ゲスト
(ka0000)
悲憤慷慨
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/30 07:30
- 完成日
- 2015/02/06 20:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
世の中は理不尽に出来ている。
生きたいと願う者が死に、命を粗末にする者が生き残る。
神様なんていやしない、いたとしても天邪鬼な神様だけだ。
※※※
その日、ハンター達に課せられたのは救助任務だった。
5名で任務に赴いたハンター達の消息が不明となり、状況的に厳しい事になっているのだろうとギルドは判断した。
「場所は昼間でも木々が鬱蒼としていて、少し薄暗いかと思います」
「……任務に赴いたハンターが生存していれば救助を、死亡していた場合は……」
案内人はそれ以上の言葉を言わなかった。
彼らが任務に赴いて2週間、ハンターの生存は絶望的だとわかってるからだろう。
「発生した雑魔は植物型、こちらに要請が来た時は特に注意点はなかったのですが……」
「5人のハンターが消息を絶ったことを考えると、何かしら油断ならない部分があるのかもしれません」
これからハンター達が赴く森は地図など存在せず、近くに集落もない。
森に一歩足を踏み入れた時から警戒を緩められない緊張続きの任務となるだろう。
「これが、雑魔についてわかっている資料です」
案内人から資料を受け取り、ハンター達はギルドを後にしたのだった。
リプレイ本文
●雑魔退治のために集まったハンター達
「2週間……生きているならば最善は尽くそうが……まぁ、確かに厳しいか」
弥勒 明影(ka0189)は小さなため息を零しながら呟いた。
「けど、可能性はあるはずですぜ」
伊出 陸雄(ka0249)は拳を強く握り締めながら弥勒に言葉を返す。
弥勒自身も生存しているのならば全力を以て救おうという考えはある。
ただ、弥勒自身も可能性の問題として言っただけなのだろう。
そして、伊出自身も目の前で仲間を殺され、自分だけが生き残るという経験をしているからこそ、生存の可能性を捨てきれない、助けたいという気持ちが強いのだ。
「現れた雑魔は食人植物だったな。呑まれて抵抗出来ずにその身を溶かされる様……想像すると、少しゾクゾクしてくるのぅ」
クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)は資料を見ながら呟く。
「どんな方法で攻撃してくるか分からないけど、気をつけるに越した事はないでしょうね」
ベル(ka0738)は淡々とした口調で呟く。
「森に雑魔が巣くっていると周りにも迷惑だし、行方不明のハンターさん達も助けよう……!」
時音 ざくろ(ka1250)は行方不明のハンター達が生きていると信じて呟く。
「……正直、資料だけじゃ頼りないっすね。やっぱり雑魔がどんな感じなのかは現地で戦って知るって事っすかねぇ」
狛(ka2456)は資料を見ながら、苦笑気味に呟く。ハンター達に知らされているのは極僅かで、戦い方、気を付け方などは自分達が戦って気づくしかない。
「先行しているハンター達が生存している可能性がある限り、時間との勝負になりそうだね。なるべく迅速に行動して行こう」
ルーエル・ゼクシディア(ka2473)も険しい表情で呟く。
ハンター達の行動次第で生存者が助けられるか、そうでないかが決まるのだから、ルーエルが険しい表情を見せるのも無理はないだろう。
「先行したのは5名ですよね? 5名で難しい所を8名で、大丈夫でしょうか?」
ミオレスカ(ka3496)が首を傾げながら呟く。
「……いえ、ここは先に行った方と協力出来る事を期待しましょう」
ミオレスカは先行したハンター達が無事でいる事を疑っていないようだ。
もちろん他のハンター達もそう願いたいけれど、2週間という期間、それぞれが無事でいる可能性は限りなく低い事も気づいている。
だからこそ、信じたい気持ちが強いのだろう。
「日中でも薄暗い場所のようですし、気を付けましょうね」
ミオレスカが呟き、ハンター達は最後の準備をして問題の森へと出発したのだった。
●薄暗き森に潜む食人植物
今回は生存者救助もあるため、時間との勝負になっている。
だから、ハンター達は班を2つに分けて行動をする作戦を立てていた。
A班:ベル、狛、ルーエル、ミオレスカの4名。
B班:弥勒、伊出、クラリッサ、時音の4名。
「生存者を見つけたり、雑魔見つけたりしたら通信機ですぐに伝えるっす」
狛の言葉に「俺達もおかしな事を見つけたり、何かを発見次第すぐに連絡する」と弥勒が言葉を返し、ハンター達はそれぞれの班で行動を開始し始めた。
※A班
「……森全体が甘い匂いがする気がする」
ベルは無表情のまま、周りを警戒しながら呟く。
「そういえば、確かにそうっすね。資料にも甘い香りがどうのって書いてあったし、念のためにこの匂いを長く嗅がない方がいいかもしれないっす」
狛が呟き、A班のハンター達はそれぞれ持参して来たもので鼻と口を覆う。
「匂いの事、B班にも伝えておきますね」
ミオレスカは『トランシーバー』を取り出して、B班に匂いに気をつけるように伝える。
その連絡を行った際、先行班が残したメッセージを見つけたとB班から告げられた。
「水たまりに気をつける? ……雨も降った様子がないですし、水たまりなどなさそうですけど」
B班からの連絡にミオレスカは首を傾げ、彼女の言葉を聞いていたA班のハンター達も首を傾げる。周りを見ても地面はぬかるんでいる様子はない。
「……ここまで歩いた限り、水たまりはありませんでしたけどね」
ルーエルも首を傾げながら「ですが、先行者が残したメッセージならば注意するに越した事はありません」と言葉を付け足した。
「この香りが雑魔の出しているものならば、風下に立たない方がいいですね。少し遠回りをする事になりますが、風下を避けて歩きましょう」
ベルが呟いた時「きゃっ」とミオレスカの小さな悲鳴が聞こえた。
「どうしたっす、か……って、これ……」
狛がミオレスカの元に向かうと、そこには人骨が散らばっていた。
しかも、その周りには武器らしき物まであり、先行していたハンターの可能性が高い。
「……頭蓋骨が3つ、恐らく5人の中の1人……」
普段は無表情のベルでさえも、驚きを隠せない様子だった。
「先行したのは5人でしたよね、この人骨が3名のものだとして残り2人はどうしたんでしょう」
ルーエルが首を傾げながら呟いた時、少し離れた場所で男性の悲鳴が聞こえてきた。
※B班
「水たまりに気を付けろ、か。随分と曖昧な言葉だな」
弥勒は木に残されたメッセージを見ながら、小さなため息を吐いた。
慌てて彫ったような痕跡があり、恐らくこの言葉しか残せなかったのだろうという事は分かる。
「匂いに続き、水たまり……謎が謎を呼ぶって感じだねぇ」
伊出も苦笑気味に呟き、周りの警戒を強める。
「……む、何か妙な音が聞こえぬか?」
耳を澄ませていたクラリッサが眉根を寄せながら、左側を向く。
「あ、連れて来た犬も何か唸ってるし……もしかして、早々に発見ってパターンかな?」
時音はしっかりと手綱を持ち、連れて来た犬が暴れてはぐれないようにしている。
「……ねぇ、あれってもしかして、骨?」
時音が引きつった声で呟き、指を指したのは無造作に散らばっている骨。
あきらかに人の骨であり、溶けた肉が骨にこびりついていて思わず吐き気を催しそうだった。
「恐らく、先行者の骨じゃな。武器は食さぬらしく吐き出されておるわ」
クラリッサが指差した方にはハンターが持っていたらしき武器が転がっている。
「最悪の状況も想定して動かなければならないみたいだな」
弥勒は散らばる骨に眉根を寄せながら呟く。
「……あれって、もしかして残されていたメッセージの『水たまり』じゃないですかね」
伊出が指差した方には大きな水たまりがあり、怪しさを醸し出している。
「雨が降った様子もないのに……」
時音が呟いた時、水たまりの中から大きな何かが現れ、男性の悲鳴が響き渡った。
●戦闘開始、食人植物 VS ハンター達
「今の声は、あの植物の中からかのう?」
クラリッサは自分の方にやってくる蔓を避けながら呟く。
雑魔が現れたと同時に悲鳴が聞こえた。けれど、A班はここにいないし、B班のハンター達は誰一人として声を上げていない。
つまり――……。
「あの中でお食事中、というわけか」
成人男性でも簡単に入るような袋を持ち、中央の花から甘ったるい香りが鼻をくすぐる。
「この匂いはやばそうですね……!」
匂いに対しての対策は行っていたが、更に鼻を覆うハンター達。
雑魔は咆哮のような呻き声をあげながら、ハンター達めがけて攻撃を仕掛ける。
「あ、あれは……っ!」
時音が自分の視界に入って来たものを見て驚く。
雑魔の袋になっている部分、そこから見えたのは紛れもなく人の手。
しかも骨ではなく普通の人の手だった。
「皆さん! あの中に、人が入っています! 恐らく、5人のうちの1人です!」
時音の言葉を聞き、ハンター達の表情が険しくなる。
「雑魔だけなら、一気に叩き潰せば済む話なのだがな……」
弥勒も眉根を寄せながら呟く。あの中に生存者がいるかもしれないと分かった以上、無茶な戦いは出来なくなってしまう。
その時、別行動を取っていたA班が合流した。
そして、雑魔の攻撃を避けながら状況を説明する。
「まずは生存者を救出することが最優先ですね、しかしあの袋の内部がどうなっているかわからない以上、強硬手段は取れない……あの中から引きずり出すしかないでしょうか」
ミオレスカも、それをどうやって行うかを思案しながら呟く。
「あの袋以外を攻撃すればいいんじゃねえですかい? あんまりゆっくりしていると、あの中の人も骨にされちまいそうですからね」
「それなら、妾が『スリープクラウド』を使って眠らせればどうかの? 動きを止めればあの中の人間を助ける事も容易いのではないかえ?」
クラリッサの言葉に「……その方法しかなさそうだね」とベルが短く呟く。
「でも気をつけるっす! 先に見つけた3人は、酸のようなもので溶かされてたっぽいですし!」
狛の言葉にハンター達は頷き、それぞれがタイミングを計り始める。
雑魔を囲むような陣形を取った後、クラリッサが『スリープクラウド』を使用する。
その途端、がくん、と雑魔の動きが止まり、ハンター達は呑まれた人間を助けるために動く。
「がはっ、は……っ、はぁ……!」
「とりあえず下がろう」
ルーエルが救助対象を連れて後方に下がる。そして『ヒール』を使用する。
「……他の奴らは、あいつらも呑まれて……ごほっ、頼む、あいつらも助けてくれ」
必死に懇願してくる救助対象者の姿を見て、ルーエルは少しだけ眉根を寄せた。
「とりあえず、まずは雑魔を退治するのが先決です。あなたはここで傷を癒してください」
ルーエルの言葉に、まだ何か言いたげだったけど救助対象者も精神的に疲弊しているらしく、黙ったまま頷いて答えた。
「人には意志があり、克己という自律こそ人が故の行動なれば……惑わしなどには負けんよ」
弥勒は不敵に微笑みながら呟き『オートマチックピストル』で攻撃を仕掛ける。
「さっさと消えろ! これ以上の悪食は見逃せねぇ……!」
伊出は『バトルアックス』を勢いよく振り上げ、雑魔に攻撃を仕掛ける。既に4名の死亡確認を見届けているためか、ハンター達は雑魔に対して遠慮はない。
「汝は捕食者なのであろう? 立場を入れ替えれた気分はどうかえ? 追い立てられる者の気持ちを存分に味わいながら去ね」
クラリッサは『マジックアロー』を使用しながら冷たく言葉を投げかける。
「……飛燕」
ベルは小さく呟き『飛燕』を使用して『ナックル・メテオブレイカー』で攻撃を行う。
無表情に見えるけれど、雑魔を攻撃する力は強く、心に怒りを溜めているのが分かる。
「機導力フルチャージ……これでもくらえ!」
時音も怒りを顔に滲ませながら雑魔に攻撃を仕掛ける。
考えても仕方ないと分かっていても、4名の犠牲者が出た事に心を痛めずにはいられなかった。
「人間は食べ物じゃねーっすよ!」
狛は低い声で呟きながら『地を駆けるもの』を使用して、雑魔との距離を詰め、力よりも手数の多さで攻撃を仕掛けていた。
「……人間を4人、もしかしたら僕達が知らないだけでもっと犠牲者がいるのかもしれない。中々悪食なようだけど、僕のも食べてみる?」
ルーエルは『パイルバンカー』を構え、情けを一片たりとも見せず攻撃を仕掛ける。
それぞれが怒りを胸に秘めたまま戦い、ミオレスカの攻撃を受けて、雑魔は息絶えたのだった。
●残酷な現実
「俺以外は、全滅……?」
雑魔を倒した後、救助したハンターに他の4名は既に死亡している事を伝えた。
下手な嘘を言うよりもしっかりと現実を見た方がいいと考えたからだ。
「そんな……死ぬとするなら命を粗末に扱ってた俺だろう……! どうして、あいつらが……!」
話を聞けば、この男性のミスのせいで他のハンター達は死亡したと見られる。
だからこそ、後悔や罪悪感が酷く胸を刺すのだろう。
「お辛いでしょう、本当に、お辛い……」
似た経験を持つ伊出だからこそ、男性に掛ける言葉が見つからない。
今の状況では何を言っても気休めにすらならないと伊出自身が分かっているからだ。
けれど、どうしても彼には伝えたい言葉があった。
「……生き残っちまった人間は、生きるしかねぇ。辛くても」
自分がそうだったように、と伊出は心の中で言葉を付け足す。
「俺には掛ける言葉など見つからんが、仲間に顔向けできない事だけはするなよ」
精神的に危うい男性に向けて、弥勒が言葉を投げかける。
「俺も、同じ意見です。仲間の死を悼むなら、これからの自分が何を出来るかを考えて欲しい」
ベルはそれだけ呟くと、ハンターや男性に背中を向ける。
「亡くなった人は残念だけど、良かった……一人だけでも助けられて!」
時音はうるっと瞳を潤ませながら呟く。
「精神的にも疲れてるだろうし、ともに帰りましょう」
ルーエルは男性に手を差し出す。
その後、ミオレスカは4名の遺品を持ち帰り、ギルドに着いた後に男性に渡した。
(あの人が立ち直るのに時間は掛かるでしょうが、どうか……前を向いて生きて欲しいです)
遺品を持ちながらギルドを去っていく男性の背中を見ながら、ミオレスカは心の中で呟いていた。
END
「2週間……生きているならば最善は尽くそうが……まぁ、確かに厳しいか」
弥勒 明影(ka0189)は小さなため息を零しながら呟いた。
「けど、可能性はあるはずですぜ」
伊出 陸雄(ka0249)は拳を強く握り締めながら弥勒に言葉を返す。
弥勒自身も生存しているのならば全力を以て救おうという考えはある。
ただ、弥勒自身も可能性の問題として言っただけなのだろう。
そして、伊出自身も目の前で仲間を殺され、自分だけが生き残るという経験をしているからこそ、生存の可能性を捨てきれない、助けたいという気持ちが強いのだ。
「現れた雑魔は食人植物だったな。呑まれて抵抗出来ずにその身を溶かされる様……想像すると、少しゾクゾクしてくるのぅ」
クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)は資料を見ながら呟く。
「どんな方法で攻撃してくるか分からないけど、気をつけるに越した事はないでしょうね」
ベル(ka0738)は淡々とした口調で呟く。
「森に雑魔が巣くっていると周りにも迷惑だし、行方不明のハンターさん達も助けよう……!」
時音 ざくろ(ka1250)は行方不明のハンター達が生きていると信じて呟く。
「……正直、資料だけじゃ頼りないっすね。やっぱり雑魔がどんな感じなのかは現地で戦って知るって事っすかねぇ」
狛(ka2456)は資料を見ながら、苦笑気味に呟く。ハンター達に知らされているのは極僅かで、戦い方、気を付け方などは自分達が戦って気づくしかない。
「先行しているハンター達が生存している可能性がある限り、時間との勝負になりそうだね。なるべく迅速に行動して行こう」
ルーエル・ゼクシディア(ka2473)も険しい表情で呟く。
ハンター達の行動次第で生存者が助けられるか、そうでないかが決まるのだから、ルーエルが険しい表情を見せるのも無理はないだろう。
「先行したのは5名ですよね? 5名で難しい所を8名で、大丈夫でしょうか?」
ミオレスカ(ka3496)が首を傾げながら呟く。
「……いえ、ここは先に行った方と協力出来る事を期待しましょう」
ミオレスカは先行したハンター達が無事でいる事を疑っていないようだ。
もちろん他のハンター達もそう願いたいけれど、2週間という期間、それぞれが無事でいる可能性は限りなく低い事も気づいている。
だからこそ、信じたい気持ちが強いのだろう。
「日中でも薄暗い場所のようですし、気を付けましょうね」
ミオレスカが呟き、ハンター達は最後の準備をして問題の森へと出発したのだった。
●薄暗き森に潜む食人植物
今回は生存者救助もあるため、時間との勝負になっている。
だから、ハンター達は班を2つに分けて行動をする作戦を立てていた。
A班:ベル、狛、ルーエル、ミオレスカの4名。
B班:弥勒、伊出、クラリッサ、時音の4名。
「生存者を見つけたり、雑魔見つけたりしたら通信機ですぐに伝えるっす」
狛の言葉に「俺達もおかしな事を見つけたり、何かを発見次第すぐに連絡する」と弥勒が言葉を返し、ハンター達はそれぞれの班で行動を開始し始めた。
※A班
「……森全体が甘い匂いがする気がする」
ベルは無表情のまま、周りを警戒しながら呟く。
「そういえば、確かにそうっすね。資料にも甘い香りがどうのって書いてあったし、念のためにこの匂いを長く嗅がない方がいいかもしれないっす」
狛が呟き、A班のハンター達はそれぞれ持参して来たもので鼻と口を覆う。
「匂いの事、B班にも伝えておきますね」
ミオレスカは『トランシーバー』を取り出して、B班に匂いに気をつけるように伝える。
その連絡を行った際、先行班が残したメッセージを見つけたとB班から告げられた。
「水たまりに気をつける? ……雨も降った様子がないですし、水たまりなどなさそうですけど」
B班からの連絡にミオレスカは首を傾げ、彼女の言葉を聞いていたA班のハンター達も首を傾げる。周りを見ても地面はぬかるんでいる様子はない。
「……ここまで歩いた限り、水たまりはありませんでしたけどね」
ルーエルも首を傾げながら「ですが、先行者が残したメッセージならば注意するに越した事はありません」と言葉を付け足した。
「この香りが雑魔の出しているものならば、風下に立たない方がいいですね。少し遠回りをする事になりますが、風下を避けて歩きましょう」
ベルが呟いた時「きゃっ」とミオレスカの小さな悲鳴が聞こえた。
「どうしたっす、か……って、これ……」
狛がミオレスカの元に向かうと、そこには人骨が散らばっていた。
しかも、その周りには武器らしき物まであり、先行していたハンターの可能性が高い。
「……頭蓋骨が3つ、恐らく5人の中の1人……」
普段は無表情のベルでさえも、驚きを隠せない様子だった。
「先行したのは5人でしたよね、この人骨が3名のものだとして残り2人はどうしたんでしょう」
ルーエルが首を傾げながら呟いた時、少し離れた場所で男性の悲鳴が聞こえてきた。
※B班
「水たまりに気を付けろ、か。随分と曖昧な言葉だな」
弥勒は木に残されたメッセージを見ながら、小さなため息を吐いた。
慌てて彫ったような痕跡があり、恐らくこの言葉しか残せなかったのだろうという事は分かる。
「匂いに続き、水たまり……謎が謎を呼ぶって感じだねぇ」
伊出も苦笑気味に呟き、周りの警戒を強める。
「……む、何か妙な音が聞こえぬか?」
耳を澄ませていたクラリッサが眉根を寄せながら、左側を向く。
「あ、連れて来た犬も何か唸ってるし……もしかして、早々に発見ってパターンかな?」
時音はしっかりと手綱を持ち、連れて来た犬が暴れてはぐれないようにしている。
「……ねぇ、あれってもしかして、骨?」
時音が引きつった声で呟き、指を指したのは無造作に散らばっている骨。
あきらかに人の骨であり、溶けた肉が骨にこびりついていて思わず吐き気を催しそうだった。
「恐らく、先行者の骨じゃな。武器は食さぬらしく吐き出されておるわ」
クラリッサが指差した方にはハンターが持っていたらしき武器が転がっている。
「最悪の状況も想定して動かなければならないみたいだな」
弥勒は散らばる骨に眉根を寄せながら呟く。
「……あれって、もしかして残されていたメッセージの『水たまり』じゃないですかね」
伊出が指差した方には大きな水たまりがあり、怪しさを醸し出している。
「雨が降った様子もないのに……」
時音が呟いた時、水たまりの中から大きな何かが現れ、男性の悲鳴が響き渡った。
●戦闘開始、食人植物 VS ハンター達
「今の声は、あの植物の中からかのう?」
クラリッサは自分の方にやってくる蔓を避けながら呟く。
雑魔が現れたと同時に悲鳴が聞こえた。けれど、A班はここにいないし、B班のハンター達は誰一人として声を上げていない。
つまり――……。
「あの中でお食事中、というわけか」
成人男性でも簡単に入るような袋を持ち、中央の花から甘ったるい香りが鼻をくすぐる。
「この匂いはやばそうですね……!」
匂いに対しての対策は行っていたが、更に鼻を覆うハンター達。
雑魔は咆哮のような呻き声をあげながら、ハンター達めがけて攻撃を仕掛ける。
「あ、あれは……っ!」
時音が自分の視界に入って来たものを見て驚く。
雑魔の袋になっている部分、そこから見えたのは紛れもなく人の手。
しかも骨ではなく普通の人の手だった。
「皆さん! あの中に、人が入っています! 恐らく、5人のうちの1人です!」
時音の言葉を聞き、ハンター達の表情が険しくなる。
「雑魔だけなら、一気に叩き潰せば済む話なのだがな……」
弥勒も眉根を寄せながら呟く。あの中に生存者がいるかもしれないと分かった以上、無茶な戦いは出来なくなってしまう。
その時、別行動を取っていたA班が合流した。
そして、雑魔の攻撃を避けながら状況を説明する。
「まずは生存者を救出することが最優先ですね、しかしあの袋の内部がどうなっているかわからない以上、強硬手段は取れない……あの中から引きずり出すしかないでしょうか」
ミオレスカも、それをどうやって行うかを思案しながら呟く。
「あの袋以外を攻撃すればいいんじゃねえですかい? あんまりゆっくりしていると、あの中の人も骨にされちまいそうですからね」
「それなら、妾が『スリープクラウド』を使って眠らせればどうかの? 動きを止めればあの中の人間を助ける事も容易いのではないかえ?」
クラリッサの言葉に「……その方法しかなさそうだね」とベルが短く呟く。
「でも気をつけるっす! 先に見つけた3人は、酸のようなもので溶かされてたっぽいですし!」
狛の言葉にハンター達は頷き、それぞれがタイミングを計り始める。
雑魔を囲むような陣形を取った後、クラリッサが『スリープクラウド』を使用する。
その途端、がくん、と雑魔の動きが止まり、ハンター達は呑まれた人間を助けるために動く。
「がはっ、は……っ、はぁ……!」
「とりあえず下がろう」
ルーエルが救助対象を連れて後方に下がる。そして『ヒール』を使用する。
「……他の奴らは、あいつらも呑まれて……ごほっ、頼む、あいつらも助けてくれ」
必死に懇願してくる救助対象者の姿を見て、ルーエルは少しだけ眉根を寄せた。
「とりあえず、まずは雑魔を退治するのが先決です。あなたはここで傷を癒してください」
ルーエルの言葉に、まだ何か言いたげだったけど救助対象者も精神的に疲弊しているらしく、黙ったまま頷いて答えた。
「人には意志があり、克己という自律こそ人が故の行動なれば……惑わしなどには負けんよ」
弥勒は不敵に微笑みながら呟き『オートマチックピストル』で攻撃を仕掛ける。
「さっさと消えろ! これ以上の悪食は見逃せねぇ……!」
伊出は『バトルアックス』を勢いよく振り上げ、雑魔に攻撃を仕掛ける。既に4名の死亡確認を見届けているためか、ハンター達は雑魔に対して遠慮はない。
「汝は捕食者なのであろう? 立場を入れ替えれた気分はどうかえ? 追い立てられる者の気持ちを存分に味わいながら去ね」
クラリッサは『マジックアロー』を使用しながら冷たく言葉を投げかける。
「……飛燕」
ベルは小さく呟き『飛燕』を使用して『ナックル・メテオブレイカー』で攻撃を行う。
無表情に見えるけれど、雑魔を攻撃する力は強く、心に怒りを溜めているのが分かる。
「機導力フルチャージ……これでもくらえ!」
時音も怒りを顔に滲ませながら雑魔に攻撃を仕掛ける。
考えても仕方ないと分かっていても、4名の犠牲者が出た事に心を痛めずにはいられなかった。
「人間は食べ物じゃねーっすよ!」
狛は低い声で呟きながら『地を駆けるもの』を使用して、雑魔との距離を詰め、力よりも手数の多さで攻撃を仕掛けていた。
「……人間を4人、もしかしたら僕達が知らないだけでもっと犠牲者がいるのかもしれない。中々悪食なようだけど、僕のも食べてみる?」
ルーエルは『パイルバンカー』を構え、情けを一片たりとも見せず攻撃を仕掛ける。
それぞれが怒りを胸に秘めたまま戦い、ミオレスカの攻撃を受けて、雑魔は息絶えたのだった。
●残酷な現実
「俺以外は、全滅……?」
雑魔を倒した後、救助したハンターに他の4名は既に死亡している事を伝えた。
下手な嘘を言うよりもしっかりと現実を見た方がいいと考えたからだ。
「そんな……死ぬとするなら命を粗末に扱ってた俺だろう……! どうして、あいつらが……!」
話を聞けば、この男性のミスのせいで他のハンター達は死亡したと見られる。
だからこそ、後悔や罪悪感が酷く胸を刺すのだろう。
「お辛いでしょう、本当に、お辛い……」
似た経験を持つ伊出だからこそ、男性に掛ける言葉が見つからない。
今の状況では何を言っても気休めにすらならないと伊出自身が分かっているからだ。
けれど、どうしても彼には伝えたい言葉があった。
「……生き残っちまった人間は、生きるしかねぇ。辛くても」
自分がそうだったように、と伊出は心の中で言葉を付け足す。
「俺には掛ける言葉など見つからんが、仲間に顔向けできない事だけはするなよ」
精神的に危うい男性に向けて、弥勒が言葉を投げかける。
「俺も、同じ意見です。仲間の死を悼むなら、これからの自分が何を出来るかを考えて欲しい」
ベルはそれだけ呟くと、ハンターや男性に背中を向ける。
「亡くなった人は残念だけど、良かった……一人だけでも助けられて!」
時音はうるっと瞳を潤ませながら呟く。
「精神的にも疲れてるだろうし、ともに帰りましょう」
ルーエルは男性に手を差し出す。
その後、ミオレスカは4名の遺品を持ち帰り、ギルドに着いた後に男性に渡した。
(あの人が立ち直るのに時間は掛かるでしょうが、どうか……前を向いて生きて欲しいです)
遺品を持ちながらギルドを去っていく男性の背中を見ながら、ミオレスカは心の中で呟いていた。
END
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【相談卓】食べられません ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/01/30 00:26:38 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/26 05:43:58 |