ゲスト
(ka0000)
【王戦】魔術師の弟子、隠密不能
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/18 09:00
- 完成日
- 2019/04/24 19:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●領主の依頼
グラズヘイム王国の中央寄りもしくは東北寄りにある大きな町。国内で発生している事案とは縁遠くはない。歪虚の出現は散見されている。
領主のシャールズ・べリンガーは、大きな街にあるハンターオフィスに入り浸る。領主の屋敷が町の外なため、対応するには街中にいる必要があった。家族も町に移動させてある。
「小さな町に疎開させるにしても、容量が合わない」
大きな町には城壁はない。隣の小さな町にはあるが移動させる意義がない。それにそこまで歪虚と戦いが激しくはなかった。下手に移動させる方が危険でもある。
「……ということで……見回りを頼みたいんだ」
ハンターオフィスで職員のロビン・ドルトスに言う。
「ここで人を守るだけならどうにかできても見回りまで手が回らないのが実情だよ。で、ハンターに頼むほうが小回り利くし、臨機応変な対応してくれるからね」
「結局、どこの見回りですか?」
「街道と小さな町かな……あと、気になるのはジャイルズだね。あの人の回りで歪虚化した人がいないという保証がないからね」
「バルネさん、って何者です?」
ロビンは驚く。
「あれ? 軍医してたって知らない? いろいろあって退役して、薬草園そこに作ったんだけど」
シャールズは首を傾げた。
「あの人、あまり言わないからな」
知られていないことに理解は示した。
「あの人がフットワーク軽い理由そこなんだよ?」
「プラントハンターじゃないんですね……ただの」
「非覚醒者には変わりないけど」
ロビンは状況を整理していく。
「あっちの町、マークさんとかいるけど、限度有るし、対応。だから、陣中見舞いみたいにのぞくだけでもいいから」
「ということで、あっちの町見て、ぐるっと回って帰ってきてもらえばいいんですね」
「そいうことだね……定期的に頼んだ方がいいかな」
シャールズとロビンはこの後、嫌な予感が的中したことを知るのだった。
●見回り
騎乗していれば大した距離ではない隣町に依頼を受けたハンターは向かう。その上、道では歪虚や雑魔などを見かけない平穏さだ。その平穏さが逆に恐ろしいかもしれない。
小さな町は城門が半分閉められている。出入りは自由だった。
町を通り抜け、件の薬草園の方向に向かった。
「みぎゃあああああ」
何とも言えない声が響く。初めて聞いたものですら、この声が歓喜ではないということが明確な声音だ。
その上、茶虎柄の猫が薬草園の塀を越え、橋に走っていく。ハンターを見つけると一直線にやってくるのだった。
●薬草園
小さな町の畑は城壁の外だ。そのため、歪虚が出る可能性を考え、城壁での見張りはかなりしっかり行われている。幸いなのは襲撃がないことだろう。
薬草園は川を挟んで街道に近いところにある。まとまった土地があったのがそこであったに過ぎない。
ジャイルズ・バルネはルゥルを連れて薬草園の手入れに行く。助手のコリンは足手まといになりかねないので、護衛もかねてルゥルが選ばれた。ルゥルが行く時はユグディラのキソシロもついてくる。
薬草園には家畜もいるし、ユグディラのチャもいる。城壁の内部に移すことも検討されたが、薬草園でのんびり暮らす家畜たちには窮屈になる。チャは連絡係にもなるということで、残ることを決めたという。
ジャイルズは植物に春の手入れをしている。
『なぜ? 神の力を借りれば、傷も病気も治るわ』
ある時、同僚の女性に言われたことを思い出す。あくまで、医療行為はその手伝いに過ぎないと言い切られた。
(彼女自身、医師であり、私もそうだ。別に、どちらがいいか悪いか否定はしない……考え方だからな。しかし、神も何も……あの時……)
病院にいたあの時、ジャイルズと彼女の前に運ばれてきたのは歪虚に深い傷を負わされ、死を控えた青年騎士だった。痛みがないという青年に対し、できる限りの処置はした。聖導士でもあった彼女は【ヒール】で傷をふさぎ切ろうとした。
(その途中で、歪虚の襲撃を受けた。私は、爆風に飛ばされ意識を失って建物の陰にいた。気づいたときには……助かるはずの命も摘まれた)
彼女と彼もいなかった。死体が粉々だったのか、何か不測の事態があったのかわからない。
あの後、ジャイルズは戦いの場から離れ、医師ではなく、神でなく、何かできることはないかと考え始めた。その結果、薬草園を作った。
「昼だな。そろそろ戻るか」
「はいですー」
ルゥルが帰りの支度を始める。
チャに対してキソシロが何か言っている。キソシロは不意に顔を上げる。
『ルゥル、何か来ているっ!』
キソシロが注意を促した。チャに対し、家畜たちといるようになど指示すると、キソシロはルゥルのそばで待機した。
ルゥルはキソシロの注意喚起を理解し、ワンドを掴んでジャイルズのそばに立つ。ジャイルズは猟銃を手にした。
「あらぁ? 人間がいるのねぇ?」
薬草園の入り口に女がいた。その背後には男もいる。女の方は人間に近いが、男の方は顔以外は鎧に見える。
「エレンとクライド……? まあ、あの状況で死体がなければ、粉砕か歪虚化のどちらかだな……」
ジャイルズは呆然としたが、自嘲してつぶやいた。
ルゥルが何のことだろうと目を瞬く。
「私が軍医をやめたきっかけだ」
「何を言っているのかしら? あなたなんて知らないし?」
女は見下すように告げる。
「それはそれでかまわない」
ジャイルズは淡々という。
「それで、神は見つかり、彼は助かったのか?」
ジャイルズは問う。その時、ルゥルの肩を掴んで自分の後方に押す。
「何か知っているような口ぶりね? 人間風情と突き放すのはあれよねぇ? 答えてあげるは、神はいるわ! あなた方も知らないわけないわよね、麗しきあの御方を!」
ルゥルが恐怖で震える為、キソシロが前足をルゥルのワンドを持つ腕に回した。
「ほお、あれが神なのか? おまえにとって? あのようなモノが? それが生きている?」
ジャイルズが淡々と告げる。ルゥルはハッとする。時間稼ぎの会話ではない。
ルゥルはどうにかして外にここの状況を伝えないといけない。だから、そろそろと移動する。
「その、丸いの、なぜ後ろに下がっているのかしら」
「みぎゃあああああ」
ルゥルは突然指摘され鳴いた。
家畜のそばにいたチャは塀を越えた。キソシロに言われてたのは「保護色になるからお前が行け」だった。
外に出たら叫びそうになったが我慢して走る。ジャイルズは怖いけど悪い人ではないし、ルゥルやキソシロ、家畜たちもいる。必死に走り、町に向かう。ハンターたちを見て急いだ。
『お願いにゃ! あっちに、歪虚がいるにゃ!』
近くで言葉とともに幻覚を展開しようとした。成功したか否かは――。
グラズヘイム王国の中央寄りもしくは東北寄りにある大きな町。国内で発生している事案とは縁遠くはない。歪虚の出現は散見されている。
領主のシャールズ・べリンガーは、大きな街にあるハンターオフィスに入り浸る。領主の屋敷が町の外なため、対応するには街中にいる必要があった。家族も町に移動させてある。
「小さな町に疎開させるにしても、容量が合わない」
大きな町には城壁はない。隣の小さな町にはあるが移動させる意義がない。それにそこまで歪虚と戦いが激しくはなかった。下手に移動させる方が危険でもある。
「……ということで……見回りを頼みたいんだ」
ハンターオフィスで職員のロビン・ドルトスに言う。
「ここで人を守るだけならどうにかできても見回りまで手が回らないのが実情だよ。で、ハンターに頼むほうが小回り利くし、臨機応変な対応してくれるからね」
「結局、どこの見回りですか?」
「街道と小さな町かな……あと、気になるのはジャイルズだね。あの人の回りで歪虚化した人がいないという保証がないからね」
「バルネさん、って何者です?」
ロビンは驚く。
「あれ? 軍医してたって知らない? いろいろあって退役して、薬草園そこに作ったんだけど」
シャールズは首を傾げた。
「あの人、あまり言わないからな」
知られていないことに理解は示した。
「あの人がフットワーク軽い理由そこなんだよ?」
「プラントハンターじゃないんですね……ただの」
「非覚醒者には変わりないけど」
ロビンは状況を整理していく。
「あっちの町、マークさんとかいるけど、限度有るし、対応。だから、陣中見舞いみたいにのぞくだけでもいいから」
「ということで、あっちの町見て、ぐるっと回って帰ってきてもらえばいいんですね」
「そいうことだね……定期的に頼んだ方がいいかな」
シャールズとロビンはこの後、嫌な予感が的中したことを知るのだった。
●見回り
騎乗していれば大した距離ではない隣町に依頼を受けたハンターは向かう。その上、道では歪虚や雑魔などを見かけない平穏さだ。その平穏さが逆に恐ろしいかもしれない。
小さな町は城門が半分閉められている。出入りは自由だった。
町を通り抜け、件の薬草園の方向に向かった。
「みぎゃあああああ」
何とも言えない声が響く。初めて聞いたものですら、この声が歓喜ではないということが明確な声音だ。
その上、茶虎柄の猫が薬草園の塀を越え、橋に走っていく。ハンターを見つけると一直線にやってくるのだった。
●薬草園
小さな町の畑は城壁の外だ。そのため、歪虚が出る可能性を考え、城壁での見張りはかなりしっかり行われている。幸いなのは襲撃がないことだろう。
薬草園は川を挟んで街道に近いところにある。まとまった土地があったのがそこであったに過ぎない。
ジャイルズ・バルネはルゥルを連れて薬草園の手入れに行く。助手のコリンは足手まといになりかねないので、護衛もかねてルゥルが選ばれた。ルゥルが行く時はユグディラのキソシロもついてくる。
薬草園には家畜もいるし、ユグディラのチャもいる。城壁の内部に移すことも検討されたが、薬草園でのんびり暮らす家畜たちには窮屈になる。チャは連絡係にもなるということで、残ることを決めたという。
ジャイルズは植物に春の手入れをしている。
『なぜ? 神の力を借りれば、傷も病気も治るわ』
ある時、同僚の女性に言われたことを思い出す。あくまで、医療行為はその手伝いに過ぎないと言い切られた。
(彼女自身、医師であり、私もそうだ。別に、どちらがいいか悪いか否定はしない……考え方だからな。しかし、神も何も……あの時……)
病院にいたあの時、ジャイルズと彼女の前に運ばれてきたのは歪虚に深い傷を負わされ、死を控えた青年騎士だった。痛みがないという青年に対し、できる限りの処置はした。聖導士でもあった彼女は【ヒール】で傷をふさぎ切ろうとした。
(その途中で、歪虚の襲撃を受けた。私は、爆風に飛ばされ意識を失って建物の陰にいた。気づいたときには……助かるはずの命も摘まれた)
彼女と彼もいなかった。死体が粉々だったのか、何か不測の事態があったのかわからない。
あの後、ジャイルズは戦いの場から離れ、医師ではなく、神でなく、何かできることはないかと考え始めた。その結果、薬草園を作った。
「昼だな。そろそろ戻るか」
「はいですー」
ルゥルが帰りの支度を始める。
チャに対してキソシロが何か言っている。キソシロは不意に顔を上げる。
『ルゥル、何か来ているっ!』
キソシロが注意を促した。チャに対し、家畜たちといるようになど指示すると、キソシロはルゥルのそばで待機した。
ルゥルはキソシロの注意喚起を理解し、ワンドを掴んでジャイルズのそばに立つ。ジャイルズは猟銃を手にした。
「あらぁ? 人間がいるのねぇ?」
薬草園の入り口に女がいた。その背後には男もいる。女の方は人間に近いが、男の方は顔以外は鎧に見える。
「エレンとクライド……? まあ、あの状況で死体がなければ、粉砕か歪虚化のどちらかだな……」
ジャイルズは呆然としたが、自嘲してつぶやいた。
ルゥルが何のことだろうと目を瞬く。
「私が軍医をやめたきっかけだ」
「何を言っているのかしら? あなたなんて知らないし?」
女は見下すように告げる。
「それはそれでかまわない」
ジャイルズは淡々という。
「それで、神は見つかり、彼は助かったのか?」
ジャイルズは問う。その時、ルゥルの肩を掴んで自分の後方に押す。
「何か知っているような口ぶりね? 人間風情と突き放すのはあれよねぇ? 答えてあげるは、神はいるわ! あなた方も知らないわけないわよね、麗しきあの御方を!」
ルゥルが恐怖で震える為、キソシロが前足をルゥルのワンドを持つ腕に回した。
「ほお、あれが神なのか? おまえにとって? あのようなモノが? それが生きている?」
ジャイルズが淡々と告げる。ルゥルはハッとする。時間稼ぎの会話ではない。
ルゥルはどうにかして外にここの状況を伝えないといけない。だから、そろそろと移動する。
「その、丸いの、なぜ後ろに下がっているのかしら」
「みぎゃあああああ」
ルゥルは突然指摘され鳴いた。
家畜のそばにいたチャは塀を越えた。キソシロに言われてたのは「保護色になるからお前が行け」だった。
外に出たら叫びそうになったが我慢して走る。ジャイルズは怖いけど悪い人ではないし、ルゥルやキソシロ、家畜たちもいる。必死に走り、町に向かう。ハンターたちを見て急いだ。
『お願いにゃ! あっちに、歪虚がいるにゃ!』
近くで言葉とともに幻覚を展開しようとした。成功したか否かは――。
リプレイ本文
●急行
薬草園に向かおうとしていたハンターたちは、何か声を聞いたような気がした者もいた。ただ、川や林があるため音は通りづらい。
フィロ(ka6966)、マリィア・バルデス(ka5848)そして七夜・真夕(ka3977)はただならぬ声を聞いた気がした。
「あれは、ルゥル様の……先行します」
「ルゥルよね、あの声……」
フィロとマリィアは聞き覚えのある声ととらえ、二人は魔導ママチャリや魔導バイクで出発した。
「え? 先ほどの鳴き声みたいなのはルゥルさんです?」
少し聞き取れなかったエステル・ソル(ka3983)は慌てて魔導ママチャリで追いかける。
「いきなりピンチぽい?」
真夕は聞き取れてもルゥル(kz0210)の歓喜の声や悲鳴を知らないため、他の者の行動などから状況を把握した。そして真夕も試作魔導バイクで追いかけた。
悲鳴かもしれないものは川向うの塀がある方から聞こえた可能性があり、そこは薬草園だった。声がした直後そこから猫が飛び出し、川沿いに移動してからこちらに向かってきている。
ソナ(ka1352)も他の仲間と行くことを考えなくはなかったが、走ってくる猫を放置もできない。
「猫ではなくユグディラですよね……チャちゃんですね?」
とりあえず合流を早める為、道は少し進んだ。
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)は詳細の状況もわからないため、全員が行ってしまうことで問題が発生することもありうるととらえた。
「とはいえ、ゴースロンで川越えは到着に時間かかりかねないですね」
ツィスカが思考をめぐらしているうちに、フィロは一直線で行こうとしているが、彼女のクラスやスキルを考えれば合点は行く。
「チャちゃん、薬草園で何かあるの?」
ソナに体当たりするようにしてユグディラのチャは止まる。それと同時に幻術および鳴き声が上がる。
『歪虚にゃーん』
そのとき、薬草園で爆発音が響いた。
「これは……」
「誰がどうしてどうなったのかわかりませんが!」
「急ぎましょう!」
ソナはチャも愛馬のゴースロンのリィルに載せ、ツィスカもゴースロンで急いだ。
●戦闘
フィロは薬草園からした爆発音に一瞬足を止めかかるが、冷静に先にいく。覚醒状態になると【縮地瞬動】から【縮地瞬動・虚空】を用い、川、そして、塀を越える。薬草園には来たこともあり、内部の様子は記憶している。爆発音のしたほうは入り口の方で、負のマテリアルも感じる。
薬草園の出入り口の方に向かうと、状況が明らかになる。人型の歪虚が園内に二体、キメラ型が外から中に入ろうとし、ふわふわと複数の機械のような物が塀を乗り越える高さに飛んでいた。家畜たちはおろおろし、ルゥルは膝をついているジャイルズのそばで立ち上がろうとしていた。ユグディラのキソシロが歪虚を威嚇していた。門側には【アースウォール】があり、爆発は【ファイアーボール】の可能性がある。
「ルゥル様、ジャイルズ様と一緒に歪虚から離れる位置へ移動してください!」
「みぎゃ」
ルゥルからひとまず返答はあったため、フィロは自身がすべきことに専念する。
「園内に歪虚人型二体および、侵入中途の中型キメラ三体! これより、戦闘に入ります!」
仲間に魔導パイロットインカムで告げた後、フィロは鎧のような外観の男と思われる歪虚クライドに【縮地瞬動】から【鎧徹し】を用い攻撃を仕掛けた。
マリィアは道を進み、ふわふわと浮かぶ雑魔を発見した。門の広さもあり、キメラは外でうろうろしている。
「ここで仕留めれば問題はない」
マリィアは新式魔導銃・応報せよアルコルでハウンドバレットを放った。キメラのようなそれは二体、マリィアの方に来る。雑魔たちは、音楽なのかよくわからない何かを立てながら、マリィアに向かってきた。
「上等!」
続いてすぐに【クックリロード】から【リトリビューション】を放つ。
塀で薬草園の中が見渡せないため、歪虚がいるなら引き付けておく必要はあった。
真夕とエステルはマリィアが雑魔やキメラ型の歪虚を引き付けた瞬間、それを縫い、魔導バイクや魔導ママチャリを走らせ門に近づく。薬草園内にたどり着いた瞬間、目の前にいる歪虚・エレンがシールドでどちらかを攻撃してきた。ほぼ同時に入り、回避行動をとろうとしたため、攻撃された方に自覚が薄い。
「ちょっ!」
「きゃあ」
真夕とエステルが乗り物ごと倒れた。
「あら? 当たったのかしら?」
エレンは地面に倒れた二人を見下ろす。
「クライド、お片付けして行こうかしら?」
エレンは溜息を吐く。
(もし、歪虚が傲慢だった場合、【懲罰】を持っているのです)
エステルは立ち上がりながら考える。雑魔の様子や王国で起こっていることを考えた。
(ちょっと痛い登場だけど! これでたぶん、さっきの声の主ってのは子はあの子だろうから、歪虚は引き付けたということよね)
真夕はルゥルたちを見て判断した。その上、その先にも歪虚がいるが、フィロが対応している。
「ならっ、こっちに【アースウォール】」
真夕はルゥルが立てているものとは場所をずらし、ルゥルたちが逃げる方向を考えた。
「小鳥さん、お願いします」
エステルはフォースリングの力を用い、人型の歪虚二体を含め【星鳥】を放った。エネルギーの矢は星のきらめきを宿した小鳥のように、敵に向かう。
エレンは避けきれなかったらしく反射的に【懲罰】を放つ。
「つまり、邪魔をするのね、あなたたちは?」
傲慢な様子で苛立ちの言葉を口にした。
ツィスカはマリィアが敵に囲まれているのを見つけた。
「すぐに行きます」
敵はまとまっているが、まだマリィアを巻き込む危険性がある位置だった。まずは援護が重要ととらえ【デルタレイ】を放つ。そのあと、距離を詰める。
違う方向から攻撃されたことで、一部の雑魔はツィスカに向かって攻撃をしてくる。
「最近よく見る雑魔ですね……こちらに来てくれると助かります」
場所がずれたことで攻撃が選びやすくなる。回転式魔導銃「ブレイドダンサー」を構えるように【ファイアスローワー】を放つ。放射線状である機導術だが、魔導銃の持つ能力に導かれるように一直線かつ、距離も長く放たれた。避けきれなかった雑魔たちが無に返る。
「チャちゃんはしがみついていてくださいね!」
ソナはツィスカの攻撃の位置を見つつ前に進む。薬草園の中は塀の隙間から見えてもよくは見えないため、門から入らないとならない。マリィアの状況を見てまずは【ファーストエイド】で【ヒーリングスフィア】を掛ける。そのまま、門の前にいるキメラ型を止めるべく法術縛鎖アルタ・レグルの力を用い範囲を広げ【プルガトリオ】を放った。
すでに弱っていた歪虚は無に返った。それ以外ものはその場でうごめいていた。それに対し、ハンターたちの攻撃が向かう。しかし、動けなかった歪虚の一体は、自爆をした。そのため、塀の一部がなぎ倒され、道に穴があく。近くにいた雑魔は消えた。
●先へ
爆風はエレンも襲う。
「勝手に爆発するんじゃないわよ!」
「仕方がないんじゃないのかしら? そういう存在だったんでしょ?」
真夕はエレンに言いながらも視線は後方のクライドに向かっている。苛立っても余裕をある様子を見せるエレンとは異なり、フィロに対して黙々と二本の刃を振るっている。激しい応酬である。
真夕は【ダブルキャスト】で【アイスボルト】を放った。クライドはそれを一つは避けた。
「次は……」
エステルは【集中】し【氷蔓】を用いた。威力を警戒してか、エレンは回避しようとしていた。
「余裕がないのです? それに、もし、【懲罰】を使っても打ち消すすべはあります」
エステルの言葉にエレンは何か言いたげだったが、自身のマテリアルを活性化させ、ギラリとエステルをにらみつけるにとどまった。
薬草園の外にいる歪虚と雑魔は片付く寸前だ。
「チャちゃん、すぐに中に行きますね」
ソナは薬草園に急ぐべく、残っていた敵に破魔奏弓で攻撃後、馬を走らせる。目の前にいるエレンより奥の状況が気になる。フィロが進んだ先であり、真夕が注意している先である。
「早く、あの子の無事な姿を見たいのよ」
マリィアは【リトリビューション】を放った後、門のところに移動する。エステルとエレンがにらみ合っている状況であった。先ほどの戦いの音を縫い声も届いており、エレンが【懲罰】を使えると分かる。ルゥルの姿が見えないのはアースウォールの陰にいると考え移動を続けた。
「皆さんを追いますが……敵が倒せないと追えませんよね」
ツィスカは残っている雑魔に対し、【ファイアスローワー】を放った。雑魔が消えたことを確認して、薬草園の門に向かう。
中の状況は膠着しているようにも見えた。
フィロはたとえ自分が粉々になろうとも引く気はなかった。最初に星神器・角力の持つ力【鹿島の剣腕】用いたが、すぐに倒れる相手ではなかった。簡単な相手ではないのは最初から分かっていたが、フィロの攻撃に対し、カウンターをしたりと攻撃に幅がある上、武人が喜々として戦うようにも感じられる。
互いに攻撃し、攻撃され、受ける。
何度目かの攻撃を受けたとき、フィロは歯を食いしばった。次の攻撃を耐えられない可能性すらある。
「遅くなりました!」
ソナがフィロを範囲に収め、【ヒーリングスフィア】を用いる。
「みぎゃあああ」
ルゥルはようやく立ち上がり、ジャイルズはほっとした様子を見せていた。
「いえ……ありがとうございます、ソナ様」
フィロはクライドを静かに見つめた。クライドは笑ったように見えた。その瞬間、負のマテリアルが濃くなる。そのせいで家畜たちは怯え、非覚醒者であるジャイルズの動きが止まる。
ソナはジャイルズをかばいつつ、ルゥルに問う。
「杖を持っていますね? 何ができますか?」
ルゥルは使えるスキルを答える。
「あの敵を狙える?」
「【マジックアロー】なのですぅ」
ルゥルが放つエネルギーの矢はスーと飛ぶ。ソナは【プルカトリオ】を放ち、フィロの援護に入った。
【アースウォール】が崩れたところをマリィアは通る。まるごとしまえながの見覚えのある姿にほっとする。ルゥルたちが逃げられない状況に陥っているのは見てとった。
「バルネさんが動けない状況なら、敵を倒してしまうしかない」
フィロを援護するために【ハウンドバレット】でクライドを攻撃する。その上で、素早くリロードすると【支援射撃】を行う。
「何考えているの? 喜々として戦うとかおかしいわ」
エレンはクライドが【限界突破】を用い、戦っていることに気づいている。
「そうね、敵しかいないならこれを使ってもいいのわね。我が神のためにも、早々にこのような愚かなものは排除すべきね?」
エレンは微笑む。その瞬間、彼女を中心にエネルギーの塊が炸裂する。
エステル、真夕とツィスカが巻き込まれる。
「やる気ってことよね……でもまあ、こちらは対抗手段を持ち合わせているのよね、エステルが言うように」
「そうです。だから存分攻撃ししまっていいのです」
真夕にエステルが答える。二人が余裕ある会話をしているのを見て、エレンの眦がきっとあがる。
「なぜひざまずかないの! あの神と仰ぐのにふさわしきあの方に」
エレンは焦りを見せる。
「あなたが言う神とは何ですか?」
ツィスカは【ファイアスローワー】で攻撃をした。
「あの方よ! イヴ様にお会いして、私は」
エレンは有利な状況が消えたことに落ち着きをなくしている。
「お前が信じるのは何でもいい。歪虚になってしまったのも状況だ。もう、眠れ」
ジャイルズの淡々とした声が届く。
「なぜ、理解しないの!」
エレンの悲鳴に似た声は何かに助けを求めるようだった。何もなく、ハンターの攻撃を耐えられず、エレンは無に返った。
クライドはハンターからの集中砲火で無に返った。
●無事
「お怪我はありませんか、バルネさん」
マリィアはそばに膝をついた。
「別にこの程度は。それより、どうしてハンターがここにいるのか?」
ジャイルズの問いにマリィアは答えた。
「あの領主……。今回は感謝しよう……」
「荒らされた薬草園の片づけは私たちが行いますので、一度町に戻ってお休みなられたらいかがでしょうか」
マリィアの提案に「家畜の世話はチャがする。それに戻らない訳にはいかない」と述べる。
ソナはできる限り仲間やルゥルたちなどのけがを治した。チャがキソシロやジャイルズに何か言ったり、家畜を見回ったり忙しく動くのを見て、ソナの口元は緩む。
「ジャイルズさん、負のマテリアルの影響を受けたでしょうから【ピュリフィケーション】を使っておきますね。それに、自然の物も……土などにも」
少しでも早くここが回復するように、ソナは浄化する。
「あの、ジャイルズさんのお友達だったんですか? ……歪虚になるとあり方がゆがみます。あまり気をおとされずにです」
エステルはジャイルズがエレンに声をかけたことで気になっていた。
「友ではない。ただ、同じ職場にいた。そして、話をした」
エステルはジャイルズの難しそうな顔から、言葉がどう届いたか今一つわからなかった。
「結局のところ、神とはいったい何なのでしょうね」
ツィスカの言葉にジャイルズは苦笑する。
「分からないな。信じることはいい、ただ、見失うことがあってはいけない」
ジャイルズは言葉を選ぶ。
「……少なくとも生命の敵たる歪虚に神性を見出すことを善と見ることはできません。それに……医師とて人の子、いかに腕が優れようと資材もなければ意味はない」
ツィスカの言にジャイルズは肯定するような苦笑を洩らした。
「薬草園を営むのも、ジャイルズ殿なりにできることを模索した結果……」
「さて? 人も自然の一部だと思っただけだ」
ジャイルズはようやく立ち上がると、薬草園を見渡す。
「歪虚が邪神を神というならわかります。それに、世界を作った大精霊を神とあがめるのも。でも、たかが歪虚王を神とし、旗下がそれをあがめるのは、あまりにも愚かしくおこがましいとこいと思います」
フィロにもエレンの言葉は届いてはいた。あのタイミングで、疑問もしくはあおりととれる質問を口にする余裕はなかった。
「そうだな」
ジャイルズはうなずいた。
「【アースウォール】を立てたのはあなたよね?」
「なのです」
真夕はあの段階で魔術が使えそうなのはルゥルしかいなかったが、確認をした。
「歪虚を遮ったことはいいね」
照れるルゥルに真夕は微笑む。
十中八九、爆発音はファイアーボールだ。そう考えると褒められないが、彼女なりにやったのだから褒めるところだろう。まるごとしまえながを撫でておいた。
「ルゥルさん、まるごとはめだちます」
エステルにぽつり言われ、ルゥルは「みぎゃあ」と震えるのだった。
薬草園に向かおうとしていたハンターたちは、何か声を聞いたような気がした者もいた。ただ、川や林があるため音は通りづらい。
フィロ(ka6966)、マリィア・バルデス(ka5848)そして七夜・真夕(ka3977)はただならぬ声を聞いた気がした。
「あれは、ルゥル様の……先行します」
「ルゥルよね、あの声……」
フィロとマリィアは聞き覚えのある声ととらえ、二人は魔導ママチャリや魔導バイクで出発した。
「え? 先ほどの鳴き声みたいなのはルゥルさんです?」
少し聞き取れなかったエステル・ソル(ka3983)は慌てて魔導ママチャリで追いかける。
「いきなりピンチぽい?」
真夕は聞き取れてもルゥル(kz0210)の歓喜の声や悲鳴を知らないため、他の者の行動などから状況を把握した。そして真夕も試作魔導バイクで追いかけた。
悲鳴かもしれないものは川向うの塀がある方から聞こえた可能性があり、そこは薬草園だった。声がした直後そこから猫が飛び出し、川沿いに移動してからこちらに向かってきている。
ソナ(ka1352)も他の仲間と行くことを考えなくはなかったが、走ってくる猫を放置もできない。
「猫ではなくユグディラですよね……チャちゃんですね?」
とりあえず合流を早める為、道は少し進んだ。
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)は詳細の状況もわからないため、全員が行ってしまうことで問題が発生することもありうるととらえた。
「とはいえ、ゴースロンで川越えは到着に時間かかりかねないですね」
ツィスカが思考をめぐらしているうちに、フィロは一直線で行こうとしているが、彼女のクラスやスキルを考えれば合点は行く。
「チャちゃん、薬草園で何かあるの?」
ソナに体当たりするようにしてユグディラのチャは止まる。それと同時に幻術および鳴き声が上がる。
『歪虚にゃーん』
そのとき、薬草園で爆発音が響いた。
「これは……」
「誰がどうしてどうなったのかわかりませんが!」
「急ぎましょう!」
ソナはチャも愛馬のゴースロンのリィルに載せ、ツィスカもゴースロンで急いだ。
●戦闘
フィロは薬草園からした爆発音に一瞬足を止めかかるが、冷静に先にいく。覚醒状態になると【縮地瞬動】から【縮地瞬動・虚空】を用い、川、そして、塀を越える。薬草園には来たこともあり、内部の様子は記憶している。爆発音のしたほうは入り口の方で、負のマテリアルも感じる。
薬草園の出入り口の方に向かうと、状況が明らかになる。人型の歪虚が園内に二体、キメラ型が外から中に入ろうとし、ふわふわと複数の機械のような物が塀を乗り越える高さに飛んでいた。家畜たちはおろおろし、ルゥルは膝をついているジャイルズのそばで立ち上がろうとしていた。ユグディラのキソシロが歪虚を威嚇していた。門側には【アースウォール】があり、爆発は【ファイアーボール】の可能性がある。
「ルゥル様、ジャイルズ様と一緒に歪虚から離れる位置へ移動してください!」
「みぎゃ」
ルゥルからひとまず返答はあったため、フィロは自身がすべきことに専念する。
「園内に歪虚人型二体および、侵入中途の中型キメラ三体! これより、戦闘に入ります!」
仲間に魔導パイロットインカムで告げた後、フィロは鎧のような外観の男と思われる歪虚クライドに【縮地瞬動】から【鎧徹し】を用い攻撃を仕掛けた。
マリィアは道を進み、ふわふわと浮かぶ雑魔を発見した。門の広さもあり、キメラは外でうろうろしている。
「ここで仕留めれば問題はない」
マリィアは新式魔導銃・応報せよアルコルでハウンドバレットを放った。キメラのようなそれは二体、マリィアの方に来る。雑魔たちは、音楽なのかよくわからない何かを立てながら、マリィアに向かってきた。
「上等!」
続いてすぐに【クックリロード】から【リトリビューション】を放つ。
塀で薬草園の中が見渡せないため、歪虚がいるなら引き付けておく必要はあった。
真夕とエステルはマリィアが雑魔やキメラ型の歪虚を引き付けた瞬間、それを縫い、魔導バイクや魔導ママチャリを走らせ門に近づく。薬草園内にたどり着いた瞬間、目の前にいる歪虚・エレンがシールドでどちらかを攻撃してきた。ほぼ同時に入り、回避行動をとろうとしたため、攻撃された方に自覚が薄い。
「ちょっ!」
「きゃあ」
真夕とエステルが乗り物ごと倒れた。
「あら? 当たったのかしら?」
エレンは地面に倒れた二人を見下ろす。
「クライド、お片付けして行こうかしら?」
エレンは溜息を吐く。
(もし、歪虚が傲慢だった場合、【懲罰】を持っているのです)
エステルは立ち上がりながら考える。雑魔の様子や王国で起こっていることを考えた。
(ちょっと痛い登場だけど! これでたぶん、さっきの声の主ってのは子はあの子だろうから、歪虚は引き付けたということよね)
真夕はルゥルたちを見て判断した。その上、その先にも歪虚がいるが、フィロが対応している。
「ならっ、こっちに【アースウォール】」
真夕はルゥルが立てているものとは場所をずらし、ルゥルたちが逃げる方向を考えた。
「小鳥さん、お願いします」
エステルはフォースリングの力を用い、人型の歪虚二体を含め【星鳥】を放った。エネルギーの矢は星のきらめきを宿した小鳥のように、敵に向かう。
エレンは避けきれなかったらしく反射的に【懲罰】を放つ。
「つまり、邪魔をするのね、あなたたちは?」
傲慢な様子で苛立ちの言葉を口にした。
ツィスカはマリィアが敵に囲まれているのを見つけた。
「すぐに行きます」
敵はまとまっているが、まだマリィアを巻き込む危険性がある位置だった。まずは援護が重要ととらえ【デルタレイ】を放つ。そのあと、距離を詰める。
違う方向から攻撃されたことで、一部の雑魔はツィスカに向かって攻撃をしてくる。
「最近よく見る雑魔ですね……こちらに来てくれると助かります」
場所がずれたことで攻撃が選びやすくなる。回転式魔導銃「ブレイドダンサー」を構えるように【ファイアスローワー】を放つ。放射線状である機導術だが、魔導銃の持つ能力に導かれるように一直線かつ、距離も長く放たれた。避けきれなかった雑魔たちが無に返る。
「チャちゃんはしがみついていてくださいね!」
ソナはツィスカの攻撃の位置を見つつ前に進む。薬草園の中は塀の隙間から見えてもよくは見えないため、門から入らないとならない。マリィアの状況を見てまずは【ファーストエイド】で【ヒーリングスフィア】を掛ける。そのまま、門の前にいるキメラ型を止めるべく法術縛鎖アルタ・レグルの力を用い範囲を広げ【プルガトリオ】を放った。
すでに弱っていた歪虚は無に返った。それ以外ものはその場でうごめいていた。それに対し、ハンターたちの攻撃が向かう。しかし、動けなかった歪虚の一体は、自爆をした。そのため、塀の一部がなぎ倒され、道に穴があく。近くにいた雑魔は消えた。
●先へ
爆風はエレンも襲う。
「勝手に爆発するんじゃないわよ!」
「仕方がないんじゃないのかしら? そういう存在だったんでしょ?」
真夕はエレンに言いながらも視線は後方のクライドに向かっている。苛立っても余裕をある様子を見せるエレンとは異なり、フィロに対して黙々と二本の刃を振るっている。激しい応酬である。
真夕は【ダブルキャスト】で【アイスボルト】を放った。クライドはそれを一つは避けた。
「次は……」
エステルは【集中】し【氷蔓】を用いた。威力を警戒してか、エレンは回避しようとしていた。
「余裕がないのです? それに、もし、【懲罰】を使っても打ち消すすべはあります」
エステルの言葉にエレンは何か言いたげだったが、自身のマテリアルを活性化させ、ギラリとエステルをにらみつけるにとどまった。
薬草園の外にいる歪虚と雑魔は片付く寸前だ。
「チャちゃん、すぐに中に行きますね」
ソナは薬草園に急ぐべく、残っていた敵に破魔奏弓で攻撃後、馬を走らせる。目の前にいるエレンより奥の状況が気になる。フィロが進んだ先であり、真夕が注意している先である。
「早く、あの子の無事な姿を見たいのよ」
マリィアは【リトリビューション】を放った後、門のところに移動する。エステルとエレンがにらみ合っている状況であった。先ほどの戦いの音を縫い声も届いており、エレンが【懲罰】を使えると分かる。ルゥルの姿が見えないのはアースウォールの陰にいると考え移動を続けた。
「皆さんを追いますが……敵が倒せないと追えませんよね」
ツィスカは残っている雑魔に対し、【ファイアスローワー】を放った。雑魔が消えたことを確認して、薬草園の門に向かう。
中の状況は膠着しているようにも見えた。
フィロはたとえ自分が粉々になろうとも引く気はなかった。最初に星神器・角力の持つ力【鹿島の剣腕】用いたが、すぐに倒れる相手ではなかった。簡単な相手ではないのは最初から分かっていたが、フィロの攻撃に対し、カウンターをしたりと攻撃に幅がある上、武人が喜々として戦うようにも感じられる。
互いに攻撃し、攻撃され、受ける。
何度目かの攻撃を受けたとき、フィロは歯を食いしばった。次の攻撃を耐えられない可能性すらある。
「遅くなりました!」
ソナがフィロを範囲に収め、【ヒーリングスフィア】を用いる。
「みぎゃあああ」
ルゥルはようやく立ち上がり、ジャイルズはほっとした様子を見せていた。
「いえ……ありがとうございます、ソナ様」
フィロはクライドを静かに見つめた。クライドは笑ったように見えた。その瞬間、負のマテリアルが濃くなる。そのせいで家畜たちは怯え、非覚醒者であるジャイルズの動きが止まる。
ソナはジャイルズをかばいつつ、ルゥルに問う。
「杖を持っていますね? 何ができますか?」
ルゥルは使えるスキルを答える。
「あの敵を狙える?」
「【マジックアロー】なのですぅ」
ルゥルが放つエネルギーの矢はスーと飛ぶ。ソナは【プルカトリオ】を放ち、フィロの援護に入った。
【アースウォール】が崩れたところをマリィアは通る。まるごとしまえながの見覚えのある姿にほっとする。ルゥルたちが逃げられない状況に陥っているのは見てとった。
「バルネさんが動けない状況なら、敵を倒してしまうしかない」
フィロを援護するために【ハウンドバレット】でクライドを攻撃する。その上で、素早くリロードすると【支援射撃】を行う。
「何考えているの? 喜々として戦うとかおかしいわ」
エレンはクライドが【限界突破】を用い、戦っていることに気づいている。
「そうね、敵しかいないならこれを使ってもいいのわね。我が神のためにも、早々にこのような愚かなものは排除すべきね?」
エレンは微笑む。その瞬間、彼女を中心にエネルギーの塊が炸裂する。
エステル、真夕とツィスカが巻き込まれる。
「やる気ってことよね……でもまあ、こちらは対抗手段を持ち合わせているのよね、エステルが言うように」
「そうです。だから存分攻撃ししまっていいのです」
真夕にエステルが答える。二人が余裕ある会話をしているのを見て、エレンの眦がきっとあがる。
「なぜひざまずかないの! あの神と仰ぐのにふさわしきあの方に」
エレンは焦りを見せる。
「あなたが言う神とは何ですか?」
ツィスカは【ファイアスローワー】で攻撃をした。
「あの方よ! イヴ様にお会いして、私は」
エレンは有利な状況が消えたことに落ち着きをなくしている。
「お前が信じるのは何でもいい。歪虚になってしまったのも状況だ。もう、眠れ」
ジャイルズの淡々とした声が届く。
「なぜ、理解しないの!」
エレンの悲鳴に似た声は何かに助けを求めるようだった。何もなく、ハンターの攻撃を耐えられず、エレンは無に返った。
クライドはハンターからの集中砲火で無に返った。
●無事
「お怪我はありませんか、バルネさん」
マリィアはそばに膝をついた。
「別にこの程度は。それより、どうしてハンターがここにいるのか?」
ジャイルズの問いにマリィアは答えた。
「あの領主……。今回は感謝しよう……」
「荒らされた薬草園の片づけは私たちが行いますので、一度町に戻ってお休みなられたらいかがでしょうか」
マリィアの提案に「家畜の世話はチャがする。それに戻らない訳にはいかない」と述べる。
ソナはできる限り仲間やルゥルたちなどのけがを治した。チャがキソシロやジャイルズに何か言ったり、家畜を見回ったり忙しく動くのを見て、ソナの口元は緩む。
「ジャイルズさん、負のマテリアルの影響を受けたでしょうから【ピュリフィケーション】を使っておきますね。それに、自然の物も……土などにも」
少しでも早くここが回復するように、ソナは浄化する。
「あの、ジャイルズさんのお友達だったんですか? ……歪虚になるとあり方がゆがみます。あまり気をおとされずにです」
エステルはジャイルズがエレンに声をかけたことで気になっていた。
「友ではない。ただ、同じ職場にいた。そして、話をした」
エステルはジャイルズの難しそうな顔から、言葉がどう届いたか今一つわからなかった。
「結局のところ、神とはいったい何なのでしょうね」
ツィスカの言葉にジャイルズは苦笑する。
「分からないな。信じることはいい、ただ、見失うことがあってはいけない」
ジャイルズは言葉を選ぶ。
「……少なくとも生命の敵たる歪虚に神性を見出すことを善と見ることはできません。それに……医師とて人の子、いかに腕が優れようと資材もなければ意味はない」
ツィスカの言にジャイルズは肯定するような苦笑を洩らした。
「薬草園を営むのも、ジャイルズ殿なりにできることを模索した結果……」
「さて? 人も自然の一部だと思っただけだ」
ジャイルズはようやく立ち上がると、薬草園を見渡す。
「歪虚が邪神を神というならわかります。それに、世界を作った大精霊を神とあがめるのも。でも、たかが歪虚王を神とし、旗下がそれをあがめるのは、あまりにも愚かしくおこがましいとこいと思います」
フィロにもエレンの言葉は届いてはいた。あのタイミングで、疑問もしくはあおりととれる質問を口にする余裕はなかった。
「そうだな」
ジャイルズはうなずいた。
「【アースウォール】を立てたのはあなたよね?」
「なのです」
真夕はあの段階で魔術が使えそうなのはルゥルしかいなかったが、確認をした。
「歪虚を遮ったことはいいね」
照れるルゥルに真夕は微笑む。
十中八九、爆発音はファイアーボールだ。そう考えると褒められないが、彼女なりにやったのだから褒めるところだろう。まるごとしまえながを撫でておいた。
「ルゥルさん、まるごとはめだちます」
エステルにぽつり言われ、ルゥルは「みぎゃあ」と震えるのだった。
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【相談】救出と討伐と エステル・ソル(ka3983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/04/18 01:54:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/15 12:45:38 |