ゲスト
(ka0000)
崩れていく均衡
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/06/13 15:00
- 完成日
- 2019/06/20 06:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ドワーフ工房で療養していたテトは身体の傷も治り、少しずつ動いては俊敏さを取り戻していた。
中庭で筋肉を伸ばして柔軟性を確認する。両足をついた状態で腕を振ってタイミングを取ってつま先で地を蹴って勢いよく後方に跳躍する。
くるりと後方転回に成功したテトはハイネックの襟首を引っ張る。
ドワーフ工房と縁が出来てから、テトは帝国や同盟の服装をするようになっていた。
何かと潜入任務を今でもやっているため、辺境の民族衣装では何かと目立ってしまうことがあるので、ドワーフ工房の女性技師に服を借りていたりしている。
「うごきやすいんにゃけど、首元に余裕がない服はまだ苦手だにゃぁ……」
ドワーフ工房のメンバーが持ち寄る服も素敵だが、とっかえひっかえされるのは御免だ。
「流石、猫が祖霊なだけあるな」
上から降ってくる声にテトは顔を向ける。
太陽の光を受けたフェアブロンドの髪が煌き、蒼い双眸を細めて笑んでいる美青年……工房管理官にして、要塞管理補佐官、アルフェッカ・ユヴェーレンが二階廊下の窓から顔を覗かせていた。
「とーぜんですにゃぁ」
えっへん、と胸を張るテトにアルフェッカは「タットルの報告があるから上がっておいで」と促す。
アルフェッカの執務室にいるのはテトとアルフェッカ。
他のメンバーは時間が取れなかったという。
「前の捕縛の時、あの場にいたタットルの団員は全て捕縛で来た。だが、その場にいなかった盗賊もいたという」
「元から離れて行動していた団員……ってことですにゃんね」
テトが呟くと、アルフェッカは頷く。
「とはいえ、数人程度で、また元の勢力に戻せるほどの人材はいないって。タットルだって、元はただの盗賊。それが盗品や誘拐した人間を売りさばく闇商売なんかしだしたのはアケルナルのおかげなんだってさ」
「へー」
感嘆の声をあげるテトは素直に驚いている。
「そういや、フォニケはこのままドワーフ工房にいるんですかにゃ?」
「この職が好きなんだって。そもそも、カペラちゃんが有能な技師を手放すわけ行かないでしょ」
「てっきり、貰っていくのかと思ってましたにゃ」
「分かって貰えてないのにか?」
「まぁ、頑張れですにゃ」
死んだ目をする二人はタットルの話を終わらせた。
部屋を出ようとするテトにアルフェッカが声をかける。
「ファリフちゃんが心配していたよ」
「にゃ?」
きょとんとするテトは「腕っぷしは残念ですにゃけど、もう大丈夫ですにゃ」と返えしてドアを閉めた。
テトはブーツを履いていても靴音があまり聞こえない歩き方をする。
少し合間を空けてアルフェッカはため息を吐く。
「立ち向かえることができるようになった時が一番足元が危ないんだよ」
そう告げなくてはならない人物はもう建物内にはいなかった。
●
ドワーフ工房の建物から出たテトは要塞都市内のマルシェへ向かうべく、門の方へとあるいていた。
ふと、足を止めたテトは門の近くにいる子供に気づく。
身なりが良くなく、顔も薄汚れている。
要塞都市はいくつかの区域が存在しており、おそらく目の前の子供はあまり治安のいい所にいると思えない子供だろう。
「ここの人に用ですかにゃ?」
人懐っこく笑いかけるテトに子供は握り締めた紙をテトに突き出す。
「ここの人に渡せと言われましたかにゃ?」
受け取るテトが尋ねると、子供は何も言わずに走っていった。
周囲を確認するテトは監視の気配を探ったが、それはない。
まぁいいかと思ったテトはそのまま手紙を広げ、二回読む。
かっくり、と肩を落としてテトは翌日一人で出発した。
テトが向かったのは要塞都市郊外の町にこれといった名前はないという。
盗賊やコソ泥、殺し屋、人攫い、闇商売……真っ当と言えない商売をやっている者達の巣窟。
弱いものは暴力に曝される。
この町で幅を利かせていた盗賊団タットルが壊滅状態となり、町はある派閥が出来てたという。
町に経済貢献したタットルを捕縛させた部族なき部族へ報復を考える一派。
「にゃんで、逆恨みされるのですかにゃぁ……」
そう言ったテトは身なりも隠さず、町の元締めにぼやく。
「金払いがいい連中だったからなぁ」
カラカラ笑う元締めにテトは思いっきり嫌そうなため息を吐く。
「そもそも、タットルを排除したがっていたのは元締めですにゃし、恨まれる事はないですにゃ。そ、れ、に! にゃんで今更二十年も前の話をテトに押し付けるんですにゃー!?」
にゃーにゃー怒るテトに元締めは「そうなんだよなぁ」と頷く。
事の発端は先月に盗賊団タットルとアクベンスの捕縛と討伐がされたあと、町でも衝撃があったようだ。
反応は様々。
タットルを疎んじていた連中は喜び、恩恵を受けてたものは落胆し、次は自分が捕らわれるのではと怯えるもの。
そんな中、元締めにタットルに頼んでいたものを納品しろとクレームが入った。
しかも、二十年前の。
「二十年前にアケルナルがそれを蹴ってから、そいつ等とタットルが険悪になってなぁ」
「にゃんで、蹴らなかったんですかにゃ?」
テトの問いに何かと便宜を図ってもらっていると元締めが返す。
「タットルの居場所の情報提供はそこだったんだよ」
元締めの言葉にテトは黙る。タットルを追っていた頃、奴らの拠点を見張っていた仲間が殺された後、テトは隠れて元締めに情報を提供してもらっていた。
元締めは金銭での報酬ではなく、今後の頼まれごとを一つ頼まれてくれとテトに言っていた。
今回の呼び出しにテトが応じたのは貰った情報の『支払い』の為。
「納品の内容ってなんだったんですかにゃ?」
諦めを含んだテトが問う。
「ウルサマヨルの識者の娘」
その言葉にテトは金色の目を細める。
当人をテトは知っている。ドワーフ工房の女技師、フォニケのことだ。
「そいつの名は?」
警戒した様子を見せるテト。
「シス。ティアランという集団を纏める女ボス。年齢は七十を越えているババアだが……知らんのか」
「そういう連中に詳しくないにゃ」
否定するテトの様子を元締めは「まじかー…」と見つめる。
「随分昔の噂でな、シバの愛人だったって話だ」
悪戯っぽく笑いながら言う元締めと打って変わってテトの顔は死んだ目。
「あのジジィ……まさか……」
頭を抱えるテトに元締めは笑っていた。
「とりあえず、シスに会うにはチェトという飾りが必要だ。それがなかったら会えないからなー」
「りょーかいですにゃー」
貰える店の場所を教えて貰い、テトは元締めと別れた。
夕方、テトが部族なき部族を悪く思う一派と口論していたという目撃情報があり、その翌朝、一派のリーダー格の死体が見つかる。
その後、テトの行方は知られていない。
中庭で筋肉を伸ばして柔軟性を確認する。両足をついた状態で腕を振ってタイミングを取ってつま先で地を蹴って勢いよく後方に跳躍する。
くるりと後方転回に成功したテトはハイネックの襟首を引っ張る。
ドワーフ工房と縁が出来てから、テトは帝国や同盟の服装をするようになっていた。
何かと潜入任務を今でもやっているため、辺境の民族衣装では何かと目立ってしまうことがあるので、ドワーフ工房の女性技師に服を借りていたりしている。
「うごきやすいんにゃけど、首元に余裕がない服はまだ苦手だにゃぁ……」
ドワーフ工房のメンバーが持ち寄る服も素敵だが、とっかえひっかえされるのは御免だ。
「流石、猫が祖霊なだけあるな」
上から降ってくる声にテトは顔を向ける。
太陽の光を受けたフェアブロンドの髪が煌き、蒼い双眸を細めて笑んでいる美青年……工房管理官にして、要塞管理補佐官、アルフェッカ・ユヴェーレンが二階廊下の窓から顔を覗かせていた。
「とーぜんですにゃぁ」
えっへん、と胸を張るテトにアルフェッカは「タットルの報告があるから上がっておいで」と促す。
アルフェッカの執務室にいるのはテトとアルフェッカ。
他のメンバーは時間が取れなかったという。
「前の捕縛の時、あの場にいたタットルの団員は全て捕縛で来た。だが、その場にいなかった盗賊もいたという」
「元から離れて行動していた団員……ってことですにゃんね」
テトが呟くと、アルフェッカは頷く。
「とはいえ、数人程度で、また元の勢力に戻せるほどの人材はいないって。タットルだって、元はただの盗賊。それが盗品や誘拐した人間を売りさばく闇商売なんかしだしたのはアケルナルのおかげなんだってさ」
「へー」
感嘆の声をあげるテトは素直に驚いている。
「そういや、フォニケはこのままドワーフ工房にいるんですかにゃ?」
「この職が好きなんだって。そもそも、カペラちゃんが有能な技師を手放すわけ行かないでしょ」
「てっきり、貰っていくのかと思ってましたにゃ」
「分かって貰えてないのにか?」
「まぁ、頑張れですにゃ」
死んだ目をする二人はタットルの話を終わらせた。
部屋を出ようとするテトにアルフェッカが声をかける。
「ファリフちゃんが心配していたよ」
「にゃ?」
きょとんとするテトは「腕っぷしは残念ですにゃけど、もう大丈夫ですにゃ」と返えしてドアを閉めた。
テトはブーツを履いていても靴音があまり聞こえない歩き方をする。
少し合間を空けてアルフェッカはため息を吐く。
「立ち向かえることができるようになった時が一番足元が危ないんだよ」
そう告げなくてはならない人物はもう建物内にはいなかった。
●
ドワーフ工房の建物から出たテトは要塞都市内のマルシェへ向かうべく、門の方へとあるいていた。
ふと、足を止めたテトは門の近くにいる子供に気づく。
身なりが良くなく、顔も薄汚れている。
要塞都市はいくつかの区域が存在しており、おそらく目の前の子供はあまり治安のいい所にいると思えない子供だろう。
「ここの人に用ですかにゃ?」
人懐っこく笑いかけるテトに子供は握り締めた紙をテトに突き出す。
「ここの人に渡せと言われましたかにゃ?」
受け取るテトが尋ねると、子供は何も言わずに走っていった。
周囲を確認するテトは監視の気配を探ったが、それはない。
まぁいいかと思ったテトはそのまま手紙を広げ、二回読む。
かっくり、と肩を落としてテトは翌日一人で出発した。
テトが向かったのは要塞都市郊外の町にこれといった名前はないという。
盗賊やコソ泥、殺し屋、人攫い、闇商売……真っ当と言えない商売をやっている者達の巣窟。
弱いものは暴力に曝される。
この町で幅を利かせていた盗賊団タットルが壊滅状態となり、町はある派閥が出来てたという。
町に経済貢献したタットルを捕縛させた部族なき部族へ報復を考える一派。
「にゃんで、逆恨みされるのですかにゃぁ……」
そう言ったテトは身なりも隠さず、町の元締めにぼやく。
「金払いがいい連中だったからなぁ」
カラカラ笑う元締めにテトは思いっきり嫌そうなため息を吐く。
「そもそも、タットルを排除したがっていたのは元締めですにゃし、恨まれる事はないですにゃ。そ、れ、に! にゃんで今更二十年も前の話をテトに押し付けるんですにゃー!?」
にゃーにゃー怒るテトに元締めは「そうなんだよなぁ」と頷く。
事の発端は先月に盗賊団タットルとアクベンスの捕縛と討伐がされたあと、町でも衝撃があったようだ。
反応は様々。
タットルを疎んじていた連中は喜び、恩恵を受けてたものは落胆し、次は自分が捕らわれるのではと怯えるもの。
そんな中、元締めにタットルに頼んでいたものを納品しろとクレームが入った。
しかも、二十年前の。
「二十年前にアケルナルがそれを蹴ってから、そいつ等とタットルが険悪になってなぁ」
「にゃんで、蹴らなかったんですかにゃ?」
テトの問いに何かと便宜を図ってもらっていると元締めが返す。
「タットルの居場所の情報提供はそこだったんだよ」
元締めの言葉にテトは黙る。タットルを追っていた頃、奴らの拠点を見張っていた仲間が殺された後、テトは隠れて元締めに情報を提供してもらっていた。
元締めは金銭での報酬ではなく、今後の頼まれごとを一つ頼まれてくれとテトに言っていた。
今回の呼び出しにテトが応じたのは貰った情報の『支払い』の為。
「納品の内容ってなんだったんですかにゃ?」
諦めを含んだテトが問う。
「ウルサマヨルの識者の娘」
その言葉にテトは金色の目を細める。
当人をテトは知っている。ドワーフ工房の女技師、フォニケのことだ。
「そいつの名は?」
警戒した様子を見せるテト。
「シス。ティアランという集団を纏める女ボス。年齢は七十を越えているババアだが……知らんのか」
「そういう連中に詳しくないにゃ」
否定するテトの様子を元締めは「まじかー…」と見つめる。
「随分昔の噂でな、シバの愛人だったって話だ」
悪戯っぽく笑いながら言う元締めと打って変わってテトの顔は死んだ目。
「あのジジィ……まさか……」
頭を抱えるテトに元締めは笑っていた。
「とりあえず、シスに会うにはチェトという飾りが必要だ。それがなかったら会えないからなー」
「りょーかいですにゃー」
貰える店の場所を教えて貰い、テトは元締めと別れた。
夕方、テトが部族なき部族を悪く思う一派と口論していたという目撃情報があり、その翌朝、一派のリーダー格の死体が見つかる。
その後、テトの行方は知られていない。
リプレイ本文
ハンターオフィスでは部族なき部族のメンバーであるルックスが依頼に応じたハンターを出迎えてくれた。
「テトの奴、無茶したのか」
呆れた表情を見せていたのはオウガ(ka2124)。自分にまでそう言われるなんて……と言いたいように。
「お肉の精霊さんをよこせってホントです!?」
勢いよく飛び込んできたのはディーナ・フェルミ(ka5843)。
「う、うん」
心なしか怖気づいてしまうルックスはこくこく頷く。
「フォニケさんを渡さないように守るのー!」
ディーナは怒りが頂点に達したのか、両手を上に突き上げて宣言する。
「水臭いわねー、一人で行くことないじゃない」
唇を尖らせているアイラ(ka3941)だが、テトの事が心配で仕方ない様子。柳眉を下げて憂う木綿花(ka6927)も心配している。
「ですが、連絡が取れないのも心配ですね」
サクラ・エルフリード(ka2598)の言葉にルックスは頷く。
「テトが口論していたって情報は間違いないって。猫耳を付けた黒髪の女の子がにゃーにゃー叫んで一人で複数相手に口論していたって」
一気にテトの確率が上がり、ハンター達は項垂れてしまう。
「テトちゃんはぁ、ただ対立したって理由で人を殺すような子じゃないですよぅ。部族の長として動く時だけ歯を食いしばって泣きながらでも刃を向けてきたんですよぉ」
凛然と告げたのは星野 ハナ(ka5852)。
今まで戦うことに怖れて逃げていたテトが立ち向かったのはいずれも部族の為。
ビスが部族なき部族を裏切り、仲間を殺した時も、タットルが仲間を殺した時も。仲間を守る為にテトの刃は在る。
「だから今回ぃ、相当まずい謀略に巻き込まれたのかなぁって思うんですよねぇ」
ハナの言葉は今回集まったハンターの総意とも言える。
テトと行動し、彼女を知っている者達ゆえにその想いがある。
「ありがとうございます」
ハンターの言葉に気遣いにルックスは改めて礼を告げた。
出発の前にドワーフ工房へ行きたいと木綿花が申し出ると、ルックスは快諾した。
ドワーフ工房へ行くと、フォニケとカペラ達が出迎える。
木綿花の提案にルックスの生気が失う。
「ルックス様は町の人に顔が知られておりますし、少しでも喧嘩の巻き込まれを阻止するべく、姿を変えたらと思います」
「女装ね!」
木綿花の提案にガタッとフォニケが立ち上がる。
「前はタットルのことで気が気でなかったけど、今回は後顧の憂いなく出来るってことね!」
まっかせてー! と、親指を立てて笑顔でフォニケが応じ、ルックスの返事そっちのけで連れ去られてしまう。
残ったオウガとアイラとサクラは熱いお茶を啜りつつ、美少女となるだろうルックスの出来上がりを待っていた。
出来上がったルックスは背中まである髪は横髪を残してハーフアップに結い上げられ、飾りで留められている。下ろしている部分はふんわりと巻いている。
「美少女ですね」
「想像を超えたわね」
「ま、似合ってるんだからいいんじゃねぇの」
真顔で感想を言うサクラとアイラをよそにオウガはルックスに同情しつつも町に行くことを促した。
町についたディーナ、ハナ、木綿花、ルックスは元締めの所に行った。
挨拶をする三人娘プラス女装されたルックスという組み合わせに元締めはコメントを控えた。
「シスってどんなババ……人なんですかー?」
周囲にいた元締めの手下だろう男達はで物怖じしないディーナにぎょっとしていたが、元締めは「言いたいことは分かる」という様子。
「なんで識者の娘を攫おうとしたの? もし元締めに何となくでも予想があったら教えてほしいの」
元締めは周囲の部下に目くばせをすると、彼らは周囲に人を通行させないように通せんぼをした。
「あいつは呪いもどきをやる闇医者でな、変わった人間の噂を耳にしては人体実験にでもしてるって話だ。実際は聞きたくねぇ。何考えているか分かりたくねぇやつだ」
げんなりした様子の元締めにハンター達は「手を焼いているのか」と内心納得した。
「ただなぁ、物分かりだけはいい奴なんだ。当時、発注を蹴られた時は怒りはしたが、アケルナルが監禁したと言えば納得して引っ込んだんだ」
元締めは今回のシスの蒸し返しには納得いってないようだが、彼女に問いただしてはいなかったという。
「ふぅん、ティアランってなんなの? 盗賊団? 人身売買組織?」
いちいち怒っても仕方ないので、ディーナは更に言葉を進めていく。
「暗殺と傭兵稼業だ。仕事の先は辺境だけじゃない。昔はタットルにも人員を貸していたけど、今は殆ど交流はないと言われているが、あっちは一枚岩じゃねぇ」
「他にも支持される者がいる……と?」
そう問う木綿花に元締めは頷く。
元締め曰く、タットルはアケルナルが中心となってほぼ一枚岩。しかし、ティアランはそうでない。
「その人の名前は?」
茶の瞳を細めるハナ。
「タイフォンだ。シスの弟にあたる。シスは表に出てこないが、奴が実働部隊を牛耳ってる」
はっとなった元締めは何かを思い出したように身を乗り出す。
「シスの伝言伝えてきた奴、タイフォンの手下だったな」
いかなる者がテトを貶めたのかはわからないが、今はシスに会わねば話が進まらない。
●
オウガは部族なき部族を敵視している一派の下へと向かった。
少し距離を置いて行動しているのはアイラは別の場所を調査中。
状況は一触即発といってもいい状態だ。
自分達のボスを殺したと思われる人物に近しい者が姿を見せている。怒りがいつ爆発してもおかしくはない。
「ボスの死体を見せろ……だと!」
「決して、傷つけたりしない」
オウガの申し出に……というよりは、ボスの亡骸に触るというのが嫌な様子だった。
「俺はハンターだ。ボスの最期の言葉が聞ける。お前たちは聞きたくないか」
ボスの最期の言葉に一派は動揺している。
「本当か……」
「ああ」
どうしたのかと声をかけてやりたいが、今は許可が必要だ。
「俺は、俺達は今、真実が必要なんだ」
どうしてテトは人を殺したのか。
「わかった。ついてこい」
一人の男が了承すると、オウガを連れて町の外れへ向かっていった。
アイラはボスが倒れていたところを確認していた。
大量の血痕がまだ残っており、少し離れたところで血痕があったが跳ねたような、擦りつけたような痕だった。
それと、血を踏んだ足跡も見つけた。足跡は走り出したところで消えている。
「不自然……」
まるで、消えたかのような印象を受け、アイラはオウガの方へ気を配ると、彼とすれ違う。
「これからボスの墓に行く」
小さく小さく囁くオウガはアイラの方向を見ていなかったが、超聴覚を展開している彼女は確かに聞き取り取ることが出来た。
テトが口論になっていた場所を確認していたサクラは特に不審な所はなかったと判断し、部族なき部族を敵視する一派の方へと向かおうと思っていた。
周囲にサクラを監視するような気配というか、物凄く分かりやすい人影へ一直線に向かっていく。
ようやく人影……青年もサクラに気づかれたようで慌てて逃げようとするが、サクラは逃がす気はない。
現在、テトの手がかりは何もない。手がかりを掴みに行かなくてはならないのだ。
「先ほどから、こちらを見ていましたね。私もお話を聞きたいのです」
青年は足を止めて小刻みに震える。彼の首筋には鉄線の鋭い刃が光っていた。
「あの猫女と関わりのある連中がこの町をうろついているから見張れって言われたんだよ……ドワーフのハンターが俺たちがたむろしている所に来て、死体を触らせろとか言ってきやがって」
恐らくはオウガのことだろう。今、サクラと話しているのはその一派と判断した。
詳しい話はわからないとのことなので、サクラは青年に一派がいるところまで案内をしてもらうことにした。
道中、ディーナと木綿花、ルックスと合流をする。
町の外れに着いたオウガ達は埋まっているところを掘り返すところから始まった。
腐敗が始まっているが、オウガは祈りを捧げ、術を発動した。
一瞬広がる青白い煙、暗転、暗闇に一瞬見えるのは倒れているテト。
視界が回り、その先にいたのは老人と胸元の入墨。
驚きの声と共に途切れた。
オウガは見たことを告げ、入墨の形を地面の土に書く。
「そりゃ、チェトだろ」
「まて、ティアランの連中が殺したってことかよ」
オウガを置いてけぼりにして一派が揉め出す。
「ちょとまて! そいつらって、テトを呼び出した奴らだろ?」
何とか話に飛び込むオウガ。
「ああ……爺で入れ墨なんてアイツしかいねぇよ……!」
「けど、なんで……」
一派が揉める方向に話が転んでいく。
「そいつは誰なんだ!」
場を鎮める為、オウガが一喝する。
「……シスの弟のタイフォンだ……」
「ここで何が起きるんだよ……」
先ほどの勢いが消え、不安げに呟く彼らを見たオウガは肩越しに静かに崩れていくだろう町を見やる。
テトはそれに巻き込まれたと思った。
情報集めに歩いているアイラはとある酒場に入った。
酒場に入っている客たちは女だと色めきだったが、以前町でビスとトラブルを起こした連中の一人と気づいてそっと目を逸らす。
店主にアイラは「連れが消えたの」と返して酒を頼む為の金をテーブルに置く。
「そんなのよくあることだ」
グラスに酒を注いで差し出す。
「そのよくあることを有耶無耶にしたくないの」
差し出された金を受け取った店主はちらり……と店の外を見やる。
「今はタットルが捕まっちまって、色んな連中がここにきている」
「猫耳つけた女の子は?」
アイラの問いに店主は奥にいる男に目くばせをする。
言わんとしていることを理解したアイラは人差し指の上に硬貨を置き、親指で弾く。くるくると金貨が回り、奥にいる男の手の中に納まった。
「タットルにちょっかいかけていた奴の仲間なら、昨日サイを刺した短剣持ってて、捨てて逃げようとしたら、タイフォンとその手下に眠らされて連れてかれたってところしか見てねぇけど」
うそ……。
そう言いたかったアイラは言葉を詰まらせた。
「他の奴はサイと女がタイフォン達に担がれていたって言ってたぜ。夜だったから分からねぇけどよ」
更に情報を言った男にアイラはもう一枚硬貨を男に渡す。
オウガに会って、話を聞かなければならない。
同時刻、サクラと合流したディーナは部族なき部族を敵視する一派のもとにいた。
「戦闘の意志はありません。情報を頂きたいのです」
「そっちのボスが殺された時、一緒に居た人たちはどこにいたの? 起きた時、そこにボスはいたの? それなのに、テトが口論していただけで疑うの」
いつもののんびりとした口調ではなく、凛と問うディーナに男たちは威圧される。
「しかし、そうまでして彼女を疑うには理由があるのでは?」
サクラの問いかけに男たちはテトに何を言って口論となったのかを言い始めた。
「最初は脅してやろうとしていただけなんだ。アイツらがタットルを捕まえたから、この町もさびれて、日稼ぎの仕事も減ってよ……アイツの仲間を殺してやるとか言ったら、いきなり怒り出したんだよ」
リーダーが小柄な少女ならば、大した連中ではないと思ったのだろう。
「殴り合いになろうとした時、青白い煙が周囲に沸いたんだよ」
殆どが眠ったが、起きていた者もいて、その者は後ろから殴られた。
「テト様は諍いをするような方ではありません。仲間を傷つけられることに関しては怒ります」
肩を落とす木綿花にハンター達は頷く。
「皆、いたのね」
オウガと合流したアイラが仲間に声をかける。
元締めの店を離れ、木綿花達と別行動をとろうとしていたハナは元締めから信用できる宿はないかと尋ねたら、自分の店の上を使えと言ってくれた。
通信端末から仲間たちが教えてくれた情報を基にハナは占術を始めた。
まず、テト居場所。
この町にはいないのではないかというのが有力。
次に魔術師はいた。
シスの手下だが、それが二手に分かれている。
二手の方角を確認すると、片方はハルシの店、もう片方は別の方向。
最後にもう一つ。
魔術師とハルシの方向ではないシスの手下の居場所が同じ方向かを占う。
「同じ方向。確か、手下にタイフォンという奴が町で目撃されてますよねぇ……まずは、ハルシの立ち位置を把握しましょうかぁ」
そう呟いたハナは立ち上がって店を後にした。
シスと会う為の飾りであるチェトをもらい受ける為、ハナとサクラは合流してハルシの店を訪れる。
店では胡弓に似た弦楽器を引く男と、カウンターの向こうに佇む壮年の男がいた。
「部族なき部族、テトの代わりにチェトをもらい受けに来ましたぁ」
宣言するハナに壮年の男……ハルシはため息を吐く。
「それなんだが……何故かそういうことになってる」
憂いの表情を見せるハルシは老けていたが、端正な顔をしており、どこか色気を纏っていた。
「貴方は知らないと……?」
サクラが顔を顰めると、ハルシは頷く。
「母、シスが元締めに部族なき部族の者を呼び寄せるなら、俺の方に連絡があるはず」
そう呟くハルシは手のひら大の飾りをテーブルに置いてハナの前に置く。
「シバの愛弟子を攫ったのはタイフォンに関わりがある者だと噂を聞いた」
「貴方がシスの息子なら、タイフォンは叔父にあたるのではないですかぁ?」
ハナの疑問にハルシは力なく頷く。
「奴のしている事は俺達にとって不利益だ。この町で何があったか母に伝えてやってくれ」
了解したハナはもう一つのシスの手下の居場所を教えて貰おうと金をハルシに渡そうとしたが、やんわりと断られた。
「魅力的だが、俺からのサービスだ」
そう言われて場所を教えて貰った二人は店を後にした。
ハナは即座に仲間に連絡を取り、居場所を伝える。
だが、そこに目的の連中は姿を消していた。
アイラは時間をおいてハルシの店に向かっており、チェトを買えないか交渉しようとしていたのだ。
部族なき部族では仲間が大っぴらに連絡を取れない時の合図のようなものはその時々で決めているようであった。
今回のようなケースなら、何らかの形でドワーフ工房へ連絡するだろうとルックスは言っていた。
まずはハルシに会おうとドアに手をかけた瞬間、アイラの周囲に青白いガスが一瞬見えた。本能的にスリープクラウドだと感じたアイラは抵抗しようにも無理で、せめての抵抗にと、ドアを思いっきり叩く。
気を失ったアイラが目覚めたのは仲間に囲まれて心配されていた。
「よかった」
安堵の声を上げるオウガにアイラは自分が無事であった事を理解する。
「アイラさんを狙ったのは恐らく、タイフォンの手下だと思いますぅ」
ハナが言うと、アイラは頷く。
すぐにでもシスに会って確認したいが、今はすべき事を達成したので町を後にした。
「テトの奴、無茶したのか」
呆れた表情を見せていたのはオウガ(ka2124)。自分にまでそう言われるなんて……と言いたいように。
「お肉の精霊さんをよこせってホントです!?」
勢いよく飛び込んできたのはディーナ・フェルミ(ka5843)。
「う、うん」
心なしか怖気づいてしまうルックスはこくこく頷く。
「フォニケさんを渡さないように守るのー!」
ディーナは怒りが頂点に達したのか、両手を上に突き上げて宣言する。
「水臭いわねー、一人で行くことないじゃない」
唇を尖らせているアイラ(ka3941)だが、テトの事が心配で仕方ない様子。柳眉を下げて憂う木綿花(ka6927)も心配している。
「ですが、連絡が取れないのも心配ですね」
サクラ・エルフリード(ka2598)の言葉にルックスは頷く。
「テトが口論していたって情報は間違いないって。猫耳を付けた黒髪の女の子がにゃーにゃー叫んで一人で複数相手に口論していたって」
一気にテトの確率が上がり、ハンター達は項垂れてしまう。
「テトちゃんはぁ、ただ対立したって理由で人を殺すような子じゃないですよぅ。部族の長として動く時だけ歯を食いしばって泣きながらでも刃を向けてきたんですよぉ」
凛然と告げたのは星野 ハナ(ka5852)。
今まで戦うことに怖れて逃げていたテトが立ち向かったのはいずれも部族の為。
ビスが部族なき部族を裏切り、仲間を殺した時も、タットルが仲間を殺した時も。仲間を守る為にテトの刃は在る。
「だから今回ぃ、相当まずい謀略に巻き込まれたのかなぁって思うんですよねぇ」
ハナの言葉は今回集まったハンターの総意とも言える。
テトと行動し、彼女を知っている者達ゆえにその想いがある。
「ありがとうございます」
ハンターの言葉に気遣いにルックスは改めて礼を告げた。
出発の前にドワーフ工房へ行きたいと木綿花が申し出ると、ルックスは快諾した。
ドワーフ工房へ行くと、フォニケとカペラ達が出迎える。
木綿花の提案にルックスの生気が失う。
「ルックス様は町の人に顔が知られておりますし、少しでも喧嘩の巻き込まれを阻止するべく、姿を変えたらと思います」
「女装ね!」
木綿花の提案にガタッとフォニケが立ち上がる。
「前はタットルのことで気が気でなかったけど、今回は後顧の憂いなく出来るってことね!」
まっかせてー! と、親指を立てて笑顔でフォニケが応じ、ルックスの返事そっちのけで連れ去られてしまう。
残ったオウガとアイラとサクラは熱いお茶を啜りつつ、美少女となるだろうルックスの出来上がりを待っていた。
出来上がったルックスは背中まである髪は横髪を残してハーフアップに結い上げられ、飾りで留められている。下ろしている部分はふんわりと巻いている。
「美少女ですね」
「想像を超えたわね」
「ま、似合ってるんだからいいんじゃねぇの」
真顔で感想を言うサクラとアイラをよそにオウガはルックスに同情しつつも町に行くことを促した。
町についたディーナ、ハナ、木綿花、ルックスは元締めの所に行った。
挨拶をする三人娘プラス女装されたルックスという組み合わせに元締めはコメントを控えた。
「シスってどんなババ……人なんですかー?」
周囲にいた元締めの手下だろう男達はで物怖じしないディーナにぎょっとしていたが、元締めは「言いたいことは分かる」という様子。
「なんで識者の娘を攫おうとしたの? もし元締めに何となくでも予想があったら教えてほしいの」
元締めは周囲の部下に目くばせをすると、彼らは周囲に人を通行させないように通せんぼをした。
「あいつは呪いもどきをやる闇医者でな、変わった人間の噂を耳にしては人体実験にでもしてるって話だ。実際は聞きたくねぇ。何考えているか分かりたくねぇやつだ」
げんなりした様子の元締めにハンター達は「手を焼いているのか」と内心納得した。
「ただなぁ、物分かりだけはいい奴なんだ。当時、発注を蹴られた時は怒りはしたが、アケルナルが監禁したと言えば納得して引っ込んだんだ」
元締めは今回のシスの蒸し返しには納得いってないようだが、彼女に問いただしてはいなかったという。
「ふぅん、ティアランってなんなの? 盗賊団? 人身売買組織?」
いちいち怒っても仕方ないので、ディーナは更に言葉を進めていく。
「暗殺と傭兵稼業だ。仕事の先は辺境だけじゃない。昔はタットルにも人員を貸していたけど、今は殆ど交流はないと言われているが、あっちは一枚岩じゃねぇ」
「他にも支持される者がいる……と?」
そう問う木綿花に元締めは頷く。
元締め曰く、タットルはアケルナルが中心となってほぼ一枚岩。しかし、ティアランはそうでない。
「その人の名前は?」
茶の瞳を細めるハナ。
「タイフォンだ。シスの弟にあたる。シスは表に出てこないが、奴が実働部隊を牛耳ってる」
はっとなった元締めは何かを思い出したように身を乗り出す。
「シスの伝言伝えてきた奴、タイフォンの手下だったな」
いかなる者がテトを貶めたのかはわからないが、今はシスに会わねば話が進まらない。
●
オウガは部族なき部族を敵視している一派の下へと向かった。
少し距離を置いて行動しているのはアイラは別の場所を調査中。
状況は一触即発といってもいい状態だ。
自分達のボスを殺したと思われる人物に近しい者が姿を見せている。怒りがいつ爆発してもおかしくはない。
「ボスの死体を見せろ……だと!」
「決して、傷つけたりしない」
オウガの申し出に……というよりは、ボスの亡骸に触るというのが嫌な様子だった。
「俺はハンターだ。ボスの最期の言葉が聞ける。お前たちは聞きたくないか」
ボスの最期の言葉に一派は動揺している。
「本当か……」
「ああ」
どうしたのかと声をかけてやりたいが、今は許可が必要だ。
「俺は、俺達は今、真実が必要なんだ」
どうしてテトは人を殺したのか。
「わかった。ついてこい」
一人の男が了承すると、オウガを連れて町の外れへ向かっていった。
アイラはボスが倒れていたところを確認していた。
大量の血痕がまだ残っており、少し離れたところで血痕があったが跳ねたような、擦りつけたような痕だった。
それと、血を踏んだ足跡も見つけた。足跡は走り出したところで消えている。
「不自然……」
まるで、消えたかのような印象を受け、アイラはオウガの方へ気を配ると、彼とすれ違う。
「これからボスの墓に行く」
小さく小さく囁くオウガはアイラの方向を見ていなかったが、超聴覚を展開している彼女は確かに聞き取り取ることが出来た。
テトが口論になっていた場所を確認していたサクラは特に不審な所はなかったと判断し、部族なき部族を敵視する一派の方へと向かおうと思っていた。
周囲にサクラを監視するような気配というか、物凄く分かりやすい人影へ一直線に向かっていく。
ようやく人影……青年もサクラに気づかれたようで慌てて逃げようとするが、サクラは逃がす気はない。
現在、テトの手がかりは何もない。手がかりを掴みに行かなくてはならないのだ。
「先ほどから、こちらを見ていましたね。私もお話を聞きたいのです」
青年は足を止めて小刻みに震える。彼の首筋には鉄線の鋭い刃が光っていた。
「あの猫女と関わりのある連中がこの町をうろついているから見張れって言われたんだよ……ドワーフのハンターが俺たちがたむろしている所に来て、死体を触らせろとか言ってきやがって」
恐らくはオウガのことだろう。今、サクラと話しているのはその一派と判断した。
詳しい話はわからないとのことなので、サクラは青年に一派がいるところまで案内をしてもらうことにした。
道中、ディーナと木綿花、ルックスと合流をする。
町の外れに着いたオウガ達は埋まっているところを掘り返すところから始まった。
腐敗が始まっているが、オウガは祈りを捧げ、術を発動した。
一瞬広がる青白い煙、暗転、暗闇に一瞬見えるのは倒れているテト。
視界が回り、その先にいたのは老人と胸元の入墨。
驚きの声と共に途切れた。
オウガは見たことを告げ、入墨の形を地面の土に書く。
「そりゃ、チェトだろ」
「まて、ティアランの連中が殺したってことかよ」
オウガを置いてけぼりにして一派が揉め出す。
「ちょとまて! そいつらって、テトを呼び出した奴らだろ?」
何とか話に飛び込むオウガ。
「ああ……爺で入れ墨なんてアイツしかいねぇよ……!」
「けど、なんで……」
一派が揉める方向に話が転んでいく。
「そいつは誰なんだ!」
場を鎮める為、オウガが一喝する。
「……シスの弟のタイフォンだ……」
「ここで何が起きるんだよ……」
先ほどの勢いが消え、不安げに呟く彼らを見たオウガは肩越しに静かに崩れていくだろう町を見やる。
テトはそれに巻き込まれたと思った。
情報集めに歩いているアイラはとある酒場に入った。
酒場に入っている客たちは女だと色めきだったが、以前町でビスとトラブルを起こした連中の一人と気づいてそっと目を逸らす。
店主にアイラは「連れが消えたの」と返して酒を頼む為の金をテーブルに置く。
「そんなのよくあることだ」
グラスに酒を注いで差し出す。
「そのよくあることを有耶無耶にしたくないの」
差し出された金を受け取った店主はちらり……と店の外を見やる。
「今はタットルが捕まっちまって、色んな連中がここにきている」
「猫耳つけた女の子は?」
アイラの問いに店主は奥にいる男に目くばせをする。
言わんとしていることを理解したアイラは人差し指の上に硬貨を置き、親指で弾く。くるくると金貨が回り、奥にいる男の手の中に納まった。
「タットルにちょっかいかけていた奴の仲間なら、昨日サイを刺した短剣持ってて、捨てて逃げようとしたら、タイフォンとその手下に眠らされて連れてかれたってところしか見てねぇけど」
うそ……。
そう言いたかったアイラは言葉を詰まらせた。
「他の奴はサイと女がタイフォン達に担がれていたって言ってたぜ。夜だったから分からねぇけどよ」
更に情報を言った男にアイラはもう一枚硬貨を男に渡す。
オウガに会って、話を聞かなければならない。
同時刻、サクラと合流したディーナは部族なき部族を敵視する一派のもとにいた。
「戦闘の意志はありません。情報を頂きたいのです」
「そっちのボスが殺された時、一緒に居た人たちはどこにいたの? 起きた時、そこにボスはいたの? それなのに、テトが口論していただけで疑うの」
いつもののんびりとした口調ではなく、凛と問うディーナに男たちは威圧される。
「しかし、そうまでして彼女を疑うには理由があるのでは?」
サクラの問いかけに男たちはテトに何を言って口論となったのかを言い始めた。
「最初は脅してやろうとしていただけなんだ。アイツらがタットルを捕まえたから、この町もさびれて、日稼ぎの仕事も減ってよ……アイツの仲間を殺してやるとか言ったら、いきなり怒り出したんだよ」
リーダーが小柄な少女ならば、大した連中ではないと思ったのだろう。
「殴り合いになろうとした時、青白い煙が周囲に沸いたんだよ」
殆どが眠ったが、起きていた者もいて、その者は後ろから殴られた。
「テト様は諍いをするような方ではありません。仲間を傷つけられることに関しては怒ります」
肩を落とす木綿花にハンター達は頷く。
「皆、いたのね」
オウガと合流したアイラが仲間に声をかける。
元締めの店を離れ、木綿花達と別行動をとろうとしていたハナは元締めから信用できる宿はないかと尋ねたら、自分の店の上を使えと言ってくれた。
通信端末から仲間たちが教えてくれた情報を基にハナは占術を始めた。
まず、テト居場所。
この町にはいないのではないかというのが有力。
次に魔術師はいた。
シスの手下だが、それが二手に分かれている。
二手の方角を確認すると、片方はハルシの店、もう片方は別の方向。
最後にもう一つ。
魔術師とハルシの方向ではないシスの手下の居場所が同じ方向かを占う。
「同じ方向。確か、手下にタイフォンという奴が町で目撃されてますよねぇ……まずは、ハルシの立ち位置を把握しましょうかぁ」
そう呟いたハナは立ち上がって店を後にした。
シスと会う為の飾りであるチェトをもらい受ける為、ハナとサクラは合流してハルシの店を訪れる。
店では胡弓に似た弦楽器を引く男と、カウンターの向こうに佇む壮年の男がいた。
「部族なき部族、テトの代わりにチェトをもらい受けに来ましたぁ」
宣言するハナに壮年の男……ハルシはため息を吐く。
「それなんだが……何故かそういうことになってる」
憂いの表情を見せるハルシは老けていたが、端正な顔をしており、どこか色気を纏っていた。
「貴方は知らないと……?」
サクラが顔を顰めると、ハルシは頷く。
「母、シスが元締めに部族なき部族の者を呼び寄せるなら、俺の方に連絡があるはず」
そう呟くハルシは手のひら大の飾りをテーブルに置いてハナの前に置く。
「シバの愛弟子を攫ったのはタイフォンに関わりがある者だと噂を聞いた」
「貴方がシスの息子なら、タイフォンは叔父にあたるのではないですかぁ?」
ハナの疑問にハルシは力なく頷く。
「奴のしている事は俺達にとって不利益だ。この町で何があったか母に伝えてやってくれ」
了解したハナはもう一つのシスの手下の居場所を教えて貰おうと金をハルシに渡そうとしたが、やんわりと断られた。
「魅力的だが、俺からのサービスだ」
そう言われて場所を教えて貰った二人は店を後にした。
ハナは即座に仲間に連絡を取り、居場所を伝える。
だが、そこに目的の連中は姿を消していた。
アイラは時間をおいてハルシの店に向かっており、チェトを買えないか交渉しようとしていたのだ。
部族なき部族では仲間が大っぴらに連絡を取れない時の合図のようなものはその時々で決めているようであった。
今回のようなケースなら、何らかの形でドワーフ工房へ連絡するだろうとルックスは言っていた。
まずはハルシに会おうとドアに手をかけた瞬間、アイラの周囲に青白いガスが一瞬見えた。本能的にスリープクラウドだと感じたアイラは抵抗しようにも無理で、せめての抵抗にと、ドアを思いっきり叩く。
気を失ったアイラが目覚めたのは仲間に囲まれて心配されていた。
「よかった」
安堵の声を上げるオウガにアイラは自分が無事であった事を理解する。
「アイラさんを狙ったのは恐らく、タイフォンの手下だと思いますぅ」
ハナが言うと、アイラは頷く。
すぐにでもシスに会って確認したいが、今はすべき事を達成したので町を後にした。
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テト様捜索ご相談 木綿花(ka6927) ドラグーン|21才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/06/13 08:31:40 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/06/11 07:27:03 |