• 幻想

【幻想】仇討のヴォイドレディ

マスター:猫又ものと

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2019/05/15 12:00
完成日
2019/05/31 06:26

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

※要注意※
当依頼は猫又の依頼『【幻想】辿りついた果て』と同時攻略シナリオとなります。
同時参加はシステム上可能ではありますが、両方に参加された場合、こちらの依頼を優先し『【幻想】辿りついた果て』には参加出来なかったという扱いになります。
同キャラクターで重複参加されないようご注意ください。

●訪れた客
 その日。突然現れた客に、部族会議の面々は驚きを隠せなかった。
 開拓地ホープに正面切って現れたのは、辺境を別な意味で騒がせている高位歪虚……いや、こいつを高位歪虚と言っていいのか?
 一応言葉が通じるから高位歪虚なのかな??
 ともあれ、トーチカ・J・ラロッカとその配下のモグラ達が正面切ってやって来たので。
 今回、ハンターや部族会議の面々と戦うつもりはない。ここにいる一番エライ奴と話がしたい……と彼らは訴えたが、部族会議大首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)は依然意識不明のまま。
 では、2人いる補佐役のうちのどちらかを……となった際、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は謎の頭痛がしたとかで全力で辞退。
 止む無くイェルズ・オイマト(kz0143)が対応に当たった。
「……ハイ? 今なんて???」
「だから、あたし達にも青木を殴らせろって言ってんのさ」
 自前のソファにだらしなく座ったまま言うトーチカにイェルズは目をぱちくりさせる。
「えっと。俺の認識に間違いなければ同士討ちするって言ってますよね。青木は仲間じゃないんです……?」
「違うでおます! わい達は姐さんの仲間でおます!」
「ちょっとセルトポ、それじゃ意味が通じないでしょぉ。あたくし達は、ビックマー様の忠実な部下なのよぉ。この間ハンター達にね、ビックマー様を倒したのは青木だって聞いてねぇ。それから姐さん、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームなのよー」
「……ハイ? 今なんて???」
 デブのモグラとノッポのモグラの説明にあんぐりと口を開けるイェルズ。
 トーチカは煙管から煙を吐き出しながら続ける。
「だ・か・ら! 青木はビックマー様を倒した憎き仇で、あたし達にとっても敵なんだよ! ……あんた達、青木を殴りに行くんだろ? そこに便乗させろって言ってんの」
「それは解りましたけど、本当にいいんですか?」
「良いに決まってんだろ!? ……ビックマー様はね。何の取り得もなかったあたしに、第二の人生を与えてくれたんだ。一矢報いなきゃ女が廃るってもんだろ」
「きゃあああ! 流石姐さん、素敵ィ!!」
「うおおおん! カッコいいでおますーーー! 感動したでおますーーーー!」
 ビシィ! と決めたトーチカに黄色い悲鳴を上げるモルッキー。その横で、滂沱の涙を流すセルトポにイェルズは死んだ魚のような目になる。
 トーチカ達が一緒だなんて面倒なことになるのは解り切っていたが――悲しいかな、この若い補佐役は歪虚達を体よく追い払うような交渉テクニックは持ち合わせていない。
 否、それがあったところでこのポンコツ達に通じるかどうかは別問題な訳だけれども。
 イェルズはため息をつくと、話をまとめにかかる。
「……では、俺達とトーチカ一味は一時停戦。青髯を討伐するまでの同盟、ということで良いですね?」
「青髯って誰さ」
「獣の姿になった青木のことですよ」
「は? 何あいつ。元人間のくせに変身までしたの? 魔法少女かっての」
 吐き捨てるように言うトーチカに、頭を抱えるイェルズ。
 ……敵がどういう状態かも分からないまま喧嘩を売るつもりだったのか?
 イェルズはもう、考えるのを放棄した。
「同盟の証として、ハンターを数名同行させて下さい」
「あら。戦力が増えるなら歓迎よォ。ねえ姐さん?」
「そうさね。難しいことはモルッキーに任せるよ」
「決まりですね。それじゃ、短い間ですが宜しくお願いします」
 がっちりと握手を交わすイェルズとモルッキー。
 ――かくして、つかの間の停戦と共闘協定が結ばれることとなった。


●仇討のヴォイドレディ
 ナナミ川にほど近い平地地帯。
 青髯の進軍ルートとされているこの場所で、やたらと張り切っているトーチカ一味を、ハンター達はげんなりとした様子で見つめていた。
「……誰だよ。あいつら呼んだの」
「呼ぶ訳ないじゃない! あいつらの方から共闘持ち掛けて来たらしいのよ」
「えええ。許可しちゃって大丈夫なんですか……!?」
 ひそひそと話し合うハンター達。
 ……彼らと関わるとロクな目に遭わない。
 出来ることならスルーしたい……。が、共闘することになってしまってはそう言う訳にもいかない。
 というか、そもそもイェルズがハンター達に依頼したのは、共闘もそうだったが、トーチカ一味を監視する意味合いもあった。
「……万が一の時はアレしていいんだよな?」
「ええ。許可貰ってます」
 剣呑な目をしてフフフフと笑うハンター達。
 それに気づく様子もなく、トーチカ達は盛り上がっていた。
「さあ! 青木をギッタンギッタンにしてやるよ! モルッキー、この間のメカビックマーお出しな」
「あらやだ姐さん、忘れちゃったのぉ? メカビックマーはこの間爆発しちゃったじゃない」
「残ってるのは部品だけでおますー」
 腕を突き上げながら言うトーチカに応えるモルッキー。
 そう言って、セルトポがバラバラになった機体のパーツを広げる。
「回収できるものはしたけど、さすがにここから組み直すのは無理があるわねぇ」
「何だ。そんなことかい? 足りないものは補えばいいのさ」
 ため息をつくモルッキーに、ぱちんと指を鳴らすトーチカ。
 あれよあれよといううちにペパットゴーレムを生み出し……メカビックマーのパーツを抱えたゴーレム達は、組体操よろしくお互いの身体を昇り、かみ合わせる。
 それはどんどん形を成して行き……2足歩行の巨大な泥人形が誕生した。
「うおー! 姐さんすごいでおます! あっという間に巨大なメカを作り上げちゃったでおます」
「あらー! なかなかいいじゃなーい! ……でもあたくし達乗れないわね」
「細かいこと気にするんじゃないよ! さ、これでぶっ叩くよ! あんた達も気合入れな!」
「「アイアイサッサー!!」」
 トーチカの号令にビシッと敬礼するモグラ達。
 ハンター達の目から光が消える。
「何だアレ」
「ちょっとぐらぐらしてるんだけど大丈夫なの?」
「寄せ集めですもん、大丈夫な訳がないと思うんですけど……!」

 ――そして。青髯と対峙する機会はまもなく訪れた。
「ちょっ。何だいこの黒い狼! これじゃ青木が叩けないじゃないのさ!」
「青髯の周囲にはこれが無限に沸くって言われてたでしょう!?」
「もうやだー!」
 トーチカの叫びに吠えるハンター達。

 しかしこうなってしまった以上は、何とかするしかない……!
 それでは! 無限モグラ叩……じゃない。黒狼叩き、はーじまーるよー!

リプレイ本文

 神代 誠一(ka2086)は慄いた。
 女性については人並に理解しているつもりだったが、その認識は誤りだったのではと思い始めた。
 誠一は善良な男子である。
 親友と仲が良すぎてちょっと関係性を疑われる事はあったが基本は善良である。ちなみにそういう嗜好もない。
 歪虚を斃し、人々を救い真面目なハンターとして暮らして来た。
 今回は歪虚と共闘になるという珍しい状況に、至って真面目に色々と策を講じて臨んだ。
 そのお陰か、現状上手く行っている。否、その表現はちょっと違うか――。
「女性陣からこう……何というのかな。鬼気迫るものを感じますよね……」
「ハンターっすよ? 歪虚より怖いに決まってるじゃないすか」
「私は異見する。一緒にしないで欲しい」
 あけすけな意見を述べる神楽(ka2032)と雨を告げる鳥(ka6258)に疲れた目線を向ける誠一。

 ……彼らの前には、モグラ達を追いかけ回すネフィリア・レインフォード(ka0444)と、扇をひらひらさせながらトーチカに絶対零度の目線を送る蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)。ぐらぐらしているメガツチ・ビックマーを今にもしばき倒しそうなクレール・ディンセルフ(ka0586)の姿があった。

 まず、何があったか説明せねばなるまい!
 今回ハンターに共闘を持ち掛けたトーチカ一味は、戦う相手の情報を綺麗さっぱり、潔い程に何も知らなかった。
 まあ教えたところで低知能共が覚えていられるかというと大分怪しい訳なのだが。
 そんな状態で襲い来る黒狼にハンター達が止める間もなく突っ込んで行き……鬼火を食らい、見事に混乱状態に陥ったのだ。
 で、司令塔を失ったメガツチ・ビックマーのぐらぐらっぷりが増したという訳だ。
 いやあ! 哀しい連鎖ですね!
「やっぱりこうなったっすね!」
「予想はしてても実現して欲しくないのだあああ! もぐらのおじさん落ち着くのだあああ!」
 イイ笑顔で言う神楽に叫ぶネフィリア。奇妙な笑い声をあげながら走り回るモルッキーとセルトポ。
 セルトポは脳筋ゆえ、走り回ってはいるものの黒狼をボコボコと殴り倒しているのであまり実害はない。
 むしろ続けてくれていい感じなのだが……問題はモルッキーである。
 時々立ち止まってはジャンプをし、変なモノをボトボトと落としていく。
 落ちているもの見るに機械のパーツにしか見えないが、これが『ビックリドッキリアイテム★』だったりした日にはうっかり発動したりすれば大惨事だ。
 それを本人に確認しようにも、モルッキーは混乱の最中である。
 ああもう。面倒くさい……!
 黒狼は白巫女である雨を告げる鳥に面白いように釣られており、彼女が上手いことモルッキー達から距離を置くように誘導している。
 集まる黒狼は誠一と神楽が今のところ対応してくれているが、トーチカ一味を止める為に人手を割かれる状況はあまり宜しくはない。
 ネフィリアは意を決すると、持っていた帯をビシィっと構えた。
「予定変更なのだ! これでもぐらのおじさんの動き封じるのだ!」
「うむ。構わぬ。遠慮なくやるがよいぞ」
「ギャアアアア! ヤバイ! 倒れそう!」
 彼女の声に頷く蜜鈴。耳に届くクレールの悲鳴が状況を告げている。
 ――ふむ。これは可及的速やかにトーチカを正気に戻さねばいかんのう。
 呟く蜜鈴。ぐっと扇を握り締めると、そのままバチコーーーン! とトーチカの横っ面を張り倒した。
「今、すごくいい音しませんでした!?」
「ハニーの可愛い顔に傷がつくとアレなんでお手柔らかにお願いしたいっす!」
「私は思う。あれはあの程度で傷つくようなタマではない」
 三人三様の反応を返す誠一と神楽、雨を告げる鳥。2回転半して倒れ込んだトーチカは頬を押さえて、殴った主をキッと睨み付けた。
「いっだーーー!? 嫁入り前の身体に何するんだい!?」
「なに、喝を入れたまでじゃ」
「今回は共闘するって話だったじゃないのさ!」
「混乱を治してやったというにその物言いかえ。仕置きは不要かと思ったが……残念じゃのう」
 冷たい笑みを浮かべてパチリと扇を鳴らす蜜鈴。その音にビクッ! としたトーチカは思わずその場に正座する。
 低知能だが、身体に叩き込まれた事は覚えているらしい。
 その間も黒狼に対処し続ける仲間達。クレールは、グラグラし続けるメガツチ・ビックマーの足を粉砕してやろうかなんて考え始めていた。
「ビックマー!! ステイ! おすわり! ちゃんと地面にお尻つけて!」
 ちょっと待ってクレールさん。それって犬へのしつけでは……?
「クマも犬も似たようなもんでしょ!!? っていうかトーチカ早くこれ何とかして!」
「煩いよまな板娘。何させたいのさ」
「誰がまな板か! 黙れ松明BBA!! いいからこの子早く座らせて!! ぶつよ!!」
「松明って言うんじゃないよ! それが人にモノを頼む態度かい!?」
「うるさいバーカ!」
「何だってええええ!?」
「……トーチカや」
 パチリ。
 ビクゥ!
 蜜鈴の扇の音に反応して大人しくなるトーチカ。
 誠一はこれによく似たモノを知っている。そう、クリッカーで躾けられる犬だ……!
「パッシブ混乱持ちの相手には躾が効くんですね……」
「俺のハニーは犬じゃないっすよ」
「私は思う。お前達まで混乱してどうする」
 深く考える事を放棄した誠一。ズレた返答をする神楽に雨を告げる鳥のツッコミが冴える。
 彼らの何がすごいって、こんな緊張感の欠片もない会話しながらも攻撃の手は一切緩めていない事である。
 一方のモルッキーといえば、ネフィリアによって帯で簀巻きにされてようやっと正気に返った。
「あらぁーん。ちょっと何かしらこれぇ。かわいこちゃんによる緊縛プレイかしらぁ」
「もぐらのおじさんが妙なパーツばら撒いたから仕方のない措置なのだ! 変な表現しないで欲しいのだ!!」
「ンッフフフ。いいのよぉ、照れなくても~」
 簀巻き状態でクネクネするモルッキー。
 ネフィリアはモルッキー認定可愛い子なので、ハッキリ言ってこの状況はご褒美でしかない。
 蜜鈴は再び扇を握り締めると、そのままバチコーーーン! とモルッキーの横っ面を(以下略)。
「いったああい! 何するのよぉ!」
「ん? まだ混乱から覚めておらなんだかと思ってのう?」
「これ残念ながら素だと思うのだ」
「……よし。もうアレしよう?」
 呟きつつ謎のパーツを回収したネフィリアに凄惨な笑みを浮かべるクレール。
 躾……いやいや、精神ダメージから立ち直ったトーチカがハンター達を見る。
「で、メガツチ・ビックマーを座らせたら攻撃しにくくなるけどいいのかい?」
「いいの! 盾に使うから! 勢いよく座ったら絶対倒れるからゆっくりやってよ!」
「注文が多いねえ……」
「そんなに難しい事言ってないでしょうが! さっさとやる!!」
 ガチギレ寸前のクレールに渋々従うトーチカ。
 メガツチ・ビックマーはよたよたしつつも、何とかしゃがみ込む。寄せ集めだけあって座った拍子に一部が崩れたが、まあ許容範囲だろう。
 ここに来てようやくセルトポ以外の歪虚達が落ち着き、雨を告げる鳥はため息をつく。
「私は問う。トーチカ・J・ラロッカ。ペパットゴーレムは作れるか? 1、2体ほど護衛に欲しい」
「ん? そんなの朝飯前だよ」
 彼女の声に応え、パチンと指を鳴らすトーチカ。むくむくと小さな土のゴーレムが現れ、雨を告げる鳥の周囲に集まる。
 想定していたより多く出て来たそれに、彼女は頬を緩ませた。
「私は礼を言う。ありがとう、貴方たちはまさしく切り札となり得る存在だ。頼りにさせてもらおう」
「そうだろー? あたしはこう見えて強いからね!」
「こいつ褒めちゃダメなのだ! すぐ調子に乗るのだ!」
 礼を言われて速攻天狗になるトーチカ。ネフィリアの叫びに完全同意しつつ、誠一は戦況を分析する。
 メガツチ・ビックマーはおすわりしている為、大分揺れが収まったしこのまま盾として使える。
 そして集中砲火されやすい雨を告げる鳥への新たな防御対策が出来た。
 自分達はその分攻撃に専念できる訳で……これはなかなかにいい配置かもしれない。
「……正直小さいゴーレム沢山出してもらった方が役に立つのに、何で彼女メガツチ・ビックマー作ったんですかね」
「一発逆転狙って失敗するのがハニーのいいところっすから」
 棒手裏剣を投擲しながらぼそりと呟く誠一。神楽も雷撃を放ちながらハハハと笑う。
 それっていいところって言わないし。全然フォローになってないし。
 こうしている間も増え続ける黒狼。次々と押し寄せるそれにツッコミを入れる暇もなく、クレールが叫ぶ。
「セルトポはあのまま放置! モルッキーはメガツチ・ビックマーの近くに転がしておいて!」
「アヒャヒャヒャヒャでおます~!」
「ちょっとぉ! 緊縛の次は放置プレイなわけ~?」
 聞こえて来たセルトポの怪しげな笑い声とモルッキーの緊張感のない声にブチ切れそうになるのをぐっとこらえたクレール。
 そのままトーチカに向き直る。
「松明BBA! あんたはゴーレムどんどん生み出して!」
「はぁ!? 何だい!? 歪虚遣いが荒いね!」
「いいからやる! 戦いは数だよ兄貴!」
「誰が兄貴だよ!」
「……トーチカや」
 パチリ。
 ビクゥ!
 本日何度目かのやり取り。敏腕ブリーダー……(げふんごふん)もとい蜜鈴さんのお陰で、トーチカの制御はばっちりだ! やったね!!
「……私は宣言する。これより総攻撃を開始する!」
 前方にメガツチ・ビックマー、四方をパペットゴーレムで固めた雨を告げる鳥。
 彼女の声に、神楽が強く頷く。
「了解っす! 俺とハニーのラブラブパワーを見せてやるっす!」
「ところで一つ確認なんですけど。さっきから神楽さんが言ってるハニーって誰の事です?」
「えっ。トーチカに決まってるっすよ。やだなー」
「えぇ。趣味わr……」
 ドヤ顔の神楽。げふんげふんと咳払いをする誠一。
 蓼食う虫も好き好き。ヒトの趣味はとやかく言うのは野暮というものだ。
 そんな会話をしている間に、雨を告げる鳥から放たれる白龍の息吹。
 それは黒狼の群れに吸い込まれ……行動混乱を来した個体がいるらしい。黒狼の動きが乱れ、騒然となる。
「雨を告げる鳥さん、ナイスなのだー! よーし! 一気に数を減らしていくよー♪ 僕に近づく人は注意、なのだ♪」
 駆け出すネフィリア。大回転し、槍で周囲を一気に薙ぎ払う。
「私も行きます!」
「うむ。討ち漏らしは任せておくがよいぞ」
 赤い竜の紋章から出でる光の刃で敵を纏めて片づけて行くクレール。
 蜜鈴の5本の光の矢が、仲間達の範囲攻撃から運よく逃れた敵を霧散させていく。
 こうなると、戦況はほぼ一方的だった。
 雨を告げる鳥に一直線に向かう黒狼を、ひたすら薙ぎ払えば済むからだ。
 唯一の何点は倒しても倒しても沸いて来るという事。
 長引く戦闘に、じわじわとハンター達も消耗し始めていた。
「あひゃひゃひゃでおますー!」
「ちょっと姐さぁん! セルトポがボロボロよお」
「もうちょっと我慢おし! ったく、この妙な狼はいつまで続くんだい!?」
「うおー。そろそろスキル切れるっす!」
「こっちもあと2回が限度なのだー!」
 聞こえて来るトーチカ一味の声。神楽とネフィリアの報告に、誠一が後方の――青髯と戦っている本隊の方角を見つめる。
「……多分、あともう少しで片がつく、かな。……レイン! まだ行けるかい?!」
「私は告げる。問題ない。最後まで耐えてみせようぞ」
「さっすがレインさん! 私もちょっと女見せ……」
「ちょっと待て。デカブツが倒れそうじゃぞ」
 涼やかに言う雨を告げる鳥。クレールの叫びを遮る蜜鈴の声に、仲間達から緊張が走る。
 これまで黒狼のダメージを食らい続けていたからか、ゴーレムは大分損傷していて……グラグラしていたそれは、雨を告げる鳥の方へと倒れかけて――。
「させるかああああ!」
 飛び出すクレール。武器を巨大化させ、陽掴飛びで回り込み……。
「いっけえええ! ホーーームラン!!」
 カキーーーーン☆
 巨大剣をフルスイングした彼女。それはメガツチ・ビックマーの頭部を直撃し、黒狼と簀巻きにされたモルッキーの方へ崩れるように倒れ込んだ。
 響き渡るモルッキーの悲鳴。
 メガツチ・ビックマーが消滅してまもなく――ハンター達の周りを取り囲んでいた黒狼はスゥッと、音もなく消えて行った。
「おっ。やったっす! 俺達の勝利っすね!」
「……そのようじゃな」
 指を鳴らして喜ぶ神楽。蜜鈴は開拓地ホープの方を見てため息をつく。
 ――これで、眠り続ける友へ良い報告が出来るだろうか。
 そこに、トーチカの悲鳴が聞こえて来た。
「あたしのメガツチ・ビックマーがああああ!!」
「まあまあ。破壊と創造は隣り合わせですよ」
 何とかうまい事言い包めようとする誠一。
 その後方では、ボロ雑巾のようになったセルトポが地面に伏していた。
「身体が痛いでおます……! わいは今まで何をしてたでおますか……?」
「今までずっと混乱しながら戦ってたのだ」
「ちょっとお! 死ぬかと思ったじゃないのお!」
「ごめん。手が滑った」
 セルトポとモルッキーを助け起こすネフィリアとクレール。
 そこにすっと、雨を告げる鳥が歩み出た。
「私は希望する。お前達とはブラッドリーと決着を付けるまでは引き続き協力関係を築いておきたい。どうだ?」
「何でさ。あたし達はビックマー様の仇討ちをするまでって話だったろ」
「私は告げる。……ブラッドリーは、怠惰王の撃破の裏で手を引いていた。お前の仇と通じる」
「何だって……? ……そういう事なら、協力はともかく邪魔はしないでおいてあげるよ」
「私は感謝する。ありがとう、トーチカ・J・ラロッカ」
「……とかなんとか言って忘れて茶々入れて来ないでよね」
「あんたは一言多いね! まな板娘」
 憮然としているトーチカに頭を下げる雨を告げる鳥。そのまま睨み合いを始めたクレールとトーチカに向けて、蜜鈴はにっこりと笑みを向けた。
「……トーチカや」
 パチリ。
 ビクゥ!
 既にお約束と化しているやり取りを気にする様子もなく、神楽は白い歯を輝かせてトーチカに歩み寄る。
「やっぱりハニーはいい女で可愛いっすね! 折角一仕事終わったっすし、どっか遊びに行かないっすか?」
「何言ってんだい。協力するのは今回だけだって言ってるだろ? そもそも、あんたに結婚してって言ったのは勢いだからね!?」
「明日敵になるにしても今日は味方っす。なら明日思い出す為にも今日を楽しむべきっす!」
 めげない神楽に、トーチカは頬を染めつつため息をついた。


 ドタバタとしつつも、こうしてひとつの戦いを終えた。
 トーチカ一味との付き合い方は考えてゆかなくてはならないが……今回はひとまず見逃して、帰っていく一味の背を見送ったハンター達だった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥ka6258

重体一覧

参加者一覧

  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 明日も元気に!
    クレール・ディンセルフ(ka0586
    人間(紅)|23才|女性|機導師
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥(ka6258
    エルフ|14才|女性|魔術師

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依頼相談掲示板
アイコン 相談なのだー♪
ネフィリア・レインフォード(ka0444
エルフ|14才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/05/15 01:03:51
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/05/11 02:41:53