ゲスト
(ka0000)
滅べ、バカップル
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/03 09:00
- 完成日
- 2015/02/04 04:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●冬は寒い。しかし恋人たちは熱い
「はい、あーん」
「うん、美味しいよ」
「嬉しいわ、貴方のために作った料理を気に入ってくれて」
「君の手料理は世界一だ。リアルブルーの料理だってここまで美味しくないに違いないよ」
「まぁ、褒めても……デザートしか出ないわよ」
きゃっきゃうふふと言わんばかりのオーラが街の憩いの場所である広場から聞こえてくる。
寒い中、大きな一つのブランケットを二人で肩からかけて身を寄せ合い、互いの体温で暖を取る、いわゆるバカップル。
独り身の、そろそろ婚期に差し掛かる人間が見たら精神的に受けるダメージが大きすぎるあまり発狂してしまうかもしれない。
もはやある種の凶器に近い甘い空気は辺りがピンク色になっている錯覚すら起させる。
それは恋人のいない人間にもっとも効力を発揮するはずの凶器だった。
しかしそれを凶器と感じるのは人間だけではなかったのである。
「……今までいろんなゴブリン退治を依頼してきたけどさぁ。今度はリア充爆発しろ、を物理的にやっちゃうモテないやもめゴブリン退治なんだよね」
で、ゴブリンが襲撃の場所として選んだのがカップルたちの多く集まる、寒いのにラブラブオーラに満ちて熱い広場。
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は眉間のしわを揉み解しながら言葉を続けた。
「一時的に閉鎖の処置も考えられてるんだけど、そうすると今度はゴブリンが野放しになっちゃう可能性があってさ。
とりあえず一日閉鎖して君たちにカップルを偽装してもらって、釣られたゴブリンを退治してもらおうって算段。
嫉妬でなんか強くなってるっぽいけど一体だしそこまで苦労はしないかな。
ただし相当ラブラブな振りをしないと偽装だと見抜いて他にいっちゃうから注意して。
その場で一番ラブラブなカップルに襲い掛かるから複数囮班を作って、かく乱とどこに向かわせるか迷わせてる間に一網打尽でもいいんじゃないかな。
ちなみにゴブリンの武器は斧ね。振り回して攻撃してくるよ。
怒りと嫉妬でパワーアップしてる割に確実に葬ろうとする感情が狙いを正確にしてるから一応気を付けて」
じゃ、頼んだよ。なんで僕のところに来る依頼は変なのばっかりなんだろうなぁ……後半は完全に愚痴になりつつルカはひらりと手を振ってハンターたちを見送ったのだった。
「はい、あーん」
「うん、美味しいよ」
「嬉しいわ、貴方のために作った料理を気に入ってくれて」
「君の手料理は世界一だ。リアルブルーの料理だってここまで美味しくないに違いないよ」
「まぁ、褒めても……デザートしか出ないわよ」
きゃっきゃうふふと言わんばかりのオーラが街の憩いの場所である広場から聞こえてくる。
寒い中、大きな一つのブランケットを二人で肩からかけて身を寄せ合い、互いの体温で暖を取る、いわゆるバカップル。
独り身の、そろそろ婚期に差し掛かる人間が見たら精神的に受けるダメージが大きすぎるあまり発狂してしまうかもしれない。
もはやある種の凶器に近い甘い空気は辺りがピンク色になっている錯覚すら起させる。
それは恋人のいない人間にもっとも効力を発揮するはずの凶器だった。
しかしそれを凶器と感じるのは人間だけではなかったのである。
「……今までいろんなゴブリン退治を依頼してきたけどさぁ。今度はリア充爆発しろ、を物理的にやっちゃうモテないやもめゴブリン退治なんだよね」
で、ゴブリンが襲撃の場所として選んだのがカップルたちの多く集まる、寒いのにラブラブオーラに満ちて熱い広場。
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は眉間のしわを揉み解しながら言葉を続けた。
「一時的に閉鎖の処置も考えられてるんだけど、そうすると今度はゴブリンが野放しになっちゃう可能性があってさ。
とりあえず一日閉鎖して君たちにカップルを偽装してもらって、釣られたゴブリンを退治してもらおうって算段。
嫉妬でなんか強くなってるっぽいけど一体だしそこまで苦労はしないかな。
ただし相当ラブラブな振りをしないと偽装だと見抜いて他にいっちゃうから注意して。
その場で一番ラブラブなカップルに襲い掛かるから複数囮班を作って、かく乱とどこに向かわせるか迷わせてる間に一網打尽でもいいんじゃないかな。
ちなみにゴブリンの武器は斧ね。振り回して攻撃してくるよ。
怒りと嫉妬でパワーアップしてる割に確実に葬ろうとする感情が狙いを正確にしてるから一応気を付けて」
じゃ、頼んだよ。なんで僕のところに来る依頼は変なのばっかりなんだろうなぁ……後半は完全に愚痴になりつつルカはひらりと手を振ってハンターたちを見送ったのだった。
リプレイ本文
●飛び交うハートと上昇し続ける体感気温
恋人同士が仲睦まじく過ごすデートスポットとして一部の存在には有名な広場。
いつもはバカップルと称される部類のある種の生物兵器が跋扈するこの場所は、今日は実は閉鎖されている。
婚期が過ぎる去ることに焦りを感じ始める独り身が嫉妬に駆られて傷害事件、が危惧されそうな場所ではあるが加害者は人間ではなかった。ゴブリンだった。
物理的にリア充を殲滅しようとするそのゴブリンという存在すら二人の恋の着火剤にしようとバカップルたちは目撃情報が寄せられてからも広場を利用していたのだが、実際に被害が出てからでは遅すぎる。
「ふっ、今日はあのやかましい監視役もいねぇ……つまりシルヴィを口説くなら、今!」
閉鎖した広場で、ハンターがカップルを偽装してゴブリン退治、が今回の目的なはずなのだがキー=フェイス(ka0791)はそんなことを堂々と宣言した。
パートナーとして隣を歩くのはシルヴェーヌ=プラン(ka1583)だったがその言葉を聞いて顔が見る間に赤く染まっていく。
「相手を誘き出すとはいえ、こ、小っぱずかしいのぅ!」
自分の両親のようにいつまでも新婚状態な振る舞いをするのか、と恥ずかしさのあまり錯乱気味のシルヴェーヌを見てキーは可愛らしいことだと薄く笑う。
実際には恋人同士ではない二人だがはた目には十分仲睦まじい恋人同士に見えるやり取りだ。
仲の良さを見せつけるためベンチの一つに座るとシルヴェーヌは今日のために作ってきたクッキーを包んだ袋を手荷物から取り出す。
「そ、その……口を開けるのじゃ! わしが食べさせてやろうぞ!」
恋人に「あーん」はデートで食事をするときの基本技だが定石なだけに安定の破壊力を発揮するものでもある。
「へぇ、手作りか……美味いぜ、シルヴィ。美人でお菓子作りもうまいって、いい奥さんになりそうだよな。
そういや、寒くねえか、シルヴィ?」
甘さを演出する意図だけでなく本心からの気遣いも込め、キーはそう問いかけた後シルヴェーヌに自分のマフラーを進呈。
お礼を言う前にそのまま抱き込まれてパニックに陥るシルヴェーヌと抱き込んでいるキーを見て、周りにいる仲間たちも思わず注目。
「いやぁねぇ。ヤキモチ焼いてる暇があるならその時間を自分磨きにでも当てればいいのに。
ひがんでたって人生の春は来ないのよ」
「寂しいのかもしれないけど迷惑かける以上は倒さなきゃいけないんだよね」
Non=Bee(ka1604)はHachi=Bee(ka2450)と戯れながら酒を飲み。
「いや~しかしこの時期はどの世界も賑わうのでござるな~。リアルブルーにいたころはよく学友が爆発していたものでござるようんうん」
烏丸 薫(ka1964)はお茶でほっこりしつつ周りを見守りながら、クリムゾンウェストの出身者が聞いたら激しい誤解を招きそうな発言している。
「すっごい組み合わせ」、と内心思っている菫だが彼もそのカオスなメンバーを構成する一員ではある。
一角でそんな混沌とした空気が生み出される中、ルゥルゥ・F=カマル(ka2994)とソレイル・ラ=ジャンティ(ka3083)は恋仲の間柄なので当然パートナーには互いを選び、せっかくなのでゴブリンが出るまではデートのノリで。
「……なぁ、デートらしい格好とはいったが、これで本当に大丈夫なのか?」
慣れないスカートと、猫耳を落ち着かない気分で撫でながらルゥルゥが問う。
依頼を口実にデートに誘われたものの人目が気になる初々しい年頃だ。
「ん、似合ってるよルゥちゃん。可愛いよ」
恥ずかしげなルゥルゥとは対照的に気負うことなく断言するソレイル。
ゴブリンがおびき寄せられていないか確認するという名目で散歩をしながらキーたちとは別のベンチで休憩をすることに。
「寒い時は温かい飲み物がいいよね。はい、どうぞ」
飲み物が熱くないか一口自分で飲んだ後、コップを自然な動作で差し出され間接キスになる事に狼狽する二人の周りの空気に色を付けるなら全員がピンクを選び、ついでにハートを乱舞させることだろう。
ソレイルがルゥルゥの手作りの菓子を褒めながら、いつもはしていない手袋を訝しみ、その下にあった怪我を見つけて気遣う甘いひと時は、しかし長くは続かない。
「滅べ、バカップル……!」
カオスより糖度が増し、場の空気がマーブル模様を描き始めたあたりで地獄の底から這うような低い声が広場に響き渡る。
「嫉妬……って、ゴブリンにもそういう感情あるんだ……なんだか不思議。
それにしても凄い声。どうやって出してるんだろう」
ラブラブが苦手で少し離れたところで待機していた依神 隼瀬(ka3684)はゴブリンを視界に収め、声を聞いて思わずそんなつぶやきを漏らす。
「そこは空気読んでカップルがちゅーするまで待ちなさいよあんた」
酒を飲んでいる間にほろ酔いになったらしいNonがHachiを抱き寄せた状態でゴブリンに文句を言うがセリフ的にも絵的にも嫉妬を煽る以外の何物でもなかったためゴブリンの形相が形容しがたい極限状態に進化する。
「おーおー、いかにもモテませんって顔してやがるぜ……個性的な見た目だしよ」
シルヴェーヌを背後にかばいながらキーが立ち上がり、他のメンバーも目立たないように隠しておいた武器を次々と抜き放つ。
「滅ぶベシ!」
「馬鹿野郎! あいつらリア充は勝ち組に見えるけどな! 実際のところ大半は理想を諦めて妥協に走った負け組なんだぞ! 諦めないお前の方が、ステキかもしれないだろ!」
リア充を演じていたキーが言っても説得力はあまりない気がするが、先ほどとは違う意味で場は混沌とし始め、体感気温は上がり続ける。
「リア充ガ何を言ウ!」
「見た目は大事だけどな! 勝負を決めるのは容姿だけじゃねえんだ! 俺はボンキュッボンな姉ちゃんやカワイコちゃんには目を奪われるけどな!
こんなところで負け組相手にしてる暇があれば、自分を磨きやがれ!」
何だか熱くなっているキーの言葉にリア充のルゥルゥとソレイルが顔を見合わせ、喧嘩を売られてるのか、と相談を始める始末だ。
「や、やっと現れおったか!! こ、この恥ずかしさなのか怒りなのか喜びなのかようわからんわしの体の火照り、貴様をコテンパンに叩きのめして冷ますのじゃ!!」
そう言いながらシルヴェーヌが放ったのは冷ますどころか燃え上がる炎の矢で、混乱が残っていたのかキーを巻き込みかける事態も同時に発生。
「……後ろから飛んでくる味方の攻撃の方がこわいってこれなんて修羅場でござろうな~」
誤射したらごめんね、というHachiの声の角度から射線を割り出して回避しながら菫は若干遠い目になり気味。
「キー殿も禁断症状になったらあのゴブリンみたいになりそうでござるな!」
「溜め込んでる鬱憤具合ではいい勝負しそうかも……」
本人以外は納得顔をしながらそれぞれの獲物でゴブリンに向かって多角方面からの攻撃を仕掛けていく中、一番怖いのは菫の言う通り背後からの仲間の誤射という「仲間とは」と問いかけたくなる戦線は激しさを増していく。
ソレイルが狙われないように斬りこむルゥルゥと、そんなルゥルゥを支援するソレイルのカップルにどうやらゴブリンは集中攻撃を仕掛け、一矢報いて散る覚悟を決めたようだった。
その間どれだけ危機に陥ろうが、リア充が実は負け組だと叫ばれようが、仲がいいところを見ると攻撃を仕掛けたくなるのは非リア充の本能に近い何かなのかもしれない。
ゴブリンが狙いを定めてしまえばかえって援護がしやすくなるのは皮肉なことだったが結果的に誤射も減り、仲間とは、という疑問もチームワークが生まれるにつれて薄れていく。
「これって、こーやって使うもの……だった?」
ロッドを振り回しながら隼瀬が首を傾げた。
「使い方は見つけたもん勝ちだ」
そんなアドバイスを受けてそうなのか、と納得すると改めてゴブリンめがけてロッドを振りかざす。
もともと敵は嫉妬でパワーアップしているとはいえ一体だけ、しかも狙いを固定してしまったため防御するのが容易くなってしまった状態である、数の暴力ともいえる自由気ままさでハンターたちがゴブリンを攻撃している様子は、見方によってはゴブリン虐めに見えなくもない。
「オスだかメスだかしらねぇけどな、他人の恋時に水差すやつぁ馬にでも蹴られてろっつーんだよおお!」
女物のヒラヒラした衣装をまとっていたものの酔っぱらったせいか豪快に男らしさがでたNonがアルケミストタクトで殴りつけたのが結果的に止めになった。
「滅ぶベシィィィ!!」
最後まで自分を貫き通したゴブリンの断末魔の声が途絶える頃には戦闘音の残響も掻き消え、広場に静けさが戻る。
「Nonさん素敵ー」
抱き付いてくるHachiを動じることなく受け止めて賞賛の言葉に礼をいうNon。そんな光景が展開されてもルゥルゥとソレイルがお互いに怪我がないか安否確認し合うラブラブな空気を生み出してももうゴブリンは反応しない。
キーはシルヴェーヌにちょっかいを出した報いとして彼女を影から見守っていたクリスティア・オルトワール(ka0131) にお説教を食らい、友人の突然の登場に、甘い空気を演技とはいえ見られていたのかとシルヴェーヌはまたしてもパニックに陥る。
隼瀬と菫はそれを少し離れた場所から眺め、どちらからともなく肩をすくめた。
かみ合っているような、いないような。かみ合ったせいで何かが化学反応を起こして次の混沌を生み出したような、そんな珍道中も、ゴブリンの死体の処理を済ませるころにはそろそろ終幕。
「楽しかったー。今度皆で遊ぼうねー」
「その時は誤射は勘弁でござるよ」
そんなやり取りでひとしきり笑いあった後、ハンターたちは混沌から日常へと帰る道を連れ立って、或いは一人で歩き始めるのだった。
明日からは甘ったるくピンク色一色に再び染まるのだろう広場は珍しく誰もいない日暮れを迎え、波乱万丈な舞台の幕は閉じる。
非リア充が幕を叩き落とすかもしれないその日まで。
恋人同士が仲睦まじく過ごすデートスポットとして一部の存在には有名な広場。
いつもはバカップルと称される部類のある種の生物兵器が跋扈するこの場所は、今日は実は閉鎖されている。
婚期が過ぎる去ることに焦りを感じ始める独り身が嫉妬に駆られて傷害事件、が危惧されそうな場所ではあるが加害者は人間ではなかった。ゴブリンだった。
物理的にリア充を殲滅しようとするそのゴブリンという存在すら二人の恋の着火剤にしようとバカップルたちは目撃情報が寄せられてからも広場を利用していたのだが、実際に被害が出てからでは遅すぎる。
「ふっ、今日はあのやかましい監視役もいねぇ……つまりシルヴィを口説くなら、今!」
閉鎖した広場で、ハンターがカップルを偽装してゴブリン退治、が今回の目的なはずなのだがキー=フェイス(ka0791)はそんなことを堂々と宣言した。
パートナーとして隣を歩くのはシルヴェーヌ=プラン(ka1583)だったがその言葉を聞いて顔が見る間に赤く染まっていく。
「相手を誘き出すとはいえ、こ、小っぱずかしいのぅ!」
自分の両親のようにいつまでも新婚状態な振る舞いをするのか、と恥ずかしさのあまり錯乱気味のシルヴェーヌを見てキーは可愛らしいことだと薄く笑う。
実際には恋人同士ではない二人だがはた目には十分仲睦まじい恋人同士に見えるやり取りだ。
仲の良さを見せつけるためベンチの一つに座るとシルヴェーヌは今日のために作ってきたクッキーを包んだ袋を手荷物から取り出す。
「そ、その……口を開けるのじゃ! わしが食べさせてやろうぞ!」
恋人に「あーん」はデートで食事をするときの基本技だが定石なだけに安定の破壊力を発揮するものでもある。
「へぇ、手作りか……美味いぜ、シルヴィ。美人でお菓子作りもうまいって、いい奥さんになりそうだよな。
そういや、寒くねえか、シルヴィ?」
甘さを演出する意図だけでなく本心からの気遣いも込め、キーはそう問いかけた後シルヴェーヌに自分のマフラーを進呈。
お礼を言う前にそのまま抱き込まれてパニックに陥るシルヴェーヌと抱き込んでいるキーを見て、周りにいる仲間たちも思わず注目。
「いやぁねぇ。ヤキモチ焼いてる暇があるならその時間を自分磨きにでも当てればいいのに。
ひがんでたって人生の春は来ないのよ」
「寂しいのかもしれないけど迷惑かける以上は倒さなきゃいけないんだよね」
Non=Bee(ka1604)はHachi=Bee(ka2450)と戯れながら酒を飲み。
「いや~しかしこの時期はどの世界も賑わうのでござるな~。リアルブルーにいたころはよく学友が爆発していたものでござるようんうん」
烏丸 薫(ka1964)はお茶でほっこりしつつ周りを見守りながら、クリムゾンウェストの出身者が聞いたら激しい誤解を招きそうな発言している。
「すっごい組み合わせ」、と内心思っている菫だが彼もそのカオスなメンバーを構成する一員ではある。
一角でそんな混沌とした空気が生み出される中、ルゥルゥ・F=カマル(ka2994)とソレイル・ラ=ジャンティ(ka3083)は恋仲の間柄なので当然パートナーには互いを選び、せっかくなのでゴブリンが出るまではデートのノリで。
「……なぁ、デートらしい格好とはいったが、これで本当に大丈夫なのか?」
慣れないスカートと、猫耳を落ち着かない気分で撫でながらルゥルゥが問う。
依頼を口実にデートに誘われたものの人目が気になる初々しい年頃だ。
「ん、似合ってるよルゥちゃん。可愛いよ」
恥ずかしげなルゥルゥとは対照的に気負うことなく断言するソレイル。
ゴブリンがおびき寄せられていないか確認するという名目で散歩をしながらキーたちとは別のベンチで休憩をすることに。
「寒い時は温かい飲み物がいいよね。はい、どうぞ」
飲み物が熱くないか一口自分で飲んだ後、コップを自然な動作で差し出され間接キスになる事に狼狽する二人の周りの空気に色を付けるなら全員がピンクを選び、ついでにハートを乱舞させることだろう。
ソレイルがルゥルゥの手作りの菓子を褒めながら、いつもはしていない手袋を訝しみ、その下にあった怪我を見つけて気遣う甘いひと時は、しかし長くは続かない。
「滅べ、バカップル……!」
カオスより糖度が増し、場の空気がマーブル模様を描き始めたあたりで地獄の底から這うような低い声が広場に響き渡る。
「嫉妬……って、ゴブリンにもそういう感情あるんだ……なんだか不思議。
それにしても凄い声。どうやって出してるんだろう」
ラブラブが苦手で少し離れたところで待機していた依神 隼瀬(ka3684)はゴブリンを視界に収め、声を聞いて思わずそんなつぶやきを漏らす。
「そこは空気読んでカップルがちゅーするまで待ちなさいよあんた」
酒を飲んでいる間にほろ酔いになったらしいNonがHachiを抱き寄せた状態でゴブリンに文句を言うがセリフ的にも絵的にも嫉妬を煽る以外の何物でもなかったためゴブリンの形相が形容しがたい極限状態に進化する。
「おーおー、いかにもモテませんって顔してやがるぜ……個性的な見た目だしよ」
シルヴェーヌを背後にかばいながらキーが立ち上がり、他のメンバーも目立たないように隠しておいた武器を次々と抜き放つ。
「滅ぶベシ!」
「馬鹿野郎! あいつらリア充は勝ち組に見えるけどな! 実際のところ大半は理想を諦めて妥協に走った負け組なんだぞ! 諦めないお前の方が、ステキかもしれないだろ!」
リア充を演じていたキーが言っても説得力はあまりない気がするが、先ほどとは違う意味で場は混沌とし始め、体感気温は上がり続ける。
「リア充ガ何を言ウ!」
「見た目は大事だけどな! 勝負を決めるのは容姿だけじゃねえんだ! 俺はボンキュッボンな姉ちゃんやカワイコちゃんには目を奪われるけどな!
こんなところで負け組相手にしてる暇があれば、自分を磨きやがれ!」
何だか熱くなっているキーの言葉にリア充のルゥルゥとソレイルが顔を見合わせ、喧嘩を売られてるのか、と相談を始める始末だ。
「や、やっと現れおったか!! こ、この恥ずかしさなのか怒りなのか喜びなのかようわからんわしの体の火照り、貴様をコテンパンに叩きのめして冷ますのじゃ!!」
そう言いながらシルヴェーヌが放ったのは冷ますどころか燃え上がる炎の矢で、混乱が残っていたのかキーを巻き込みかける事態も同時に発生。
「……後ろから飛んでくる味方の攻撃の方がこわいってこれなんて修羅場でござろうな~」
誤射したらごめんね、というHachiの声の角度から射線を割り出して回避しながら菫は若干遠い目になり気味。
「キー殿も禁断症状になったらあのゴブリンみたいになりそうでござるな!」
「溜め込んでる鬱憤具合ではいい勝負しそうかも……」
本人以外は納得顔をしながらそれぞれの獲物でゴブリンに向かって多角方面からの攻撃を仕掛けていく中、一番怖いのは菫の言う通り背後からの仲間の誤射という「仲間とは」と問いかけたくなる戦線は激しさを増していく。
ソレイルが狙われないように斬りこむルゥルゥと、そんなルゥルゥを支援するソレイルのカップルにどうやらゴブリンは集中攻撃を仕掛け、一矢報いて散る覚悟を決めたようだった。
その間どれだけ危機に陥ろうが、リア充が実は負け組だと叫ばれようが、仲がいいところを見ると攻撃を仕掛けたくなるのは非リア充の本能に近い何かなのかもしれない。
ゴブリンが狙いを定めてしまえばかえって援護がしやすくなるのは皮肉なことだったが結果的に誤射も減り、仲間とは、という疑問もチームワークが生まれるにつれて薄れていく。
「これって、こーやって使うもの……だった?」
ロッドを振り回しながら隼瀬が首を傾げた。
「使い方は見つけたもん勝ちだ」
そんなアドバイスを受けてそうなのか、と納得すると改めてゴブリンめがけてロッドを振りかざす。
もともと敵は嫉妬でパワーアップしているとはいえ一体だけ、しかも狙いを固定してしまったため防御するのが容易くなってしまった状態である、数の暴力ともいえる自由気ままさでハンターたちがゴブリンを攻撃している様子は、見方によってはゴブリン虐めに見えなくもない。
「オスだかメスだかしらねぇけどな、他人の恋時に水差すやつぁ馬にでも蹴られてろっつーんだよおお!」
女物のヒラヒラした衣装をまとっていたものの酔っぱらったせいか豪快に男らしさがでたNonがアルケミストタクトで殴りつけたのが結果的に止めになった。
「滅ぶベシィィィ!!」
最後まで自分を貫き通したゴブリンの断末魔の声が途絶える頃には戦闘音の残響も掻き消え、広場に静けさが戻る。
「Nonさん素敵ー」
抱き付いてくるHachiを動じることなく受け止めて賞賛の言葉に礼をいうNon。そんな光景が展開されてもルゥルゥとソレイルがお互いに怪我がないか安否確認し合うラブラブな空気を生み出してももうゴブリンは反応しない。
キーはシルヴェーヌにちょっかいを出した報いとして彼女を影から見守っていたクリスティア・オルトワール(ka0131) にお説教を食らい、友人の突然の登場に、甘い空気を演技とはいえ見られていたのかとシルヴェーヌはまたしてもパニックに陥る。
隼瀬と菫はそれを少し離れた場所から眺め、どちらからともなく肩をすくめた。
かみ合っているような、いないような。かみ合ったせいで何かが化学反応を起こして次の混沌を生み出したような、そんな珍道中も、ゴブリンの死体の処理を済ませるころにはそろそろ終幕。
「楽しかったー。今度皆で遊ぼうねー」
「その時は誤射は勘弁でござるよ」
そんなやり取りでひとしきり笑いあった後、ハンターたちは混沌から日常へと帰る道を連れ立って、或いは一人で歩き始めるのだった。
明日からは甘ったるくピンク色一色に再び染まるのだろう広場は珍しく誰もいない日暮れを迎え、波乱万丈な舞台の幕は閉じる。
非リア充が幕を叩き落とすかもしれないその日まで。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/02 21:49:09 |
|
![]() |
リア充&ゴブリン爆発相談卓 烏丸 薫(ka1964) 人間(リアルブルー)|18才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/02/03 03:11:49 |