ゲスト
(ka0000)
雪玉が転げ落ちる様に
マスター:トーゴーヘーゾー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/24 07:30
- 完成日
- 2015/02/03 07:42
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
帝国北部。
有名な特産品があるでもなく、特筆すべき個性のない山村があった。
しかし、冬ともなれば豊かな降雪量と、様々な傾斜を持つ斜面のおかげで、多くの客を引きつけるスキー場へと変貌する。
「宿も満杯だし、食材も準備している。今年の冬もいい稼ぎになりそうだ」
「雪様々だ。まあ、生活するには不便だけどな」
一本しかない幹線道路はなんとか除雪しており、山里の村とだけは行き来が可能だ。スキー客を招くためにも、その道は生命線なのだ。
「問題は、あれだな」
「ああ……。今年は出ないでくれるとありがたいんだが……」
村人達の懸念は、嫌な方向で的中する。
扉に体当たりするように、慌てた様子の青年が部屋に駆け込んでくる。
「なんだ!? どうした?」
「……で、……出たぞ! 雪玉が出やがった!」
「本当か? 何かの見間違いとか……?」
「いや。間違いないらしい。監視に行った人間が確かに見たって連絡してきた」
「くっそぉ……」
彼等が気にしている雪玉というのは、山頂付近に出現する雪玉の雑魔であった。
数年ごとに出現するこの雑魔は、転げ始めると雪崩を誘発させて、ゲレンデを荒らし、幹線道路までも埋め尽くしてしまう。
巻き込まれさえしなければ、直接の被害は少ないのだが、本来ならば得られたはずの収入が失われ、村が孤立することで非常に不便な生活を強いられてしまう。
「村長がハンターも雇ってくれるだろう。スキーの上手いハンターが来てくれればいいんだがな」
有名な特産品があるでもなく、特筆すべき個性のない山村があった。
しかし、冬ともなれば豊かな降雪量と、様々な傾斜を持つ斜面のおかげで、多くの客を引きつけるスキー場へと変貌する。
「宿も満杯だし、食材も準備している。今年の冬もいい稼ぎになりそうだ」
「雪様々だ。まあ、生活するには不便だけどな」
一本しかない幹線道路はなんとか除雪しており、山里の村とだけは行き来が可能だ。スキー客を招くためにも、その道は生命線なのだ。
「問題は、あれだな」
「ああ……。今年は出ないでくれるとありがたいんだが……」
村人達の懸念は、嫌な方向で的中する。
扉に体当たりするように、慌てた様子の青年が部屋に駆け込んでくる。
「なんだ!? どうした?」
「……で、……出たぞ! 雪玉が出やがった!」
「本当か? 何かの見間違いとか……?」
「いや。間違いないらしい。監視に行った人間が確かに見たって連絡してきた」
「くっそぉ……」
彼等が気にしている雪玉というのは、山頂付近に出現する雪玉の雑魔であった。
数年ごとに出現するこの雑魔は、転げ始めると雪崩を誘発させて、ゲレンデを荒らし、幹線道路までも埋め尽くしてしまう。
巻き込まれさえしなければ、直接の被害は少ないのだが、本来ならば得られたはずの収入が失われ、村が孤立することで非常に不便な生活を強いられてしまう。
「村長がハンターも雇ってくれるだろう。スキーの上手いハンターが来てくれればいいんだがな」
リプレイ本文
●白い山村
ハンター達は、村長の口からあらためて詳細な説明を耳にする。
「雪玉の雑魔かぁ、……変わった奴がいたもんだ。しかも、数年毎に現れるとかマメというか」
「実に興味深い……、とばかりも言ってられんな」
知的好奇心を抱くクロード・インベルク(ka1506)とエアルドフリス(ka1856)だったが、双方とも優先すべき事は十分にわきまえている。
「村人にとっては迷惑な話だし、きっちり退治しちゃわないと」
「うむ。被害が大きくならん内に排除と行こうかね」
「ざくろ達に任せてよ、スキーだって昔学校の合宿でやった事有るし!」
元気いっぱいで請け負う時音 ざくろ(ka1250)。困っている人を放っておけず、村人を励ましたいと望めばこそだ。
「お任せです! 草スキーとボードはやってました! 雪は初めてですが、似たようなもんです!」
『……え!?』
ドンと胸を叩くメリエ・フリョーシカ(ka1991)に、皆の視線が集中する。
「……さすがにそれは言い過ぎじゃないかなぁ。初めてだったら特に」
指摘するのはカーミン・S・フィールズ(ka1559)だけではなく、また、メリエだけに向けられた言葉とも言えない。
「スキーの経験はあるが、戦いながら滑るのは流石に初めてだぜ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)の懸念に同意して、エアルドフリスが提案する。
「俺も些か不安に感じていたところだ。登山の前に、装備状態での滑走感覚に慣れておいた方がよさそうだな」
「そうですわね。素潜りをするにも準備体操は大事ですもの。しっかりストレッチはしておくべきですわ」
自分の得意分野を例にあげ、 刻崎 藤乃(ka3829)もこれに賛同した。
「その前に情報収集だ。特に雪玉の出る斜面の情報は聞いておきたいな。ゲレンデ情報っていうの?」
「そうだよねぇ。とりあえずスキー場の全体像とか教えて貰わないとぉ……。大体の滑走の目安になるしねぇ」
当人達の性格は大きく異なるが、クロードとはるな(ka3307)は戦場について問いかけた。
「地図があればありがたいんだけど?」
「スキー客向けの簡単なものしかありませんな」
求めに応じて広げられた地図を、クロードが詳しく追求していく。
「これは林? 他にも凹凸の激しい斜面とか……」
「待ってくださいよ。確かこのあたりに……」
そんなやりとりが、皆の頭にも記憶されていく。
「それと、村の方々にはゲレンデから避難していただきましょうか」
藤乃の要求に、村長は不安そうな表情を浮かべる。
「……倒せそうもないかのう?」
「雪崩は起こさせないし、あの雪玉を平地まで転がす気もサラサラ無い。けど万が一の為だ。少しの間だけ避難してくれ」
レイオスが念押しして、なんとか村長を納得させた。
●危険な雪山
「村長さん。スキーのレンタルもしているのでしょうか?」
「あるよ。スキーとスノーボード、どちらがいいね?」
「スキー板をお願いしますわ。平野部までに倒せなかった場合、スキー板の方が戦闘しやすいですもの」
藤乃の説を聞いて揺らぐカーミン。
「……それでも、私はスノーボードをお願い」
こだわった彼女を除き、他の皆はスキーを選択する。
「スキーなんて久しぶりだな」
「これが雪を踏んだ感触なんですね……」
クロードよりも、やはりメリエの方が感慨深いようだ。
草の上に限られていたが、それなりに慣れていたメリエは、すぐにコツをつかんだらしい。
エアルドフリスは杖を振り回して動きに支障がないか確かめ、藤乃は武器としているミラージュグレイブをストック代わりに滑走練習を行った。
「発動体に指輪を使わずに済みそうだ」
「こちらも、問題ありませんわ」
雪面から1mほど高い位置にロープが張られており、牛と滑車の力でずっと稼働している。掴まっているだけで、スキー客は坂の上まで運ばれるのだ。
「このあたりも戦場になりそうだから、斜面の勾配とか覚えておいた方がいいだろうね」
とクロードが景色を眺める。
「民家への被害はなるべく避けたい。2班が連携してうまく誘導すれば、被害を最小限に抑えられるはずだ」
レイオスが口にしたとおり、雑魔を2班で挟撃する作戦だ。
「連携の要はトランシーバーですね」
メリエが肩に取り付けた無線機の電源を入れると、似たような位置に縛りつけてあるクロードの無線機まで声が届く。
「うん。周波数も合ってるな」
「無線以外にも、手信号も決めておきませんか?」
「トランシーバーの破損も考えられるし、その方がよさそうだ」
同意したエアルドフリスが、メリエと共に簡単なジェスチャーを決めていく。
ロープリフトの終点からは、監視役の村人が踏み固めた雪道を進んだ。
新雪を進むより楽だったが、それでも慣れない雪道歩行では疲労も大きい。
「しかし、リフトがないとここまで大変だなんて……いや、これも冒険だもん!」
やる気を蘇られせたざくろが、きりっと前を向く。
「にしても寒いなぁ。山育ちだからって寒さに強いって訳じゃないんですよねぇ」
「……寒いのは素潜りで慣れていますが、辛いものがありますわね」
両極端な経歴を口にしたメリエと藤乃だが、同じ結論を口にする。
「村長が美味いものを用意してるそうだしな。とっとと終わらせようぜっ!」
レイオスが励ますように皆に告げた。
「幾ら通常の生命じゃあないとはいえ、随分とふざけた姿だ」
「面妖ってか……いや面妖な! 雪にヴォイドが憑くものなんですかねぇ!?」
雑魔を視認して、エアルドフリスやメリエがそう評した。
「ここからだと、敵に気づかれず反対側まで回り込むのは難しいな」
クロードの分析に、藤乃も頷く。
「回り込んでる最中に動き出されては本末転倒でしょう? 奇襲をかけてから挟撃に移るべきですわ」
斜面の下方向を前と見た場合、こちらが『右』、対面が『左』となる。
「先制攻撃できるよう、慎重に接近しよう」
「わかってるよ、エアルドフリス」
頷いたメリエが、鋭敏視覚やサバイバル技能で雪の斜面を調べながら、皆を先導する。
「あとは雪崩に注意しとかないとね~。雪玉が起こすモノだけじゃなくって、自然の雪崩にも注意ってカンジぃ?」
はるなが非常に不吉なことを口にした。
●雪面を下る
「パルムは、急激な地形の変化を捉えたら、声を出すなり髪をひっぱるなりして知らせてね!」
防寒具からひょっこり顔を出すパルムに、カーミンがそう言い含める。
「いつ転がり出してもイイよーに、スキーの準備は忘れずに~」
「覚醒もだな」
はるなやクロード同様、準備万端整えてから戦いの口火を切る。
「滑走前に出来る限り削っておかないとな」
「攻撃するね~」
エアルドフリスのファイアアローと、はるなの集中をかけたファイアアローが直撃する。
ぐらりと揺れた雪玉がスピードに乗るより早く、進路を横切る形で3人が『左側』へ向かう。
「崩れろーっ!」
魔法剣を握ったざくろが機導剣で横薙にし、クロードもメイスを叩きつけながら横断する。
スキー板越しに瞬脚を用いた藤乃は、移動を優先して、雪玉との優位な距離を確保した。自分の攻撃を届かせつつ、反撃をかわし易くするための距離だ。
表面を削られた雪玉は、がくんがくんと不格好に転がり、速度は十分に上がらない状態だ。
『右側』に向かって体当たりしようとする雪玉を、レイオス渾身の一撃が押し返す。
攻撃した2振りのユナイテッド・ドライブ・ソードは、そのままストック代わりに彼の身体を支えた。
「ストックは持ってないが、駆け下りるだけなら問題ない!」
断言するメリエの両手は、斧と盾でふさがっていた。レイオスに続いて追撃を行いそのまま併走する。
「ちっ! 思いの外はえぇですよ! プロスキーヤーも吃驚だ!」
「エアちゃんも頑張ってね~」
そう告げたはるなは、雪玉の後ろ側を回り込んで、エアルドフリスの対照位置に陣取った。
「雪玉に炎の魔法……どうなるか、超興味あるじゃん?」
「さて、炎で溶けるや否や。ちょっとした実験だな」
はるなとエアルドフリスが、左と右から追撃を行っていくが、やはり相性的は良くないらしい。
それでも誘導は成功しており、戦いやすいコースで雪玉を転がしていく。
藤乃の反対側からカーミンが肉迫する。
「やっぱり、相手は見た目通り水属性みたいね」
彼女が武器に選んだのは土属性の大身槍。
「せーの」
薙ぐ勢いを殺さずに、スノーボードごと身体を一回転させ、減速を極力押させる。本人が雪堀りだと感じたように、その攻撃はごっそりと雪を削っていた。
雪玉に大きな氷柱が生えて、その軌道が不規則になった。こちらの攻撃をよけるためかと思いきや、その氷柱はハンターめがけて撃ち出された。
エアルドフリスのウィンドガストに守られ、メリエを襲った氷柱が標的を外す。
パルムに髪を引っ張られたため、カーミンはこの時、敵ではなく進行方向を向いていた。
「やっほーい!」
岩に乗り上げるようにして跳んだ瞬間に、運良く、氷柱をかわす結果となった。
「あぶないっ! ……パリンと割れる機導力だっ」
クロードをざくろが咄嗟にかばう。光の防御壁が身代わりとなったものの、転倒したざくろが『戦場から』取り残されてしまった。
雪玉とそれを包囲するハンターは、その間も麓へと下っていく。
「氷柱を撃ち出しているせいで、雪玉が小さくなったかも~」
「……氷柱が生える前に、重心が狂って進行方向が変わるようだ」
遠距離担当だからこそ、はるなやエアルドフリスはそこに気づき、無線で皆にも伝えられる。
「木が代わりに氷柱を受けてくれました。敵にもこちらにも障害ですが、要は使いようって事ですね。オーバー」
とはメリエの声だ。
「ゲレンデに入ったようですわね。ロープリフトにぶつけないようにしませんと」
攻撃しようとした藤乃は、氷柱によるカウンターをマルチステップで回避する。
「任せろ! こっちに行かせる訳にはいかないからな。修正してやる!」
代わって、レイオスの渾身撃が雪玉をロープリフトから遠ざけた。
「っとと。華麗にジャンプ、って訳にはいかんなあ」
接近戦をしていないエアルドフリスなので、多少の失敗で転倒まではせずに済んでいる。
突然、雪玉に矢尻が生えた。
追いついてきたざくろが、持ち替えた弓を真後ろから撃ち込んだのだ。
「待ってて、今ざくろも追いつくから」
矢がブレーキとなって、速度を落とした雪玉の前に、レイオスが回り込む。
「ここまで小さくなったなら、体当たりで止めてやる」
だが、小さく軽くなった雪玉は、レイオスを踏みつける様にして、天へと駆け上った。
真下に生えた氷柱が、レイオスに向けて降り注ぐ。
硬質の音が鳴って氷柱が粉砕された。
それを成したのは、エアルドフリスのファイアアローと、炎の矢が使用限界に達したはるなのウィンドスラッシュ。これまでは成功しなかったが、タイミングと射線が特定できれば、氷柱の破壊も不可能ではないのだ。
幾周りもサイズが小さくなったことで、攻撃は当てづらくなっていた。
「……仕方ないわね」
槍を手放したカーミンは、解いたワイヤーウィップを変則的な軌道で操りながら、フェイントアタックを活用して雪玉を捕らえた。
鋼線で削られながら、進行方向を変えて逃れる雪玉。
「下へ着く前に突っ込みます! オーバー!」
回避に専念していたメリエが、一転して攻勢に出た。
「その雪玉バックリ割ってやらぁ!」
平地へ出る前に決着をつけるべく、渾身撃で斧を振り下ろす。
大きく変形した雪玉はますます減速し、追いついたざくろも含めて包囲されてしまう。
「……回転が遅いと、ここまで弱くなるのか」
クロードの感想通り、もはやハンターの敵たりえなかった。
●暖かなほうとう
「……雪崩が起きなくて良かったねぇ~」
満足げにつぶやくはるな。
「さあ、もう一回てっぺん近くまでいくわよー! 槍も回収しないといけないしっ!」
スキー欲に火がついたカーミンは滑る気満々である。槍を手放したのも、滑る口実にするためでは? と思えてくる。
「いやいやいやいや! 俺もゆっくり滑りたいと思うけど、……まずは、温まりたい!」
焦って止めるクロード。
「一度暖まってから、じっくり滑るのはどうかな!? 一緒にほうとう食べようよ」
親しいざくろからの誘いに、カーミンはようやく落ち着きを取り戻す。
「……それは一理あるわね」
ハンター達を待っていたのは、村民達と、かれらのために準備されたほうとうだった。
「今回は本当にありがとさん。おかげで村は救われたよ。たっぷり味わってくれ」
熱い湯気と美味しそうな匂いを漂わせ、丼が各自の前に並べられていく。
「五臓六腑に染み入るってのはこの事かね」
「ほうとうは美味しですよ! 冷えた身体に暖かさが沁みるのですねぇ!」
エアルドフリスとメリエのみならず、皆が似たようなことを実感する。
「鮭が入ってないのは残念ですが、妥協ですの」
海産物にこだわる藤乃が、ごく個人的な嗜好から不満をこぼす。味そのものには満足しているようだ。
「カーミン、美味しいね♪」
「うん。次の滑走に備えてたっぷり食べておかないと」
ざくろとカーミンが並んでほうとうをすすっている。
「美味いし体も暖まるぜ。もう一杯おかわりだ!」
丼を掲げるのはレイオスである。
「ゲレンデを満喫した上にメシまで出して貰って随分と役得だ。次来る時は純粋な遊びだといいんだがね」
「そんなもったいないこと言わずに、もう一回滑ればいいじゃない」
カーミンが、エアルドフリスに訴える。
「体も暑いくらいだし、涼しくてちょうどいいかもしれないよ」
「それはそれで、そそられる提案だな」
「寒いと熱いのを食べたくなるしぃ、暑くなると冷ましたくなるのねぇ」
ぽつりとこぼすはるなのつぶやきに、藤乃が皮肉っぽい笑みを浮かべる。
「矛盾してる様だけど、それが人間というものですわね」
くつろいだり、スキーをしたりと、帰りの馬車が出発するまで、ハンター達は思い思いに雪山を楽しむのだった。
ハンター達は、村長の口からあらためて詳細な説明を耳にする。
「雪玉の雑魔かぁ、……変わった奴がいたもんだ。しかも、数年毎に現れるとかマメというか」
「実に興味深い……、とばかりも言ってられんな」
知的好奇心を抱くクロード・インベルク(ka1506)とエアルドフリス(ka1856)だったが、双方とも優先すべき事は十分にわきまえている。
「村人にとっては迷惑な話だし、きっちり退治しちゃわないと」
「うむ。被害が大きくならん内に排除と行こうかね」
「ざくろ達に任せてよ、スキーだって昔学校の合宿でやった事有るし!」
元気いっぱいで請け負う時音 ざくろ(ka1250)。困っている人を放っておけず、村人を励ましたいと望めばこそだ。
「お任せです! 草スキーとボードはやってました! 雪は初めてですが、似たようなもんです!」
『……え!?』
ドンと胸を叩くメリエ・フリョーシカ(ka1991)に、皆の視線が集中する。
「……さすがにそれは言い過ぎじゃないかなぁ。初めてだったら特に」
指摘するのはカーミン・S・フィールズ(ka1559)だけではなく、また、メリエだけに向けられた言葉とも言えない。
「スキーの経験はあるが、戦いながら滑るのは流石に初めてだぜ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)の懸念に同意して、エアルドフリスが提案する。
「俺も些か不安に感じていたところだ。登山の前に、装備状態での滑走感覚に慣れておいた方がよさそうだな」
「そうですわね。素潜りをするにも準備体操は大事ですもの。しっかりストレッチはしておくべきですわ」
自分の得意分野を例にあげ、 刻崎 藤乃(ka3829)もこれに賛同した。
「その前に情報収集だ。特に雪玉の出る斜面の情報は聞いておきたいな。ゲレンデ情報っていうの?」
「そうだよねぇ。とりあえずスキー場の全体像とか教えて貰わないとぉ……。大体の滑走の目安になるしねぇ」
当人達の性格は大きく異なるが、クロードとはるな(ka3307)は戦場について問いかけた。
「地図があればありがたいんだけど?」
「スキー客向けの簡単なものしかありませんな」
求めに応じて広げられた地図を、クロードが詳しく追求していく。
「これは林? 他にも凹凸の激しい斜面とか……」
「待ってくださいよ。確かこのあたりに……」
そんなやりとりが、皆の頭にも記憶されていく。
「それと、村の方々にはゲレンデから避難していただきましょうか」
藤乃の要求に、村長は不安そうな表情を浮かべる。
「……倒せそうもないかのう?」
「雪崩は起こさせないし、あの雪玉を平地まで転がす気もサラサラ無い。けど万が一の為だ。少しの間だけ避難してくれ」
レイオスが念押しして、なんとか村長を納得させた。
●危険な雪山
「村長さん。スキーのレンタルもしているのでしょうか?」
「あるよ。スキーとスノーボード、どちらがいいね?」
「スキー板をお願いしますわ。平野部までに倒せなかった場合、スキー板の方が戦闘しやすいですもの」
藤乃の説を聞いて揺らぐカーミン。
「……それでも、私はスノーボードをお願い」
こだわった彼女を除き、他の皆はスキーを選択する。
「スキーなんて久しぶりだな」
「これが雪を踏んだ感触なんですね……」
クロードよりも、やはりメリエの方が感慨深いようだ。
草の上に限られていたが、それなりに慣れていたメリエは、すぐにコツをつかんだらしい。
エアルドフリスは杖を振り回して動きに支障がないか確かめ、藤乃は武器としているミラージュグレイブをストック代わりに滑走練習を行った。
「発動体に指輪を使わずに済みそうだ」
「こちらも、問題ありませんわ」
雪面から1mほど高い位置にロープが張られており、牛と滑車の力でずっと稼働している。掴まっているだけで、スキー客は坂の上まで運ばれるのだ。
「このあたりも戦場になりそうだから、斜面の勾配とか覚えておいた方がいいだろうね」
とクロードが景色を眺める。
「民家への被害はなるべく避けたい。2班が連携してうまく誘導すれば、被害を最小限に抑えられるはずだ」
レイオスが口にしたとおり、雑魔を2班で挟撃する作戦だ。
「連携の要はトランシーバーですね」
メリエが肩に取り付けた無線機の電源を入れると、似たような位置に縛りつけてあるクロードの無線機まで声が届く。
「うん。周波数も合ってるな」
「無線以外にも、手信号も決めておきませんか?」
「トランシーバーの破損も考えられるし、その方がよさそうだ」
同意したエアルドフリスが、メリエと共に簡単なジェスチャーを決めていく。
ロープリフトの終点からは、監視役の村人が踏み固めた雪道を進んだ。
新雪を進むより楽だったが、それでも慣れない雪道歩行では疲労も大きい。
「しかし、リフトがないとここまで大変だなんて……いや、これも冒険だもん!」
やる気を蘇られせたざくろが、きりっと前を向く。
「にしても寒いなぁ。山育ちだからって寒さに強いって訳じゃないんですよねぇ」
「……寒いのは素潜りで慣れていますが、辛いものがありますわね」
両極端な経歴を口にしたメリエと藤乃だが、同じ結論を口にする。
「村長が美味いものを用意してるそうだしな。とっとと終わらせようぜっ!」
レイオスが励ますように皆に告げた。
「幾ら通常の生命じゃあないとはいえ、随分とふざけた姿だ」
「面妖ってか……いや面妖な! 雪にヴォイドが憑くものなんですかねぇ!?」
雑魔を視認して、エアルドフリスやメリエがそう評した。
「ここからだと、敵に気づかれず反対側まで回り込むのは難しいな」
クロードの分析に、藤乃も頷く。
「回り込んでる最中に動き出されては本末転倒でしょう? 奇襲をかけてから挟撃に移るべきですわ」
斜面の下方向を前と見た場合、こちらが『右』、対面が『左』となる。
「先制攻撃できるよう、慎重に接近しよう」
「わかってるよ、エアルドフリス」
頷いたメリエが、鋭敏視覚やサバイバル技能で雪の斜面を調べながら、皆を先導する。
「あとは雪崩に注意しとかないとね~。雪玉が起こすモノだけじゃなくって、自然の雪崩にも注意ってカンジぃ?」
はるなが非常に不吉なことを口にした。
●雪面を下る
「パルムは、急激な地形の変化を捉えたら、声を出すなり髪をひっぱるなりして知らせてね!」
防寒具からひょっこり顔を出すパルムに、カーミンがそう言い含める。
「いつ転がり出してもイイよーに、スキーの準備は忘れずに~」
「覚醒もだな」
はるなやクロード同様、準備万端整えてから戦いの口火を切る。
「滑走前に出来る限り削っておかないとな」
「攻撃するね~」
エアルドフリスのファイアアローと、はるなの集中をかけたファイアアローが直撃する。
ぐらりと揺れた雪玉がスピードに乗るより早く、進路を横切る形で3人が『左側』へ向かう。
「崩れろーっ!」
魔法剣を握ったざくろが機導剣で横薙にし、クロードもメイスを叩きつけながら横断する。
スキー板越しに瞬脚を用いた藤乃は、移動を優先して、雪玉との優位な距離を確保した。自分の攻撃を届かせつつ、反撃をかわし易くするための距離だ。
表面を削られた雪玉は、がくんがくんと不格好に転がり、速度は十分に上がらない状態だ。
『右側』に向かって体当たりしようとする雪玉を、レイオス渾身の一撃が押し返す。
攻撃した2振りのユナイテッド・ドライブ・ソードは、そのままストック代わりに彼の身体を支えた。
「ストックは持ってないが、駆け下りるだけなら問題ない!」
断言するメリエの両手は、斧と盾でふさがっていた。レイオスに続いて追撃を行いそのまま併走する。
「ちっ! 思いの外はえぇですよ! プロスキーヤーも吃驚だ!」
「エアちゃんも頑張ってね~」
そう告げたはるなは、雪玉の後ろ側を回り込んで、エアルドフリスの対照位置に陣取った。
「雪玉に炎の魔法……どうなるか、超興味あるじゃん?」
「さて、炎で溶けるや否や。ちょっとした実験だな」
はるなとエアルドフリスが、左と右から追撃を行っていくが、やはり相性的は良くないらしい。
それでも誘導は成功しており、戦いやすいコースで雪玉を転がしていく。
藤乃の反対側からカーミンが肉迫する。
「やっぱり、相手は見た目通り水属性みたいね」
彼女が武器に選んだのは土属性の大身槍。
「せーの」
薙ぐ勢いを殺さずに、スノーボードごと身体を一回転させ、減速を極力押させる。本人が雪堀りだと感じたように、その攻撃はごっそりと雪を削っていた。
雪玉に大きな氷柱が生えて、その軌道が不規則になった。こちらの攻撃をよけるためかと思いきや、その氷柱はハンターめがけて撃ち出された。
エアルドフリスのウィンドガストに守られ、メリエを襲った氷柱が標的を外す。
パルムに髪を引っ張られたため、カーミンはこの時、敵ではなく進行方向を向いていた。
「やっほーい!」
岩に乗り上げるようにして跳んだ瞬間に、運良く、氷柱をかわす結果となった。
「あぶないっ! ……パリンと割れる機導力だっ」
クロードをざくろが咄嗟にかばう。光の防御壁が身代わりとなったものの、転倒したざくろが『戦場から』取り残されてしまった。
雪玉とそれを包囲するハンターは、その間も麓へと下っていく。
「氷柱を撃ち出しているせいで、雪玉が小さくなったかも~」
「……氷柱が生える前に、重心が狂って進行方向が変わるようだ」
遠距離担当だからこそ、はるなやエアルドフリスはそこに気づき、無線で皆にも伝えられる。
「木が代わりに氷柱を受けてくれました。敵にもこちらにも障害ですが、要は使いようって事ですね。オーバー」
とはメリエの声だ。
「ゲレンデに入ったようですわね。ロープリフトにぶつけないようにしませんと」
攻撃しようとした藤乃は、氷柱によるカウンターをマルチステップで回避する。
「任せろ! こっちに行かせる訳にはいかないからな。修正してやる!」
代わって、レイオスの渾身撃が雪玉をロープリフトから遠ざけた。
「っとと。華麗にジャンプ、って訳にはいかんなあ」
接近戦をしていないエアルドフリスなので、多少の失敗で転倒まではせずに済んでいる。
突然、雪玉に矢尻が生えた。
追いついてきたざくろが、持ち替えた弓を真後ろから撃ち込んだのだ。
「待ってて、今ざくろも追いつくから」
矢がブレーキとなって、速度を落とした雪玉の前に、レイオスが回り込む。
「ここまで小さくなったなら、体当たりで止めてやる」
だが、小さく軽くなった雪玉は、レイオスを踏みつける様にして、天へと駆け上った。
真下に生えた氷柱が、レイオスに向けて降り注ぐ。
硬質の音が鳴って氷柱が粉砕された。
それを成したのは、エアルドフリスのファイアアローと、炎の矢が使用限界に達したはるなのウィンドスラッシュ。これまでは成功しなかったが、タイミングと射線が特定できれば、氷柱の破壊も不可能ではないのだ。
幾周りもサイズが小さくなったことで、攻撃は当てづらくなっていた。
「……仕方ないわね」
槍を手放したカーミンは、解いたワイヤーウィップを変則的な軌道で操りながら、フェイントアタックを活用して雪玉を捕らえた。
鋼線で削られながら、進行方向を変えて逃れる雪玉。
「下へ着く前に突っ込みます! オーバー!」
回避に専念していたメリエが、一転して攻勢に出た。
「その雪玉バックリ割ってやらぁ!」
平地へ出る前に決着をつけるべく、渾身撃で斧を振り下ろす。
大きく変形した雪玉はますます減速し、追いついたざくろも含めて包囲されてしまう。
「……回転が遅いと、ここまで弱くなるのか」
クロードの感想通り、もはやハンターの敵たりえなかった。
●暖かなほうとう
「……雪崩が起きなくて良かったねぇ~」
満足げにつぶやくはるな。
「さあ、もう一回てっぺん近くまでいくわよー! 槍も回収しないといけないしっ!」
スキー欲に火がついたカーミンは滑る気満々である。槍を手放したのも、滑る口実にするためでは? と思えてくる。
「いやいやいやいや! 俺もゆっくり滑りたいと思うけど、……まずは、温まりたい!」
焦って止めるクロード。
「一度暖まってから、じっくり滑るのはどうかな!? 一緒にほうとう食べようよ」
親しいざくろからの誘いに、カーミンはようやく落ち着きを取り戻す。
「……それは一理あるわね」
ハンター達を待っていたのは、村民達と、かれらのために準備されたほうとうだった。
「今回は本当にありがとさん。おかげで村は救われたよ。たっぷり味わってくれ」
熱い湯気と美味しそうな匂いを漂わせ、丼が各自の前に並べられていく。
「五臓六腑に染み入るってのはこの事かね」
「ほうとうは美味しですよ! 冷えた身体に暖かさが沁みるのですねぇ!」
エアルドフリスとメリエのみならず、皆が似たようなことを実感する。
「鮭が入ってないのは残念ですが、妥協ですの」
海産物にこだわる藤乃が、ごく個人的な嗜好から不満をこぼす。味そのものには満足しているようだ。
「カーミン、美味しいね♪」
「うん。次の滑走に備えてたっぷり食べておかないと」
ざくろとカーミンが並んでほうとうをすすっている。
「美味いし体も暖まるぜ。もう一杯おかわりだ!」
丼を掲げるのはレイオスである。
「ゲレンデを満喫した上にメシまで出して貰って随分と役得だ。次来る時は純粋な遊びだといいんだがね」
「そんなもったいないこと言わずに、もう一回滑ればいいじゃない」
カーミンが、エアルドフリスに訴える。
「体も暑いくらいだし、涼しくてちょうどいいかもしれないよ」
「それはそれで、そそられる提案だな」
「寒いと熱いのを食べたくなるしぃ、暑くなると冷ましたくなるのねぇ」
ぽつりとこぼすはるなのつぶやきに、藤乃が皮肉っぽい笑みを浮かべる。
「矛盾してる様だけど、それが人間というものですわね」
くつろいだり、スキーをしたりと、帰りの馬車が出発するまで、ハンター達は思い思いに雪山を楽しむのだった。
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雪球退治算段【相談卓】 エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/01/24 01:57:34 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/20 02:39:21 |