ゲスト
(ka0000)
【未来】急募! 花嫁の確保
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/11/07 09:00
- 完成日
- 2019/11/13 23:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ドワーフ工房の工房管理官が交代して一年経った頃、一つのめでたいニュースがあった。
要塞都市管理官補佐役のアルフェッカ・ユヴェーレンとドワーフ工房の技師、フォニケが結婚するという話。
自由奔放を三次元化したようなフォニケを良く射止めたとフォニケを知る者達は感心した。
アルフェッカの出自は貴族であり、滅んだ辺境部族の生き残りであるフォニケとの結婚は身分違いではないかという話もあったが、そこはアルフェッカが手を回し、両親を説得。
彼自身が次男であり、次期当主の長男夫婦が男の子を産んでいることを上げていた。
何より、今は亡き長女に無理な結婚を推していた後悔があった為、二人の結婚は許された。
いざとなれば、ファリフが後ろ盾になると言ったが、フォニケが見た目も中身も亡き長女に似ていることもあって、気に入られている。
ドワーフ工房としては、アルフェッカの何年越しの恋を実らせたことで全員が喜んでいた。
婚礼はアルフェッカの故郷で行い、衣装は帝国風。服飾技術があるフォニケが陣頭指揮に立って作り上げた。
ドワーフ工房の広告塔を狙っており、これからは武器や道具だけではなく、本格的に衣装制作等にも手を広げようとカペラが画策したのだ。
婚礼儀式が終わった後、日にちを改めて、身内で披露宴というか、ぱーっと宴をしようという事になった。
場所は要塞都市商業区画。
ドワーフ工房の者達は飲食店街によく金を落としているので、今回の宴は区画あげてのちょっとしたお祭りだ。
新郎新婦の衣装はリアルブルーのウェディング衣装を意識したらしい。
そんな賑やかなムードの中、ファリフはある心の内をドワーフ工房や部族なき部族に打ち明けた。
その場にいたのはファリフと懇意にしている者達だ。
「ボクは、この宴が終わったら、旅に出る」
彼女の決意は固かった。
バタルトゥ亡き後、部族会議のトップはヴェルナー、イェルズ、ファリフの三人体勢で行っていた。
復興も進んだ頃に他の部族会議の者達が、そろそろ大首長を決めませんか……という話が出て来ている。
オイマト族とスコール族、それぞれの派閥が真っ二つに別れてしまう可能性に目を背くことは出来ない。
「ヴェルナー様には……?」
「分かってくれたよ。イェルズさんにはヴェルナーさんから話すって」
一呼吸置いてファリフは口を開く。
「ボクは戦ってばかりだった。ボクには、他の国を見ていく必要があると思っている。ハンターの皆からはわざわざ出る必要はないって言われるかもしれないけど……ボクはまだバタルトゥさんにも、シバさんにも及ばない」
ぐっと拳を握りしめるファリフは自分を責めているようでもなく、淡々と自分を見つめていた答えを出していた。
「まぁ、帰りたかったらいつでも帰ってくればいいのよ」
「そうですにゃ」
フォニケとテトの言葉にファリフは礼を告げた。
●
さてさて、宴当日。
新郎であるアルフェッカは死んだ目でハンターオフィスに現れた。
「どうかしたのですか?」
この受付嬢も宴に参加するので、お洒落をしていた。
「……フォニケちゃんとテトちゃんが……」
何があったのかと言えば、フォニケが下宿先の店で今日の宴用に作っていたヴェール付きヘッドドレスを忘れてきて、取りに戻ったそうだ。
ドワーフ工房へ戻ろうとした際、物盗りに遭い、ヘッドドレスを入れた箱が奪われた。
丁度、テトとルックスが通りかかり、フォニケとテトが取り戻しに駆け出し、ルックスはアルフェッカへの伝令役に指示を受けたとのこと。
そこから一時間ほど帰ってこない。
あまり治安の良くない方向へと行ったらしい。
「あの二人なら大丈夫では?」
「怪我とかされても困るので、ついでに連れ戻してほしい……」
がっくり肩を落とすアルフェッカに受付嬢は頷いて依頼書を作製した。
要塞都市管理官補佐役のアルフェッカ・ユヴェーレンとドワーフ工房の技師、フォニケが結婚するという話。
自由奔放を三次元化したようなフォニケを良く射止めたとフォニケを知る者達は感心した。
アルフェッカの出自は貴族であり、滅んだ辺境部族の生き残りであるフォニケとの結婚は身分違いではないかという話もあったが、そこはアルフェッカが手を回し、両親を説得。
彼自身が次男であり、次期当主の長男夫婦が男の子を産んでいることを上げていた。
何より、今は亡き長女に無理な結婚を推していた後悔があった為、二人の結婚は許された。
いざとなれば、ファリフが後ろ盾になると言ったが、フォニケが見た目も中身も亡き長女に似ていることもあって、気に入られている。
ドワーフ工房としては、アルフェッカの何年越しの恋を実らせたことで全員が喜んでいた。
婚礼はアルフェッカの故郷で行い、衣装は帝国風。服飾技術があるフォニケが陣頭指揮に立って作り上げた。
ドワーフ工房の広告塔を狙っており、これからは武器や道具だけではなく、本格的に衣装制作等にも手を広げようとカペラが画策したのだ。
婚礼儀式が終わった後、日にちを改めて、身内で披露宴というか、ぱーっと宴をしようという事になった。
場所は要塞都市商業区画。
ドワーフ工房の者達は飲食店街によく金を落としているので、今回の宴は区画あげてのちょっとしたお祭りだ。
新郎新婦の衣装はリアルブルーのウェディング衣装を意識したらしい。
そんな賑やかなムードの中、ファリフはある心の内をドワーフ工房や部族なき部族に打ち明けた。
その場にいたのはファリフと懇意にしている者達だ。
「ボクは、この宴が終わったら、旅に出る」
彼女の決意は固かった。
バタルトゥ亡き後、部族会議のトップはヴェルナー、イェルズ、ファリフの三人体勢で行っていた。
復興も進んだ頃に他の部族会議の者達が、そろそろ大首長を決めませんか……という話が出て来ている。
オイマト族とスコール族、それぞれの派閥が真っ二つに別れてしまう可能性に目を背くことは出来ない。
「ヴェルナー様には……?」
「分かってくれたよ。イェルズさんにはヴェルナーさんから話すって」
一呼吸置いてファリフは口を開く。
「ボクは戦ってばかりだった。ボクには、他の国を見ていく必要があると思っている。ハンターの皆からはわざわざ出る必要はないって言われるかもしれないけど……ボクはまだバタルトゥさんにも、シバさんにも及ばない」
ぐっと拳を握りしめるファリフは自分を責めているようでもなく、淡々と自分を見つめていた答えを出していた。
「まぁ、帰りたかったらいつでも帰ってくればいいのよ」
「そうですにゃ」
フォニケとテトの言葉にファリフは礼を告げた。
●
さてさて、宴当日。
新郎であるアルフェッカは死んだ目でハンターオフィスに現れた。
「どうかしたのですか?」
この受付嬢も宴に参加するので、お洒落をしていた。
「……フォニケちゃんとテトちゃんが……」
何があったのかと言えば、フォニケが下宿先の店で今日の宴用に作っていたヴェール付きヘッドドレスを忘れてきて、取りに戻ったそうだ。
ドワーフ工房へ戻ろうとした際、物盗りに遭い、ヘッドドレスを入れた箱が奪われた。
丁度、テトとルックスが通りかかり、フォニケとテトが取り戻しに駆け出し、ルックスはアルフェッカへの伝令役に指示を受けたとのこと。
そこから一時間ほど帰ってこない。
あまり治安の良くない方向へと行ったらしい。
「あの二人なら大丈夫では?」
「怪我とかされても困るので、ついでに連れ戻してほしい……」
がっくり肩を落とすアルフェッカに受付嬢は頷いて依頼書を作製した。
リプレイ本文
要塞都市内のハンターオフィスの一室には依頼人のアルフェッカが肩を落としていた。
それもそうだろう。何年越しでようやっと結ばれた花嫁が泥棒を追ってどこかに行ってしまったのだから。
「……トラブルに愛されてるね」
追いかけたとしてもあの二人なら大丈夫だろうとアルカ・ブラックウェル(ka0790)は思う。
「まだお衣裳着てないのです?」
「着替えようとしたら、その話を聞いてここに飛び出してきたんだ……」
エステル・ソル(ka3983)が素朴な疑問をなげると、アルフェッカは肩を竦める。
「最後まで賑やかというか、騒がしいというか」
呆れるオウガ(ka2124)は二人を探す方向にした。
「まぁだ、ウチのトップを分かってないようですねぇ……」
低く声をあげるのは星野 ハナ(ka5852)。
「そう言えば、一人足りない?」
今回集まったメンバーの中にはディーナ・フェルミ(ka5843)の名前もあったが、現在彼女の姿はなかった。
「アルフェッカさーん! なぁんでお金使わせてくれないのー?」
ドアを開けるなり入ってきたディーナはアルフェッカを見かけるなり不満を漏らす。
「歩き回ってもいいのかい? 一人の身体じゃないんだから」
ディーナは現在、妊娠中でアルフェッカが心配そうに声をかける。
「安定期入ってるから歩く分には大丈夫なの」
「今回は商店街の方から祝い金出てるんだ。君達は来てくれるだけで十分」
そう言ったところでアルフェッカは一度手を叩く。
「すまないが、フォニケちゃんとテトちゃんを宜しく頼むよ」
依頼人に応えるべく、ハンターは動き出した。
ハナを一人だけ残し、全員が動き出す。
集中したハナは占術を使って占いの成功率を上げてタロット占いで場所の選定をしていく。
方向を割り出すと、ハナは先に出ているオウガとエステルに通信を入れる。
「丁度良かったぜ。今、テトとフォニケを見たって人に話を聞いてた」
オウガが聞いたのはフォニケが向かっただろう区画より歩いてきた壮年で、美女と美少女がどえらい剣幕ですれ違ったと半ば震えていた。
「ご気分が悪いのですか……?」
心配そうに気遣う美女、エステルにはっとなる壮年は大丈夫と気を取り直して行ってしまった。
通りがかりの壮年を見送った二人はオウガが発動していた超聴覚で目的の声を聞き取る。
「あっちだ!」
オウガはハナにも連絡を取る。
「この辺りは入り組んでますので、お先に参ります」
向かう方向の道が薄暗くなっていく事に気づいたエステルはマジックフライトを発動して上昇していく。
「ああ、頼む」
オウガは超聴覚を頼りに二人を追う。
連絡を受けて部屋を飛び出したハナ駐輪場へと向かった。
「うちのトップと管理官補佐の嫁に難癖つけた馬鹿野郎にはぁ、三途の川渡って貰いましょぉかぁ!」
絶叫と共にハナは魔導ママチャリで現場へと向かった。
空から探すエステルは二人へエレメンタルコールをしたが、応答は「ちょっと待ってて」で終わってしまった。
完全に血が上っている。
祝い事なので、怪我とかは勘弁して頂きたいというか、片方は主役だ。
オウガからの通信が入り、エステルは方向を修正して二人を探す。彼からの話では、犯人の姿を見つけてチェイス中とのこと。
エステルの耳にも聞きなれた怒号と住民の悲鳴が聞こえる。
「待つにゃー!」
「そこ! どきなさい蹴るわよ!」
蹴るわよのワンテンポ前には蹴っている音がした。
高度を下げていくと、エステルは犯人の先を回り込むように舞い降りる。
「どけ!」
犯人だろう青年はエステルに向かっていくが、彼女は動じない。純白の手袋を嵌めた腕を肩まで上げ、その指先を犯人に向けた。
「うっ」
ぴたりと止まった犯人はエステルに気を取られており、後ろから猛スピードで突っ込んでくる気配に気づいていない。
「お疲れ様なのです」
明るい声でエステルが犯人の後ろへと声をかけると、犯人もつられて振り向くと、魔導ママチャリで猛然と突き進むハナがいた。
勢いよくハンドルを切ってドリフトで犯人近くまで距離を縮める。
「まだまだモグリがぁ、いたなんてぇ、思いませんでしたよぉ」
にーっこりと笑顔を浮かべるハナはフォニケ達の為に睡眠を削って準備をし、宴を飾る華となるよう磨いてきた。それが台無しにされかけた怒りで最早輝いている。
完全に気迫負けた犯人はヘナヘナと腰を抜かしてしまった。
その一方、アルカとディーナはドワーフ工房のメンバーと合流していた。
「おお、アルカか!」
「イオタ、久しぶりだね」
顔なじみのイオタと挨拶を交わすと、他の技師たちも彼女達に気づく。
「ごめんね……ウチの技師が……」
現在は工房管理官となったカペラががっくりと肩を落とす。
「それはいいとして、何でお祝いさせてくれないの?」
むぅ、と唇を尖らせるディーナにカペラはふふり、と笑う。
「何寝ぼけたことを言ってるの? あなたのその髪飾りを着けてここにいることが一番の仕事よ?」
そう返すカペラにディーナはきょとんと、目を瞬いた。
●
特に問題なく戻ってきたハンター達は即座に準備に入る。
街の方はもう始まっており、飲めや食えやの大騒ぎだ。
「わー! オウガ、凄く似合ってるよ!」
驚いたファリフが目を丸くしてオウガの礼装姿に驚いている。
「おぅ、フォニケが作った奴なんだってよ」
来た時は自前の礼装を着ていたが、先ほどの追跡で埃っぽくなってしまったので、フォニケが作ったコレクションを出してくれた。
「しかも、くれるって」
オウガの服はドワーフながらの小柄でしっかりとした体躯に合うよう、短めの上着の中に後ろが燕尾型のベストを着ており、白いシャツの胸元を飾るのはオウガの髪と似た赤いクロスタイを青い石のブローチで留めている。
ズボン部分のディティールも野暮ったくならないように細身だが動きやすい。
「そのブローチ、オウガのパートナーさんと同じ目の色なのにゃ」
着替え終わったテトがネタ晴らしをすると、「マジかよ!」と驚く。
「あ、テトちゃん、無事だったー? 綺麗なドレスだね。フォニケさんが作ったの?」
ゆっくりとディーナが歩いてくると、テトは目を丸くしてディーナの方へ駆け寄る。
「あ、あんまり無理しちゃダメにゃ……」
おろおろするテトにディーナは「わかったの」と微笑む。
「テトちゃんとファリフちゃんはお揃いのドレスなのね」
「そうなのですにゃ」
「フォニケさんが折角だからって」
二人は同じデザインのホルターネックにレースを段重ねにしたAラインスカートのワンピースドレス。
色違いであり、ファリフは夏の空のような青色、テトは夜明け前の黎明を意識した紺から薄紫のグラデーションになっている。
「でも、羽織は違うんだね」
アルカが気付くと、テトは嬉しそうに頷く。
「テトはハナのドレスと同じレースの羽織にしてもらったのですにゃ。二人が来たという事は、準備は終わりましたにゃんね」
道の向こうからざわめく声がどんどん賑やかなになり、甲高い口笛が響く。
人垣が二つに分かれていき、姿を現したのはアルフェッカとフォニケ。
花嫁は野外のパーティー用にエンパイアドレスにスリットを入れ、レースで素足を隠す動きやすいドレスを着ていた。
アルフェッカは帝国の礼装だったが、外套だけはフォニケが作った物らしい。
「さー、今日はパァーッと食べて、飲んで、明日からも働いてねーーー!」
ブーケを片手で高らかに上げたフォニケが宣言をすると、地響きのように参加者たちが歓声を上げる。
「挨拶するの旦那じゃないのか」
冷静にツッコミを入れるオウガはもう食べ始めており、チキンの炭火焼きを口の中に放った。
「この形式にしたいと言ったのはフォニケさんらしいですよ」
エステルが言えば、自由なフォニケらしいとアルカがくすくす笑う。
「あ、エステルもフォニケのドレス?」
「そうなのです。星鳥をイメージした髪飾りに併せたと言ってました」
アルカが気付くと、エステルは頷く。
エステルのドレスは以前、フォニケがエステルにと作った髪飾りとデザインを併せ、ツヤのある紺碧色の胸元から首、袖部分は同色のレースで覆われ、ふんわりとしたプリンセスラインのドレスを着用していた。スカート部分には星々を意匠したビーズ刺繍が施されている。
「犯人は無事に捕まったのよね」
ディーナが言えば、オウガが頷く。
犯人は青年と子供二人。三兄妹であり、戦いで親を亡くし、身よりもなく要塞都市に流れ着いたそうだ。
「晴れの日なのに可哀そうだとフォニケが言い出したんだ」
フォニケの下宿先は飲食店ルクバトの二階。
実を言うと、店主の娘が嫁入りして近隣の家から通うようになり、娘のように可愛がっていたフォニケも下宿を出るので、店主の親爺が寂しがっているらしい。
「フォニケさんが使ってた部屋を使わせてもらうようにしてぇ、ルクバトで下働きさせて貰える事になりましたぁ」
給仕中のハナが話を締めると、アルカとディーナはフォニケらしいと笑い合う。
今日から三兄妹は給仕仕事をしている模様。
「なぁに? 楽しいお話?」
フォニケがアルフェッカと共にハンター達の方に顔を出した。
この花嫁、この周辺の飲食店が店舗を開放して好きに食べることが出来るということがしたいということで、挨拶回りと共にガッツリ肉を食べている。
「オウガ君、ディーナちゃん、ルクバトで羊肉の吊るし焼きが振舞われてるわよ」
情報を聞いた二人はガタンと立ち上がるが、ディーナは二人の前に佇み、右手を自身の胸に当てる。
「フォニケさんにエクラ様のご加護がありますように……アルフェッカさんとお幸せに、なの」
優しい声音で新婦に祝福を与えたディーナにフォニケは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう、ディーナちゃん」
新しい夫婦は感謝を告げ、顔を見合わせて笑う。
そんな様子の中、エステルはシェダルの姿を探す。途中でフォニケの花嫁姿に感極まって泣くキュノスをクラーと宥める。
彼はルクバトの近くの卓に座って飲んでいた。
「シェダルさん」
「お疲れさん、何か食うか」
取ってこようと立ち上がろうとするシェダルに「大丈夫です」と彼女は返す。
「近くにいなくてもいいのです?」
「旦那は妬きもちやきだからな」
鼻で笑うシェダルの向かいの椅子にエステルも同意見で、腰を掛ける。
二人の間に会話は特になかったが、暫くして、アルカがエステルに歌の伴奏を頼んできたので席を離れた。
互いの内心は「こんなにいい人なのに良縁はないのだろうか」という心配。
挨拶回りも一通り終わったフォニケとアルフェッカはハンター達がいる卓に腰を落ち着ける。
「ようやくお肉が食べられる!」
「さっきから食ってばっかりだっただろ!」
幸せそうに肉を頬張るフォニケは挨拶回りの中でも肉を食べていたようで、オウガが夫婦漫才に噴き出す。
今の会話はアルカの近況。
魔導カメラに収めた写真をフォニケに見せていた。
現在は子供を産んで、家督を継いだばかりだという。
「大変な時期なのにいいの?」
「うん、大丈夫だよ。旦那様も補佐役もいるし」
心配そうなフォニケにアルカは笑顔で応える。かの二人の関係もあまり変わってないような気がすると話を聞いたドワーフ工房の面々は思う。
「ならよかったわ。一人でも来てくれて嬉しいわ」
「違うよー」
呑気なアルカの言葉に全員が来ているのかと思案する。
「三人目がいるんだー。子供のうち誰か一緒に来れて良かったよ」
「はぁ!?」
しれっと告げるアルカにその場にいた全員が驚きで目を剥く。
衝撃的なアルカの報告のあと、ハナが持ってきたのは豪華なウェディングケーキに歓声が上がる。
飴細工入りで全長二メートルの力作だ。クリームデコレーションまで繊細で、フルーツの彩が美しい。
べっ甲色と白の一対の熊の服は新郎新婦の衣装をデフォルメしたもの。
勿論、全てハナの手作りだ。
「ハナちゃん、すっごーい!」
「なぁに行ってるんですかぁ。フォニケさんだって、うちの子ですよぅ」
嬉しくなったフォニケはハナに抱きつく。
「ささ、ケーキ入刀ですよぉ♪」
ケーキにナイフを入れた後、新郎新婦用に皿に取り分け、ファーストバイトをする。
アルフェッカは今回の宴に関してハンターには楽しんでほしいという気持であったが、ハナがリアルブルーの結婚式のしきたりを伝えるなり、「それはお願いしたい」と言われたようだ。
どこの世界でも恋しい人に食べさせてもらう事に惹かれる人種はいる模様。
「めっちゃ凄いんにゃけど、気合入りすぎですにゃぁ……」
「でもぉ」
あまりの壮大さなケーキにテトは呆れてしまう。
「テトちゃんの時はもっと豪華ですよぉ」
「その前にハナのお式ですにゃ」
こっそりと笑い合う二人を見たファリフも内心安心していた。
「おい、ファリフ」
険しい表情を浮かべるオウガの言葉にファリフは頷く。
宴が終わると、ファリフはアルフェッカの要塞管理官補佐役の執務室にハンターやフォニケやカペラ、テトを呼ぶ。
「え、今日出るの?」
驚いた声を上げるのはアルカ。
ファリフはもう旅支度をしており、武器も携行している。
旅立つ日を切り上げたのは部族会議の敵対勢力らしき者達がファリフをずっと監視していたからだ。
「今日は何もなかったけど」
これ以上ここにいた場合の危険を感じた。自分ではない。周囲の人間に。
「旅をすることは無駄な事じゃないと思うの。最初は凄く怖かったけど、神様への感謝が深まって、大精霊様にも会えて。旦那様とも知り合ったしね。エクラ様と大精霊さまの御加護が、ファリフちゃんにありますように」
ディーナは両手でファリフの両手を包み込み、祈りを捧げる。
「行ってらっしゃいませ、ファリフちゃん」
ハナはファリフを信じて、のんびり見送るスタイルだ。
「ありがとう」
視線に気づいたファリフは青い瞳をオウガに向けた。
「行ってこい、応援してるからな。多分、アイツも言っているだろうけど、なんかあったら必ず駆けつけるからな、星の友」
拳を突き出すオウガにファリフは口端を緩めて自身の拳をオウガの拳に当てる。
「行ってくるよ。君に、君達に会えてよかった。ボクの狭い考えも広くなれたのは君達のお陰だ」
最後の見送りはエステルが辺境の境界までお見送り。
「ファリフさん」
「何?」
「バタルトゥさん達になる必要はないのですよ」
エステルの言わんとしている事にファリフは「そうだね」と笑う。
「ボクにあの人達にみたいなこと出来ないよ。イェルズさんも、ヴェルナーさんにもね」
それに、とファリフは言葉を繋げる。
「ボクは結構お喋りなんだよ」
珍しいファリフの冗談に二人は笑い合った。
これから辺境は『何年後』に向けて進みだす。
その道が明るく優しいものでなくても辺境の皆が笑顔であるよう祈らずにはいられなかった。
それもそうだろう。何年越しでようやっと結ばれた花嫁が泥棒を追ってどこかに行ってしまったのだから。
「……トラブルに愛されてるね」
追いかけたとしてもあの二人なら大丈夫だろうとアルカ・ブラックウェル(ka0790)は思う。
「まだお衣裳着てないのです?」
「着替えようとしたら、その話を聞いてここに飛び出してきたんだ……」
エステル・ソル(ka3983)が素朴な疑問をなげると、アルフェッカは肩を竦める。
「最後まで賑やかというか、騒がしいというか」
呆れるオウガ(ka2124)は二人を探す方向にした。
「まぁだ、ウチのトップを分かってないようですねぇ……」
低く声をあげるのは星野 ハナ(ka5852)。
「そう言えば、一人足りない?」
今回集まったメンバーの中にはディーナ・フェルミ(ka5843)の名前もあったが、現在彼女の姿はなかった。
「アルフェッカさーん! なぁんでお金使わせてくれないのー?」
ドアを開けるなり入ってきたディーナはアルフェッカを見かけるなり不満を漏らす。
「歩き回ってもいいのかい? 一人の身体じゃないんだから」
ディーナは現在、妊娠中でアルフェッカが心配そうに声をかける。
「安定期入ってるから歩く分には大丈夫なの」
「今回は商店街の方から祝い金出てるんだ。君達は来てくれるだけで十分」
そう言ったところでアルフェッカは一度手を叩く。
「すまないが、フォニケちゃんとテトちゃんを宜しく頼むよ」
依頼人に応えるべく、ハンターは動き出した。
ハナを一人だけ残し、全員が動き出す。
集中したハナは占術を使って占いの成功率を上げてタロット占いで場所の選定をしていく。
方向を割り出すと、ハナは先に出ているオウガとエステルに通信を入れる。
「丁度良かったぜ。今、テトとフォニケを見たって人に話を聞いてた」
オウガが聞いたのはフォニケが向かっただろう区画より歩いてきた壮年で、美女と美少女がどえらい剣幕ですれ違ったと半ば震えていた。
「ご気分が悪いのですか……?」
心配そうに気遣う美女、エステルにはっとなる壮年は大丈夫と気を取り直して行ってしまった。
通りがかりの壮年を見送った二人はオウガが発動していた超聴覚で目的の声を聞き取る。
「あっちだ!」
オウガはハナにも連絡を取る。
「この辺りは入り組んでますので、お先に参ります」
向かう方向の道が薄暗くなっていく事に気づいたエステルはマジックフライトを発動して上昇していく。
「ああ、頼む」
オウガは超聴覚を頼りに二人を追う。
連絡を受けて部屋を飛び出したハナ駐輪場へと向かった。
「うちのトップと管理官補佐の嫁に難癖つけた馬鹿野郎にはぁ、三途の川渡って貰いましょぉかぁ!」
絶叫と共にハナは魔導ママチャリで現場へと向かった。
空から探すエステルは二人へエレメンタルコールをしたが、応答は「ちょっと待ってて」で終わってしまった。
完全に血が上っている。
祝い事なので、怪我とかは勘弁して頂きたいというか、片方は主役だ。
オウガからの通信が入り、エステルは方向を修正して二人を探す。彼からの話では、犯人の姿を見つけてチェイス中とのこと。
エステルの耳にも聞きなれた怒号と住民の悲鳴が聞こえる。
「待つにゃー!」
「そこ! どきなさい蹴るわよ!」
蹴るわよのワンテンポ前には蹴っている音がした。
高度を下げていくと、エステルは犯人の先を回り込むように舞い降りる。
「どけ!」
犯人だろう青年はエステルに向かっていくが、彼女は動じない。純白の手袋を嵌めた腕を肩まで上げ、その指先を犯人に向けた。
「うっ」
ぴたりと止まった犯人はエステルに気を取られており、後ろから猛スピードで突っ込んでくる気配に気づいていない。
「お疲れ様なのです」
明るい声でエステルが犯人の後ろへと声をかけると、犯人もつられて振り向くと、魔導ママチャリで猛然と突き進むハナがいた。
勢いよくハンドルを切ってドリフトで犯人近くまで距離を縮める。
「まだまだモグリがぁ、いたなんてぇ、思いませんでしたよぉ」
にーっこりと笑顔を浮かべるハナはフォニケ達の為に睡眠を削って準備をし、宴を飾る華となるよう磨いてきた。それが台無しにされかけた怒りで最早輝いている。
完全に気迫負けた犯人はヘナヘナと腰を抜かしてしまった。
その一方、アルカとディーナはドワーフ工房のメンバーと合流していた。
「おお、アルカか!」
「イオタ、久しぶりだね」
顔なじみのイオタと挨拶を交わすと、他の技師たちも彼女達に気づく。
「ごめんね……ウチの技師が……」
現在は工房管理官となったカペラががっくりと肩を落とす。
「それはいいとして、何でお祝いさせてくれないの?」
むぅ、と唇を尖らせるディーナにカペラはふふり、と笑う。
「何寝ぼけたことを言ってるの? あなたのその髪飾りを着けてここにいることが一番の仕事よ?」
そう返すカペラにディーナはきょとんと、目を瞬いた。
●
特に問題なく戻ってきたハンター達は即座に準備に入る。
街の方はもう始まっており、飲めや食えやの大騒ぎだ。
「わー! オウガ、凄く似合ってるよ!」
驚いたファリフが目を丸くしてオウガの礼装姿に驚いている。
「おぅ、フォニケが作った奴なんだってよ」
来た時は自前の礼装を着ていたが、先ほどの追跡で埃っぽくなってしまったので、フォニケが作ったコレクションを出してくれた。
「しかも、くれるって」
オウガの服はドワーフながらの小柄でしっかりとした体躯に合うよう、短めの上着の中に後ろが燕尾型のベストを着ており、白いシャツの胸元を飾るのはオウガの髪と似た赤いクロスタイを青い石のブローチで留めている。
ズボン部分のディティールも野暮ったくならないように細身だが動きやすい。
「そのブローチ、オウガのパートナーさんと同じ目の色なのにゃ」
着替え終わったテトがネタ晴らしをすると、「マジかよ!」と驚く。
「あ、テトちゃん、無事だったー? 綺麗なドレスだね。フォニケさんが作ったの?」
ゆっくりとディーナが歩いてくると、テトは目を丸くしてディーナの方へ駆け寄る。
「あ、あんまり無理しちゃダメにゃ……」
おろおろするテトにディーナは「わかったの」と微笑む。
「テトちゃんとファリフちゃんはお揃いのドレスなのね」
「そうなのですにゃ」
「フォニケさんが折角だからって」
二人は同じデザインのホルターネックにレースを段重ねにしたAラインスカートのワンピースドレス。
色違いであり、ファリフは夏の空のような青色、テトは夜明け前の黎明を意識した紺から薄紫のグラデーションになっている。
「でも、羽織は違うんだね」
アルカが気付くと、テトは嬉しそうに頷く。
「テトはハナのドレスと同じレースの羽織にしてもらったのですにゃ。二人が来たという事は、準備は終わりましたにゃんね」
道の向こうからざわめく声がどんどん賑やかなになり、甲高い口笛が響く。
人垣が二つに分かれていき、姿を現したのはアルフェッカとフォニケ。
花嫁は野外のパーティー用にエンパイアドレスにスリットを入れ、レースで素足を隠す動きやすいドレスを着ていた。
アルフェッカは帝国の礼装だったが、外套だけはフォニケが作った物らしい。
「さー、今日はパァーッと食べて、飲んで、明日からも働いてねーーー!」
ブーケを片手で高らかに上げたフォニケが宣言をすると、地響きのように参加者たちが歓声を上げる。
「挨拶するの旦那じゃないのか」
冷静にツッコミを入れるオウガはもう食べ始めており、チキンの炭火焼きを口の中に放った。
「この形式にしたいと言ったのはフォニケさんらしいですよ」
エステルが言えば、自由なフォニケらしいとアルカがくすくす笑う。
「あ、エステルもフォニケのドレス?」
「そうなのです。星鳥をイメージした髪飾りに併せたと言ってました」
アルカが気付くと、エステルは頷く。
エステルのドレスは以前、フォニケがエステルにと作った髪飾りとデザインを併せ、ツヤのある紺碧色の胸元から首、袖部分は同色のレースで覆われ、ふんわりとしたプリンセスラインのドレスを着用していた。スカート部分には星々を意匠したビーズ刺繍が施されている。
「犯人は無事に捕まったのよね」
ディーナが言えば、オウガが頷く。
犯人は青年と子供二人。三兄妹であり、戦いで親を亡くし、身よりもなく要塞都市に流れ着いたそうだ。
「晴れの日なのに可哀そうだとフォニケが言い出したんだ」
フォニケの下宿先は飲食店ルクバトの二階。
実を言うと、店主の娘が嫁入りして近隣の家から通うようになり、娘のように可愛がっていたフォニケも下宿を出るので、店主の親爺が寂しがっているらしい。
「フォニケさんが使ってた部屋を使わせてもらうようにしてぇ、ルクバトで下働きさせて貰える事になりましたぁ」
給仕中のハナが話を締めると、アルカとディーナはフォニケらしいと笑い合う。
今日から三兄妹は給仕仕事をしている模様。
「なぁに? 楽しいお話?」
フォニケがアルフェッカと共にハンター達の方に顔を出した。
この花嫁、この周辺の飲食店が店舗を開放して好きに食べることが出来るということがしたいということで、挨拶回りと共にガッツリ肉を食べている。
「オウガ君、ディーナちゃん、ルクバトで羊肉の吊るし焼きが振舞われてるわよ」
情報を聞いた二人はガタンと立ち上がるが、ディーナは二人の前に佇み、右手を自身の胸に当てる。
「フォニケさんにエクラ様のご加護がありますように……アルフェッカさんとお幸せに、なの」
優しい声音で新婦に祝福を与えたディーナにフォニケは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう、ディーナちゃん」
新しい夫婦は感謝を告げ、顔を見合わせて笑う。
そんな様子の中、エステルはシェダルの姿を探す。途中でフォニケの花嫁姿に感極まって泣くキュノスをクラーと宥める。
彼はルクバトの近くの卓に座って飲んでいた。
「シェダルさん」
「お疲れさん、何か食うか」
取ってこようと立ち上がろうとするシェダルに「大丈夫です」と彼女は返す。
「近くにいなくてもいいのです?」
「旦那は妬きもちやきだからな」
鼻で笑うシェダルの向かいの椅子にエステルも同意見で、腰を掛ける。
二人の間に会話は特になかったが、暫くして、アルカがエステルに歌の伴奏を頼んできたので席を離れた。
互いの内心は「こんなにいい人なのに良縁はないのだろうか」という心配。
挨拶回りも一通り終わったフォニケとアルフェッカはハンター達がいる卓に腰を落ち着ける。
「ようやくお肉が食べられる!」
「さっきから食ってばっかりだっただろ!」
幸せそうに肉を頬張るフォニケは挨拶回りの中でも肉を食べていたようで、オウガが夫婦漫才に噴き出す。
今の会話はアルカの近況。
魔導カメラに収めた写真をフォニケに見せていた。
現在は子供を産んで、家督を継いだばかりだという。
「大変な時期なのにいいの?」
「うん、大丈夫だよ。旦那様も補佐役もいるし」
心配そうなフォニケにアルカは笑顔で応える。かの二人の関係もあまり変わってないような気がすると話を聞いたドワーフ工房の面々は思う。
「ならよかったわ。一人でも来てくれて嬉しいわ」
「違うよー」
呑気なアルカの言葉に全員が来ているのかと思案する。
「三人目がいるんだー。子供のうち誰か一緒に来れて良かったよ」
「はぁ!?」
しれっと告げるアルカにその場にいた全員が驚きで目を剥く。
衝撃的なアルカの報告のあと、ハナが持ってきたのは豪華なウェディングケーキに歓声が上がる。
飴細工入りで全長二メートルの力作だ。クリームデコレーションまで繊細で、フルーツの彩が美しい。
べっ甲色と白の一対の熊の服は新郎新婦の衣装をデフォルメしたもの。
勿論、全てハナの手作りだ。
「ハナちゃん、すっごーい!」
「なぁに行ってるんですかぁ。フォニケさんだって、うちの子ですよぅ」
嬉しくなったフォニケはハナに抱きつく。
「ささ、ケーキ入刀ですよぉ♪」
ケーキにナイフを入れた後、新郎新婦用に皿に取り分け、ファーストバイトをする。
アルフェッカは今回の宴に関してハンターには楽しんでほしいという気持であったが、ハナがリアルブルーの結婚式のしきたりを伝えるなり、「それはお願いしたい」と言われたようだ。
どこの世界でも恋しい人に食べさせてもらう事に惹かれる人種はいる模様。
「めっちゃ凄いんにゃけど、気合入りすぎですにゃぁ……」
「でもぉ」
あまりの壮大さなケーキにテトは呆れてしまう。
「テトちゃんの時はもっと豪華ですよぉ」
「その前にハナのお式ですにゃ」
こっそりと笑い合う二人を見たファリフも内心安心していた。
「おい、ファリフ」
険しい表情を浮かべるオウガの言葉にファリフは頷く。
宴が終わると、ファリフはアルフェッカの要塞管理官補佐役の執務室にハンターやフォニケやカペラ、テトを呼ぶ。
「え、今日出るの?」
驚いた声を上げるのはアルカ。
ファリフはもう旅支度をしており、武器も携行している。
旅立つ日を切り上げたのは部族会議の敵対勢力らしき者達がファリフをずっと監視していたからだ。
「今日は何もなかったけど」
これ以上ここにいた場合の危険を感じた。自分ではない。周囲の人間に。
「旅をすることは無駄な事じゃないと思うの。最初は凄く怖かったけど、神様への感謝が深まって、大精霊様にも会えて。旦那様とも知り合ったしね。エクラ様と大精霊さまの御加護が、ファリフちゃんにありますように」
ディーナは両手でファリフの両手を包み込み、祈りを捧げる。
「行ってらっしゃいませ、ファリフちゃん」
ハナはファリフを信じて、のんびり見送るスタイルだ。
「ありがとう」
視線に気づいたファリフは青い瞳をオウガに向けた。
「行ってこい、応援してるからな。多分、アイツも言っているだろうけど、なんかあったら必ず駆けつけるからな、星の友」
拳を突き出すオウガにファリフは口端を緩めて自身の拳をオウガの拳に当てる。
「行ってくるよ。君に、君達に会えてよかった。ボクの狭い考えも広くなれたのは君達のお陰だ」
最後の見送りはエステルが辺境の境界までお見送り。
「ファリフさん」
「何?」
「バタルトゥさん達になる必要はないのですよ」
エステルの言わんとしている事にファリフは「そうだね」と笑う。
「ボクにあの人達にみたいなこと出来ないよ。イェルズさんも、ヴェルナーさんにもね」
それに、とファリフは言葉を繋げる。
「ボクは結構お喋りなんだよ」
珍しいファリフの冗談に二人は笑い合った。
これから辺境は『何年後』に向けて進みだす。
その道が明るく優しいものでなくても辺境の皆が笑顔であるよう祈らずにはいられなかった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
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