ゲスト
(ka0000)
【AP】診断名は中二病?
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/07 07:30
- 完成日
- 2019/04/14 08:38
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
※これはあくまで夢依頼です。メインストーリーには一切関係ありません。安心して下さい。
●
中二病、と言う言葉がある。
ローティーンからミドルティーン、いわゆる多感な思春期の少年少女が【自分は特別である】と誤認識して少し変わった言動をする現象であり、【病】という単語はついているがとくに発熱するとかそう言うことのないものである。
まあ、誰でもそう言う錯覚をすることは人生に一度はあるだろう。
ただ、それは基本的に一過性のもので、一定の時間を過ぎれば落ち着くものなのだ……基本的には。
●
春もうららの日のことだった。
午後のおやつ時、のんびりと喫茶店でお茶を飲んでいたリムネラは、ふと目の前の光景に目を奪われた。
少年たちが数人、なにやら熱心に語り合っている。
「俺の左目がッ、疼く……!」
「どうしたシオン、とうとう闇の焔(ダークネス・フレイム)が覚醒するというのか……!?」
「ウッ……俺の左腕の聖痕(スティグマ)も、熱い……ついに転生してくるのかもしれない……奴が……!」
――聞いている限り、なにやら不穏な言葉ではあるが、リムネラはこう言うものを詳しく知らないので、少年たちの会話の内容がわかるわけではない。
ただ、こう思った。
なんだか楽しそうだと。
そう思った途端、ずきん――と、頭が痛くなってきた。
●
「お帰りなさいリムネラさ……え?」
外出から帰ってきたリムネラを出迎えたジークは目を丸くした。
「リムネラさん、どこか怪我でも?」
彼女が何故か、腕に見かけない包帯を巻いていたからだ。
「……これは封印なんデス」
リムネラが言う。
「封印……?」
「エエ……コレが解き放たれてしまうト、『永遠の漆黒(エターナル・ジェットブラック)が……」
「!?!?!?」
リムネラの言葉が意味不明である。何となく中二病くさいなーと思ったその次の瞬間……
「とうとう目覚めてしまうのか……あなたも」
気がつけばそんな言葉を口にしていた。
そう、中二病が空気感染するようになっているのだった。
●
中二病、と言う言葉がある。
ローティーンからミドルティーン、いわゆる多感な思春期の少年少女が【自分は特別である】と誤認識して少し変わった言動をする現象であり、【病】という単語はついているがとくに発熱するとかそう言うことのないものである。
まあ、誰でもそう言う錯覚をすることは人生に一度はあるだろう。
ただ、それは基本的に一過性のもので、一定の時間を過ぎれば落ち着くものなのだ……基本的には。
●
春もうららの日のことだった。
午後のおやつ時、のんびりと喫茶店でお茶を飲んでいたリムネラは、ふと目の前の光景に目を奪われた。
少年たちが数人、なにやら熱心に語り合っている。
「俺の左目がッ、疼く……!」
「どうしたシオン、とうとう闇の焔(ダークネス・フレイム)が覚醒するというのか……!?」
「ウッ……俺の左腕の聖痕(スティグマ)も、熱い……ついに転生してくるのかもしれない……奴が……!」
――聞いている限り、なにやら不穏な言葉ではあるが、リムネラはこう言うものを詳しく知らないので、少年たちの会話の内容がわかるわけではない。
ただ、こう思った。
なんだか楽しそうだと。
そう思った途端、ずきん――と、頭が痛くなってきた。
●
「お帰りなさいリムネラさ……え?」
外出から帰ってきたリムネラを出迎えたジークは目を丸くした。
「リムネラさん、どこか怪我でも?」
彼女が何故か、腕に見かけない包帯を巻いていたからだ。
「……これは封印なんデス」
リムネラが言う。
「封印……?」
「エエ……コレが解き放たれてしまうト、『永遠の漆黒(エターナル・ジェットブラック)が……」
「!?!?!?」
リムネラの言葉が意味不明である。何となく中二病くさいなーと思ったその次の瞬間……
「とうとう目覚めてしまうのか……あなたも」
気がつけばそんな言葉を口にしていた。
そう、中二病が空気感染するようになっているのだった。
リプレイ本文
――『中二病』は、異常な早さで感染拡大を続けていた。
●
『永遠の漆黒』――リムネラの中に眠っている(らしい)、闇の封印(っぽいなにか)。
「リムネラさん……とうとうあなたの封印が解けてしまうのね……やはり、私たちは戦うしかないみたい……!」
バーンと扉を開けてやってきたのは、抑止力として世界決壊に生み出された存在(と言う設定)の『刹那の純白(イフェメラル・ピュアホワイト)』、その名前はUisca Amhran(ka0754)。
世界のバランサー的存在である白龍ヘレが漆黒に染まることのないよう監視し、場合によってはその傍らにいるリムネラを排除、あるいは浄化する為にいる――それがUisca、らしい。
「……ッ! リムネラ、おまえも、目覚めかけてしまっているのか……! 何故……どうして運命というのは、我々をそっとしておいてくれないのだ……!?」
同じようにやってきてそう声を荒げているのは、レイア・アローネ(ka4082)。彼女の右目は黒い布を巻いた眼帯で覆われており、いつもよりも数割増し、闇のオーラ(?)に覆われている。
そう、これは彼女に課せられた前世からの因縁、あるいは呪いと呼ばれるもの(本人談)。
終末の邪神リンクブレイブの七眷属たるものへの、逃れられぬ茨の鎖……(と言うことらしい)。
そう、彼女も眷属。『永遠の漆黒』と対をなす、『無限の極黒』(メビウス・ダークナイト)の転生体、なのだという……。
あれ、黒がかぶってるけどまあいいか。
「っ、あそこにいるのは『刹那の純白』、だと……!? うう、すでに奴らの手の者が来ていたのか……!」
Uiscaを見ておののくレイア。レイアは彼女のことをこう認識したらしい。そう、『創世神グロリアスドライヴ』の使徒である、と。
「『刹那の純白』……六大天使の筆頭……もうここまで来ていたとはな……はっ、まさかジーク……お前が……!!」
問われたジークは、眼鏡をきらりと光らせ、口元に細い笑みを浮かべるのみ。それは無言ながら肯定を意味しているのが一目でわかるものだった。
「仕方ない、リムネラ。ここにいては危険だ!」
レイアはそう言って彼女の手を取ろうとするが、そうはさせじとUiscaも毅然とした口調で言葉を発する。
「そのままレイアさんについていったら……だめ! 封印が放たれてしまう……!」
ユニオンリーダーを前にして、視線を合わせる二人の少女。いや、その視線には火花が散っていて――対峙している、と言う方が適切だ。
「……どちらにしてもここでは、あまりに影響が大きい。少し広いところに行った方が良さそうだ」
レイアの言葉に、そう言うことならとUiscaも力を分けてもらうという名目でヘレに触れながら頷く。
さらなる悲劇(?)が待つとも知らずに――。
●
いっぽうその頃、リゼリオ郊外では。
仙堂 紫苑(ka5953)、キャリコ・ビューイ(ka5044)、そしてアルマ・A・エインズワース(ka4901)の、よく依頼でつるんでいるハンター仲間同士が、今日も今日とて同じ依頼でにぎやかに話し合っていた。よくあるちょっとした雑魔討伐の依頼だ。……と、ふわりと強い風が吹き――
「……ふ、今日の俺はどうにも……血が騒ぐようだな」
キャリコがそう言って、口元ににやりと笑みを浮かべた。アルマと紫苑は一瞬目を丸くするが、すぐに――
「確かに。しかし今日の敵程度、俺の『機械仕掛けの三つ眼(ギア・サード・アイズ)』を使うまでもない……」
紫苑もそう言って頷く。中二病でもキャリコはニヒル系、紫苑はクール系になってしまったようだ。そしてアルマはと言えば。
「ああ……シオン、我が参謀よ。この程度であれば――ええ、ほんのわずか、薙ぐ程度で事足ります。とはいえそれだけでは僕も退屈です、少しの遊びを許しましょう」
目元をわずかに細め、そう言い放つ。アルマは普段から『魔王の卵』なんて言っているが、今日はそれが更に五割増し、くわえておっとりした大型犬っぽい雰囲気もどこかに飛んでいってしまっている。なんというか……本物の魔王っぽい。あくまで当社比、のような気がしなくもないけれど、それでもずいぶん魔王っぽい雰囲気を醸し出しているのは事実だ。
キャリコと紫苑はその言葉に応、とばかりに技を繰り出す。
「ふむん、デア・フライシュッツの俺からは逃れられん……我が銃弾は過たず敵を穿つ! 祈る余裕なぞ与えん! カラミティ・トリガー!」
銃を構え、マテリアルを集め……一気に解き放つキャリコ。
「俺の手の届くところに現れたことを後悔しながら消えるがいい……塵も残さず、な。そうすれば、お前たちの叫び声すら、俺が調律し、鎮魂歌(レクイエム)へと仕立てよう」
杖をかつかつと鳴らして近づき、前髪を手で押さえ、見下ろすようにしながら口元をゆがめる紫苑。星神器を預かり操る紫苑にしてみれば、言った言葉の一部はあながち間違っていないところもあるが……でも半分以上は典型的な中二症状だ。
「顕現せよ光の矢……我は神の徒、我が意志と矜持をもって汝を神の御許へと導こう。夜闇を貫く流星よりも、大地を穿つ雷よりも、早く、早く、早く、汝のもとへと届かせよう。駆け抜ける裁きの一射、マジックアロー!」
紫苑の詠唱はごくごく一般的なスキルを用いただけだが、低級の雑魔であればこの程度でも退治することは難しくない。じっさい、小型の雑魔はその一閃で焼き尽くされてしまった。それを見たアルマは満足そうに微笑み、紫苑本人も
「最低位の魔法で消えてしまうとは、俺が強すぎるのが問題か?」
と笑みを浮かべた。といっても、その言葉の後半が正しいかどうかはいささか疑問ではあるが。
「変えることの出来ない己の運命を呪いながら、世界機工士(デウス・エクス・マキナ)たる俺に消されるがいい……」
冷ややかな笑みのまま、そう言う彼には独特のすごみがある。。そして、そんな二人を従えた(と思われる)アルマはゆらりと前に出た。これでも彼は一応前衛なのだ。
杖をまるでタクトかなにかのように軽やかに構え、まるで指揮者かなにかのように魔法を操る。
「汚い手で触れるな、下郎めが」
そう言いながら防御魔法を使い、容赦ないまでの魔法を使う。
「慈悲深きは時を封じる焔の揺り籠。零下の夜に咲け、曼珠沙華――眠りなさい、《終蒼(追想)の冷焔(霊園)》」
詠唱が終わると、手元に現れるのは黄金色の光を帯びた彼岸花、そしてその芯から蒼炎を放っていく。炎に包まれた雑魔はあっという間にその命の火が消えるのだ。そういった様子を愉快そうに見つめながら、
「……今は還りなさい、愚かな『勇者』たち……貴方のもとにも、時期に穏やかな宵闇が降るでしょうから」
優雅な態度で丁寧な一礼をする。それは確かに『魔王』と呼ばれてしかるべきものの立ち居振る舞いなのだろう。
「ふふ、戻りましょうか、我らが居城へ……キャリコさん、貴方もともに。僕手ずから御茶でも淹れて差し上げましょう」
言いながら浮かべた笑みは、いつもよりもどこか冷たく……そして強さの感じられるものだった。
●
アルマたちと同様、依頼に赴いていたのは星空の幻(ka6980)。此方はシンプルな護衛依頼だ。
――しかし道すがら、雑魔が襲いかかってきた。
と、星空の幻は左目のカラーコンタクトの上に単眼……いわゆるモノクルをつけ、ばん! と大仰な動きをする。
「我が名はグラム、永遠に届かない光の向こう(深淵)を貫く白銀の審判人(スナイパー)である!」
そう言って大きく胸を張っていた。そして、なにやらぐんにゃりとした不思議なポーズをとってみせる。独特な立ち姿は、漫画でよく見るようなものだ。
「この左目……邪神眼ファフニールを使うほどもないと思ったが……そう言うわけにもいかないようだな」
どうやらあの左目には名前があるらしい。これもよくありがちな中二症状と言えばそうなのだが。魔力が活性化するという設定らしい。
そして中二病にありがちな症状でもあるように、普段よりも饒舌になっている。
「ふふふ……貴様、この邪神眼ファフニールを使わせたことを後悔しゅるがいい……!」
……普段がある程度普通なぶん、慣れない口上で舌をかんでしまったが、それもまたご愛敬と言うものだろう。
●
さて、リムネラとレイア、Uiscaのやりとりは街の郊外に持ち越された。ちょうどその頃、街をふらりと歩いていたのはイルミナ(ka5759)だ。
(私は故郷を失った、天涯孤独のエルフ……そんな私に居場所などないと思っていたわ。それでも、ひとって変われるものね……今はこんなにも穏やかな気持ちになれている……そう、あの子のおかげで)
年下の恋人に思いをはせながら、歩くイルミナ。何となく笑われている気がすることには、ほんのりと苛立ちを覚えているが、それは仕方がない。
彼女は――元々中二病である。
他の面々が「普段はそうでもない」あるいは「スキルはそれっぽいが他は基本まとも」であることが多い中、イルミナは無自覚に中二病なのである。
そんな彼女が普段と雰囲気の違うリムネラやハンターたちを見て、どう思うか。
「リムネラさんの中の邪を、封印しなくちゃ……!」
そう焦りを隠せないUisca。
「このまま、目覚めてしまっては……!!」
同じく焦りの色を見せるレイア。
彼女たちの言葉を耳にし、イルミナの耳がぴくりと動く。
「……封印? あいつ? いったい、何なのこれは……まさか、新たな歪虚……!?」
黙示騎士たちとの戦いも佳境の今日この頃だと言うのに、ここに来て更なる新たな敵が現れた、とでも言うのだろうか。
しかも、ハンターの仲間たちとのようで……そこまで考えて、背筋が凍り付くような寒気を感じた。
(あの子は無事なの? もし彼まで歪虚の力に目覚めたとしたら……いえ、それどころか私が歪虚の力に覚醒したのだとしたら……!!)
口に出しはしないものの、発想がどんどん急展開していく。
「ちょっとあなたたち、……ッ、どういうことなの!?」
思わず声をかけるが、レイアとUiscaはくっと唇をかみ、
「知られてはいけないことだ……聞かなかったという方がいい」
「そう……関わりを持てば貴方も危険なのだから」
そう言い捨てるが、イルミナはかぶりを振る。
こんなことであのことの関係が引き裂かれたりなどしたら、どうしよう――イルミナはぶるぶると震えた。
「そんなこと、言われても……! 知ってしまったんだもの、世界と愛する人、どちらをと言われれば迷わず後者をとるわ……あの子のいない世界なんて、生きられない……! けれど、あの子が世界の敵になったとしたら……私は彼を、守れるの……?!」
――こう考えて、頭を抱える。
ところでこのイルミナ。じつは中二病に感染していない。ナチュラル中二病ムーブ、恐るべし。
「そうね……このままでもいけないのは事実。とりあえず一緒に来てくれる?」
Uiscaがそういうと、イルミナはこくっと頷いた。
そして、また一人――
鬼の里出身の多由羅(ka6167)は街を歩いていると、どことなく違和感を感じた。なんというか、いつもより覇気を漲らせたような人が多い気がする。人々の話に耳を傾けてみれば、二つ名だとか、異名だとか、必殺技だとか……そんな単語が聞き取れる。
(いつの間にか、私の知らぬ間に……恐るべきことです)
しかしこちらも転んではただで起きない。
(私も考えねば……!)
まずい、こちらも元来中二病こじらせ系である。
(前世からの二つ名……だなんて、くうっ、今考えた異名では歴史的に負けすぎている……! ここまでの屈辱感は歪虚に後れをとったとき以上……!)
しかも自分でハードルをガン上げするタイプだ。
「……! レイア様!」
そこに通りかかったのは運良くというか運悪くというか、レイアをはじめとする一行である。
「た、多由羅……! お前も……まさか、『絶望の白夜』(エンド・オブ・セレナーデ)……!?」
レイアは顔なじみの彼女を見て、高らかに叫んだ。
「えっ……私にも、前世があったのですか!」
妙に喜んでいる多由羅。しかしそれを見たレイアは苦い表情を浮かべる。
「これで三人、そろってしまうのか……邪神復活の前に、命を絶つべきか……!? いや、しかし……」
レイアがぶつぶつつぶやくと、多由羅も自分の立場を理解したらしい。
「しかし邪神の眷属、とは……ふふ、面白い。ならば戦うべきは神、相手にとって不足はありません!」
スイッチが入ってしまった多由羅は、リムネラに恭しく頭を下げて挨拶をする。
「同志よ、身の不運を嘆いても始まりません……この身が神を滅ぼすというのなら受けて立つまで……!」
「いや、お前たちまで巻き込むわけにはいかない……!」
多由羅のノリの良さに内心驚きつつも、そのノリこそが大切なので、レイアは言葉を紡ぐ。
「いえ……私の力で、その前世の業(カルマ)だけを、封印します……ッ!」
Uiscaが手を高く掲げる。
そして――
●
(ああ、なんてこと)
翌日。
何人かのハンターは布団にくるまっていた。
簡単に言えば、恥ずかしすぎて。恥ずか死ぬと言うやつである。
昨日とは違う意味で死を考えるレイアや、恥ずかしくてじたばたするアルマ等々。
そんな中、多由羅はと言うと――空気を読まずに二つ名を呼び、周囲を赤面させて回っていた。
春の嵐にかき乱されたリゼリオの街。
星空の幻のペットのもっちゃりかっぱ「おもち」は、いつもと変わらぬ表情で中二現象を起こした主たちを見つめ、そして今日も主と散歩に行く。
その瞳は、そんな出来事などなかったかのようで、星空の幻と目が合えばほんのりと笑ってみせるのだった。
●
『永遠の漆黒』――リムネラの中に眠っている(らしい)、闇の封印(っぽいなにか)。
「リムネラさん……とうとうあなたの封印が解けてしまうのね……やはり、私たちは戦うしかないみたい……!」
バーンと扉を開けてやってきたのは、抑止力として世界決壊に生み出された存在(と言う設定)の『刹那の純白(イフェメラル・ピュアホワイト)』、その名前はUisca Amhran(ka0754)。
世界のバランサー的存在である白龍ヘレが漆黒に染まることのないよう監視し、場合によってはその傍らにいるリムネラを排除、あるいは浄化する為にいる――それがUisca、らしい。
「……ッ! リムネラ、おまえも、目覚めかけてしまっているのか……! 何故……どうして運命というのは、我々をそっとしておいてくれないのだ……!?」
同じようにやってきてそう声を荒げているのは、レイア・アローネ(ka4082)。彼女の右目は黒い布を巻いた眼帯で覆われており、いつもよりも数割増し、闇のオーラ(?)に覆われている。
そう、これは彼女に課せられた前世からの因縁、あるいは呪いと呼ばれるもの(本人談)。
終末の邪神リンクブレイブの七眷属たるものへの、逃れられぬ茨の鎖……(と言うことらしい)。
そう、彼女も眷属。『永遠の漆黒』と対をなす、『無限の極黒』(メビウス・ダークナイト)の転生体、なのだという……。
あれ、黒がかぶってるけどまあいいか。
「っ、あそこにいるのは『刹那の純白』、だと……!? うう、すでに奴らの手の者が来ていたのか……!」
Uiscaを見ておののくレイア。レイアは彼女のことをこう認識したらしい。そう、『創世神グロリアスドライヴ』の使徒である、と。
「『刹那の純白』……六大天使の筆頭……もうここまで来ていたとはな……はっ、まさかジーク……お前が……!!」
問われたジークは、眼鏡をきらりと光らせ、口元に細い笑みを浮かべるのみ。それは無言ながら肯定を意味しているのが一目でわかるものだった。
「仕方ない、リムネラ。ここにいては危険だ!」
レイアはそう言って彼女の手を取ろうとするが、そうはさせじとUiscaも毅然とした口調で言葉を発する。
「そのままレイアさんについていったら……だめ! 封印が放たれてしまう……!」
ユニオンリーダーを前にして、視線を合わせる二人の少女。いや、その視線には火花が散っていて――対峙している、と言う方が適切だ。
「……どちらにしてもここでは、あまりに影響が大きい。少し広いところに行った方が良さそうだ」
レイアの言葉に、そう言うことならとUiscaも力を分けてもらうという名目でヘレに触れながら頷く。
さらなる悲劇(?)が待つとも知らずに――。
●
いっぽうその頃、リゼリオ郊外では。
仙堂 紫苑(ka5953)、キャリコ・ビューイ(ka5044)、そしてアルマ・A・エインズワース(ka4901)の、よく依頼でつるんでいるハンター仲間同士が、今日も今日とて同じ依頼でにぎやかに話し合っていた。よくあるちょっとした雑魔討伐の依頼だ。……と、ふわりと強い風が吹き――
「……ふ、今日の俺はどうにも……血が騒ぐようだな」
キャリコがそう言って、口元ににやりと笑みを浮かべた。アルマと紫苑は一瞬目を丸くするが、すぐに――
「確かに。しかし今日の敵程度、俺の『機械仕掛けの三つ眼(ギア・サード・アイズ)』を使うまでもない……」
紫苑もそう言って頷く。中二病でもキャリコはニヒル系、紫苑はクール系になってしまったようだ。そしてアルマはと言えば。
「ああ……シオン、我が参謀よ。この程度であれば――ええ、ほんのわずか、薙ぐ程度で事足ります。とはいえそれだけでは僕も退屈です、少しの遊びを許しましょう」
目元をわずかに細め、そう言い放つ。アルマは普段から『魔王の卵』なんて言っているが、今日はそれが更に五割増し、くわえておっとりした大型犬っぽい雰囲気もどこかに飛んでいってしまっている。なんというか……本物の魔王っぽい。あくまで当社比、のような気がしなくもないけれど、それでもずいぶん魔王っぽい雰囲気を醸し出しているのは事実だ。
キャリコと紫苑はその言葉に応、とばかりに技を繰り出す。
「ふむん、デア・フライシュッツの俺からは逃れられん……我が銃弾は過たず敵を穿つ! 祈る余裕なぞ与えん! カラミティ・トリガー!」
銃を構え、マテリアルを集め……一気に解き放つキャリコ。
「俺の手の届くところに現れたことを後悔しながら消えるがいい……塵も残さず、な。そうすれば、お前たちの叫び声すら、俺が調律し、鎮魂歌(レクイエム)へと仕立てよう」
杖をかつかつと鳴らして近づき、前髪を手で押さえ、見下ろすようにしながら口元をゆがめる紫苑。星神器を預かり操る紫苑にしてみれば、言った言葉の一部はあながち間違っていないところもあるが……でも半分以上は典型的な中二症状だ。
「顕現せよ光の矢……我は神の徒、我が意志と矜持をもって汝を神の御許へと導こう。夜闇を貫く流星よりも、大地を穿つ雷よりも、早く、早く、早く、汝のもとへと届かせよう。駆け抜ける裁きの一射、マジックアロー!」
紫苑の詠唱はごくごく一般的なスキルを用いただけだが、低級の雑魔であればこの程度でも退治することは難しくない。じっさい、小型の雑魔はその一閃で焼き尽くされてしまった。それを見たアルマは満足そうに微笑み、紫苑本人も
「最低位の魔法で消えてしまうとは、俺が強すぎるのが問題か?」
と笑みを浮かべた。といっても、その言葉の後半が正しいかどうかはいささか疑問ではあるが。
「変えることの出来ない己の運命を呪いながら、世界機工士(デウス・エクス・マキナ)たる俺に消されるがいい……」
冷ややかな笑みのまま、そう言う彼には独特のすごみがある。。そして、そんな二人を従えた(と思われる)アルマはゆらりと前に出た。これでも彼は一応前衛なのだ。
杖をまるでタクトかなにかのように軽やかに構え、まるで指揮者かなにかのように魔法を操る。
「汚い手で触れるな、下郎めが」
そう言いながら防御魔法を使い、容赦ないまでの魔法を使う。
「慈悲深きは時を封じる焔の揺り籠。零下の夜に咲け、曼珠沙華――眠りなさい、《終蒼(追想)の冷焔(霊園)》」
詠唱が終わると、手元に現れるのは黄金色の光を帯びた彼岸花、そしてその芯から蒼炎を放っていく。炎に包まれた雑魔はあっという間にその命の火が消えるのだ。そういった様子を愉快そうに見つめながら、
「……今は還りなさい、愚かな『勇者』たち……貴方のもとにも、時期に穏やかな宵闇が降るでしょうから」
優雅な態度で丁寧な一礼をする。それは確かに『魔王』と呼ばれてしかるべきものの立ち居振る舞いなのだろう。
「ふふ、戻りましょうか、我らが居城へ……キャリコさん、貴方もともに。僕手ずから御茶でも淹れて差し上げましょう」
言いながら浮かべた笑みは、いつもよりもどこか冷たく……そして強さの感じられるものだった。
●
アルマたちと同様、依頼に赴いていたのは星空の幻(ka6980)。此方はシンプルな護衛依頼だ。
――しかし道すがら、雑魔が襲いかかってきた。
と、星空の幻は左目のカラーコンタクトの上に単眼……いわゆるモノクルをつけ、ばん! と大仰な動きをする。
「我が名はグラム、永遠に届かない光の向こう(深淵)を貫く白銀の審判人(スナイパー)である!」
そう言って大きく胸を張っていた。そして、なにやらぐんにゃりとした不思議なポーズをとってみせる。独特な立ち姿は、漫画でよく見るようなものだ。
「この左目……邪神眼ファフニールを使うほどもないと思ったが……そう言うわけにもいかないようだな」
どうやらあの左目には名前があるらしい。これもよくありがちな中二症状と言えばそうなのだが。魔力が活性化するという設定らしい。
そして中二病にありがちな症状でもあるように、普段よりも饒舌になっている。
「ふふふ……貴様、この邪神眼ファフニールを使わせたことを後悔しゅるがいい……!」
……普段がある程度普通なぶん、慣れない口上で舌をかんでしまったが、それもまたご愛敬と言うものだろう。
●
さて、リムネラとレイア、Uiscaのやりとりは街の郊外に持ち越された。ちょうどその頃、街をふらりと歩いていたのはイルミナ(ka5759)だ。
(私は故郷を失った、天涯孤独のエルフ……そんな私に居場所などないと思っていたわ。それでも、ひとって変われるものね……今はこんなにも穏やかな気持ちになれている……そう、あの子のおかげで)
年下の恋人に思いをはせながら、歩くイルミナ。何となく笑われている気がすることには、ほんのりと苛立ちを覚えているが、それは仕方がない。
彼女は――元々中二病である。
他の面々が「普段はそうでもない」あるいは「スキルはそれっぽいが他は基本まとも」であることが多い中、イルミナは無自覚に中二病なのである。
そんな彼女が普段と雰囲気の違うリムネラやハンターたちを見て、どう思うか。
「リムネラさんの中の邪を、封印しなくちゃ……!」
そう焦りを隠せないUisca。
「このまま、目覚めてしまっては……!!」
同じく焦りの色を見せるレイア。
彼女たちの言葉を耳にし、イルミナの耳がぴくりと動く。
「……封印? あいつ? いったい、何なのこれは……まさか、新たな歪虚……!?」
黙示騎士たちとの戦いも佳境の今日この頃だと言うのに、ここに来て更なる新たな敵が現れた、とでも言うのだろうか。
しかも、ハンターの仲間たちとのようで……そこまで考えて、背筋が凍り付くような寒気を感じた。
(あの子は無事なの? もし彼まで歪虚の力に目覚めたとしたら……いえ、それどころか私が歪虚の力に覚醒したのだとしたら……!!)
口に出しはしないものの、発想がどんどん急展開していく。
「ちょっとあなたたち、……ッ、どういうことなの!?」
思わず声をかけるが、レイアとUiscaはくっと唇をかみ、
「知られてはいけないことだ……聞かなかったという方がいい」
「そう……関わりを持てば貴方も危険なのだから」
そう言い捨てるが、イルミナはかぶりを振る。
こんなことであのことの関係が引き裂かれたりなどしたら、どうしよう――イルミナはぶるぶると震えた。
「そんなこと、言われても……! 知ってしまったんだもの、世界と愛する人、どちらをと言われれば迷わず後者をとるわ……あの子のいない世界なんて、生きられない……! けれど、あの子が世界の敵になったとしたら……私は彼を、守れるの……?!」
――こう考えて、頭を抱える。
ところでこのイルミナ。じつは中二病に感染していない。ナチュラル中二病ムーブ、恐るべし。
「そうね……このままでもいけないのは事実。とりあえず一緒に来てくれる?」
Uiscaがそういうと、イルミナはこくっと頷いた。
そして、また一人――
鬼の里出身の多由羅(ka6167)は街を歩いていると、どことなく違和感を感じた。なんというか、いつもより覇気を漲らせたような人が多い気がする。人々の話に耳を傾けてみれば、二つ名だとか、異名だとか、必殺技だとか……そんな単語が聞き取れる。
(いつの間にか、私の知らぬ間に……恐るべきことです)
しかしこちらも転んではただで起きない。
(私も考えねば……!)
まずい、こちらも元来中二病こじらせ系である。
(前世からの二つ名……だなんて、くうっ、今考えた異名では歴史的に負けすぎている……! ここまでの屈辱感は歪虚に後れをとったとき以上……!)
しかも自分でハードルをガン上げするタイプだ。
「……! レイア様!」
そこに通りかかったのは運良くというか運悪くというか、レイアをはじめとする一行である。
「た、多由羅……! お前も……まさか、『絶望の白夜』(エンド・オブ・セレナーデ)……!?」
レイアは顔なじみの彼女を見て、高らかに叫んだ。
「えっ……私にも、前世があったのですか!」
妙に喜んでいる多由羅。しかしそれを見たレイアは苦い表情を浮かべる。
「これで三人、そろってしまうのか……邪神復活の前に、命を絶つべきか……!? いや、しかし……」
レイアがぶつぶつつぶやくと、多由羅も自分の立場を理解したらしい。
「しかし邪神の眷属、とは……ふふ、面白い。ならば戦うべきは神、相手にとって不足はありません!」
スイッチが入ってしまった多由羅は、リムネラに恭しく頭を下げて挨拶をする。
「同志よ、身の不運を嘆いても始まりません……この身が神を滅ぼすというのなら受けて立つまで……!」
「いや、お前たちまで巻き込むわけにはいかない……!」
多由羅のノリの良さに内心驚きつつも、そのノリこそが大切なので、レイアは言葉を紡ぐ。
「いえ……私の力で、その前世の業(カルマ)だけを、封印します……ッ!」
Uiscaが手を高く掲げる。
そして――
●
(ああ、なんてこと)
翌日。
何人かのハンターは布団にくるまっていた。
簡単に言えば、恥ずかしすぎて。恥ずか死ぬと言うやつである。
昨日とは違う意味で死を考えるレイアや、恥ずかしくてじたばたするアルマ等々。
そんな中、多由羅はと言うと――空気を読まずに二つ名を呼び、周囲を赤面させて回っていた。
春の嵐にかき乱されたリゼリオの街。
星空の幻のペットのもっちゃりかっぱ「おもち」は、いつもと変わらぬ表情で中二現象を起こした主たちを見つめ、そして今日も主と散歩に行く。
その瞳は、そんな出来事などなかったかのようで、星空の幻と目が合えばほんのりと笑ってみせるのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 7人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
- 無くした過去に背を向けて
イルミナ(ka5759)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/06 20:28:07 |