• 血断

【血断】 叫べ! 叫べ! 叫べ!

マスター:のどか

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2019/05/15 22:00
完成日
2019/05/22 23:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 邪神への対応。
 その選択内容が公開されてからというもの、オフィスは――いや、リゼリオは何とも言えない空気に包まれていた。
 とっくに心を決めた者。
 迷いのある者。
 その両方。
 ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は窓口で頬杖をついて、そんなオフィスの様子を眺めていた。
「……なーんだかなぁ」
 迫られた決断にはきっと、正解と呼べるものはない。
 決めるのはどんな未来を掴みたいかの覚悟であって、払う可能性のある犠牲を理解することだ。
 だからこそ迷いは生まれる。
 本当にそれが、自分の望む未来であるのか――と。
「……このまんまじゃ、良くないよねー」
 自分で自分に問いかけるようにして、ほむりと頷く。
 それから自分のデスクに飛び込むと、かじりついて何かを書き始めた。


「ちょっといいかなー。希ちゃん」
「はい。なんでしょうか、ルミ様」
 廊下の先に見えた紡伎 希(kz0174)へ、ちょいちょいと手招きをする。
 彼女はとことこと歩み寄ってくると、無垢な表情でこちらを見上げた。
 この“計画”は、決してひとりでできることじゃない。
 だからこそ協力者は必要だ。
 でも、誰でもいいわけじゃない。
 他にバレたらどうなるか分からないし……意味がない。
 それこそソサエティのお偉いさんに知られたら――あ、なんだろう、ちょっと怖くなってきた。
「実はさ、ちょーと、手伝って貰いたい事があるんだけど……いいかな?」
「もちろんです」
 思わず弱気になった質問に、希は内容も聞かずに二つ返事で笑顔を返してくれた。
――ほんともう、この子は。
 高まっていた緊張が、ふっと抜ける。
 彼女が自分のことを好いてくれて、信頼してくれていることはルミも理解している。
 それがまた可愛いところなのだが、同時にちょっと心配でもある。
「希ちゃんなら、そう言ってくれると思ったよ~。これ、絶対に秘密だからねっ!」
 そう言って手渡すのは1冊の薄い資料冊子。
 ついさっき書き終えたばかりの、“計画”の全貌だ。
 ぱらぱらと目を通した希が飛び上がりそうになったのを慌ててなだめて、これがいかにナイショの話であるかを強調する。
「壁に耳あり障子に目ありってね!」
「分かりました。精一杯、お手伝いさせて貰いますね」
 また力の籠った二つ返事。
 不意に亡き友人の顔が頭に浮かんで、胸がチクリと痛んだ。


 そして時は近づく。
 珍しく全身をすっぽり覆うローブを纏ったルミは、道端で大きなギターケース2つと、巨大な木製コンテナを傍らに佇んでいた。
 フードはその表情を暗い陰に隠し、一見して彼女がルミであると気づける人はいないだろう。
「希ちゃん、遅いなぁ……」
 そろそろ約束の時間だ。
 だけど、希が姿を現さない。
 大分の無茶振りであったことは承知のうえで、彼女の協力がなければここまでの準備を終えることはできなかった。
 “計画”の本番に希本人の力は必要ない。
 だけどできることなら傍で見守って欲しいと……それがルミの素直な気持ちだった。
 それは同時に希を通して、彼女を自分に託した友人に、この舞台を見て貰いたかったのかもしれない。

 あの日、LH044からこの世界へとやってきた。
 ふざけんなと思ったし、蒼の世界に残して来た親友たちに会いたくて、帰る方法を血眼で探した。
 ハンターや受付嬢になったのだってそのためだけだ。
 
 正直な話、この世界での出会いにそれほど意味を感じていなかった。
 ルミにとってはあの蒼の世界こそが現実であり、紅の世界は一夜の夢のようなもの。
 覚めてしまえば全ては泡と消えてしまう程度のもの。

 しかし友人――ソルラ・クート(kz0096)の死は、ルミに大きな変化をもたらす。
 依頼を出すためにオフィスへと通う、はじめての友達らしい友達。
 近しい者の死は、夢の世界を現実へと変えてしまった。

 そして1年前、LH044を写した異界の中で親友たちの消滅を見た。
 2つの世界、その両方でルミは生きる意味を失った。
 
 だが、そのころにはもっと多くの支えが彼女の周りにあった。
 すべての出会いには意味があり、出会いのすべてが彼女を支えてくれた。
 そして何より、ソルラとの約束が空っぽの彼女に目的を与えてくれた。

 希の掴む未来を見届ける――そのために、希自身にも自分の未来に迷ってなんか欲しくない。
 
 時間が来た。
 希は現れない。
 しかたない――ルミはケースの1つを開くと中からギターを取り出す。
 そして両手でネック握りしめて振りかぶり、コンテナめがけて思いっきり叩きつけた。
 ガゴシャッと大きな音を立ててコンテナとギターが砕け散る。
 折り重なる木片の中から姿を現したのは、大型のスピーカーだった。
 何事かと、通行人の視線が一気に集まる。
 ルミはもう1つのケースから愛用のショルダーキーボードを取り出すと、片足でスピーカーを踏みつけて纏ったローブを脱ぎ捨てた。
「どうしたテメェら……湿気た面してるじゃない。この世終わりか? えぇ?」
 ルミの声がスピーカーから響き渡る。
 真っ赤な和風ゴシパン衣装が通りに映えて、音と一緒に視線を一気に引きつけた。
「どいつもこいつも覚悟を決められないか? そんなんじゃ選んだ未来だってたどり着けやしないだろうよ。世界の終わりだ。ゲームオーバーだッ!」
 ドクドクと心臓が高鳴って、全身の血が煮えたぎるようだ。
 怖い、怖い、怖い。
 ルミは親友たちの力を貰うように、スピーカーの上に置いた「HEAVENS DOOR」のレリーフに手を触れた。
 今だけはルミ・ヘヴンズドアでも、朱鷺戸るみでもない。
 ルミであり、カナデであり、アリスであり、フブキになる。
 あたしが“HEAVENS DOOR”になる。
 それが――
 
 ちがう、と通行人の誰かが怒り気味に答えた。
 ルミの口角がにやりと上がる。
「いいぞ、言いたいことあるなら言ってみろ! 叫んでみろ! 叫べ、叫べ、叫べ叫べ叫べよ!」
 煽るように連呼して、ルミはキーボードのボタンを押す。
 繋がったスピーカーから、鼓膜が破れそうなほどの大爆音で、録音しておいた他パートのメロディが爆発する。
 ルミはドンと自分の胸を叩いて、挑戦的に通行人を見渡した。

「“ここ”にあるモン、全部ぶちまけろよ! 不安? 想い? くだらない! そんなの、後付けの理由にすぎないだろ! 全部吐き出せ! テメエの頭ン中、胸ン中、腹ン中、全部全部叫んでゲロって空っぽになれ! どうせあたしの歌声にかき消されて誰にも届きやしない。それが嫌なら、あたしに負けないくらい叫べ! あたしは“HEAVENS DOOR”! テメェらの未来の扉だッ! ブッ叩けッ! 鍵をぶち壊して、蹴り破って、向こう側に進んでみせろッ!! 掛かって来いッ!!!」

 ――それが、あたしが選んだ偶像(アイドル)という生き方。

「ノッキン・オン・………ヘヴンズドアァァアアア!!!」

リプレイ本文


「わぁ! びっくりした!」
 突然かき鳴らされたギターの音色に、アシェ-ル(ka2983)は買い物袋を慌てて抱えなおす。
 彼女はがやがやと騒がしい雑踏を遠巻きに、つま先立ちで様子を伺った。
「お祭りですか? だったら連絡のひとつでもくれればいいのに……よし!」
 状況は飲み込めないけれど、そういうことなら自分のやることは心得ている。
 アシェールはそのまま上空に手を伸ばすと、おもむろに「炎弾」を解き放つ。
 空で爆発を起こした火球が花火みたいに鳴り響いて、通り一帯の注目を集めていく。

「なにやってんだよアイツ、こんなとこで……!」
 突然の展開についていけないのは、ジャック・エルギン(ka1522)もまた同じだった。
 見知った女がいつか見知った衣装で現れたかと思ったら、突然爆音をバックに煽り口上を並べやがった。
 なんのために?
 そんなの、それぞれが一番よく分かっている。
 だけど、それをわざわざ突き付けられるほどにカチンとくることはない。
 鼓膜が破れるんじゃないかってほどの音楽が皮膚という皮膚を震わせる。
「ハッ、ハハ……ハハハ!」
 突然、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が目元を覆って笑った。
 普段のリゼリオなら十分に人目を引く笑い声だが、今はいとも簡単に音の波にさらわれてしまう。
 彼女は指の隙間からぎらついた瞳でルミ・ヘヴンズドア(kz0060)の姿を捉えると、にやりと犬歯をむき出した。
「なんだルミ、テメェ俺が今まで見た奴等ン中でぶっちぎりでヤベェじゃねえか!」
 いろんなぶっ飛んだ奴に会ってきたつもりだった。
 だけど、いざ世界の行く末を決めようってこの時に、こんなバカことできる奴は見たことがない。
「いいぜ付き合ってやるよ! テメェこそ最後までそこで立ってろよ!?」
 覆っていた手で拳を作り、挑戦するように彼女へ突き出す。
 ルミはちらりと視線を合わせて、ふふんと不敵な笑みを浮かべた。
「ったく仕方ねえな……ああ、仕方ねぇ!」
 エルギンもパンと頬を張ると、自分自身に言い聞かせるように叫ぶ。

 そんな時、甲高い口笛がドラムビートの隙間を貫いた。
「Hell Yeah! どいつもこいつもすました顔で“正義”を語りやがる! 誰かのために? んなコト誰が頼んだっつーんだ!」
 リコ・ブジャルド(ka6450)が言葉を向けるのは、吹っ掛けたルミではなく、ざわつく雑踏。
 怒るというよりは愉しんでいる顔で、まだまだ状況に乗り切っていない呆け顔の奴らを順に指差す。
「てめえはナニサマだ? カミサマにでもなったつもりか?」
「そんなこと言ったって私は……」
 ルミとリコに煽られて、レイア・アローネ(ka4082)が言葉を濁す。
 色んな想いがある。
 みんなが大切にしているものを守りたいと思っている。
 でも、それははたして自分の願いなのか?
「What? くっだらねえ!! てめえの願望を誰かの言葉で着飾るんじゃねえ!!」
「い、いや、だが……」
 言葉は再び詰まる。
 一言も言い返せないなんて、自分が選ぼうとしている未来はその程度のものなのか?
 分からない……私は、何のために戦おうとしているんだろう。
「甘ったれんなクソガキ共……!!」
 リコの煽りに触発されたように、キヅカ・リク(ka0038)が叫んだ。
「今この世界で、どうにもできない、どうにもならない、そんな風に自分を諦めてんじゃねーよ!」
 一度口にした言葉は止まらない。
 ため込んだ思いが、積もった5年間が、腹の底から湧き上がる。
「救世主って他人を祭り上げて諦める理由にしてんじゃねーよ! 俺らはなぁ、お前らの時間を作れはしても、お前ら全員を笑顔になんかできねーんだよ!!」
 守護者として戦うことに迷いがあるわけじゃない。
 困難に身を晒すことを迷っているわけじゃない。
 迷いがあるのは、自分が救えるものは「何か」ということ。
「テメェの人生を救えるのはテメェらだけなんだよ!!」
 世界を、命を救っても、幸せは救えない。
 人生は誰かに与えられるものではないから――

「リク……」
 叫ぶ彼の姿を、高瀬 未悠(ka3199)が思いつめた様子で見つめている。
 その横ではルナ・レンフィールド(ka1565)がショルダーキーボードをケースから取り出す。
「ほんと、いきなり何? って感じですよね」
 どこか突き放したようなつぶやきは、確かな憤りもはらんでいた。
 相手はもちろん、絶叫ボイスで叫ぶように歌うルミに対してである。
 結局、選んだのはそれなの?
 狙いは分かる。
 手段も彼女らしい。
 だけど、独りってないじゃん。
「未来は血と犠牲で開くものじゃない。伝えて。託して。みんなで押し開くもの」
 リュートを抱えて、ユメリア(ka7010)はルナを、未悠を見る。
 レ●プじみた音の中で互いの声は伝わらなくても、音ひとつで思いは伝わる。
――答えよう。伝えよう。私たちの方法で。
 未悠も取り出したバイオリンを手にして、2人の輪に加わる。
 大きく息を吸い込めば、鼻腔を伝わる熱気と共に心が焼ける。
 歌える。
 3者3様の音が雨だれとなって、ロックの海に波紋を落とした。
「対バンなら私だって――」
 央崎 遥華(ka5644)がギターを構えて、踵で地面をガツンと鳴らす。
 そしてピック捌き一粒一粒のリズムにあわせて声を張り上げる。

――非情冷酷 サイクルはデスマーチ
――希望を待つのは夢見がち? No
――アングルはデッドエンド
――でも絶望=その場でジ・エンド

「フリースタイル? いいじゃん、ストリートはこうでなくっちゃ!」
 ロック、JAZZ、HIPHOP。
 三つ巴、カオスな惨状はこの場を支配する意思の表れ。

――無理難題無謀散在でもその中には勝機があった
――勝利を挙げた 正気かハンター?
――胸張って言お
――「これが真実」!

 ルミが真っすぐ睨み返して、インカムを手で支えながら口元に近づける。

――あんたらが希望? 立ち向かうは絶望
――語るだけは願望 But 向かう先は滅亡!

 流れるロックをそのままに、自分のスタイルを捨てて迎え撃つルミ。
「そんなこと……!」
 遥華は息詰まらせながら、ギターの音色で言葉を受け流す。
 その間に付け込んで、ルミは噛みつく勢いで攻め立てた。

――信じられるのその選択 「希望」としての人生の忖度
――行きつく牢獄 胸に焼きつく無間地獄
――そんなリスクに見合う価値ある天国!?

 ぐいぐいと挑発を受け、遥華も負けじと追い縋る。

――何とかなるとは言わないけど
――何とかしてきたのが歴史でしょ
――覚悟で示すのアタシらの価値
――最後の仕上げはアタシらの勝ち!

 不意に、対立を仲裁するように火球が空に弾ける。
 間際のタイミングで「炎弾」を放ったアシェールは緊張の解けた場を見渡して胸をなでおろす。
「こういうのも大分と慣れてきましたね」
 ルミもちょっと熱が入り過ぎたのを自覚して、キーボードを構えなおす。
 だが、ちょうど1曲目が終わって音の波が一瞬途切れた。

 その間に台頭するのがルナたちの奏でるJAZZだ。
 途中から曲調をクラシック調に変えて、路上のあっちこっちに飛び散る感情を包み込もうと音を広げる。
 膨れ上がった3人の歌声はどこか悲痛の叫びのようでもあって、次の曲へ向かうルミの楽器操作を無意識に妨げる。
(守れなかった。救えなかった。私が……殺した)
 未悠の声に乗るのは、忘れられない罪の記憶。
 失った命が、奪った命が、夢の中で自分を責める。

――お前のせいだ。
――痛い。
――助けて。
――この人殺し。
 
 許して、ごめんなさい。
 帰ってこない命を前に、どんな言葉も意味をなさない。
 選ぼうとしているのはそういう未来。
 この苦しみが、もっと広がるの?
――大丈夫。
 ふと、彼女のバイオリンに重なったリュートの音色が、暴走する感情を支えるように手を差し伸べる。
 ユメリアが視線だけを交わしながら、まるで会話をするように音の粒を弾く。
 百年すれば去る私達が千年続いたのは、伝えたから。託したから。
 残された者がいるからこそ、未来は繋がっていく。
 本当に恐れるべきは、繋がりが途切れること。
 託されたものを放ること。
 それは、「あなた」にとっても同じはず――
 ユメリアの空のような瞳が、次曲へと入ったルミを捉える。
 
 喧騒の後方で、ルーネ・ルナ(ka6244)は叫ぶ人々の輪に踏み込めず、ふわりと人々を眺めていた。
「あの……無理しなくても良いと思います」
 馴染めていないのを感じ取ったのだろう。
 後ろからそっと声を掛けたルカ(ka0962)に、ルーネは振り返り、やんわりと笑みを浮かべた。
「そう見えますか?」
「いえ、その、違ってたらごめんなさい……あっ、これ、良かったら」
 ルカがびくびくとしながらホット蜂蜜のカップを手渡す。
 ルーネは受け取って、優しく礼を述べる。
「沢山あるので、よかったらおかわりも」
 それだけ言って、ルカは逃げるように彼女から視線を外した。
「その、無理しなくてもっていうのは、私も馴染めてないからで……べつに、あなたを見た目で判断したとかでなくって」
「大丈夫です。分かっていますよ」
 眼前で誰もが口にしている思い、願い、不満、恐怖。
 そういった強い感情のうねりが、自分たちの心には重ならない。
「ですが、そのズレの理由も、私は理解しているつもりでした」
 温まった喉で、ルーネがそう言い添えた。
「ですが、なんとなく……私もあの方たちと同じだというような気がしたのです」
 首をかしげたルカに、ルーネはもう一度笑みを浮かべて空になったカップを返す。
「ありがとうございます。もう少し、浸ってみようと思います」
 それからふらりと喧騒へと足を伸ばした彼女の背中を、ルカは何も言えずに見送った。
「……叫べる心が溢れ出す人たちは、凄いなぁ」
 零れたルカのつぶやきは、どこか物悲しくもあった。
 
 喧騒の外から輪を眺めるのはもう1人。
 彼、ジャック・J・グリーヴ(ka1305)もそうであった。
 珍しく度肝を抜かされたというのもあるが、どこかむかっ腹の立つはらわたを鎮める手段を考えていたのだ。
「ったく、どいつもこいつもテメェの事で大忙しだってのによ」
 むかっ腹の理由は分かってる。
 あの女だ。
 漢気あるクソバカだ。
「上等だ……そんなら俺様もお前に叫んでやろうじゃねぇか!」
 心は決まった。
 いや、それだけならとっくに覚悟はできている。
 アイツには、言わなきゃ気が済まないことがある。


 リゼリオの外縁から1台のトライクが街中に滑り込む。
 タイヤ痕を残して急停車したそのシートの上で、Uisca Amhran(ka0754)がサイドシートを振り向く。
「ノゾミちゃん、お待たせ!」
「ありがとうございます」
 紡伎 希(kz0174)はサイドカーから降りて、目の前で繰り広げられる混沌とした喧騒を肌で聞く。
 そしてぎゅっと、両手を握りしめた。
「よかった、間に合った……」
 固く結ばれたその手をウィスカの手が優しく解く。
 そのまま温かい手と手が握り合うと、希をリードするようにそっと引いた。
「間に合って終わりじゃないよ、ノゾミちゃん」
 諭すように口にした彼女に、希は顔をほころばせて答える。
「はいっ」
 連れ添う背中は、音の波へと駆け出した。
 
 数曲分を歌い終えて、ルミは大粒の汗を頬に滴らせながら発破をかけ続ける。
「Hell Yeah!」
 間髪入れずにリコが合いの手を入れて、他の同調する者たちも後に続く。
「ご大層なお題目なんざクソ喰らえ!! 言っちまえよ!! そいつはてめえのエゴだ! 独善だ!!」
 リコは立て続けに煽りを重ねる。
 足りない足りない。
 まだまだ魂の底からの叫びじゃない。
 ルミは長い髪を振り乱してスピーカーを蹴ると、次の曲へとスイッチした。
「そうだ! 吐け! 理性なんて取っ払って、本当に欲しいモンを叫んでみろ!」
「うるせえ! 言われるまでもなく、言いたいことなんざ決まってんだ!」
 真っ先にエルギンが拳を突き出して、ステージの矢面に飛び出す。
「俺は戦う! 誰かのため? 違う! 俺は、俺が欲しいモンのために戦うぜ!」
「戦って何が残る!? テメエは何を手に入れる!?」
「勝って皆からチヤホヤされてえし、女の子からキャーキャーとかも言われてえ! いつか爺さんになった時に、俺は英雄連中と先頭に立って邪神と戦ったんだって――ホラを吹いて、ガキ共に笑われて駄賃を強請られるような未来が欲しいんだよッ!!」
 強請るのは未来――そう、それはきっと、子供のころに憧れた「カッコいい男たち」の背中。
 そのためには「今」から地続きの未来が欲しい。
 いい感じにプッツンしてきた会場に、リコもニィと口角を吊り上げる。
「てめえがやりたいからやるんだろ!? 聞こえねえ! 届かねえ!! てめえらについてるもんは飾りか!?」
 それで全部か。
 本当にそれだけか。
 吹っ掛けられた挑戦に、エルギンはぐっと腹に力を込める。
「俺の好きなヤツの夢は立派な魔術師だ! 魔法のねえ世界じゃ叶わねえだろうがッ!」
 最後の最後に絞り出した、心の搾りかす。
 口にして、全てが吹っ切れた。
「戦う理由に他人は邪魔だ! 自分のために、何を選ぶか考えやがれ!」
「そうだ、ぶちかませ!」
 いつしかリコに同調して、エルギンもまた人々の顔を見渡し、胸倉に掴みかかる勢いで喝を飛ばす。

「ああもう! いい加減にしろ! ないんだよ、叫ぶことが!」
 さんざん煽られて、レイアがキレたように声をあげた。
「皆が喜ぶ選択肢が選べるのか、そんなものがあるのか、あったとして私の力で辿り着けるのか……常に不安で一杯だ!」
 八つ当たりのように、だけど言葉は真っすぐに彼女の奥底から溢れ出す。
「誰もが迷いなく戦えると思うな! 私は皆のために戦えるのか! 不安で一杯なんだ!! それなのに叫べだと!? それなのに……それなのに……あれ?」
 確かにあったじゃないか……自分の叫ぶこと。
 自分がどれだけ迷っているのか。
 答えの出せない問いに、どれだけ押しつぶされそうになっていたのか。
 ふと我に返って、理解した。
 そうか……あとは、私が私の意志で決めるだけなんだ。
 心のもやが晴れて、彼女はもう一度まっさらな心で雄たけびを上げた。

「俺だってなァ、まだ生きてやりてぇことがたくさんあンだよ!」
 入れ替わるように、傍にいたボルディアが吠えた。
「美味いもの食いたいし酒だって呑みてぇ……それに……」
 珍しく、言葉を詰まらせる。
 それは抱いた想いへの一抹の不安と恥ずかしさ。
 だが、それを振り払って彼女は目を見開く。
「それに……暴れるしか脳のねぇ俺にも夢ができたんだよ! 俺は先生になりてぇんだッ! ガキ共に頼れる背中ってのを見せて、成長を間近で見守りたいんだよッ!!」
 英雄になりたかった。
 でも英雄がわからなかった。
 夢を持った今ならわかる。
 英雄ってのはガキ共に未来を見せられるヤツの事だ。
「俺の往く道を遮るなら、ガキ共が安心して過ごす未来を壊すなら、それが何であろうと俺が全部ブッ壊してやる! 文句があンなら全員纏めてかかってきやがれえぇぇ!!! 」
 幼き日のガキ大将は今、同じ瞳で未来を見つめる。
「僕は……未だ足りない……未だ知りたい!!」
 天央 観智(ka0896)が躓いたように声を張る。
 ガラじゃないのは分かってる。
 だけど音と声でどろどろになった頭で、湧き上がるのは腹の底に濁り溜まった不満。
「終わらせて良い筈が無い、知らない事を知らないままで終わらせて良い筈が無い……存在すら忘れて、無かった事にして……痕跡も無く、解らないままで、解っていない事さえ知り得ない様に……してしまって、良い筈が無い!!」
 邪神を封印したら消えてしまう。
 世界の不思議。
 分かりかけた、この世を形作っているもの。
「それに……未来は判らないから未来だけど、ただ漠然と、時が進めば良いものじゃない!! 闇雲に進んで、掴めるものじゃない!!」
 邪神とひとつになることで訪れる永遠。
 永遠でありながらも、永遠ではない世界。
 目的のない旅は旅とは言えないのだから。
 何者でもない自分。
 それは分かり切っていたことだ。
 自分は自分でしかない。
 だから誰かと支えあえる。
 助け合える。
 自由とは自分を、他人を、決まった型にはめないこと。
 だからこそ、自分が自分でいられなくなる答えを選べるはずがない。
 求めるのは――未知にあふれたこの世界。
「そのために抗う覚悟はできている……僕は、僕自身が選び、歩める未来がほしい!」
 喉がひりひりと焼けるように痛い。
 その痛みも、今はどこか心地よかった。
 
 ルナは体いっぱいに侵食するルミの音楽を前に、思わず唇をかみしめる。
(スピーカー分のハンデがあるとはいっても……)
 技術で言えば自分が上。
 音楽家としての耳は嘘をつけない。
 だけどこの差はどこから生まれるの……?
 共に音色を紡ぐユメリアには、その答えが分かっていた。
 ルミは託された想いを紡いでいるのだ。
 彼女に宿る3人の想いが、星の海のごとく果てなく輝き続けている。
 そうやってルミは新しいステージへと駆けあがった。
(だけど、そんなの……寂しくないの? 甘えたくないの?)
 未悠が心の中で叫ぶ。
 自分は……寂しい。
 ルミは受け止め、引き受けることを選んだ。
 だからこそ聞きたい。
 その先に輝く、彼女の「叫び」を。
――もう少し頑張れるよね?
 ルナが曲を転調し、2人に目配せする。
 未悠とユメリアが疲労を滲ませながらもしっかりとした意識で頷くと、ルナも力強く頷く。
 この先に待っている戦いはもちろん怖いし、不安はある……だけどそれ以上にもっと色んな音楽を聴いて、奏でて……大切なみんなと、生きて行きたい。
 私は、独りじゃないから。

 ルカは相変わらずに遠巻きから、より白熱する集団をそっと見守る。
 へとへとになって輪から外れた人にはホット蜂蜜を差し出して、労いの言葉をかける。
 羨ましいと――素直な心でそう思った。
 自分にはそこまで本気になって叫ぶものがない。
 だけどこれだけの人が心をさらけ出しているのを目の当たりにすると、まるで自分が空っぽみたいな、どこか寂しい気持ちに襲われる。
 もしかしたら、それ自体が自分にとっての叫びの種なのかもしれない。
 まだ芽吹いていない、心の奥底の想い。

 ふと、通りの先が騒がしくなった気がした。
 何やら数名の男女が血相を変えて、こちらを目指して走ってくる。
 身に着けているのはオフィスの制服。
 なるほど、届け出のない騒ぎを聞きつけて現場確認と注意に赴いた職員たちだろう。
「わわっ、良い感じにあったまって来た時なのに、そんなっ」
 アシェ-ルは慌てた様子で散らしていた炎弾を止める。
 何とかしないと、何とかしないと……考えた末に、彼らに向かって駆け出していた。
「うわっ!?」
 突然真正面から女の子が飛び込んできて、戦闘の職員が思わずしりもちをつく。
 勢いでアシェールも(大げさに)転んでみせると、そのままお腹を押さえて地面をのたうち回ってみせた。
「あぁぁぁぁ。おなかが、おなかが急に痛いですぅ~。おなかの子が~」
「え、ええっ!? き、きみ、大丈夫……!?」
 突然のことに狼狽える職員。
 もちろん仮病である。
「ちょっと待ってなさい。すぐに人を呼んで……」
「ダメですぅ~! 待てない! もう来てる、来てるぅ~!」
 迫真の演技。
 職員たちは困ったように顔を見合わせてから、ぐっと奥歯を噛みしめてアシェールに手を伸ばした。
「と、とにかくこの子を病院に連れていくぞ。あっちはそれからだ」
「は、はい」
 釈然としない様子だが、数人で手足を抱えて持ち上げるとゆっくりと歩み始める。
(みなさん……頑張って!)
 離れていく喧騒を横目に、アシェールは心の中でエールを送り、健闘を願った。
 
 爆炎の演出がなくなったのを見計らって東條 奏多(ka6425)が空を駆けた。
 さんざんに煽られて爆発寸前だった胸の内。
 だが、人前で弱さをさらけ出すのは怖かった。
 だからたったひとりになった瞬間、そのすべてが溢れ出す。
「力が欲しかった! 何にも負けない力が欲しかった! 守りたい? ああ、当然だ! そのために強さを求めた! 隣にも、後ろにも、遠く離れたところにも、守りたい人間はたくさんいる!」
 進め!
 闘え!
 戦え!
 勝ち取れ!
 勝てねば意味がない!
 だって……
「負ければ……すべて失うッ!」
 失うことが怖い。
 忘れることが怖い。
 なにひとつ、なかったことになんてしていいはずがない。
「折衷案なんて問題を先送りにしてどうする! 向こうはこっちの全部を奪いに来てる! こっちも全部を奪い取れ!」
 取られてなるものか。
 この想いも、記憶も、仲間と過ごしたこの世界も。
 全部全部、俺のものだ。
 ハッピーエンドで全部忘れて終わるなんてまっぴらだ。
 失った命をすべて背負って生きるんだ。
 彼らの「死」をすら奪うなんて……そんなことさせてたまるか!
 もしも仲間が――彼女が力尽きてしまったとき、その「死」を奪われてなるものか!
 力の限りを尽くし、叫ぶ。
 どんなに汚くてもいい。
 そんなこと、それこそ彼女は許さないかもしれない。
 だけど、決めたんだ――
「この世界で起こった悲しみ全部を……俺は覚えていたい」
 最後の言葉だけは、叫びにならなかった。
 口からポロリとこぼれた、想いの最後のひとかけら。
 自分は、生きる場所を与えてくれたこの世界と最後まで歩んでいきたい。
 
 地上もそろそろ手の付けられない様子で、あちらこちらで絶叫が響いていた。
 自分でも分からなかった迷い。
 口にするのは嫌だった言葉。
 だけど今、それをさらけ出せる場がここにある。
「凡人が世界を救って何が悪い……! この世界を救うのが、お前らで何が悪い……!」
 リクは掠れ始めた声で、それでも訴え続ける。
 はた目には戦うことのできない人々へ向けて。
 だけどその実は――自分に向けての憤りと覚悟。
「手を伸ばしてみろ、必ず変わる! それでも届かないなら俺が居る! 変わりたいなら叫んでみせろ……!」
「だったら……死なないでよ、リク!」
 彼の声を遮って、湿った声が空に響いた。
「未悠……?」
 自分を真っすぐみつめる彼女の姿に息が詰まる。
 未悠はヴァイオリンを弾く手を止めて、今こそ、全ての感情を言葉にして投げうった。
「ううん……絶対に死なせないわよ! 死んだらぶん殴ってでも連れ戻してやる! 貴方の代わりなんていないのよ! 大切なのよ!」
 抑え込むことをやめた感情が胸から一気に溢れ出す。
 悲痛なまでの叫びは、ほんの一握りの心に支えられていた。
「死なないでよ……リクっ!!」
 彼の返事を待たずに、視線をぐっとルミへ戻す。
「それでも私は…大切な人達のいる世界を守りたい! 一緒に生きていたい! だって――」
 あなたが死ぬつもりなんてないのは分かってる。
 だけど、覚悟はとっくにできていることも……分かってる。
 だからこれは私の覚悟。
「――もう独りじゃいられない!」

 彼女の覚悟を感じ取りながら、ルーネはふと想いを馳せる。
 寂しいと感じたことが無いかというと嘘になる。
 幼いころの記憶なんてほとんどないし、自分の事を救ってくれた人もその時に。
 きっとそれが、自分とここで叫べるみんなとの違い。
 わたしには、未来へ繋いでいく過去がない。
 それなのに、自分が生きているせいで誰かを傷つけてしまうだけなら、あの時に死んでしまえば良かったと――何度そう思ったか分からない。
 でも……自分を守ってくれた、あの背中だけははっきりと覚えている。
 沢山傷ついて、だけど輝いていたあの背中。
 そして今、同じ背中を持った人と一緒に生活をしている。
 メンドクサイ人だけど、家族のようで、遠い記憶にほんのりと重なる。
 納得できないこと、わからないことだらけ。
 だけどひとつだけハッキリしていることがある。
 ルーネは自分にも聞こえないくらいの声で、そっと口にする。
「あなたが、だいすきです」
 未来へ繋ぐ過去はない。
 それでも、彼女は「今」を生きている。

 みんなの叫びに耳を傾け、ウィスカはドキドキと高鳴る鼓動に身を委ねる。
 祈りが、願いが溢れる場所は心地が良い。
 それはきっと、自分という人間の本質にもっとも近いからなのかもしれない。
「守護者なめんなですっ! 私は愛する人との未来のために、この世界を守りますっ!」
 自分もその輪に混ざるように、声を張り上げた。
「ほら、ノゾミちゃんも」
「私は……」
 背中を押されて、希は困ったように肩をすぼめた。
 彼女の戸惑いに気づいたのか、ウィスカはほほ笑んでまたその手を引いた。
「じゃあ歌おう。声を出すって、それだけで気持ちがいいんだよ」
「歌う……」
 ウィスカは静かに目を閉じると、身振り手振りでテンポを取って歌詞を紡ぐ。

――さぁおいでよ Welcome to world
――そう行こう Let‘s go together

 それは、全ての最初に仲間と歌ったアイドルソング。
 私が私であることを確立した、思い出の歌。
「ほらっ、続いて」
「は、はい」
 はじめは拙いけれど、次第にメロディを追って希が歌詞を追う。
 次第に胸の奥が澄んでいくような気がした。
 そっか、イスカさんもルミ様も、こんな気持ちで歌っているんだ。
 ウィスカもまた、歌詞を口にしながらあの日の心を思い返す。
 すべてはここから始まった。
 大丈夫、その時の気持ちは今も忘れていない。

――ふたつの色に 彩られた世界で 紡がれる物語
――君も一緒に ユメ見よう♪

 希はクリアになった心で、滲み出る想いに身を委ねる。
 それは言葉にはならないけれど、歌にのせてウィスカの声と共に響かせた。
 私、今、夢を叶えています。
 
 かなりの曲を歌い終えて、ルミの方にも疲労が見え始めていた。
 ダラダラにかいた汗が迸り、路上に煌めくけれど、それでも彼女は問い続ける。
――吐き出せ、と。
「お前が扉だぁ……?」
 そんな時、彼女の前に挑む1人の影があった。
 ルミは戦意を滾らせたまま、歩み寄るグリーヴの顔を睨みつけて背を伸ばす。
「そんならよ、扉になっちまったお前が先に進みてぇと思ったらどうすんだ? お前が頭ん中胸ん中腹ん中全部空っぽにしてぇ時はどうすんだ!」
「あたしはこうして叫んでる! これで全部、吐き出してる!」
 歌うのも忘れて、ルミは意固地になって言い返した。
「クソッタレ! 人ばっか前に進ませようとしやがって!」
「だったら立ち止まんなよ! 迷うなよ!」
「うるせぇ! お前にだって未来があんだよ!」
 食い掛かられて、ルミがはっと息を呑む。
「叫べ? 上等だ、聞け!」
 グリーヴはそのまま畳みかけるように一歩、彼女の世界へ踏み込んだ。
「俺はお前とも前に進んでいきてぇんだよッ!」
 高らかに響いた彼の叫びに、ルミは一瞬目を見開いたまま硬直し――それからボッと顔を赤らめる。
「は、はぁ!? バ……バッカじゃないの!? バーカ、バーカ! 金ぴか!」
 頭の悪い罵声を浴びせながら、狼狽えたように後退るルミ。
 だが隙をついて飛び出したルナと未悠が、その両サイドをがっちりと挟み込んだ。

――そりゃ怖いよ 死にたくもないよ
――でも逃げるチョイスとか持ち合わせてないよ
――武者震いから一矢! 報いてやるわ
――運命になど背いてやるわ!

 ルミの歌が崩れて、バンド演奏だけをバックに遥華の声が周囲に響く。

――足掻き足掻き足掻いて捌く!
――ここに存在と祓いて叫ぶ!

「ここに存在……」
 ルミはぽつりと、口に含んだ。
「一人で背負う必要なんてない。誰の代わりにもなる気はない。私は私として、一緒に歌うことができるから」
 ルナが想いを投げかけ、ユメリアがそっとルミの背を支えるように撫でた。
「あなたが想いを繋げば、あなたが背負った思いも未来へと繋がる。だから私たちの想いをルミ様に。そしてルミ様の想いも、私たちに」
「全部ぶちまけなさいよ! 私達が受け止める!」
 未悠が彼女の肩にそっと震える。
 言葉を失ったルミの身体は小さく震えていた。
 見かねて、3人はひしりと彼女の小さな身体を抱きとめた。
「「「あなたは独りじゃない!」」」
 カチリと、錠前が開いたような気がした。

「……最悪の数年間だった。毎日がイライラで、毎日が寂しかった。だけど、同じぐらい楽しかった。辛いことと悲しいこと、半々ではないけれど、あたしは……あたしは――」
 嗚咽を飲み込んで、ルミは腹の底から叫ぶ。
「――生きたいッ!! ヘヴンズドアの歌を、カナデ達の生きた証を遺したいの! あたしもあたしの戦いをする……だからお願い!!」

――勝ってよっ!!

「当たり前だ!」
 グリーヴが二つ返事で声を張る。
「お前という扉を無理やり背負い込んででも、進んでいくからなクソッタレ!」
「うっさいわバカ! でも、バカなとこ嫌いじゃないよ」
 ぐしゃぐしゃの顔でルミは頷く。
 今できるめいいっぱいの笑顔を浮かべて。
「絶対に、約束だかんね!!」
 曲が終わって、次のナンバーが始まる。
 ルナが流れるメロディに合わせて鍵盤を叩き、未悠も、ユメリアも、遥華も、それに倣った。
 8つの音が合わさって、この世界でたった1つの曲を紡ぎ出す。
「これで最後だ……声が枯れるまでついてこいよッ!」
 前を向いて、ルミが叫ぶ。
 人々の雄たけびがそれに続く。
「ひっくり返すぞ、この世界!!」
 リクが拳を振り上げ、高々に言い放った。
 世界を掴むのは1人1人のその手だと。

――We are guardians!!

 決断の日はすぐそこだ。

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師

  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師

  • ルーネ・ルナ(ka6244
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 背負う全てを未来へ
    東條 奏多(ka6425
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
  • 《キルアイス》
    リコ・ブジャルド(ka6450
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • 重なる道に輝きを
    ユメリア(ka7010
    エルフ|20才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/05/15 21:56:27
アイコン 【相談卓】あなたは何を叫ぶのか
ユメリア(ka7010
エルフ|20才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/05/15 21:58:32