ゲスト
(ka0000)
約束のおにく
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/09/23 09:00
- 完成日
- 2019/09/29 23:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ヴェルナーに呼び出され、紅茶をご馳走になったファリフはその足でドワーフ工房の工房管理官の執務室へと向かう。
部屋の主のアルフェッカ、たむろしているフォニケ、カペラ、シェダルが揃っている。
「あれ、テトは?」
最近増えた顔ぶれであるテトがいなかった。
「見回りがてらの情報収集よ」
「そうなんだ。ティアランや町の跡を継いだのかとばかり」
フォニケがおやつの焼き菓子をファリフに渡してテトの状況を答える。
「ティアランは問題ない人材を修復の方に回してるわ。まだシス姐さんの指揮下だけどね」
今は猫の手も借りたいほどであり、きちんと働いてくれる人材は有難い。
「ヴェルナーさんに呼び出されたって聞いたけど」
アルフェッカの問いにファリフはその際に告げられた内容を四人に教えた。
「じゃぁ、暫くはヴェルナーさん、イェルズさん、ファリフの体勢で部族会議の頭を仕切るってことなのね」
話を纏めたカペラが言えば、他のメンバーも納得した様子だ。
「いいと思うよ。イェルズ族長も何かと手伝っていただろうし、ファリフちゃんにとっても二人から学ぶことは多いだろうしね」
書類に署名をし終えたアルフェッカが頷く。
「後、君は何かと飛び回っていたからね。ちゃーんと管理職やってもらう。聞いたよ。族長となるべく、その辺の英才教育を小さい頃から受けてたって」
ギラリと目を光らせるアルフェッカにファリフは「うぐっ」と唸る。
「誰からそんな事を……」
嫌そうに告げるファリフに「スコール族長補佐殿だよ」とアルフェッカが素直に告げた。
「そいや、暫く会ってなかったなぁ……」
ぽりぽりと指で顎を掻く仕草をしたファリフが呟くが、今は話を逸らさなければと必死に頭を巡らせる。
「あ、そいや前にハンターの皆と戦った時、フォニケさんとお肉が食べたいって言ってたよ」
人差し指を立ててファリフが伝言を告げた。
「話を逸らそうと……」
「え、何それ聞いてない!」
話を戻そうとするアルフェッカにフォニケが食らいつく。
「まだまだ緊急を要してるけど、ドワーフ工房の皆も疲れているし、パーッと飲み食いしたらどうかな!」
「そうね! 宴ね!」
テンションがぶち上がった状態のフォニケは誰にも留められない。
「じゃあ、お誘いしにハンターオフィス行ってくるねーーー!」
そそくさとファリフは部屋を出ていった。
部屋の主のアルフェッカ、たむろしているフォニケ、カペラ、シェダルが揃っている。
「あれ、テトは?」
最近増えた顔ぶれであるテトがいなかった。
「見回りがてらの情報収集よ」
「そうなんだ。ティアランや町の跡を継いだのかとばかり」
フォニケがおやつの焼き菓子をファリフに渡してテトの状況を答える。
「ティアランは問題ない人材を修復の方に回してるわ。まだシス姐さんの指揮下だけどね」
今は猫の手も借りたいほどであり、きちんと働いてくれる人材は有難い。
「ヴェルナーさんに呼び出されたって聞いたけど」
アルフェッカの問いにファリフはその際に告げられた内容を四人に教えた。
「じゃぁ、暫くはヴェルナーさん、イェルズさん、ファリフの体勢で部族会議の頭を仕切るってことなのね」
話を纏めたカペラが言えば、他のメンバーも納得した様子だ。
「いいと思うよ。イェルズ族長も何かと手伝っていただろうし、ファリフちゃんにとっても二人から学ぶことは多いだろうしね」
書類に署名をし終えたアルフェッカが頷く。
「後、君は何かと飛び回っていたからね。ちゃーんと管理職やってもらう。聞いたよ。族長となるべく、その辺の英才教育を小さい頃から受けてたって」
ギラリと目を光らせるアルフェッカにファリフは「うぐっ」と唸る。
「誰からそんな事を……」
嫌そうに告げるファリフに「スコール族長補佐殿だよ」とアルフェッカが素直に告げた。
「そいや、暫く会ってなかったなぁ……」
ぽりぽりと指で顎を掻く仕草をしたファリフが呟くが、今は話を逸らさなければと必死に頭を巡らせる。
「あ、そいや前にハンターの皆と戦った時、フォニケさんとお肉が食べたいって言ってたよ」
人差し指を立ててファリフが伝言を告げた。
「話を逸らそうと……」
「え、何それ聞いてない!」
話を戻そうとするアルフェッカにフォニケが食らいつく。
「まだまだ緊急を要してるけど、ドワーフ工房の皆も疲れているし、パーッと飲み食いしたらどうかな!」
「そうね! 宴ね!」
テンションがぶち上がった状態のフォニケは誰にも留められない。
「じゃあ、お誘いしにハンターオフィス行ってくるねーーー!」
そそくさとファリフは部屋を出ていった。
リプレイ本文
ディーナ・フェルミ(ka5843)と星野 ハナ(ka5852)は要塞管理官に会いに来ていたが、その日は要塞管理官であるヴェルナーが不在だった。
二人の用件はドワーフ工房経由で出ている宴の話だ。
オススメされた補佐官の執務室に案内される。部屋の主はアルフェッカ。
「は? 帝国軍も?」
きょとんと目を瞬くアルフェッカにディーナは力強く頷く。
「非番の人も仕事中の人も哨戒中でさえないなら全員カムヒアなの!」
「待て待て待て。話が大きくなってないかい?」
自分達が提案したのはドワーフ工房だけでの打ち上げ程度の宴だったはず。いつの間にそんな大事になっている。
こちらにいるだけでもかなりの数だ。
「やだぁ、邪神戦争後辺境初の大宴会ですよぅ? ここはぱーっと大きくやらなきゃですよぉ☆」
アハハと軽快に笑いながらハナが片手をパタパタ振る。
「それに、来る人間が千人で収まるわけないじゃないですかぁ。場所の手配よろしくお願いしますねぇ、アルフェッカさん~?」
「費用も出すの~~!」
見事なごり押しぶりにアルフェッカは肩を落とす。
「場所の事は承ったけど、その代わりにこれを引き取ってフォニケちゃんに渡して」
紙切れを渡された二人は食材調達のついでにいく事にした。
交渉役の二人以外はドワーフ工房へと向かっていた。
今日も工房は仕事をしているようだ。
「あー! おねえちゃんたちーーー!」
子供の大きな声がハンター達を呼び止めると、パタパタと走る音が聞こえる。
膝まである長い髪を束ね、嬉しそうに手を振る少女が近づいてきた。
ドワーフ工房に手伝いとして入っているクラーという少女。ハンター達と顔なじみもいる。
「クラーちゃ……」
すぐに反応したのはエステル・ソル(ka3983)。
「どうしたのですか!?」
目を白黒させるエステルが見たクラーは顔と周辺の髪が濡れており、作業着が真っ黒だった。
「お仕事中に転んで煤だらけになったから、洗ってたの」
失敗談を話すクラーはすこし恥ずかしそうだ。洗っている時にハンターの声が聞こえて慌てて駆けつけたようだ。
「カペラお姉ちゃん達はエテルナの部屋にいるよ」
クラーは迷うことなくハンターをカペラ達がいる部屋へと案内する。
部屋の中にはカペラとファリフがいた。
「お招きありがとう!」
差し入れのケーキを持ってきたアイラ(ka3941)が声をかける。
「これ、なぁに?」
「ケーキよ」
首を傾げるクラーにアイラが説明すると、食べたことがあると大喜び。
「ケーキはれーぞーこにいれるといいんだよ!」
こっちだよとケーキを大事そうに部屋の隅にある冷蔵庫の中にケーキの箱を入れる。
「あれ、テトはいないのか?」
室内を見たオウガ(ka2124)はテトの姿がないことに気づく。
「フォニケさんと一緒にいるわ。もう少ししたら来るわよ」
何かの設計図をくるくる巻いて仕舞うカペラが告げる。
「あれ? 皆だけ?」
きょとんとするファリフ。
「残りのお二人はヴェルナー様へ会いに行きました」
察したフィロ(ka6966)が告げると同時にフォニケとテトが入ってきた。
「残りって誰?」
「ハナ様とディーナ様です」
目を瞬くフォニケに木綿花(ka6927)が応える。
「にゃんの為?」
「帝国軍の方々もお誘いし、大規模パーティーを行うと」
ハンター以外の面子がそのまま固まった。
「はい?」
鳩が豆鉄砲をくらった顔をする四人。
「帝国本国より少ないですが、やはり大規模な催しですので、色々と心配でして」
悩むフィロの中で心配なのは調味料。
やはり違う味は大事である。
「肉さえあればいいわけではないので」
「確かに、色んな味があるとどれを食べようか楽しみになるしな」
うんうんと頷くボルディア・コンフラムス(ka0796)。
「それは大事よね」
「フォニケさん、つられないの!」
即ツッコミをカペラにとってはそれどころではない。
それでも人数が多すぎるし、ヴェルナーが許すかどうかすら不明だ。
「ヴェルナーさんなら、今日は不在なはずだよ」
ファリフが言えば、カペラは困惑顔から真顔になる。
「なら、アルフェッカさんが何とかするわね」
それなりに要塞都市の運営側と顔を突き合わせているカペラはヴェルナーやアルフェッカ達補佐官とも顔なじみだ。
「頼もしいのですね」
カペラの不安が取り除かれたので、木綿花は安堵の微笑みを浮かべた。
常に働きたくないと嘆いている昼行燈の為、アルフェッカは色んな所から働けと仕事を投げ込まれるのだ。
●
宴まではそれぞれの時間を過ごすことになる。
ディーナとフィロ、木綿花は手分けして調達が必要な食材や調味料の買い出しを行っていた。
こちらに向かう前にフィロはある程度の調味料を他の地域で買い込んでトラックに乗せてきたが、邪神との決戦で些か足りなかったのでここで買い物をすることにした模様。
当然のことながら、ディーナが向かっているのは肉屋。
「フォニケさんの所でお肉パーティするの。ソーセージをね、全種類100本届けてほしいの」
しれっととんでもないオーダーを出すディーナに肉屋の親父は目を白黒させたが、場所が場所なのでしかたないと思う。
「あそこならしかたねぇな」
フォニケやドワーフ工房がどれだけ買い込んでいたのか察してしまうが、快く了承してくれた親父にディーナは感謝し、次の店へと向かう。
「そうだ」
アルフェッカに頼まれていたことを思い出したディーナは紙に書かれている店へとはいった。
外の都市まで買い出しに行こうか考えていたフィロだったが、いくつかの商隊が需要を見込んで入ってきていたので、必要そうなものは何とかなりそうだった。
「胡椒が多く手に入ったのは有難かったですね。ソースものは少なめにして、塩味の提供をメインとしましょう」
木綿花の助言にフィロも同意だ。
「後はソースに必要な香味野菜でしょうか」
「ええ、この時期でしたら、畑の恵みもあったでしょうが、流通があればいいのですが」
今回一番有難いのは、醤油の類が要塞都市でも流通していたことだ。この辺はヴェルナーの手腕が生かされたのかは今のところは不明。
「お、買い出しか」
クラーと一緒に歩いていたボルディアが二人に声をかける。クラーははぐれないようにボルディアが肩車をしていた。
「あら、クラーちゃんと遊んでいたのでは?」
「さっきまで遊んでいたけど、クラーが外に出たいと言い出してな」
「ボルちゃん、あの店! 二人も一緒に!」
あっちだと指さすクラーの言われるままに二人は歩いていくと、菓子屋だ。
食べようとクラーが誘うので、食べることになった。
「ここはあたしがはらうの!」
ばっとクラーが首の下にかけていたがま口財布を両手でかかげる。
「いけませんよ」
「そうだぜ」
慌てるハンター達にクラーは譲らない模様。
「あたしはお姉ちゃんたちのお陰でここにきたの、こんなに美味しいお菓子が食べられるように働けたから、皆にごちそうするの!」
三人は渋々奢ってもらい、お土産の菓子はボルディアに持ってもらう。
「あ、ヘナお姉ちゃんね。看護師になるって。今勉強してるの」
その名前に三人は聞き覚えがある。盗賊団タットルに監禁されていたエーノス族の女性だ。タットルの捕縛の時に心身ともに疲弊した彼女を保護して医師に預けていた。
「今は負傷した兵士とか、部族の人達の看病の手伝いで忙しいけど、凄く楽しそうだったよ」
にこにこして近況を伝えるクラーに三人は安堵する。
未来に不安を持つものもいれば、未来を信じて再び歩き始める者がいることに。
ハナとディーナに押されて多方向に交渉してきたアルフェッカはなんとか場所を抑えた。
軍の方も宴のお誘いは嬉しかったようであり、非番や待機中の兵は任意で参加ということになった。
流石にハンター個人での費用を賄うわけにはいかず、各部署の予算をやりくりすることにしたそうだ。
割合の押し付け合いが平行線になった頃、エステルが話を変えた。
「今後の部族会議で、提案したいことがあるのです」
幸い、この場にはこれから大首長の代理となる体制を担う一人であるファリフがおり、ヴェルナーの代理とまではいかないが、直接言葉を伝えることが出来るアルフェッカがいる。
「どんな事?」
本題を促すファリフにエステルが告げたのは大首長であったバタルトゥが倒れた後を気遣ってのことだ。
現在はヴェルナー、イェルズ、ファリフの三人体制で大首長の機能を維持させようとしている。
「今後、部族間の揉め事も多くなるのではと思っています。部族間の揉め事を解決する役割が必要ではないかと思うのです」
第三者的な組織が必要と彼女は告げる。
「これは信頼できるハンターやしがらみのない部族無き部族の方々が適任かと思って」
一度息を吐いたエステルは視線を自身の膝に落とす。
「本当はバタルトゥさんの引退後の役目にどうかと思っていたのです……あの人の言葉なら皆さん尊重されたでしょうから」
肩を落とし、顔を俯かせるエステルの表情は窺い知れないが、沈む声に彼女の心の揺らぎを感じざるを得ない。
「エステルもそれに参加したいと?」
テトが問うと、彼女は頷いた。
「わたくしは近々辺境に居を移したいと思っています。あの人とこの大地を守ると約束しましたから、部族なき部族に加えて頂けたらと」
「部族会議があるのは、そういった揉め事を部族会議の中で解決する為にあるけど……とりあえずヴェルナーさんとイェルズさんに伝えとくよ」
静かに話を聞いていたファリフが言えば、エステルは頷いた。
「部族なき部族は今は辺境の復興を優先させますにゃ。五年以内にティアラン、元締めの町と合併、人材労力を派遣する組織を作ろうと考えてますにゃ。部族会議とは離れますが、それでもよかったらいつでも来てくださいにゃ」
「それって、やっぱり跡を継ぐってことですねぇ☆」
胸の前で手を叩くハナはどこか楽しそうだ。
「あ、そういえば、ティアランや元締めたちって来れそうですかねぇ」
ハナが言えば、テトは「子供は来ますにゃ」と返した。
「社会見学で出るように誘ってますにゃ」
元締めの方は町の連中はお縄になりに行く気はない、気持ちだけは受け取っておくと笑っていたとテトは告げる。
「ファリフはヴェルナー達と部族会議を治めていくんだろ? フォニケはどうするんだ?」
徐に尋ねるオウガにフォニケは「ここで働くわよ」と返す。
「今はこの仕事が楽しいから、それに武器や兵器を作るだけがこの工房じゃないしね。オウガ君はハンターの仕事を続けるの?」
ドワーフ工房の仕事は少しずつ軌道を変えつつある。
現時点、本来ドワーフ工房を管理するヨアキムはまだ行方不明だが、きっと生きているに違いないと皆信じていた。
故に新しいことが出来ることをドワーフ工房のメンバーは胸を弾ませている。
フォニケの問いに対してオウガはどこか戸惑った様子を見せる。
「あー……俺はあいつの分まで稼げたらいいなって」
「あいつ?」
戸惑った様子を見せつつ素直に返すオウガにフォニケは首を傾げた。
「その子はねー……」
うふふと微笑みながらアイラがフォニケに耳打ちをする。
「ボクも知ってるー!」
「テトは会ったことがありますにゃー!」
「お前等ーー!」
まさかのファリフとテトの参加にオウガがツッコミを入れる。全員珍しく狼狽えるオウガの様子が珍しくて仕方ない模様。
「どうしたのー?」
戻ってきたディーナが声をかける。
「オウガ君の恋バナを聞こうとしてるのよ!」
大興奮のフォニケが応え、後ろから「ちょっと待て!」と叫び声が聞こえてくる。
「そうなのね。フォニケさん、アルフェッカさんが渡してって」
贈り物宜しく包みにリボンが結んであった。
「律儀ねー」
何処か嫌そうな様子であったが、その割には嬉しそうだ。
「私、この時期にカシオペア族に拾われたの」
今までの誕生日だったのだろう。
「さて、ちょーっとバッファローでも取りに行ってきますねぇ♪」
時間は有限、ハナが席を立とうとすると、オウガも「俺も行く!」逃げるように彼も席を立つ。
フィロと木綿花が戻ってくると、アイラも参加してソース作りが始まる。
今回、三人がお邪魔しているのは今回の宴の広場に近い帝国軍の食堂。大きな寸胴鍋をはじめ、大人数を捌く調理器具を提供してもらった。
暇だから手伝ってやると帝国軍の料理人も手伝ってくれたのは有難い。
「お手伝いして頂いてもいいのですか?」
「今の時間なら大丈夫だ」
味付けはハンターに任せる気満々なので、ゆるゆると手伝ってくれるようだ。
時折、寝かせている最中の豚肉と根菜の香草煮物をつまませて貰う。
「美味しいっ」
「香草と胡椒が効いてて爽やかですね」
「だろう」
人参をすりおろしている料理人が嬉しそうに笑い、皆でソースを仕込んでいく。
ハナは占術で狩りの方向を定め、人数を連れて行く。見事に狩場を探し当てた。
見事な連係プレーでバッファロー六体、カンガルー三体を華麗にゲットしていった。
どんどん準備が進んでいき、宴当日となる。
宴当日は帝国軍だけではなく、未だ避難している辺境部族も誘われていた。ドワーフ工房が主催する宴なので、部族はほぼ気軽に来ていた。
時間は夕方少し前から。かなりの人数が集まり、まだ肉も焼き始めたのにあちこちで楽器を奏で、踊る者達が出てきた。
もはや軽いフェスだ。
「なんだか楽しそうだなー!」
キラキラ目を輝かせるボルディアとオウガ。
野外調理器具に関しては、網焼きは帝国軍が野外訓練時からの貸出用であり、畳み一畳分の鉄板はドワーフ工房のものらしい。
焼き手も人数が必要であり、有志で焼き手に入ってくれた。
「もうそろそろ食べられるのー!」
今回は給仕側に入ったディーナが声をかける。彼女はソーセージ茹でを担当している。
焼いた肉の第一陣が食べごろになると、争奪戦が始まる。焼き手は瞬くよりも早く皿に載せられていく肉を見送る暇はなく、すぐさま肉を焼く。
「フォニケさーん! 手が足りないのー!」
トングを振り回しながらディーナが叫ぶ。第一陣で焼けた肉を堪能していたフォニケがご指名されて周囲の視線を受ける。
「お肉食べたいのに!」
少しでもライバルを減らそうと周囲の人達に連れられてフォニケも焼き手に入った。
「もー、提供側に行ったと思ったら」
頬を膨らませるフォニケにディーナは「えへへ」と笑う。
微笑ましい様子を横目に見ていたエステルは「お肉が焼けましたー」と声をかける。
近くでは、エステルのユキウサギであるサフィーが小さい子を子守し、母親がゆっくり食事が出来るようにしていた。
避難生活が続いているので、心が休まる事は少ないが、サフィーの可愛らしい容姿やサフィーに興味津々な子供達に笑顔があって、ゆっくり食事をできるのはとてもありがたい。
エステルはシェダルに習って肉を焼いている。
「何、肉が苦手なのか?」
そう尋ねるシェダルにエステルはうーんと唸った。
「でも、慣れないとなりませんし……」
辺境に居を変えようとするなら必須だろうとエステルは考えている。
「無理せんでもいいだろ。今はここをメインとしているし、いずれは流通も増えるだろう」
鉄板の上の肉を返すシェダルの手元を見つつ、エステルは彼の横顔を見る。思い出すのはアルフェッカの贈り物を受け取ったフォニケの記憶。
「シェダルさんにとってフォニケさんは特別な好きですか?」
忙しなく動いていたシェダルの手が一瞬止まる。
騒々しい音でエステルの声はシェダルだけに聞こえていた。
「言葉はちゃんと伝えないと分からないです」
「恋人にしたら、俺が楽するだけからダメだ」
エステルが顔を上げると、シェダルは何食わぬ顔で肉を返している。
「フォニケを泣かしたら殴るって殴ったから大丈夫だろ」
「それは助言に応えてません」
呆れるエステルにシェダルが笑う。
シェダルの笑顔を初めてみたファリフは驚きつつ、肉を乗せた皿を手にしてアイラとオウガがいる席に向かった。
「そういや、ファリフ君はお酒飲めるの?」
コケモモ味の炭酸割りを飲んでいたアイラが徐に尋ねる。
「うん、飲むよ。成人したし、族長だから」
どうやら、飲めた方が何かとスムーズにいいらしい。
「量は飲めないけど、付き合い程度に」
眠くなっちゃうんだよねーとファリフは笑うと急に真顔になってアイラを見る。
「ねぇ、顔赤くない?」
「それ、酒は入ってるんじゃねぇか?」
分厚いステーキ肉を堪能していたオウガが気遣う。
「かもしれないわねー」
くすくす笑うアイラはコケモモ酒を飲んでそろそろ出来上がりそうだ。
「オウガはなんか心ここに在らずだけど、どうかした?」
串肉を食べているファリフに尋ねられてオウガがぎくりと肩を震わす。
「……一緒に来たらよかったなぁって……」
「あー」
ニマニマ笑うファリフとアイラにオウガは照れ隠しに肉をかぶりついた。
ドワーフ工房のドワーフ達と山のような肉を食らっていたのはボルディアだ。
肉と共に飲む酒は最高である。
「子供の頃になあ、夢見たことあんだよ」
そう言うボルディアはフォークに肉を刺す。
夢の内容は彼女の身体が小さくなった。まるで虫の大きさ。驚くよりも先に閃いたのは、この体なら破裂するくらい食べ物を食えるのでは……と。
「天才か!!」
「わかる!」
頷いた酔っ払いのドワーフ達。
「俺はすぐに台所へ行った! でもテーブルの上には食べ物が何もなかったんだ! それにそもそもテーブルの上に登る事さえできなかった! そこで目が覚めた」
声を落とすボルディアにドワーフ達が「なんてことだ」と彼らも悲しそうだ。
「今日はそいつの悔しさを晴らすぜぇ! 太ったデブに、俺はなる!」
おっと版権ギリギリな決め台詞を叫んだボルディアは肉にかぶりつく。ドワーフ達も囃し立てて本日何回目かかわらない乾杯をしている。
クラーは大皿を両手で持って「ボルちゃんにお肉をいっぱい食べさせたいの」と木綿花に肉を乗せて貰っていた。
「木綿花様、少し休憩をされては?」
フィロが言えば、木綿花は言葉に甘え、ポチとルタ用に焼いて取り分けていたお肉を持って席を外す。
「あら、お疲れさん」
花豹達部族なき部族のメンバーの席にお邪魔する。ポチもルタも落ち着けてご飯を食べている。
「食べてますか?」
「美味しいです!」
世間話をした後、木綿花はルックスの方を向く。
「ルックス様はこれからもテト様達と?」
「うん、木綿花さんは?」
木綿花の問いかけにルックスは頷く。
「私は龍園に戻って、時々レクエスタかなと」
はっきりとしたビジョンは見えてないが、恐らくそうなるだろう。
「あ、折角ですから、記念撮影はどうですか?」
魔導カメラを取り出した木綿花の提案に彼らは快く了承する。
「僕にも欲しいな」
木綿花より写真を貰ったルックスはじっと写真を見つめていた。
「ありがとう、木綿花さん」
「どういたしまして」
にこりと木綿花は微笑む。
今日の功労者の一人であるハナはテトやシスに労われていた。
「八面六臂の働きだったねー」
「避難民相手に食事を作ることもありましたんでぇ……」
遠い目をするハナはお嫁さんというよりも職人の域だなとテトは思った。
宴もたけなわな頃、ディーナがフォニケにある事を告げる。
「私タスカービレで結婚するの」
フォニケは絶叫を上げようにも声が出ないほど驚いていた。
彼女から恋バナを聞いた事がなかったからだ。
「その時はフォニケさんにも来てほしいの……ダメかな」
おずおずと願いを告げるディーナにフォニケはそっと息を吐く。
「行けるか分からないけど、私はいつでも私を支えてくれたあなたの幸せを祈ってるわ。結婚おめでとう」
ディーナの銀の髪を撫でてフォニケは優しく微笑んだ。
二人の用件はドワーフ工房経由で出ている宴の話だ。
オススメされた補佐官の執務室に案内される。部屋の主はアルフェッカ。
「は? 帝国軍も?」
きょとんと目を瞬くアルフェッカにディーナは力強く頷く。
「非番の人も仕事中の人も哨戒中でさえないなら全員カムヒアなの!」
「待て待て待て。話が大きくなってないかい?」
自分達が提案したのはドワーフ工房だけでの打ち上げ程度の宴だったはず。いつの間にそんな大事になっている。
こちらにいるだけでもかなりの数だ。
「やだぁ、邪神戦争後辺境初の大宴会ですよぅ? ここはぱーっと大きくやらなきゃですよぉ☆」
アハハと軽快に笑いながらハナが片手をパタパタ振る。
「それに、来る人間が千人で収まるわけないじゃないですかぁ。場所の手配よろしくお願いしますねぇ、アルフェッカさん~?」
「費用も出すの~~!」
見事なごり押しぶりにアルフェッカは肩を落とす。
「場所の事は承ったけど、その代わりにこれを引き取ってフォニケちゃんに渡して」
紙切れを渡された二人は食材調達のついでにいく事にした。
交渉役の二人以外はドワーフ工房へと向かっていた。
今日も工房は仕事をしているようだ。
「あー! おねえちゃんたちーーー!」
子供の大きな声がハンター達を呼び止めると、パタパタと走る音が聞こえる。
膝まである長い髪を束ね、嬉しそうに手を振る少女が近づいてきた。
ドワーフ工房に手伝いとして入っているクラーという少女。ハンター達と顔なじみもいる。
「クラーちゃ……」
すぐに反応したのはエステル・ソル(ka3983)。
「どうしたのですか!?」
目を白黒させるエステルが見たクラーは顔と周辺の髪が濡れており、作業着が真っ黒だった。
「お仕事中に転んで煤だらけになったから、洗ってたの」
失敗談を話すクラーはすこし恥ずかしそうだ。洗っている時にハンターの声が聞こえて慌てて駆けつけたようだ。
「カペラお姉ちゃん達はエテルナの部屋にいるよ」
クラーは迷うことなくハンターをカペラ達がいる部屋へと案内する。
部屋の中にはカペラとファリフがいた。
「お招きありがとう!」
差し入れのケーキを持ってきたアイラ(ka3941)が声をかける。
「これ、なぁに?」
「ケーキよ」
首を傾げるクラーにアイラが説明すると、食べたことがあると大喜び。
「ケーキはれーぞーこにいれるといいんだよ!」
こっちだよとケーキを大事そうに部屋の隅にある冷蔵庫の中にケーキの箱を入れる。
「あれ、テトはいないのか?」
室内を見たオウガ(ka2124)はテトの姿がないことに気づく。
「フォニケさんと一緒にいるわ。もう少ししたら来るわよ」
何かの設計図をくるくる巻いて仕舞うカペラが告げる。
「あれ? 皆だけ?」
きょとんとするファリフ。
「残りのお二人はヴェルナー様へ会いに行きました」
察したフィロ(ka6966)が告げると同時にフォニケとテトが入ってきた。
「残りって誰?」
「ハナ様とディーナ様です」
目を瞬くフォニケに木綿花(ka6927)が応える。
「にゃんの為?」
「帝国軍の方々もお誘いし、大規模パーティーを行うと」
ハンター以外の面子がそのまま固まった。
「はい?」
鳩が豆鉄砲をくらった顔をする四人。
「帝国本国より少ないですが、やはり大規模な催しですので、色々と心配でして」
悩むフィロの中で心配なのは調味料。
やはり違う味は大事である。
「肉さえあればいいわけではないので」
「確かに、色んな味があるとどれを食べようか楽しみになるしな」
うんうんと頷くボルディア・コンフラムス(ka0796)。
「それは大事よね」
「フォニケさん、つられないの!」
即ツッコミをカペラにとってはそれどころではない。
それでも人数が多すぎるし、ヴェルナーが許すかどうかすら不明だ。
「ヴェルナーさんなら、今日は不在なはずだよ」
ファリフが言えば、カペラは困惑顔から真顔になる。
「なら、アルフェッカさんが何とかするわね」
それなりに要塞都市の運営側と顔を突き合わせているカペラはヴェルナーやアルフェッカ達補佐官とも顔なじみだ。
「頼もしいのですね」
カペラの不安が取り除かれたので、木綿花は安堵の微笑みを浮かべた。
常に働きたくないと嘆いている昼行燈の為、アルフェッカは色んな所から働けと仕事を投げ込まれるのだ。
●
宴まではそれぞれの時間を過ごすことになる。
ディーナとフィロ、木綿花は手分けして調達が必要な食材や調味料の買い出しを行っていた。
こちらに向かう前にフィロはある程度の調味料を他の地域で買い込んでトラックに乗せてきたが、邪神との決戦で些か足りなかったのでここで買い物をすることにした模様。
当然のことながら、ディーナが向かっているのは肉屋。
「フォニケさんの所でお肉パーティするの。ソーセージをね、全種類100本届けてほしいの」
しれっととんでもないオーダーを出すディーナに肉屋の親父は目を白黒させたが、場所が場所なのでしかたないと思う。
「あそこならしかたねぇな」
フォニケやドワーフ工房がどれだけ買い込んでいたのか察してしまうが、快く了承してくれた親父にディーナは感謝し、次の店へと向かう。
「そうだ」
アルフェッカに頼まれていたことを思い出したディーナは紙に書かれている店へとはいった。
外の都市まで買い出しに行こうか考えていたフィロだったが、いくつかの商隊が需要を見込んで入ってきていたので、必要そうなものは何とかなりそうだった。
「胡椒が多く手に入ったのは有難かったですね。ソースものは少なめにして、塩味の提供をメインとしましょう」
木綿花の助言にフィロも同意だ。
「後はソースに必要な香味野菜でしょうか」
「ええ、この時期でしたら、畑の恵みもあったでしょうが、流通があればいいのですが」
今回一番有難いのは、醤油の類が要塞都市でも流通していたことだ。この辺はヴェルナーの手腕が生かされたのかは今のところは不明。
「お、買い出しか」
クラーと一緒に歩いていたボルディアが二人に声をかける。クラーははぐれないようにボルディアが肩車をしていた。
「あら、クラーちゃんと遊んでいたのでは?」
「さっきまで遊んでいたけど、クラーが外に出たいと言い出してな」
「ボルちゃん、あの店! 二人も一緒に!」
あっちだと指さすクラーの言われるままに二人は歩いていくと、菓子屋だ。
食べようとクラーが誘うので、食べることになった。
「ここはあたしがはらうの!」
ばっとクラーが首の下にかけていたがま口財布を両手でかかげる。
「いけませんよ」
「そうだぜ」
慌てるハンター達にクラーは譲らない模様。
「あたしはお姉ちゃんたちのお陰でここにきたの、こんなに美味しいお菓子が食べられるように働けたから、皆にごちそうするの!」
三人は渋々奢ってもらい、お土産の菓子はボルディアに持ってもらう。
「あ、ヘナお姉ちゃんね。看護師になるって。今勉強してるの」
その名前に三人は聞き覚えがある。盗賊団タットルに監禁されていたエーノス族の女性だ。タットルの捕縛の時に心身ともに疲弊した彼女を保護して医師に預けていた。
「今は負傷した兵士とか、部族の人達の看病の手伝いで忙しいけど、凄く楽しそうだったよ」
にこにこして近況を伝えるクラーに三人は安堵する。
未来に不安を持つものもいれば、未来を信じて再び歩き始める者がいることに。
ハナとディーナに押されて多方向に交渉してきたアルフェッカはなんとか場所を抑えた。
軍の方も宴のお誘いは嬉しかったようであり、非番や待機中の兵は任意で参加ということになった。
流石にハンター個人での費用を賄うわけにはいかず、各部署の予算をやりくりすることにしたそうだ。
割合の押し付け合いが平行線になった頃、エステルが話を変えた。
「今後の部族会議で、提案したいことがあるのです」
幸い、この場にはこれから大首長の代理となる体制を担う一人であるファリフがおり、ヴェルナーの代理とまではいかないが、直接言葉を伝えることが出来るアルフェッカがいる。
「どんな事?」
本題を促すファリフにエステルが告げたのは大首長であったバタルトゥが倒れた後を気遣ってのことだ。
現在はヴェルナー、イェルズ、ファリフの三人体制で大首長の機能を維持させようとしている。
「今後、部族間の揉め事も多くなるのではと思っています。部族間の揉め事を解決する役割が必要ではないかと思うのです」
第三者的な組織が必要と彼女は告げる。
「これは信頼できるハンターやしがらみのない部族無き部族の方々が適任かと思って」
一度息を吐いたエステルは視線を自身の膝に落とす。
「本当はバタルトゥさんの引退後の役目にどうかと思っていたのです……あの人の言葉なら皆さん尊重されたでしょうから」
肩を落とし、顔を俯かせるエステルの表情は窺い知れないが、沈む声に彼女の心の揺らぎを感じざるを得ない。
「エステルもそれに参加したいと?」
テトが問うと、彼女は頷いた。
「わたくしは近々辺境に居を移したいと思っています。あの人とこの大地を守ると約束しましたから、部族なき部族に加えて頂けたらと」
「部族会議があるのは、そういった揉め事を部族会議の中で解決する為にあるけど……とりあえずヴェルナーさんとイェルズさんに伝えとくよ」
静かに話を聞いていたファリフが言えば、エステルは頷いた。
「部族なき部族は今は辺境の復興を優先させますにゃ。五年以内にティアラン、元締めの町と合併、人材労力を派遣する組織を作ろうと考えてますにゃ。部族会議とは離れますが、それでもよかったらいつでも来てくださいにゃ」
「それって、やっぱり跡を継ぐってことですねぇ☆」
胸の前で手を叩くハナはどこか楽しそうだ。
「あ、そういえば、ティアランや元締めたちって来れそうですかねぇ」
ハナが言えば、テトは「子供は来ますにゃ」と返した。
「社会見学で出るように誘ってますにゃ」
元締めの方は町の連中はお縄になりに行く気はない、気持ちだけは受け取っておくと笑っていたとテトは告げる。
「ファリフはヴェルナー達と部族会議を治めていくんだろ? フォニケはどうするんだ?」
徐に尋ねるオウガにフォニケは「ここで働くわよ」と返す。
「今はこの仕事が楽しいから、それに武器や兵器を作るだけがこの工房じゃないしね。オウガ君はハンターの仕事を続けるの?」
ドワーフ工房の仕事は少しずつ軌道を変えつつある。
現時点、本来ドワーフ工房を管理するヨアキムはまだ行方不明だが、きっと生きているに違いないと皆信じていた。
故に新しいことが出来ることをドワーフ工房のメンバーは胸を弾ませている。
フォニケの問いに対してオウガはどこか戸惑った様子を見せる。
「あー……俺はあいつの分まで稼げたらいいなって」
「あいつ?」
戸惑った様子を見せつつ素直に返すオウガにフォニケは首を傾げた。
「その子はねー……」
うふふと微笑みながらアイラがフォニケに耳打ちをする。
「ボクも知ってるー!」
「テトは会ったことがありますにゃー!」
「お前等ーー!」
まさかのファリフとテトの参加にオウガがツッコミを入れる。全員珍しく狼狽えるオウガの様子が珍しくて仕方ない模様。
「どうしたのー?」
戻ってきたディーナが声をかける。
「オウガ君の恋バナを聞こうとしてるのよ!」
大興奮のフォニケが応え、後ろから「ちょっと待て!」と叫び声が聞こえてくる。
「そうなのね。フォニケさん、アルフェッカさんが渡してって」
贈り物宜しく包みにリボンが結んであった。
「律儀ねー」
何処か嫌そうな様子であったが、その割には嬉しそうだ。
「私、この時期にカシオペア族に拾われたの」
今までの誕生日だったのだろう。
「さて、ちょーっとバッファローでも取りに行ってきますねぇ♪」
時間は有限、ハナが席を立とうとすると、オウガも「俺も行く!」逃げるように彼も席を立つ。
フィロと木綿花が戻ってくると、アイラも参加してソース作りが始まる。
今回、三人がお邪魔しているのは今回の宴の広場に近い帝国軍の食堂。大きな寸胴鍋をはじめ、大人数を捌く調理器具を提供してもらった。
暇だから手伝ってやると帝国軍の料理人も手伝ってくれたのは有難い。
「お手伝いして頂いてもいいのですか?」
「今の時間なら大丈夫だ」
味付けはハンターに任せる気満々なので、ゆるゆると手伝ってくれるようだ。
時折、寝かせている最中の豚肉と根菜の香草煮物をつまませて貰う。
「美味しいっ」
「香草と胡椒が効いてて爽やかですね」
「だろう」
人参をすりおろしている料理人が嬉しそうに笑い、皆でソースを仕込んでいく。
ハナは占術で狩りの方向を定め、人数を連れて行く。見事に狩場を探し当てた。
見事な連係プレーでバッファロー六体、カンガルー三体を華麗にゲットしていった。
どんどん準備が進んでいき、宴当日となる。
宴当日は帝国軍だけではなく、未だ避難している辺境部族も誘われていた。ドワーフ工房が主催する宴なので、部族はほぼ気軽に来ていた。
時間は夕方少し前から。かなりの人数が集まり、まだ肉も焼き始めたのにあちこちで楽器を奏で、踊る者達が出てきた。
もはや軽いフェスだ。
「なんだか楽しそうだなー!」
キラキラ目を輝かせるボルディアとオウガ。
野外調理器具に関しては、網焼きは帝国軍が野外訓練時からの貸出用であり、畳み一畳分の鉄板はドワーフ工房のものらしい。
焼き手も人数が必要であり、有志で焼き手に入ってくれた。
「もうそろそろ食べられるのー!」
今回は給仕側に入ったディーナが声をかける。彼女はソーセージ茹でを担当している。
焼いた肉の第一陣が食べごろになると、争奪戦が始まる。焼き手は瞬くよりも早く皿に載せられていく肉を見送る暇はなく、すぐさま肉を焼く。
「フォニケさーん! 手が足りないのー!」
トングを振り回しながらディーナが叫ぶ。第一陣で焼けた肉を堪能していたフォニケがご指名されて周囲の視線を受ける。
「お肉食べたいのに!」
少しでもライバルを減らそうと周囲の人達に連れられてフォニケも焼き手に入った。
「もー、提供側に行ったと思ったら」
頬を膨らませるフォニケにディーナは「えへへ」と笑う。
微笑ましい様子を横目に見ていたエステルは「お肉が焼けましたー」と声をかける。
近くでは、エステルのユキウサギであるサフィーが小さい子を子守し、母親がゆっくり食事が出来るようにしていた。
避難生活が続いているので、心が休まる事は少ないが、サフィーの可愛らしい容姿やサフィーに興味津々な子供達に笑顔があって、ゆっくり食事をできるのはとてもありがたい。
エステルはシェダルに習って肉を焼いている。
「何、肉が苦手なのか?」
そう尋ねるシェダルにエステルはうーんと唸った。
「でも、慣れないとなりませんし……」
辺境に居を変えようとするなら必須だろうとエステルは考えている。
「無理せんでもいいだろ。今はここをメインとしているし、いずれは流通も増えるだろう」
鉄板の上の肉を返すシェダルの手元を見つつ、エステルは彼の横顔を見る。思い出すのはアルフェッカの贈り物を受け取ったフォニケの記憶。
「シェダルさんにとってフォニケさんは特別な好きですか?」
忙しなく動いていたシェダルの手が一瞬止まる。
騒々しい音でエステルの声はシェダルだけに聞こえていた。
「言葉はちゃんと伝えないと分からないです」
「恋人にしたら、俺が楽するだけからダメだ」
エステルが顔を上げると、シェダルは何食わぬ顔で肉を返している。
「フォニケを泣かしたら殴るって殴ったから大丈夫だろ」
「それは助言に応えてません」
呆れるエステルにシェダルが笑う。
シェダルの笑顔を初めてみたファリフは驚きつつ、肉を乗せた皿を手にしてアイラとオウガがいる席に向かった。
「そういや、ファリフ君はお酒飲めるの?」
コケモモ味の炭酸割りを飲んでいたアイラが徐に尋ねる。
「うん、飲むよ。成人したし、族長だから」
どうやら、飲めた方が何かとスムーズにいいらしい。
「量は飲めないけど、付き合い程度に」
眠くなっちゃうんだよねーとファリフは笑うと急に真顔になってアイラを見る。
「ねぇ、顔赤くない?」
「それ、酒は入ってるんじゃねぇか?」
分厚いステーキ肉を堪能していたオウガが気遣う。
「かもしれないわねー」
くすくす笑うアイラはコケモモ酒を飲んでそろそろ出来上がりそうだ。
「オウガはなんか心ここに在らずだけど、どうかした?」
串肉を食べているファリフに尋ねられてオウガがぎくりと肩を震わす。
「……一緒に来たらよかったなぁって……」
「あー」
ニマニマ笑うファリフとアイラにオウガは照れ隠しに肉をかぶりついた。
ドワーフ工房のドワーフ達と山のような肉を食らっていたのはボルディアだ。
肉と共に飲む酒は最高である。
「子供の頃になあ、夢見たことあんだよ」
そう言うボルディアはフォークに肉を刺す。
夢の内容は彼女の身体が小さくなった。まるで虫の大きさ。驚くよりも先に閃いたのは、この体なら破裂するくらい食べ物を食えるのでは……と。
「天才か!!」
「わかる!」
頷いた酔っ払いのドワーフ達。
「俺はすぐに台所へ行った! でもテーブルの上には食べ物が何もなかったんだ! それにそもそもテーブルの上に登る事さえできなかった! そこで目が覚めた」
声を落とすボルディアにドワーフ達が「なんてことだ」と彼らも悲しそうだ。
「今日はそいつの悔しさを晴らすぜぇ! 太ったデブに、俺はなる!」
おっと版権ギリギリな決め台詞を叫んだボルディアは肉にかぶりつく。ドワーフ達も囃し立てて本日何回目かかわらない乾杯をしている。
クラーは大皿を両手で持って「ボルちゃんにお肉をいっぱい食べさせたいの」と木綿花に肉を乗せて貰っていた。
「木綿花様、少し休憩をされては?」
フィロが言えば、木綿花は言葉に甘え、ポチとルタ用に焼いて取り分けていたお肉を持って席を外す。
「あら、お疲れさん」
花豹達部族なき部族のメンバーの席にお邪魔する。ポチもルタも落ち着けてご飯を食べている。
「食べてますか?」
「美味しいです!」
世間話をした後、木綿花はルックスの方を向く。
「ルックス様はこれからもテト様達と?」
「うん、木綿花さんは?」
木綿花の問いかけにルックスは頷く。
「私は龍園に戻って、時々レクエスタかなと」
はっきりとしたビジョンは見えてないが、恐らくそうなるだろう。
「あ、折角ですから、記念撮影はどうですか?」
魔導カメラを取り出した木綿花の提案に彼らは快く了承する。
「僕にも欲しいな」
木綿花より写真を貰ったルックスはじっと写真を見つめていた。
「ありがとう、木綿花さん」
「どういたしまして」
にこりと木綿花は微笑む。
今日の功労者の一人であるハナはテトやシスに労われていた。
「八面六臂の働きだったねー」
「避難民相手に食事を作ることもありましたんでぇ……」
遠い目をするハナはお嫁さんというよりも職人の域だなとテトは思った。
宴もたけなわな頃、ディーナがフォニケにある事を告げる。
「私タスカービレで結婚するの」
フォニケは絶叫を上げようにも声が出ないほど驚いていた。
彼女から恋バナを聞いた事がなかったからだ。
「その時はフォニケさんにも来てほしいの……ダメかな」
おずおずと願いを告げるディーナにフォニケはそっと息を吐く。
「行けるか分からないけど、私はいつでも私を支えてくれたあなたの幸せを祈ってるわ。結婚おめでとう」
ディーナの銀の髪を撫でてフォニケは優しく微笑んだ。
依頼結果
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