ゲスト
(ka0000)
【AP】とれじゃぁまぁち
マスター:愁水
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出? もっと見る
オープニング
●
あめのひもー♪
かぜのひもー♪
おたからもとめてすすみますー♪
びろーどびろーどたんけんたーい♪
「ねー……歌わないのー……?」
真珠色の髪を真綿のようにふわりと踊らせて、彼女は振り返った。
応答なし。
だが、彼女の寝惚け眼のような目線の先では、二人の男性が一枚の羊皮紙に目を凝らしていた。
一人は、彼女のお父さん――ではなく、年の離れた長兄の白亜(kz0237)と、身体はチビっ子頭脳はクソガキ、次兄の黒亜(kz0238)だ。そして、彼女――末妹の紅亜(kz0239)。三人合わせて――
「我ら、天鵞絨探検隊……」
しゃきーん。
「ねー……ポーズ決めないのー……?」
一人でヒーローポーズをとる紅亜は、尖り気味の小さな口許から不満を漏らす。が、
「さっきからほんとうるさいんだけど」
ぴしゃりと言われる始末。「クロ」と白亜がフォローを入れるも、その視線は直ぐさま手許の羊皮紙――地図へと移る。彼等はピクニックに来たわけではない(少なくとも兄と弟は)
そう、地図に印された宝をハントしに来たのだ。
此処はジャングル。
鬱蒼とした森。
暑い。
緑。
樹木の香。
とにかく蒸し暑い。
「ふむ……目的の遺跡へは、川沿いから向かうことも可能だな。だが……」
「それって迂回ルートでしょ? 一日ロスするじゃん。こっちのルートの方が手っ取り早いんじゃない?」
「蛇神の杜を突き進むことになるが、やむを得んか……。昨日のキャンプで予定外の食料を消費したからな」
犯人は身内(カオスdeathハンドの名の下に)
「よし、向かうぞ。ついて来られるな?」
宝の地図をベルトポーチへ仕舞うと、肩越しに振り返った瑠璃の瞳が“あなた”を映して、微笑んだ。
●
一方。
「ヨーソロー、ってか?」
こちとら海の荒くれ者――照照海賊団。
大らかで裁縫好きの船長シュヴァルツ(kz0266)と、飄々とした副船長琉架(kz0265)が束ねている。その海賊団の名称の由来は、船のあちらこちらに船長手製の編みぐるみが照る照ると晴天に揺れているからとかそうでないからとか。
此処はオーシャンブルー。
晴れ渡った空。
眩しい。
藍。
潮の香り。
とにかく眩しい。
大海原を悠然と進む海賊船。
「お、見えたな。あの島だろ? どんな望みも叶えるお宝が眠る島、っつーんは」
「ああ、そう聞いてはいるが……そんな都合の良いものが本当にあると思うのかい?」
「何だよ、夢がねぇなぁ」
「君がロマンチスト過ぎるんだよ。宝探しなんて何の張り合いもないじゃないか。海賊なら奪ってこそ、だろう?」
「無駄な殺生をしねぇヤツがよく言うぜ」
「船長が禁じているからなんだが」
眉を浮かせて呆れる琉架が、円筒型に丸めた地図をシュヴァルツの腕へ当てた。シュヴァルツは彼の手からそれを抜くと、甲板を後にする琉架を背にしながら地図を広げる。
「まあ、オレもぶっちゃけ宝にはあんま興味がねぇんだけどよ、宝探しってのぁ宝を手にするまでの過程が面白ぇんじゃねぇか。なあ?」
手許から視線を上げると、肩越しに振り返った京紫の瞳が“あなた”を映して、白い歯を零した。
**
陸か海か。
トレジャーハンターか海賊か。
まだ見ぬ宝を求めて、“あなた”はどちらの道を進む?
あめのひもー♪
かぜのひもー♪
おたからもとめてすすみますー♪
びろーどびろーどたんけんたーい♪
「ねー……歌わないのー……?」
真珠色の髪を真綿のようにふわりと踊らせて、彼女は振り返った。
応答なし。
だが、彼女の寝惚け眼のような目線の先では、二人の男性が一枚の羊皮紙に目を凝らしていた。
一人は、彼女のお父さん――ではなく、年の離れた長兄の白亜(kz0237)と、身体はチビっ子頭脳はクソガキ、次兄の黒亜(kz0238)だ。そして、彼女――末妹の紅亜(kz0239)。三人合わせて――
「我ら、天鵞絨探検隊……」
しゃきーん。
「ねー……ポーズ決めないのー……?」
一人でヒーローポーズをとる紅亜は、尖り気味の小さな口許から不満を漏らす。が、
「さっきからほんとうるさいんだけど」
ぴしゃりと言われる始末。「クロ」と白亜がフォローを入れるも、その視線は直ぐさま手許の羊皮紙――地図へと移る。彼等はピクニックに来たわけではない(少なくとも兄と弟は)
そう、地図に印された宝をハントしに来たのだ。
此処はジャングル。
鬱蒼とした森。
暑い。
緑。
樹木の香。
とにかく蒸し暑い。
「ふむ……目的の遺跡へは、川沿いから向かうことも可能だな。だが……」
「それって迂回ルートでしょ? 一日ロスするじゃん。こっちのルートの方が手っ取り早いんじゃない?」
「蛇神の杜を突き進むことになるが、やむを得んか……。昨日のキャンプで予定外の食料を消費したからな」
犯人は身内(カオスdeathハンドの名の下に)
「よし、向かうぞ。ついて来られるな?」
宝の地図をベルトポーチへ仕舞うと、肩越しに振り返った瑠璃の瞳が“あなた”を映して、微笑んだ。
●
一方。
「ヨーソロー、ってか?」
こちとら海の荒くれ者――照照海賊団。
大らかで裁縫好きの船長シュヴァルツ(kz0266)と、飄々とした副船長琉架(kz0265)が束ねている。その海賊団の名称の由来は、船のあちらこちらに船長手製の編みぐるみが照る照ると晴天に揺れているからとかそうでないからとか。
此処はオーシャンブルー。
晴れ渡った空。
眩しい。
藍。
潮の香り。
とにかく眩しい。
大海原を悠然と進む海賊船。
「お、見えたな。あの島だろ? どんな望みも叶えるお宝が眠る島、っつーんは」
「ああ、そう聞いてはいるが……そんな都合の良いものが本当にあると思うのかい?」
「何だよ、夢がねぇなぁ」
「君がロマンチスト過ぎるんだよ。宝探しなんて何の張り合いもないじゃないか。海賊なら奪ってこそ、だろう?」
「無駄な殺生をしねぇヤツがよく言うぜ」
「船長が禁じているからなんだが」
眉を浮かせて呆れる琉架が、円筒型に丸めた地図をシュヴァルツの腕へ当てた。シュヴァルツは彼の手からそれを抜くと、甲板を後にする琉架を背にしながら地図を広げる。
「まあ、オレもぶっちゃけ宝にはあんま興味がねぇんだけどよ、宝探しってのぁ宝を手にするまでの過程が面白ぇんじゃねぇか。なあ?」
手許から視線を上げると、肩越しに振り返った京紫の瞳が“あなた”を映して、白い歯を零した。
**
陸か海か。
トレジャーハンターか海賊か。
まだ見ぬ宝を求めて、“あなた”はどちらの道を進む?
リプレイ本文
●
高い蒼。
近い碧。
「「びろーどびろーどたんけんたーい♪」」
「たんけんたーい……」
「……やで!」
「でー……?」
「ニャス!」
「にゃー……」
猫じゃらしを携え、浅瀬のように広がる草を軽やかに進んでいくのは、天鵞絨探検隊のマスコット――ミア(ka7035)。そのミアの三毛猫な尻尾を追いかける紅亜(kz0239)の無防備な背を守るように、見習いのレナード=クーク(ka6613)がハーモニーを奏でながら続く。
「ふっふっふ、願いを叶えてくれる聖杯……これは見逃す訳にはいかへんなぁ」
トレジャーハンターとしての経験はまだ半熟卵。しかしこの青年(年齢不詳)、冒険心は人一倍の固茹でだ。
「待ち受けるお宝にわくわくするでぇ! なあ、クロアくん!」
「そう?」
黒亜(kz0238)の気のない返事は平常運転。時折、極偶に、稀に、レナードのリュートに乗せた二人の歌声が、敵に痛恨の一撃、女性には会心の一撃を放つのだとかそうでないとか。
対照的な性格だというのに、レナードと黒亜の間には、妙な調和が取れていた。そんな二人を鷲目石の双眸に映しながら、艶麗な女性が口角を上げる。探検隊の救急箱である、白藤(ka3768)だ。
「願いかぁ」
話題に上ったその言葉を心の内でもう一度呟いた後、ふ、と、睫毛を伏せる。
閉ざした視界は何を求め――
「(うちの欲しいもんは……)」
瞳孔の底は誰を探すのだろうか。
揺蕩う視線は無意識で、だからこそ、ふと結び合った“彼”の眼に白藤の鼓動は攫われた。咄嗟に俯いた決まりの悪さに、白藤は足早に闊歩する。
「(自分で手に入れんと意味ないわ)」
視界を翳す前髪と共に胸中の靄を振り払った瞬間――
ニュル。
「ん?」
手の甲が何かを弾いた。間髪を入れず足首に違和感。それはシュルシュルと剥き出しの脚を這い上がってきて現在進行形。
「~~~~~ッッッ!!?」
滑らかだが、どうにも好きになれないこの触り心地は――
「あ、蛇ニャス」
マスコットにゃんこが発した暢気な声とは裏腹に、草木の隙間という隙間から大量のチビ蛇がカチコミをかけてきた。
突如の真剣破壊的遭遇(シリアスブレイクエンカウント)!!!
「こおおぉぉのおおぉぉ金とるでええぇぇッッッ!!!」
白藤は脚に絡みついていたチビ蛇を蹴り払い、空へとGOAL。その足で蛇神の杜を全力ですたこらっしゅ。だって何か背後の方からヤバいの来てるし。蛇の上に君臨する蛇の王(それがバジリスクです)みたいなのが凄まじい勢いで蛇行しながら迫ってくるなう。
「うちのお姫様達に怪我なんてさせへんよ!」
飛び跳ねてくるチビ蛇達を銃で撃ち払い手で振り払い足で蹴り払いの白藤。しかし、それが続くのは心の余裕が潰されない限りだろう(因みに今93パーセントくらい潰されてます)
「はっ、まさか男連中もお姫様扱いして欲しいとか言わへんよな!?」
「(馬鹿△なの?)」
結構余裕みたいです。
「わあ、蛇の雨ニャス。すごいニャスなぁ」
空を仰ぎながら文字通りの猫パンチを放つのは、ミアだ。
肉球マークのワンポイントが付いたポシェットには、苺ミルクの飴玉が夢いっぱいに詰まっている。
「降るなら蛇よりお菓子がよかったニャぁ」
「ニャー」
「蛇のお料理は、こう……ちょっと淡泊なんニャスよネ」
「「ニャー」」
「ニャんというか、美味しいとか不味いとかいうレベルじゃないんニャスよ、ミア的に」
「「「ニャー」」」
ミアのパンチが当たる度、肉球グローブの仕様でチビ蛇の口から「ニャー」という鳴き声が漏れる。どうしよう、超不気味。
「蛇の雨……ヘビーな雨……ヘビーレインニャスな!」
「はいはい、おもしろいおもしろい」
黒亜の雑な扱いもなんのその。あの“重たい雨”に比べたら。
降りしきる雨の中、段ボールの中で両膝を抱え「ニャぁニャぁ」と鳴いていた桃猫。
拾って下さいと汚い字で書かれた小さな空間。
冷たい雫。
ひもじい音。
そんな世界から救い出してくれたのは、あの時、偶然通りがかった天鵞絨探検隊の――……
「ちょいさー!!」
ミアの高速猫パンチが空中で弾け、チビ蛇達をノックダウン。その勢いのまま木々を足場に跳躍したミアは、身体を半分持ち上げて迫ってくるバジリスクにライドオンした。バジリスクの頭の上で「ニャっはー♪」と雄叫びを上げるミアを、
「ふわぁ……あんな高い所、怖くないんやろか……でも何だか楽しそうやんね!」
杖の先端から放射する水で、チビ蛇達に水浴びをさせているレナードがあどけなく笑う。時折奏でるリュートはお昼寝効果。え、何、チビ蛇の保父さん?
「はいはーい♪ ミア達はお友達ニャスよー♪」
バジリスクの頭の上のミアは、首から下げたジュリアオレンジ色のオカリナを――
ぴー♪
ぷー♪
ぽー♪
すると、バジリスクを始めとするチビ蛇達は、鎌首揃えて大人しくなった。
「ふむ……ミアは調教師の素質があるな」
隊長の白亜(kz0237)は腰ベルトの後ろに備えたガンホルスターへ騎銃を収めると、乱れた前髪を掻き上げながらミアを仰いだ。
「そのままそいつら引き連れて行ったら?」
「うニャ? 遺跡にニャス?」
「なんで。邪魔でしょ。巣だよ、巣。そいつらにも棲み家くらいあるでしょ?」
「おお、なるほどニャス。そうと決まれば、ささ、みんな帰るニャスよー!」
ミアが号令をかけると、チビ蛇達は一斉に踵を返し、ライドオンDEミアに従っていく。
「……え? ちょ、待ち待ち待ちぃ、音色で帰るよう促せばええんちゃうの? 何でミアが一緒に行くん? ちょちょちょ、ミアステイ! ミアが帰ってどないすんねん! ミアー!! カムバーーーッッック!!!」
とれじゃぁまぁち(完)
●
「――そんなわけ……ないでしょッ!!」
海賊船の整備士兼船大工――ロベリア・李(ka4206)のかました大砲が、エンドロールをぶち壊した。
「……? やだ、何言ってるのかしら私。まあいいわ。気を取り直してもう一発行くわよ!」
シュヴァルツ(kz0266)を船長とする照照海賊団は今正に、海の大渦に呑まれようとしていた。
眩しい空。
昏い海。
ロベリアの大砲が海の怪、タコキングに直撃する。大怪獣よろしい悲鳴が大海原に木霊した。
「ほら、こんなこともあろうかとって準備した甲斐があったでしょ? シュヴァルツ」
「流石オレの船を受け持つ船大工だぜ。正規の船じゃ出来ねぇことが出来るって売り込んできた腕ぁ伊達じゃなかったな」
時折、そこにロマンがあるのなら、と色々改造をしてしまうのが玉に瑕なロベリアであったが、それがまた面白いと、シュヴァルツは彼女の好きにやらせていた。
「さあ、怯んだところを頼むわよー」
ロベリアが砲弾を手にするが、海から湧いて出て来たミニタコーズが装填の邪魔をする。が、そこへ――
「船酔いの時の私に構わないで……容赦しないわよ……?」
アジュールブルーの紐で髪を纏める楽器使いが、日本刀を手に千鳥足のような謎の動きでミニタコを優しく峰打ち。容赦しないと言いつつ鬼になれない灯(ka7179)を、日本刀の持ち主であった琉架(kz0265)は目許と唇に薄い笑みを湛え、彼女の背中をカバーしていた。
「うっ……船長さん、ちょっと波を抑えてきてもらえませんか?」
「お前、この状況で無茶言ってくれるじゃねーの」
乗船時のステータスは常に船酔い。海の上の大半を甲板で過ごすというグロッキー状態なのにも関わらず、“海が好き”と言い張るのは、何としても此処に居たいという意地なのだろうか。
「ふむ、奪わぬ海賊なれば冒険家とどう違うのじゃろうの?」
「あ? 海賊は皆略奪者ってか?」
「違うのか?」
「オレぁ奪いてぇから海賊やってんじゃねぇんだよ。ま、海賊が唯のロマンか只の悪漢か、決めるのはテメェ自身だけどな。ほれ、考察はともかく手ぇ貸せよ」
「ふ……一介の航海士に争えと?」
「どの口が言ってんだよ。早く本性現して来い」
「まあ、船長が望むなれば導くが仕事じゃてな」
花街で占い師をしていた元情報屋――蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、鋼糸の鞭を片手に、舞い踊るように風を切る。
「しかし、奈落の渦……か……あのタコには難儀しよるのじゃがのう……まぁ、最終手段は船長を餌に投げ込めば良かろう」
「オレにS(本性)ってどうすんだオイ」
「うん? おんしの愉快な夢に付き合うのじゃ、餌にされぬ様然りと働いておくれ?」
くすくすと花笑む蜜鈴は、地道にタコキングの脚を切り落としていく。甲板にびちびちと散る切れ端。
「……コレは、後で食えぬかのう? 大王イカの様に味は微妙じゃろうか?」
あの、すいません。大王イカの件について詳しく(ry
「帆を折られるも難儀じゃ……早う斬ってしまわねばの」
言いつつ、「タッコータッコー!」と蜜鈴へ群がろうとするミニタコへ、「喝!」。扇を模した杖に嵌めた石から放たれたのは――
無情な雷撃。
無慈悲な稲妻。
裁きの天雷。
後には、焦げたミニタコの芳ばしい香りが残されていた。
「今宵の夕餉はタコ飯かのう……料理人と相談せねば」
蜜鈴が脳内レシピを捲る死角で、グランドピアノの形を模した小型楽器を取り出したのは灯だ。ピアノの蓋を開けると、そこから鍵盤の幻影が流水のように現れ、灯が奏でると同時、下処理のされていないミニタコ達は次々と力が抜けていく。
「さあ、みんな……今の内に……!」
灯は虚脱状態のミニタコを、せっせと海へ返していく。
「せめて、この小さな命だけは助けたいの」
――あれ? 目下の急務って何だっけ?
(大砲の音)
●
「ただいまーニャス」
はい、おかえり。
猩々木の遺跡に辿り着いた探検隊一行。
遺跡は赤という赤の花で咲き乱れ、所々に翁草が隠れていたが、「あ、それ毒草だから触りなや?」と言う白藤の助言により、誰一人大事に至らず奥へ進むことが出来た。
「うぇ……まだ鱗の感触が残ってそうで嫌やわ……」
白藤が脚をさすっていると、目の前の空間にトロッコースターが現れた。
パッと顔を輝かせた白藤とミアはまるで示し合わせたかのように笑みを交わすと――
「ミア、いっちばーん!」
「うちはにばーん! 他の人は好きな方に乗り込んでや、さぁさぁ!!」
互いに別々のトロッコへ腰を落とし、恋愛ゲーム宛らの二択を迫る。
「はわ……いいなぁ……私もー……」
紅亜は三毛猫の尻尾を追いかけたが……どうしよう、この二人が揃ったら不安しか残らない。
「……クロ、白藤とクークを頼むぞ」
「ん」
いざ、心労の片道切符へ。
「うわあああああん! 誰か止めてほしいやんねぇぇええええ!!」
風を切って走る爽快感など全くない。トロッコースターはうねうねくねくね上下に動き、ぐんぐん加速。
「……ふ、振り落とされへんようにだけ気を付けへんと……って、これ、早ない? あっつ!?」
下をご覧下さいませ。あっちっちな溶岩となっております。
「うせやろ……?」
しかし、白藤の双眸はそれ以上の衝撃を目にすることになる。
「……え?」
今、白亜の鞭で宙吊りにされたミア(とトロッコ)が疾走して行ったような。
棒切れに刺したおにぎりを握り締めていたのは、恐らく、溶岩へ近づけて焼きおにぎりにでもしようとしたのだろう。だが、身を乗り出しすぎ……その先は言わずもがな。
「……うせやろ?」
一方、夕飯の食材をGETした海賊団。
遺跡に繋がる洞窟へと着船し、お宝求め下船した一行は、洞窟内のトラップに差し掛かった。だが、灯とちらりと目を合わせた蜜鈴が「心が示すはポインセチアじゃのう……」と、正しい石床を見定め、先を目指していく。
「君の手を取り損ねてしまったね」
軽口を零しながら灯の横を通り過ぎていく琉架。灯は、手にしていた刀をきゅっと胸に寄せる。平時は重すぎて抜けなくとも、常に手放さず持っている理由は――……。
「猩々木の遺跡に聖杯か……神の血でも飲めるのでしょうか? なんでも願いが叶うなら、私は……、……私はみんなの願いが聞きたい」
●
最奥部――赫の玉座。
重厚な金と高貴な赤で形作られた椅子には、純白の聖杯が鎮座するように据えられていた。シュヴァルツがその空間に足を踏み入れると――
「宝は渡さへんで!」
白藤が現れ、彼の顎に銃口を突きつける。
「あらえぇ男、宝なんざなくてもなぁんでも手に入りそうやのに――……って、蜜鈴?」
「おや、其処に居るのは愛らしき探検家達ではないか」
今日という日の同じ刻。古の遺跡の最奥で出くわした探検隊と海賊団。
「とんだ偶然だけど、宝は一つ。だったらやることも一つでしょ。ねえ、副船長?」
「ん? いや、李さん。宝ならもうあの子が手にしているよ」
「え?」
狐につままれたような顔でぽかんと玉座に目をやると、そこには――
「ニャはははは、我は宝を手にする者ニャりー!!!」
と、ミアが聖杯を掲げていた。
「ふふ、妾の願いは既に叶うて居る故、宝は要らぬ。好きにせい」
「私も、私の願いは……新しい世界を、このみんなと見たいだけ。だから、私も願いを叶えなくていいわ」
自分で手を伸ばしたいから、と。
「みんな欲がないニャスなぁ。……えへへ、何でもお願いごと叶うのかぁ……ミアは……ミアは……――あ」
ふと、目に映ったのは、シュヴァルツがベルトに下げていた――
「編みぐるみ! ミア、編みぐるみが欲しいニャス! ミアそっくりなやつ!」
「あ? 何だよ、そんなんオレがいくらでも作ってやるぜ?」
「わあ、ほんとニャス? やったー! あと、くーちゃんとー、しーちゃんとダディがあっちっちしてるのとー」
「意味深だなオイ」
「あと、お歌を歌ってるクロちゃんとレナードちゃんも!」
「あいよ」
「えへへ……貰ったらお家に飾ろうっと。これで独りでも寂しくないニャス」
「……は? びしょ濡れの段ボールから連れ出してあげたのに、まだそんなこと言ってんの? 三毛には三毛の居場所ができたんだから、もう独りじゃないでしょ。……ほら、貸して。オレ、喉渇いてたんだから」
彼女の手からひょいと聖杯を取った黒亜が、聖杯になみなみと湧いた苺牛乳を飲み干した。そして、願いごとは紅亜の金平糖、シュヴァルツの待ち針と続く。
「なんや……聖杯の願い事って一つやなくてもえぇんかい。拍子抜けやわぁ。……白亜は何か願うん?」
「いや、自分で交渉をして手に入れようと思っている」
「ふぅん……?」
「先日、フリークショーでアルビノの豹を見かけたんだ」
「あら」
「目を奪われるほど美しく、やるせないほど孤独な豹でな。……ああ、そうか。だから放っておけないのか」
「?」
「同じ色なんだ。君の可愛らしい、その瞳と」
**
斯くして、探検隊と海賊団の宝探しは幕を閉じた。
次に彼等を待ち受けるものがあったとしても、そこに宝は無いのかもしれない。
宝は何時だって、すぐ傍にあるのだから。
高い蒼。
近い碧。
「「びろーどびろーどたんけんたーい♪」」
「たんけんたーい……」
「……やで!」
「でー……?」
「ニャス!」
「にゃー……」
猫じゃらしを携え、浅瀬のように広がる草を軽やかに進んでいくのは、天鵞絨探検隊のマスコット――ミア(ka7035)。そのミアの三毛猫な尻尾を追いかける紅亜(kz0239)の無防備な背を守るように、見習いのレナード=クーク(ka6613)がハーモニーを奏でながら続く。
「ふっふっふ、願いを叶えてくれる聖杯……これは見逃す訳にはいかへんなぁ」
トレジャーハンターとしての経験はまだ半熟卵。しかしこの青年(年齢不詳)、冒険心は人一倍の固茹でだ。
「待ち受けるお宝にわくわくするでぇ! なあ、クロアくん!」
「そう?」
黒亜(kz0238)の気のない返事は平常運転。時折、極偶に、稀に、レナードのリュートに乗せた二人の歌声が、敵に痛恨の一撃、女性には会心の一撃を放つのだとかそうでないとか。
対照的な性格だというのに、レナードと黒亜の間には、妙な調和が取れていた。そんな二人を鷲目石の双眸に映しながら、艶麗な女性が口角を上げる。探検隊の救急箱である、白藤(ka3768)だ。
「願いかぁ」
話題に上ったその言葉を心の内でもう一度呟いた後、ふ、と、睫毛を伏せる。
閉ざした視界は何を求め――
「(うちの欲しいもんは……)」
瞳孔の底は誰を探すのだろうか。
揺蕩う視線は無意識で、だからこそ、ふと結び合った“彼”の眼に白藤の鼓動は攫われた。咄嗟に俯いた決まりの悪さに、白藤は足早に闊歩する。
「(自分で手に入れんと意味ないわ)」
視界を翳す前髪と共に胸中の靄を振り払った瞬間――
ニュル。
「ん?」
手の甲が何かを弾いた。間髪を入れず足首に違和感。それはシュルシュルと剥き出しの脚を這い上がってきて現在進行形。
「~~~~~ッッッ!!?」
滑らかだが、どうにも好きになれないこの触り心地は――
「あ、蛇ニャス」
マスコットにゃんこが発した暢気な声とは裏腹に、草木の隙間という隙間から大量のチビ蛇がカチコミをかけてきた。
突如の真剣破壊的遭遇(シリアスブレイクエンカウント)!!!
「こおおぉぉのおおぉぉ金とるでええぇぇッッッ!!!」
白藤は脚に絡みついていたチビ蛇を蹴り払い、空へとGOAL。その足で蛇神の杜を全力ですたこらっしゅ。だって何か背後の方からヤバいの来てるし。蛇の上に君臨する蛇の王(それがバジリスクです)みたいなのが凄まじい勢いで蛇行しながら迫ってくるなう。
「うちのお姫様達に怪我なんてさせへんよ!」
飛び跳ねてくるチビ蛇達を銃で撃ち払い手で振り払い足で蹴り払いの白藤。しかし、それが続くのは心の余裕が潰されない限りだろう(因みに今93パーセントくらい潰されてます)
「はっ、まさか男連中もお姫様扱いして欲しいとか言わへんよな!?」
「(馬鹿△なの?)」
結構余裕みたいです。
「わあ、蛇の雨ニャス。すごいニャスなぁ」
空を仰ぎながら文字通りの猫パンチを放つのは、ミアだ。
肉球マークのワンポイントが付いたポシェットには、苺ミルクの飴玉が夢いっぱいに詰まっている。
「降るなら蛇よりお菓子がよかったニャぁ」
「ニャー」
「蛇のお料理は、こう……ちょっと淡泊なんニャスよネ」
「「ニャー」」
「ニャんというか、美味しいとか不味いとかいうレベルじゃないんニャスよ、ミア的に」
「「「ニャー」」」
ミアのパンチが当たる度、肉球グローブの仕様でチビ蛇の口から「ニャー」という鳴き声が漏れる。どうしよう、超不気味。
「蛇の雨……ヘビーな雨……ヘビーレインニャスな!」
「はいはい、おもしろいおもしろい」
黒亜の雑な扱いもなんのその。あの“重たい雨”に比べたら。
降りしきる雨の中、段ボールの中で両膝を抱え「ニャぁニャぁ」と鳴いていた桃猫。
拾って下さいと汚い字で書かれた小さな空間。
冷たい雫。
ひもじい音。
そんな世界から救い出してくれたのは、あの時、偶然通りがかった天鵞絨探検隊の――……
「ちょいさー!!」
ミアの高速猫パンチが空中で弾け、チビ蛇達をノックダウン。その勢いのまま木々を足場に跳躍したミアは、身体を半分持ち上げて迫ってくるバジリスクにライドオンした。バジリスクの頭の上で「ニャっはー♪」と雄叫びを上げるミアを、
「ふわぁ……あんな高い所、怖くないんやろか……でも何だか楽しそうやんね!」
杖の先端から放射する水で、チビ蛇達に水浴びをさせているレナードがあどけなく笑う。時折奏でるリュートはお昼寝効果。え、何、チビ蛇の保父さん?
「はいはーい♪ ミア達はお友達ニャスよー♪」
バジリスクの頭の上のミアは、首から下げたジュリアオレンジ色のオカリナを――
ぴー♪
ぷー♪
ぽー♪
すると、バジリスクを始めとするチビ蛇達は、鎌首揃えて大人しくなった。
「ふむ……ミアは調教師の素質があるな」
隊長の白亜(kz0237)は腰ベルトの後ろに備えたガンホルスターへ騎銃を収めると、乱れた前髪を掻き上げながらミアを仰いだ。
「そのままそいつら引き連れて行ったら?」
「うニャ? 遺跡にニャス?」
「なんで。邪魔でしょ。巣だよ、巣。そいつらにも棲み家くらいあるでしょ?」
「おお、なるほどニャス。そうと決まれば、ささ、みんな帰るニャスよー!」
ミアが号令をかけると、チビ蛇達は一斉に踵を返し、ライドオンDEミアに従っていく。
「……え? ちょ、待ち待ち待ちぃ、音色で帰るよう促せばええんちゃうの? 何でミアが一緒に行くん? ちょちょちょ、ミアステイ! ミアが帰ってどないすんねん! ミアー!! カムバーーーッッック!!!」
とれじゃぁまぁち(完)
●
「――そんなわけ……ないでしょッ!!」
海賊船の整備士兼船大工――ロベリア・李(ka4206)のかました大砲が、エンドロールをぶち壊した。
「……? やだ、何言ってるのかしら私。まあいいわ。気を取り直してもう一発行くわよ!」
シュヴァルツ(kz0266)を船長とする照照海賊団は今正に、海の大渦に呑まれようとしていた。
眩しい空。
昏い海。
ロベリアの大砲が海の怪、タコキングに直撃する。大怪獣よろしい悲鳴が大海原に木霊した。
「ほら、こんなこともあろうかとって準備した甲斐があったでしょ? シュヴァルツ」
「流石オレの船を受け持つ船大工だぜ。正規の船じゃ出来ねぇことが出来るって売り込んできた腕ぁ伊達じゃなかったな」
時折、そこにロマンがあるのなら、と色々改造をしてしまうのが玉に瑕なロベリアであったが、それがまた面白いと、シュヴァルツは彼女の好きにやらせていた。
「さあ、怯んだところを頼むわよー」
ロベリアが砲弾を手にするが、海から湧いて出て来たミニタコーズが装填の邪魔をする。が、そこへ――
「船酔いの時の私に構わないで……容赦しないわよ……?」
アジュールブルーの紐で髪を纏める楽器使いが、日本刀を手に千鳥足のような謎の動きでミニタコを優しく峰打ち。容赦しないと言いつつ鬼になれない灯(ka7179)を、日本刀の持ち主であった琉架(kz0265)は目許と唇に薄い笑みを湛え、彼女の背中をカバーしていた。
「うっ……船長さん、ちょっと波を抑えてきてもらえませんか?」
「お前、この状況で無茶言ってくれるじゃねーの」
乗船時のステータスは常に船酔い。海の上の大半を甲板で過ごすというグロッキー状態なのにも関わらず、“海が好き”と言い張るのは、何としても此処に居たいという意地なのだろうか。
「ふむ、奪わぬ海賊なれば冒険家とどう違うのじゃろうの?」
「あ? 海賊は皆略奪者ってか?」
「違うのか?」
「オレぁ奪いてぇから海賊やってんじゃねぇんだよ。ま、海賊が唯のロマンか只の悪漢か、決めるのはテメェ自身だけどな。ほれ、考察はともかく手ぇ貸せよ」
「ふ……一介の航海士に争えと?」
「どの口が言ってんだよ。早く本性現して来い」
「まあ、船長が望むなれば導くが仕事じゃてな」
花街で占い師をしていた元情報屋――蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は、鋼糸の鞭を片手に、舞い踊るように風を切る。
「しかし、奈落の渦……か……あのタコには難儀しよるのじゃがのう……まぁ、最終手段は船長を餌に投げ込めば良かろう」
「オレにS(本性)ってどうすんだオイ」
「うん? おんしの愉快な夢に付き合うのじゃ、餌にされぬ様然りと働いておくれ?」
くすくすと花笑む蜜鈴は、地道にタコキングの脚を切り落としていく。甲板にびちびちと散る切れ端。
「……コレは、後で食えぬかのう? 大王イカの様に味は微妙じゃろうか?」
あの、すいません。大王イカの件について詳しく(ry
「帆を折られるも難儀じゃ……早う斬ってしまわねばの」
言いつつ、「タッコータッコー!」と蜜鈴へ群がろうとするミニタコへ、「喝!」。扇を模した杖に嵌めた石から放たれたのは――
無情な雷撃。
無慈悲な稲妻。
裁きの天雷。
後には、焦げたミニタコの芳ばしい香りが残されていた。
「今宵の夕餉はタコ飯かのう……料理人と相談せねば」
蜜鈴が脳内レシピを捲る死角で、グランドピアノの形を模した小型楽器を取り出したのは灯だ。ピアノの蓋を開けると、そこから鍵盤の幻影が流水のように現れ、灯が奏でると同時、下処理のされていないミニタコ達は次々と力が抜けていく。
「さあ、みんな……今の内に……!」
灯は虚脱状態のミニタコを、せっせと海へ返していく。
「せめて、この小さな命だけは助けたいの」
――あれ? 目下の急務って何だっけ?
(大砲の音)
●
「ただいまーニャス」
はい、おかえり。
猩々木の遺跡に辿り着いた探検隊一行。
遺跡は赤という赤の花で咲き乱れ、所々に翁草が隠れていたが、「あ、それ毒草だから触りなや?」と言う白藤の助言により、誰一人大事に至らず奥へ進むことが出来た。
「うぇ……まだ鱗の感触が残ってそうで嫌やわ……」
白藤が脚をさすっていると、目の前の空間にトロッコースターが現れた。
パッと顔を輝かせた白藤とミアはまるで示し合わせたかのように笑みを交わすと――
「ミア、いっちばーん!」
「うちはにばーん! 他の人は好きな方に乗り込んでや、さぁさぁ!!」
互いに別々のトロッコへ腰を落とし、恋愛ゲーム宛らの二択を迫る。
「はわ……いいなぁ……私もー……」
紅亜は三毛猫の尻尾を追いかけたが……どうしよう、この二人が揃ったら不安しか残らない。
「……クロ、白藤とクークを頼むぞ」
「ん」
いざ、心労の片道切符へ。
「うわあああああん! 誰か止めてほしいやんねぇぇええええ!!」
風を切って走る爽快感など全くない。トロッコースターはうねうねくねくね上下に動き、ぐんぐん加速。
「……ふ、振り落とされへんようにだけ気を付けへんと……って、これ、早ない? あっつ!?」
下をご覧下さいませ。あっちっちな溶岩となっております。
「うせやろ……?」
しかし、白藤の双眸はそれ以上の衝撃を目にすることになる。
「……え?」
今、白亜の鞭で宙吊りにされたミア(とトロッコ)が疾走して行ったような。
棒切れに刺したおにぎりを握り締めていたのは、恐らく、溶岩へ近づけて焼きおにぎりにでもしようとしたのだろう。だが、身を乗り出しすぎ……その先は言わずもがな。
「……うせやろ?」
一方、夕飯の食材をGETした海賊団。
遺跡に繋がる洞窟へと着船し、お宝求め下船した一行は、洞窟内のトラップに差し掛かった。だが、灯とちらりと目を合わせた蜜鈴が「心が示すはポインセチアじゃのう……」と、正しい石床を見定め、先を目指していく。
「君の手を取り損ねてしまったね」
軽口を零しながら灯の横を通り過ぎていく琉架。灯は、手にしていた刀をきゅっと胸に寄せる。平時は重すぎて抜けなくとも、常に手放さず持っている理由は――……。
「猩々木の遺跡に聖杯か……神の血でも飲めるのでしょうか? なんでも願いが叶うなら、私は……、……私はみんなの願いが聞きたい」
●
最奥部――赫の玉座。
重厚な金と高貴な赤で形作られた椅子には、純白の聖杯が鎮座するように据えられていた。シュヴァルツがその空間に足を踏み入れると――
「宝は渡さへんで!」
白藤が現れ、彼の顎に銃口を突きつける。
「あらえぇ男、宝なんざなくてもなぁんでも手に入りそうやのに――……って、蜜鈴?」
「おや、其処に居るのは愛らしき探検家達ではないか」
今日という日の同じ刻。古の遺跡の最奥で出くわした探検隊と海賊団。
「とんだ偶然だけど、宝は一つ。だったらやることも一つでしょ。ねえ、副船長?」
「ん? いや、李さん。宝ならもうあの子が手にしているよ」
「え?」
狐につままれたような顔でぽかんと玉座に目をやると、そこには――
「ニャはははは、我は宝を手にする者ニャりー!!!」
と、ミアが聖杯を掲げていた。
「ふふ、妾の願いは既に叶うて居る故、宝は要らぬ。好きにせい」
「私も、私の願いは……新しい世界を、このみんなと見たいだけ。だから、私も願いを叶えなくていいわ」
自分で手を伸ばしたいから、と。
「みんな欲がないニャスなぁ。……えへへ、何でもお願いごと叶うのかぁ……ミアは……ミアは……――あ」
ふと、目に映ったのは、シュヴァルツがベルトに下げていた――
「編みぐるみ! ミア、編みぐるみが欲しいニャス! ミアそっくりなやつ!」
「あ? 何だよ、そんなんオレがいくらでも作ってやるぜ?」
「わあ、ほんとニャス? やったー! あと、くーちゃんとー、しーちゃんとダディがあっちっちしてるのとー」
「意味深だなオイ」
「あと、お歌を歌ってるクロちゃんとレナードちゃんも!」
「あいよ」
「えへへ……貰ったらお家に飾ろうっと。これで独りでも寂しくないニャス」
「……は? びしょ濡れの段ボールから連れ出してあげたのに、まだそんなこと言ってんの? 三毛には三毛の居場所ができたんだから、もう独りじゃないでしょ。……ほら、貸して。オレ、喉渇いてたんだから」
彼女の手からひょいと聖杯を取った黒亜が、聖杯になみなみと湧いた苺牛乳を飲み干した。そして、願いごとは紅亜の金平糖、シュヴァルツの待ち針と続く。
「なんや……聖杯の願い事って一つやなくてもえぇんかい。拍子抜けやわぁ。……白亜は何か願うん?」
「いや、自分で交渉をして手に入れようと思っている」
「ふぅん……?」
「先日、フリークショーでアルビノの豹を見かけたんだ」
「あら」
「目を奪われるほど美しく、やるせないほど孤独な豹でな。……ああ、そうか。だから放っておけないのか」
「?」
「同じ色なんだ。君の可愛らしい、その瞳と」
**
斯くして、探検隊と海賊団の宝探しは幕を閉じた。
次に彼等を待ち受けるものがあったとしても、そこに宝は無いのかもしれない。
宝は何時だって、すぐ傍にあるのだから。
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教えてシュヴァルツ船長! 蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009) エルフ|22才|女性|魔術師(マギステル) |
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