ゲスト
(ka0000)
魔術学院の新年会
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/21 12:00
- 完成日
- 2015/02/02 01:38
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ヴァリオス魔術学院は、魔術に関する森羅万象を解き明かし、その神秘を叡智に変え、卓越した技術で人類に資する事を目的として設立された、自由都市同盟が世界に誇る学問の府である。
それは間違いない。
だがしかし、魔術学院はただ真面目なだけの、四角四面な教育機関ではないのである。
勿論そういった部分も存在するが、それが全てではない。
日常的に使われるちょっとした便利な技や、人を楽しませる手品の様なものから、禁断の秘技まで——魔法に様々な顔がある様に、それを教える学院にも様々な顔があるのだ。
というわけで今回は、と言うか今回も、魔法学院の「楽しく明るく、ちょっとアホ」な一面を楽しんで貰おう。
今日は学院の新年会。
魔術学院に属する者も属さない者も、魔法に興味のある者もない者も、素質の以下略。
とにかく関係者一同が集まって新しい一年の始まりを祝うパーティだ。
しかし、この学院で行われるパーティが、ごく普通の一般的なものである筈がない。
そう、これは魔法仕掛けのパーティなのだ。
会場に用意されているのは、不思議な色をした魔法のカクテル。
単色の赤や緑、黄色に紫、或いはグラスの中で複数の色が層になって重なっているもの、色の層が渦を巻いているもの、透明なもの、濁ったもの、ボコボコと泡が噴き出しているもの——
ひとつとして同じものがないというくらいに、沢山のカクテルがワゴンに乗せて運ばれて来る。
勿論、それを飲んだ時の効果もそれぞれに違う。
変身薬に透明薬、自白剤、下剤、媚薬に巨大化薬、頭が良くなる薬——等々。
多分、薬を調合した者の想像力と技術の限界まで、ありとあらゆる作用を及ぼすだろう。
しかし、どんな効果が現れても心配はない。
ほぼ一時間程度で、どんな効果も消えてなくなる。後遺症もない。
残るのはただ、記憶だけ——モノによっては記憶さえ吹き飛んでいるかもしれないが。
そして薬の効果が現れるのは、魔術学院の敷地内のみ。
これは余所様に迷惑をかけない為の配慮である。
だから安心して、未知なる自分に出会ってみると良い。
どんなカオスも皆で堕ちれば怖くない。多分。
まあ、中には薬が効かない特異体質の者がいるかもしれないが——
そんな時には、ヨッパライの集団に放り込まれた下戸の気分を味わってみるのも良い、かもしれない、ね!
それは間違いない。
だがしかし、魔術学院はただ真面目なだけの、四角四面な教育機関ではないのである。
勿論そういった部分も存在するが、それが全てではない。
日常的に使われるちょっとした便利な技や、人を楽しませる手品の様なものから、禁断の秘技まで——魔法に様々な顔がある様に、それを教える学院にも様々な顔があるのだ。
というわけで今回は、と言うか今回も、魔法学院の「楽しく明るく、ちょっとアホ」な一面を楽しんで貰おう。
今日は学院の新年会。
魔術学院に属する者も属さない者も、魔法に興味のある者もない者も、素質の以下略。
とにかく関係者一同が集まって新しい一年の始まりを祝うパーティだ。
しかし、この学院で行われるパーティが、ごく普通の一般的なものである筈がない。
そう、これは魔法仕掛けのパーティなのだ。
会場に用意されているのは、不思議な色をした魔法のカクテル。
単色の赤や緑、黄色に紫、或いはグラスの中で複数の色が層になって重なっているもの、色の層が渦を巻いているもの、透明なもの、濁ったもの、ボコボコと泡が噴き出しているもの——
ひとつとして同じものがないというくらいに、沢山のカクテルがワゴンに乗せて運ばれて来る。
勿論、それを飲んだ時の効果もそれぞれに違う。
変身薬に透明薬、自白剤、下剤、媚薬に巨大化薬、頭が良くなる薬——等々。
多分、薬を調合した者の想像力と技術の限界まで、ありとあらゆる作用を及ぼすだろう。
しかし、どんな効果が現れても心配はない。
ほぼ一時間程度で、どんな効果も消えてなくなる。後遺症もない。
残るのはただ、記憶だけ——モノによっては記憶さえ吹き飛んでいるかもしれないが。
そして薬の効果が現れるのは、魔術学院の敷地内のみ。
これは余所様に迷惑をかけない為の配慮である。
だから安心して、未知なる自分に出会ってみると良い。
どんなカオスも皆で堕ちれば怖くない。多分。
まあ、中には薬が効かない特異体質の者がいるかもしれないが——
そんな時には、ヨッパライの集団に放り込まれた下戸の気分を味わってみるのも良い、かもしれない、ね!
リプレイ本文
「毎年恒例の『アレ』はまだやってるのかな?」
ステラ・ブルマーレ(ka3014)は、この学院の卒業生。
研究の為の資料や過去の論文を見ようと思って学院に顔を出してみたけれど。
思った通り、そこはいつも通りの有様だ。
ルシン(ka0453)は学院で様々な知識を身に付けたくて門を叩いた……筈だったのに。
「……あの、これは……」
「どうしてこうなった、ってネット系の単語がありやしたね、そういや……」
その脇では、春咲=桜蓮・紫苑(ka3668)が遠い目をしている。
「どうしたもこうしたも」
それを笑い飛ばしたのは、ヴィジェア=ダンディルディエン(ka3316)だ。
「ここは天下に名高いヴァリオス魔術学院、良いではないかね」
自由都市同盟に所属するものとしても、魔術師としても、一度来てみたかった場所だ。
しかも怪しげな、否、魅惑的な呪薬の数々を自ら試す事が出来るとは何たる幸運。
結果如何は関係ない。何が起こるか、何を見る事が出来るのか――
「さて、楽しもうではないか」
言われて紫苑が頷く。
こういったものは、自分よりも連れの方が好きそうではあるのだが。
「あァ、人相悪い方の――いや、どっちも大概ですがねぇ」
理系の人間が好みそうな匂いがプンプンするし、ここはひとつ土産話でも、と思って参加した次第だ。
「まぁ酔い覚ましの水くれぇは用意させてもらいまさ、安心して心置きなく飲みなせぇよ」
くっくと笑い、紫苑は会場全体が見渡せる場所に陣取った。
さて、何が起きるかお楽しみ。
「魔術とかあこがれちゃいますね……かっこいいなあ」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)は白猫のシェーラさんを定位置、つまり頭の上に乗せ、ご馳走を皿に取り分けていた。
「ぼくにも魔術の才能があればよかったのに、ねえシェーラさん」
『にゃー』
あとで学院内探検とかしたら怒られるだろうかと思いつつ、カクテルに手を伸ばす。
「これ、シェーラさんの目と同じ色ですよ。これがいいな」
猫馬鹿というか親馬鹿というか、うん、わかるよその気持ち。
苺のような甘い香りのする緑色の液体を、ドキドキしながら口にしてみる。
「……普通の美味しいカクテルですね? 魔法の、っていうからどんな不思議な事が起こるかと……え?」
シェーラさんが横からぺろり。
「あ、シェーラさん流石にカクテルはダメですよ……!」
しかし手遅れだった。
重い。猫を乗せていた筈の肩がずっしりと重い。
「え、えぇぇっ!?」
今そこに乗っているのは、真っ白ふわふわの髪で、緑の瞳で……すっぽんぽんの、女の子。
歳は多分、シグ君と同じくらい。
「うっわあああ!? ちょ、なにシェーラさんは!? っていうか服! ふく! 誰か……!」
とりあえず自分の上着を……って脱いじゃだめです、お願いだから着てて!
「なんて心臓に悪い……!」
重さから察するに、ただ人の姿に見えているだけではない様だ。
ひとまずは膝の上に落ち着いたけど、これって絵的にどうなんでしょう。
中身は猫だし、とりあえず頭を撫でておけば良いのかな。
一方、シア(ka3197)には逆の現象が起きていた。
「わあ~、あの魔術学院で新年会♪ 学院の中に入れるだけでもわくわくしますね」
と、スイーツを食べ歩いたり、回りの人とお喋りを楽しんだり、人間観察を楽しんだり。
いや、人間とは限らない。
寧ろ人間の姿を失った元人間の方が多そうな気もする。
「変身薬の効果なのですか……猫になれるカクテルはどれでしょう?」
わからない。
「この色味、シュテールと同じですね」
わからない時には愛猫カラーを選ぶのは、いつもと同じだ。
黄色と赤茶色の縞々カクテルは、さらりと軽くて舌触りも喉越しもなめらか。
「思ったほど変な味じゃないけど、おいしくもないですね」
何が混ざってるのかちょっと知りたいところだけれど、それはきっと知らない方が身の為だ。
「お口直しに何か食べたいかな」
そう思って伸ばした手が、もこもこしている。
『あ、猫の手』
そう言ったつもりが、耳にはただ『にゃぁ』と聞こえた。
けれど猫同士では通じている様だ。
シュテールはその変化を当然の様に受け入れている――様に見えて、必要もないのにせっせと毛繕いをしているのは、驚きを隠す為か。隠せてないけれど。
『シュテール、遊ぼう?』
てしてし、前足で軽く叩いて誘ってみる。
いざ学院内の探検に、人間サイズでは通れない猫だけの道を通って。
しかし、その後ろから人間の少女が追いかけて来る。
人間なのに、四つ足で走りながら。
慌てて家具の隙間に入り込んだシュテールを追って、シアも後に続いた。
ところが、少女もまるで猫の様に――
「シェーラさん、だめですよ! そこは入れな……っ」
ごん!
ぶつかった。
その隙に二匹の猫は家具の上に駆け上がり、天窓の隙間から広間の外へ。
後を追おうとした猫少女をシグリッドが止める、が。
「その体じゃ無理ですかr」
ばちーん!
猫パンチならぬ強烈なビンタが炸裂した。
「今回は魔術学院の新年会に参加させて頂くことになりましたわ」
いつもの様にパルムのパルパルを頭に乗せて、チョココ(ka2449)は学院の門をくぐった。
「在籍はしておりませんけども、魔術師の先輩方の様子を拝見したいのと……楽しむ為ですわ♪」
すきっ腹の準備も万端、後は食べて飲むだけ!
「カクテルといえば、お酒の一種……あ、ノンアルコールですのね」
それなら大丈夫、ではがっつりと――
「これはとても綺麗な色合いですの」
見る者を惹き込みそうな、クリアなグラデーションブルー。
サクランボが添えられたグラスに口をつければ、甘酸っぱくもさっぱりとしていて、飲みやすい。
「これはきっと、素敵な事が起こりそうパルパル~」
え? わたくし今、何と……
『パルパル~』
慌てて鏡を見る。
そこにはぼんきゅぼんなナイスバディなお姉さまが!
ほい、年齢がプラスされて大人になりました~……のは、良いけれど。
着ている服は、ぱっつんぱっつん。
とりあえず何か着替えを探さないと、周りの殿方が多分きっと大変な事になる。
『パルパル~』
すみません、何か着る物をお持ちではありませんか?
『パルパル~』
もし良かったら、お貸し頂けると助かりますの。
『パルパル~』
困った。パルパル~としか喋れない。
でも何故かパルムとは意思疎通が出来る様だ。
こうなったらパルパルに通訳を頼むしか――え、パルパルもパルパル~としか喋れなくなってますの!?
『パルパル~』
声のトーンでおわかりだろうか。チョココは今、猛烈に困っているのだ。
でも、人間は諦めが肝心ですの、エルフだけど。
こうなったらとことん食う。食べまくるのですわ!
『パルパル~』
それはパルムを呼ぶ儀式というか呪いというか踊りというか、もはや意味不明。
その状態のチョココに、何故かステラが論戦を吹っかけて来た。
何故かって、それは勿論カクテルのせいだ。
ステラが飲んだのは蒼の世界でブルー・マンデーと呼ばれるもの……に、似た何か。
味もアルコール度数も本物と変わらないが、それは性格がクールになる薬。一種の鎮静薬の様なものだ。
続けて飲んだのが、これまたアルコール度数の高いX・Y・Z。
こちらは本物とは違い、太陽を連想させる黄色の底に緑色のゼリーが沈んだ甘いオレンジ味だ。
朝方、徹夜で思考が纏まらない人向けに作られた、頭の回転を良くする薬らしい。
その二つが胃の中でちゃんぽんになった結果、ステラは頭脳明晰なクールビューティになりました。
「人は何故、世界の中心で愛を語るのでしょう」
『パルパル~』
「愛、それは例えるなら解のない五次方程式」
『パルパル~』
「しかし私は敢えて不可能に挑む」
『パルパル~』
表情に影響は出てないが、レーシングマシンのエンジンにニトロを入れた如く、酔えば酔うほど思考が加速し、頭脳明晰になっていく。
だが、このニトロはナイトラス・オキサイドではなく、ニトログリセリンだった様だ。
論戦を吹っかける相手を完璧に間違えている事に気付かないのがその証拠。
「実に面白い」
酒を呷りつつ、ステラは黒板に向かって何やら難解な数式を書き殴り始めた。
「私は今、神をも超える摂理の創造者となるのだ」
それは蝋燭の炎が消える間際、一際大きく燃えるかの如し。
数式は黒板を超えて壁や床にまで達しながら、それでも止まらずに次々と生み出され――
ぱたり。
電池が切れました。
「さてさて、おっさんは何を飲もうかねぇ」
壬生 義明(ka3397)が選んだのは、ちょっと甘いぶどう味のカクテル。
僅かに青臭い青春の香りがする……と思った瞬間。
義明はその青臭い青春のど真ん中に叩き込まれていた。
要するに中二病である。しかも頭にドが付く程の。
「さあ皆の者、我に服従の杯を捧げよ!(訳:皆で乾杯とかしませんか?)」
カクテルグラスは聖杯に、ナイフは伝説の剣エクスカリバーに、フォークは三叉の矛トライデントに。
「供物をもて! 饗宴を始めようぞ!(パーティ楽しんでいってね!)」
その様子を見ていた紫苑は、何やら甘酸っぱい気分に襲われた。
と言っても愛とか恋とか、その方面の甘酸っぱさではない。
「ああ、俺の学校にもいやしたねぇ、あんな中二病患者……」
その視線に気付いた義明は、その足元に恭しく跪く。
「これはこれは、麗しき姫君……貴殿は如何なる星の下に我と巡り合う定めとなりしや(初めまして、お名前は?)」
「別に、たまたま居合わせただけなんですがねぇ」
苦笑いを浮かべながらも、紫苑は軽く自己紹介。
「我の名、その魂に刻んでおくがいい(こちらこそ、よろしくお願いします)」
翻訳が難しいな!
「陽の上る時、我とともに供物を頂かん(お昼、一緒に食べませんか?)」
「いや、俺はちょっと」
遠慮しても良いかな?
と言うか、素面でいると危険な気が……
「俺もちっとだけ飲んでみやすかね」
色は一番好きな紫で、普通に飲めそうなやつを――
「姫よ、怖れるな。怖れこそが貴殿の目を曇らせる最大の敵!」
「いや……冒険心がねぇって言われやしても」
通じた。
「じゃあせっかくですし、ちゃんぽんしてみやしょうか」
どばどばー。
紫と金色を混ぜてみる。
「意外と一周回って普通の酒になったりしねぇかn……やばいレインボーになりやしたよ……」
七色の要素が何処にあったのか。
しかし考えたら負けだ。これは魔法なのだから。
「ええい、ままよ!」
鼻を摘んで、ごっくん。
あらやだ、意外に美味しい。美味しいけど……
「わたくし、どうなってしまったのかしら?」
紫苑は花も恥じらう乙女なお姫様になった!
「おお、姫よ!」
「あなたは……待ち焦がれた白馬の王子様!」
これ、薬の効果が切れたら大変だね(他人事感)。
いつものように迷子になっていたら、でっかい建物の前に出た。
自分と同じ耳の長い人(エルフさん)が入って行ったので、ついていった。
そして今、アジュガ(ka3846)はここにいる。
「すごい! ごちそうだ!」
どこだかわからないけれど、食べ物がいっぱいだし、綺麗な飲み物もある。
皆が美味しそうに飲んでいるし、飲むと楽しくなるみたいだし、綺麗なものは大好きだ。
「アジュも」
手を伸ばしたのは蛍光ピンクのカクテル。
しかし。
「……あ、それはお酒ですよ?」
そっと伸びた手が、アジュガの手を止めた。
さっきの耳の長い人だ。
「……こちらの台に置いてあるものなら、大丈夫ですよ」
優しくされて嬉しくなったアジュガは、自分で盛り付けした山盛りの食事を差し出した。
「……いただけるのですか……?」
その人、ルシンの問いに、アジュガは黙って頷く。
精一杯のお礼のつもりだった。
礼を言ったルシンは食事と共にカクテルを手に取った。
それは無味無臭で無色透明な、ただの水に見える。が。
「……?」
微かな変化に動揺が走る。
「……水、ではなかったのでしょうか……」
油断した。確かにアルコールは入っていないが、ただの水でもない。
周囲を見れば、皆さん既に出来上がっていらっしゃるご様子。
これは危ない。
部屋から出て、一旦落ち着かなくては。
しかし、その意に反して足は阿鼻叫喚のど真ん中へ。
どうやらこれは、思った事と反対の行動しか出来なくなる薬だった様だ。
自分の意思に反して思うように動けないことで、普段石のように動かない顔面が更に動かなくなる。
心なしか動悸もして来た。
「……これは……大変に嫌な予感がいたします」
しかし、坂道を転がり始めた石はぶつかるまで止まらない、止まれない。
見てはいけないものを凝視し、誰かに服を着せようとしては脱がし、甘い物を取ろうとして激辛を選び、慰めるべき所で爆笑し、行きたい所からは遠ざかり、敢えて突っ込まずにいた会話に乗り、うっかり中二病が感染り――
「もっと熱くなれよ!!(カッ(いや、落ち着っ、落ち着きましょう……!)」
顔を覆おうとしたら、諸手を挙げてバンザイになった。
一方、ビビッドカラーのカクテルを飲んだアジュガは「なんかへんだ」と思いつつも、今ひとつ実感がない様子。
大人の魅力溢れる綺麗なお姉さんに変身しても、小さなネズミになっても、やっぱり「なんかへん」で済ませてしまう。
この子、かなりの大物かもしれない。
因みにどちらの場合も、着ているツナギごと伸び縮みしている辺り、さすが魔法だ。
ツナギを着たネズミは自分が小さくなった事にも気付かずに、そのままカクテルを飲み続ける。
グラスごとひっくり返っても動じない。
飲みすぎてお腹がたぷたぷになったら、元の姿に戻って食事だ。
目指せ、お料理全種類制覇とばかりに、少しずつ皿に盛っていく。
でも意外にもりもり食べられるのは別腹なのか、最後に飲んだショッキングピンクのカクテルに胃袋ブラックホール化の効果があったのか……?
「このような貴重な機会を頂きましてありがとうございますっ……ではいただきますっ……!」
魔法のカクテルの虜となったマルカ・アニチキン(ka2542)は、周りが見えなくなっていた。
周りどころか自分自身さえ見えていない。
飲んだのは鮮やかな緑色で、うっとりする甘さの奥で、微かに感じる大人の苦さが広がる不思議な美味しさのカクテル。
しかし、口の中がちょっぴりザラザラするのが難点か。
それを飲んだ途端に――
ぽんっ!
\ 頭から とても かわいい 花が さいた /
何処かの河童は一輪だが、こちらは大量にこんもりと咲き誇っている。
それだけで満足しておけば良いものを、マルカは更に別のカクテルにも手を出す。
「何か他に劇的な効果があるものはないのでしょうか……」
好奇心は猫をも殺し、魔術師の頭にはカラフルなキノコを生えさせた。
にょきにょきと、折角の可愛い花を駆逐しながら、ごっそりと。
立派に成長したキノコは、周囲にもっさもっさと胞子をバラ撒き始める。
すると、近くにいた者達の頭にも同じキノコが!
「これは空気感染するのですね……」
治療法?
さあ?
「私は自らのテーマの下にカクテルを楽しみたいね」
ヴィジェアは自ら厳選したカクテルを前に胸を躍らせていた。
これで巨大爬虫類を思わせるドラゴン、神馬ペガサス、伝説の化鳥ロック――そうした幻獣になる事が出来るそうだが、真偽の程はどうだろう。
「まずは試してみようか」
変化、変異、異化。このエルフという存在の枠を超えたものになる事、そしてそれを実感する事。
それがこの実験に課したテーマだ。
まずは緑色のドラゴンカクテルを試してみよう。
「ふむ、確かに変化は成ったか」
ただし人間サイズ。
「確かに建物を壊されては困るだろうからね」
人語を話せる事は予想外だったが、空を飛べるし火も吐ける。
視界はそう変わらないが、極度の老眼にでもなったかの様に近くが見えない。
「メモを残す事も難しそうだが、どのみちこの手でペンは持てないか」
大丈夫、記憶に残せば良い。
そうして次々に実験し、ちゃんぽんにしてキメラを作り、性別転換を試し、巨大化薬も混入し――と言ってもせいぜい体長3m程度か。
「最強の生物には程遠いね」
しかし求めるものはそこではない。
異形と化した際の意識の変化や四肢の力加減、それによって世界がどう変化するのか――
己を失うか否かは、この際二の次だ。
時間が経てば元に戻ると聞いた。
アジュガの好意(?)で中身を取り替えられても、他のカクテルを混ぜられても、それはそれで意外な結果が出て楽しい。
「結果がわかっている実験など面白くなかろう?」
わからないから楽しいのだ。
パーティに来て食事を忘れる程に。
猫少女に散々振り回されたシグリッドが、漸く魔法の解き方に気付いた頃。
宴は終わった。
「お、おっさん……ちょっとはしゃぎすちゃったかな……ハ、ハハハ……」
遠い目をした義明が、乾いた笑いで色々誤魔化そうとした。
ルシンはいっそ気絶できたら良かったのにと、魂が抜けた様に呆然と座り込んでいる。
そしてステラは頭を抱えていた。
さっぱり分からないと言うか、記憶にない。
これは本当に、自分が書いたものなのだろうか。
完成すれば、人類の歴史を塗り替える重大な発見になったかもしれないのに――!
ステラ・ブルマーレ(ka3014)は、この学院の卒業生。
研究の為の資料や過去の論文を見ようと思って学院に顔を出してみたけれど。
思った通り、そこはいつも通りの有様だ。
ルシン(ka0453)は学院で様々な知識を身に付けたくて門を叩いた……筈だったのに。
「……あの、これは……」
「どうしてこうなった、ってネット系の単語がありやしたね、そういや……」
その脇では、春咲=桜蓮・紫苑(ka3668)が遠い目をしている。
「どうしたもこうしたも」
それを笑い飛ばしたのは、ヴィジェア=ダンディルディエン(ka3316)だ。
「ここは天下に名高いヴァリオス魔術学院、良いではないかね」
自由都市同盟に所属するものとしても、魔術師としても、一度来てみたかった場所だ。
しかも怪しげな、否、魅惑的な呪薬の数々を自ら試す事が出来るとは何たる幸運。
結果如何は関係ない。何が起こるか、何を見る事が出来るのか――
「さて、楽しもうではないか」
言われて紫苑が頷く。
こういったものは、自分よりも連れの方が好きそうではあるのだが。
「あァ、人相悪い方の――いや、どっちも大概ですがねぇ」
理系の人間が好みそうな匂いがプンプンするし、ここはひとつ土産話でも、と思って参加した次第だ。
「まぁ酔い覚ましの水くれぇは用意させてもらいまさ、安心して心置きなく飲みなせぇよ」
くっくと笑い、紫苑は会場全体が見渡せる場所に陣取った。
さて、何が起きるかお楽しみ。
「魔術とかあこがれちゃいますね……かっこいいなあ」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)は白猫のシェーラさんを定位置、つまり頭の上に乗せ、ご馳走を皿に取り分けていた。
「ぼくにも魔術の才能があればよかったのに、ねえシェーラさん」
『にゃー』
あとで学院内探検とかしたら怒られるだろうかと思いつつ、カクテルに手を伸ばす。
「これ、シェーラさんの目と同じ色ですよ。これがいいな」
猫馬鹿というか親馬鹿というか、うん、わかるよその気持ち。
苺のような甘い香りのする緑色の液体を、ドキドキしながら口にしてみる。
「……普通の美味しいカクテルですね? 魔法の、っていうからどんな不思議な事が起こるかと……え?」
シェーラさんが横からぺろり。
「あ、シェーラさん流石にカクテルはダメですよ……!」
しかし手遅れだった。
重い。猫を乗せていた筈の肩がずっしりと重い。
「え、えぇぇっ!?」
今そこに乗っているのは、真っ白ふわふわの髪で、緑の瞳で……すっぽんぽんの、女の子。
歳は多分、シグ君と同じくらい。
「うっわあああ!? ちょ、なにシェーラさんは!? っていうか服! ふく! 誰か……!」
とりあえず自分の上着を……って脱いじゃだめです、お願いだから着てて!
「なんて心臓に悪い……!」
重さから察するに、ただ人の姿に見えているだけではない様だ。
ひとまずは膝の上に落ち着いたけど、これって絵的にどうなんでしょう。
中身は猫だし、とりあえず頭を撫でておけば良いのかな。
一方、シア(ka3197)には逆の現象が起きていた。
「わあ~、あの魔術学院で新年会♪ 学院の中に入れるだけでもわくわくしますね」
と、スイーツを食べ歩いたり、回りの人とお喋りを楽しんだり、人間観察を楽しんだり。
いや、人間とは限らない。
寧ろ人間の姿を失った元人間の方が多そうな気もする。
「変身薬の効果なのですか……猫になれるカクテルはどれでしょう?」
わからない。
「この色味、シュテールと同じですね」
わからない時には愛猫カラーを選ぶのは、いつもと同じだ。
黄色と赤茶色の縞々カクテルは、さらりと軽くて舌触りも喉越しもなめらか。
「思ったほど変な味じゃないけど、おいしくもないですね」
何が混ざってるのかちょっと知りたいところだけれど、それはきっと知らない方が身の為だ。
「お口直しに何か食べたいかな」
そう思って伸ばした手が、もこもこしている。
『あ、猫の手』
そう言ったつもりが、耳にはただ『にゃぁ』と聞こえた。
けれど猫同士では通じている様だ。
シュテールはその変化を当然の様に受け入れている――様に見えて、必要もないのにせっせと毛繕いをしているのは、驚きを隠す為か。隠せてないけれど。
『シュテール、遊ぼう?』
てしてし、前足で軽く叩いて誘ってみる。
いざ学院内の探検に、人間サイズでは通れない猫だけの道を通って。
しかし、その後ろから人間の少女が追いかけて来る。
人間なのに、四つ足で走りながら。
慌てて家具の隙間に入り込んだシュテールを追って、シアも後に続いた。
ところが、少女もまるで猫の様に――
「シェーラさん、だめですよ! そこは入れな……っ」
ごん!
ぶつかった。
その隙に二匹の猫は家具の上に駆け上がり、天窓の隙間から広間の外へ。
後を追おうとした猫少女をシグリッドが止める、が。
「その体じゃ無理ですかr」
ばちーん!
猫パンチならぬ強烈なビンタが炸裂した。
「今回は魔術学院の新年会に参加させて頂くことになりましたわ」
いつもの様にパルムのパルパルを頭に乗せて、チョココ(ka2449)は学院の門をくぐった。
「在籍はしておりませんけども、魔術師の先輩方の様子を拝見したいのと……楽しむ為ですわ♪」
すきっ腹の準備も万端、後は食べて飲むだけ!
「カクテルといえば、お酒の一種……あ、ノンアルコールですのね」
それなら大丈夫、ではがっつりと――
「これはとても綺麗な色合いですの」
見る者を惹き込みそうな、クリアなグラデーションブルー。
サクランボが添えられたグラスに口をつければ、甘酸っぱくもさっぱりとしていて、飲みやすい。
「これはきっと、素敵な事が起こりそうパルパル~」
え? わたくし今、何と……
『パルパル~』
慌てて鏡を見る。
そこにはぼんきゅぼんなナイスバディなお姉さまが!
ほい、年齢がプラスされて大人になりました~……のは、良いけれど。
着ている服は、ぱっつんぱっつん。
とりあえず何か着替えを探さないと、周りの殿方が多分きっと大変な事になる。
『パルパル~』
すみません、何か着る物をお持ちではありませんか?
『パルパル~』
もし良かったら、お貸し頂けると助かりますの。
『パルパル~』
困った。パルパル~としか喋れない。
でも何故かパルムとは意思疎通が出来る様だ。
こうなったらパルパルに通訳を頼むしか――え、パルパルもパルパル~としか喋れなくなってますの!?
『パルパル~』
声のトーンでおわかりだろうか。チョココは今、猛烈に困っているのだ。
でも、人間は諦めが肝心ですの、エルフだけど。
こうなったらとことん食う。食べまくるのですわ!
『パルパル~』
それはパルムを呼ぶ儀式というか呪いというか踊りというか、もはや意味不明。
その状態のチョココに、何故かステラが論戦を吹っかけて来た。
何故かって、それは勿論カクテルのせいだ。
ステラが飲んだのは蒼の世界でブルー・マンデーと呼ばれるもの……に、似た何か。
味もアルコール度数も本物と変わらないが、それは性格がクールになる薬。一種の鎮静薬の様なものだ。
続けて飲んだのが、これまたアルコール度数の高いX・Y・Z。
こちらは本物とは違い、太陽を連想させる黄色の底に緑色のゼリーが沈んだ甘いオレンジ味だ。
朝方、徹夜で思考が纏まらない人向けに作られた、頭の回転を良くする薬らしい。
その二つが胃の中でちゃんぽんになった結果、ステラは頭脳明晰なクールビューティになりました。
「人は何故、世界の中心で愛を語るのでしょう」
『パルパル~』
「愛、それは例えるなら解のない五次方程式」
『パルパル~』
「しかし私は敢えて不可能に挑む」
『パルパル~』
表情に影響は出てないが、レーシングマシンのエンジンにニトロを入れた如く、酔えば酔うほど思考が加速し、頭脳明晰になっていく。
だが、このニトロはナイトラス・オキサイドではなく、ニトログリセリンだった様だ。
論戦を吹っかける相手を完璧に間違えている事に気付かないのがその証拠。
「実に面白い」
酒を呷りつつ、ステラは黒板に向かって何やら難解な数式を書き殴り始めた。
「私は今、神をも超える摂理の創造者となるのだ」
それは蝋燭の炎が消える間際、一際大きく燃えるかの如し。
数式は黒板を超えて壁や床にまで達しながら、それでも止まらずに次々と生み出され――
ぱたり。
電池が切れました。
「さてさて、おっさんは何を飲もうかねぇ」
壬生 義明(ka3397)が選んだのは、ちょっと甘いぶどう味のカクテル。
僅かに青臭い青春の香りがする……と思った瞬間。
義明はその青臭い青春のど真ん中に叩き込まれていた。
要するに中二病である。しかも頭にドが付く程の。
「さあ皆の者、我に服従の杯を捧げよ!(訳:皆で乾杯とかしませんか?)」
カクテルグラスは聖杯に、ナイフは伝説の剣エクスカリバーに、フォークは三叉の矛トライデントに。
「供物をもて! 饗宴を始めようぞ!(パーティ楽しんでいってね!)」
その様子を見ていた紫苑は、何やら甘酸っぱい気分に襲われた。
と言っても愛とか恋とか、その方面の甘酸っぱさではない。
「ああ、俺の学校にもいやしたねぇ、あんな中二病患者……」
その視線に気付いた義明は、その足元に恭しく跪く。
「これはこれは、麗しき姫君……貴殿は如何なる星の下に我と巡り合う定めとなりしや(初めまして、お名前は?)」
「別に、たまたま居合わせただけなんですがねぇ」
苦笑いを浮かべながらも、紫苑は軽く自己紹介。
「我の名、その魂に刻んでおくがいい(こちらこそ、よろしくお願いします)」
翻訳が難しいな!
「陽の上る時、我とともに供物を頂かん(お昼、一緒に食べませんか?)」
「いや、俺はちょっと」
遠慮しても良いかな?
と言うか、素面でいると危険な気が……
「俺もちっとだけ飲んでみやすかね」
色は一番好きな紫で、普通に飲めそうなやつを――
「姫よ、怖れるな。怖れこそが貴殿の目を曇らせる最大の敵!」
「いや……冒険心がねぇって言われやしても」
通じた。
「じゃあせっかくですし、ちゃんぽんしてみやしょうか」
どばどばー。
紫と金色を混ぜてみる。
「意外と一周回って普通の酒になったりしねぇかn……やばいレインボーになりやしたよ……」
七色の要素が何処にあったのか。
しかし考えたら負けだ。これは魔法なのだから。
「ええい、ままよ!」
鼻を摘んで、ごっくん。
あらやだ、意外に美味しい。美味しいけど……
「わたくし、どうなってしまったのかしら?」
紫苑は花も恥じらう乙女なお姫様になった!
「おお、姫よ!」
「あなたは……待ち焦がれた白馬の王子様!」
これ、薬の効果が切れたら大変だね(他人事感)。
いつものように迷子になっていたら、でっかい建物の前に出た。
自分と同じ耳の長い人(エルフさん)が入って行ったので、ついていった。
そして今、アジュガ(ka3846)はここにいる。
「すごい! ごちそうだ!」
どこだかわからないけれど、食べ物がいっぱいだし、綺麗な飲み物もある。
皆が美味しそうに飲んでいるし、飲むと楽しくなるみたいだし、綺麗なものは大好きだ。
「アジュも」
手を伸ばしたのは蛍光ピンクのカクテル。
しかし。
「……あ、それはお酒ですよ?」
そっと伸びた手が、アジュガの手を止めた。
さっきの耳の長い人だ。
「……こちらの台に置いてあるものなら、大丈夫ですよ」
優しくされて嬉しくなったアジュガは、自分で盛り付けした山盛りの食事を差し出した。
「……いただけるのですか……?」
その人、ルシンの問いに、アジュガは黙って頷く。
精一杯のお礼のつもりだった。
礼を言ったルシンは食事と共にカクテルを手に取った。
それは無味無臭で無色透明な、ただの水に見える。が。
「……?」
微かな変化に動揺が走る。
「……水、ではなかったのでしょうか……」
油断した。確かにアルコールは入っていないが、ただの水でもない。
周囲を見れば、皆さん既に出来上がっていらっしゃるご様子。
これは危ない。
部屋から出て、一旦落ち着かなくては。
しかし、その意に反して足は阿鼻叫喚のど真ん中へ。
どうやらこれは、思った事と反対の行動しか出来なくなる薬だった様だ。
自分の意思に反して思うように動けないことで、普段石のように動かない顔面が更に動かなくなる。
心なしか動悸もして来た。
「……これは……大変に嫌な予感がいたします」
しかし、坂道を転がり始めた石はぶつかるまで止まらない、止まれない。
見てはいけないものを凝視し、誰かに服を着せようとしては脱がし、甘い物を取ろうとして激辛を選び、慰めるべき所で爆笑し、行きたい所からは遠ざかり、敢えて突っ込まずにいた会話に乗り、うっかり中二病が感染り――
「もっと熱くなれよ!!(カッ(いや、落ち着っ、落ち着きましょう……!)」
顔を覆おうとしたら、諸手を挙げてバンザイになった。
一方、ビビッドカラーのカクテルを飲んだアジュガは「なんかへんだ」と思いつつも、今ひとつ実感がない様子。
大人の魅力溢れる綺麗なお姉さんに変身しても、小さなネズミになっても、やっぱり「なんかへん」で済ませてしまう。
この子、かなりの大物かもしれない。
因みにどちらの場合も、着ているツナギごと伸び縮みしている辺り、さすが魔法だ。
ツナギを着たネズミは自分が小さくなった事にも気付かずに、そのままカクテルを飲み続ける。
グラスごとひっくり返っても動じない。
飲みすぎてお腹がたぷたぷになったら、元の姿に戻って食事だ。
目指せ、お料理全種類制覇とばかりに、少しずつ皿に盛っていく。
でも意外にもりもり食べられるのは別腹なのか、最後に飲んだショッキングピンクのカクテルに胃袋ブラックホール化の効果があったのか……?
「このような貴重な機会を頂きましてありがとうございますっ……ではいただきますっ……!」
魔法のカクテルの虜となったマルカ・アニチキン(ka2542)は、周りが見えなくなっていた。
周りどころか自分自身さえ見えていない。
飲んだのは鮮やかな緑色で、うっとりする甘さの奥で、微かに感じる大人の苦さが広がる不思議な美味しさのカクテル。
しかし、口の中がちょっぴりザラザラするのが難点か。
それを飲んだ途端に――
ぽんっ!
\ 頭から とても かわいい 花が さいた /
何処かの河童は一輪だが、こちらは大量にこんもりと咲き誇っている。
それだけで満足しておけば良いものを、マルカは更に別のカクテルにも手を出す。
「何か他に劇的な効果があるものはないのでしょうか……」
好奇心は猫をも殺し、魔術師の頭にはカラフルなキノコを生えさせた。
にょきにょきと、折角の可愛い花を駆逐しながら、ごっそりと。
立派に成長したキノコは、周囲にもっさもっさと胞子をバラ撒き始める。
すると、近くにいた者達の頭にも同じキノコが!
「これは空気感染するのですね……」
治療法?
さあ?
「私は自らのテーマの下にカクテルを楽しみたいね」
ヴィジェアは自ら厳選したカクテルを前に胸を躍らせていた。
これで巨大爬虫類を思わせるドラゴン、神馬ペガサス、伝説の化鳥ロック――そうした幻獣になる事が出来るそうだが、真偽の程はどうだろう。
「まずは試してみようか」
変化、変異、異化。このエルフという存在の枠を超えたものになる事、そしてそれを実感する事。
それがこの実験に課したテーマだ。
まずは緑色のドラゴンカクテルを試してみよう。
「ふむ、確かに変化は成ったか」
ただし人間サイズ。
「確かに建物を壊されては困るだろうからね」
人語を話せる事は予想外だったが、空を飛べるし火も吐ける。
視界はそう変わらないが、極度の老眼にでもなったかの様に近くが見えない。
「メモを残す事も難しそうだが、どのみちこの手でペンは持てないか」
大丈夫、記憶に残せば良い。
そうして次々に実験し、ちゃんぽんにしてキメラを作り、性別転換を試し、巨大化薬も混入し――と言ってもせいぜい体長3m程度か。
「最強の生物には程遠いね」
しかし求めるものはそこではない。
異形と化した際の意識の変化や四肢の力加減、それによって世界がどう変化するのか――
己を失うか否かは、この際二の次だ。
時間が経てば元に戻ると聞いた。
アジュガの好意(?)で中身を取り替えられても、他のカクテルを混ぜられても、それはそれで意外な結果が出て楽しい。
「結果がわかっている実験など面白くなかろう?」
わからないから楽しいのだ。
パーティに来て食事を忘れる程に。
猫少女に散々振り回されたシグリッドが、漸く魔法の解き方に気付いた頃。
宴は終わった。
「お、おっさん……ちょっとはしゃぎすちゃったかな……ハ、ハハハ……」
遠い目をした義明が、乾いた笑いで色々誤魔化そうとした。
ルシンはいっそ気絶できたら良かったのにと、魂が抜けた様に呆然と座り込んでいる。
そしてステラは頭を抱えていた。
さっぱり分からないと言うか、記憶にない。
これは本当に、自分が書いたものなのだろうか。
完成すれば、人類の歴史を塗り替える重大な発見になったかもしれないのに――!
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相談いたしましょう ルシン(ka0453) エルフ|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/01/21 08:20:44 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/21 08:12:24 |