ゲスト
(ka0000)
炎の色に山は染まり
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/01/29 22:00
- 完成日
- 2015/01/30 20:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●朱に染まる雪山
一匹の雑魔が目覚めた。炎を身に纏った、ライオンに似た雑魔は山をかける。
雑魔に山火事を起こさせる意図があったかどうかは分からない。
しかし飛び火した火は、冬の乾燥という手助けを借りて瞬く間に森を覆い尽くしていく。
雑魔はただ駆ける。目的もなく、行くあてもなく。
山に住む人々の叫びも聞こえないまま、ただあてどなく走り続ける。
「炎を纏った雑魔が彼方此方移動してるせいで山火事が発生してる。山村の消防隊が手を組んで鎮火にあたってるけど火元が常に移動してるから中々追い付かないみたいだ。
皆には雑魔の討伐を第一に、鎮火の手伝いを第二に動いてほしい」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)の表情は硬い。
「山火事が起きた後、大雨が降ると木によってバランスを保たれていた水量を抑える存在がなくなっていることで洪水になったりするからね。
木が密集してる地域から後で植樹の手配をするけれど……まずは火元である雑魔を倒して、山火事自体も止めないとどうしようもない。
春先には雪解け水で川の水量も増すしね。
雑魔はライオンに似た大型の獣の姿をしている。炎が一際激しく燃えている場所を目指して貰う事になるから気をつけて欲しい。
炎属性は吸収してしまうようだから持っていく武器には注意して。
それから燃えやすい衣類も、避けた方が無難だと思うよ。
あとは……そうだな、煙を吸い込まないように気を付けるのと、炎の中での戦いは酸素が薄くて大変だろうから短期決戦に持ち込めるよう頑張って、としか言えないかな」
無事に戻ってくるんだよ。そういってルカは目を伏せたのだった。
一匹の雑魔が目覚めた。炎を身に纏った、ライオンに似た雑魔は山をかける。
雑魔に山火事を起こさせる意図があったかどうかは分からない。
しかし飛び火した火は、冬の乾燥という手助けを借りて瞬く間に森を覆い尽くしていく。
雑魔はただ駆ける。目的もなく、行くあてもなく。
山に住む人々の叫びも聞こえないまま、ただあてどなく走り続ける。
「炎を纏った雑魔が彼方此方移動してるせいで山火事が発生してる。山村の消防隊が手を組んで鎮火にあたってるけど火元が常に移動してるから中々追い付かないみたいだ。
皆には雑魔の討伐を第一に、鎮火の手伝いを第二に動いてほしい」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)の表情は硬い。
「山火事が起きた後、大雨が降ると木によってバランスを保たれていた水量を抑える存在がなくなっていることで洪水になったりするからね。
木が密集してる地域から後で植樹の手配をするけれど……まずは火元である雑魔を倒して、山火事自体も止めないとどうしようもない。
春先には雪解け水で川の水量も増すしね。
雑魔はライオンに似た大型の獣の姿をしている。炎が一際激しく燃えている場所を目指して貰う事になるから気をつけて欲しい。
炎属性は吸収してしまうようだから持っていく武器には注意して。
それから燃えやすい衣類も、避けた方が無難だと思うよ。
あとは……そうだな、煙を吸い込まないように気を付けるのと、炎の中での戦いは酸素が薄くて大変だろうから短期決戦に持ち込めるよう頑張って、としか言えないかな」
無事に戻ってくるんだよ。そういってルカは目を伏せたのだった。
リプレイ本文
●緋色に染まる山の中での攻防
山が、赤く染まっていた。風に乗って飛んできた火の粉の多さが山火事の規模を語る。
炎を纏ったライオンに似た雑魔が、意図してかそれとも何も考えず、ただ動き回っているのかは不明だが、飛び火させながら山を駆けまわっている結果の大規模な火災。
「炎の雑魔ですか……中々の難物ですね。もし、これが市街地に出てきたら大災害は避けられないのでいらぬ知恵をつけられる前に討伐しなければなりませんね」
手に持った水筒に入るだけの水が詰まっていることを確認しながら、クオン・サガラ(ka0018)は呟く。
後方で控えている消防団と手伝いの住民たちには、森林火災用の装備とできる限りの水を用意してもらったうえで山のふもと、延焼が来ない場所で雑魔を警戒しながら待機してもらう段取りがついている。
「今回は……いかに雑魔を釘づけにして被害を減らすことができるかが全てですね。
まあ、炎の中で背後を取られるとこっちが全滅しますから……そんな事態にならないよう気をつけましょう」
クオンは味方の支援のために風上で高い場所、そして延焼していないところでトランシーバーで前衛と通信しながら位置取りを決定、支援攻撃を行って雑魔を釘付けにするつもりでいた。
「花火持ってきたら、綺麗な爆発がみれそうね。そして真っ白に燃え尽きるのね。いや、燃え尽きさせないためにいくんだけど」
アルビルダ=ティーチ(ka0026)が最後の一言をフォローするように付け加えて、頭からバケツの水をかぶる。
煙を吸わないようにバンダナをマスク代わりに口元に巻き、目をやられないようにゴーグルを装着。
「今の格好、完全に単なる賊よね……」
自分たちは一応雑魔の退治と山火事の鎮火のために赴いたはずなのだがこれが市街だったら火事場泥棒と勘違いされていたかもしれない風体に思わずため息。
「家事ですか、それはまた厄介なことを……巧遅は拙速に如かずとも言いますし、ことは早めに進めませんとね」
上泉 澪(ka0518)が炎上の様子を遠目から確認し、新たに炎上している場所を探す。
「山が……これ以上燃やさせないためにも早く止めなければ!
これ以上山が燃えてしまっては大変なことになってしまいます。
この山に住んでいる人たちにも危険は迫っている……なるべく早く、止めなければ!」
櫻井 悠貴(ka0872)は拳を握りしめて叫んだあと、バンダナに水をしみこませる。
「熱い、ですね。火が回りきらないうちに敵を探し出しましょう!」
「炎も雑魔も薙ぎ払います。薙ぎ払います、が……。あ、暑いです……はやく敵を殲滅してえた紅茶が飲みたいです。
山を燃やす雑魔とか迷惑すぎますね。燃えるならお風呂の薪代わりになってください。雑魔の有効的な使い方になりますしね。
……無理でしょうけど」
途中で半分自棄になったのか誰が聞いても付け加えられたセリフに同感するであろう提案をしたのはリーリア・バックフィード(ka0873)だった。
「敵の殲滅まで無理せず鎮火の下準備をしていてください。雑魔は私たちが必ず倒しますので」
くれぐれも無理に山に踏み入って雑魔と遭遇するようなことのないように、とこれはリーリア以外の七人も加わって村人たちに念を押す。
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は水属性のダガーと長距離用に同じく水属性のロングボウを携えている。
彼女の担当は護衛を主眼に置いた戦闘だ。
「敵にしても火事にしても、火に近接していられる時間は限られるわ。ローテーションで隙を作らずに、弱めた火勢を取り戻す暇を与えないようにしないと……完全に消えるまで油断は禁物よね」
シバ・ミラージュ(ka2094)は小さなころ、住んでいた孤児院と友人たちを火災で亡くした過去がある。
その経緯もあって今度は誰も犠牲にしないと強い決意を固めていた。
「僕たち八人にできることは限られているかもしれません。ただ、皆様の大切な土地を護るお手伝いを一緒にさせてください」
地形や火勢の強い地点などの情報があったらその提供と水分補給などの後方支援、雑魔討伐後には協力しての本格的な消火活動の約束を取り付けて山に踏み入っていくハンターたち。
「……ッ、予想以上ね」
八原 篝(ka3104)は一面を赤く染める炎に思わず息をのむ。
消火用の水を分けてもらって頭から被った時は凍えそうになるくらいの冷たさに歯がかみ合わなかったが山に入って数分も経たないうちに既に肌は火の熱さを感じ取っていた。
篝はシバとリーリア、三人で一つの班を作って雑魔を探し始めた。
澪と悠貴、アルビルダは他の方面へやはり班を作って向かっている。
クオンとカーミンは独自に動いており、誘導や護衛を兼ねた遊撃を担当することになっていた。
動きがあったのは澪たちの班の方だった。
「あれは……? 炎が、なんだかおかしな動きをしていませんか?」
見咎めた悠貴が他の二人に注意を呼び掛ける。
トランシーバーで連絡を取り、全員が集合する前に雑魔が移動しないよう抑えに入る三人。
炎を纏った雑魔は本来の個体の大きさより、不規則に揺らめく炎の影響で巨大に見えた。
澪が祖霊の力を武器に込め、大きく振りぬいたのを皮切りにそれぞれが戦闘へと突入する。
「これ以上火事は広げさせません!」
悠貴が足止めを目的とした援護射撃を行い、アルビルダもそれに合わせて、あわよくば足へ被弾させて機動力を削ぐことも狙った威嚇射撃を中心に攻撃を展開する。
「動いたら撃つ、止まったら討つ。好きな方を選びなさい」
風向きを意識し、風向きと違う方向に周囲の炎が揺らいだ時は敵が炎を操って攻撃してくることを警戒しながら攻撃を続けている内に他のメンバーが合流した。
クオンは直接合流はせず、最初に位置どった場所から支援攻撃を繰り出す。
「熱で空気が歪んでいるので精度自体は保証がいですが、牽制位にはなりますかね……」
光り輝く弓身を持つ、魔術的な紋様が刻まれた弓を構えながらそれでも最大限に狙いを定めて一矢を放つ。
「伊達や酔狂で斧を選んでいません。炎の獣に水の斧。導き出される回答は首狩りですね」
リーリアが瞬脚で距離を詰めながら雑魔との距離を調節し、背後を取って挟撃で追い詰める。
身体にマテリアルを潤滑させ、洗練された動きで迫るとより精度の高い、確実な一撃を繰り出していった。
シバがウォーターシュートとマジックアローを使い分けて遠距離から攻撃し、注意を引き付ける。
それを鬱陶しく思ったらしい雑魔が地を蹴ってシバのもとへ向かおうとしたのを阻んだのはカーミンだ。
ダガーで足を斬りつけながら不敵に笑ってみせる。
「悪いわね、炎は対策済み。当たっても怖くないわ。当たる気もさらさらないけど」
「合わせる!」
注意がカーミンに向いたところでシバと同じく後衛を担当していた篝がオートマチックピストルで目を射抜いた。
片目を失い猛り狂う雑魔が繰り出す炎に怯むことなく、そして合間を縫って自身が受ける被害を最小限に留めつつ、澪が接近して首を切り落とした。
切り落とされた首から血液の代わりに一瞬、火に油を注いだように火勢が勢いを増してあふれたが、大本である雑魔が事切れたことがあってか澪の身体に燃え移る前に急速に勢いを失っていく。
「大本は断ちました。後は消防隊の方と協力して延焼を防ぎましょう」
雑魔が消えたことにより火の元が移動して山火事が広がっていくことはもうないが、既に燃え移った火を放置しては炎の舌が山を舐めとるように燃やし尽くしてしまうことだろう。
麓で待機している消防隊と、高所で誘導と支援行動を行っていたクオンに連絡を取った後は本格的な消火活動の始まりだ。
「私にできるのはスクリューナックルで木を切り倒して延焼を防ぐ……位ですね」
合流したクオンの言葉に、アルビルダが誘導や風向きの確認などの補助を申し出る。
澪は消防隊の手が届かないであろう場所の火に注意し、消化が間に合わないと判断した場合は手持ちの斧で木を切り倒して防火帯を形成していく。
その際、目の前の木では燃え移って間に合わない場合があることを考慮しての作業になることを判断して切り倒す木を選んでいく。
シバはウォーターシュートの残りを鎮火に使ったあとは土や手持ちの水をかけての鎮火にあたり、仲間や合流した村人たちを気遣う。
火傷が酷いと判断される負傷者が出た場合は火の届かない場所まで下がり、応急手当てを施した。
篝も斧を借りて火を食い止めるために木を伐採するのを手伝い、ハンターたちの働きと消防隊の持ち込んだ水、砂をかけたり木を切り倒したりという消火活動は遅くまで続いたが、なんとか近隣の村に火が届く前に完全に鎮火することができたのは僥倖だったと言えるだろう。
「髪や服が煤だらけで優雅さに欠けてしまいました……でも、無事鎮火出来て何よりでした」
リーリアが顔についた煤を拭おうとハンカチを水で濡らそうとしたが、鎮火活動とそれに伴う土砂の扱いで主に口元を覆うのに使っていたハンカチはすっかり汚れてしまっている。
「……これでは煤を拭って汚れを落とすどころか新しい汚れをつけてしまいますね……」
その場にいた誰もが煤や土埃に塗れていて、夕闇も手伝って誰が誰なのかを判別するのが難しいほどだった。
戦場を共にしたハンターたちは辛うじて服装や所持品で識別できるが、消防隊や村人たちは火に備えて似たり寄ったりの格好を取っている上に名乗り合う余裕もなかったのでパッと見ただけでは識別が難しい。
男性が大半を占めることと年代も働き盛りの者たちが集まっていることがそれに拍車をかけていた。
「うぅ……汗かいちゃって煤っぽくて気持ち悪いのです」
悠貴もリーリア同様愚痴をこぼすがそんな愚痴が言えるのも鎮火が完全に日が暮れる前に終わって気持ちに余裕が出たからこそだろう。
消火活動中は誰もが一刻も早く火を消し止めることに必死で身なりに構っている暇などなかったのだから。
「なんだか雑魔退治よりその後の消火活動の方が精神的にも肉体的にもきたわね……今日中に終わってよかった」
賊のようだ、とぼやいていたアルビルダはゴーグルとマスクを外すとやれやれ、と肩を回す。
大量の水や土砂を使ったり、木を伐採したりと確かに肉体労働は多かった。
「火傷した人は出てしまいましたが、これだけの規模の火災で死者が出なかったのは幸いでした」
クオンがナックルをしまいながら、最初に数えた人数と今の人数があっていることを確認して安堵の息を吐く。
「山火事の後は洪水が怖いものだけれど……ある程度育った木の植樹は手配してあるんだったわね。後はその木々が根付いてくれることを願うばかりだわ」
鎮火は済んだとはいえ、雑魔が動き回った分、そしてその火が広がった分、加えて消火のためにやむを得なかったとはいえ切り倒された木の分、随分と見通しが良くなってしまった山からの風景を眺めてカーミンがこれから先について思いを馳せる。
「僕は怪我人の治療が済んだら念のため山を巡回しようと思います。残り火が怖いですし、動物たちが怪我をしていたら手当てをしてあげたいので……」
シバの言葉にそれなら一人でない方がいいだろう、とまだ体力に余裕があるらしい村人が何人か同伴を申し出た。
「此処に住まう生命のため。そして仲間のため。僕は何かができたでしょうか……」
「大規模な山火事の中、死者を出さずに鎮火にこぎつけられた。それは誇っていい事なんじゃない?」
シバの独白に篝が答え、一同は再び山に戻るにしても準備がいるだろう、と夕暮れの山を降りたのだった。
炎で赤く染まっていた山は、地肌をむき出しにすることにはなったが炎の衣を脱ぎ去ることに成功し、害の及ぶことのない、冬の弱い夕暮れの日差しの紅を纏ったのだった。
山が、赤く染まっていた。風に乗って飛んできた火の粉の多さが山火事の規模を語る。
炎を纏ったライオンに似た雑魔が、意図してかそれとも何も考えず、ただ動き回っているのかは不明だが、飛び火させながら山を駆けまわっている結果の大規模な火災。
「炎の雑魔ですか……中々の難物ですね。もし、これが市街地に出てきたら大災害は避けられないのでいらぬ知恵をつけられる前に討伐しなければなりませんね」
手に持った水筒に入るだけの水が詰まっていることを確認しながら、クオン・サガラ(ka0018)は呟く。
後方で控えている消防団と手伝いの住民たちには、森林火災用の装備とできる限りの水を用意してもらったうえで山のふもと、延焼が来ない場所で雑魔を警戒しながら待機してもらう段取りがついている。
「今回は……いかに雑魔を釘づけにして被害を減らすことができるかが全てですね。
まあ、炎の中で背後を取られるとこっちが全滅しますから……そんな事態にならないよう気をつけましょう」
クオンは味方の支援のために風上で高い場所、そして延焼していないところでトランシーバーで前衛と通信しながら位置取りを決定、支援攻撃を行って雑魔を釘付けにするつもりでいた。
「花火持ってきたら、綺麗な爆発がみれそうね。そして真っ白に燃え尽きるのね。いや、燃え尽きさせないためにいくんだけど」
アルビルダ=ティーチ(ka0026)が最後の一言をフォローするように付け加えて、頭からバケツの水をかぶる。
煙を吸わないようにバンダナをマスク代わりに口元に巻き、目をやられないようにゴーグルを装着。
「今の格好、完全に単なる賊よね……」
自分たちは一応雑魔の退治と山火事の鎮火のために赴いたはずなのだがこれが市街だったら火事場泥棒と勘違いされていたかもしれない風体に思わずため息。
「家事ですか、それはまた厄介なことを……巧遅は拙速に如かずとも言いますし、ことは早めに進めませんとね」
上泉 澪(ka0518)が炎上の様子を遠目から確認し、新たに炎上している場所を探す。
「山が……これ以上燃やさせないためにも早く止めなければ!
これ以上山が燃えてしまっては大変なことになってしまいます。
この山に住んでいる人たちにも危険は迫っている……なるべく早く、止めなければ!」
櫻井 悠貴(ka0872)は拳を握りしめて叫んだあと、バンダナに水をしみこませる。
「熱い、ですね。火が回りきらないうちに敵を探し出しましょう!」
「炎も雑魔も薙ぎ払います。薙ぎ払います、が……。あ、暑いです……はやく敵を殲滅してえた紅茶が飲みたいです。
山を燃やす雑魔とか迷惑すぎますね。燃えるならお風呂の薪代わりになってください。雑魔の有効的な使い方になりますしね。
……無理でしょうけど」
途中で半分自棄になったのか誰が聞いても付け加えられたセリフに同感するであろう提案をしたのはリーリア・バックフィード(ka0873)だった。
「敵の殲滅まで無理せず鎮火の下準備をしていてください。雑魔は私たちが必ず倒しますので」
くれぐれも無理に山に踏み入って雑魔と遭遇するようなことのないように、とこれはリーリア以外の七人も加わって村人たちに念を押す。
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は水属性のダガーと長距離用に同じく水属性のロングボウを携えている。
彼女の担当は護衛を主眼に置いた戦闘だ。
「敵にしても火事にしても、火に近接していられる時間は限られるわ。ローテーションで隙を作らずに、弱めた火勢を取り戻す暇を与えないようにしないと……完全に消えるまで油断は禁物よね」
シバ・ミラージュ(ka2094)は小さなころ、住んでいた孤児院と友人たちを火災で亡くした過去がある。
その経緯もあって今度は誰も犠牲にしないと強い決意を固めていた。
「僕たち八人にできることは限られているかもしれません。ただ、皆様の大切な土地を護るお手伝いを一緒にさせてください」
地形や火勢の強い地点などの情報があったらその提供と水分補給などの後方支援、雑魔討伐後には協力しての本格的な消火活動の約束を取り付けて山に踏み入っていくハンターたち。
「……ッ、予想以上ね」
八原 篝(ka3104)は一面を赤く染める炎に思わず息をのむ。
消火用の水を分けてもらって頭から被った時は凍えそうになるくらいの冷たさに歯がかみ合わなかったが山に入って数分も経たないうちに既に肌は火の熱さを感じ取っていた。
篝はシバとリーリア、三人で一つの班を作って雑魔を探し始めた。
澪と悠貴、アルビルダは他の方面へやはり班を作って向かっている。
クオンとカーミンは独自に動いており、誘導や護衛を兼ねた遊撃を担当することになっていた。
動きがあったのは澪たちの班の方だった。
「あれは……? 炎が、なんだかおかしな動きをしていませんか?」
見咎めた悠貴が他の二人に注意を呼び掛ける。
トランシーバーで連絡を取り、全員が集合する前に雑魔が移動しないよう抑えに入る三人。
炎を纏った雑魔は本来の個体の大きさより、不規則に揺らめく炎の影響で巨大に見えた。
澪が祖霊の力を武器に込め、大きく振りぬいたのを皮切りにそれぞれが戦闘へと突入する。
「これ以上火事は広げさせません!」
悠貴が足止めを目的とした援護射撃を行い、アルビルダもそれに合わせて、あわよくば足へ被弾させて機動力を削ぐことも狙った威嚇射撃を中心に攻撃を展開する。
「動いたら撃つ、止まったら討つ。好きな方を選びなさい」
風向きを意識し、風向きと違う方向に周囲の炎が揺らいだ時は敵が炎を操って攻撃してくることを警戒しながら攻撃を続けている内に他のメンバーが合流した。
クオンは直接合流はせず、最初に位置どった場所から支援攻撃を繰り出す。
「熱で空気が歪んでいるので精度自体は保証がいですが、牽制位にはなりますかね……」
光り輝く弓身を持つ、魔術的な紋様が刻まれた弓を構えながらそれでも最大限に狙いを定めて一矢を放つ。
「伊達や酔狂で斧を選んでいません。炎の獣に水の斧。導き出される回答は首狩りですね」
リーリアが瞬脚で距離を詰めながら雑魔との距離を調節し、背後を取って挟撃で追い詰める。
身体にマテリアルを潤滑させ、洗練された動きで迫るとより精度の高い、確実な一撃を繰り出していった。
シバがウォーターシュートとマジックアローを使い分けて遠距離から攻撃し、注意を引き付ける。
それを鬱陶しく思ったらしい雑魔が地を蹴ってシバのもとへ向かおうとしたのを阻んだのはカーミンだ。
ダガーで足を斬りつけながら不敵に笑ってみせる。
「悪いわね、炎は対策済み。当たっても怖くないわ。当たる気もさらさらないけど」
「合わせる!」
注意がカーミンに向いたところでシバと同じく後衛を担当していた篝がオートマチックピストルで目を射抜いた。
片目を失い猛り狂う雑魔が繰り出す炎に怯むことなく、そして合間を縫って自身が受ける被害を最小限に留めつつ、澪が接近して首を切り落とした。
切り落とされた首から血液の代わりに一瞬、火に油を注いだように火勢が勢いを増してあふれたが、大本である雑魔が事切れたことがあってか澪の身体に燃え移る前に急速に勢いを失っていく。
「大本は断ちました。後は消防隊の方と協力して延焼を防ぎましょう」
雑魔が消えたことにより火の元が移動して山火事が広がっていくことはもうないが、既に燃え移った火を放置しては炎の舌が山を舐めとるように燃やし尽くしてしまうことだろう。
麓で待機している消防隊と、高所で誘導と支援行動を行っていたクオンに連絡を取った後は本格的な消火活動の始まりだ。
「私にできるのはスクリューナックルで木を切り倒して延焼を防ぐ……位ですね」
合流したクオンの言葉に、アルビルダが誘導や風向きの確認などの補助を申し出る。
澪は消防隊の手が届かないであろう場所の火に注意し、消化が間に合わないと判断した場合は手持ちの斧で木を切り倒して防火帯を形成していく。
その際、目の前の木では燃え移って間に合わない場合があることを考慮しての作業になることを判断して切り倒す木を選んでいく。
シバはウォーターシュートの残りを鎮火に使ったあとは土や手持ちの水をかけての鎮火にあたり、仲間や合流した村人たちを気遣う。
火傷が酷いと判断される負傷者が出た場合は火の届かない場所まで下がり、応急手当てを施した。
篝も斧を借りて火を食い止めるために木を伐採するのを手伝い、ハンターたちの働きと消防隊の持ち込んだ水、砂をかけたり木を切り倒したりという消火活動は遅くまで続いたが、なんとか近隣の村に火が届く前に完全に鎮火することができたのは僥倖だったと言えるだろう。
「髪や服が煤だらけで優雅さに欠けてしまいました……でも、無事鎮火出来て何よりでした」
リーリアが顔についた煤を拭おうとハンカチを水で濡らそうとしたが、鎮火活動とそれに伴う土砂の扱いで主に口元を覆うのに使っていたハンカチはすっかり汚れてしまっている。
「……これでは煤を拭って汚れを落とすどころか新しい汚れをつけてしまいますね……」
その場にいた誰もが煤や土埃に塗れていて、夕闇も手伝って誰が誰なのかを判別するのが難しいほどだった。
戦場を共にしたハンターたちは辛うじて服装や所持品で識別できるが、消防隊や村人たちは火に備えて似たり寄ったりの格好を取っている上に名乗り合う余裕もなかったのでパッと見ただけでは識別が難しい。
男性が大半を占めることと年代も働き盛りの者たちが集まっていることがそれに拍車をかけていた。
「うぅ……汗かいちゃって煤っぽくて気持ち悪いのです」
悠貴もリーリア同様愚痴をこぼすがそんな愚痴が言えるのも鎮火が完全に日が暮れる前に終わって気持ちに余裕が出たからこそだろう。
消火活動中は誰もが一刻も早く火を消し止めることに必死で身なりに構っている暇などなかったのだから。
「なんだか雑魔退治よりその後の消火活動の方が精神的にも肉体的にもきたわね……今日中に終わってよかった」
賊のようだ、とぼやいていたアルビルダはゴーグルとマスクを外すとやれやれ、と肩を回す。
大量の水や土砂を使ったり、木を伐採したりと確かに肉体労働は多かった。
「火傷した人は出てしまいましたが、これだけの規模の火災で死者が出なかったのは幸いでした」
クオンがナックルをしまいながら、最初に数えた人数と今の人数があっていることを確認して安堵の息を吐く。
「山火事の後は洪水が怖いものだけれど……ある程度育った木の植樹は手配してあるんだったわね。後はその木々が根付いてくれることを願うばかりだわ」
鎮火は済んだとはいえ、雑魔が動き回った分、そしてその火が広がった分、加えて消火のためにやむを得なかったとはいえ切り倒された木の分、随分と見通しが良くなってしまった山からの風景を眺めてカーミンがこれから先について思いを馳せる。
「僕は怪我人の治療が済んだら念のため山を巡回しようと思います。残り火が怖いですし、動物たちが怪我をしていたら手当てをしてあげたいので……」
シバの言葉にそれなら一人でない方がいいだろう、とまだ体力に余裕があるらしい村人が何人か同伴を申し出た。
「此処に住まう生命のため。そして仲間のため。僕は何かができたでしょうか……」
「大規模な山火事の中、死者を出さずに鎮火にこぎつけられた。それは誇っていい事なんじゃない?」
シバの独白に篝が答え、一同は再び山に戻るにしても準備がいるだろう、と夕暮れの山を降りたのだった。
炎で赤く染まっていた山は、地肌をむき出しにすることにはなったが炎の衣を脱ぎ去ることに成功し、害の及ぶことのない、冬の弱い夕暮れの日差しの紅を纏ったのだった。
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相談卓 アルビルダ=ティーチ(ka0026) 人間(リアルブルー)|17才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/01/29 20:02:03 |
|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/26 20:01:19 |