ゲスト
(ka0000)
世界で一番新店舗
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/24 12:00
- 完成日
- 2015/02/05 03:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「お店を出しましょう!」
唐突に、セレーネ・リコお嬢様が言いだしました。まあ、いつものことです。
どうやら、つい先頃ヴァリオスにできた新しい商店街に、お店を出したいようです。
とはいえ、商店街と言いつつも、まだまだ屋台村のようなものなのですが。逆に、それゆえに気軽に店が出しやすくなっています。
もちろん、お嬢様のお小遣いで、屋台の10や20は軽く出せるので、資金面は問題ありません。
お嬢様に命令された使用人が、商店街の管理を担当しているクルキャット商会に出店の手続きをしてきます。結構出店希望者はいるようで、ギリギリ滑り込みセーフだったようです。
さてさて、申請を出したまではよかったのですが、いったいお嬢様はどんなお店を出そうとしているのでしょうか。
「えっ、別に考えてなかったけど……」
あっけらかんとお嬢様が答えます。
「だって、面白そうだし。それに、ヴァリオスで一番のお店になったら、泥棒が入るかもしれないじゃない」
ちょっと恥ずかしそうに、お嬢様が答えます。
どうやら、まだ虹の怪盗のことを諦めていないようです。とはいえ、そうそう都合よく行くわけはないのですが。
「とにかく、お店は出すわよ。面白そうなんだから。ええっと、店の内容は……、うーん、任せるわ。バイトで雇ったハンターにでも決めさせなさい」
そう言うと、お嬢様は、わくわくと結果を待つことにしました。
一方、こちらは、悪徳商人のコッレツィオです。
「なんだって、店を出せなかっただと。馬鹿野郎共め!」
どうやら、同じ商店街に店を出そうとしたところ、タッチの差でお嬢様に先を越されてしまったようです。
「潰してこい」
ああ、完全に逆恨みです。
「へい、さっそく」
命令を受けたコッレツィオの手下たちが、お嬢様の屋台に難癖をつけに出かけました。
唐突に、セレーネ・リコお嬢様が言いだしました。まあ、いつものことです。
どうやら、つい先頃ヴァリオスにできた新しい商店街に、お店を出したいようです。
とはいえ、商店街と言いつつも、まだまだ屋台村のようなものなのですが。逆に、それゆえに気軽に店が出しやすくなっています。
もちろん、お嬢様のお小遣いで、屋台の10や20は軽く出せるので、資金面は問題ありません。
お嬢様に命令された使用人が、商店街の管理を担当しているクルキャット商会に出店の手続きをしてきます。結構出店希望者はいるようで、ギリギリ滑り込みセーフだったようです。
さてさて、申請を出したまではよかったのですが、いったいお嬢様はどんなお店を出そうとしているのでしょうか。
「えっ、別に考えてなかったけど……」
あっけらかんとお嬢様が答えます。
「だって、面白そうだし。それに、ヴァリオスで一番のお店になったら、泥棒が入るかもしれないじゃない」
ちょっと恥ずかしそうに、お嬢様が答えます。
どうやら、まだ虹の怪盗のことを諦めていないようです。とはいえ、そうそう都合よく行くわけはないのですが。
「とにかく、お店は出すわよ。面白そうなんだから。ええっと、店の内容は……、うーん、任せるわ。バイトで雇ったハンターにでも決めさせなさい」
そう言うと、お嬢様は、わくわくと結果を待つことにしました。
一方、こちらは、悪徳商人のコッレツィオです。
「なんだって、店を出せなかっただと。馬鹿野郎共め!」
どうやら、同じ商店街に店を出そうとしたところ、タッチの差でお嬢様に先を越されてしまったようです。
「潰してこい」
ああ、完全に逆恨みです。
「へい、さっそく」
命令を受けたコッレツィオの手下たちが、お嬢様の屋台に難癖をつけに出かけました。
リプレイ本文
●商店街案内所
「こんにちはー」
商店街中央にあるテントに、クレール(ka0586)が声をかけました。ここは、クルキャット商会が商工会から委託されている商店街の案内所です。とはいえ、まだ建物が建っていないので、設営したテントで御案内をしています。
「ハーイ、どなた?」
そこにいたカタリーナが、笑顔で答えました。
「商店街を盛り上げに来ましたー」
元気いっぱいのクレールの言葉に、隣にいるトルステン=L=ユピテル(ka3946)がうんうんとうなずきます。
「それで、デリバリーサービスのお店を開きたいのですが」
「デリバリー?」
ビアンカが聞き返しました。
「うん、買った品物を預かって、後でお届けする仕事をしたいんです。どうか事務所を開かせてください」
クレールが、ビアンカたちに頼みました。
「飛び込みはなあ、むずかしいんよ」
カタリーナが、ちょっと難しい顔になります。ここの販売権は商工会の商人たちが独占していて、他人には渡さないようにしています。当然、あぶれた商人もたくさんいますし、コネのない者には手も出せません。商工会から発行された権利書を所持していないと、オーナーにはなれないのです。
ただし、実際の店の運営は、バイトの店長たちに任されています。けれども、仕入れと利益はガッチリと押さえられているので、バイト代以上にハンターたちが儲けたり、店を私物化することはできません。
さすがはヴァリオスの商人たち、商売に関しては抜け目なしです。
「いちおう、商店街の店からは、業務委託を受けているんだが」
トルステンが、パン屋とお嬢様からの書類を見せました。
「ふむふむ」
ビアンカが、書類に目を通します。
「なら、実験的にOKかなあ。よさそうなら、興味を持つオーナーも出てくるやろし。けど、預かった商品の管理の問題もあるから、とりあえず、ここの横でやってみたらいいんとちゃう?」
とりあえずのスペースを案内所の隅にもらって、クレールとトルステンは、デリバリーサービスを開始しました。とはいえ、まだ商店街で認知されたとは言いがたい状態です。
「大丈夫だ。こんなこともあろうかと、チラシを用意してきた」
受付のテーブルに着いたクレールの前に、トルステンがチラシの束をドンとおきました。
「ああ、だったら、うちが配って来たるわあ」
ミコト=S=レグルス(ka3953)が、ルドルフ・デネボラ(ka3749)の袖を引っぱりながら言いました。二人は、今日は商店街の巡回警備を請け負っています。
「じゃあ、お願いだよ」
「まっかせといて」
クレールからチラシを受け取ったミコトが、元気いっぱいかけだしていきました。
「ああ、ミコトさん、一人で突っ走らないでください」
ルドルフが、慌ててミコトの後を追いかけていきました。
「それじゃあ、頑張りましょう、トルステンさん」
クレールが、張り切って呼び込みを始めました。
「おう、そうだな」
トルステンが、『その荷物、重くありませんか?』と『デリバリー受付』と書かれた幟を立てながら、答えました。
「それでは、俺はさっそく買い物に行くとしようかな」
鵤(ka3319)が、飄々とした感じで言いました。
今日は鵤もお仕事です。いわゆる、サクラですね。好きな物を買うだけでバイト代が出るのだから、チョロい仕事だと思っています。
「楽しそうだな。商店街の盛り上げって言うのも、結構面倒なんだけどなあ」
同じく買い物で商店街を盛り上げる仕事を受けたスノウ・ウァレンティヌス(ka3852)が、ちょっと面倒くさそうに言いました。
けれども、数歩歩いた所で、急に鼻をクンクンとさせます。
「いい匂い……。何だろう?」
おいしそうな匂いに、スノウは誘われるように歩き出しました。
●宣伝
「それじゃ、チラシ配ってきます」
クラベジーナ・フロラシオン(ka0334)が、たくさんのチラシをかかえて、お嬢様の店を出ました。真田 天斗(ka0014)と一緒に作ったチラシです。
新しいお店は、まずお客様に知ってもらうのが一番です。本当はポケットティッシュのような物があればもっと効果的なのですが、さすがにサルバトーレ・ロッソ以外ではそんな物は普及していません。
「セレーネ・リコお嬢様のお店に、ぜひ足を運んでくださいっ! 素敵な素敵なお洋服を揃えてお待ちしていますっ! たくさんお買いになっても大丈夫、デリバリーサービスと提携済みです!」
お店の位置と、目玉商品のイラストを描いたチラシを手に、クラベジーナが丁寧にチラシを配り始めました。天斗が担当した文章には、『チラシ持参で10%OFF』の文字が躍っています。
「はーん、何だ、何だ、チラシかあ。新しくできた服屋だってえ。おおっ、これは珍しい。デリバリーサービスもあるのかあ」
さっそく鵤が、わざとらしく大声をあげてクラベジーナからチラシを受け取って見せました。お仕事です、お仕事。
「デリバリー?」
さっそくそれに興味を持ったのか、リュー・グランフェスト(ka2419)が近づいてきて、クラベジーナからチラシを受け取りました。
「ああ、リアルブルーじゃよくあるサービスでなぁ」
すかさず、鵤が説明しました。お仕事です、お仕事。
「何だ、クレールがやってるわけか。面白いことやってるんだな」
興味を持ったリューが、案内所へとむかいました。丁度暇していたので、知り合いに顔を見せるのも面白いでしょう。
●パン屋
『ルルツさんちのパン屋さん ヴァリオス支店』とでかでかと看板を掲げた店を切り盛りしていたのは、マロウ・フォン・ルルツ(ka3860)でした。
実家のパン屋の支店を堂々と名乗ってはいますが、実質は自分の店ではないので、オーナーにしれたらちょっとまずいかもしれません。どのみち、仕入れや売り上げはオーナーの物です。
荷台の上にパラソルを差して、華やかに飾った屋台は、アーデルハイト(ka3133)に手伝ってもらった物でした。
「ハイジは男の子なんだから、力仕事もバッチリよね」
「だから、ハイジと呼ぶなと言ったじゃろう! それに、男が皆力持ちと言うわけでは……」
だてに引き籠もっているわけではないと、アーデルハイトが自慢……したのでしようか?
とはいえ、パン屋さんは結構力仕事です。
「じゃあ、会計の方を頼むわ」
屋台の上にライ麦パンやメロンパンをならべながら、マロウが言いました。ならべている間にも、さっそくメロンパンが売れていきます。結構繁盛しそうです。
「まいどありじゃ」
何だか帽子やサングラスやマフラーで顔を隠した女の子におつりを私ながらアーデルハイトが言いました。ヒッキーとしては、何だか、ちょっとシンパシーを感じます。
「なあに、あれ。アーデルハイトの知り合い?」
お客としてやってきたスノウが、アーデルハイトをじろじろと見て聞きました。確かに、サングラスはかけていないものの、アーデルハイトは今の客と似たような格好をしています。不審者です。
「知らぬ。いいでは、ないか、これが我らの外出時の正装じゃ」
「いや、客はいいけど、売り子はダメだよ」
アーデルハイトにだめ出しをしつつ、そっとスノウがルドルフに合図しました。それを受けて、ルドルフが、不審者の後をつけます。
肝心のスノウの方はといえば……。
「メロンパン一つちょうだい」
食欲に負けてしまったようです。
「ふん。どのパンも貴様にはもったいないぐらいだが、まいどありがとうなのじゃ」
すんでで平常心を取り戻したアーデルハイトが、スノウにお金を要求しました。
「いらっしゃいませ、今日はどんなパンの御気分かしら?」
「うん、いつもの奴を頼むよぉ」
「かしこまりましたあ、いつものですねえ」
「おお、やはりここのパンは最高だねぇ!」
その横では、マロウと鵤が小芝居を演じていました。
●小物屋
『いらっしゃいませ!! 七色の細腕出張所です!』
デンとどでかい看板を店先に立てかけて、エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)は小物屋で働いていました。
売っているのは、ギルド『七色の細腕』で制作した小物でした。
とは言っても、この小物屋がギルドの持ち物と言うことではありません。あくまでもエヴァが商品を持ち込んでいるだけですので、きっちりと持ち込み料はとられています。そのため、利益はまったく出ていません。エヴァのバイト代がやっとという感じです。売れてトントン、売れなければ大赤字です。
おかげで、何とか売り上げを増やそうとエヴァは必死でした。他の店で買った品物の再包装まで請け負って頑張っています。
『包装しましょう!』
買ったばかりの茶色の紙袋を持った通行人の目の前にボードを突き出して、エヴァがちょっと強引に客引きをしました。
「えっ、でも、これはパン……」
メロンパンをどうするのかと戸惑う通行人でしたが、『ぜひ!』とエヴァが引かないので、騒がれないうちに包装してもらうことにしました。実は、中の人はオフで遊びに来ていたアットリーチェちゃんだったのですが、アイドルとしては身バレするのはちょっとまずいようです。
「何だか、帽子被ってサングラスしてマフラーグルグル巻きにした怪しい人がいるんですが……」
その様子をうかがっていたルドルフが、トルステンにトランシーバーで連絡を入れました。
『暴れているのか?』
「いや、どちらかと言うと、押し売りされていますね」
エヴァに、商品説明がびっしりと書かれたプライスカードを次々に見せられているアットリーチェを見て、ルドルフがちょっと同情したように言いました。
『それなら、大丈夫なんじゃないか?』
「ああ、そうみたいですね」
トルステンの言葉に納得すると、ルドルフは次の店へとむかいました。
●お嬢様の店
「セレーネ・リコお嬢様、今回お店のお手伝いをさせて頂く真田天斗と申します。以後、お見知りおきを」
ぴちっとした執事服を着た天斗が、丁寧にお嬢様に挨拶しました。
「この前は呼び捨てにしてごめんね、セレーネさん」
ラウリィ・ディバイン(ka0425)が、いつものなれなれしさを少しだけ抑えて挨拶しました。
「はぁい、今回はよろしくね、お嬢様♪」
沢城 葵(ka3114)も、ちょっと軽いノリで挨拶します。
「あたしが、警備を担当しますわあ」
最後は、ロジー・ビィ(ka0296)です。
これで店頭バイトが揃いました。宣伝担当のクラベジーナは、すでにチラシを配りに行っています。
事前のみんなの打ち合わせで、お店は服飾店ということに決まりました。この程度の細かいことをお嬢様は気にしませんから、バイト君たちにお任せです。
「それで、古着も扱いたいんですけど。お嬢様の御衣装をいくつかならべましょう」
リアルブルーで服飾関係の会社を経営していた葵が、お嬢様に提案しました。
本当はクルキャット商会に裁縫師を紹介してもらい、オリジナルブランドで押したかったところですが。
けれども、この商店街では一つ店に肩入れするといろいろと問題になりそうなので、クルキャット商会も必要以上の援助はしていません。まあ、もともとクルキャット商会に頼る必要のない商人しかオーナーにはいませんが。とはいえ、今回のお嬢様の気紛れは突発的でしたので、準備不足は否めません。
「セレーネさんに先頭に立ってもらえば、お客なんて、どんどん来るさ」
お気楽にラウリィが言います。
「お嬢様の古着を、店頭で売れば、プレミア物ですから」
葵が確約します。
「私の古着?」
お嬢様は戸惑いがちですが、一度着たか着ないかの服は、腐るほどあります。
「古着にこだわりすぎる必要はありません。むしろ、ほどほどにしておかないと」
天斗が簡単に販売戦略を述べました。
普通の古着をおくことによって、リーズナブルな価格からの商品揃えを実現します。あくまでも主力は、通常の新品です。その上で、お嬢様の逸品を客寄せに使うわけです。人は、たとえ高価な物が買えなくても、それで楽しんだ後に、次点の商品を買うものなのです。
「ふむふむ。それじゃあ、細かいことは任せるわ」
お嬢様に言われて、店員たちが本格的に『お嬢様のお店』を開店しました。
「そこのお兄さん! 大事な人への贈り物にいかがですかー!」
ラウリィが、さっそく呼び込みを開始します。隣でニコニコしているお嬢様はとにかく衆目を引きますので、すぐにお客が集まってきました。
「はい、こちら領収書になります」
さっそく売れた商品の会計を葵が処理していきます。
「市内でしたら御自宅まで配達するサービスを紹介しておりますがいかがなさいますか?」
すかさず、天斗がデリバリーサービスを紹介しました。
出だしは順調なようです。
「おお、ここが噂の服屋さんかあ。うん、このドレスは素晴らしい。でも、ちょっと俺には過ぎたものかなぁ。よし、こっちなら俺の予算でも買えるぞ。なあんて安いんだぁ」
やっとお嬢様の店まで辿り着いた鵤が、お仕事をします。
「それじゃあ、これはデリバリーに届けておいてくれないかぁ。いやあ、便利だなぁ」
「分かりました。ちょっとラウリィ君、これお願いねえ」
葵が、呼び込みをしているラウリィを呼びました。
「えーっ、俺は、セレーネさんの隣にいる方があ……」
「みんな忙しいんだから!」
ぐずるラウリィを、葵が押し出しました。
「じゃあ、行こうかあ。便利だなあ」
わざとらしく注目を集めながら、鵤とラウリィがクレールのデリバリーを目指しました。
途中で、一所懸命チラシを配り続けているクラベジーナとすれ違います。
「お嬢様のお店です。ここで服を買って、あなたも素敵なお嬢様になりましょう」
クラベジーナがチラシを配っていると、何だか強面の男が二人、そのチラシを受け取りました。
「どうやら、この先らしいぜ」
そう言うと、コッレツィオに雇われたごろつきたちは、お嬢様の店を目指していきました。
「今の人たち感じ悪いですね。私たちの店に行くのでしょうか」
クラベジーナが、ちょっと不安になります。
「みたいね。連絡しておいてあげるね。もぐもぐ」
近づいてきたミコトが、パンを口に頬ばったままトランシーバーを取り出しました。
「やれやれ、よけいな者が徘徊してるのかなあ」
そのやりとりを耳にしたスノウが、パンを食べ歩きしながらお嬢様の店の方へとむかいました。せっかくの商店街を盛り下げられては困ります。
「はい。はい。気をつけますわ」
ミコトから連絡を受けたロジーが、ちょっと気を引き締めました。念のために、ルドルフとトルステンにも応援の連絡を入れておきます。
お嬢様のお店では、クレールの所に顔を出した後のリューが、丁度お客としてやってきているところでした。デリバリー協賛のお店がどんな所なのか、一つ一つ回って吟味しているようです。後で、ちゃんとクレールに教えてあげるつもりでメモをしていきます。
「この店のお勧めは何かな」
メモを片手に、リューが訊ねました。
「こちらになります。実際に店長が御使用なされていた逸品でございます」
葵が、お嬢様から提供されたシックな黒のドレスをリューに勧めました。
「へえ、これは、付加価値のついたドレスですわね」
リューが、メモをとりながら言います。
「おいおい、この店は、人の使い古しを売りつけるのかよ」
突然、リューたちの後ろから、ガラの悪い声が店内に響きました。お客様たちの視線が、一斉にそちらへと向きます。
「古着というのは、そう言う物ですものねえ。その分、凄くリーズナブルですわよ」
あらあらという感じで、リューが言いました。
「はあん。使い古しを使い古しと言って、何が悪いんだよ。どいつが店長だ、店長を出しやがれ!」
男たちの挑発に、思わずお嬢様が癇癪を爆発させてどつきに行こうとするのを、すっと、天斗が遮りました。
「いやあ、古着でも、これはなかなかの物ですわよねえ。もっと、他にもあります?」
「もちろんです」
ロジーの誘導に合わせて、葵がまだ展示していないとびきりのドレスを取り出しました。さすがに、お客様の注目がそちらへと移ります。
「もっと広い場所でお見せしましょう。興味のある方はこちらへ」
そう言うと、葵はドレスを持ってお店から少し離れていきました。店にいたお客様たちも、それに釣られて移動します。
「わあ、この品、凄いなあ!」
同時に、スノウが、隣の店でわざとらしく買い物を始めて人目を引きつけました。
すぐにロジーが言っていた男だと分かったからです。ここで騒がれて、商店街の雰囲気が壊れてはよくありません。
「オイ、店長を出せって言ってるんだよ。この店は、ちゃんとした商売してるのかあ」
男たちが、精一杯凄みます。
「まあまあ、あなたも、そんなに騒がなくてもいいじゃないですか」
「そうですよお。楽しく買い物しましょうよ」
駆けつけたルドルフとミコトが、店の客を装って言いました。変にニコニコしているルドルフと違って、ミコトはちょっと顔が引きつっています。
「分かりました。店長は、こちらにいらっしゃいます。御案内を」
屋台の陰から出てきたロジーが、男たちを手招きしました。
「おう、ちゃんと釈明してもらおうじゃねえか」
店長をビビらせて店を撤退させる気満々で、男たちがロジーの後をついていきました。それを追うようにして、ルドルフとミコトも屋台の裏へと回ります。
思いっきり何か言いたそうなお嬢様は、天斗がしっかりと押さえています。
「なんかあったのかな?」
「いい所へ、ちょっとそっちを持ってくれ」
丁度戻ってきたラウリィに、天斗が垂れ幕の端を握らせました。二人でそれを広げ持つと、屋台の裏が通りからは見えなくなります。
「この商店街では、暴れたりしちゃいけないんですよお」
人目がなくなったので、ミコトが男たちに言いました。
「ふん。ここに店を出されると、迷惑な人がいるんだよ。だから店長を出せと……いてて」
「まあまあ、女の子を泣かせちゃいけませんな」
ミコトを威嚇する男の腕を、ルドルフが軽く捻りました。
「何しやがる。店長を出せ!」
「ええと、アポなしだと、店長に会うのは難しい……。あーあ、もう面倒くさいですわね。ふん縛ってしまいましょう」
ロジーが縄を取り出すと、あっという間に男たちを縛りあげてしまいました。なおも騒ぎたてようとするので、ミコトが布で猿轡を噛ませます。
「すみましたか? では、案内所の所までデリバリーをお願いします」
「了解だよ」
天斗に言われて、ラウリィが即座に答えました。そのまま広げていた垂れ幕で男たちをグルグル巻きにすると、ルドルフたちと一緒にさっさと運んでしまいます。
「暴漢ですか。出店できなかった商人が嫌がらせをしてくるという噂はありましたが、本当に来ちゃったんですねえ。後は、陸軍の方で、きっちりお仕置きしておきますです」
案内所に詰めている若い駐在さんが、暴漢たちを引き取ってくれました。ロジーとトルステンから連絡を受けて、すでに待ち構えていたのです。
この程度は、想定されるトラブルの一つでした。それを見越して、陸軍の方でも、常駐の兵士をおいています。とはいえ、ちょっと頼りない若者のようですが。まあ、陸軍のことですから、いつも通りとも言えます。
けれども、こうして脅しなどは通用しないことを示してやれば、今後こういうことは少なくなるでしょう。今回の商店街の警備はしっかりしていました。
「何だか、変なお客も来たけれど、こういうお店というのも意外と面白いものね。ようし、頑張ってお店を大きくするわよ!」
生まれ持った商才を刺激されたのか、お嬢様が目を輝かせて言いました。目指せ、商店街制覇です。
「売るぞー。おー!」
あちこちの店からも歓声があがります。商店街は、今日も賑やかでした。
「こんにちはー」
商店街中央にあるテントに、クレール(ka0586)が声をかけました。ここは、クルキャット商会が商工会から委託されている商店街の案内所です。とはいえ、まだ建物が建っていないので、設営したテントで御案内をしています。
「ハーイ、どなた?」
そこにいたカタリーナが、笑顔で答えました。
「商店街を盛り上げに来ましたー」
元気いっぱいのクレールの言葉に、隣にいるトルステン=L=ユピテル(ka3946)がうんうんとうなずきます。
「それで、デリバリーサービスのお店を開きたいのですが」
「デリバリー?」
ビアンカが聞き返しました。
「うん、買った品物を預かって、後でお届けする仕事をしたいんです。どうか事務所を開かせてください」
クレールが、ビアンカたちに頼みました。
「飛び込みはなあ、むずかしいんよ」
カタリーナが、ちょっと難しい顔になります。ここの販売権は商工会の商人たちが独占していて、他人には渡さないようにしています。当然、あぶれた商人もたくさんいますし、コネのない者には手も出せません。商工会から発行された権利書を所持していないと、オーナーにはなれないのです。
ただし、実際の店の運営は、バイトの店長たちに任されています。けれども、仕入れと利益はガッチリと押さえられているので、バイト代以上にハンターたちが儲けたり、店を私物化することはできません。
さすがはヴァリオスの商人たち、商売に関しては抜け目なしです。
「いちおう、商店街の店からは、業務委託を受けているんだが」
トルステンが、パン屋とお嬢様からの書類を見せました。
「ふむふむ」
ビアンカが、書類に目を通します。
「なら、実験的にOKかなあ。よさそうなら、興味を持つオーナーも出てくるやろし。けど、預かった商品の管理の問題もあるから、とりあえず、ここの横でやってみたらいいんとちゃう?」
とりあえずのスペースを案内所の隅にもらって、クレールとトルステンは、デリバリーサービスを開始しました。とはいえ、まだ商店街で認知されたとは言いがたい状態です。
「大丈夫だ。こんなこともあろうかと、チラシを用意してきた」
受付のテーブルに着いたクレールの前に、トルステンがチラシの束をドンとおきました。
「ああ、だったら、うちが配って来たるわあ」
ミコト=S=レグルス(ka3953)が、ルドルフ・デネボラ(ka3749)の袖を引っぱりながら言いました。二人は、今日は商店街の巡回警備を請け負っています。
「じゃあ、お願いだよ」
「まっかせといて」
クレールからチラシを受け取ったミコトが、元気いっぱいかけだしていきました。
「ああ、ミコトさん、一人で突っ走らないでください」
ルドルフが、慌ててミコトの後を追いかけていきました。
「それじゃあ、頑張りましょう、トルステンさん」
クレールが、張り切って呼び込みを始めました。
「おう、そうだな」
トルステンが、『その荷物、重くありませんか?』と『デリバリー受付』と書かれた幟を立てながら、答えました。
「それでは、俺はさっそく買い物に行くとしようかな」
鵤(ka3319)が、飄々とした感じで言いました。
今日は鵤もお仕事です。いわゆる、サクラですね。好きな物を買うだけでバイト代が出るのだから、チョロい仕事だと思っています。
「楽しそうだな。商店街の盛り上げって言うのも、結構面倒なんだけどなあ」
同じく買い物で商店街を盛り上げる仕事を受けたスノウ・ウァレンティヌス(ka3852)が、ちょっと面倒くさそうに言いました。
けれども、数歩歩いた所で、急に鼻をクンクンとさせます。
「いい匂い……。何だろう?」
おいしそうな匂いに、スノウは誘われるように歩き出しました。
●宣伝
「それじゃ、チラシ配ってきます」
クラベジーナ・フロラシオン(ka0334)が、たくさんのチラシをかかえて、お嬢様の店を出ました。真田 天斗(ka0014)と一緒に作ったチラシです。
新しいお店は、まずお客様に知ってもらうのが一番です。本当はポケットティッシュのような物があればもっと効果的なのですが、さすがにサルバトーレ・ロッソ以外ではそんな物は普及していません。
「セレーネ・リコお嬢様のお店に、ぜひ足を運んでくださいっ! 素敵な素敵なお洋服を揃えてお待ちしていますっ! たくさんお買いになっても大丈夫、デリバリーサービスと提携済みです!」
お店の位置と、目玉商品のイラストを描いたチラシを手に、クラベジーナが丁寧にチラシを配り始めました。天斗が担当した文章には、『チラシ持参で10%OFF』の文字が躍っています。
「はーん、何だ、何だ、チラシかあ。新しくできた服屋だってえ。おおっ、これは珍しい。デリバリーサービスもあるのかあ」
さっそく鵤が、わざとらしく大声をあげてクラベジーナからチラシを受け取って見せました。お仕事です、お仕事。
「デリバリー?」
さっそくそれに興味を持ったのか、リュー・グランフェスト(ka2419)が近づいてきて、クラベジーナからチラシを受け取りました。
「ああ、リアルブルーじゃよくあるサービスでなぁ」
すかさず、鵤が説明しました。お仕事です、お仕事。
「何だ、クレールがやってるわけか。面白いことやってるんだな」
興味を持ったリューが、案内所へとむかいました。丁度暇していたので、知り合いに顔を見せるのも面白いでしょう。
●パン屋
『ルルツさんちのパン屋さん ヴァリオス支店』とでかでかと看板を掲げた店を切り盛りしていたのは、マロウ・フォン・ルルツ(ka3860)でした。
実家のパン屋の支店を堂々と名乗ってはいますが、実質は自分の店ではないので、オーナーにしれたらちょっとまずいかもしれません。どのみち、仕入れや売り上げはオーナーの物です。
荷台の上にパラソルを差して、華やかに飾った屋台は、アーデルハイト(ka3133)に手伝ってもらった物でした。
「ハイジは男の子なんだから、力仕事もバッチリよね」
「だから、ハイジと呼ぶなと言ったじゃろう! それに、男が皆力持ちと言うわけでは……」
だてに引き籠もっているわけではないと、アーデルハイトが自慢……したのでしようか?
とはいえ、パン屋さんは結構力仕事です。
「じゃあ、会計の方を頼むわ」
屋台の上にライ麦パンやメロンパンをならべながら、マロウが言いました。ならべている間にも、さっそくメロンパンが売れていきます。結構繁盛しそうです。
「まいどありじゃ」
何だか帽子やサングラスやマフラーで顔を隠した女の子におつりを私ながらアーデルハイトが言いました。ヒッキーとしては、何だか、ちょっとシンパシーを感じます。
「なあに、あれ。アーデルハイトの知り合い?」
お客としてやってきたスノウが、アーデルハイトをじろじろと見て聞きました。確かに、サングラスはかけていないものの、アーデルハイトは今の客と似たような格好をしています。不審者です。
「知らぬ。いいでは、ないか、これが我らの外出時の正装じゃ」
「いや、客はいいけど、売り子はダメだよ」
アーデルハイトにだめ出しをしつつ、そっとスノウがルドルフに合図しました。それを受けて、ルドルフが、不審者の後をつけます。
肝心のスノウの方はといえば……。
「メロンパン一つちょうだい」
食欲に負けてしまったようです。
「ふん。どのパンも貴様にはもったいないぐらいだが、まいどありがとうなのじゃ」
すんでで平常心を取り戻したアーデルハイトが、スノウにお金を要求しました。
「いらっしゃいませ、今日はどんなパンの御気分かしら?」
「うん、いつもの奴を頼むよぉ」
「かしこまりましたあ、いつものですねえ」
「おお、やはりここのパンは最高だねぇ!」
その横では、マロウと鵤が小芝居を演じていました。
●小物屋
『いらっしゃいませ!! 七色の細腕出張所です!』
デンとどでかい看板を店先に立てかけて、エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)は小物屋で働いていました。
売っているのは、ギルド『七色の細腕』で制作した小物でした。
とは言っても、この小物屋がギルドの持ち物と言うことではありません。あくまでもエヴァが商品を持ち込んでいるだけですので、きっちりと持ち込み料はとられています。そのため、利益はまったく出ていません。エヴァのバイト代がやっとという感じです。売れてトントン、売れなければ大赤字です。
おかげで、何とか売り上げを増やそうとエヴァは必死でした。他の店で買った品物の再包装まで請け負って頑張っています。
『包装しましょう!』
買ったばかりの茶色の紙袋を持った通行人の目の前にボードを突き出して、エヴァがちょっと強引に客引きをしました。
「えっ、でも、これはパン……」
メロンパンをどうするのかと戸惑う通行人でしたが、『ぜひ!』とエヴァが引かないので、騒がれないうちに包装してもらうことにしました。実は、中の人はオフで遊びに来ていたアットリーチェちゃんだったのですが、アイドルとしては身バレするのはちょっとまずいようです。
「何だか、帽子被ってサングラスしてマフラーグルグル巻きにした怪しい人がいるんですが……」
その様子をうかがっていたルドルフが、トルステンにトランシーバーで連絡を入れました。
『暴れているのか?』
「いや、どちらかと言うと、押し売りされていますね」
エヴァに、商品説明がびっしりと書かれたプライスカードを次々に見せられているアットリーチェを見て、ルドルフがちょっと同情したように言いました。
『それなら、大丈夫なんじゃないか?』
「ああ、そうみたいですね」
トルステンの言葉に納得すると、ルドルフは次の店へとむかいました。
●お嬢様の店
「セレーネ・リコお嬢様、今回お店のお手伝いをさせて頂く真田天斗と申します。以後、お見知りおきを」
ぴちっとした執事服を着た天斗が、丁寧にお嬢様に挨拶しました。
「この前は呼び捨てにしてごめんね、セレーネさん」
ラウリィ・ディバイン(ka0425)が、いつものなれなれしさを少しだけ抑えて挨拶しました。
「はぁい、今回はよろしくね、お嬢様♪」
沢城 葵(ka3114)も、ちょっと軽いノリで挨拶します。
「あたしが、警備を担当しますわあ」
最後は、ロジー・ビィ(ka0296)です。
これで店頭バイトが揃いました。宣伝担当のクラベジーナは、すでにチラシを配りに行っています。
事前のみんなの打ち合わせで、お店は服飾店ということに決まりました。この程度の細かいことをお嬢様は気にしませんから、バイト君たちにお任せです。
「それで、古着も扱いたいんですけど。お嬢様の御衣装をいくつかならべましょう」
リアルブルーで服飾関係の会社を経営していた葵が、お嬢様に提案しました。
本当はクルキャット商会に裁縫師を紹介してもらい、オリジナルブランドで押したかったところですが。
けれども、この商店街では一つ店に肩入れするといろいろと問題になりそうなので、クルキャット商会も必要以上の援助はしていません。まあ、もともとクルキャット商会に頼る必要のない商人しかオーナーにはいませんが。とはいえ、今回のお嬢様の気紛れは突発的でしたので、準備不足は否めません。
「セレーネさんに先頭に立ってもらえば、お客なんて、どんどん来るさ」
お気楽にラウリィが言います。
「お嬢様の古着を、店頭で売れば、プレミア物ですから」
葵が確約します。
「私の古着?」
お嬢様は戸惑いがちですが、一度着たか着ないかの服は、腐るほどあります。
「古着にこだわりすぎる必要はありません。むしろ、ほどほどにしておかないと」
天斗が簡単に販売戦略を述べました。
普通の古着をおくことによって、リーズナブルな価格からの商品揃えを実現します。あくまでも主力は、通常の新品です。その上で、お嬢様の逸品を客寄せに使うわけです。人は、たとえ高価な物が買えなくても、それで楽しんだ後に、次点の商品を買うものなのです。
「ふむふむ。それじゃあ、細かいことは任せるわ」
お嬢様に言われて、店員たちが本格的に『お嬢様のお店』を開店しました。
「そこのお兄さん! 大事な人への贈り物にいかがですかー!」
ラウリィが、さっそく呼び込みを開始します。隣でニコニコしているお嬢様はとにかく衆目を引きますので、すぐにお客が集まってきました。
「はい、こちら領収書になります」
さっそく売れた商品の会計を葵が処理していきます。
「市内でしたら御自宅まで配達するサービスを紹介しておりますがいかがなさいますか?」
すかさず、天斗がデリバリーサービスを紹介しました。
出だしは順調なようです。
「おお、ここが噂の服屋さんかあ。うん、このドレスは素晴らしい。でも、ちょっと俺には過ぎたものかなぁ。よし、こっちなら俺の予算でも買えるぞ。なあんて安いんだぁ」
やっとお嬢様の店まで辿り着いた鵤が、お仕事をします。
「それじゃあ、これはデリバリーに届けておいてくれないかぁ。いやあ、便利だなぁ」
「分かりました。ちょっとラウリィ君、これお願いねえ」
葵が、呼び込みをしているラウリィを呼びました。
「えーっ、俺は、セレーネさんの隣にいる方があ……」
「みんな忙しいんだから!」
ぐずるラウリィを、葵が押し出しました。
「じゃあ、行こうかあ。便利だなあ」
わざとらしく注目を集めながら、鵤とラウリィがクレールのデリバリーを目指しました。
途中で、一所懸命チラシを配り続けているクラベジーナとすれ違います。
「お嬢様のお店です。ここで服を買って、あなたも素敵なお嬢様になりましょう」
クラベジーナがチラシを配っていると、何だか強面の男が二人、そのチラシを受け取りました。
「どうやら、この先らしいぜ」
そう言うと、コッレツィオに雇われたごろつきたちは、お嬢様の店を目指していきました。
「今の人たち感じ悪いですね。私たちの店に行くのでしょうか」
クラベジーナが、ちょっと不安になります。
「みたいね。連絡しておいてあげるね。もぐもぐ」
近づいてきたミコトが、パンを口に頬ばったままトランシーバーを取り出しました。
「やれやれ、よけいな者が徘徊してるのかなあ」
そのやりとりを耳にしたスノウが、パンを食べ歩きしながらお嬢様の店の方へとむかいました。せっかくの商店街を盛り下げられては困ります。
「はい。はい。気をつけますわ」
ミコトから連絡を受けたロジーが、ちょっと気を引き締めました。念のために、ルドルフとトルステンにも応援の連絡を入れておきます。
お嬢様のお店では、クレールの所に顔を出した後のリューが、丁度お客としてやってきているところでした。デリバリー協賛のお店がどんな所なのか、一つ一つ回って吟味しているようです。後で、ちゃんとクレールに教えてあげるつもりでメモをしていきます。
「この店のお勧めは何かな」
メモを片手に、リューが訊ねました。
「こちらになります。実際に店長が御使用なされていた逸品でございます」
葵が、お嬢様から提供されたシックな黒のドレスをリューに勧めました。
「へえ、これは、付加価値のついたドレスですわね」
リューが、メモをとりながら言います。
「おいおい、この店は、人の使い古しを売りつけるのかよ」
突然、リューたちの後ろから、ガラの悪い声が店内に響きました。お客様たちの視線が、一斉にそちらへと向きます。
「古着というのは、そう言う物ですものねえ。その分、凄くリーズナブルですわよ」
あらあらという感じで、リューが言いました。
「はあん。使い古しを使い古しと言って、何が悪いんだよ。どいつが店長だ、店長を出しやがれ!」
男たちの挑発に、思わずお嬢様が癇癪を爆発させてどつきに行こうとするのを、すっと、天斗が遮りました。
「いやあ、古着でも、これはなかなかの物ですわよねえ。もっと、他にもあります?」
「もちろんです」
ロジーの誘導に合わせて、葵がまだ展示していないとびきりのドレスを取り出しました。さすがに、お客様の注目がそちらへと移ります。
「もっと広い場所でお見せしましょう。興味のある方はこちらへ」
そう言うと、葵はドレスを持ってお店から少し離れていきました。店にいたお客様たちも、それに釣られて移動します。
「わあ、この品、凄いなあ!」
同時に、スノウが、隣の店でわざとらしく買い物を始めて人目を引きつけました。
すぐにロジーが言っていた男だと分かったからです。ここで騒がれて、商店街の雰囲気が壊れてはよくありません。
「オイ、店長を出せって言ってるんだよ。この店は、ちゃんとした商売してるのかあ」
男たちが、精一杯凄みます。
「まあまあ、あなたも、そんなに騒がなくてもいいじゃないですか」
「そうですよお。楽しく買い物しましょうよ」
駆けつけたルドルフとミコトが、店の客を装って言いました。変にニコニコしているルドルフと違って、ミコトはちょっと顔が引きつっています。
「分かりました。店長は、こちらにいらっしゃいます。御案内を」
屋台の陰から出てきたロジーが、男たちを手招きしました。
「おう、ちゃんと釈明してもらおうじゃねえか」
店長をビビらせて店を撤退させる気満々で、男たちがロジーの後をついていきました。それを追うようにして、ルドルフとミコトも屋台の裏へと回ります。
思いっきり何か言いたそうなお嬢様は、天斗がしっかりと押さえています。
「なんかあったのかな?」
「いい所へ、ちょっとそっちを持ってくれ」
丁度戻ってきたラウリィに、天斗が垂れ幕の端を握らせました。二人でそれを広げ持つと、屋台の裏が通りからは見えなくなります。
「この商店街では、暴れたりしちゃいけないんですよお」
人目がなくなったので、ミコトが男たちに言いました。
「ふん。ここに店を出されると、迷惑な人がいるんだよ。だから店長を出せと……いてて」
「まあまあ、女の子を泣かせちゃいけませんな」
ミコトを威嚇する男の腕を、ルドルフが軽く捻りました。
「何しやがる。店長を出せ!」
「ええと、アポなしだと、店長に会うのは難しい……。あーあ、もう面倒くさいですわね。ふん縛ってしまいましょう」
ロジーが縄を取り出すと、あっという間に男たちを縛りあげてしまいました。なおも騒ぎたてようとするので、ミコトが布で猿轡を噛ませます。
「すみましたか? では、案内所の所までデリバリーをお願いします」
「了解だよ」
天斗に言われて、ラウリィが即座に答えました。そのまま広げていた垂れ幕で男たちをグルグル巻きにすると、ルドルフたちと一緒にさっさと運んでしまいます。
「暴漢ですか。出店できなかった商人が嫌がらせをしてくるという噂はありましたが、本当に来ちゃったんですねえ。後は、陸軍の方で、きっちりお仕置きしておきますです」
案内所に詰めている若い駐在さんが、暴漢たちを引き取ってくれました。ロジーとトルステンから連絡を受けて、すでに待ち構えていたのです。
この程度は、想定されるトラブルの一つでした。それを見越して、陸軍の方でも、常駐の兵士をおいています。とはいえ、ちょっと頼りない若者のようですが。まあ、陸軍のことですから、いつも通りとも言えます。
けれども、こうして脅しなどは通用しないことを示してやれば、今後こういうことは少なくなるでしょう。今回の商店街の警備はしっかりしていました。
「何だか、変なお客も来たけれど、こういうお店というのも意外と面白いものね。ようし、頑張ってお店を大きくするわよ!」
生まれ持った商才を刺激されたのか、お嬢様が目を輝かせて言いました。目指せ、商店街制覇です。
「売るぞー。おー!」
あちこちの店からも歓声があがります。商店街は、今日も賑やかでした。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 5人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/24 10:14:08 |
|
![]() |
さぁ、仕事です 真田 天斗(ka0014) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/01/24 10:23:27 |