ゲスト
(ka0000)
潮風立つ未来への回廊
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/09 07:30
- 完成日
- 2015/02/13 17:07
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●港町ガンナ・エントラータの領主館にて
「ヘクス様、先日は我が孫娘がお世話になりました」
「畏まらなくていいよ」
深く頭を下げる老紳士に対してヘクス・シャルシェレット(kz0015)が笑顔を向けた。
「しばらく見ないうちにソルラちゃんは立派になったね」
「もったいないお言葉です」
「推薦してもいいかなって思う位にね」
意地悪そうな表情のヘクス。
老紳士は驚いた顔をしていた。
「推薦とは……いかなる事でしょうか?」
「うん……まぁ、話してもいいかな」
昨年、王国に侵攻してきた傲慢の歪虚。
多大な被害を被りながらもハンター達や騎士団等の活躍により、歪虚を退ける事ができた。
だが、逃げ遅れたのか、もしくは、わざとなのか、王国内に残っている歪虚も確認されている。
「復興でどこも人手が足りないし、無尽蔵にハンターにお願いするわけにもいかないからね」
そこで、ある貴族からの提案で、王国内に残っている歪虚の残党や潜伏している歪虚を専任で、調査・追跡する騎士団の小隊をいくつか結成する話が持ち上がったのだ。
「しかし、それだと、保守系貴族からの反発が?」
「そうなんだよね~」
貴族領地内の事に干渉されるのを恐れた保守系貴族から反対する意見が聞かれた。
だが、保守系貴族も一枚岩でもなかった。
戦いで疲弊していた貴族の中には、歪虚の揉め事を解決する小隊の結成は歓迎される事であったから。
「誰が、小隊を率いるかで揉めそうでね」
「それで、ソルラもその1人に……なのですか」
孫娘の父親は保守系貴族だ。
保守系貴族達から見れば、王国主導で小隊が活動されるよりかは不安は少ないだろうし、騎士団から見れば、『鉄壁の騎士』と二つ名を持ち、ハンター達とも懇意な彼女が小隊長と就く事は柔軟な活動が期待できるだろう。
「久しぶりに直で会えて良かったよ。ソルラちゃんなら、きっとやれるはずだろうし」
「孫バカと言われそうですが、あの子は、よく出来た子です」
父親に似て融通の利かない頑固な孫娘は、先の大戦から変わった。
きっと、色々な所で、良い出逢いを重ねて来たのだろう。
「それで、本題なんだけど……」
ニヤっと笑ったヘクスが続けて言った『本題』に、老紳士は驚きと感心を持つのであった。
●とあるハンターオフィスにて
受付嬢がカウンターに右肘をついていた。
左手の指で自分の髪をくるくるといじっている。
暇そうだ……とは思うが、そんな事を口にする人は居なかった。
「皆、用事があるとか言って、絶対、用事がないのに、見栄で休んでいる奴がいる」
ブツブツとなにかダークな言葉を発している。
下手に声をかけようなら、八つ当たりされそうな雰囲気だ。
「バレンタインデーに揃いも揃って用事とかなに? くたばってしまえばいいのに」
ハンターがカウンターに来たのにも関わらず、気がつかずに恐ろしい事を言っていた。
そのハンターは受付嬢の雰囲気に恐れをなしたのか、それとも、まったく仕事をやる態度じゃない事に呆れたのか、立ち去った。
モニターには、そのハンターが聞こうとした依頼が表示されている。
『考案及び巡回等依頼』
詳細を聞こうにも、受付嬢があの有り様では……。
そんな空気が伝わったのか、ハッとなる受付嬢。
「いらっしゃいませ! この依頼ですね!」
表情は笑顔なのだが、目が怖い。
「これは港町ガンナ・エントラータのある商会からの依頼となります」
王国内に潜伏もしくは残党と化している傲慢の歪虚を調査・追跡するチーム名及び活動方法に関するアイデアの考案や、港町で巡回や調査等を行うという。
しかも、それで、報酬は並に出るという。
裏を返せば、報酬に見合うだけの成果も期待されているという事なのだろうが。
「適当な事を考えて、港町で、デートだなんて、私は許しませんからね!」
いや、お前は依頼主じゃないだろうし、そもそも、なぜそんな発想になるのかというツッコミが、どこからか空気だけで流れてきた。
口で言おうものなら、きっと、この受付嬢の怒りの叫びが返ってきた事だろう。
「……あ。で、でも、仕事という事で、私も一緒に連れていってくれるなら……」
受付嬢は自分の台詞に瞳を輝かせる。
潮風が心地よく吹く中、オープンテラスでロマンチックに過ごす事でも想像しているのだろうか。
とりあえず、依頼書にサインするかどうか。決めるのは貴方達である。
「ヘクス様、先日は我が孫娘がお世話になりました」
「畏まらなくていいよ」
深く頭を下げる老紳士に対してヘクス・シャルシェレット(kz0015)が笑顔を向けた。
「しばらく見ないうちにソルラちゃんは立派になったね」
「もったいないお言葉です」
「推薦してもいいかなって思う位にね」
意地悪そうな表情のヘクス。
老紳士は驚いた顔をしていた。
「推薦とは……いかなる事でしょうか?」
「うん……まぁ、話してもいいかな」
昨年、王国に侵攻してきた傲慢の歪虚。
多大な被害を被りながらもハンター達や騎士団等の活躍により、歪虚を退ける事ができた。
だが、逃げ遅れたのか、もしくは、わざとなのか、王国内に残っている歪虚も確認されている。
「復興でどこも人手が足りないし、無尽蔵にハンターにお願いするわけにもいかないからね」
そこで、ある貴族からの提案で、王国内に残っている歪虚の残党や潜伏している歪虚を専任で、調査・追跡する騎士団の小隊をいくつか結成する話が持ち上がったのだ。
「しかし、それだと、保守系貴族からの反発が?」
「そうなんだよね~」
貴族領地内の事に干渉されるのを恐れた保守系貴族から反対する意見が聞かれた。
だが、保守系貴族も一枚岩でもなかった。
戦いで疲弊していた貴族の中には、歪虚の揉め事を解決する小隊の結成は歓迎される事であったから。
「誰が、小隊を率いるかで揉めそうでね」
「それで、ソルラもその1人に……なのですか」
孫娘の父親は保守系貴族だ。
保守系貴族達から見れば、王国主導で小隊が活動されるよりかは不安は少ないだろうし、騎士団から見れば、『鉄壁の騎士』と二つ名を持ち、ハンター達とも懇意な彼女が小隊長と就く事は柔軟な活動が期待できるだろう。
「久しぶりに直で会えて良かったよ。ソルラちゃんなら、きっとやれるはずだろうし」
「孫バカと言われそうですが、あの子は、よく出来た子です」
父親に似て融通の利かない頑固な孫娘は、先の大戦から変わった。
きっと、色々な所で、良い出逢いを重ねて来たのだろう。
「それで、本題なんだけど……」
ニヤっと笑ったヘクスが続けて言った『本題』に、老紳士は驚きと感心を持つのであった。
●とあるハンターオフィスにて
受付嬢がカウンターに右肘をついていた。
左手の指で自分の髪をくるくるといじっている。
暇そうだ……とは思うが、そんな事を口にする人は居なかった。
「皆、用事があるとか言って、絶対、用事がないのに、見栄で休んでいる奴がいる」
ブツブツとなにかダークな言葉を発している。
下手に声をかけようなら、八つ当たりされそうな雰囲気だ。
「バレンタインデーに揃いも揃って用事とかなに? くたばってしまえばいいのに」
ハンターがカウンターに来たのにも関わらず、気がつかずに恐ろしい事を言っていた。
そのハンターは受付嬢の雰囲気に恐れをなしたのか、それとも、まったく仕事をやる態度じゃない事に呆れたのか、立ち去った。
モニターには、そのハンターが聞こうとした依頼が表示されている。
『考案及び巡回等依頼』
詳細を聞こうにも、受付嬢があの有り様では……。
そんな空気が伝わったのか、ハッとなる受付嬢。
「いらっしゃいませ! この依頼ですね!」
表情は笑顔なのだが、目が怖い。
「これは港町ガンナ・エントラータのある商会からの依頼となります」
王国内に潜伏もしくは残党と化している傲慢の歪虚を調査・追跡するチーム名及び活動方法に関するアイデアの考案や、港町で巡回や調査等を行うという。
しかも、それで、報酬は並に出るという。
裏を返せば、報酬に見合うだけの成果も期待されているという事なのだろうが。
「適当な事を考えて、港町で、デートだなんて、私は許しませんからね!」
いや、お前は依頼主じゃないだろうし、そもそも、なぜそんな発想になるのかというツッコミが、どこからか空気だけで流れてきた。
口で言おうものなら、きっと、この受付嬢の怒りの叫びが返ってきた事だろう。
「……あ。で、でも、仕事という事で、私も一緒に連れていってくれるなら……」
受付嬢は自分の台詞に瞳を輝かせる。
潮風が心地よく吹く中、オープンテラスでロマンチックに過ごす事でも想像しているのだろうか。
とりあえず、依頼書にサインするかどうか。決めるのは貴方達である。
リプレイ本文
●とある応接室にて
「それじゃ、巡回に行ってくるぜ!」
高らかに宣言したのはジャック・J・グリーヴ(ka1305) だ。
マントを得意気にバサァ! と広げる。口に薔薇でもあれば、なお、キマっていただろうに。
「ちと変わった仕事だが楽しく行こうじゃねーの」
紫月・海斗(ka0788)が愛用のハットを被り直した。
その横で、メトロノーム・ソングライト(ka1267) が長い青髪を揺らしながら、席から立ち上がる。
3人は港の倉庫街と市場を巡回するつもりなのだ。
「グリーヴ様、紫月さん、よろしくお願いします」
「お、おう! ま、まぁ、俺様に任せておけ!」
顔を赤くしながら、急いで扉に向かうジャック。
「あの……私、なにか怒らせてしまったのでしょうか?」
心配になったメトロノームが紫月に訊ねる。
「あれは、照れ隠しだ。ジャックは女によ……」
「て、てめーら、早く行くぞ!」
紫月の言葉を遮る様に扉の外に出たジャックが2人を呼ぶ。
クスリと笑ったメトロノームとニヤニヤと笑みを浮かべた紫月であった。
3人が出ていき、シエラ・ヒース(ka1543)も席から立ち上がった。
「それじゃ、実際に現場を見にいきましょう」
「はい。よろしくお願いします」
応えたのは、王国の女性騎士ソルラだ。
ただ、今回は騎士としてではなく、依頼主の1人として、この場にいる。
港町で発生した恨晴石絡みの事件と、情報収集する際の注意点等をシエラは伝えようと思っている。
「トライフさんも、よろしければ」
ソルラの呼び掛けに、考え事をしていた トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が取りだそうとした煙草を仕舞った。
路地裏や住宅街を行ってみようと思っていたからだ。
「ソルラ嬢のご指名とあれば」
とポーカーフェイスを崩さないで返事をする。
「シエラさんもいいですか?」
「私は構わないわよ」
恨晴石があった場所も巡るのだ。
雑魔がでない可能性がないわけでもないし。仲間がいる事にこした事はない。
シエラの返事に、ソルラが嬉しそうな表情を浮かべた。
「ふふ。まるで、いつかのデートの時みたいですね」
ソルラの恋人を演じて欲しいという依頼の時も、シエラとトライフは一緒だった。
今回も一緒という事。ソルラはそれが嬉しいのだろう。
「むゃ~」
シエラとトライフ、そしてソルラの3人が部屋から出て行って、部屋に残った受付嬢のミノリが期待を込めた眼差しでエリオット・ウェスト(ka3219)に圧力をかける。
チーム名と具体的な活動についての報告は終わったので、彼女の役目も終了のはずだ。
「それじゃ、僕は繁華街でも回るかな」
「むゃ~」
受付嬢が変な唸り声と共に目をキラキラさせている。
きっと、連れて行って欲しいのだろう。
「君も一緒に行きたいの? じゃあ、案内してくれないかな。僕、この港町は初めてなんだよね」
あまりにも可哀想に思ったのか、エリオットが仕方なく声をかけた。
「そ、そうね。可愛い坊や1人で行かせる程、お姉さんは厳しくないから」
これは、仕事なのよ。こんなに小さいハンターに怪我でもあったら云云と独り言を呟いている。
「あ、うん、ごめんね。君にとっちゃ迷惑だったかな」
「な、なにを言ってるの! なにがあっても、お姉さんが守ってあげるから!」
ギューと強く抱きしめられる。
(だ、大丈夫かな、この人……)
ハンターを兼ねてオフィスで受付嬢をやっているというが……。
しかし、誘ってしまった以上は、連れていくしか仕方ない。
「むゃ~。今、不安に思ったでしょ」
「そ、そんな事ないよ」
心の声が聞こえたのかと焦るエリオットだった。
●港にて
「依頼主は第六商会じゃねぇみたいだが、キナ臭ぇな」
ジャックが倉庫街を歩きながら、そんな事を言う。
第六商会とは、この港町ガンナ・エントラータの領主でもあるヘクス・シャルシェレット(kz0015)が経営している商会である。
今回の依頼はソルラの親族経由との事だが、裏で絡んでいるのではないかと勘繰る。
「先程の商人も、商会がどうのって言っていましたね」
メトロノームが言う通り、歪虚に関する噂話を聞いていた時、たまたまなのか、その商人も第六商会の事を口にしていた。
「そういえば、メトロ嬢ちゃんは件の強盗団討伐の依頼を受けたっていってたな」
「ますます、キナ臭ぇぜ」
紫月の言葉にジャックがさっき言ったばかりの台詞を繰り返す。
強盗団討伐の時の戦いを思い出すメトロノーム。あの時、依頼主であるソルラは街の兵士達を引き連れていた。
「……ほんっと考えが読み辛ぇな、あのヘクスとかいう野郎は」
掌の上で踊らされている様な気がして気に食わないが、依頼は依頼だと思う事にした。
「まぁ、その通りだな。おっと、そこのご婦人、よろしいか?」
真剣な表情のジャックに軽く同意しながら、紫月が通りがかった人を呼び止め、変わった事件がないか訊ねる。
巡回では、こうした地道なコミュニケーションが大事だ。
「凄い……」
倉庫街を抜けた所でメトロノームが驚いた。
港にズラリと並ぶ大きな船と港町の活気を目にしたからだ。
育ちが海から少し遠い所にあったからか、思わず足を止めてしまう。
「お嬢ちゃん。こんな所でお散歩かい?」
振り返れば柄の悪そうな男が数人。
港の景色に見とれている間に、ジャックや紫月と離れてしまった様だ。
メトロノームは冷静に短杖を握りしめる。
「待ちやがれ!」
と、そこへ、ジャックが颯爽と現れた。
睨みあうゴロツキ共とジャック。
何事もなかったかのように紫月がメトロノームに近づいた。
「荒事はジャックに任せて、俺らは避難だ避難」
ニヤリと笑っていて、本気で避難する気もないみたいにも見える。
殴りかかってきたゴロツキを軽く叩きのめすジャックの姿を見て楽しんでいるようだ。
「くくく、格好良いぜぇジャーックゥ!」
「当たり前だ! 俺様の勇姿、目に焼きつけておきな!」
悲鳴をあげて逃げ去っていくゴロツキ共。
「ありがとうございます」
別に助けられなくても、メトロノームは問題にもならなかったが、助けられた形になったのもあるので、ジャックに頭を下げる。
「この町じゃ、ガラの悪い奴にちょっかい掛けられるかもしれねぇしな。気をつけろよ」
「そういう台詞は、ちゃんと相手の顔見て言わないと意味がないぜ、ジャック」
「お、俺様は、ま、周りを警戒しているだけだ!」
ジャックと紫月の2人のやり取りが面白く、笑みを浮かべたメトロノーム。
女の子らしい可愛い表情を見て、ジャックの顔が真っ赤に染まる。
(ガキとはいえ、女と同行とか良く考えたら、恥ずかしくて死ぬわ。カイトが居て良かったぜ。マジで……)
そんな事、心の中で思う。
「よし! 巡回つってもずっと気を張ってちゃ疲れちまうし、俺様が飯くらいは二人に奢ってやっか」
「あ? ジャックの奢り? よし! 噂の店に行こうじゃねぇか! ちと値は張るようだがまぁ良いだろ!」
「俺様に任せておけ!」
騒がしい2人の雰囲気に、メトロノームは安心した。
無表情で会話も苦手な自分と一緒になって、つまらない思いをさせてしまうのではないかと考えていたからだ。
「ぜひ、お任せします。ジャック様」
●可愛い坊や♪
仲の良い姉弟が手を繋いで歩いている……かの様にも見えるエリオットとミノリ。
歪虚に関する噂などがないか聞いてまわりたかったのだが、繁華街についてからというと、ミノリに引っ張られ、それどころではない。
「ウルトラグレートスーパーデリシャス!」
突然、叫び出す受付嬢。
歪虚を追撃・調査するチーム名の話し合いの中で、エリオットが挙げた名前だ。
「ちょ、ちょっと!」
「ふふ。照れてる姿が可愛いぃ~」
首がへし折られるかと思う位の強さで締められる。
「仕方ないでしょ! 僕は見た目どおりの年齢しか人生を重ねていないんだから……」
「うんうん。いいのよ。お姉さんは分かってるから」
なにが分かっているかわからないが、下手な事を言わない方が、身の安全だとエリオットは悟る。
ここは、話題を変えるしかない……。
「僕は向こうの世界から来たんだけど、向こうの世界のことって知ってる?」
向こうとはリアルブルーの事だ。
「全然、知らないわ」
胸を張って宣言するミノリ。
そんなに自信満々で言わなくてもいいのに。
「僕みたいに奇妙なの来てない?」
「転移者の話はたまに聞くけど、エリオット君みたいな、可愛い坊やは知らないわよ」
この人の頭の中はどうなっているかという点で気になってくるほど、なにか、弾けている。
きっと、受付嬢の業務内容に疲れているに違いない。
そう推測しているうちに、ミノリが先に行ってしまい、露店でアクセサリーをしげしげと眺めていた。
嫌な予感がしたが、そっと頭の隅へ追いやる。
「欲しいの?」
「べ、べつ、そうじゃないわよ。この値段はどうなのかなって思って」
と言いながら、しっかりと腕輪を握りしめている。
買うつもりなのか。
エリオットが品物をじっくりと観察した。
「もっと値切れると思うよ」
そして、ミノリの耳元でその様に小さく囁く。
「おじさん! もう少し、お、ね、が、い」
彼女は前屈みになってニコっと笑う。
仕方ないという顔をして、店員が値を下げた。
ミノリは歓声をあげながら、露店から立ち去っていく。
「じゃ、お代は、これになります」
なぜか、エリオットに差し出される請求書。
「え? え? えぇ!?」
呼び止めようとしたが、ミノリは次の店に行っている。
これは、ヤバい。次から次へと店を回るつもりなのだ。
急いでエリオットは代金を払うと、彼女を追い掛ける。
(これじゃ、疲れちゃうよ……あぁ……喉渇いちゃった。ジュース飲みたいよ~)
心の叫びだけが響くのであった。
●両手に花を
「こういった場所の路地には孤児だのが多い。駄賃程や菓子で複数人使いっ走りにして情報を掻き集めさせるといい」
情報の価値の判断は此方でやれば良いからなと、トライフがソルラに説明をする。
それを忘れない様にしっかりとメモる彼女。
「地元の事は地元の奴に。そして、上手く人を使うこと」
「なるほど、勉強になります! さすが、トライフさんですね!」
ソルラの褒め言葉に、トライフは煙草を咥え直す。
「恨晴石の場所も、結局は地元の人が知っていたしね」
そう言ったのはシエラだ。
先程、恨晴石があったとされる場所に辿り着いたが、特に新しい発見はなかった。
(2人に挟まれて歩くのはいいんだが、物足りない気もするな……)
トライフが心の中で呟く。
両腕絡まされれば、両手に花状態なのだが。
「地元の人間に近づくのに、装いも考えないとな。騎士の姿だと非協力的な人もいるからね」
「はい。今日の姿で大丈夫でしょうか?」
ミニスカートに膝上丈の黒い二―ソックス。
ちらりと見える健康的な太股がちょっと、路地辺り行くのであればいらぬ輩を呼び込んでしまうかもしれない。
「その時は、護衛としてトライフがついていくしかないわね」
「そのようだな」
シエラの言葉に追随する。
このお嬢様には、時々、その育ちの良さが出るようで困る。
「それで、恨晴石の事だけど、ソルラはどう思う?」
ここ最近、港町内で発生した雑魔絡みの事件。そして、スライムを使った強盗事件とそれを討伐した事件。
シエラは、これらの事件に類似性があると見ていた。
「私も、シエラさんと同じです。雑魔の理由も、あの歪虚が黒幕なら、説明がつきますから。後は……」
「緑髪の少女の事?」
「はい。私達人間は歪虚とはお互いに相容れない存在と思っています」
歪虚と共に活動していると思われる少女の存在も気になる所だ。
また、歪虚は『貴様ら自身の中の悪を利用する』と宣言していた。
恨晴石の存在に歪虚は目を付けたのではないだろうか。
「ソルラ嬢、物事は細部を見るだけでなく俯瞰的に見るのも大切だ」
トライフのアドバイスにハッとなるソルラ。
「そうでした。私の悪い癖です。別の視点からも見ないといけませんよね」
「別の視点というと、情報屋なんてのも有効かもね」
そう言って立ち止まったのは一軒の酒場。
その中に、シエラは入っていく。後に続く2人。
「これは、嬢ちゃん。また来たのかい。後ろは……なんだ、カップルか」
奥にいた店主がトライフとソルラを見て興味なさそうに言い放った。
「カ、カ、カップル! そ、そんな風に見えるんですか!?」
「まぁ、その通りだろ、ソルラ嬢」
トライフがニヤリと笑った。
「簡単にからかわれないの」
シエラが両手で頬を抑えているソルラの片腕を強引に引っ張った。
「今度はなんの用事だい?」
「レクチャーしにきたのよ。マスターみたいな人に、簡単に食べられないようにね」
「それじゃ、まるで、俺が悪い人間みたいじゃないか」
両肩を竦める情報屋。
そして、カウンターに座る様に促した。
「まぁ、ゆっくりしていけ」
そう言って、シエラとソルラには、ジュースが出てきた。
作り置きの風味が飛んでいて、おまけに、ぬるいジュースだ。
一方、トライフの前にはグラスワインが置かれる。
「トライフだけ、いいわね」
「俺だけ悪いな」
そう言ってグラスを持ち上げる。
「ソルラ嬢のこれからの活躍に、乾杯」
そこへ、店主が気を利かせて、つまみを出してきた。
トライフが嫌いな魚貝をふんだんに使ったサラダで、それを見た彼が冷や汗を流す。
「それじゃ、『カップル』らしく振舞うのに、あーんってやってみれば?」
意地悪そうに言ったシエラの言葉。
ソルラは「はい! がんばります!」と気合いを入れて、貝をフォークで豪快に突き刺す。
「さ、さぁ、行きますよ! トライフさん!」
そう言いながら、照れているからか、目をギュッと閉じているソルラ。
慌てて必死に制止するトライフの悲鳴が店内に反響するのであった。
●とある応接室で
依頼主の1人、ソルラのお爺さんが入ってきた。
ハンター達や受付嬢は、孫娘と共に、街中に出掛けている。
「『アルテミス』……か。良い名をつけたな」
リアルブルーで、月と狩猟を司る女神の名という。
暗夜に蠢く歪虚も、遍く照らす月の銀光からは逃れられないというイメージが、置き残された資料に記載してあった。
これなら、小隊の通称名にはピッタリだ。良い名をハンター達は考えてくれた。
「これは、また、突拍子もない事も書いておるのぉ」
楽しそうに資料を読む。
一つのチームの判断で迅速に行動できる組織を作ったり、情報の共有と役割分担といった所から、騎乗訓練やグリフォン部隊、変装する等様々に書き込んであった。
「ハンター達の自由な発想。それが、この国難の中、必要かもしれませんな」
呟きながら外の風景を見つめる。
曇り空の合間から光が差し込んでいた。
「彼らにアルテミスの加護があらんことを」
おしまい。
「それじゃ、巡回に行ってくるぜ!」
高らかに宣言したのはジャック・J・グリーヴ(ka1305) だ。
マントを得意気にバサァ! と広げる。口に薔薇でもあれば、なお、キマっていただろうに。
「ちと変わった仕事だが楽しく行こうじゃねーの」
紫月・海斗(ka0788)が愛用のハットを被り直した。
その横で、メトロノーム・ソングライト(ka1267) が長い青髪を揺らしながら、席から立ち上がる。
3人は港の倉庫街と市場を巡回するつもりなのだ。
「グリーヴ様、紫月さん、よろしくお願いします」
「お、おう! ま、まぁ、俺様に任せておけ!」
顔を赤くしながら、急いで扉に向かうジャック。
「あの……私、なにか怒らせてしまったのでしょうか?」
心配になったメトロノームが紫月に訊ねる。
「あれは、照れ隠しだ。ジャックは女によ……」
「て、てめーら、早く行くぞ!」
紫月の言葉を遮る様に扉の外に出たジャックが2人を呼ぶ。
クスリと笑ったメトロノームとニヤニヤと笑みを浮かべた紫月であった。
3人が出ていき、シエラ・ヒース(ka1543)も席から立ち上がった。
「それじゃ、実際に現場を見にいきましょう」
「はい。よろしくお願いします」
応えたのは、王国の女性騎士ソルラだ。
ただ、今回は騎士としてではなく、依頼主の1人として、この場にいる。
港町で発生した恨晴石絡みの事件と、情報収集する際の注意点等をシエラは伝えようと思っている。
「トライフさんも、よろしければ」
ソルラの呼び掛けに、考え事をしていた トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が取りだそうとした煙草を仕舞った。
路地裏や住宅街を行ってみようと思っていたからだ。
「ソルラ嬢のご指名とあれば」
とポーカーフェイスを崩さないで返事をする。
「シエラさんもいいですか?」
「私は構わないわよ」
恨晴石があった場所も巡るのだ。
雑魔がでない可能性がないわけでもないし。仲間がいる事にこした事はない。
シエラの返事に、ソルラが嬉しそうな表情を浮かべた。
「ふふ。まるで、いつかのデートの時みたいですね」
ソルラの恋人を演じて欲しいという依頼の時も、シエラとトライフは一緒だった。
今回も一緒という事。ソルラはそれが嬉しいのだろう。
「むゃ~」
シエラとトライフ、そしてソルラの3人が部屋から出て行って、部屋に残った受付嬢のミノリが期待を込めた眼差しでエリオット・ウェスト(ka3219)に圧力をかける。
チーム名と具体的な活動についての報告は終わったので、彼女の役目も終了のはずだ。
「それじゃ、僕は繁華街でも回るかな」
「むゃ~」
受付嬢が変な唸り声と共に目をキラキラさせている。
きっと、連れて行って欲しいのだろう。
「君も一緒に行きたいの? じゃあ、案内してくれないかな。僕、この港町は初めてなんだよね」
あまりにも可哀想に思ったのか、エリオットが仕方なく声をかけた。
「そ、そうね。可愛い坊や1人で行かせる程、お姉さんは厳しくないから」
これは、仕事なのよ。こんなに小さいハンターに怪我でもあったら云云と独り言を呟いている。
「あ、うん、ごめんね。君にとっちゃ迷惑だったかな」
「な、なにを言ってるの! なにがあっても、お姉さんが守ってあげるから!」
ギューと強く抱きしめられる。
(だ、大丈夫かな、この人……)
ハンターを兼ねてオフィスで受付嬢をやっているというが……。
しかし、誘ってしまった以上は、連れていくしか仕方ない。
「むゃ~。今、不安に思ったでしょ」
「そ、そんな事ないよ」
心の声が聞こえたのかと焦るエリオットだった。
●港にて
「依頼主は第六商会じゃねぇみたいだが、キナ臭ぇな」
ジャックが倉庫街を歩きながら、そんな事を言う。
第六商会とは、この港町ガンナ・エントラータの領主でもあるヘクス・シャルシェレット(kz0015)が経営している商会である。
今回の依頼はソルラの親族経由との事だが、裏で絡んでいるのではないかと勘繰る。
「先程の商人も、商会がどうのって言っていましたね」
メトロノームが言う通り、歪虚に関する噂話を聞いていた時、たまたまなのか、その商人も第六商会の事を口にしていた。
「そういえば、メトロ嬢ちゃんは件の強盗団討伐の依頼を受けたっていってたな」
「ますます、キナ臭ぇぜ」
紫月の言葉にジャックがさっき言ったばかりの台詞を繰り返す。
強盗団討伐の時の戦いを思い出すメトロノーム。あの時、依頼主であるソルラは街の兵士達を引き連れていた。
「……ほんっと考えが読み辛ぇな、あのヘクスとかいう野郎は」
掌の上で踊らされている様な気がして気に食わないが、依頼は依頼だと思う事にした。
「まぁ、その通りだな。おっと、そこのご婦人、よろしいか?」
真剣な表情のジャックに軽く同意しながら、紫月が通りがかった人を呼び止め、変わった事件がないか訊ねる。
巡回では、こうした地道なコミュニケーションが大事だ。
「凄い……」
倉庫街を抜けた所でメトロノームが驚いた。
港にズラリと並ぶ大きな船と港町の活気を目にしたからだ。
育ちが海から少し遠い所にあったからか、思わず足を止めてしまう。
「お嬢ちゃん。こんな所でお散歩かい?」
振り返れば柄の悪そうな男が数人。
港の景色に見とれている間に、ジャックや紫月と離れてしまった様だ。
メトロノームは冷静に短杖を握りしめる。
「待ちやがれ!」
と、そこへ、ジャックが颯爽と現れた。
睨みあうゴロツキ共とジャック。
何事もなかったかのように紫月がメトロノームに近づいた。
「荒事はジャックに任せて、俺らは避難だ避難」
ニヤリと笑っていて、本気で避難する気もないみたいにも見える。
殴りかかってきたゴロツキを軽く叩きのめすジャックの姿を見て楽しんでいるようだ。
「くくく、格好良いぜぇジャーックゥ!」
「当たり前だ! 俺様の勇姿、目に焼きつけておきな!」
悲鳴をあげて逃げ去っていくゴロツキ共。
「ありがとうございます」
別に助けられなくても、メトロノームは問題にもならなかったが、助けられた形になったのもあるので、ジャックに頭を下げる。
「この町じゃ、ガラの悪い奴にちょっかい掛けられるかもしれねぇしな。気をつけろよ」
「そういう台詞は、ちゃんと相手の顔見て言わないと意味がないぜ、ジャック」
「お、俺様は、ま、周りを警戒しているだけだ!」
ジャックと紫月の2人のやり取りが面白く、笑みを浮かべたメトロノーム。
女の子らしい可愛い表情を見て、ジャックの顔が真っ赤に染まる。
(ガキとはいえ、女と同行とか良く考えたら、恥ずかしくて死ぬわ。カイトが居て良かったぜ。マジで……)
そんな事、心の中で思う。
「よし! 巡回つってもずっと気を張ってちゃ疲れちまうし、俺様が飯くらいは二人に奢ってやっか」
「あ? ジャックの奢り? よし! 噂の店に行こうじゃねぇか! ちと値は張るようだがまぁ良いだろ!」
「俺様に任せておけ!」
騒がしい2人の雰囲気に、メトロノームは安心した。
無表情で会話も苦手な自分と一緒になって、つまらない思いをさせてしまうのではないかと考えていたからだ。
「ぜひ、お任せします。ジャック様」
●可愛い坊や♪
仲の良い姉弟が手を繋いで歩いている……かの様にも見えるエリオットとミノリ。
歪虚に関する噂などがないか聞いてまわりたかったのだが、繁華街についてからというと、ミノリに引っ張られ、それどころではない。
「ウルトラグレートスーパーデリシャス!」
突然、叫び出す受付嬢。
歪虚を追撃・調査するチーム名の話し合いの中で、エリオットが挙げた名前だ。
「ちょ、ちょっと!」
「ふふ。照れてる姿が可愛いぃ~」
首がへし折られるかと思う位の強さで締められる。
「仕方ないでしょ! 僕は見た目どおりの年齢しか人生を重ねていないんだから……」
「うんうん。いいのよ。お姉さんは分かってるから」
なにが分かっているかわからないが、下手な事を言わない方が、身の安全だとエリオットは悟る。
ここは、話題を変えるしかない……。
「僕は向こうの世界から来たんだけど、向こうの世界のことって知ってる?」
向こうとはリアルブルーの事だ。
「全然、知らないわ」
胸を張って宣言するミノリ。
そんなに自信満々で言わなくてもいいのに。
「僕みたいに奇妙なの来てない?」
「転移者の話はたまに聞くけど、エリオット君みたいな、可愛い坊やは知らないわよ」
この人の頭の中はどうなっているかという点で気になってくるほど、なにか、弾けている。
きっと、受付嬢の業務内容に疲れているに違いない。
そう推測しているうちに、ミノリが先に行ってしまい、露店でアクセサリーをしげしげと眺めていた。
嫌な予感がしたが、そっと頭の隅へ追いやる。
「欲しいの?」
「べ、べつ、そうじゃないわよ。この値段はどうなのかなって思って」
と言いながら、しっかりと腕輪を握りしめている。
買うつもりなのか。
エリオットが品物をじっくりと観察した。
「もっと値切れると思うよ」
そして、ミノリの耳元でその様に小さく囁く。
「おじさん! もう少し、お、ね、が、い」
彼女は前屈みになってニコっと笑う。
仕方ないという顔をして、店員が値を下げた。
ミノリは歓声をあげながら、露店から立ち去っていく。
「じゃ、お代は、これになります」
なぜか、エリオットに差し出される請求書。
「え? え? えぇ!?」
呼び止めようとしたが、ミノリは次の店に行っている。
これは、ヤバい。次から次へと店を回るつもりなのだ。
急いでエリオットは代金を払うと、彼女を追い掛ける。
(これじゃ、疲れちゃうよ……あぁ……喉渇いちゃった。ジュース飲みたいよ~)
心の叫びだけが響くのであった。
●両手に花を
「こういった場所の路地には孤児だのが多い。駄賃程や菓子で複数人使いっ走りにして情報を掻き集めさせるといい」
情報の価値の判断は此方でやれば良いからなと、トライフがソルラに説明をする。
それを忘れない様にしっかりとメモる彼女。
「地元の事は地元の奴に。そして、上手く人を使うこと」
「なるほど、勉強になります! さすが、トライフさんですね!」
ソルラの褒め言葉に、トライフは煙草を咥え直す。
「恨晴石の場所も、結局は地元の人が知っていたしね」
そう言ったのはシエラだ。
先程、恨晴石があったとされる場所に辿り着いたが、特に新しい発見はなかった。
(2人に挟まれて歩くのはいいんだが、物足りない気もするな……)
トライフが心の中で呟く。
両腕絡まされれば、両手に花状態なのだが。
「地元の人間に近づくのに、装いも考えないとな。騎士の姿だと非協力的な人もいるからね」
「はい。今日の姿で大丈夫でしょうか?」
ミニスカートに膝上丈の黒い二―ソックス。
ちらりと見える健康的な太股がちょっと、路地辺り行くのであればいらぬ輩を呼び込んでしまうかもしれない。
「その時は、護衛としてトライフがついていくしかないわね」
「そのようだな」
シエラの言葉に追随する。
このお嬢様には、時々、その育ちの良さが出るようで困る。
「それで、恨晴石の事だけど、ソルラはどう思う?」
ここ最近、港町内で発生した雑魔絡みの事件。そして、スライムを使った強盗事件とそれを討伐した事件。
シエラは、これらの事件に類似性があると見ていた。
「私も、シエラさんと同じです。雑魔の理由も、あの歪虚が黒幕なら、説明がつきますから。後は……」
「緑髪の少女の事?」
「はい。私達人間は歪虚とはお互いに相容れない存在と思っています」
歪虚と共に活動していると思われる少女の存在も気になる所だ。
また、歪虚は『貴様ら自身の中の悪を利用する』と宣言していた。
恨晴石の存在に歪虚は目を付けたのではないだろうか。
「ソルラ嬢、物事は細部を見るだけでなく俯瞰的に見るのも大切だ」
トライフのアドバイスにハッとなるソルラ。
「そうでした。私の悪い癖です。別の視点からも見ないといけませんよね」
「別の視点というと、情報屋なんてのも有効かもね」
そう言って立ち止まったのは一軒の酒場。
その中に、シエラは入っていく。後に続く2人。
「これは、嬢ちゃん。また来たのかい。後ろは……なんだ、カップルか」
奥にいた店主がトライフとソルラを見て興味なさそうに言い放った。
「カ、カ、カップル! そ、そんな風に見えるんですか!?」
「まぁ、その通りだろ、ソルラ嬢」
トライフがニヤリと笑った。
「簡単にからかわれないの」
シエラが両手で頬を抑えているソルラの片腕を強引に引っ張った。
「今度はなんの用事だい?」
「レクチャーしにきたのよ。マスターみたいな人に、簡単に食べられないようにね」
「それじゃ、まるで、俺が悪い人間みたいじゃないか」
両肩を竦める情報屋。
そして、カウンターに座る様に促した。
「まぁ、ゆっくりしていけ」
そう言って、シエラとソルラには、ジュースが出てきた。
作り置きの風味が飛んでいて、おまけに、ぬるいジュースだ。
一方、トライフの前にはグラスワインが置かれる。
「トライフだけ、いいわね」
「俺だけ悪いな」
そう言ってグラスを持ち上げる。
「ソルラ嬢のこれからの活躍に、乾杯」
そこへ、店主が気を利かせて、つまみを出してきた。
トライフが嫌いな魚貝をふんだんに使ったサラダで、それを見た彼が冷や汗を流す。
「それじゃ、『カップル』らしく振舞うのに、あーんってやってみれば?」
意地悪そうに言ったシエラの言葉。
ソルラは「はい! がんばります!」と気合いを入れて、貝をフォークで豪快に突き刺す。
「さ、さぁ、行きますよ! トライフさん!」
そう言いながら、照れているからか、目をギュッと閉じているソルラ。
慌てて必死に制止するトライフの悲鳴が店内に反響するのであった。
●とある応接室で
依頼主の1人、ソルラのお爺さんが入ってきた。
ハンター達や受付嬢は、孫娘と共に、街中に出掛けている。
「『アルテミス』……か。良い名をつけたな」
リアルブルーで、月と狩猟を司る女神の名という。
暗夜に蠢く歪虚も、遍く照らす月の銀光からは逃れられないというイメージが、置き残された資料に記載してあった。
これなら、小隊の通称名にはピッタリだ。良い名をハンター達は考えてくれた。
「これは、また、突拍子もない事も書いておるのぉ」
楽しそうに資料を読む。
一つのチームの判断で迅速に行動できる組織を作ったり、情報の共有と役割分担といった所から、騎乗訓練やグリフォン部隊、変装する等様々に書き込んであった。
「ハンター達の自由な発想。それが、この国難の中、必要かもしれませんな」
呟きながら外の風景を見つめる。
曇り空の合間から光が差し込んでいた。
「彼らにアルテミスの加護があらんことを」
おしまい。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓です メトロノーム・ソングライト(ka1267) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/02/09 02:35:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/04 19:35:50 |