ゲスト
(ka0000)
戦場のアマリリス~パレスクリスタル
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~12人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/08/15 07:30
- 完成日
- 2019/09/03 02:16
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●前回までのあらすじとその後
ポカラ駐屯地での歪虚監視業務及び林業振興地整備事業を推進していたアマリリス商会義勇隊。昨年は巨大蟻歪虚の出現などで戦闘を繰り返し飛行偵察などで警戒していた。
先月、北にある森の奥から近付いて来たCAM歪虚【クリスタル】を発見。即座にハンターのユニット部隊を招集し迎撃に当たる。
この戦闘で勝利を収めるが、【クリスタル】は樹木を伐採し道づくりをしていたことが判明。
その道は移動砲台歪虚【タートル】進軍ルートで、単独偵察に出たフラ・キャンディ(kz0121)がこれを発見。ハンターを集めて奇襲し殲滅することで砲弾の脅威にさらされる危機を逃れた。
ひとまずの脅威を取り除いたポカラ駐屯地。
しかし、CAM型歪虚【クリスタル】は表面を宝石の屑石、クラスターのように散らして身体を小さくしただけで八体とも撤退したまま姿を見せていない。改めて攻めて来ると見て間違いないだろう。
そして蔦の歪虚が形作る歪虚【丸太兵】に至っては数が不明。道づくりをして伐採した木々をボディにしているため、もしもそれらを材料にしていたならまだまだ存在すると考えられる。
戦いの準備が必要だった。
●その後のレイン魔法美術塾
「わたしのお父さんがここの画塾の出資者の一人? そして目的は『花嫁修業』?」
レイン魔法美術塾のアトリエに、生徒のテイルの声が響く。
「まあ、そうなる。……危ないハンター稼業からは遠ざけるようにというのが真意だけどね」
この私塾で教えるレインが疲れたような様子で話す。政略結婚のため、という秘密までは洩らさなかったが。
「そーいえばボクも親からハンターになるのは反対されてたかなぁ。危ないからって」
「ヌリエの場合は、落ち着きがなくて危ないからってことだったから」
頭の後ろに手を組んで言うヌリエ。彼女の場合は結婚とか以前の話のようだ。
「僕の親はハンターになるの、賛成だったのになぁ。兄貴がハンター仕事で大けがしたから心配になったのかなぁ」
ミリンダの場合も結婚とかではなく、娘の身体を心配した親心のようで。
「わたしの親も出資者の一人……結局、お父さんの掌の上……」
ハーティアは力なくうつむいている。
「ちょっと、私の親も出資者じゃない! 花嫁修業? そんなの聞いてないわ!」
イブは憤るが、出資していたのを知らないのだからまあ、塾の真の目的も知らなくて当然だ。
「……つまり、お金持ちの家の人は親の計略にはまってたわけね。そして一般家庭出身の私たちは巻き込まれただけ」
クレシェンテが思案にふける。
「だからうちら、最近絵画の勉強じゃなく料理や掃除とか家事の授業が多かったのね」
田舎娘で家事全般こなすサンディは納得顔。
「でも、下宿の画家さんたちに話したら絵を学ぶにはとってもいい環境だって言ってたよ。花嫁修業だとしてもそれは自分のためになるし。絵の授業さえちゃんとしてくれれば」
いつも前向きなララがそういって仲間をたしなめた。
といっても、親から逃げてきたという側面のある娘たちは納得しきらない。
ここで、指導者のレインが口調を変えた。
「だから、実地訓練として君たちには戦場に出てもらう。進路はそのあと各自で決めるように。私は残って出資者たちを説得するから」
こうして魔法美術塾のハンターの卵たちの出撃が決まった。
●南那初華、参戦!
その後、ヴァリオスのどこかの通りのクレープ屋台にて。
「ほへ? 引率?」
街角屋台「Pクレープ」で働いていた南那初華(kz0135)が目を丸めて聞き返した。
「そう。……このあたりでデッサンしたし、君なら生徒たちも顔を知ってるから」
レインがクレープを焼く初華を必死に説得していた。
そこへ、屋台の出資者たるポルカ商会の一人息子、ポルテがやって来た。
「初華さん、知り合いの武器商人が魔導ヘリコプターを動かせる人を探しててね」
「ほへ?! いまハンター仕事を受けたからダメかも……」
「ハンター仕事? もしも戦闘依頼ならぜひ持ち込んで人員輸送の実績を作ってほしいんだって!」
「ほ、ほへ~……」
初華、遠い目。
というわけで、魔導ヘリ「エンゼルフライ」でポカラ駐屯地に出向くことになった。
●パレスクリスタル
でもって、ポカラ駐屯地。
「敵襲、敵襲~!」
「何だって?!」
森を監視していた義勇隊員から報告を聞くモータル。
「森の奥からゆっくりとキラキラ輝く城が浮かんでやって来てます!」
「【クリスタル】の親玉か、それとも本拠地か……とにかくユニット戦闘のできるハンターの増援を!」
森の奥からやって来る西洋風の浮遊城は【パレスクリスタル】と名付けられた。
護衛に【クリスタル】も追随している。
「危ない橋を渡れ! 自分が、誰かのために」を座右の銘にしていたモータル。今回も誰かのための戦いと肝に銘じる。
決戦である。
ポカラ駐屯地での歪虚監視業務及び林業振興地整備事業を推進していたアマリリス商会義勇隊。昨年は巨大蟻歪虚の出現などで戦闘を繰り返し飛行偵察などで警戒していた。
先月、北にある森の奥から近付いて来たCAM歪虚【クリスタル】を発見。即座にハンターのユニット部隊を招集し迎撃に当たる。
この戦闘で勝利を収めるが、【クリスタル】は樹木を伐採し道づくりをしていたことが判明。
その道は移動砲台歪虚【タートル】進軍ルートで、単独偵察に出たフラ・キャンディ(kz0121)がこれを発見。ハンターを集めて奇襲し殲滅することで砲弾の脅威にさらされる危機を逃れた。
ひとまずの脅威を取り除いたポカラ駐屯地。
しかし、CAM型歪虚【クリスタル】は表面を宝石の屑石、クラスターのように散らして身体を小さくしただけで八体とも撤退したまま姿を見せていない。改めて攻めて来ると見て間違いないだろう。
そして蔦の歪虚が形作る歪虚【丸太兵】に至っては数が不明。道づくりをして伐採した木々をボディにしているため、もしもそれらを材料にしていたならまだまだ存在すると考えられる。
戦いの準備が必要だった。
●その後のレイン魔法美術塾
「わたしのお父さんがここの画塾の出資者の一人? そして目的は『花嫁修業』?」
レイン魔法美術塾のアトリエに、生徒のテイルの声が響く。
「まあ、そうなる。……危ないハンター稼業からは遠ざけるようにというのが真意だけどね」
この私塾で教えるレインが疲れたような様子で話す。政略結婚のため、という秘密までは洩らさなかったが。
「そーいえばボクも親からハンターになるのは反対されてたかなぁ。危ないからって」
「ヌリエの場合は、落ち着きがなくて危ないからってことだったから」
頭の後ろに手を組んで言うヌリエ。彼女の場合は結婚とか以前の話のようだ。
「僕の親はハンターになるの、賛成だったのになぁ。兄貴がハンター仕事で大けがしたから心配になったのかなぁ」
ミリンダの場合も結婚とかではなく、娘の身体を心配した親心のようで。
「わたしの親も出資者の一人……結局、お父さんの掌の上……」
ハーティアは力なくうつむいている。
「ちょっと、私の親も出資者じゃない! 花嫁修業? そんなの聞いてないわ!」
イブは憤るが、出資していたのを知らないのだからまあ、塾の真の目的も知らなくて当然だ。
「……つまり、お金持ちの家の人は親の計略にはまってたわけね。そして一般家庭出身の私たちは巻き込まれただけ」
クレシェンテが思案にふける。
「だからうちら、最近絵画の勉強じゃなく料理や掃除とか家事の授業が多かったのね」
田舎娘で家事全般こなすサンディは納得顔。
「でも、下宿の画家さんたちに話したら絵を学ぶにはとってもいい環境だって言ってたよ。花嫁修業だとしてもそれは自分のためになるし。絵の授業さえちゃんとしてくれれば」
いつも前向きなララがそういって仲間をたしなめた。
といっても、親から逃げてきたという側面のある娘たちは納得しきらない。
ここで、指導者のレインが口調を変えた。
「だから、実地訓練として君たちには戦場に出てもらう。進路はそのあと各自で決めるように。私は残って出資者たちを説得するから」
こうして魔法美術塾のハンターの卵たちの出撃が決まった。
●南那初華、参戦!
その後、ヴァリオスのどこかの通りのクレープ屋台にて。
「ほへ? 引率?」
街角屋台「Pクレープ」で働いていた南那初華(kz0135)が目を丸めて聞き返した。
「そう。……このあたりでデッサンしたし、君なら生徒たちも顔を知ってるから」
レインがクレープを焼く初華を必死に説得していた。
そこへ、屋台の出資者たるポルカ商会の一人息子、ポルテがやって来た。
「初華さん、知り合いの武器商人が魔導ヘリコプターを動かせる人を探しててね」
「ほへ?! いまハンター仕事を受けたからダメかも……」
「ハンター仕事? もしも戦闘依頼ならぜひ持ち込んで人員輸送の実績を作ってほしいんだって!」
「ほ、ほへ~……」
初華、遠い目。
というわけで、魔導ヘリ「エンゼルフライ」でポカラ駐屯地に出向くことになった。
●パレスクリスタル
でもって、ポカラ駐屯地。
「敵襲、敵襲~!」
「何だって?!」
森を監視していた義勇隊員から報告を聞くモータル。
「森の奥からゆっくりとキラキラ輝く城が浮かんでやって来てます!」
「【クリスタル】の親玉か、それとも本拠地か……とにかくユニット戦闘のできるハンターの増援を!」
森の奥からやって来る西洋風の浮遊城は【パレスクリスタル】と名付けられた。
護衛に【クリスタル】も追随している。
「危ない橋を渡れ! 自分が、誰かのために」を座右の銘にしていたモータル。今回も誰かのための戦いと肝に銘じる。
決戦である。
リプレイ本文
●
朝日の斜光を受けキラキラ光る城が、森の上を圧倒的な存在感を持って浮かんでいた。
水晶城塞【パレス・クリスタル】である。
「モータル、森の上空から出てくるのはもう時間の問題だぞ!」
ポカラ駐屯地で義勇隊副隊長の元ならず者・キアンがわめく。
「ビルドムーバー2台にフラさんのプラヴァーだけでどうにもならんだろ」
隊長のモータル、歯ぎしりしている。数はもちろん、地対空戦闘に不向きな機体である。
この態度にキアン、激高した。
「ここにいてもどうにもならんだろ。開拓者が来るまで待って、それが手遅れだったらどうするんだ!?」
「そういえば敵には丸太兵もいたよね?」
ここでフラ・キャンディ(kz0121)が素朴な疑問をぶつけてみる。
モータルとキアンは、あ、そうかと目を丸めた。
「よし、分かった。義勇隊、出撃! そして俺たちの出撃後に義勇隊は解散する。各自、里に帰るなり独立するなり好きにしていい」
「えーっ! 先に出ちゃったの?」
しばらく後、ポカラに到着した南那初華(kz0135)が甲高い声をあげた。
「はい……全体出撃命令があって、その後は各自好きにしろと言われて……好きにここに残ってるんですが」
ほとんど残っている義勇隊の一般隊員が困ったように応じた。
「あれね……きっとまるごと歪虚。墜とした時の心配しなくてすみそう」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)が森の方を見る。地面は土ではなくクリスタル。丸ごと歪虚の可能性が高い。
「ただあの大きさ。村のあった大穴にすっぽりハマりそうなんですよ」
「ひとまず、僕たちは駐屯地防衛に残るよ。スキルを使ってもちょっとしか空戦できないし」
不安そうな隊員にすぐさま声をかけたのは霧雨 悠月(ka4130)だ。
「仕方ないわよね~。クリスタルを抑え込めるわけじゃないし」
キーリ(ka4642)も一緒だ。もっとも「砲撃はするけど」と、ちょっかいを出す気は満々である。
「初華も最初は残るだろ?」
トリプルJ(ka6653)も隊員の安全に気を配る。
「戦闘空域をヘリで抜けるなんざ俺達でさえ緊張するんだ。フォローはするから、気楽にな。その方が初華は良い動きするもんな」
ぽん、と初華の肩をたたく。初華、恥ずかしそうに「あ、ありがと」。
「普段は輸送する方だけど、今回は輸送される方だね♪ あ、でも学生さんたちは別だよ♪」
狐中・小鳥(ka5484)も初華の傍に。後ろにはレイン魔法美術塾の塾生たちが控えているが、彼女たちはヘリでの突入部隊には参加しない。
「鑑さーん……にゅふふ」
そしてディーナ・フェルミ(ka5843)が、イ寺鑑(kz0175)に抱き着くほど近くに立ち見上げてにっこり。
「クリスタルとの戦いが終わったら私もパレスに行くの。鑑さん上でも会いましょうなの」
「ああ。そちらは頼んだし、待ってるよ」
鑑の瞳は優しい。
そして。
「フラさん、今行きますよぉ~」
恋人の姿を探していた弓月・小太(ka4679)、もう戦場だと聞いて慌てて出撃するのだった。
●
その、フラ。
「あ。敵の城からキラキラしたのが出てきたよ」
森の外縁近くでプラヴァー「ロリポップ」のオープンコクピットから見上げて言う。敵、巨大人型歪虚【クリスタル】8体がパレスから飛び立ったのだ。
「どうすんだ。あっちの方が射程が長いんだろ?」
「下がろう。敵が出てきた理由は後ろにあるから」
キアンにそういって魔導トラック形態のビルドムーバーを反転させるモータル。
その時だった。
――ドゥン……。
「また面妖なものが出てきおったな。まあ、シェオルばかりもいささか食傷気味だからデザートにちょうどいい」
砲撃とともに通信に入ったのは、ミグ・ロマイヤー(ka0665)の不敵な声だ。
もちろん乗機はダインスレイブ「ヤクト・バウ・PC」(ka0665unit008)。半橙半緑に機体左右を塗り分けた重装化決戦砲撃仕様機は、両腕を砲撃時の固定用アンカーに特化させてしまうほどの……。
「待たせたのぉ。狂的なアルケミストとも鬼のような砲撃屋ともいわれるロリドワーフじゃ!」
ちょっとミグさん、いまヤクト・バウの説明してたんだからそっち方面のカッコイイ一言お願いしますよぅ。
それはともかく。
「フラさん、無事ですかぁ~」
「小太さん!」
小太、砲撃もせずにダインスレイブ(ka4679unit003)でフラの元に降り立った。フラの方も呼びかけに応えるかのようにローラーできゅきゅっと傍に駆け寄る。
で見上げるのだ。
「来てくれたんだね、今回も」
小太、コクピットを開けて応じ……あ、赤面した。
「ふ、フラさん、今回もよろしくお願いしますぅ」
「前の約束守ってくれて、ありがと。ボクたち、やっぱり一緒だね!」
この言葉にさらにドキドキする小太。
届きそうで届かない距離。少し腰を浮かせて見詰め合う二人。
――ドォン……。
その横で激しい主砲発射の轟音。
キーリの刻令ゴーレム「ラムルタフル」(ka4642unit002)である。
「はいはい。まずは小太とフラっちのいちゃラブ支援ね~」
そう言って横目で二人を見てにやり。小太は戦いもせずに自分が何をしてたか改めて気付いて赤くなる。
「フラっち、丸太兵はどう?」
「大丈夫だよ。来てないみたい」
「と、とにかく砲撃ですねぇ」
キーリの真面目な話に気合いを入れ直した小太、ダインスレイブで迫り来る人型歪虚クリスタルを狙う。
「しかしまたまたアレね、クリスタルロボ。さっさと諦めてくれないかしらねー」
「何かこう……クリスタルパレスだよ、全員集合…とか言いたくなりますねぇ」
「結構かわしてくるよ?」
ぼやくキーリにわらわら出てくる敵にため息の小太。でもってフラが敵の動きにむーと唇を尖らせる。
敵のジャンプはCAMのスラスタージャンプと同じで反動推進。推進力の加減で射撃が来ると分かっていればかわすことも可能だ。
ここで、ミグ。
「じゃが、着地間際はどうかのぉ」
これまで撃たなかったのはタイミングを見計らっていたから。不敵に微笑する。
「森の中で見えませんよぉ?」
「そこでこのミグ式グランドスラム製造装置と専用砲じゃ!」
解説しよう。
ミグ式グランド以下略とは一見すると時代遅れなポンコツながら性能は折り紙付きのミグ回路を五基、……繰り返すが、五基搭載することによってユニットスキルであればほぼ無尽蔵な回数まで使えるようにしている優れものである。
「着地付近にぶち込んどけば巻き込まれ慌てて飛び出すじゃろう!」
「そこを狙えばいいわけねー」
「わ、分かりましたぁ!」
吠えるミグにはいはいなキーリ。小太も準備オッケーだ。
――どぉん……ドン・ドンッ!
ミグのグランドスラムが森に轟き、苦し紛れに飛び出したクリスタルをキーリと小太が狙った。
この連携は見事に奏功し、ジャンプ段階でキラキラ破片を散らしていた赤と黄緑のクリスタルは派手に破片を散らしやせ細った。動きも鈍っている。
しかし、ほかのクリスタルが距離を詰めている。射線、来たッ!
「キアン、変形だ」
モータルとキアン、ビルドムーバーを人型に変形し銃を構え敵に備える。が、やや遅い。
その時だった!
――ふわっ……。
光のカーテンとともにR7エクスシアが目の前に。
「受けた名前は九十番台。剣豪目指して舞うさまは、誰が呼んだかココジロウ!」
宵待 サクラ(ka5561)の口上とともに、エクスシア「九十二郎」(ka5561unit003)が登場。カットインとともにマテリアルカーテンで射線を遮った。
そして光のカーテンが消えるとともにラージブレード「マカブイン」を抜刀した!
敵の青いクリスタルに向かって加速したぞ。ががっ、と敵の射撃を食らうが構わず接敵し……。
「ココジロウ、薙ぎ払いっ!」
青いクリスタルの胴に入り、青い破片が舞う。
この一撃の動きの中でサクラの視線がパレスを捉えた。
先ほどよりさらに近くなっている。
「……デカッ。なんで歪虚はこんな大きなものばっかり作るかなあ」
なお、驚いた一瞬の隙を新たに近寄って来た黄色のクリスタルが逃さない。
「大きさが力のすべてではない」
そこへ鞍馬 真(ka5819)がカットイン。割って入る!
ワイバーン「カートゥル」(ka5819unit005)で黄色のクリスタルを射撃。さらに敵の左肩に幻獣剣「グルート」で体ごと体当たりした。
「よし、バレルロールだ」
飛び去るところ、黄クリスタルから射撃を受けるがひねって交わし離脱する。
そしてちらと城を見る真。
「……わざわざ来てくれた本拠地に行きたいところだが」
まずはこちらが先だとクリスタルたちとの戦いに専念する。
砲撃から敵がクリスタルを戦線投入し距離を詰めてきたところ、サクラの防御と真の突入で潮目を迎えた序盤戦。ここからさらに敵クリスタル8体は戸惑うことになる。
「一気にパレスへ突入するぜ!」
何と、Jのコンフェッサー(ka6653unit005)が戦線突入ではなく、一気に突破を目指したのだ。フライトシールド「プリドゥエン」を足場にバランスを取り一気に空を駆け抜ける。
「援護します」
これをフィロ(ka6966)のコンフェッサー(ka6966unit004)が105mmスナイパーライフルで狙い撃つ。ピシリ、と紫に命中するも破片をわずかに散らすのみ。威力は弱いわけではない。敵の被害軽減能力だ。
一方、Jの突破行動に気付いた敵もいる。
橙のクリスタルがJのコンフェッサーを撃つ。
「こっちゃ覚悟決めてんだ。それくらいで墜とされるかよ!」
Jの叫びが聞こえたわけではないが、今度は緑のクリスタルがタックルに来たぞ!
――バフン!
「残念。ハズレだ!」
間一髪、マテリアルバルーンを展開。身代わりに抱き着かせて難を逃れる。
なお、敵はJの行動に気付くと全機がこれを止めようと行動していた。
「地上にいるのは責任持つわね~」
「飛び立つ前に撃ちますよぉ~」
「味方を巻き込まぬ場所に撃ち込むしかないかの」
キーリと小太が援護射撃。ミグはあえて外して盛大に範囲爆破し敵の危機感をあおり牽制する。
そしてサクラ。
「決めた」
先ほど戦った青いクリスタルに狙いを定めると少し腰を落とした大地を踏みし溜めた後、九十二朗のフライトブーストをフルパワー。
「これが私の担当。絶対、倒す!」
ラージブレードをかざして一直線に突撃。Jに向かっていた敵に刃を叩き込み盾で体当たりし、その軌道を完全に反らした。
さらに、フィロ。
「目的は初華様のパレス到達。そのためには……」
スラスターフレーム「グライテン」、スタンバイ。地上から一気にフライトジャンプする!
「確実に一人一殺! 制空権を確保して非武装兵員輸送ヘリの侵攻ルートを作ります」
先ほど射撃した紫の敵に向かって飛んだ。
ちょうど敵はJに追いすがろうと方向転換してジャンプしていた。フィロのコンフェッサー、ライフルを背中のパイロンに戻している。オープンになった両手で敵にタックルし、もろともに森の中に消える。
見事、地上戦に持ち込み確実に空中から退場させた。
この時、Jは白と橙、そして弱りながらも味方の射撃を食らいつつも再ジャンプで追い付いて来た赤と黄色も追いついて来たぞ!
このままでは一対四で完全包囲されてしまう。
「ま、フェイクだったからいいんだけどな」
J、形勢不利を悟るとあっさりとパレス行きをあきらめた。
フライトシールドから下りる動きで反転し左手でシールドをつかんだまま……。
「あと、任せた」
マテルアルフィストで殴った後につかみかかり森の中へと消えて行った。
のこった敵3体がその後ろ姿に射撃するが……。
「任されたよ!」
元気いっぱいの声とともに誰か来たッ!
「今だグランソード。……くらえ、一刀両断スーパーリヒトカイザー!」
時音 ざくろ(ka1250)の声だ。
フライトシールド「プリドゥエン」に乗った魔動冒険王『グランソード』(刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」)(ka1250unit008)がざくろの気合いそのままに斬艦刀「雲山」を振るって光あれ。敵3体の射撃を乱す。
それだけではない。
「後ろにも注意が必要だな」
真が一撃離脱後、折り返してきていた。
もちろん、気付いた敵は真のカートゥルに一斉射撃。
タイミングは遅れていたが、バレルロール。
ところが、普通なら回避するものだが、強引に敵が一直線に並ぶ位置に割り込むためにスキルを使っていた。手ひどく食らうが、真の目的は、コレだ。
「魔法剣化した武器に更に全霊のマテリアルを注ぎ込み……」
一切の無駄を省いた動作で、刺突一閃!
「魔断を放つ!」
敵の赤、黄緑が一直線にこれを食らったッ。
その過ぎ去る横でざくろが追撃の技を振りかぶっていた。
「いくよ、グランソード。僕の心が魔動に変わる!」
狙いはまだ余力があり真の縦一直線攻撃から逃れた白い敵だ。
いや、それだけではないッ。魔法紋が浮かび上がり、斬艦刀がマテリアルのオーラを纏う。
「斬艦刀横一文字切り!」
万象の器で射程を伸ばし、白だけではなく3体まとめて薙ぎ払い。今度は離脱する真の援護だがきっちりとヒットさせた。白と赤と黄色のキラキラと光る破片がグランソードに降り注ぐ。
おっと。
真の援護に入ったのはざくろだけではなかった。
「相変わらず無茶やってるわね、真」
真の離脱する方向からカーミンがグリフォン(ka1559unit002)で突入して来た。
「手数が必要な敵だ」
「分かってる。どこまでそのダイエット、保つかしら?」
すれ違いざまに話ししたカーミン、蒼機銃「マトリカリア」を構える。
「『藤袴』……花言葉は『ためらい』、『遅れ』」
射撃が光の如き一条とも言うべき速さで黄緑にヒットした。キラキラと破片が散る。
「量は変わらず……剥離する前に貫通攻撃と思ったけど」
カーミンの狙いある一撃は目論見通りといかなかった。
「でも、問題ないかしら?」
飛び去った背後では砲撃舞台からの援護射撃が来た。一呼吸おいてざくろが反転してまたも敵を一手に引き付けている。
「はっ!」
その中で、反転した真のを黄色の敵が下から再ジャンプで狙っているのを察知した。
「花言葉は「用心深さ」「先見の明」「保護」……届いて、『柊』!」
カーミンも反転しつつ遠い距離ながら援護射撃。
これにより真が気付き、敵は先に回避行動をしたことで真の刺突を回避できず食らうことになる。
しかし、真が狙おうと突っ込んでいた敵が逆に真を襲う。
ワイバーンであるため、地上戦に持ち込もうとタックルに来ている。
真、絶体絶命!
その時だった。
「光あれ、なの!」
ディーナの刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」(ka5843unit007)、ただいま到着!
クロイツハンマー「ガバメント」を長大射程でぶん回し、赤い敵を吹っ飛ばした。
「まだいけるの!」
さらに敵はその辺にいると連打する。
「ディーナ様、初華様たちは無事に森の外まで来ましたか?」
フィロからの通信。彼女は森の中で紫の敵を殴り倒している。その姿はコンフェッサーながらもまさにフィスト連打の殴りメイドの様相だ。
「うん。鑑さんもいっしょなの。城も近付いてるからもうすぐ行くって言ってたの」
「安全確保にもうしばらく時間が必要ですが……敵城内での時間がどれだけかかるか読めない、ということですか」
フィロ、その考えは分からないでもないとする。
「仕方ない。私と真のグリフォンで初華を護衛するしかないわ」
「ああ、それでいい」
カーミンと真、とにかく制空権確保に移る。
「私も福音の風とフレーム・ジェネレーターの飛行能力生かしクリスタルと空中戦するの。しっかりクリスタルを押さえ込むの!」
マテリアルの翼を広げ浮かんでいるディーナも気合を入れる。
ここで森の中のサクラから通信が!
「敵弱点発見! 胸の奥に芽吹いた種がある!」
サクラはマテリアルカーテンをマントのようにひらめかせ敵の攻撃を防ぎ巨大サーベルの突き、マントひらめかし突きを繰り返していた。敵が離脱しようとしたらブラストハイロゥの翼で阻害。そしてマントと突き、といった具合に一人一殺の使命に燃え同じ攻撃。
これが同一部位の攻撃につながり、敵の胸を重点的に穿つことにつながった。
で、胸の奥に大きな種を発見したのだ。
「コアみたいで、これを突いたら全部キラキラになって砕けて消えたよ!」
サクラ、お手柄である。
「成程な、もらったぜ!」
Jの通信。こちらも胸を穿つ直前だったようで、素早く仕留めたようだ。
「初華様、速やかに突入してください!」
この状況にフィロが通信で叫んだ。
パリパリッ、と森の外からプロペラ音が響く。
「皆様をお願いします……ご武運を」
フィロに見守られ、初華の魔導ヘリ「エンゼルフライ」がパレス上空に到達した。
●
この戦場の変化に敵は敏感に反応した。
動ける敵は目の前の戦いから目標を変えヘリへと向かってジャンプしたのだ。
もちろん全員がこれに対応し追いすがろうとしたが……。
「みんな、いまは大丈夫だから」
悠月の落ち着いた声が通信から響いた。
全員、悠月の言葉を信じた。
だれも敵を追わない。
これを、森の外でイェジドの「シグレ」(ka4130unit001)に騎乗した悠月が見ていた。
悠月の視線は森の上空、パレスに向かう一基のヘリと、それを止めようと森からジャンプ飛行して来た敵に注がれていた。
「ありがとう。信じてくれて……撃てッ!」
仲間に感謝し、斉射の合図。
刹那、轟音が響く。
キーリのラムルタフルが。
小太のダインスレイブが。
そしてミグのヤクト・バウが。
それぞれ最大火力をもって初華のヘリに群がる敵の射撃前を狙って砲撃したのだ。
「よし」
「後は任せて」
撃ち漏らしをグリフォン騎乗の真とカーミンが攻撃する。
「みんな、ありがとっ!」
初華の感謝の声。
「あ、タイミング遅れて来てるんだよ!」
おっと。
同乗している小鳥の見ている方角から、遅れて敵が迫っているぞ!
「こっちからもだ!」
艦の見ている方からも!
ここで通信が入る。
「やらせるかよ!」
Jがフライトブーストを吹かして身を挺し攻撃を受けた後、バズーカ「ロウシュヴァウスト」をぶっぱなして敵を叩き落とす。
「フォースクラッシュ乗せガバメントで殴るの!」
ディーナも割って入ってダウンスイング。攻撃と同時に森へ叩き返した。
「Jさん、ディーナさん、ありがと!」
「また後でな、初華」
Jは男らしさを見せて森へと落ちて行く。
その直前だった。
「当然、あそこには味方もいないし追撃するよね?」
悠月の微笑。砲撃三人組は無言で攻撃をぶち込んだ。
これを見た最前線。
「ミグ……敵はそこだね!」
ざくろ、敵が森に落ちたところにグランドスラムなどが炸裂したのち、森へと突入する。
これで初華、完全にパレスへの道が開けたことになる。
●
――パリパリ……パリッ。
「よし、無事に着地」
初華、対空攻撃を警戒しつつパレスに接近し中庭にヘリを下ろした。
「本当に敵の攻撃、なかったね」
「強襲揚陸用移動要塞ではない、ということかな」
小鳥の鑑はそんなやり取りをしつつ外に出ると周囲に気を配った。
「……ほへ? ホントに敵の抵抗、ないの?」
初華も下りて来て首をひねっている。
「本当ならすぐに突入する予定だったが……」
鑑、拍子抜けしたように言う。
「皆を待っても良さそうだねー」
汗たら~する小鳥の頭上から、グリフォンが到着した。
「敵はいないのか?」
真が周囲を警戒しながら聞く。
「うん。何か静かみたい」
「罠とかあるのかな、かな?」
初華の返事に小鳥が首を突っ込む。
「罠があるとしたら閉じ込め型か?」
「ならば援軍を頼んで先を急ごう」
鑑の見立てに即答する真。ざくろ、J、ディーナが向かっていることを確認した。
「大きいクリスタルパレスを私の舞台に変えちゃうんだよ♪ アイドル、狐中・小鳥のライブ開幕するよー♪」
「お? おー♪」
小鳥、そうと決まれば早速突入とばかりに右拳を振り上げる。初華もつられて振り上げる。真と鑑は冷静だが。
で、中庭から正面の両開き扉から突入。
エントランスホールで早速、人間大の【丸太兵】が大量に襲ってきた。
「早速アイドルのライブを聞きに観客が来てくれたみたいだね。でも、君達は今回のライブにはお呼びじゃないんだよー!」
小鳥、草薙剣を右手に、禍炎剣を左手に抜き放ち躍り出ると体を一回転させて前列2体に斬撃を見舞う。さらに今度は逆に横薙ぎ。
ばっさばっさと手際よく敵にダメージを与える。
で、すかさず身を引き敵の攻撃を回避。
たたらを踏んだ敵最前列。
これで敵の進撃が一瞬止まった。
そして小鳥が引いてできた自陣最前衛に、真が現れる。
「前回もいたな」
真、ソウルエッジでみなぎらせた魔導剣を構え刺突一閃。
敵陣営、小鳥のその場に留まった攻防に対処する陣形が災いし、真の攻撃をモロに食らった。
「左は受け持った」
「鑑さんが左ならわたしは右だね。アイドルはセンター以外もマイクアピールするんだよ♪」
左右に散って包囲を狙う敵を抑える鑑と小鳥。前面は真が強力に押し込んでいる。
「わ、私は?」
「初華さんは退路確保なんだよ♪」
初華に小鳥が楽でいいでしょな感じでにっこり。
しかし。
「すまない。小間使いの控室だった」
新たな部屋に突入した真、行き止まりだったようで引き返してきた。
今度は初華の最後方が最前列になる。
「ど、どひーっ」
初華、リボルバーを撃つがやや威力が弱い。
「……あとは蔦で絡んで来るから気を付けろ」
「早く言って―っ!」
剣で絡まれた蔦を斬る真。その助言は少し遅かったようで初華は足に絡まれどってんしてたり。
なお、この丸太を蔦歪虚が絡んで人型にしている敵。
ここにいるだけではなかった。
下の森のそばを流れる川を利用し、一気に草原、そしてポカラ駐屯地にまで進行していたのだ。
「フラ、聞こえる? 川から敵が上陸してるわ」
グリフォンで上空から戦況を確認していたカーミンが地上部隊に連絡する。
「えーっ、前回に戦った敵だよね?」
「フラのロリポップにスペルウォールとマテリアルレーダーがあるでしょ? 一緒に戦いましょう」
「う、うん!」
「フラさん、駐屯地へ近づかせないようにしますよおっ」
カーミンがぐうんと旋回して森の上空から戻って来る。その下では草原をローラーダッシュするフラのロリポップと、パレス砲撃陣形から小太のダインスレイブが離脱していた。
「ラムルタフル、後頼むわね」
それを横目で見ていたキーリ、腰を上げてふわりと宙に浮かんだ。
もちろん、悠月も動いた。
「シグレ、いい?」
乗っていたイジェドの首筋を優しく撫でる。
「近づいてくる敵軍の戦力を削ぐよ。ライブ開始だね?」
オン、と了承するように吠えるシグレ。
「よし、行こう。一緒に歌うよ!」
悠月、最後方から戦線突入。
目の前には川からわらわらと上がった丸太兵と、それを迎撃する味方の姿が。
接敵する味方。戦う。
その後ろから悠月も。
自らの歌とともに。
♪
守れ、守ろう、友との絆
迫る敵から守り通せ
♪
キーリの放ったメテオスウォームでカオスになった戦域に突入。シグレの爪が敵の丸太を吹っ飛ばし、伸びる蔦をぺしりと迎撃する。
♪
走れ、走ろう、取り戻すため
すべてが終わるその前に
♪
小太の射撃の援護を受けつつぎゃりりと敵を殴って方向転換するフラを追い抜く。その横ではカーミンが着地しつつダウンバーストして敵を吹き飛ばし。シグレがこの敵の止めに入る。
そこへ、サクラの九十二郎が上空通過。
「私は飛行時間結構ギリギリだったから、駐屯地の防衛に回るね。頑張れ行ってら!」
そういってポカラ駐屯地へ。
「モータル様たちはどうしていますか?」
さらにフィロから通信。
「川の上流に移動中です。流してる元を断つ!」
モータル、確かにビルドムーバーをトラック形態にして上流に向かっていた。
「……それは非常に危険です。なぜそのような危ない橋を渡るようなことを」
「『危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために』ッ!」
フィロの問いにモータル、自らの座右の銘を叫んだ。
歪虚に故郷を滅ぼされ、盗賊に助けられたものの人に仇なす片棒を担がされ絶望し、その盗賊に襲われる前に脱出し襲撃に備えるよう助言した村では怪しい者として捕縛されたところ、またも歪虚に襲われ村が滅んだ。
人間不信に陥っていた彼に、それでも村のために密造酒を闇の商売人に卸していた村人が、自らの支えとしていた言葉だ。
「分かりました。私が、あなたのために支援します」
「よし、それなら僕は君のために歌うよ!」
フィロが上流へ。
そして悠月も上流方面へ。
するとそこでは、丸太兵が工兵の如く丸太を切り出している場面を発見した。
「さあ、漸くサビに差し掛かってきたね」
悠月の歌は続く。
♪
守れ走ろう、走れ戦え、今日という日を生きるため
そして明日を、輝く明日を分かち合おう!
♪
「作業中の敵は案外たやすいものですね」
「よし、これで供給元は断った。すぐに取って返す!」
あっさり倒してフィロが呟き、モータルが仲間を思いやる。
「そうだね。歌詞も二番に差し掛かるし」
悠月、「天翔けるもの」で空へ。一気に戻る。
そして駐屯地ではレイン魔法美術塾の女子生徒が隊員たちと一緒に戦っていた。
主に魔法の絵筆を使い、空中に絵を描いてそこから強力な攻撃を繰り出していた。
「やるじゃん」
「私達でもできるねっ」
きゃいきゃいと盛り上がるが、たまには蔦に取られたり。
そこへ、サクラ。
「大丈夫?」
蔦を切ってやり、共に戦う。
●
この頃、パレス内部。
「超機導結界発動……ここはもうざくろの領域だ!!」
ざくろ、参戦!
ポゼッションで結界を張り敵を弾き飛ばすと共に城の通路を通せんぼする。
そしてたまった敵に、セイクリッドフラッシュ一閃!
「追いついたの、みんな無事なの?」
敵の残骸を追ってきたディーナ、参戦!
やがて、玉座の間に。
「……確かクリスタルのコアは芽吹いた種だったな」
真の目の前に、細く伸びる一本の苗木が佇んでいた。クリスタルの天井などから光が屈曲して集まり神々しい。
「ちょっと拍子抜けだね」
ざくろも攻撃してこない敵に大人しくなった。
その時、背後から物音が。
「敵か」
鑑が新手を止めに走る。
「鑑さん、私も行くの。終わったら美味しいもの食べて帰りましょうなの」
ディーナがてててっと追う。
初華はうろたえていた。
「え、ええと、どうしよう?」
「草薙剣ならきっと、ふさわしいんだよ」
肩ぽむして小鳥が片膝を付く。
そして草薙剣でそっと、苗の根元を切った。
瞬間!
鑑とディーナの戦っていた丸太兵がぼろっと崩れた。
そしてパレスも傾く。
「脱出するぞ!」
真の号令で駆け出す一同。
それぞれヘリなどに乗り込み、脱出した。
「うむ、出番じゃの」
ここで単騎、連絡を待っていたミグが再び動いた。
「しっかしまあ、綺麗ではあるがあれを完全爆破したらゴミがすごそうじゃな」
呟いてからヤクト・バウの全力射撃。
「まあ、そうならんように片側だけを集中攻撃するが」
とはいえ全力戦闘後。いくら何でも残弾が少ないが……。
戦う丸太がパレスのコアたる苗木を斬ったことで蔦が消え、ただの丸太に戻ったため全員が上空を見上げている。
その中でパレスはミグの砲撃で軸線を外しつつばらばらと破片を散らしていたが、やがて崩壊が加速し最後は花びらを散らすように大きく崩れながら――消滅した。
森の奥でたまりにたまったマイナスマテリアルが、ついに消滅したのである。
●
戦いが終わって。
「……絵かぁ。私はよく分からないけど、学校が好きなら他の学校に勉強に行くんでも良いんじゃないかなぁ」
聖導士学校の臨時教師をしているサクラ、美術塾生とそんな会話をしている。
こちら、フィロ。
「初華様、皆様、おめでとうございます……お疲れさまでした」
初華たちに一礼したところ、Jが割り込んだ。
「お疲れ様だったな……ところで初華、邪神戦争が終わったらお前もリアルブルーに帰るんだよな」
「え?」
初華、くらっとした。慌ててJが抱き止めた。
顔を見ると真っ青だ。
「初華、どうした?」
「……わからない。どうしていいのか」
かろうじてそれだけ言うと、目を見開いたまま涙を流すのだった。
「巻き込まれて頑張って、……それで、いまさら帰れるって……」
「あーあ、泣かしたわね~」
キーリ、重い空気に背を向けた。
もちろん、Jに悪気も罪もないのだが。
あるいは、ポカラの元住民やモータルなど、故郷を一瞬でも失った者たちの抱く思いなのかもしれない。
朝日の斜光を受けキラキラ光る城が、森の上を圧倒的な存在感を持って浮かんでいた。
水晶城塞【パレス・クリスタル】である。
「モータル、森の上空から出てくるのはもう時間の問題だぞ!」
ポカラ駐屯地で義勇隊副隊長の元ならず者・キアンがわめく。
「ビルドムーバー2台にフラさんのプラヴァーだけでどうにもならんだろ」
隊長のモータル、歯ぎしりしている。数はもちろん、地対空戦闘に不向きな機体である。
この態度にキアン、激高した。
「ここにいてもどうにもならんだろ。開拓者が来るまで待って、それが手遅れだったらどうするんだ!?」
「そういえば敵には丸太兵もいたよね?」
ここでフラ・キャンディ(kz0121)が素朴な疑問をぶつけてみる。
モータルとキアンは、あ、そうかと目を丸めた。
「よし、分かった。義勇隊、出撃! そして俺たちの出撃後に義勇隊は解散する。各自、里に帰るなり独立するなり好きにしていい」
「えーっ! 先に出ちゃったの?」
しばらく後、ポカラに到着した南那初華(kz0135)が甲高い声をあげた。
「はい……全体出撃命令があって、その後は各自好きにしろと言われて……好きにここに残ってるんですが」
ほとんど残っている義勇隊の一般隊員が困ったように応じた。
「あれね……きっとまるごと歪虚。墜とした時の心配しなくてすみそう」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)が森の方を見る。地面は土ではなくクリスタル。丸ごと歪虚の可能性が高い。
「ただあの大きさ。村のあった大穴にすっぽりハマりそうなんですよ」
「ひとまず、僕たちは駐屯地防衛に残るよ。スキルを使ってもちょっとしか空戦できないし」
不安そうな隊員にすぐさま声をかけたのは霧雨 悠月(ka4130)だ。
「仕方ないわよね~。クリスタルを抑え込めるわけじゃないし」
キーリ(ka4642)も一緒だ。もっとも「砲撃はするけど」と、ちょっかいを出す気は満々である。
「初華も最初は残るだろ?」
トリプルJ(ka6653)も隊員の安全に気を配る。
「戦闘空域をヘリで抜けるなんざ俺達でさえ緊張するんだ。フォローはするから、気楽にな。その方が初華は良い動きするもんな」
ぽん、と初華の肩をたたく。初華、恥ずかしそうに「あ、ありがと」。
「普段は輸送する方だけど、今回は輸送される方だね♪ あ、でも学生さんたちは別だよ♪」
狐中・小鳥(ka5484)も初華の傍に。後ろにはレイン魔法美術塾の塾生たちが控えているが、彼女たちはヘリでの突入部隊には参加しない。
「鑑さーん……にゅふふ」
そしてディーナ・フェルミ(ka5843)が、イ寺鑑(kz0175)に抱き着くほど近くに立ち見上げてにっこり。
「クリスタルとの戦いが終わったら私もパレスに行くの。鑑さん上でも会いましょうなの」
「ああ。そちらは頼んだし、待ってるよ」
鑑の瞳は優しい。
そして。
「フラさん、今行きますよぉ~」
恋人の姿を探していた弓月・小太(ka4679)、もう戦場だと聞いて慌てて出撃するのだった。
●
その、フラ。
「あ。敵の城からキラキラしたのが出てきたよ」
森の外縁近くでプラヴァー「ロリポップ」のオープンコクピットから見上げて言う。敵、巨大人型歪虚【クリスタル】8体がパレスから飛び立ったのだ。
「どうすんだ。あっちの方が射程が長いんだろ?」
「下がろう。敵が出てきた理由は後ろにあるから」
キアンにそういって魔導トラック形態のビルドムーバーを反転させるモータル。
その時だった。
――ドゥン……。
「また面妖なものが出てきおったな。まあ、シェオルばかりもいささか食傷気味だからデザートにちょうどいい」
砲撃とともに通信に入ったのは、ミグ・ロマイヤー(ka0665)の不敵な声だ。
もちろん乗機はダインスレイブ「ヤクト・バウ・PC」(ka0665unit008)。半橙半緑に機体左右を塗り分けた重装化決戦砲撃仕様機は、両腕を砲撃時の固定用アンカーに特化させてしまうほどの……。
「待たせたのぉ。狂的なアルケミストとも鬼のような砲撃屋ともいわれるロリドワーフじゃ!」
ちょっとミグさん、いまヤクト・バウの説明してたんだからそっち方面のカッコイイ一言お願いしますよぅ。
それはともかく。
「フラさん、無事ですかぁ~」
「小太さん!」
小太、砲撃もせずにダインスレイブ(ka4679unit003)でフラの元に降り立った。フラの方も呼びかけに応えるかのようにローラーできゅきゅっと傍に駆け寄る。
で見上げるのだ。
「来てくれたんだね、今回も」
小太、コクピットを開けて応じ……あ、赤面した。
「ふ、フラさん、今回もよろしくお願いしますぅ」
「前の約束守ってくれて、ありがと。ボクたち、やっぱり一緒だね!」
この言葉にさらにドキドキする小太。
届きそうで届かない距離。少し腰を浮かせて見詰め合う二人。
――ドォン……。
その横で激しい主砲発射の轟音。
キーリの刻令ゴーレム「ラムルタフル」(ka4642unit002)である。
「はいはい。まずは小太とフラっちのいちゃラブ支援ね~」
そう言って横目で二人を見てにやり。小太は戦いもせずに自分が何をしてたか改めて気付いて赤くなる。
「フラっち、丸太兵はどう?」
「大丈夫だよ。来てないみたい」
「と、とにかく砲撃ですねぇ」
キーリの真面目な話に気合いを入れ直した小太、ダインスレイブで迫り来る人型歪虚クリスタルを狙う。
「しかしまたまたアレね、クリスタルロボ。さっさと諦めてくれないかしらねー」
「何かこう……クリスタルパレスだよ、全員集合…とか言いたくなりますねぇ」
「結構かわしてくるよ?」
ぼやくキーリにわらわら出てくる敵にため息の小太。でもってフラが敵の動きにむーと唇を尖らせる。
敵のジャンプはCAMのスラスタージャンプと同じで反動推進。推進力の加減で射撃が来ると分かっていればかわすことも可能だ。
ここで、ミグ。
「じゃが、着地間際はどうかのぉ」
これまで撃たなかったのはタイミングを見計らっていたから。不敵に微笑する。
「森の中で見えませんよぉ?」
「そこでこのミグ式グランドスラム製造装置と専用砲じゃ!」
解説しよう。
ミグ式グランド以下略とは一見すると時代遅れなポンコツながら性能は折り紙付きのミグ回路を五基、……繰り返すが、五基搭載することによってユニットスキルであればほぼ無尽蔵な回数まで使えるようにしている優れものである。
「着地付近にぶち込んどけば巻き込まれ慌てて飛び出すじゃろう!」
「そこを狙えばいいわけねー」
「わ、分かりましたぁ!」
吠えるミグにはいはいなキーリ。小太も準備オッケーだ。
――どぉん……ドン・ドンッ!
ミグのグランドスラムが森に轟き、苦し紛れに飛び出したクリスタルをキーリと小太が狙った。
この連携は見事に奏功し、ジャンプ段階でキラキラ破片を散らしていた赤と黄緑のクリスタルは派手に破片を散らしやせ細った。動きも鈍っている。
しかし、ほかのクリスタルが距離を詰めている。射線、来たッ!
「キアン、変形だ」
モータルとキアン、ビルドムーバーを人型に変形し銃を構え敵に備える。が、やや遅い。
その時だった!
――ふわっ……。
光のカーテンとともにR7エクスシアが目の前に。
「受けた名前は九十番台。剣豪目指して舞うさまは、誰が呼んだかココジロウ!」
宵待 サクラ(ka5561)の口上とともに、エクスシア「九十二郎」(ka5561unit003)が登場。カットインとともにマテリアルカーテンで射線を遮った。
そして光のカーテンが消えるとともにラージブレード「マカブイン」を抜刀した!
敵の青いクリスタルに向かって加速したぞ。ががっ、と敵の射撃を食らうが構わず接敵し……。
「ココジロウ、薙ぎ払いっ!」
青いクリスタルの胴に入り、青い破片が舞う。
この一撃の動きの中でサクラの視線がパレスを捉えた。
先ほどよりさらに近くなっている。
「……デカッ。なんで歪虚はこんな大きなものばっかり作るかなあ」
なお、驚いた一瞬の隙を新たに近寄って来た黄色のクリスタルが逃さない。
「大きさが力のすべてではない」
そこへ鞍馬 真(ka5819)がカットイン。割って入る!
ワイバーン「カートゥル」(ka5819unit005)で黄色のクリスタルを射撃。さらに敵の左肩に幻獣剣「グルート」で体ごと体当たりした。
「よし、バレルロールだ」
飛び去るところ、黄クリスタルから射撃を受けるがひねって交わし離脱する。
そしてちらと城を見る真。
「……わざわざ来てくれた本拠地に行きたいところだが」
まずはこちらが先だとクリスタルたちとの戦いに専念する。
砲撃から敵がクリスタルを戦線投入し距離を詰めてきたところ、サクラの防御と真の突入で潮目を迎えた序盤戦。ここからさらに敵クリスタル8体は戸惑うことになる。
「一気にパレスへ突入するぜ!」
何と、Jのコンフェッサー(ka6653unit005)が戦線突入ではなく、一気に突破を目指したのだ。フライトシールド「プリドゥエン」を足場にバランスを取り一気に空を駆け抜ける。
「援護します」
これをフィロ(ka6966)のコンフェッサー(ka6966unit004)が105mmスナイパーライフルで狙い撃つ。ピシリ、と紫に命中するも破片をわずかに散らすのみ。威力は弱いわけではない。敵の被害軽減能力だ。
一方、Jの突破行動に気付いた敵もいる。
橙のクリスタルがJのコンフェッサーを撃つ。
「こっちゃ覚悟決めてんだ。それくらいで墜とされるかよ!」
Jの叫びが聞こえたわけではないが、今度は緑のクリスタルがタックルに来たぞ!
――バフン!
「残念。ハズレだ!」
間一髪、マテリアルバルーンを展開。身代わりに抱き着かせて難を逃れる。
なお、敵はJの行動に気付くと全機がこれを止めようと行動していた。
「地上にいるのは責任持つわね~」
「飛び立つ前に撃ちますよぉ~」
「味方を巻き込まぬ場所に撃ち込むしかないかの」
キーリと小太が援護射撃。ミグはあえて外して盛大に範囲爆破し敵の危機感をあおり牽制する。
そしてサクラ。
「決めた」
先ほど戦った青いクリスタルに狙いを定めると少し腰を落とした大地を踏みし溜めた後、九十二朗のフライトブーストをフルパワー。
「これが私の担当。絶対、倒す!」
ラージブレードをかざして一直線に突撃。Jに向かっていた敵に刃を叩き込み盾で体当たりし、その軌道を完全に反らした。
さらに、フィロ。
「目的は初華様のパレス到達。そのためには……」
スラスターフレーム「グライテン」、スタンバイ。地上から一気にフライトジャンプする!
「確実に一人一殺! 制空権を確保して非武装兵員輸送ヘリの侵攻ルートを作ります」
先ほど射撃した紫の敵に向かって飛んだ。
ちょうど敵はJに追いすがろうと方向転換してジャンプしていた。フィロのコンフェッサー、ライフルを背中のパイロンに戻している。オープンになった両手で敵にタックルし、もろともに森の中に消える。
見事、地上戦に持ち込み確実に空中から退場させた。
この時、Jは白と橙、そして弱りながらも味方の射撃を食らいつつも再ジャンプで追い付いて来た赤と黄色も追いついて来たぞ!
このままでは一対四で完全包囲されてしまう。
「ま、フェイクだったからいいんだけどな」
J、形勢不利を悟るとあっさりとパレス行きをあきらめた。
フライトシールドから下りる動きで反転し左手でシールドをつかんだまま……。
「あと、任せた」
マテルアルフィストで殴った後につかみかかり森の中へと消えて行った。
のこった敵3体がその後ろ姿に射撃するが……。
「任されたよ!」
元気いっぱいの声とともに誰か来たッ!
「今だグランソード。……くらえ、一刀両断スーパーリヒトカイザー!」
時音 ざくろ(ka1250)の声だ。
フライトシールド「プリドゥエン」に乗った魔動冒険王『グランソード』(刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」)(ka1250unit008)がざくろの気合いそのままに斬艦刀「雲山」を振るって光あれ。敵3体の射撃を乱す。
それだけではない。
「後ろにも注意が必要だな」
真が一撃離脱後、折り返してきていた。
もちろん、気付いた敵は真のカートゥルに一斉射撃。
タイミングは遅れていたが、バレルロール。
ところが、普通なら回避するものだが、強引に敵が一直線に並ぶ位置に割り込むためにスキルを使っていた。手ひどく食らうが、真の目的は、コレだ。
「魔法剣化した武器に更に全霊のマテリアルを注ぎ込み……」
一切の無駄を省いた動作で、刺突一閃!
「魔断を放つ!」
敵の赤、黄緑が一直線にこれを食らったッ。
その過ぎ去る横でざくろが追撃の技を振りかぶっていた。
「いくよ、グランソード。僕の心が魔動に変わる!」
狙いはまだ余力があり真の縦一直線攻撃から逃れた白い敵だ。
いや、それだけではないッ。魔法紋が浮かび上がり、斬艦刀がマテリアルのオーラを纏う。
「斬艦刀横一文字切り!」
万象の器で射程を伸ばし、白だけではなく3体まとめて薙ぎ払い。今度は離脱する真の援護だがきっちりとヒットさせた。白と赤と黄色のキラキラと光る破片がグランソードに降り注ぐ。
おっと。
真の援護に入ったのはざくろだけではなかった。
「相変わらず無茶やってるわね、真」
真の離脱する方向からカーミンがグリフォン(ka1559unit002)で突入して来た。
「手数が必要な敵だ」
「分かってる。どこまでそのダイエット、保つかしら?」
すれ違いざまに話ししたカーミン、蒼機銃「マトリカリア」を構える。
「『藤袴』……花言葉は『ためらい』、『遅れ』」
射撃が光の如き一条とも言うべき速さで黄緑にヒットした。キラキラと破片が散る。
「量は変わらず……剥離する前に貫通攻撃と思ったけど」
カーミンの狙いある一撃は目論見通りといかなかった。
「でも、問題ないかしら?」
飛び去った背後では砲撃舞台からの援護射撃が来た。一呼吸おいてざくろが反転してまたも敵を一手に引き付けている。
「はっ!」
その中で、反転した真のを黄色の敵が下から再ジャンプで狙っているのを察知した。
「花言葉は「用心深さ」「先見の明」「保護」……届いて、『柊』!」
カーミンも反転しつつ遠い距離ながら援護射撃。
これにより真が気付き、敵は先に回避行動をしたことで真の刺突を回避できず食らうことになる。
しかし、真が狙おうと突っ込んでいた敵が逆に真を襲う。
ワイバーンであるため、地上戦に持ち込もうとタックルに来ている。
真、絶体絶命!
その時だった。
「光あれ、なの!」
ディーナの刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」(ka5843unit007)、ただいま到着!
クロイツハンマー「ガバメント」を長大射程でぶん回し、赤い敵を吹っ飛ばした。
「まだいけるの!」
さらに敵はその辺にいると連打する。
「ディーナ様、初華様たちは無事に森の外まで来ましたか?」
フィロからの通信。彼女は森の中で紫の敵を殴り倒している。その姿はコンフェッサーながらもまさにフィスト連打の殴りメイドの様相だ。
「うん。鑑さんもいっしょなの。城も近付いてるからもうすぐ行くって言ってたの」
「安全確保にもうしばらく時間が必要ですが……敵城内での時間がどれだけかかるか読めない、ということですか」
フィロ、その考えは分からないでもないとする。
「仕方ない。私と真のグリフォンで初華を護衛するしかないわ」
「ああ、それでいい」
カーミンと真、とにかく制空権確保に移る。
「私も福音の風とフレーム・ジェネレーターの飛行能力生かしクリスタルと空中戦するの。しっかりクリスタルを押さえ込むの!」
マテリアルの翼を広げ浮かんでいるディーナも気合を入れる。
ここで森の中のサクラから通信が!
「敵弱点発見! 胸の奥に芽吹いた種がある!」
サクラはマテリアルカーテンをマントのようにひらめかせ敵の攻撃を防ぎ巨大サーベルの突き、マントひらめかし突きを繰り返していた。敵が離脱しようとしたらブラストハイロゥの翼で阻害。そしてマントと突き、といった具合に一人一殺の使命に燃え同じ攻撃。
これが同一部位の攻撃につながり、敵の胸を重点的に穿つことにつながった。
で、胸の奥に大きな種を発見したのだ。
「コアみたいで、これを突いたら全部キラキラになって砕けて消えたよ!」
サクラ、お手柄である。
「成程な、もらったぜ!」
Jの通信。こちらも胸を穿つ直前だったようで、素早く仕留めたようだ。
「初華様、速やかに突入してください!」
この状況にフィロが通信で叫んだ。
パリパリッ、と森の外からプロペラ音が響く。
「皆様をお願いします……ご武運を」
フィロに見守られ、初華の魔導ヘリ「エンゼルフライ」がパレス上空に到達した。
●
この戦場の変化に敵は敏感に反応した。
動ける敵は目の前の戦いから目標を変えヘリへと向かってジャンプしたのだ。
もちろん全員がこれに対応し追いすがろうとしたが……。
「みんな、いまは大丈夫だから」
悠月の落ち着いた声が通信から響いた。
全員、悠月の言葉を信じた。
だれも敵を追わない。
これを、森の外でイェジドの「シグレ」(ka4130unit001)に騎乗した悠月が見ていた。
悠月の視線は森の上空、パレスに向かう一基のヘリと、それを止めようと森からジャンプ飛行して来た敵に注がれていた。
「ありがとう。信じてくれて……撃てッ!」
仲間に感謝し、斉射の合図。
刹那、轟音が響く。
キーリのラムルタフルが。
小太のダインスレイブが。
そしてミグのヤクト・バウが。
それぞれ最大火力をもって初華のヘリに群がる敵の射撃前を狙って砲撃したのだ。
「よし」
「後は任せて」
撃ち漏らしをグリフォン騎乗の真とカーミンが攻撃する。
「みんな、ありがとっ!」
初華の感謝の声。
「あ、タイミング遅れて来てるんだよ!」
おっと。
同乗している小鳥の見ている方角から、遅れて敵が迫っているぞ!
「こっちからもだ!」
艦の見ている方からも!
ここで通信が入る。
「やらせるかよ!」
Jがフライトブーストを吹かして身を挺し攻撃を受けた後、バズーカ「ロウシュヴァウスト」をぶっぱなして敵を叩き落とす。
「フォースクラッシュ乗せガバメントで殴るの!」
ディーナも割って入ってダウンスイング。攻撃と同時に森へ叩き返した。
「Jさん、ディーナさん、ありがと!」
「また後でな、初華」
Jは男らしさを見せて森へと落ちて行く。
その直前だった。
「当然、あそこには味方もいないし追撃するよね?」
悠月の微笑。砲撃三人組は無言で攻撃をぶち込んだ。
これを見た最前線。
「ミグ……敵はそこだね!」
ざくろ、敵が森に落ちたところにグランドスラムなどが炸裂したのち、森へと突入する。
これで初華、完全にパレスへの道が開けたことになる。
●
――パリパリ……パリッ。
「よし、無事に着地」
初華、対空攻撃を警戒しつつパレスに接近し中庭にヘリを下ろした。
「本当に敵の攻撃、なかったね」
「強襲揚陸用移動要塞ではない、ということかな」
小鳥の鑑はそんなやり取りをしつつ外に出ると周囲に気を配った。
「……ほへ? ホントに敵の抵抗、ないの?」
初華も下りて来て首をひねっている。
「本当ならすぐに突入する予定だったが……」
鑑、拍子抜けしたように言う。
「皆を待っても良さそうだねー」
汗たら~する小鳥の頭上から、グリフォンが到着した。
「敵はいないのか?」
真が周囲を警戒しながら聞く。
「うん。何か静かみたい」
「罠とかあるのかな、かな?」
初華の返事に小鳥が首を突っ込む。
「罠があるとしたら閉じ込め型か?」
「ならば援軍を頼んで先を急ごう」
鑑の見立てに即答する真。ざくろ、J、ディーナが向かっていることを確認した。
「大きいクリスタルパレスを私の舞台に変えちゃうんだよ♪ アイドル、狐中・小鳥のライブ開幕するよー♪」
「お? おー♪」
小鳥、そうと決まれば早速突入とばかりに右拳を振り上げる。初華もつられて振り上げる。真と鑑は冷静だが。
で、中庭から正面の両開き扉から突入。
エントランスホールで早速、人間大の【丸太兵】が大量に襲ってきた。
「早速アイドルのライブを聞きに観客が来てくれたみたいだね。でも、君達は今回のライブにはお呼びじゃないんだよー!」
小鳥、草薙剣を右手に、禍炎剣を左手に抜き放ち躍り出ると体を一回転させて前列2体に斬撃を見舞う。さらに今度は逆に横薙ぎ。
ばっさばっさと手際よく敵にダメージを与える。
で、すかさず身を引き敵の攻撃を回避。
たたらを踏んだ敵最前列。
これで敵の進撃が一瞬止まった。
そして小鳥が引いてできた自陣最前衛に、真が現れる。
「前回もいたな」
真、ソウルエッジでみなぎらせた魔導剣を構え刺突一閃。
敵陣営、小鳥のその場に留まった攻防に対処する陣形が災いし、真の攻撃をモロに食らった。
「左は受け持った」
「鑑さんが左ならわたしは右だね。アイドルはセンター以外もマイクアピールするんだよ♪」
左右に散って包囲を狙う敵を抑える鑑と小鳥。前面は真が強力に押し込んでいる。
「わ、私は?」
「初華さんは退路確保なんだよ♪」
初華に小鳥が楽でいいでしょな感じでにっこり。
しかし。
「すまない。小間使いの控室だった」
新たな部屋に突入した真、行き止まりだったようで引き返してきた。
今度は初華の最後方が最前列になる。
「ど、どひーっ」
初華、リボルバーを撃つがやや威力が弱い。
「……あとは蔦で絡んで来るから気を付けろ」
「早く言って―っ!」
剣で絡まれた蔦を斬る真。その助言は少し遅かったようで初華は足に絡まれどってんしてたり。
なお、この丸太を蔦歪虚が絡んで人型にしている敵。
ここにいるだけではなかった。
下の森のそばを流れる川を利用し、一気に草原、そしてポカラ駐屯地にまで進行していたのだ。
「フラ、聞こえる? 川から敵が上陸してるわ」
グリフォンで上空から戦況を確認していたカーミンが地上部隊に連絡する。
「えーっ、前回に戦った敵だよね?」
「フラのロリポップにスペルウォールとマテリアルレーダーがあるでしょ? 一緒に戦いましょう」
「う、うん!」
「フラさん、駐屯地へ近づかせないようにしますよおっ」
カーミンがぐうんと旋回して森の上空から戻って来る。その下では草原をローラーダッシュするフラのロリポップと、パレス砲撃陣形から小太のダインスレイブが離脱していた。
「ラムルタフル、後頼むわね」
それを横目で見ていたキーリ、腰を上げてふわりと宙に浮かんだ。
もちろん、悠月も動いた。
「シグレ、いい?」
乗っていたイジェドの首筋を優しく撫でる。
「近づいてくる敵軍の戦力を削ぐよ。ライブ開始だね?」
オン、と了承するように吠えるシグレ。
「よし、行こう。一緒に歌うよ!」
悠月、最後方から戦線突入。
目の前には川からわらわらと上がった丸太兵と、それを迎撃する味方の姿が。
接敵する味方。戦う。
その後ろから悠月も。
自らの歌とともに。
♪
守れ、守ろう、友との絆
迫る敵から守り通せ
♪
キーリの放ったメテオスウォームでカオスになった戦域に突入。シグレの爪が敵の丸太を吹っ飛ばし、伸びる蔦をぺしりと迎撃する。
♪
走れ、走ろう、取り戻すため
すべてが終わるその前に
♪
小太の射撃の援護を受けつつぎゃりりと敵を殴って方向転換するフラを追い抜く。その横ではカーミンが着地しつつダウンバーストして敵を吹き飛ばし。シグレがこの敵の止めに入る。
そこへ、サクラの九十二郎が上空通過。
「私は飛行時間結構ギリギリだったから、駐屯地の防衛に回るね。頑張れ行ってら!」
そういってポカラ駐屯地へ。
「モータル様たちはどうしていますか?」
さらにフィロから通信。
「川の上流に移動中です。流してる元を断つ!」
モータル、確かにビルドムーバーをトラック形態にして上流に向かっていた。
「……それは非常に危険です。なぜそのような危ない橋を渡るようなことを」
「『危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために』ッ!」
フィロの問いにモータル、自らの座右の銘を叫んだ。
歪虚に故郷を滅ぼされ、盗賊に助けられたものの人に仇なす片棒を担がされ絶望し、その盗賊に襲われる前に脱出し襲撃に備えるよう助言した村では怪しい者として捕縛されたところ、またも歪虚に襲われ村が滅んだ。
人間不信に陥っていた彼に、それでも村のために密造酒を闇の商売人に卸していた村人が、自らの支えとしていた言葉だ。
「分かりました。私が、あなたのために支援します」
「よし、それなら僕は君のために歌うよ!」
フィロが上流へ。
そして悠月も上流方面へ。
するとそこでは、丸太兵が工兵の如く丸太を切り出している場面を発見した。
「さあ、漸くサビに差し掛かってきたね」
悠月の歌は続く。
♪
守れ走ろう、走れ戦え、今日という日を生きるため
そして明日を、輝く明日を分かち合おう!
♪
「作業中の敵は案外たやすいものですね」
「よし、これで供給元は断った。すぐに取って返す!」
あっさり倒してフィロが呟き、モータルが仲間を思いやる。
「そうだね。歌詞も二番に差し掛かるし」
悠月、「天翔けるもの」で空へ。一気に戻る。
そして駐屯地ではレイン魔法美術塾の女子生徒が隊員たちと一緒に戦っていた。
主に魔法の絵筆を使い、空中に絵を描いてそこから強力な攻撃を繰り出していた。
「やるじゃん」
「私達でもできるねっ」
きゃいきゃいと盛り上がるが、たまには蔦に取られたり。
そこへ、サクラ。
「大丈夫?」
蔦を切ってやり、共に戦う。
●
この頃、パレス内部。
「超機導結界発動……ここはもうざくろの領域だ!!」
ざくろ、参戦!
ポゼッションで結界を張り敵を弾き飛ばすと共に城の通路を通せんぼする。
そしてたまった敵に、セイクリッドフラッシュ一閃!
「追いついたの、みんな無事なの?」
敵の残骸を追ってきたディーナ、参戦!
やがて、玉座の間に。
「……確かクリスタルのコアは芽吹いた種だったな」
真の目の前に、細く伸びる一本の苗木が佇んでいた。クリスタルの天井などから光が屈曲して集まり神々しい。
「ちょっと拍子抜けだね」
ざくろも攻撃してこない敵に大人しくなった。
その時、背後から物音が。
「敵か」
鑑が新手を止めに走る。
「鑑さん、私も行くの。終わったら美味しいもの食べて帰りましょうなの」
ディーナがてててっと追う。
初華はうろたえていた。
「え、ええと、どうしよう?」
「草薙剣ならきっと、ふさわしいんだよ」
肩ぽむして小鳥が片膝を付く。
そして草薙剣でそっと、苗の根元を切った。
瞬間!
鑑とディーナの戦っていた丸太兵がぼろっと崩れた。
そしてパレスも傾く。
「脱出するぞ!」
真の号令で駆け出す一同。
それぞれヘリなどに乗り込み、脱出した。
「うむ、出番じゃの」
ここで単騎、連絡を待っていたミグが再び動いた。
「しっかしまあ、綺麗ではあるがあれを完全爆破したらゴミがすごそうじゃな」
呟いてからヤクト・バウの全力射撃。
「まあ、そうならんように片側だけを集中攻撃するが」
とはいえ全力戦闘後。いくら何でも残弾が少ないが……。
戦う丸太がパレスのコアたる苗木を斬ったことで蔦が消え、ただの丸太に戻ったため全員が上空を見上げている。
その中でパレスはミグの砲撃で軸線を外しつつばらばらと破片を散らしていたが、やがて崩壊が加速し最後は花びらを散らすように大きく崩れながら――消滅した。
森の奥でたまりにたまったマイナスマテリアルが、ついに消滅したのである。
●
戦いが終わって。
「……絵かぁ。私はよく分からないけど、学校が好きなら他の学校に勉強に行くんでも良いんじゃないかなぁ」
聖導士学校の臨時教師をしているサクラ、美術塾生とそんな会話をしている。
こちら、フィロ。
「初華様、皆様、おめでとうございます……お疲れさまでした」
初華たちに一礼したところ、Jが割り込んだ。
「お疲れ様だったな……ところで初華、邪神戦争が終わったらお前もリアルブルーに帰るんだよな」
「え?」
初華、くらっとした。慌ててJが抱き止めた。
顔を見ると真っ青だ。
「初華、どうした?」
「……わからない。どうしていいのか」
かろうじてそれだけ言うと、目を見開いたまま涙を流すのだった。
「巻き込まれて頑張って、……それで、いまさら帰れるって……」
「あーあ、泣かしたわね~」
キーリ、重い空気に背を向けた。
もちろん、Jに悪気も罪もないのだが。
あるいは、ポカラの元住民やモータルなど、故郷を一瞬でも失った者たちの抱く思いなのかもしれない。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/08/14 12:20:53 |
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相談卓 カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/08/15 00:42:58 |