ゲスト
(ka0000)
もふら牧場へいらっしゃい
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/11/04 07:30
- 完成日
- 2019/11/15 23:39
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
東方で発見された幻獣、もふら。
もともとはエトファリカの奥の方で隠れるようにして過ごしていたが、ハンターたちに見いだされ、彼らの協力をするようにもなっていた。
……が、もともとの性格がのんびりしていることもあり、ハンターとともに活動するとしてもどこかとぼけたような行動が多く、そもそも『めんどくさいもふ』だとか何とかでもふらが目立つ場は少なかった。
とはいえくさっても幻獣である。
しかも東方でも希少度が高いと言われている幻獣種だ。
気をつけないと密猟やらなにやらといったきな臭い話に巻き込まれる可能性もある。
というわけで、誰かが言い出した。
もふらを保護していこうと。
そして、もっと身近な存在になってもらおうと。
――そう。
もふら牧場は、こうして生まれたのである。
●
「そんなわけで、といいますか。新設された東方の幻獣保護園『もふら牧場』のアンバサダーとして、皆さんにもふらと触れあってもらいたいという依頼が届いています」
ハンターオフィスで、そう説明された。
「もふらというのは全体的にまるまるもちもちもふもふとした、東方固有の幻獣種です。ハンターたちとも協力関係にありますが、まだまだ知名度が低く、彼らを相棒ユニットとして側に置いている人はそう多くありません」
よどみない声で、説明は続く。
「ただ、東方固有種と言うことで珍しいのは間違いなく、犯罪に巻き込まれる可能性も低くありません。絶対数もそう多くないらしいので、エトファリカで賛同者を募り、今回の『もふら牧場』を保護施設として、また同時に触れあう施設として、作成したと言うことです」
ハンターたちもなるほど、と頷く。
「アンバサダーというのは親善大使とかそういう意味の言葉ですね。ハンターと親しくしている姿をPRに使用したいそうです」
もふらはのんびり屋でおとなしく、おおぐらいな幻獣。狛犬に似た外見だが大きさはそれより大きくて、ふさふさとした白い毛並みが特徴的なのだという。
「もしよかったら、そういう交流も如何ですか?」
そう言われ、ハンターたちは顔を見合わせるのだった。
東方で発見された幻獣、もふら。
もともとはエトファリカの奥の方で隠れるようにして過ごしていたが、ハンターたちに見いだされ、彼らの協力をするようにもなっていた。
……が、もともとの性格がのんびりしていることもあり、ハンターとともに活動するとしてもどこかとぼけたような行動が多く、そもそも『めんどくさいもふ』だとか何とかでもふらが目立つ場は少なかった。
とはいえくさっても幻獣である。
しかも東方でも希少度が高いと言われている幻獣種だ。
気をつけないと密猟やらなにやらといったきな臭い話に巻き込まれる可能性もある。
というわけで、誰かが言い出した。
もふらを保護していこうと。
そして、もっと身近な存在になってもらおうと。
――そう。
もふら牧場は、こうして生まれたのである。
●
「そんなわけで、といいますか。新設された東方の幻獣保護園『もふら牧場』のアンバサダーとして、皆さんにもふらと触れあってもらいたいという依頼が届いています」
ハンターオフィスで、そう説明された。
「もふらというのは全体的にまるまるもちもちもふもふとした、東方固有の幻獣種です。ハンターたちとも協力関係にありますが、まだまだ知名度が低く、彼らを相棒ユニットとして側に置いている人はそう多くありません」
よどみない声で、説明は続く。
「ただ、東方固有種と言うことで珍しいのは間違いなく、犯罪に巻き込まれる可能性も低くありません。絶対数もそう多くないらしいので、エトファリカで賛同者を募り、今回の『もふら牧場』を保護施設として、また同時に触れあう施設として、作成したと言うことです」
ハンターたちもなるほど、と頷く。
「アンバサダーというのは親善大使とかそういう意味の言葉ですね。ハンターと親しくしている姿をPRに使用したいそうです」
もふらはのんびり屋でおとなしく、おおぐらいな幻獣。狛犬に似た外見だが大きさはそれより大きくて、ふさふさとした白い毛並みが特徴的なのだという。
「もしよかったら、そういう交流も如何ですか?」
そう言われ、ハンターたちは顔を見合わせるのだった。
リプレイ本文
●
もふらという幻獣の認知度は、やはり決して高くない。
しかし今回の依頼には、だからこそというか、人が集まってくれた。
(丸くて、もこもこしてて……そして何より僕を避けない!!)
ちっこい犬にいつも怖がられてしまっているという鬼塚 陸(ka0038)は、もふらの説明を聞いただけで胸を高鳴らせた。
そもそも幻獣は、人間に友好的な態度をとる種が少なくない。だからこそこれまでの闘いでも仲間としてともに戦ってくれていたわけだが、ときどき幻獣にあまり好かれない人間というのはいる。
それは人間側がコミュニケーションをとろうとしないからと言うこともあるが、行き過ぎたコミュニケーションで幻獣側が逆におっかなびっくりになってしまい、なかなか近づいてこられないというパターンも存在する。
陸の場合はどちらでもあり、どちらでもないとも言える。というのも、いままでの相棒と言えば思わずぶん殴って躾をしてしまったグリフォンや、犬の餌の名前をつけてしまったユグディラで、おとなしくて人なつっこい幻獣に触れる経験が殆どなかったからだ。そのためか、目的地に着く前から目を輝かせている。
「今日はいっぱいもふらせてもらいましょうね!」
そう嬉しそうに意気込んでいるのはUisca Amhran(ka0754)。もふらの発見に貢献した一人であり、その縁もあってもふらを相棒としてつれていることもあって実に朗らかな笑顔を浮かべている。今日はもふらのモフカはお留守番だが、次に機会があれば連れてきたいところだ。
「確かに、あまり見かけたことがなかったのですよね。ふさふさしているとはきいたことがありますけど……」
ソナ(ka1352)もどこか浮き足だったような様子で歩いている。その脇を、やっぱり嬉しそうに歩いているのは狛犬を連れたルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だ。この狛犬、名前をずばり『もふら』と言い、彼女は忍犬として扱っている。ユニットではなくあくまでもペットなのだが、それでもいつも一緒だった愛犬と、もふもふ楽しみたい! というのはやはり欲目の一種なのだろうか。
(……でも何故か、もふらには「様」をつけなくちゃいけない気もするんですよね……何故でしょう?)
ルンルンはそんなことをぼんやり思いつつ、足元でじゃれてくる愛犬を優しくなでてやる。ニンジャに任せれば親善効果もばっちり、と言うのが彼女の信条らしい。
「でもぉ、せっかくなら知らないことはできる範囲で知りたいですしぃ、親善大使なんて言われたらやっぱり頑張りたくなりますしぃ」
大きなクーラーボックス持参の星野 ハナ(ka5852)は、興味津々といった様子で目的地へ向かっていく。その足取りは軽い。クーラーボックスの中身はかなり重たそうなのに、それを感じさせないのは彼女の好奇心のなせる技か。自身のユニットにもふらはいないけれど、むしろ知らないからこそどんな幻獣なのかを知りたくて、勢い込んで参加した次第である。
「んー、もふらちゃんたちってどんな食べ物が好きなんでしょぉ? そう言うものも調べたいですよねぇ」
隠しきれない好奇心。頬が知らずにほんのり緩む。
「さ、もう少しですよぉ!」
楽しそうに、彼女は更に歩みを進めた。それを見たレイア・アローネ(ka4082)は、
「……楽しそうだな。それにしてももふら牧場、か」
そう呟いて、隣を歩く友人のマリエル(ka0116)に視線を移す。もともと今回の依頼はマリエルに誘われて同行しているようなものだが、
(ここに私がいる意味ってあるのだろうか……? あんまりこの幻獣とは接した機会もないし、よく知らないのだが)
そんなことを胸の中で思う。と、マリエルはにっこりと微笑んでみせた。
ここのところのレイアはずっと働きづめだった。邪神戦争終結前も、そのあとも、なにかと忙しそうにしている姿をよく見かけるレイア。闘いは終わったのだし、少しは休んでもいいのではないか――これはマリエルのちょっとしたお節介なのかもしれない。でも、彼女をすこしでも休ませたかったのは事実だ。あまりに忙しく働いているから、休みかたを忘れてしまったかもしれない友人に、すこしでも気持ちを楽に持ってもらうのには、こういう動物や幻獣と触れあったりするのが一番じゃないだろうか。
「ん? 私の顔に何かついているか?」
「いいえ、レイアさん。それよりも、今日はこうしてやってきたからには、貴女も私も「もふら牧場」のアンバサダー。しっかりのんびりしてくださいね!」
言われてレイアは一瞬きょとんとし、それから苦笑を浮かべる。その口が、ゆっくり感謝の形に動いた。
●
そこは、広い草原だった。
見上げれば、真っ青な空。
もふら牧場は、広々とした草原だったのだ。
「ああ、ハンターさんたちもよぉきてくれました。西方からお疲れでしょうけど、モフ様たちの様子、みてやってください」
モフ様というのは、もふらという呼称がつくよりも前の呼び名だ。神の使いと思われていた時期が長かったもふらたちは、隠れ里のような場所で大切に扱われてきたのだという。
「でも、モフ様……もふら様たちも、いつまでも隠れるように暮らすより、おいしい空気を吸って、お日様の下で昼寝をする方が、いいでしょうからなぁ。今回はお願いしますだ」
出迎えてくれた四十がらみの男はそう言ってぺこりと頭を深く頭を下げた。おそらく以前からもふらの世話をしていたのだろう、もふらのことを話すときの眼差しが優しいものになるのが特徴的だ。
「いえ、こちらこそお願いします」
誰からともなく頭を下げ、仲間たちはにこりと微笑んだ。
牧場の柵の中、緑の鮮やかな中に、白い毛並みがあちこち見える。もふらは自然の姿に近い状態で保護してあるため基本は放牧しているようで、それは遠目から見るとまるで空に浮かぶ雲かなにかのようにも見える。
なんだかそれは、幻想的にも見える風景だった。
と、来客に興味津々らしいもふらが数匹、ひょこひょこと近づいてくる。もふらはもともと好奇心旺盛で人なつっこいとはきいていたが、ここまで無防備に近づかれると、なるほど確かに犯罪に巻き込まれそうでもある。
しかしここは保護施設。そういう黒い影の存在に怯えることなくもふらたちはのびのびと過ごすことができる。
そしてハンターたちも、好奇心が疼いて胸を高鳴らせる。一番最初に動いたのは、陸だった。
「うわ……もふらって、なんかすげえ!」
そう言いながら小柄なもふらをだっこして、まるで毬かなにかのようにぽんぽんとたかいたかいをしてやる。もふらははじめこそびっくりしていたが、だんだん楽しくなってきたのだろう、もふーもふーと鳴きながら嬉しそうに身体をぱたぱたさせている。
「もふらって何食べるんだ?」
「基本は人間と同じものを食べるような雑食だな、ついでに言うと甘いものが好きで食いしん坊さんだ」
気がつけばハンターたちはもふらにすっかり囲まれていた。言ってみればもふもふハーレムというところだろう。
管理をしている男性が陸の問いに応じると、ハナの目も輝きだした。せっかく持ってきた食材を披露するチャンスと考えたに違いない。
「ブラシも持ってきましたよー、綺麗に梳いてあげますね!」
Uiscaは持参してきたブラシを近づいてきたもふらにそっと当ててブラッシングしてやる。ついでにそのもふもふの毛並みも堪能する。
「こうやってもふらさまを心ゆくまでもふれて、幸せなのです~。これだけでも、ここまで戦ってきた甲斐がありましたね……」
そっと遠い目をしながら、これまでの日々にも思いをはせて。もし幻獣と袂を分かつ選択をしていたら、こんな日は訪れることがなかっただろうし、今生きていること、それだけでもうれしいというものだ。
鼻歌交じりにブラッシングをしていれば、更に興味を示したらしいもふらが何匹か、彼女の周りに座っていた。
懐いてくれるか不安だったソナも、陸やUiscaの様子を見てうずうずしてきたらしい。
「それぞれお名前とかはあるんですか?」
きいてみると首もとに小さな識別票をネックレスのように下げていると言うことだった。名前もそれぞれについていて、識別票にも刻んであるらしい。
人なつこいもふらの名前をいくつか教えてもらってさっそく呼んでみると、なるほど、二匹ほどがさっそく近づいてきた。幸か不幸かはね飛ばされるほどの勢いで近づいてきたわけではなかったが、ソナは頬をほんのり赤らめておそるおそるそのふかふかの毛に抱きついてみる。耳の後ろやほっぺももふもふして。
もふらもにんまり笑って、嬉しそうに目を細めていた。
「もふらちゃんも一緒に入れてよかったですね!」
ルンルンは嬉しそうにそう言いながら自身の狛犬を見やる。
「……しかし本当にもふらちゃんとよく似ているのです。大きいし、ひょっとしてお父さんとかお母さん……?」
いやそもそも狛犬は幻獣種ではないのでそれはおそらく違うのだが、何となくそう思わせる何かがあって、ルンルンはさらに嬉しくなる。事前にのんびりした性格とも聞いていたし、触っても問題はなかろうと近づいてからもふもふの毛を抱きしめる。
(このまま包まれて眠ってしまいたいくらい、素敵な心地……)
そんなことを考えると、瞼が重くなってしまいそうだ。ああ、別のところではUiscaも幸せそうにもたれかかっている。
ふかふかでもふもふの毛並みにすっかり心を奪われてしまっているようだ。
陸もかつてあったことをぼんやり思い出しながら、ここの暖かさを実感していた。もふらのお腹を枕にしてみれば、まるで掛け布団のように別のもふらがもふもふと乗っかってくる。それすらもなんだか楽しくて、気がつけばすうと眠気に襲われていた。
●
「さぁて、食べさせちゃいけないものが基本的にないのでしたらぁ……腕のふるいどきですよぉ」
ハナはそう言ってクーラーバッグを開ける。中に入っているのはホットケーキの材料や調理器具一式。おいしいものを食べていたり、楽しそうに遊んでいたり等といったほのぼのした風景を写真に収め、ポスターの作成をしたらどうかと提案する。確かにビジュアルから興味を持つことは大事だろうからと、牧場の職員もその提案には大賛成だ。
(でも、もふらちゃんのふわふわっぷりをきいてから、ホットケーキが食べたくなっていたんですよねぇ……)
フライパンでこしらえるふわふわのスフレパンケーキふうのホットケーキは、隠し味にマヨネーズ。ジャムや蜂蜜、甘いものが苦手な人にはハムエッグとチーズをトッピングして、もふらと一緒におやつタイム。
もふらもあまり食べたことのないふわふわケーキに目を輝かせ、あっという間に平らげてしまうくらいだ。
他の面々も、持参していたり牧場で分けてもらったりしていたおやつの類いを差し出してみる。これまた美味しそうに平らげたので、それを見ているだけでも心がほっこりしてしまう。
もしかしたらもふらは、ある意味において平和の象徴のようなものなのかもしれないと思ったりもしてしまう。
●
マリエルとレイアは、もふらに笑顔で挨拶をする。
「マリエルと言います、よろしくお願いしますね」
友人の言葉に、レイアも同じように笑いかける。レイアは一時期妙に幻獣王チューダと縁があったこともあったが、もふらのマイペースで大食らいな姿を見て、つい
(チューダって実はもふらなのでは……?)
などと思ってしまう始末。勿論そんなことはあるわけないのだが、ふくよかな体型を見るとどうにもあの自称幻獣王を思い出してしまうらしい。マリエルはそんなレイアの心境まではわからないようだが、友人のなにやら楽しそうな笑みを見ればマリエルだって心が弾む。
「まあ、私だってあのチューダと渡り合ってきたんだ。この手の幻獣との交流の仕方はわかるつもりだ。餌付けするのがきっと一番だろう?」
すでに色々と食べているもふらだが、まだお腹がすいたと言わんばかりに目を輝かせ、よだれをちゅるりとたらしていたりするあたり、本当に食いしん坊なのだろう。マリエルも心地よさそうに触っているうちに心地よさそうに寄りかかっている。
(なんだか枕みたい……一緒に眠るのも……交流に、なるでしょうか……?)
とろりとそんなことを考えながら。
マリエルはどちらかというと天然だ。そのフォローをしようと思いつつ、心地よさそうなマリエルを眺めてまた笑みを浮かべるレイアなのだった。
●
食べて、眠って、音楽を聴いて……
気づいてみればもう空はあかね色。
もふらたちはすっかりハンターたちを信頼しきった顔で、ほおずりしたりしている。
「最後に記念に、写真撮りましょう?」
そんなことを言ったUiscaは、カメラを構えてそう呼びかける。
ふかふかの毛に囲まれれば、自然と顔は誰もが笑みを浮かべてしまう。
それをいくつか写真に収めて、そしてまた誰もが笑顔になる。
そして陸は思ったことを口にする。
「これからは平和な世界になるんだ、こういう癒やしみたいなやつがいてもいいよね」
懐いてくる小柄なもふらにまたくるからと手を振りながら。
「平和が訪れたいまだからこそ、もふらの癒やしが世界には必要なのかもしれないもん。私も、もふらにきてもらおうかな?」
ルンルンも引き取る気持ちになってきたらしい。
――でも、そうなのかもしれない。
もふらみたいな存在こそ、平和の象徴なのかもしれない。
もふらという幻獣の認知度は、やはり決して高くない。
しかし今回の依頼には、だからこそというか、人が集まってくれた。
(丸くて、もこもこしてて……そして何より僕を避けない!!)
ちっこい犬にいつも怖がられてしまっているという鬼塚 陸(ka0038)は、もふらの説明を聞いただけで胸を高鳴らせた。
そもそも幻獣は、人間に友好的な態度をとる種が少なくない。だからこそこれまでの闘いでも仲間としてともに戦ってくれていたわけだが、ときどき幻獣にあまり好かれない人間というのはいる。
それは人間側がコミュニケーションをとろうとしないからと言うこともあるが、行き過ぎたコミュニケーションで幻獣側が逆におっかなびっくりになってしまい、なかなか近づいてこられないというパターンも存在する。
陸の場合はどちらでもあり、どちらでもないとも言える。というのも、いままでの相棒と言えば思わずぶん殴って躾をしてしまったグリフォンや、犬の餌の名前をつけてしまったユグディラで、おとなしくて人なつっこい幻獣に触れる経験が殆どなかったからだ。そのためか、目的地に着く前から目を輝かせている。
「今日はいっぱいもふらせてもらいましょうね!」
そう嬉しそうに意気込んでいるのはUisca Amhran(ka0754)。もふらの発見に貢献した一人であり、その縁もあってもふらを相棒としてつれていることもあって実に朗らかな笑顔を浮かべている。今日はもふらのモフカはお留守番だが、次に機会があれば連れてきたいところだ。
「確かに、あまり見かけたことがなかったのですよね。ふさふさしているとはきいたことがありますけど……」
ソナ(ka1352)もどこか浮き足だったような様子で歩いている。その脇を、やっぱり嬉しそうに歩いているのは狛犬を連れたルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)だ。この狛犬、名前をずばり『もふら』と言い、彼女は忍犬として扱っている。ユニットではなくあくまでもペットなのだが、それでもいつも一緒だった愛犬と、もふもふ楽しみたい! というのはやはり欲目の一種なのだろうか。
(……でも何故か、もふらには「様」をつけなくちゃいけない気もするんですよね……何故でしょう?)
ルンルンはそんなことをぼんやり思いつつ、足元でじゃれてくる愛犬を優しくなでてやる。ニンジャに任せれば親善効果もばっちり、と言うのが彼女の信条らしい。
「でもぉ、せっかくなら知らないことはできる範囲で知りたいですしぃ、親善大使なんて言われたらやっぱり頑張りたくなりますしぃ」
大きなクーラーボックス持参の星野 ハナ(ka5852)は、興味津々といった様子で目的地へ向かっていく。その足取りは軽い。クーラーボックスの中身はかなり重たそうなのに、それを感じさせないのは彼女の好奇心のなせる技か。自身のユニットにもふらはいないけれど、むしろ知らないからこそどんな幻獣なのかを知りたくて、勢い込んで参加した次第である。
「んー、もふらちゃんたちってどんな食べ物が好きなんでしょぉ? そう言うものも調べたいですよねぇ」
隠しきれない好奇心。頬が知らずにほんのり緩む。
「さ、もう少しですよぉ!」
楽しそうに、彼女は更に歩みを進めた。それを見たレイア・アローネ(ka4082)は、
「……楽しそうだな。それにしてももふら牧場、か」
そう呟いて、隣を歩く友人のマリエル(ka0116)に視線を移す。もともと今回の依頼はマリエルに誘われて同行しているようなものだが、
(ここに私がいる意味ってあるのだろうか……? あんまりこの幻獣とは接した機会もないし、よく知らないのだが)
そんなことを胸の中で思う。と、マリエルはにっこりと微笑んでみせた。
ここのところのレイアはずっと働きづめだった。邪神戦争終結前も、そのあとも、なにかと忙しそうにしている姿をよく見かけるレイア。闘いは終わったのだし、少しは休んでもいいのではないか――これはマリエルのちょっとしたお節介なのかもしれない。でも、彼女をすこしでも休ませたかったのは事実だ。あまりに忙しく働いているから、休みかたを忘れてしまったかもしれない友人に、すこしでも気持ちを楽に持ってもらうのには、こういう動物や幻獣と触れあったりするのが一番じゃないだろうか。
「ん? 私の顔に何かついているか?」
「いいえ、レイアさん。それよりも、今日はこうしてやってきたからには、貴女も私も「もふら牧場」のアンバサダー。しっかりのんびりしてくださいね!」
言われてレイアは一瞬きょとんとし、それから苦笑を浮かべる。その口が、ゆっくり感謝の形に動いた。
●
そこは、広い草原だった。
見上げれば、真っ青な空。
もふら牧場は、広々とした草原だったのだ。
「ああ、ハンターさんたちもよぉきてくれました。西方からお疲れでしょうけど、モフ様たちの様子、みてやってください」
モフ様というのは、もふらという呼称がつくよりも前の呼び名だ。神の使いと思われていた時期が長かったもふらたちは、隠れ里のような場所で大切に扱われてきたのだという。
「でも、モフ様……もふら様たちも、いつまでも隠れるように暮らすより、おいしい空気を吸って、お日様の下で昼寝をする方が、いいでしょうからなぁ。今回はお願いしますだ」
出迎えてくれた四十がらみの男はそう言ってぺこりと頭を深く頭を下げた。おそらく以前からもふらの世話をしていたのだろう、もふらのことを話すときの眼差しが優しいものになるのが特徴的だ。
「いえ、こちらこそお願いします」
誰からともなく頭を下げ、仲間たちはにこりと微笑んだ。
牧場の柵の中、緑の鮮やかな中に、白い毛並みがあちこち見える。もふらは自然の姿に近い状態で保護してあるため基本は放牧しているようで、それは遠目から見るとまるで空に浮かぶ雲かなにかのようにも見える。
なんだかそれは、幻想的にも見える風景だった。
と、来客に興味津々らしいもふらが数匹、ひょこひょこと近づいてくる。もふらはもともと好奇心旺盛で人なつっこいとはきいていたが、ここまで無防備に近づかれると、なるほど確かに犯罪に巻き込まれそうでもある。
しかしここは保護施設。そういう黒い影の存在に怯えることなくもふらたちはのびのびと過ごすことができる。
そしてハンターたちも、好奇心が疼いて胸を高鳴らせる。一番最初に動いたのは、陸だった。
「うわ……もふらって、なんかすげえ!」
そう言いながら小柄なもふらをだっこして、まるで毬かなにかのようにぽんぽんとたかいたかいをしてやる。もふらははじめこそびっくりしていたが、だんだん楽しくなってきたのだろう、もふーもふーと鳴きながら嬉しそうに身体をぱたぱたさせている。
「もふらって何食べるんだ?」
「基本は人間と同じものを食べるような雑食だな、ついでに言うと甘いものが好きで食いしん坊さんだ」
気がつけばハンターたちはもふらにすっかり囲まれていた。言ってみればもふもふハーレムというところだろう。
管理をしている男性が陸の問いに応じると、ハナの目も輝きだした。せっかく持ってきた食材を披露するチャンスと考えたに違いない。
「ブラシも持ってきましたよー、綺麗に梳いてあげますね!」
Uiscaは持参してきたブラシを近づいてきたもふらにそっと当ててブラッシングしてやる。ついでにそのもふもふの毛並みも堪能する。
「こうやってもふらさまを心ゆくまでもふれて、幸せなのです~。これだけでも、ここまで戦ってきた甲斐がありましたね……」
そっと遠い目をしながら、これまでの日々にも思いをはせて。もし幻獣と袂を分かつ選択をしていたら、こんな日は訪れることがなかっただろうし、今生きていること、それだけでもうれしいというものだ。
鼻歌交じりにブラッシングをしていれば、更に興味を示したらしいもふらが何匹か、彼女の周りに座っていた。
懐いてくれるか不安だったソナも、陸やUiscaの様子を見てうずうずしてきたらしい。
「それぞれお名前とかはあるんですか?」
きいてみると首もとに小さな識別票をネックレスのように下げていると言うことだった。名前もそれぞれについていて、識別票にも刻んであるらしい。
人なつこいもふらの名前をいくつか教えてもらってさっそく呼んでみると、なるほど、二匹ほどがさっそく近づいてきた。幸か不幸かはね飛ばされるほどの勢いで近づいてきたわけではなかったが、ソナは頬をほんのり赤らめておそるおそるそのふかふかの毛に抱きついてみる。耳の後ろやほっぺももふもふして。
もふらもにんまり笑って、嬉しそうに目を細めていた。
「もふらちゃんも一緒に入れてよかったですね!」
ルンルンは嬉しそうにそう言いながら自身の狛犬を見やる。
「……しかし本当にもふらちゃんとよく似ているのです。大きいし、ひょっとしてお父さんとかお母さん……?」
いやそもそも狛犬は幻獣種ではないのでそれはおそらく違うのだが、何となくそう思わせる何かがあって、ルンルンはさらに嬉しくなる。事前にのんびりした性格とも聞いていたし、触っても問題はなかろうと近づいてからもふもふの毛を抱きしめる。
(このまま包まれて眠ってしまいたいくらい、素敵な心地……)
そんなことを考えると、瞼が重くなってしまいそうだ。ああ、別のところではUiscaも幸せそうにもたれかかっている。
ふかふかでもふもふの毛並みにすっかり心を奪われてしまっているようだ。
陸もかつてあったことをぼんやり思い出しながら、ここの暖かさを実感していた。もふらのお腹を枕にしてみれば、まるで掛け布団のように別のもふらがもふもふと乗っかってくる。それすらもなんだか楽しくて、気がつけばすうと眠気に襲われていた。
●
「さぁて、食べさせちゃいけないものが基本的にないのでしたらぁ……腕のふるいどきですよぉ」
ハナはそう言ってクーラーバッグを開ける。中に入っているのはホットケーキの材料や調理器具一式。おいしいものを食べていたり、楽しそうに遊んでいたり等といったほのぼのした風景を写真に収め、ポスターの作成をしたらどうかと提案する。確かにビジュアルから興味を持つことは大事だろうからと、牧場の職員もその提案には大賛成だ。
(でも、もふらちゃんのふわふわっぷりをきいてから、ホットケーキが食べたくなっていたんですよねぇ……)
フライパンでこしらえるふわふわのスフレパンケーキふうのホットケーキは、隠し味にマヨネーズ。ジャムや蜂蜜、甘いものが苦手な人にはハムエッグとチーズをトッピングして、もふらと一緒におやつタイム。
もふらもあまり食べたことのないふわふわケーキに目を輝かせ、あっという間に平らげてしまうくらいだ。
他の面々も、持参していたり牧場で分けてもらったりしていたおやつの類いを差し出してみる。これまた美味しそうに平らげたので、それを見ているだけでも心がほっこりしてしまう。
もしかしたらもふらは、ある意味において平和の象徴のようなものなのかもしれないと思ったりもしてしまう。
●
マリエルとレイアは、もふらに笑顔で挨拶をする。
「マリエルと言います、よろしくお願いしますね」
友人の言葉に、レイアも同じように笑いかける。レイアは一時期妙に幻獣王チューダと縁があったこともあったが、もふらのマイペースで大食らいな姿を見て、つい
(チューダって実はもふらなのでは……?)
などと思ってしまう始末。勿論そんなことはあるわけないのだが、ふくよかな体型を見るとどうにもあの自称幻獣王を思い出してしまうらしい。マリエルはそんなレイアの心境まではわからないようだが、友人のなにやら楽しそうな笑みを見ればマリエルだって心が弾む。
「まあ、私だってあのチューダと渡り合ってきたんだ。この手の幻獣との交流の仕方はわかるつもりだ。餌付けするのがきっと一番だろう?」
すでに色々と食べているもふらだが、まだお腹がすいたと言わんばかりに目を輝かせ、よだれをちゅるりとたらしていたりするあたり、本当に食いしん坊なのだろう。マリエルも心地よさそうに触っているうちに心地よさそうに寄りかかっている。
(なんだか枕みたい……一緒に眠るのも……交流に、なるでしょうか……?)
とろりとそんなことを考えながら。
マリエルはどちらかというと天然だ。そのフォローをしようと思いつつ、心地よさそうなマリエルを眺めてまた笑みを浮かべるレイアなのだった。
●
食べて、眠って、音楽を聴いて……
気づいてみればもう空はあかね色。
もふらたちはすっかりハンターたちを信頼しきった顔で、ほおずりしたりしている。
「最後に記念に、写真撮りましょう?」
そんなことを言ったUiscaは、カメラを構えてそう呼びかける。
ふかふかの毛に囲まれれば、自然と顔は誰もが笑みを浮かべてしまう。
それをいくつか写真に収めて、そしてまた誰もが笑顔になる。
そして陸は思ったことを口にする。
「これからは平和な世界になるんだ、こういう癒やしみたいなやつがいてもいいよね」
懐いてくる小柄なもふらにまたくるからと手を振りながら。
「平和が訪れたいまだからこそ、もふらの癒やしが世界には必要なのかもしれないもん。私も、もふらにきてもらおうかな?」
ルンルンも引き取る気持ちになってきたらしい。
――でも、そうなのかもしれない。
もふらみたいな存在こそ、平和の象徴なのかもしれない。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 2人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/10/31 22:58:00 |
|
![]() |
【相談卓】もふらとふれあおう~ Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2019/11/01 21:12:14 |