鋼鉄のウィンドベル

マスター:ことね桃

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/06/20 12:00
完成日
2019/06/30 14:45

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●それは己を鍛え直すために

『依頼を申請したいのだが、精霊でも構わんだろうか?』
 帝都近郊のオフィスにフリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)がふらりとやってきたのは6月半ば。
 最終決戦に向けハンター達による様々な意見が交わされてから間もない日のことだった。
 いつも通りカウンターで書類の整理に励んでいた只埜 良人(kz0235)が巨躯の英霊の顔を見上げる。
「はい、構いませんよ。精霊からの依頼受注実績はうちのオフィスには何度もありますからね。
 ……で、今回はどのようなお話になりますか?」
『うむ、それはありがたい。
 実を言うとだな……私はもっと強くなりたいのだ。その訓練のためにハンターの力を借りたい』
 発言の意味がいまひとつわからない。
 フリーデは先日全盛期の力を取り戻したと報告書で確認している。
 実際に雑魔や歪虚の討伐も以前より遥かに勝利数が伸び、十分に強くなったと言えるはずなのだが。
「俺が言うのもなんですが、フリーデさんはもう十分に力を取り戻されたのでは?
 信仰が集まればよりマテリアルは集まるでしょうが……」
 戸惑う声に「ばんっ!」と逞しい両手がカウンターを叩く。
 その勢いで書類がふわりと浮き、カウンターの上に広がった。
『そういう話ではない! もっと根本的にして致命的な欠陥が私にはあるのだ!』
「……っ!? そ、それはどんな点でしょうか」
 もし属性の問題ならばそれはもうどうしようもない。
 ハンターの力を借りたとしても克服できないものがある。
 内心冷や汗をかきながら問うと、フリーデは目を瞑り――静かにこう言った。
『私は攻撃を躱すことができない。常に得物で刃や矢弾を弾き、返す刃で敵を仕留めてきた。
 ……しかし最近それが通用しないというか……躱さないと私が消されるほどの力を持つ輩が出てきてな』
 ああ、と良人は先日のシェオル型歪虚との交戦記録をデスクに広げる。
 たしかに受け身だけではこの先の戦争で生き残れる保証はない。
 特に強く属性に影響される精霊ならば――
 いくら信仰の力で生命力を高く保とうとも一瞬でそれを奪われる可能性が在るのだ。
『だから敵からの攻撃を回避できるよう様々な能力を持つハンターに攻撃してもらい、
 受け身をとる前に身体が自在に動くよう習慣づけたいのだよ。わかるか?』
「そういう話であれば。では場所はコロッセオで、使用する武器は訓練用のものを揃えましょう」
 ようやく落ち着いたフリーデ。
 安堵した良人は依頼書にサインするよう彼女に求めると、
 フリーデはペンをげんこつの形で握りしめて角ばった字で己が名を綴った。
 これで依頼の申請は成立。フリーデは『感謝するぞ』と言ってオフィスから足取り軽く去っていった。


●訓練前日――慌ただしいその時間

 フリーデはコロッセオに帰ると
 花の精霊フィー・フローレ(kz0255)が午睡をとる小花のベッドを揺さぶり、彼女を起こした。
「ン……? 何カアッタノ?」
 大きな目をぐしゅぐしゅと擦り、ベッドの上にぺしょっと座るフィー。
 フリーデは『折角の休みにすまんな』とまず謝ると、事情を説明し、
 翌日の訓練で何らかの事故があった場合は治療に力を貸してほしいと彼女に頭を下げた。
 もちろん訓練で使われる武器は刃先を潰した剣や槍を用意し、矢には鏃にボロ布を巻き、
 銃にはペイント弾を装填するなどの事故防止策が施されている。
 魔法攻撃のために用意された杖も魔力をほとんど失った古物だ。
 そしてフリーデが持つ斧も普段の大戦斧ではなく、
 分厚い刃が完全に潰れ薪を割ることも満足にできない不良品。
 ならば心配ないのではと首を傾げるフィーにフリーデがしょんぼりと肩を落とす。
『……お前も知っているだろう? 私は何かと気が短く、何かにつけて皆に迷惑をかけていることを』
 生前のフリーデが罪人となった原因は仲間達との意識のかけ違いによるものだった。
 今回も訓練中の掛け合いで何があるかわからない。
 万が一のことを考えるほど、強烈な治癒の力を持つフィーはとても頼れる存在だ。
「……ウン、ソレナラワカッタワ!
 ソレジャ何カアッタラスグニ止メニ入ルシ、チャント皆ノ傷モ治スノ! 安心シテ練習スルノ!」
 そう言うとフィーのワンピースがナース服にふんわりと形を変えた。
 頭には白いナースキャップ。やる気は満々だ。
『感謝する、フィー・フローレ。それでは明日……よろしく頼むぞ』
 訓練ではフリーデはあらゆる攻撃に対して
 回避行動をとることで体に身躱しの技術を叩き込もうとしている。
 全ては最終決戦で生き残るため――果たしてその想いは身を結ぶのだろうか?

リプレイ本文

●回避訓練を始める前に

 コロッセオ・シングスピラのアリーナで軽快な鈴の音と可憐な歌声が響く。
 歌い手はキレの良いダンスを披露するリアリュール(ka2003)。
 フリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)は全身に鈴をつけ、真剣な顔で彼女の動作を真似ていた。
「鈴の音の分散は動作が散漫になっている証。
 重心や円を意識して体勢を崩さず、跳び、しゃがみ、体を捻り、反らす。それが回避の基本です」
『うむ。これで良いのか?』
 りん、とポーズを決めるフリーデ。時間こそかかったがようやく様になってきた。
「そう、それを忘れずに。合格です!」
 リアリュールが笑顔で拍手する。
 その時、ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)が障害物を変則的に並べた空間から顔を出した。
「サーキットの準備が完了しました。実践訓練開始可能です!」
 彼女の足元にはロープを不安定な形に並べた小道が用意されている。
「さぁ、フリーデ殿。今度はこちらで移動しながらの回避訓練です。
 今の動作を活かし、物に体を当てることなく走破しましょう」
『これは難しそうだな……』
 巨体のフリーデが障害物の存在に難色を示す。
 そこにアルマ・A・エインズワース(ka4901)が声を張った。
「障害物は動きませんよ。とるべき姿勢をとって進めばクリアできるように造ってあるです。
 ここをクリアできたらいい子いい子してあげるです!」
 そこでリアリュールが「頑張って」と背中を押すと
 フリーデは『感謝する、リアリュール』と微笑んで走っていった。


●実践訓練の始まり

 サーキットトレーニングが終わって間もなく、澪(ka6002)がフリーデのもとに駆け寄った。
「ねえ、フリーデ。今までどう身を守っていたの?」
『白兵戦なら斧で常に攻撃をいなしてきた。射撃は物陰に隠れ、魔法は全力で駆けて……』
「そう。でもそれ以上に動かないと回避は難しいよ?」
『うむ……』
 そこに「おい、そろそろ始めるぞ!」と凛々しい声が響く。
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)が訓練の準備を整えたのだ。
「同じ大斧使いのよしみだ。できるだけ教えてやるぜ!
 まずは回避の基本を見せてやる。アルマ、準備はいいか?」
「はいっ。こう見えて僕、幼い頃から戦闘訓練受けてるですよ!」
 そこでボルディアが地を駆けるものを発動。
 早速アルマが槌を振り下ろすも、彼女は僅かに体をずらすだけで回避する。
「大きな動きで避けるのは動きの無駄。ギリギリで避けるのを心がけろ」
「ギリギリで避けられると即座に反撃できてかっこいいです。後の先、っていうです!」
 今度は真横に薙ぐ槌をボルディアが膝を抜いて躱し、次いで斜に斧を振り上げた。
「と、まぁ……こんな流れだ。最小限の動きで躱せば最大の攻撃に繋げられる。
 今度はお前がやってみろ。最初は俺が力を貸すから」
 ボルディアが業炎を巻き起こし、シンクロナイズでフリーデにその力をより強化し分け与える。
 たちまち体内に激しい力が湧き、身を軽くした。
「そんじゃ行くぜ。まずは回避の感覚を掴め!」
 初めは振り下ろしなど解りやすい速度を抑えた連続攻撃。だがフリーデの動きに躊躇が見えた。
「頭で考えて避けンな! 脊髄でもよけンな! 筋肉だ、筋肉で反応しろ!」
『筋肉?』
「ああ、そうだ。考えるから身体が遅れる!
 筋肉があれば何でもできる! 全身の細胞で回避の感覚を掴め!」
 そうだ、考える暇を与えるから動きが鈍るのかと高速で攻撃を仕掛ける。
 咄嗟にフリーデの体が反応し、大斧をギリギリで躱した。
 この結果にボルディアが満足そうに笑った。
「やればできンじゃねえか。次、やれる奴!」
 そこで南護 炎(ka6651)が立候補した。
「俺の家は剣術道場で、俺も剣と身を守る術をそこで学んだ。だから助言もできると思うぜ」
『ありがたい、よろしく頼む』
 そこに濡羽 香墨(ka6760)がフリーデへウィンドガストを付与した。
「これで少し躱しやすくなる。まずは身を躱す感覚を覚えて。
 今の段階で素で避けてと言っても。難しいだろうから」
『助かる、香墨』
「ううん。私の守れる範囲にも。限界はあるから。生きるためにも。覚えて」
 その間に炎は太刀を抜いた。
(第一段階は単純攻撃のみ。ここでは彼女の動きを見極めよう)
 真っ先に刀特有のしなやかな攻撃を次々と繰り出す炎。
 そこでフリーデが斧を持つ手に力を入れる様を目に留めた彼は足を薙ぎ、突きも加えた。
『くっ!』
「表向き回避を意識していても、受け流す癖があるな。それでは点や面の攻撃は躱せないぜ?」
 そこでアルマが叫んだ。
「かっこわるくても転んでもいいです、ひたすら当たらないことを意識ですー」
 そうだ、回避しなければ。
 フリーデは何度刀で突かれ転んでも立ち上がり『もう一度!』と打ち込みを頼んだ。
「ああ、何度でも任せてくれ!」
 その頃、フィロ(ka6966)は綿入りグローブを水に浸していた。そこにツィスカが通りかかる。
「フィロさん、何をされているのですか?」
「訓練用の仕込みを。現段階は通常攻撃のみですよね?」
「ええ。回避行動を繰り返し、基礎を身につけることが目的ですから」
「かしこまりました、ご助言に感謝します」
 その間に炎の指導が終わり、フィロが早速講師を務めることになった。
「実は私も受けを重視しておりましたので、フリーデ様のお話は耳が痛いです。
 ですがお役に立てるのなら努めましょう」
『ああ、頼むぞ。フィロ!』
「では、参ります!」
 グローブを嵌めたフィロが地を蹴りフリーデに肉迫する。拳が風を切ると大粒の水飛沫が宙に舞った。
『っ!?』
「格闘士は得手とする武器に射程が短い物が多く、気やマテリアルを活用します。
 この飛沫は気功と見做してください」
『なるほど、これはスキルに見立てた予習だな』
「はい、きっと後に役立つでしょう」
 フィロが微笑み、再び拳を構えた。
 その様子を澪が黙々とスケッチする。訓練の記録を詳細に残しているのだ。
「澪。今日もすごい。たくさんの絵」
「これは一人でも練習できるように。後でフリーデに渡す」
「きっと喜ぶ。澪がこんなに頑張ってくれてるもの」
 澪の真心に思わず香墨が目を細めた。


●ブレイクタイム

 1体1の訓練を一通り終えたところでフィロが訓練の予定表を確認した。
「次は複数人による攻撃ですね」
「ええ。でも今は練習段階だからこれを使うわ」
 アルマ提供の目玉を模したスーパーボールを手にリアリュールが微笑む。
 フリーデがロープで区切られた円に入るのを見つめ、ボルディアは思った。
(最低でもここまではクリアさせねぇとな……)
 その時、コーチ役のアルマも円に入った。
「アルマも回避役をすんのか?」
「はいっ、回避のお手本と助言をするですっ」
 一方、リアリュールがフリーデへウィンドガストを付与した。
 準備が整ったところでスーパーボールを握った香墨が言う。
「身体動かすのも。攻撃逸らすのも。
 どっちもできれば。きっと楽。今更かもしれないけど。どこからどうくるとかって」
 華奢な腕を振り上げる。彼女が持つボールそのものは小さい、だから避けること自体は容易だが。
「ボールはまだあるんだぜ! 全部躱せるか!?」
 タイミングをずらし、ボルディアが運動用のボールを投げる。
 続いてツィスカ、リアリュール、フィロも種類の違うボールを投げたり弾ませたり転がしたり。
 無数のボールにすぐさまフリーデが混乱した。
「焦ったらだめ。攻撃手の注視だけでなく視界全体も薄く意識するです。音や空気の流れも感じるですよ」
 アルマが転がるボールを軽く片足を上げ、躱した。
『了解した。落ち着いて、やる!』
 次第にフリーデは足音とボールの行き交う音――そして風の気配を感じ取り攻撃を躱すようになっていく。
「これなら次の段階に行けるでしょう。スキルを使う全力訓練に」
 そう言うとツィスカはフリーデに触れることなく落ちたボールを回収した。


●全力訓練

「これからは本気でいくぞ。俺は通常攻撃のみだが、その代わり実戦に近い力で行かせてもらう!」
 そう宣言した炎にフリーデが『ああ、いつでも!』と返すと彼は強く地を蹴った。
 まずは下からの突き上げ。それをフリーデが身を反らして躱す。
 そして彼女が後退し体勢を整える最中、炎が刃を返し腕を強く打った。
「意識を途切れさせるな!
 今は幾重にもわたる連撃や属性を変えた連続攻撃がある、この程度躱せるようにならないとなっ!」
 容赦なく攻撃を続ける炎。だがその胸中は複雑だ。
(カレンベルクさんの戦士としての矜持は大切だろう。しかし戦場で死なせないために……俺は!)
 決意を込めた振り、薙ぎ、刺突。そしてわざと躱させた後の柄による打撃。
 シンプルだが鍛え抜かれた業を一身に受け、フリーデの肌が腫れあがる。
 急いでフィー・フローレ(kz0255)が傷を癒した。
 そして何度もフリーデは諦めず立ち上がり、最終的に炎の攻撃ルーティンを一度だけ全て躱した。
「まぁ、こんなものだろう」
 静かに炎が太刀を納める。フリーデがその背に一礼した。
 続いて「フリーデ殿、お相手いたします」と立候補したのはツィスカ。
 彼女は障害物エリアでダーツを素直な軌道で飛ばす。
 フリーデは先のボールの訓練で慣れたのだろう、何度も冷静にそれを避けた。
 そこでツィスカが表情を引き締めるや、ダーツにマテリアルを込める。
「今なら試しても大丈夫でしょう。フリーデ殿、これはいかがですかっ!」
 突然見当違いな方向にダーツを投げるツィスカ。
 フリーデが唖然とするも右方から金属音が響き――その腕にダーツが当たった。
『なにっ!?』
「これは跳弾。射撃の基本にして、市街地や屋内戦で非常に有効な技です。
 一度躱せたとしても油断なさらぬよう。さぁ、もう一度参ります!」
 得意げな笑みを浮かべ再びダーツを構える。フリーデは耳を澄ませ、ツィスカの動きを見つめた。
 ――カッ!
 軽い音を聞くや相手の視線を捉え左へ跳ぶ。しかしダーツは無情にも腰に当たった。
『目を使ったフェイントか』
「はい。攻撃は敵の動きで全て読めるとは限りません。感覚全てを鋭敏にすることが肝要です」
 フリーデは彼女のしなやかな強さに闘志が芽生え『もう一度頼む!』と叫んだ。
「ええ、ご納得いくまで!」
 しばらくしてツィスカによる訓練が終わった後、今度はリアリュールがコーチとして弓を握った。
「私は弓で指導します。最初は2本の同時攻撃、
 それが十分に回避できたら目一杯射撃します。集中して見極めてくださいね」
『うむ、頼むぞ』
 そこで訓練を開始するも、直線的な軌道で2本程度なら安定して躱せることがすぐに判明した。
(もう大丈夫ね。それなら)
 矢が瞬時にリロードされる。そして超高速で高威力の矢を撃ち尽くすハイペリオンが発動した!
『!!?』
 8本の矢がフリーデを次々と襲う。
 最初の3本は辛うじて躱したが、残り全てが体に当たり激痛が奔る。
 フィーと香墨が急ぎ治療を施した。
 リアリュールは2人に感謝し、再び矢を番える。
「フリーデ様、もう一度ハイペリオンを使います。
 この技は同時攻撃ではなく連射。集中すれば躱せるはずです。ダンスの動きを思い出して!」
 細い指から間断なく放たれる矢。
 フリーデは体を斜にして避け、次は身を低くしてやり過ごし、左後方にステップ。
 流石に最後の2本は躱しきれなかったが、格段に動きが良くなった。
「動きが大分よくなりましたね、私の指導はここまで。後はアルマさん、お願いします」
「はい! 僕は得意な魔法で厳しく指導するですよ。じゃないと、君のためにならないですから。ね?」
『そうだ。存分に頼む』
 アルマが頷き、デルタレイを唱える。
 彼はフリーデの立ち位置と彼女の癖でステップを踏みそうな場所2か所へ光を放った。
『格好悪くともッ!!』
 大きく跳び退り回避する。だがアルマの顔が険しい。
「着地が不安定だと動きが途切れます。体勢を崩さず、体幹を意識してください!」
 再びデルタレイを詠唱。フリーデは体を捻り最低限の動きで回避するも、光が脇腹を穿った。
『ぐっ!』
「今のも駄目です。もう一度!」
 本当は妻を苦しめたくなどない。でもここで手心を加えたり訓練を止めたらきっと後悔する。
 だから彼は何度もデルタレイを唱える――と、フリーデが意表を突いて突進して回避。
 アルマの杖を奪った。
『はぁ、はぁ……これでどうだ』
「合格です。フリーデさん」
 アルマが笑った。
 残りは複数人による全力攻撃訓練だけだ。


●ウィンドベルの音色

「澪、火の力を。その方が危機意識を持てる。
 ……フリーデ、当たると痛いと思うけど。優先して避けて」
 最後の訓練開始直前に香墨が澪の太刀へファイアエンチャントを施した。
 そして訓練が始まるや、アルマがデルタレイを放ち、
 光を躱したフリーデを障害物の陰に隠れていたツィスカが跳弾を込めた矢を放つ。
 この連携で戸惑うフリーデの懐に澪が跳び込み疾風剣で体勢を崩した。続いて。
「これで使うのって。まだ慣れないけど。動きを封じるけど、どう避ける?」
 香墨がプルガトリオでフリーデの足を地面に縫い留めた。
 それでも体を捻り、しゃがみ、反らし、攻撃を躱そうと粘るフリーデ。
 だが足が動くことは叶わずアルマのデルタレイを受け、斧を取り落とし……訓練は終わった。


●休息

「疲れた時には甘味、塩気のあるもの、水分が有効です。意見交換は寛ぎながらの方がよろしいかと」
 訓練終了後、フィロはサンドイッチ、塩キャラメル、
 クッキーの乗った皿をテーブルに置き、紅茶を皆に勧めた。
 ここはコロッセオのロビー。澪がスケッチブックを開き、今日の結果をフリーデに説明する。
「フリーデは意識が極端になりがち。回避を攻撃の一側面として考えて。
 回避を活かせば相手の不意をつける。より深い物理的・精神的ダメージを与えられる」
『なるほど、回避のみでは私は大きく動いてしまうのか。
 回避を攻撃に繋ぐ手間と捉えた方が良いな。ありがとう、こうして絵で見るとよく解る』
 その様子を炎は黙して見つめた。
(回避をマスターしたとは言えないが、一日でここまでなら十分だ。本人は今もやる気のようだし)
 一方、ボルディアがサンドイッチを片手にフリーデの肩を軽く叩いた。
「まぁ、避けられない攻撃ならあえて受けた方が怪我は少ないと思うぜ。
 あと火属性の敵が出たら仲間に頼れ。今はお前ひとりじゃねえんだからさ」
『感謝する、ボルディア』
 今までのことを思い出し、赤面するフリーデ。そこにアルマが肩を寄せる。
「今日は十分です、フリーデさん!
 わふふっ、良い子にはご褒美ですー。何して欲しいです? 何でもしたげるです!」
 先ほどの厳しさはどこへやら。フリーデは『ありがとう』と微笑み、彼を強く抱きしめた。

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MVP一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • よき羊飼い
    リアリュールka2003
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワースka4901

重体一覧

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • アウレールの太陽
    ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 比翼連理―瞳―
    澪(ka6002
    鬼|12才|女性|舞刀士
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士
  • 比翼連理―翼―
    濡羽 香墨(ka6760
    鬼|16才|女性|聖導士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
アルマ・A・エインズワース(ka4901
エルフ|26才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2019/06/19 11:21:34
アイコン 相談卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/06/20 07:42:48
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/06/14 20:48:17