ゲスト
(ka0000)
戦場のアマリリス
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/30 22:00
- 完成日
- 2019/05/14 02:34
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ポカラ駐屯地にて
「まずいまずい、モータルはどこだ!?」
可変式魔道アーマー「ビルドムーバー」のトラック形態1台が物凄い勢いでポカラ駐屯地へと戻ってきた。
「モータルだ。モータルはまだ戻ってきてねぇのか!?」
運転席から顔を出し義勇隊副隊長のキアンが元ならず者らしく乱暴に怒鳴り上げる。
「昼過ぎになるって話だろ、ハナから。森で歪虚でも出たのか?」
「ああ! 出たんだよ、人型の大きいヤツで、キラキラした水晶みたいなヤツが!」
キアンの言葉に駐屯地のメンバーが一斉にざわついた。
「人型で……大型?」
「これまでは昆虫タイプだったはず……」
解説すると、同盟領のとある内陸部に位置していた田舎村の「ポカラ」はここ数年でさまざまなことがあった。
浮遊する大型歪虚「パルサラス」の急襲により建造物が全壊。
ハンターの活躍により撃退後、住民はアマリリス商会の管理するセル鉱山に移民。
その後、将来的に故郷に帰還したい住民の意向から、アマリリス商会はモータルを隊長とする義勇隊をポカラ跡地に派遣し常駐させる。
そこへ、大樹型歪虚などが襲来。義勇隊が撤退した跡地の大地を掘り起こし、嫉妬王「ラルヴァ」の腕を1本回収した。
このため、ポカラは地盤から根こそぎ崩壊する羽目になった。
大型歪虚出現により監視の必要を認めた同盟魔術師協会広報部は、アマリリス商会にポカラ跡地での歪虚監視業務を委託していた。
そこでいま、人型で大型の歪虚が目撃されたのである。
「仕方ねぇ……歪虚は森の向こうでジャンプしながら移動しているのしかまだ見えてねぇ。いきなり草原に出てここまで来るこたぁねぇだろ。俺が魔術師協会にひとっ走り行ってくる。お前らはモータルの帰りを待って監視業務を続けろ!」
そう言ってキアンはビルドムーバーを走らせた。
●フラ・キャンディ参戦
「とにかくジルのじいさん、ベンド商会から配当弾んでもらったんだからまずはその嬢ちゃんをとにかく一刻でも早く差し向けてほしいんだ」
「ううむ……」
フラ・キャンディ(kz0121)の後見人であるジル・コバルト老人はうなって返答を避けた。過去に根こそぎ町を潰された場所での大型歪虚監視……というか、明らかに交戦を、しかも戦力が整う前の先乗りを依頼されているのだ。危険極まりなく、いくら出資先からの依頼といえど快諾できるものでもない。
そこに、二人の密談していた部屋にフラが入ってきた。
「ジルさん、ボクなら大丈夫だよ」
「フラ……」
「歪虚に潰された故郷を守ってほしいんでしょ? 同じ目に遭ったボクがほっとくわけないじゃない」
明るく言うフラ。彼女も「百年目のエルフ」として追放された故郷を歪虚に潰されているのだ。
「まずいまずい、モータルはどこだ!?」
可変式魔道アーマー「ビルドムーバー」のトラック形態1台が物凄い勢いでポカラ駐屯地へと戻ってきた。
「モータルだ。モータルはまだ戻ってきてねぇのか!?」
運転席から顔を出し義勇隊副隊長のキアンが元ならず者らしく乱暴に怒鳴り上げる。
「昼過ぎになるって話だろ、ハナから。森で歪虚でも出たのか?」
「ああ! 出たんだよ、人型の大きいヤツで、キラキラした水晶みたいなヤツが!」
キアンの言葉に駐屯地のメンバーが一斉にざわついた。
「人型で……大型?」
「これまでは昆虫タイプだったはず……」
解説すると、同盟領のとある内陸部に位置していた田舎村の「ポカラ」はここ数年でさまざまなことがあった。
浮遊する大型歪虚「パルサラス」の急襲により建造物が全壊。
ハンターの活躍により撃退後、住民はアマリリス商会の管理するセル鉱山に移民。
その後、将来的に故郷に帰還したい住民の意向から、アマリリス商会はモータルを隊長とする義勇隊をポカラ跡地に派遣し常駐させる。
そこへ、大樹型歪虚などが襲来。義勇隊が撤退した跡地の大地を掘り起こし、嫉妬王「ラルヴァ」の腕を1本回収した。
このため、ポカラは地盤から根こそぎ崩壊する羽目になった。
大型歪虚出現により監視の必要を認めた同盟魔術師協会広報部は、アマリリス商会にポカラ跡地での歪虚監視業務を委託していた。
そこでいま、人型で大型の歪虚が目撃されたのである。
「仕方ねぇ……歪虚は森の向こうでジャンプしながら移動しているのしかまだ見えてねぇ。いきなり草原に出てここまで来るこたぁねぇだろ。俺が魔術師協会にひとっ走り行ってくる。お前らはモータルの帰りを待って監視業務を続けろ!」
そう言ってキアンはビルドムーバーを走らせた。
●フラ・キャンディ参戦
「とにかくジルのじいさん、ベンド商会から配当弾んでもらったんだからまずはその嬢ちゃんをとにかく一刻でも早く差し向けてほしいんだ」
「ううむ……」
フラ・キャンディ(kz0121)の後見人であるジル・コバルト老人はうなって返答を避けた。過去に根こそぎ町を潰された場所での大型歪虚監視……というか、明らかに交戦を、しかも戦力が整う前の先乗りを依頼されているのだ。危険極まりなく、いくら出資先からの依頼といえど快諾できるものでもない。
そこに、二人の密談していた部屋にフラが入ってきた。
「ジルさん、ボクなら大丈夫だよ」
「フラ……」
「歪虚に潰された故郷を守ってほしいんでしょ? 同じ目に遭ったボクがほっとくわけないじゃない」
明るく言うフラ。彼女も「百年目のエルフ」として追放された故郷を歪虚に潰されているのだ。
リプレイ本文
●
「あ!」
森から一時ポカラ駐屯地に戻って来たフラ・キャンディ(kz0121)が目を輝かせた。
乗っていた魔導アーマープラヴァー「ロリポップ」のコクピットから跳ねるようにして飛び出すと前進を使って駆け寄り……。
「来てくれたんだね、ありがとっ☆」
あっという間に距離を詰めてダイブ。
これを受け止めた弓月・小太(ka4679)だったが、勢いに押されてむぎゅ~っと抱き合ったままくるっと回ることに。
「フ、フラさん……大丈夫でしたかぁ?」
「うんっ。小太さんたちが来るって聞いて、待ち遠しかったんだよ」
恋人同士の、鼻と鼻が触れ合うような距離での会話。
この様子を見たリュラ=H=アズライト(ka0304)は、特に何を言うでもなく少し目を見開いていたが、すぐにくすり。甘えんぼさんの行動には何やら理解があるようで、微笑ましく見守っている。
「いきなり見せつけてくれるわね~、フラっち」
一方のキーリ(ka4642)はからかうような……。
あ。
何やら豊満な胸をほれほれ、と突き出すようにしてる。
「私は待ち遠しくなかったのねー、ふ~ん」
「も、もちろん待ち遠しかったよぅ」
フラ、キーリにも同じように抱き着いてくるん。キーリはそれでいいのよ、それで、と一定の満足を得たようで。
で、フラ。
回り終えたところで霧雨 悠月(ka4130)に気付く。
「え? 僕?」
悠月、たじっ、と一歩引いたがもう遅い。フラに抱き着かれて、くるん。
「あはは……」
小太に悪いなと思ったり、相変わらずキーリさんのいたずら心からの展開かー、とか思ったり。
「……それで、敵の状況はどうですか?」
ここでエルバッハ・リオン(ka2434)が近付いて来た。
「うん。ジリジリ接近しているみたいなんだ。森から出てこないの、もしかしたら何かたくらんでいるのかも」
フラ、エルバッハに背を預けるように前抱っこの形に収まる。
「そうですか……先にこちらから打って出る方が良いかもしれませんね」
エルバッハ、そんなフラの頭をなでなで。
で、フラ。さらに知人の姿を見つけ視線を向けた。
これに気付いたのは、トリプルJ(ka6653)だ。
「俺はいいから小太にくっついとけって」
ギクッとして小太を指差す。
フラ、小太を見る。ええと、と小太。しまったというそぶりを見せたフラ、そそくさとそちらへ。でもって、小太に背中を預けるように前抱っこの形に収まる。
「やれやれ、モテる男は苦労が多いぜ……」
「っていうか、フラっちに抱き着かれてたらそのまま幼女誘拐犯みたいな構図だったわね~」
ふいー、と額の汗をぬぐうJにキーリがジト目で突っ込み。
「な、何だよオイ。懐かれただけで誘拐犯かよ?!」
「フラっちが一言、助けて―と叫んだらアウトよね?」
異議を唱えるJに鋭く言い放つキーリ。
「……まあ、もしもフラさんがそう叫べば、だけどね」
悠月、この展開に汗たら~するしかなく。
「ま、誤解されぬ相手にだけ甘えておけば問題ないのぅ」
ここでミグ・ロマイヤー(ka0665)がもったいぶったように義手の指を一つ立てて講釈したり。
「そのほうがお主も良いじゃろ?」
くるっ、と小太に向き直りズバリ聞く。
「え、ええと……」
小太、真っ赤になりながらフラをぎゅっと抱きしめるのだったり。
「それは良いとして、ここら辺はもう平和になったと思っておったが……」
今度はミグ、駐屯地を見回した。彼女が巨大歪虚「パルサラス」と戦ったときは町があったが、地面が掘り返されあの時より酷い状態になっている。
でもって、森の方を見遣る。
「……まだまだミグの出番はありそうじゃな」
舌なめずりをする。
にぃ、と瞳が好戦的に細められた。
一気に気分が乗って来た。
「最近は「エターナル・グランドスラム」「尽きせぬ砲弾」「弾薬工場」などなどいろいろな異名で呼ばれるようになったが、そも、その噂の源となっているミグ製グランドスラム自動生成装置は本体となるダインスレイブ「ヤクトバウ」……」
「どう……するの?」
「防衛線はいまどうなってますか?」
ミグの陶酔しながらの一人語りを尻目に、リュラが改めて今後を問い、エルバッハが現状を確認した。
「……ともに本日も小山のような威容を誇って……」
「フラさんが戻って来たので義勇隊のキアン以下、二台のビルドムーバーが監視についています」
義勇隊隊長のモータルの返事。
「……そのままならただのガラクタだが、ミグ回路を並列4基運用することで、大量の徹甲砲弾の弾薬増産が可能と……」
「私は森の外で待機しながらラムルタフルでも磨いてようかしら。……それにしても、なーんか最近、遭遇する敵も大型化してるっぽいわねー」
「僕はシグレと一緒に行動するね。……うーん、森の中で食い止める感じか。うん、人里まで行かせるわけにいかない!」
キーリと悠月はそんな感じで打ち合わせ。
「……これが量産された暁には邪神など物の数ではないわ!」
「普段と機体は違いますが、射撃戦なら何とかなるはずですぅ」
「ま、上空からの敵発見はこの俺に任せときな」
小太とJの方針も決まった!
「……とはいえ、スキルであるから量産はできぬがのぅ!」
延々と独白を続けていたミグもようやく終演。わーっはっはっは、と豪快に笑い飛ばして準備万端。
「じゃ、ボクはモータルさんたちと森の外で防衛線張るね。行こう、出撃だよっ!」
フラの掛け声で各員搭乗。
作戦開始である。
……だれもミグに突っ込みを入れなかったのは、まあそれはそれ。
●
「じゃ、ボクはこのへんで」
フラとモータルたちの最終防衛ラインが森から離れた場所に止まった。
「砲撃ならこのあたりかしらね~」
「グレネードを使うならこの辺じゃのぅ」
キーリのラムルタフル(刻令ゴーレム「Volcanius」)(ka4642unit002)とミグのヤクト・バウ・PC(ダインスレイブ)(ka0665unit008)がさらに森に近い位置に停止。
ここで砲撃戦を展開するつもりだ。
おっと。
ここで魔導バイク「マルモリー」を駆るリュラがセントヘレンズ(刻令ゴーレム「Volcanius」)(ka0304unit003)を残し森へ向かった。モフロウもついて行く。
「リュラさん?!」
フラ、ロリポップから呼び掛ける。
「前に出て、敵探す…。そっち見つけたら、座標おねがい…」
魔導スマートフォンを背中越しにかざすリュラ。もう、甘えた場面を温かく見守っていた表情はない。
その横に、後ろから追い付いたイジェドがぴたり。
悠月を乗せたシグレ(ka4130unit001)である。
「じゃ、僕は右手の方を探ろうかな?」
「了解……」
悠月、右に逸れて加速。リュラはひとつ頷いて直進。そのまま森に入った。
その、上空では。
「フラさん、行ってきますねぇ。頑張ってくるのですぅー」
小太がスラスターでジャンプ航行をする魔導型デュミナス(ka4679unit002)コクピット内から地上の恋人を探して通信。フラ、気付いたようでオープンコクピットから上を見て手を振っている。「うんっ、気を付けてね、頑張ってね、やっつけちゃってね☆」と、三連続語尾上げのおあつい通信が返ってきたり。
その間にジャンプ航行の限界で、森の中の木々がまばらなスペースを探し、着地。
デュミナスの向こうでは、エルバッハのウィザード(R7エクスシア)(ka2434unit003)もジャンプし直すために着地していた。
そして二機とも出力全開でもう一度ジャンプ。森の奥を目指す。
そのエルバッハから小太に通信が入った。
「リュラさんと悠月さんが中央から右にかけて展開したようです」
「僕たちはこのまま左ですかね~」
小太の言葉にエルバッハ、無言。
(敵の能力が分かっていないのは不安要素ですね……カウンター系のスキルを持っていたらまずい、ですね)
思案してから顔を上げた。
「いえ、防衛線を突破されない限りはしばらく様子見をした方がいいかもしれませんね」
エルバッハが言い切ったところで新たな通信が。
「……ちょいと敵の動きが気になる。このまま先に確認させてもらうぜ?」
Jからだ。ワイバーン(ka6653unit004)に乗り、二機よりさらに上空で双眼鏡を構えていた。
「ど、どういうことですぅ?」
「木々を倒してるみてぇだな。しかもバラバラだ。……心配すんな。敵の場所は逐次連絡入れっからな!」
J、お先とばかりに前方へ。
やがて、敵の大型歪虚がジャンプするなど作業している場所に近付いた。
「それじゃ行くぜ、相棒」
高度を下げて一気にフライ・パスするJ。
敵の人型歪虚「クリスタル」の煌びやかな姿が確認できた場所は、いずれも木々がまばらとなっていた。通り過ぎる眼下では、一体目のいる空間では手にしたアサルトライフルのような銃で水平射撃。とにかく木々を撃ち薙ぎ払っていた。荒い攻撃なので倒れる木は少ないが。二体目、三体目の空間でも同じ作業をしていた。
「おわっ!」
途中、クリスタルがジャンプし斜め下に射撃する場面にも出くわした。角度を付けることで主に枝がそがれているようで。
そんなことより、これでモロにバレた。
敵射線が集中する。
「Jより各員。地点が割れたぜ……ま、攻撃受けてるから見てくれりゃわかる。おっと!」
仲間に無線連絡をしつつ、バレルロールでひねりながら上空避難。
そして、上昇しきったところで色気を出した!
「地上にいるうちに一発かましとくか?」
反転してぎゅん、と急降下。敵射線も再び集まるがサイドワインダーの急加速で構わず奇襲。
そして……。
「こいつで一撃離脱、ってな」
チャージしたマテリアルを無数の光線として放出。飛び去りながら眼下に広範囲の対地攻撃を仕掛けた。
レイン・オブ・ライトだ。
その様まさに光線の雨。
「どうだ!?」
振り返るJ。
が、射線、激しく来る!
「おいおい! どういうこった……あ!」
バレルロールさせつつ自身は反撃したとき、気付く。
敵がジャンプして攻撃しなかったのは、木々に隠れ身を護って飛び去り際を狙う作戦だったのだ。しかも、Jの攻撃は木々の枝を薙ぎ払うという敵の作業を手伝った側面もある。
「ぐっ……あと、頼むぜ」
動揺したすきにしこたま攻撃を食らったグリフォン。Jは無理させずいったん離脱するのだった。
●
時は若干遡り、森の外の防衛線。
「さて、お出掛けね」
「あれ、キーリさん。ゴーレム磨きはいいの?」
キーリ、森の向こうで上空に向かう敵の射線を確認すると出掛ける準備をした。フラが声をかけてくる。
「気になるならフラっちに任せるわよ。……ラムルタフルは指示に従って砲撃。ちょっと森の散歩に行ってくるわ」
「散歩っていう割に飛んでるような」
フラを残してキーリがマジックフライトで森に入る。手にした魔導スマホで砲撃指示したようで、ラムルタフルが大砲特化カスタムした42ポンドゴーレム砲が火を噴いた!
どうん、と重厚な砲撃音が響く。同時にラムルタフルの横に待機していたヤクト・バウから連絡が。
「だれでもよい、後で着弾確認頼むぞ!」
ミグである。
刹那、ヤクト・バウ脚部の大型アンカーががっちりと大地をホールドして機体を固定。重装化砲撃仕様の機体が腰を落とし両肩部の長砲身且つ大口径の滑腔砲「ツインタワー」改め「プラネットキャノン」二門の射角を取る。
ただ、まだ撃たない。
一体何が狙いだ?!
その少し前、森の中。
「何してるのか、よくわからないけど…倒すだけ…」
バイクに乗っていたリュラ、停車し背後を付いて来ていたモフロウに木々の上に行くよう指示する。
そして視界を共有。
森の中にいるよりJを狙った射撃の位置がよく分かる。
「セントへレンズ……撃ち方、始め」
この連絡を受け、ラムルタフルやヤクト・バウと並んでいたセントへレンズが動き出す。
黒く硬い岩山といった外観のセントへレンズ、背部砲弾用ラックから砲弾装填。68ポンド試作ゴーレム砲が射角を取ると……。
――ドウッ、ドウッ!
砲撃の衝撃で揺らぐ機体の関節部分などからはマグマのように赤い光が点滅。方向からは白い煙が上がりその様まさにセントへレンズ大噴火。
かくてひゅるる……と後衛三体の砲撃計六発が大空に雄々しく放物線を描き、着弾した。
バキッバキッ、と木々を砕き衝撃を散らすセントへレンズとラムルタフルの炸裂弾。散弾もまき散らしとにかく面で被害を与える。
飛び去ったJのグリフォンに打撃を与えていた敵クリスタルたちは背後からの砲撃に驚く。ただし、今回の砲撃での被害は微々たるもの。
とはいえ、敵としても新手の確認は必要。
スラスタージャンプで本格的に森から姿を現した。
ここでミグが叫んだ!
「見えたぞ!」
何とミグ、キーリやリュラと違い範囲攻撃での的ダメージを狙っていたのではなかった。
「こっち見るとは間抜けな輩よ! 動きが手に取るようにわかるわ!」
もらったとばかりに「ツインタワー」改め「プラネットキャノン」斉射!
――ゴゥン、ゴゥン!
一直線に伸びる射線。
空中に浮いた敵たちは先ほどとは違う直接の砲撃は予期してなかったようで、一発が白い敵一体にモロに入った!
「……?」
これを、森の中からエルバッハが全神経を集中して観察していた。
(鏡面反射のようなカウンターではなく……表面が剥離しましたね)
敵はたしかに、食らった場所からキラキラと砕けた体をこぼして大地に墜ちている。
ただし、そのまま戦線離脱などはしない。
いや、それどころか活動は全く鈍っていない。すぐさま体勢を立て直し森の中に隠れたのだ。
「エルバッハより各員。敵はどうやら打たれ強いようですね」
「りょ、了解ですよぉ。……攻撃を食らっても前に行くタイプでしょうかぁ? それならフラさんの方には行かせられませんねぇ」
小太、敵の脅威にすぐ気付いた。
敵は味方の砲撃を確認したので、そちらに行く公算が高いのだ。しかも体力があるのでゴリ押しで進まれる危険がある。
「左翼部隊、敵と交戦に入ります」
エルバッハ、それだけ通信して加速。先の攻撃を食らった敵の着地地点辺りにスラスタージャンプをする。
――ゴンゴンゴン……。
「あっ!」
そこを、別の方角から狙われた。
「くっ!」
ウィザードの身をひねり、新たな射線の来た方にマテリアルキャノン「タスラム」の長大な銃身を回してエネルギーの弾丸を発射。ばきばきっ、と木々が倒れる。奥に赤い機体が見えたが……。
敵がどうなったかは不明。ウィザードもそのまま森の中に着地する。
「あ、エルバッハさん……代わりに僕がやりますよぉ」
エルバッハに続いてスラスタージャンプする小太のデュミナス。
先のダメージ機の着地した地点に肩に装備したプラズマキャノン「ヴァレリフラッペ」をぶち込む。
で、小太自身はまた森の中に着地。
そして間髪入れずまた飛び上がった。
敵がすぐに飛び上がらなかったのは、森の中が優位であるため。すぐに飛び上がると場所が特定されているため狙われやすいぞ!
――ダダダダ、バシバシッ!
案の定、かなり食らった!
いや。
小太、それでも機体の姿勢を保持しているぞッ!
敵、小太が姿勢を崩していると読みこのうちに場所を変えるべくジャンプした!
刹那、小太の闘志が燃え上がるッ。
「とにかく森から出さないようにすればよいのですよねぇ。飛んだ所を撃ち落とせればよいのですがぁ……そこですぅっ!」
再びプラズマキャノン。
敵は飛び上がりざまの一番軌道が読みやすいタイミングで、見事命中。今度はそのまま吹っ飛び森の中に消えた。倒したか、大被害を与えているはずだ。
小太とエルバッハ、このような地味な射撃戦を繰り返す。
敵の侵攻を防ぐためもあり、やや中央へと寄った。
●
この時、ミグ。
「成程。脚部を潰して動けぬようにして擱座させたのちにグラントスラムによる地獄を創出。大爆発炎上によるきのこ雲ですべてを吹き飛ばして森ごと焼き払うつもりじゃったが……」
敵が特殊でダメージを分散し、いきなり頓挫することなく戦うことができると知ると歯噛みした。
が、すぐに気持ちを切り替える。
同時に前線から連絡が。
「敵、隠れる場所減らして……」
リュラからの連絡である。
セントへレンズはこの指示に従い砲撃をしている。
すぐにピンとくるミグ。
「木々を木っ端みじんに吹き飛ばすか、いいじゃろう。火の七日間を見せてくれるわ!」
ガコン、とヤクト・バウが砲弾換装。
グランドスラム、いま、発射!
――どっ、ごー……ん。どぅわっ!
火の子舞う爆風で木々がなぎ倒された。
さらに次弾、徹甲榴弾を装填。
発射……たまらず飛び上がった緑の敵に命中。
「ははは、おびえろ、すくめ、CAMの力に気づかぬまま滅んでいくがいい」
今度は命中後はじけたため、先よりさらに表面を散らし敵は落ちて行く。
こちら、キーリ。
「威力を多少犠牲にして、射程の長い大砲担いで来たんだから、ラムルタフルもこういう時にこそ活躍しなさいよー」
ラムルタフルに森の奥の敵を狙うよう指示していた。
自身はとにかくマジックフライトで森を飛ぶ。地形は関係ないのでスムーズに奥まで進行している。
で、頭上にラムルタフルの砲撃が放物線を描いて着弾。
たまらず紫の敵が森からジャンプした。
「いい感じじゃないの……あらら?」
満足したキーリだが、慌てた。
奥の敵はともかく、すでに敵は手前にかなり進行していたのだ。
キーリの前方でオレンジの敵が森からジャンプした!
で、こちらを向く敵。
「……まさか、こっちに気付いてる?」
ダダダッ、と銃声が響いた時だった!
――ざざっ、ばしいぃっ!
飛びつつたたらを踏むキーリの目の前の木々から、黒い大きなものがジャンプ。
「キーリさん、無事?」
何と、悠月からの通信。黒い影はシグレだ。
敵はシグレを狙っていたが、果敢に飛びかかって爪を立てて身を預けると最後は後肢で蹴りをかまし遠くへと跳ね飛ばしていた。
「ユッキー、こんなところにいたの?」
「キーリさんこそ。ラムルタフルを磨いてたんじゃないの?」
「……フラっちといいユッキーといい、どうしてこう真面目なのばっかりなのかしら」
キーリ、こっそり愚痴をこぼしたり。
「あはは、冗談だよ。……キーリさん、敵はダメージを受けても体が削れるだけですぐに反撃してくるから注意して」
「だから蹴り飛ばしたわけね」
それじゃ、と先の敵を追って行く悠月を見送るキーリだった。
さて、敵を追った悠月。
「手前はキーリさんとリュラさんがいるから中央辺りに砲撃を。斉射した後は僕がもう一度確認するから打ち方止めて」
それだけ指示してから、走る。
すぐに味方射線が放物線を描き着弾した。
「……凄い砲撃。音も相当だし…シグレもイヤーマフがあれば良いのにね」
そういってシグレの背中に乗る悠月、体を伏せるように伸ばして耳を塞いでやる。
砲撃が止むと空を見上げる。
だんだん敵も分かって来たようで、簡単には空にジャンプして逃げなくなっていた。
「最初のころは飛び上がってからシグレを狙って来てたのにね」
かなりダメージを負ったシグレの身体を撫でてやる。空から狙われた分、味方が攻撃しやすくなっていた部分がある。いまはもう、飛び上がったら狙われると分かっているので先のように敵が確実にこちらを捉えているなどしていないとジャンプしなくなっていた。
(このまま森の中を進まれたら……)
打開策は、誰かが飛んで囮になることだが、もうJには無理をさせられない。
(「天翔けるもの」で飛んでもいいけど、シグレにも無理はさせられない)
悠月、シグレをまた撫でた。主の気持ちを理解したようで、まだできるとばかりに闘志を見せよう奮い立つ。
その時だった。
「仕方ありません。フライトシステムで飛行します」
エルバッハからの通信だ。
魔術師のような外観をしたエクスシア、すでに森の上空にそそり立つように浮いていた。
すぐに黒地に金縁の背部装甲を展開。マントのように開いて森の上を低空飛行した!
●
「くっ……」
エルバッハ、飛び始めると同時に各所から射線が集中するのが分かった。
追ってくる敵にはファイヤーボール。地対空で隠れつつ射撃する敵には試作電磁加速砲「ドンナー」で攻撃。
そして……。
「ここですね」
先にヤクト・バウの砲撃中心に焼け野原にした広場上空で止まった。
周りから射線が来るがマテリアルカーテンをマントのようにふるい一呼吸おいてから着地した。
木々はない。
丸裸である。
ここに敵と……味方が殺到した!
「それ以上は先に進ませるわけにはぁ!」
後方の敵と交戦していた小太。
その黄色の敵は着地地点を探してこの広間に着地。先客であるエルバッハを攻撃しているため、小太にとっては大チャンス!
「接近して叩くしかないですかねぇ。あまり得意じゃないですが、何とかしないとですよぉ!」
ここでフライトシステム、全開。
敵は小太を引き離したと思っただろうが、一気に上空から銃剣で射撃しつつ着地し、近距離機銃剣「ヴェルバーストZ」を叩きつけるように斬りつけた。敵表面が激しく砕け散ったぞ!
さらに、リュラ。
乗っていたバイクを放り出して大地に立ち駆ける。近くを飛び従っていたモフロウ、主人の覚悟を感じて少し離れた。
そして呼吸を整えマテリアルを溜め込んだ。
次の瞬間、変化が!
「逃げても、無駄…」
――ゆら、り……。
何と、現界せしもので幻影を纏い巨大化。間髪入れず飢えた獣のように敵を求める。
はっ、と視線を走らせる先。
広場に向かう黄緑とオレンジの敵を発見。すぐに背後を取った!
そのまま間合いを詰めつつ広場になだれ込み……。
「逃がさない…薙ぎ払う…!」
カーネージロアで大回転!
当たり負けはしない。
全身のマテリアルを感じつつ、腰を落としてできるだけ広範囲に!
ステップインしながらの初撃を背後から食らった二体はあっさり吹っ飛び、身体のキラキラを散らすこととなる。
「シグレ、よく我慢したね」
ここで悠月も広場に突入。
砲撃はないのでもう耳を塞いでやる必要はない。
目の前の敵、赤い一体に集中するだけだ。
「さぁ、アクセルを踏み込むよ、一気に破壊するんだっ!」
うおんっ、と答えるシグレ。
刹那、風となる。
もともとエルバッハと交戦していた敵。横からの奇襲で一気に敵を転倒させることに成功した。
さらに、Jもここで復活!
「ここで突っ込まずにいつ突っ込むんだって話だ!」
幻獣砲で援護し上空に離脱。
その時、見た。
奴らのやって来た森の奥の方を。
「道、か?」
途切れ途切れで気付きにくかったが、森の木々が倒れていくつかの筋ができていた。
「……おいおい、どこから何を呼びだす予定だ、こりゃ?」
J、道の先を双眼鏡で確認するが特にこれといったものはなさそうだ。もちろん、完全には視認できない。
●
その直後だった。
――どうん、どうん……。
Jが見つけた道の方から長距離の砲撃が飛んで来た。
敵の援軍である。
これでひるんだところ、敵は一斉に引き上げた。射線が追撃を遮るようにしているので負うことはできなかった。
ただ、新たな敵は味方撤収の援護のためだったようで、進撃の意図はなし。
この方針は後日も続いたようで、ポカラ駐屯地方面への侵攻はなく敵は森の奥に引きこもったまま。
敵の前線を押し戻したことで、作戦は大成功を収めたことになる。
「あ!」
森から一時ポカラ駐屯地に戻って来たフラ・キャンディ(kz0121)が目を輝かせた。
乗っていた魔導アーマープラヴァー「ロリポップ」のコクピットから跳ねるようにして飛び出すと前進を使って駆け寄り……。
「来てくれたんだね、ありがとっ☆」
あっという間に距離を詰めてダイブ。
これを受け止めた弓月・小太(ka4679)だったが、勢いに押されてむぎゅ~っと抱き合ったままくるっと回ることに。
「フ、フラさん……大丈夫でしたかぁ?」
「うんっ。小太さんたちが来るって聞いて、待ち遠しかったんだよ」
恋人同士の、鼻と鼻が触れ合うような距離での会話。
この様子を見たリュラ=H=アズライト(ka0304)は、特に何を言うでもなく少し目を見開いていたが、すぐにくすり。甘えんぼさんの行動には何やら理解があるようで、微笑ましく見守っている。
「いきなり見せつけてくれるわね~、フラっち」
一方のキーリ(ka4642)はからかうような……。
あ。
何やら豊満な胸をほれほれ、と突き出すようにしてる。
「私は待ち遠しくなかったのねー、ふ~ん」
「も、もちろん待ち遠しかったよぅ」
フラ、キーリにも同じように抱き着いてくるん。キーリはそれでいいのよ、それで、と一定の満足を得たようで。
で、フラ。
回り終えたところで霧雨 悠月(ka4130)に気付く。
「え? 僕?」
悠月、たじっ、と一歩引いたがもう遅い。フラに抱き着かれて、くるん。
「あはは……」
小太に悪いなと思ったり、相変わらずキーリさんのいたずら心からの展開かー、とか思ったり。
「……それで、敵の状況はどうですか?」
ここでエルバッハ・リオン(ka2434)が近付いて来た。
「うん。ジリジリ接近しているみたいなんだ。森から出てこないの、もしかしたら何かたくらんでいるのかも」
フラ、エルバッハに背を預けるように前抱っこの形に収まる。
「そうですか……先にこちらから打って出る方が良いかもしれませんね」
エルバッハ、そんなフラの頭をなでなで。
で、フラ。さらに知人の姿を見つけ視線を向けた。
これに気付いたのは、トリプルJ(ka6653)だ。
「俺はいいから小太にくっついとけって」
ギクッとして小太を指差す。
フラ、小太を見る。ええと、と小太。しまったというそぶりを見せたフラ、そそくさとそちらへ。でもって、小太に背中を預けるように前抱っこの形に収まる。
「やれやれ、モテる男は苦労が多いぜ……」
「っていうか、フラっちに抱き着かれてたらそのまま幼女誘拐犯みたいな構図だったわね~」
ふいー、と額の汗をぬぐうJにキーリがジト目で突っ込み。
「な、何だよオイ。懐かれただけで誘拐犯かよ?!」
「フラっちが一言、助けて―と叫んだらアウトよね?」
異議を唱えるJに鋭く言い放つキーリ。
「……まあ、もしもフラさんがそう叫べば、だけどね」
悠月、この展開に汗たら~するしかなく。
「ま、誤解されぬ相手にだけ甘えておけば問題ないのぅ」
ここでミグ・ロマイヤー(ka0665)がもったいぶったように義手の指を一つ立てて講釈したり。
「そのほうがお主も良いじゃろ?」
くるっ、と小太に向き直りズバリ聞く。
「え、ええと……」
小太、真っ赤になりながらフラをぎゅっと抱きしめるのだったり。
「それは良いとして、ここら辺はもう平和になったと思っておったが……」
今度はミグ、駐屯地を見回した。彼女が巨大歪虚「パルサラス」と戦ったときは町があったが、地面が掘り返されあの時より酷い状態になっている。
でもって、森の方を見遣る。
「……まだまだミグの出番はありそうじゃな」
舌なめずりをする。
にぃ、と瞳が好戦的に細められた。
一気に気分が乗って来た。
「最近は「エターナル・グランドスラム」「尽きせぬ砲弾」「弾薬工場」などなどいろいろな異名で呼ばれるようになったが、そも、その噂の源となっているミグ製グランドスラム自動生成装置は本体となるダインスレイブ「ヤクトバウ」……」
「どう……するの?」
「防衛線はいまどうなってますか?」
ミグの陶酔しながらの一人語りを尻目に、リュラが改めて今後を問い、エルバッハが現状を確認した。
「……ともに本日も小山のような威容を誇って……」
「フラさんが戻って来たので義勇隊のキアン以下、二台のビルドムーバーが監視についています」
義勇隊隊長のモータルの返事。
「……そのままならただのガラクタだが、ミグ回路を並列4基運用することで、大量の徹甲砲弾の弾薬増産が可能と……」
「私は森の外で待機しながらラムルタフルでも磨いてようかしら。……それにしても、なーんか最近、遭遇する敵も大型化してるっぽいわねー」
「僕はシグレと一緒に行動するね。……うーん、森の中で食い止める感じか。うん、人里まで行かせるわけにいかない!」
キーリと悠月はそんな感じで打ち合わせ。
「……これが量産された暁には邪神など物の数ではないわ!」
「普段と機体は違いますが、射撃戦なら何とかなるはずですぅ」
「ま、上空からの敵発見はこの俺に任せときな」
小太とJの方針も決まった!
「……とはいえ、スキルであるから量産はできぬがのぅ!」
延々と独白を続けていたミグもようやく終演。わーっはっはっは、と豪快に笑い飛ばして準備万端。
「じゃ、ボクはモータルさんたちと森の外で防衛線張るね。行こう、出撃だよっ!」
フラの掛け声で各員搭乗。
作戦開始である。
……だれもミグに突っ込みを入れなかったのは、まあそれはそれ。
●
「じゃ、ボクはこのへんで」
フラとモータルたちの最終防衛ラインが森から離れた場所に止まった。
「砲撃ならこのあたりかしらね~」
「グレネードを使うならこの辺じゃのぅ」
キーリのラムルタフル(刻令ゴーレム「Volcanius」)(ka4642unit002)とミグのヤクト・バウ・PC(ダインスレイブ)(ka0665unit008)がさらに森に近い位置に停止。
ここで砲撃戦を展開するつもりだ。
おっと。
ここで魔導バイク「マルモリー」を駆るリュラがセントヘレンズ(刻令ゴーレム「Volcanius」)(ka0304unit003)を残し森へ向かった。モフロウもついて行く。
「リュラさん?!」
フラ、ロリポップから呼び掛ける。
「前に出て、敵探す…。そっち見つけたら、座標おねがい…」
魔導スマートフォンを背中越しにかざすリュラ。もう、甘えた場面を温かく見守っていた表情はない。
その横に、後ろから追い付いたイジェドがぴたり。
悠月を乗せたシグレ(ka4130unit001)である。
「じゃ、僕は右手の方を探ろうかな?」
「了解……」
悠月、右に逸れて加速。リュラはひとつ頷いて直進。そのまま森に入った。
その、上空では。
「フラさん、行ってきますねぇ。頑張ってくるのですぅー」
小太がスラスターでジャンプ航行をする魔導型デュミナス(ka4679unit002)コクピット内から地上の恋人を探して通信。フラ、気付いたようでオープンコクピットから上を見て手を振っている。「うんっ、気を付けてね、頑張ってね、やっつけちゃってね☆」と、三連続語尾上げのおあつい通信が返ってきたり。
その間にジャンプ航行の限界で、森の中の木々がまばらなスペースを探し、着地。
デュミナスの向こうでは、エルバッハのウィザード(R7エクスシア)(ka2434unit003)もジャンプし直すために着地していた。
そして二機とも出力全開でもう一度ジャンプ。森の奥を目指す。
そのエルバッハから小太に通信が入った。
「リュラさんと悠月さんが中央から右にかけて展開したようです」
「僕たちはこのまま左ですかね~」
小太の言葉にエルバッハ、無言。
(敵の能力が分かっていないのは不安要素ですね……カウンター系のスキルを持っていたらまずい、ですね)
思案してから顔を上げた。
「いえ、防衛線を突破されない限りはしばらく様子見をした方がいいかもしれませんね」
エルバッハが言い切ったところで新たな通信が。
「……ちょいと敵の動きが気になる。このまま先に確認させてもらうぜ?」
Jからだ。ワイバーン(ka6653unit004)に乗り、二機よりさらに上空で双眼鏡を構えていた。
「ど、どういうことですぅ?」
「木々を倒してるみてぇだな。しかもバラバラだ。……心配すんな。敵の場所は逐次連絡入れっからな!」
J、お先とばかりに前方へ。
やがて、敵の大型歪虚がジャンプするなど作業している場所に近付いた。
「それじゃ行くぜ、相棒」
高度を下げて一気にフライ・パスするJ。
敵の人型歪虚「クリスタル」の煌びやかな姿が確認できた場所は、いずれも木々がまばらとなっていた。通り過ぎる眼下では、一体目のいる空間では手にしたアサルトライフルのような銃で水平射撃。とにかく木々を撃ち薙ぎ払っていた。荒い攻撃なので倒れる木は少ないが。二体目、三体目の空間でも同じ作業をしていた。
「おわっ!」
途中、クリスタルがジャンプし斜め下に射撃する場面にも出くわした。角度を付けることで主に枝がそがれているようで。
そんなことより、これでモロにバレた。
敵射線が集中する。
「Jより各員。地点が割れたぜ……ま、攻撃受けてるから見てくれりゃわかる。おっと!」
仲間に無線連絡をしつつ、バレルロールでひねりながら上空避難。
そして、上昇しきったところで色気を出した!
「地上にいるうちに一発かましとくか?」
反転してぎゅん、と急降下。敵射線も再び集まるがサイドワインダーの急加速で構わず奇襲。
そして……。
「こいつで一撃離脱、ってな」
チャージしたマテリアルを無数の光線として放出。飛び去りながら眼下に広範囲の対地攻撃を仕掛けた。
レイン・オブ・ライトだ。
その様まさに光線の雨。
「どうだ!?」
振り返るJ。
が、射線、激しく来る!
「おいおい! どういうこった……あ!」
バレルロールさせつつ自身は反撃したとき、気付く。
敵がジャンプして攻撃しなかったのは、木々に隠れ身を護って飛び去り際を狙う作戦だったのだ。しかも、Jの攻撃は木々の枝を薙ぎ払うという敵の作業を手伝った側面もある。
「ぐっ……あと、頼むぜ」
動揺したすきにしこたま攻撃を食らったグリフォン。Jは無理させずいったん離脱するのだった。
●
時は若干遡り、森の外の防衛線。
「さて、お出掛けね」
「あれ、キーリさん。ゴーレム磨きはいいの?」
キーリ、森の向こうで上空に向かう敵の射線を確認すると出掛ける準備をした。フラが声をかけてくる。
「気になるならフラっちに任せるわよ。……ラムルタフルは指示に従って砲撃。ちょっと森の散歩に行ってくるわ」
「散歩っていう割に飛んでるような」
フラを残してキーリがマジックフライトで森に入る。手にした魔導スマホで砲撃指示したようで、ラムルタフルが大砲特化カスタムした42ポンドゴーレム砲が火を噴いた!
どうん、と重厚な砲撃音が響く。同時にラムルタフルの横に待機していたヤクト・バウから連絡が。
「だれでもよい、後で着弾確認頼むぞ!」
ミグである。
刹那、ヤクト・バウ脚部の大型アンカーががっちりと大地をホールドして機体を固定。重装化砲撃仕様の機体が腰を落とし両肩部の長砲身且つ大口径の滑腔砲「ツインタワー」改め「プラネットキャノン」二門の射角を取る。
ただ、まだ撃たない。
一体何が狙いだ?!
その少し前、森の中。
「何してるのか、よくわからないけど…倒すだけ…」
バイクに乗っていたリュラ、停車し背後を付いて来ていたモフロウに木々の上に行くよう指示する。
そして視界を共有。
森の中にいるよりJを狙った射撃の位置がよく分かる。
「セントへレンズ……撃ち方、始め」
この連絡を受け、ラムルタフルやヤクト・バウと並んでいたセントへレンズが動き出す。
黒く硬い岩山といった外観のセントへレンズ、背部砲弾用ラックから砲弾装填。68ポンド試作ゴーレム砲が射角を取ると……。
――ドウッ、ドウッ!
砲撃の衝撃で揺らぐ機体の関節部分などからはマグマのように赤い光が点滅。方向からは白い煙が上がりその様まさにセントへレンズ大噴火。
かくてひゅるる……と後衛三体の砲撃計六発が大空に雄々しく放物線を描き、着弾した。
バキッバキッ、と木々を砕き衝撃を散らすセントへレンズとラムルタフルの炸裂弾。散弾もまき散らしとにかく面で被害を与える。
飛び去ったJのグリフォンに打撃を与えていた敵クリスタルたちは背後からの砲撃に驚く。ただし、今回の砲撃での被害は微々たるもの。
とはいえ、敵としても新手の確認は必要。
スラスタージャンプで本格的に森から姿を現した。
ここでミグが叫んだ!
「見えたぞ!」
何とミグ、キーリやリュラと違い範囲攻撃での的ダメージを狙っていたのではなかった。
「こっち見るとは間抜けな輩よ! 動きが手に取るようにわかるわ!」
もらったとばかりに「ツインタワー」改め「プラネットキャノン」斉射!
――ゴゥン、ゴゥン!
一直線に伸びる射線。
空中に浮いた敵たちは先ほどとは違う直接の砲撃は予期してなかったようで、一発が白い敵一体にモロに入った!
「……?」
これを、森の中からエルバッハが全神経を集中して観察していた。
(鏡面反射のようなカウンターではなく……表面が剥離しましたね)
敵はたしかに、食らった場所からキラキラと砕けた体をこぼして大地に墜ちている。
ただし、そのまま戦線離脱などはしない。
いや、それどころか活動は全く鈍っていない。すぐさま体勢を立て直し森の中に隠れたのだ。
「エルバッハより各員。敵はどうやら打たれ強いようですね」
「りょ、了解ですよぉ。……攻撃を食らっても前に行くタイプでしょうかぁ? それならフラさんの方には行かせられませんねぇ」
小太、敵の脅威にすぐ気付いた。
敵は味方の砲撃を確認したので、そちらに行く公算が高いのだ。しかも体力があるのでゴリ押しで進まれる危険がある。
「左翼部隊、敵と交戦に入ります」
エルバッハ、それだけ通信して加速。先の攻撃を食らった敵の着地地点辺りにスラスタージャンプをする。
――ゴンゴンゴン……。
「あっ!」
そこを、別の方角から狙われた。
「くっ!」
ウィザードの身をひねり、新たな射線の来た方にマテリアルキャノン「タスラム」の長大な銃身を回してエネルギーの弾丸を発射。ばきばきっ、と木々が倒れる。奥に赤い機体が見えたが……。
敵がどうなったかは不明。ウィザードもそのまま森の中に着地する。
「あ、エルバッハさん……代わりに僕がやりますよぉ」
エルバッハに続いてスラスタージャンプする小太のデュミナス。
先のダメージ機の着地した地点に肩に装備したプラズマキャノン「ヴァレリフラッペ」をぶち込む。
で、小太自身はまた森の中に着地。
そして間髪入れずまた飛び上がった。
敵がすぐに飛び上がらなかったのは、森の中が優位であるため。すぐに飛び上がると場所が特定されているため狙われやすいぞ!
――ダダダダ、バシバシッ!
案の定、かなり食らった!
いや。
小太、それでも機体の姿勢を保持しているぞッ!
敵、小太が姿勢を崩していると読みこのうちに場所を変えるべくジャンプした!
刹那、小太の闘志が燃え上がるッ。
「とにかく森から出さないようにすればよいのですよねぇ。飛んだ所を撃ち落とせればよいのですがぁ……そこですぅっ!」
再びプラズマキャノン。
敵は飛び上がりざまの一番軌道が読みやすいタイミングで、見事命中。今度はそのまま吹っ飛び森の中に消えた。倒したか、大被害を与えているはずだ。
小太とエルバッハ、このような地味な射撃戦を繰り返す。
敵の侵攻を防ぐためもあり、やや中央へと寄った。
●
この時、ミグ。
「成程。脚部を潰して動けぬようにして擱座させたのちにグラントスラムによる地獄を創出。大爆発炎上によるきのこ雲ですべてを吹き飛ばして森ごと焼き払うつもりじゃったが……」
敵が特殊でダメージを分散し、いきなり頓挫することなく戦うことができると知ると歯噛みした。
が、すぐに気持ちを切り替える。
同時に前線から連絡が。
「敵、隠れる場所減らして……」
リュラからの連絡である。
セントへレンズはこの指示に従い砲撃をしている。
すぐにピンとくるミグ。
「木々を木っ端みじんに吹き飛ばすか、いいじゃろう。火の七日間を見せてくれるわ!」
ガコン、とヤクト・バウが砲弾換装。
グランドスラム、いま、発射!
――どっ、ごー……ん。どぅわっ!
火の子舞う爆風で木々がなぎ倒された。
さらに次弾、徹甲榴弾を装填。
発射……たまらず飛び上がった緑の敵に命中。
「ははは、おびえろ、すくめ、CAMの力に気づかぬまま滅んでいくがいい」
今度は命中後はじけたため、先よりさらに表面を散らし敵は落ちて行く。
こちら、キーリ。
「威力を多少犠牲にして、射程の長い大砲担いで来たんだから、ラムルタフルもこういう時にこそ活躍しなさいよー」
ラムルタフルに森の奥の敵を狙うよう指示していた。
自身はとにかくマジックフライトで森を飛ぶ。地形は関係ないのでスムーズに奥まで進行している。
で、頭上にラムルタフルの砲撃が放物線を描いて着弾。
たまらず紫の敵が森からジャンプした。
「いい感じじゃないの……あらら?」
満足したキーリだが、慌てた。
奥の敵はともかく、すでに敵は手前にかなり進行していたのだ。
キーリの前方でオレンジの敵が森からジャンプした!
で、こちらを向く敵。
「……まさか、こっちに気付いてる?」
ダダダッ、と銃声が響いた時だった!
――ざざっ、ばしいぃっ!
飛びつつたたらを踏むキーリの目の前の木々から、黒い大きなものがジャンプ。
「キーリさん、無事?」
何と、悠月からの通信。黒い影はシグレだ。
敵はシグレを狙っていたが、果敢に飛びかかって爪を立てて身を預けると最後は後肢で蹴りをかまし遠くへと跳ね飛ばしていた。
「ユッキー、こんなところにいたの?」
「キーリさんこそ。ラムルタフルを磨いてたんじゃないの?」
「……フラっちといいユッキーといい、どうしてこう真面目なのばっかりなのかしら」
キーリ、こっそり愚痴をこぼしたり。
「あはは、冗談だよ。……キーリさん、敵はダメージを受けても体が削れるだけですぐに反撃してくるから注意して」
「だから蹴り飛ばしたわけね」
それじゃ、と先の敵を追って行く悠月を見送るキーリだった。
さて、敵を追った悠月。
「手前はキーリさんとリュラさんがいるから中央辺りに砲撃を。斉射した後は僕がもう一度確認するから打ち方止めて」
それだけ指示してから、走る。
すぐに味方射線が放物線を描き着弾した。
「……凄い砲撃。音も相当だし…シグレもイヤーマフがあれば良いのにね」
そういってシグレの背中に乗る悠月、体を伏せるように伸ばして耳を塞いでやる。
砲撃が止むと空を見上げる。
だんだん敵も分かって来たようで、簡単には空にジャンプして逃げなくなっていた。
「最初のころは飛び上がってからシグレを狙って来てたのにね」
かなりダメージを負ったシグレの身体を撫でてやる。空から狙われた分、味方が攻撃しやすくなっていた部分がある。いまはもう、飛び上がったら狙われると分かっているので先のように敵が確実にこちらを捉えているなどしていないとジャンプしなくなっていた。
(このまま森の中を進まれたら……)
打開策は、誰かが飛んで囮になることだが、もうJには無理をさせられない。
(「天翔けるもの」で飛んでもいいけど、シグレにも無理はさせられない)
悠月、シグレをまた撫でた。主の気持ちを理解したようで、まだできるとばかりに闘志を見せよう奮い立つ。
その時だった。
「仕方ありません。フライトシステムで飛行します」
エルバッハからの通信だ。
魔術師のような外観をしたエクスシア、すでに森の上空にそそり立つように浮いていた。
すぐに黒地に金縁の背部装甲を展開。マントのように開いて森の上を低空飛行した!
●
「くっ……」
エルバッハ、飛び始めると同時に各所から射線が集中するのが分かった。
追ってくる敵にはファイヤーボール。地対空で隠れつつ射撃する敵には試作電磁加速砲「ドンナー」で攻撃。
そして……。
「ここですね」
先にヤクト・バウの砲撃中心に焼け野原にした広場上空で止まった。
周りから射線が来るがマテリアルカーテンをマントのようにふるい一呼吸おいてから着地した。
木々はない。
丸裸である。
ここに敵と……味方が殺到した!
「それ以上は先に進ませるわけにはぁ!」
後方の敵と交戦していた小太。
その黄色の敵は着地地点を探してこの広間に着地。先客であるエルバッハを攻撃しているため、小太にとっては大チャンス!
「接近して叩くしかないですかねぇ。あまり得意じゃないですが、何とかしないとですよぉ!」
ここでフライトシステム、全開。
敵は小太を引き離したと思っただろうが、一気に上空から銃剣で射撃しつつ着地し、近距離機銃剣「ヴェルバーストZ」を叩きつけるように斬りつけた。敵表面が激しく砕け散ったぞ!
さらに、リュラ。
乗っていたバイクを放り出して大地に立ち駆ける。近くを飛び従っていたモフロウ、主人の覚悟を感じて少し離れた。
そして呼吸を整えマテリアルを溜め込んだ。
次の瞬間、変化が!
「逃げても、無駄…」
――ゆら、り……。
何と、現界せしもので幻影を纏い巨大化。間髪入れず飢えた獣のように敵を求める。
はっ、と視線を走らせる先。
広場に向かう黄緑とオレンジの敵を発見。すぐに背後を取った!
そのまま間合いを詰めつつ広場になだれ込み……。
「逃がさない…薙ぎ払う…!」
カーネージロアで大回転!
当たり負けはしない。
全身のマテリアルを感じつつ、腰を落としてできるだけ広範囲に!
ステップインしながらの初撃を背後から食らった二体はあっさり吹っ飛び、身体のキラキラを散らすこととなる。
「シグレ、よく我慢したね」
ここで悠月も広場に突入。
砲撃はないのでもう耳を塞いでやる必要はない。
目の前の敵、赤い一体に集中するだけだ。
「さぁ、アクセルを踏み込むよ、一気に破壊するんだっ!」
うおんっ、と答えるシグレ。
刹那、風となる。
もともとエルバッハと交戦していた敵。横からの奇襲で一気に敵を転倒させることに成功した。
さらに、Jもここで復活!
「ここで突っ込まずにいつ突っ込むんだって話だ!」
幻獣砲で援護し上空に離脱。
その時、見た。
奴らのやって来た森の奥の方を。
「道、か?」
途切れ途切れで気付きにくかったが、森の木々が倒れていくつかの筋ができていた。
「……おいおい、どこから何を呼びだす予定だ、こりゃ?」
J、道の先を双眼鏡で確認するが特にこれといったものはなさそうだ。もちろん、完全には視認できない。
●
その直後だった。
――どうん、どうん……。
Jが見つけた道の方から長距離の砲撃が飛んで来た。
敵の援軍である。
これでひるんだところ、敵は一斉に引き上げた。射線が追撃を遮るようにしているので負うことはできなかった。
ただ、新たな敵は味方撤収の援護のためだったようで、進撃の意図はなし。
この方針は後日も続いたようで、ポカラ駐屯地方面への侵攻はなく敵は森の奥に引きこもったまま。
敵の前線を押し戻したことで、作戦は大成功を収めたことになる。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 リュラ=H=アズライト(ka0304) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/04/30 20:57:16 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/28 20:59:55 |