰かが受け継ぎ、果たさなければなりません」
シルヴィアは友の代わりに東方へ赴いた。
今は動けぬ友の想いを果たす為。
誰かの力になる為に家を飛び出し、富も名声も捨てたシルヴィアとして戦いへ赴く。
「鉄砲隊側の皆さんは迎撃をお願いします。こちらは敵の側面から強襲を仕掛けます」
武徳の狙いもあったのだろう。
敵は機導砲が届かない距離へ到達する頃には鉄砲隊の陣へ多く押し寄せていた。
「敵陣の一番厚い場所へ……突貫します」
納刀した状態で敵陣へ接近するシルヴィア。
接近に気付いた骸骨兵士が刀をシルヴィアへ振り下ろす。
この攻撃に合わせてグレートソード「エアリアル」を鞘から抜き放ったシルヴィアは、高速の抜刀術。骸骨兵士へ一刀を叩き込む。
そこから大きく踏み込み、強烈な突きを手近な餓鬼へと放つ。
「国を守る為に散った武士達も、自らの国を脅かしては無念でしょう……ここで、終わらせてあげます」
一方、ルージュは魔箒「Shooting Star」に乗ってシルヴィアの後方から支援を開始する。
「鉄砲隊は囮かえ? 危ないやり方じゃが、おかげで敵は塊になってくれたのう」
一団からはぐれた餓鬼を上空から雷霆で攻撃するルージュ。
可能な限り敵を一つにまとめながら、シルヴィアを後方から攻撃しようとする歪虚を駆逐するのが目的だ。
だが、ルージュには更なる目的があった。
「こちらの攻撃に気付いてくれれば、鉄砲隊の陣で仲間も反撃しやすかろう。
さて……」
ルージュは魔導パイロットインカムを通して仲間へ通信を始める。
上空にいる分、戦況を把握しやすい。シルヴィアが敵陣の側面を突いて混乱を引き起こしている隙に、仲間が騎馬隊で討って出るタイミングを打診するのだ。
「頭を垂れ、地に縋るが良い……それでも妾は、貴様等を許しはせぬ」
●
「騎馬隊、突撃開始じゃ。敵を蹂躙せい!」
武徳が号令を発すると同時に、鉄砲隊の陣後方から出発した騎馬隊が敵の群れへと襲い掛かる。
戦馬へ跨がったリオンは、仲間の騎馬と動きを合わせながら敵陣へ鋭く食い込んだ。
「深入りしないように注意して下さい。単独での行動は敵に狙われやすくなります」
戦馬の上からライトニングボルトを放つリオン。
一直線上に貫く電撃が、次々と歪虚を巻き込んでいく。
しかし、リオンは振り返ること無く騎馬を前へと走らせる。
敵陣を引き裂いて可能な限り敵を倒す。
今はその事に集中する時だ。
「うぉぉぉぉ!」
リオンの直ぐ脇ではヨアキムがGAMで敵に殴りかかっている。ショッキングピンクという異様な色は戦場でも無駄に目立つ。おそらく敵の注意を惹きつける効果があるのだろう。周辺の歪虚がヨアキムへ引き寄せられている。
「王に何を言っても無駄でしょうか。仕方ありません」
リオンは敵陣を抜けた後、ヨアキム救援に向けて再び突撃を開始した。
Gacruxもエクウスに乗って騎馬隊の中にあった。
エクウスが突撃する直前、Gacruxは腕に巻かれたリボンに視線を移した。
風になびくリボン。
そのリボンに込められた想いがそうさせたのか、『彼女』が共に騎馬で戦っている感覚。
錯覚か。
幻覚か。
それでもいい。
この感覚が、Gacruxの背中を更に押してくれる。
「さぁ、共に行きましょう。
――導きの星よ。俺達に道を示し給え」
敵陣に突貫したGacruxは、蒼機槍「ラナンキュラス」による連撃を繰り出す。
エクウスの勢いに乗じて放たれた強烈な突きが、瞬く間に骸骨兵士を葬り去る。
突撃した騎馬は敵陣を通り抜けた後、旋回して再び敵陣へ襲い掛かる。
気付けば敵陣は乱れ、混乱を引き起こしている。
さらに、この流れに乗じて敵陣へ別方向から突撃を敢行する者もいた。
「おっちゃん、死ぬなよぉぉぉ!」
ゾファルは弾けるが如く、単身で敵陣深くに突き刺さる。
我慢し続けたゾファルに突撃指示が出たのだ。今までの鬱憤を晴らすかのように雑魚を無視して進んでいく。
「これだけの敵陣じゃん。絶対、指揮官がいるはずじゃん」
ゾファルは闇雲に突っ込んだ訳ではなかった。
これだけの集団を憤怒本陣へ導くのであれば、必ず集団の中に指揮する存在がいるはずだ。特に中間の指揮官がいなければ細部にまで指示を出す事ができない。
ゾファルはその指揮官の撃破を狙っていた。
「あいつじゃん?」
ゾファルの視界に入ったのは、甲冑姿の骸骨武者。他の骸骨武者よりも豪華で頑丈そうな鎧を身につけている。ゾファルが武神到来拳「富貴花」を叩き込むには充分な相手だ。
「行くじゃん!」
直線上に指揮官を捉えたゾファルは、マテリアルを投擲。
敵がマテリアルを防ぐ隙に、敵を掻き分けて一気に間合いを詰める。
奥技「エアーマンは倒せない」で桜吹雪の幻影を起こして指揮官と周辺の敵を巻き込んでいく。
突如発生した桜吹雪に周辺の歪虚が一瞬怯む。その隙をついたゾファルが指揮官周辺の骸骨武者に対して素早い連撃を叩き込んでいく。
「俺様ちゃんに死地を見せてみろじゃん!」
「やれやれ。水野様も無茶をされます」
ハンスは鉄砲隊の前に立って陣を防衛していた。
ハンターを当てにして自らを囮にした武徳の尻拭いだが、頼られる事に悪い気はしていない。
陣に近づく餓鬼に対してハンスは聖罰刃「ターミナー・レイ」による次元斬を叩き込む。数体の餓鬼がまとめて斬られ、あっさりと地面に転がっていく。
「まあ、そう申すな。詩天様のお役に立つのは当然だが、前線で相応の戦果を上げねば今後に影響するのでな」
ハンスの後方には武徳。
既にルージュからも敵の群れは崩壊寸前だという連絡が入っている。圧倒的な戦力を持って敵の撃破を確信しているが、このまま手を緩める気はない。
「戦後の事をお考えでしたか」
「うむ。議会が始まるまで10年も待っておれん。この状況で幕府と朝廷をそのまま復興させる事もなかろう。詩天の存在を天下に示すには絶好の機会よ」
「帝をいただいて早々に新たな政治体制を模索、ですか」
「不要な血が無駄に流れたとせん為にも、生き残った者が新たな時代を築くしかあるまい」
武徳はそう呟いた。
奸雄と言われようとも、詩天を支える腹づもり。その為には、自分が如何に悪く言われようとも構わない。
「ハンター達に伝令。一匹残らず敵を蹂躙。この圧倒的勝利を……先の戦いで命を落とした者達の弔いとするのじゃ」
武徳は、勝利が確定した戦場で伝令にそう指示を出した。
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/03/12 01:43:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/09 08:15:23 |