因果の糸を断ち切るために

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/01/24 19:00
完成日
2015/01/25 00:30

みんなの思い出

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オープニング


●糸の手繰り手
「あの女性は人が嫌いだと言いながら結局人と関わるのですね。この間彼女を助けに来たハンターともども利用するか血祭りにあげることができればこの森もすこしは風通しが良くなりますか……いや」
 フェレライの一員で剣妃オルクスに仕えている歪虚、ラキエルは半分崩れかけた廃屋の、最奥の部屋で長椅子に腰かけ思案を巡らせる。
「下手に討ち取ってしまえば仇打ちとしてハンターたちが大挙して押し寄せてくる可能性もありますか。しかし神霊樹の若木とこの山を手に入れるためにはハンターはいささか邪魔ですね。
 あの女性もおそらく今度は単独ではこないでしょうし。……ふむ、やはり降りかかる火の粉は払わねばなりませんか」
 他の歪虚に比べて縦の繋がりが強いフェレライ。ラキエルは歪虚としてはさほど位が高いわけではないが野心は強いらしく思案を巡らせる。
 狙いは、この山を守り続けてきたベルセルクの女性、小夜子と彼女を助けたハンターが二度とこの山に手を出さないこと。そのうえで剣妃に神霊樹の若木の生えているこの地を差し出す。
 開拓が進んでおらず、取り立ててめぼしいもののない山ではあるが神霊樹の若木がある分利用価値は高いだろう。
「なんにせよ私たちにとってハンターは押しなべて邪魔な存在。小夜子という女性と共に倒すことができれば剣妃様もお喜びになるでしょう。
 ……招待状を、出すとしましょうか。あの、小夜子という女性が血相を変えてやってきたくなるものがいいでしょうね」
 ギシリ、と長椅子を軋ませ立ち上がるとラキエルは廃屋を出ていく。
 程なくして捕獲した兎を連れて戻ってくると兎の足にナイフで切り傷を作り、その血をインク代わりに【招待状】を書き始めた。
 縛られ思うように抵抗できない兎を押さえつけながらその作業を終えるとラキエルは冷酷に微笑む。
「貴方にはインクを提供して頂いたお礼に甘美なる死を差し上げましょうね」
 封書と自身が汚れないよう気を配りながら、歪虚は兎の小さな心臓にナイフを突き立てたのだった。
「人間も動物も……なぜ死というものの美しさが理解できず、拒むのか。嘆かわしい事です」
 したたり落ちる血が床に赤黒い染みを作り上げる。
「さて、メッセンジャーは何方に頼むとしましょうか」
 一つの命を奪ったことに何の感慨も示さずラキエルは小夜子と、彼女が助力を頼むであろうハンターたちをおびき寄せるための準備を進めるのだった。
「そこのお嬢さん」
「……え?」
 数々の動物が雑魔化した先日の事件の後、村人の有志が作った動物たちの墓の一つにお参りにきていた少女に声がかけられる。
「これを、ハンターオフィスの方に届けて頂けますか? 狐の面をかぶった小夜子、という女性宛です、といえばおそらく通じるでしょうから」
「お兄さんもあのお姉ちゃんにお世話になったの?」
 このヒトはどこか人じゃない雰囲気がある。けれど小夜子という女性も最初の内は雑魔や幽霊と勘違いされていた。
 同じような境遇なのかもしれない。でも、雰囲気が冷たくて刺々しくて小夜子と違って怖い。
 問いかけながら自然と一歩、二歩、と距離を置く少女。そんな少女を見てラキエルは静かに笑った。
「お使いを果たしてくれれば貴方や貴方の家族の住む村には手を出さないで差し上げますよ」
 歪虚の特徴をできるだけ隠していても、歪虚に馴染みのない少女が相手でも。少女は悟ってしまった、この人は『壊す側』の存在だ、と。
「お願いできますよね。……家族やご友人を、死なせたくはないでしょう?」
「っ……はい」
「良い子ですね。では、これをお願いします」
 封書を手渡され駆け去る少女。ラキエルは再びひんやりと笑う。
「本当にいい子だ。だから貴方の家族の住む村を襲撃するのは一番最後にしてあげましょうね。
 そうそう、おもてなしのために雑魔を用意しなければ。楽しいパーティーになると、いいですねぇ。ここでお待ちするとなると大型の動物ではない方がいいですね……。
 近くに洞窟がありましたし吸血蝙蝠を手下にでもしましょうか。狭い部屋の中、蝙蝠の数が多ければ脆弱でも多少戦力にはなってくれるでしょう」

●糸に翻弄された女性
「胸糞悪いってこういうことを言うんだろうね。この間小夜子を助けに行ってもらった時にラキエルっていう歪虚と対峙したと思うんだけど、そいつから招待状」
 珍しく不機嫌な顔のルカ・シュバルツエンド(kz0073)の横で怪我の治療を済ませた小夜子が唇を噛みしめている。
「この間出会った廃墟で待つ。山の動物の雑魔化と村人を対象にした狩りを止めたければ会いに来られたし、だってさ」
「……先日、助けてくれたことに対してまずは礼を言おう。その恩も返せていないうちに願うのは心苦しいのだが……貴方たちの力を貸してほしい。これ以上あの山を歪虚に蹂躙されるのを放っておくわけにはいかない。
 此方の世界での私の家族とも言えた狐の精霊の仇を取るためにも、助力を願いたい」
 小夜子が深々と頭を下げる。可能ならば自分も同行したい、と付け加えて。
「舞台となるのはこの間対峙した廃墟になりそうだね。雑魔化させた動物を使役している可能性が高いと思う。勝算を高めるためなら手段を選ばないだろうし、フェレライは命を疎んじる歪虚だからね。
 だからこそ、小夜子の逆鱗に触れるような血で書かれた招待状なんてものを作れるんだけど」
 戦いになればラキエルは西洋剣を使いながら手下の雑魔を躊躇なく壁にして流れを自分の側に持っていこうとするだろう。
「小夜子の話によると大規模な罠を仕掛けられるような造りの廃墟じゃないみたいだから、ラキエル自身と向こうが使役する雑魔に気をつけて。
 ちゃんと全員生きて帰ってくるんだよ?」

リプレイ本文

●糸を手繰るものを討つために
 神霊樹の若木を剣妃に差し出し、辺り一帯に住む生物を全て雑魔にする。
 そのために邪魔になるハンターや、自分に恨みを抱き、若木の周辺を住処としていた小夜子へと送られたのは招待状だった。
 動物の血をインク代わりに使って書かれたその招待状はそれを書いた歪虚、ラキエルへの嫌悪を深めるには十分なものだった。
「ラキエル、剣妃オルクスの眷属……コイツだけは決して逃がしてはいけない。
 剣妃と対峙した者として、そして討つと誓った者として、……絶対に届かせる。この刃を、その命を刈り取る為に」
 ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が拳を握りこんで静かに決意を固める。
 抱く嫌悪は間違いなく本物だが、その感情に流されないように。
 考えるのはラキエルを討ち、仲間と共に帰ること。
 そのためにもラキエルの言葉に耳を傾けないようにと自身に言い聞かせるために。
 二班に分かれて廃墟の周りを探索、ラキエルがいるのが一階の最奥の部屋だということを確認した八人と同行を申し出た小夜子が一班はそのまま廃墟の最奥へ、もう一班は一階の天井を崩すために二階へと向かう。
「何か色々あるみてーだが、オルクスの部下みてえだからぶっ飛ばす」
 春日 啓一(ka1621)はロケットナックルとドリルナックルにマテリアルを注いでいつでも戦闘が始められる準備を整えている。
「ラキエルって結構姑息なことを好むのね……でも、すぐに後悔させてあげるわ」
 普段は冷静沈着な様子を見せることの多い小夜子が愛用する日本刀をきつく握りしめているのを見たアイビス・グラス(ka2477)が彼女を宥めながら瞳を眇めた。
「暫くは耐えてね。機会は私達が必ず作ってみせるから」
 日本刀を握りしめる手に自分の手を重ね、狐の面に隠された視線を辿ってそう告げれば、わずかに握りしめる力が緩み小さな首肯が返ってくる。
「大切な場所、一緒に守りましょうね、小夜子さん」
 エイル・メヌエット(ka2807)も小夜子を落ち着かせる言葉をかけた一人だ。
 小夜子にいつかまた、大切な居場所が見つかるはずだと言葉をかけた月護 紫苑(ka3827)は、その言葉を嘘にしたくないから、とこの戦いに赴いた。
 やがてたどり着いた最奥の部屋のドアを開くと雑魔化した吸血蝙蝠が視界を埋め尽くす勢いで舞い飛ぶ中、男の声が響いた。
「ようこそ。……おや、随分数が少ないようですね。壁ごしに外から微かに音がしましたし、二手に分かれて何か仕掛けているのですか?」
 冷たい笑みを含んだ質問に答える者はいない。
「こんな埃っぽいとこ呼び出して茶の湯の一つもださねえのか、剣妃オルクスの手下にしちゃ余裕がねえなあ」
「敵とお茶を楽しむ趣味はないのですよ。それにお茶を出したところで毒殺を疑って口にしないのが関の山でしょう?」
「剣妃オルクスとまみえた事はあるが、何ていうか風格ねえなあ、オルクスに失礼だとおもわねえのかねえ?」
「歪虚の風格を貴方たち人間が判断することができるかどうか疑問ですね。私たちは根本が異なる存在。安い挑発には乗りませんよ」
 啓一の挑発に激昂する素振りも見せずラキエルは吸血蝙蝠をあたりにはべらせている。
「剣魔や十三魔のナナと戦ったからか、どう見ても貴方……小物にしか見えないわ。
 腕に自信があるみたいだけど、こういう姑息すぎる手でしか戦う手段しかないのなら……貴方、かなり弱いんじゃないの?」
 アイビスも時間稼ぎのために挑発を行うがラキエルはどうでもいいという風を崩さない。
「お仲間の仕掛けはまだかかるのですか。挑発されてばかりなのはいささか退屈ですし不毛なやり取りだと思うのですが?」
 二階でハーレキン(ka3214)がどう崩すのが効率がいいのかを計算し、破壊計画を実行する用意を整えた時、紫苑の声がトランシーバー越しに届いた。
「……では、お話はこれまで、ですね……」
 その言葉を合図に二階から見て床を崩すB班。
穴のあいた部分から飛び降り戦闘態勢を整える間に埃が徐々に静まっていく。
 事前に崩すことを知っていて瓦礫が崩れてくる位置を予測できたハンター側に被害がなかったのはもちろんだが、ラキエルや彼を取り巻く雑魔たちにもさして被害はない。
「私は耳がいいのでね。それにこの建物は古いから音が意外と響くのですよ。上で物音がするなら天井を崩すのは予想できる行動の一つです。
 あとは手ごまとして使う吸血蝙蝠たちに指示を出して被害を最小限に抑えればいい。残念でしたね?」
 蝙蝠たちの群れの奥で西洋剣が鋭い輝きを見せる。
「あぁ、失礼。お話はおしまいでしたね。では切り結びましょうか?」
 吸血蝙蝠たちの一部がハンターに襲い掛かる。
 超音波によるかく乱作用や吸血によるダメージ、何より数を武器にした視界の妨害。
「貴方は大勢でも勝てる自信があるよう、ですが……それはどこから湧いてくるのでしょうか。
 自分をあまり尊大に思っているようだと……足元をすくわれますよ……?」
 メイ=ロザリンド(ka3394)がその蝙蝠たちの間を縫ってホーリーライトをラキエルの足元を狙って挑発するように連続で打ち込む。
 しかしその攻撃もラキエルを取り囲む蝙蝠たちによって阻まれてしまう。
「つくづく姑息な手を使うわね……!」
「私によって作り出された雑魔は私のために死ぬべきでしょう? 何を怒っていらっしゃるのか分かりませんね」
「ゲス野郎は嫌われますわよ!」
 一網打尽は失敗したがラキエルが罠や策を用意しているならば、その前提になっているであろうものを壊してしまう、崩れる可能性があり、強力な攻撃が躊躇われるならその前に壊してしまうという意図で天井破壊班に回っていた八劒 颯(ka1804)がドリルを構えて叫ぶ。
 突き刺したドリルから攻撃スキルを叩き込んでラキエルの体内を焼こうとするがそのたびに蝙蝠が邪魔をして中々上手くいかないのが現状だった。
「イキモノに好かれようとは思いませんね。雑魔として手駒になるなら利用するまで。剣妃様は尊敬していますがあの方にとっては私は駒に過ぎないでしょう。
 したがって私は好かれたいと思う相手はいないのですよ。利用する側に立つか、利用される側にいるか。それだけが判断基準です」
 ユーリは視界の悪さに挫けず、ラキエルの動きに気を配りながら様子を窺い、体の力を抜いて呼吸を整え、相手の動きや呼吸に合わせることに専念していた。
 合わせることができた、と確信した瞬間腰を低く落として攻めの構えを取り、接近。鞭のように体重と運動量を無駄なく伝播させ、地を踏み鳴らすほどの踏込で急停止。
 全身の捻りを加えながら刀を鞘走らせ、渾身撃の一撃をラキエルの頭に叩き込む算段だったが、ラキエルは一切の無駄のない動きでそれを回避する。
「危ない、危ない」
 その声色には余裕と戦いを楽しむ色があって挑発している気配が濃厚だった。
 啓一が自身の間合いにラキエルを置いて戦おうとするのに対してラキエルはあと一歩というところで蝙蝠を使って距離をぼかし、間合いを取る。
 蝙蝠たちと何らかの手段で意思の疎通を取っているらしく盾にされる蝙蝠の減り具合も遅々としたものだ。
 最小限の犠牲を最大限に生かし、なおかつ自分の配下を盾にすることに全く躊躇しないその戦い方に誰かが舌打ちを漏らす。
「逃がすわけにはまいりませんのよ!」
 颯がエレクトリックショックを併用した魔導ドリルでラキエルを狙うが相変わらず目標に届く前に蝙蝠に阻害されてしまう。
「逃げるつもりはありませんよ。まだ手駒も多く残っていますしね」
 アイビスが小夜子、啓一と連携しラキエルが逃げないよう回り込むが肝心の攻撃は中々届かなかった。
 ハーレキンが武器の投擲を中心に蝙蝠の数を減らすことに集中しているが母体の数が多いため全ての蝙蝠を駆逐するにはまだしばらく時間がかかりそうだった。
 ハンターたちは一度作戦を変え、蝙蝠を集中的に倒すことによって視界の悪さを払拭、ラキエルを守る壁をなくす行動を取りはじめる。
 ラキエルの指示通りに動く蝙蝠たちだったが元が脆弱ともいえる個体たちであり、九人がかりで掃討に取りかかれば流石に数の減りは早くなる。
 やがてすべての蝙蝠は駆逐され、最奥の部屋にはラキエルとハンターたちだけが残った。
「良い判断能力ですね。スキルの無駄遣いを、もう少しだけ期待していたのですが」
 剣を小脇に抱えてパチパチと拍手をして見せるラキエルに紫苑が温存していたホーリーライトを放つ。
 ラキエルは回避行動を取りながら西洋剣を構え直した。
 そのまままっすぐにハーレキンのもとに移動、袈裟懸けに剣を振り下ろす。
 攻撃目標とされた時点で回避行動を取ったハーレキンだったがそれでも相当の深手を負い、仲間たちが急いでヒールでその怪我を癒した。
「蝙蝠たちはあくまで手駒。私の実力が雑魔化させる物だけだと思われては歪虚の名折れですからね……さて、次は何方を狙いましょうか?」
「余裕を見せていられるのも今だけですっ……!」
 刀の形態にしていたユナイテッド・ドライブ・ソード でユーリがラキエルに斬りかかる。
 鍔迫り合いになるが仲間の支援行動があり、ラキエルに漸く傷らしい傷を負わせることができた。
 そのまま続いて斬りこもうとするユーリから距離を取ろうとするラキエルの背後に回った啓一が踏込からの胴体部分への強打。
 カウンターを狙って剣を脇を綺麗に畳んだ状態から伸ばし、啓一ののど元を狙う一撃をのけぞる事でかわすと顔面を狙って貫くようにドリルナックルによる強打を行おうとする。
 二撃目は流石にかわされ、ラキエルがエイルの放ったホーリーライトを床を蹴って回避する。
 その着地点に向かって投擲されたハーレキンの武器は西洋剣を捌いてはじき返し、ランアウトで距離を詰めて攻撃を仕掛けてきたアイビスの攻撃はバックステップでかわすと体勢を整え直して、今度は自分から距離を詰めて仕掛けるラキエル。
 メイがホーリーライトで仲間の間合いからラキエルが逃げ出さないように支援しながら切り結んで傷を負った仲間はすかさずヒールで治療する。
 最初は九人相手でも余裕を見せていたラキエルだったが多くの細かな傷や、時折連携を砕き損ねて負った大きな傷などが災いして徐々に動きが鈍り始める。
 ハンター側もこまめに回復しているとはいえ怪我は数えきれないほどだ。
「思ったよりお強いですね。貴方たちへの認識を改めておきましょう」
「その必要はありませんよ。貴方は此処で倒されるのですから」
 紫苑が仲間にヒールをかけながら凛とした声で告げる。
「小夜子さんの大切なものを奪おうとするラキエルさんのこと……私、許せません!」
「もとより許していただこうと思ってはいませんよ。不思議なことをおっしゃいますね」
「たわごとはそれまでだ!」
 前衛が多方面から距離を詰め、何処を向いても死角が生まれる状態で攻撃を繰り出す。
 膝をついたラキエルののど元に小夜子の日本刀が突きつけられた。
「私が憎いですか」
「答える義務はない」
「もっと私を憎みなさい。家族を奪い、多くの生き物を雑魔に変えた私のことを、憎みなさい。
 そして生きながらに魂を腐らせ、雑魔と成り果てて今度こそ【バケモノ】と呼ばれる存在になり下がるがいい」
「……さよならだ」
 日本刀が滑らかに動き、ラキエルの首を刎ね飛ばす。
「家族を失ったことは無念に思う。自分の手でその偽りの生を終わらせることができなかった自分の弱さを今でも悔やむ。この山で奪われた命を悼むことも生涯続くだろう。
 だが貴様には憎む価値すらない。私は、貴様と同じところに堕ちることだけは、しない」
 崩れていくラキエルの骸に向かって、或いは今までの自分と決別するように小夜子が一言一言言葉を紡ぐ。
「終わりましたね……。小夜子さん、今後ここが雑魔の巣窟にならないように廃墟の解体をした方がいいと思うのですが……」
 エイルが一息ついたあとそう進言すると小夜子は狐面をかぶったまま少し困ったように頬の辺りに手を当てた。
「私もその意見には賛成だが、私はこの廃墟の場所を知っていただけで持ち主でも地主でもないからな……村の人々は私を恐れているしどうしたものか……」
「なら私たちからオフィスに報告するついでに提案するっていうのはどうだろう?
 オフィスから村に伝言を回してもらえばいいんじゃないかな」
 アイビスの言葉に全員がそのほうがよさそうだ、とうなずく。
「小夜子さん。……これで、すぐにじゃなくても前を向いて……歩けますか?」
 紫苑の遠慮がちな言葉に小夜子は静かに頷いた。
「私の未熟さで失った命たちは戻ってこない。命は何を代償にしても戻らないものだ。
 ……だからこそ、私は生きようと思う。
 命を託された者の一人として。貴方たちには本当に世話になった。言葉にしてもしきれない程だ」
「これからどうするんだ?」
「神霊樹の若木の処置が決まるまでは村人の誤解を解く努力をしながら若木の周辺に気を配らせようと思う。
 また歪虚が利用しようとするといけないからな」
「また何かあったら今度は最初から頼ってくださいませね」
 颯の念を押すような言葉に面の下で微かに苦笑する気配。
「善処しよう」
 精霊だった狐が雑魔化した事を発端にした一連の事件は、こうしてひとまずの終結を見せたのだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • トランプマイスター
    ハーレキン(ka3214
    人間(紅)|10才|男性|疾影士
  • いつか、その隣へと
    ティアンシェ=ロゼアマネル(ka3394
    人間(紅)|22才|女性|聖導士

  • 月護 紫苑(ka3827
    人間(蒼)|15才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/19 20:12:36
アイコン 質問卓
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/01/24 17:53:40
アイコン 元凶討伐!【相談卓】
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/01/24 18:48:14