ゲスト
(ka0000)
『漢』中水泳!
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/12 12:00
- 完成日
- 2015/02/20 09:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ポルトワールの海に白いさざ波が寄せる。
身も凍る冷たい潮風に首筋を撫でられながら、人々はその寒さに思わず身を縮こまらせた。
そんな荒れる冬の海岸線を走る男達の影が一つ、二つ、三つ――少しずつ合流するように集まるその人影はどれも口元に白い息を弾ませ、その屈強な体を風に晒しながら冬の砂浜を豪快な掛け声と共に駆け抜ける。
「おう、今日は早いな!」
はちきれんばかりの腕の筋肉のシルエットが印象的な男が一人、途中で合流したこれもガタイの良い男へと声を掛ける。
声を掛けられたほうの男は走りながら何故かその上着を脱ぎだし、他の皆と同じように素肌を潮風に晒しながらニヤリと良い笑顔を返した。
「家に居たんじゃぬくぬくとしていて仕方がねぇ。今は少しでも身体を慣らさなきゃいけねぇってのによ!」
言いながらも身体を温めるようにタオルでその胸元をごしごしと擦る。
「ウチじゃぁもう暖房もつけてないぜ! 少しでも身体をならさにゃな!」
腕筋の膨れた男はそう言いながら大声で笑って見せた。
「俺は毎朝の水浴びをかかさねぇぜ! かーちゃんには風邪ひくからやめろって言われるんだけどよ、前の晩から軒先に出しておいた水が良い感じに冷たいのよ! マジで心臓止まっちまうくらいだ!」
そう言う別の男は同時にくしゃみを1つ立てながらも、その鼻を啜り白波の立つ海へと視線を向けた。
釣られるように他の男達も海へと目を向ける。
朝霧に包まれた海の向こう、その先に見える小さな島。
人が住めるような大きさも無い、釣りスポットになる程度の本当に小さな島ではあるが、それが今彼らにとっては冒険家が求めて止まない新大陸のような、そんな神秘的な場所のようにその目には映っていた。
「いよいよ、来週だな」
そう口にしたのは彼らの中の誰であっただろうか。
もしくは誰でもなかったのかもしれない。
待ちに待ったその日を目前に控え、彼らの胸の中には一様にそんな言葉が浮かび上がっていた。
『海軍式! ポルトワール寒中水泳大会』
この肌寒い冬の季節に行われる、ポルトワールのちょっとした風物詩。
己の健やかな体と、我慢強さと、鍛え抜かれたその力を試す漢達の冬のスポーツ祭。
決して大きな大会ではないが、街中から我こそはと言う猛者が集まる知る人ぞ知る――いや、知る漢ぞ知る大会である。
「今年は主催側がゲストを用意しているらしいな。なんでも参加者にハンターを呼んでいるとか」
「そいつは良い! いつもは護られっぱなしの俺達だが、今回は正々堂々と勝負ってわけだな!」
その報告に、闘志を燃やす漢達。
覚醒ご法度のこの大会、優劣を決めるのは(今までの所)その己の肉体一つ。
一般人も軍人もハンターも無い。
ただ単純に、肉体、技術、精神、そのすべてが勝っている者がその荒れ狂う海を渡りきる事ができる。
それが寒中水泳の本質、醍醐味だ。
「敵を倒す前にまずは己に勝つ! ようし、ひと泳ぎしていくぞ!」
「おう!」
その掛け声と同時に男達は見も凍るポルトワールの海へとその身一つで飛び込んで行くのであった。
身も凍る冷たい潮風に首筋を撫でられながら、人々はその寒さに思わず身を縮こまらせた。
そんな荒れる冬の海岸線を走る男達の影が一つ、二つ、三つ――少しずつ合流するように集まるその人影はどれも口元に白い息を弾ませ、その屈強な体を風に晒しながら冬の砂浜を豪快な掛け声と共に駆け抜ける。
「おう、今日は早いな!」
はちきれんばかりの腕の筋肉のシルエットが印象的な男が一人、途中で合流したこれもガタイの良い男へと声を掛ける。
声を掛けられたほうの男は走りながら何故かその上着を脱ぎだし、他の皆と同じように素肌を潮風に晒しながらニヤリと良い笑顔を返した。
「家に居たんじゃぬくぬくとしていて仕方がねぇ。今は少しでも身体を慣らさなきゃいけねぇってのによ!」
言いながらも身体を温めるようにタオルでその胸元をごしごしと擦る。
「ウチじゃぁもう暖房もつけてないぜ! 少しでも身体をならさにゃな!」
腕筋の膨れた男はそう言いながら大声で笑って見せた。
「俺は毎朝の水浴びをかかさねぇぜ! かーちゃんには風邪ひくからやめろって言われるんだけどよ、前の晩から軒先に出しておいた水が良い感じに冷たいのよ! マジで心臓止まっちまうくらいだ!」
そう言う別の男は同時にくしゃみを1つ立てながらも、その鼻を啜り白波の立つ海へと視線を向けた。
釣られるように他の男達も海へと目を向ける。
朝霧に包まれた海の向こう、その先に見える小さな島。
人が住めるような大きさも無い、釣りスポットになる程度の本当に小さな島ではあるが、それが今彼らにとっては冒険家が求めて止まない新大陸のような、そんな神秘的な場所のようにその目には映っていた。
「いよいよ、来週だな」
そう口にしたのは彼らの中の誰であっただろうか。
もしくは誰でもなかったのかもしれない。
待ちに待ったその日を目前に控え、彼らの胸の中には一様にそんな言葉が浮かび上がっていた。
『海軍式! ポルトワール寒中水泳大会』
この肌寒い冬の季節に行われる、ポルトワールのちょっとした風物詩。
己の健やかな体と、我慢強さと、鍛え抜かれたその力を試す漢達の冬のスポーツ祭。
決して大きな大会ではないが、街中から我こそはと言う猛者が集まる知る人ぞ知る――いや、知る漢ぞ知る大会である。
「今年は主催側がゲストを用意しているらしいな。なんでも参加者にハンターを呼んでいるとか」
「そいつは良い! いつもは護られっぱなしの俺達だが、今回は正々堂々と勝負ってわけだな!」
その報告に、闘志を燃やす漢達。
覚醒ご法度のこの大会、優劣を決めるのは(今までの所)その己の肉体一つ。
一般人も軍人もハンターも無い。
ただ単純に、肉体、技術、精神、そのすべてが勝っている者がその荒れ狂う海を渡りきる事ができる。
それが寒中水泳の本質、醍醐味だ。
「敵を倒す前にまずは己に勝つ! ようし、ひと泳ぎしていくぞ!」
「おう!」
その掛け声と同時に男達は見も凍るポルトワールの海へとその身一つで飛び込んで行くのであった。
リプレイ本文
●それにつけても冬の寒さよ
「うぉぉぉぉ! 寒いぃぃぃぃ!!」
そう叫ばずには居られない極寒の中、海パン一丁のなんとも自業自得としか言いようの無い恰好で、伊出 陸雄(ka0249)は自らの肩を抱いて潮風に震えていた。
荒れる高波、押し寄せる白波。
ちらつく雪はまさしく絶好の寒中水泳日和だ。
「今からこの恰好してる意味はあるんだろうか」
ガチガチと歯を擦り合わせながら震えた声を上げるのは、城戸 慶一郎(ka3633)。
いくら覚醒者と言えどスーパーマンではないのだ。寒いものは寒い。
「あんた、そんな状態で大丈夫か?」
漢の神器、褌の紐をぐっと結び上げながら十文字 勇人(ka2839)は傍らで包帯巻きのヴァイス(ka0364)の姿を見やり、同時に荒れ狂う海原を見つめた。
大怪我を負ったヴァイスが海水に浸れば……結果は言わずもがなである。
「心頭を滅却すれば火もまた涼し……逆に、塩水で殺菌と考えれば行ける筈だ!」
「そうなの? じゃあ実験♪」
不意にそんな声がしたかと思えば、間髪入れずにヴァイスの頭からぶっ掛けられる大量の海水。
瞬間、ヴァイスは石化したかのように硬直し……暫くしてパタリとその場に倒れこんだ。
「ははは、面白~い!」
桶片手に腹を抱えて笑うのは、ティラ・ンダイハ(ka2699)。
体のラインがくっきりと浮き出るセクシーなビキニが季節はずれ太陽のようにまぶしい。
「うぐ……ティラ、お前が居るのか!」
「あたしが居たら悪い~? こんなに素晴らしい大会、逃す訳ないじゃん!」
言いながら、きゃらきゃらと笑って砂浜を駆け抜けて行く。
「……大丈夫か?」
その場に取り残されて、勇人は傍らに倒れるヴァイスへと手を添える。
ヴァイスは文字通り涅槃にでも至ったかのようなザ・真顔で、ティラの駆け抜けて行った方角を見つめながら、ポツリと呟いた。
「……女性の水着は時期関係なく素晴らしいものだ」
たぶん、彼は大丈夫だろう。
「この寒ささえ無ければ、もう少し色気のある水着も着れたのだけれどね」
下半身から肩口までをぴっちりと覆う、所謂競泳水着に身を包みながらマリア・K・エルバベル(ka4166)は静かにぼやく。
「生まれ故郷でも寒い中で水と戯れるお祭りはあったから、その時も準備運動だけはしっかりするように言われたしね」
そうして準備運動に余念が無い彼女の姿に見とれる漢は少なくない。
ただでさえ女性が少ない中でもあるが、その、準備運動中の長身から成される流線美は人の眼を惹き付けるものがあった。
そんな彼女の傍で、海岸線に一同に並んだ漢たちを前に、エルバッハ・リオン(ka2434)は厚い布のマントを身に纏いながらその様子を眺めていた。
「日ごろから鍛錬を積んでいる方々に勝つのは難しいでしょう。だったら……ふふふ」
不穏な笑い声と共にばっと、羽織るマントを脱ぎ捨てる。
そこには、もはやその機能を成しているのかいないのかも定かではない最低限の「布切れ」に大事な部分だけを隠した水着に身を包んだ彼女の姿があった。
「あ、どうぞ今日はよろしくお願いします」
その谷間が見えるようにわざと深々とお辞儀をし、漢たちの中を掻き分けて行くエルバッハ。
少しでも島に近い位置を手に入れるのだと。その一心で。
一方、別の人だかりができている箇所が一つ。
黒いひらひらのワンピース水着に身を包んだ揚羽・ノワール(ka3235)を囲むように、心配そうな表情の漢達が数名。
「みなさん、ありがとうございます……でも、少し寒さにも慣れて来ましたわ」
そう、震える演技を見せながら白い顔でニッコリと微笑む揚羽に、漢達はどきりとその頬を染める。
そんな彼女達の光景を眺めながら、ヴァイスは再び呟いた。
「何度でも言うが、女性の水着は素晴らしいものだ。あ、いや、正確には1人――」
そう、言いかけたところでその口元がしなやかな指で覆われた。
ビクリと視線だけで後ろを振り返ると、いつの間にか揚羽が背後に張り付いてその口を覆っていた。
「私の接近に気づかないくらい弱ってるのだから、無粋な事は言わないで頂戴ね?」
そう艶やかな視線とばちり目が合い、ヴァイスはコクコクと無言で頷いて見せた。
●海の漢達
響き渡る空砲の音と共に、漢達が一斉に海へと突撃する。
その勢いや、文字通り砂浜の砂を巻き上げ、地響きも鳴り響くほどで、湧き上がる喚声はポルトワール中に響き渡るのではないかと言うほど。
海面に張り倒すのはもちろん、力に自慢があれば投げ飛ばし、様々な方法で漢達がくんずほぐれつ、少しでも他の人間より優位に立とうとその肉体美を示す。
そんな漢達の中で浅瀬を滑るように走り、水面へと飛び込むエルバッハ。
「技術じゃ敵わないのですから、それを補えるだけリードを奪えれば……」
初めから全力のクロールで一気に水面を走る。
覚醒できない以上、最初から彼らの手の届かぬ位置を、順位を目指す以外に道は残されていないのだ。
「お嬢ちゃん、頑張るね! 俺だって負けていられないぞ!」
想定どおり、か弱い女性相手に手を上げる漢どもは居ない。
この様子なら、自分さえ頑張れば良いセン行けるのでは――
「――ごぼあぁ!?」
不意に、隣を泳いでいた漢の姿が消えた。
それだけではない、次々に、周囲の漢達が何処かへと……いや、水中へと消える。
その巨体が荒波の中へ揉まれて行く。
一体何が――
「へぶっ……!?」
そう考えるや否や、不意に片足を「何者か」に掴まれ、エルバッハは水中へと引きずり込まれた。
唐突の事態に少し海水を飲んでしまったようで、口の中に塩辛さと生臭さがぶわっと広がる。
その霞んだ視線の先に、にやりと笑うエルフの姿を捉えるのにそう時間は必要無かった。
(ふふふ……水中を華麗に泳ぐ姿はまさにマーメイド! 獲物を狙うその瞳はまさにビッグ・シャーク! そして絡みつくわ、まさしくクラーケン!)
そう、自身を鼓舞するように唱えるティラ。
(そして、屈強な男達の裸に囲まれて、まさしくここはシーパラダイス!)
そんな彼女の姿を見送りながら、エルバッハは自分の重大なミスを痛感した。
――まさか、実力行使に出る女子が居るとは。
「やっぱりティラのヤツ、厄介な真似を……!」
海面に顔を出し一端その泳ぎを止めながら、勇人はその「惨状」を振り返る。
ぷかりと力なく漂う漢、漢、漢の山。
「まったく彼女は……とりあえず、私は参加者の安全を確かめてくるわ。身内の起こした事態だしね」
そう勇人へと言い残すと、マリアはそのまま180度進行方向を反転。
浮かぶ筋肉達へと一人一人泳ぎ寄り、その生の安全確保に努める。
「ええい、そうだな。これ以上犠牲者が増えるのも忍びない!」
勇人もまた自らを奮い立たせるとざぶりと極寒の海中へとその身を投じる。惨劇の現況を止める為に。
海中に潜ると視界も良好、目標はすぐに見つかった。
なんともイキイ――いや、楽しげに水中を踊りまわるティラ。
行っている事が事で無ければ、文字通り冬の海のマーメイドにも見えた事だろう。
(ええい、狙いたければ俺を狙え……!)
その思い、通じたのか否かティラの瞳がギラリと獲物を捕らえる。
まさに魚のように水中を滑る彼女の身体ががっちりと勇人の右足を捕らえた。
(それでいい! このまま……完泳してみせる!)
絡みついたティラは足元から徐々に勇人の上半身を侵食せんと迫り来る。
が、これもまた精神・肉体の鍛錬の一環だと言い聞かせ、一心に冬の海を掻いていく。
「とりあえず、こんなものかしらね……」
「あら……ご苦労様」
一通りの人命救助を終えたマリアの横を黒いワンピース――揚羽がすいーっと滑るように泳ぎ抜けた。
「随分とゆっくりな遊泳ね。アナタも完泳を目標に?」
「まさか、出場している以上は目指すのは一番よ」
救助に時間を食ってしまいもはや完泳が目標となったマリアを前に、揚羽はさらりとそう言い切る。
「ここから頑張るの? 実は泳ぎのスペシャリストなのかしら?」
「私は見ての通りのか弱いオトメ。でも、だからこそできる事もあってよ?」
そう言いながら揚羽はパチリと意味深にウインクを返す。
「あなたこそ、私よりもずうっと勝負の目はあるわよ? だって、私には無いものを持っているのだもの」
それだけ言い残すと「じゃあね♪」と手を振って、そのまま変わらぬ速度ですいーっと眼前の男達の群れへと入り込んでゆく。
マリアはその言われた事の意味も理解しきれずに、ただぽかんとその姿を見送った。
「うおぉぉぉ、やっぱり冷てぇぜ! あのオッサンたち、よく平気だな!!」
先頭集団からちょっと後ろへ引いて、彼らを追いかけるような位置に陸雄はその身を投じていた。
「おっ、なるほど……高波が来た時は無理せず止まるんだな。なるほど、ためになるぜ!」
こと海に関してド素人である陸雄にとってはその何もかもが新鮮である。
「なぁ、ヴァイスさんもそう思うよな!?」
そう、自分のやや後方を泳いでいるヴァイスのほうへと振り返った……しかし、そこに彼の姿は無い。
慌てて周囲を見渡すも、すぐに深い海の底に力なく沈んで行く彼の姿を見つける事となる。
「ヴァ、ヴァイスさん!?」
慌てて彼を救出する陸雄。
無事海面に救出されたヴァイスは一つ水を吐き出すと、ぜーぜーと肩で大きく息をした。
「どうしたんすか! まさか、誰かに襲われて……!?」
「い、いや、違うんだ……」
そう言って、ヴァイスはいつもと違うどこか遠くを見つめるような覇気の無い目で口を開く。
「……痛いものは、痛かった。そう、思わず気を失うほどに……」
文字通り傷口に塩を塗る状態の彼にとって、この海中では、どれだけの激痛がその身を襲う事だろう。
「い、痛みになど負けるか……絶対に、諦め……ない……」
そう、もはや意識があるのか無いのかも分からない状態でもなお泳ぐ事を止めないヴァイス。
「ヴァイスさん……俺が付いてるぜ! 絶対に完泳してやりやしょう!」
そう、お互いに声を掛け合いながら2人の漢は島を目指すのだ。
「もう、どのくらい泳いだのだろう……」
水面を滑るように平泳ぎで泳ぎながら、慶一郎は一人静かにそう呟いた。
有名な童話で言えば、自分はカメになるのだと。
そう頭の中で言い聞かせながら、弱音も吐かず、愚痴も溢さず、日本のサラリーマンの心意気のままに淡々と依頼をこなす。
そんな中、前方に水面に顔を出してどこかのぼせた様子でゆらゆらと漂う漢達の姿が目に入った。
「あら……これはまた、逞しいお体ですわね?」
漢の間を掻き分けるように、参加者の身体へと手を伸ばしながらそっと耳元で囁く揚羽の姿。
そうして掛けられた吐息によって、漢はゾクゾクとした感覚が背筋を伝うように震えると、そのまま「前屈み」になって水面を漂う。
「あら……頑張ってらっしゃるのね。ステキ」
不意に、慶一郎の背中をつつっと、揚羽のしなやかな指先がつたった。
極寒の海で冷やされたその指は尚冷たく、ゾクリとした悪寒にも似た感覚が背筋を伝う。
「な、何やってんですか!」
思わず泳ぎを止めて揚羽へと向き直る慶一郎。
ほんの少し顔が赤いのは霜焼けという事にしておいてあげよう。
「あら、皆さん素晴らしい身体をお持ちですから褒めて差し上げていたのよ?」
揚羽はそうクスリと笑うと妖艶な動きで慶一郎の顎の下へと指を這わせる。
そうして引き寄せられ、耳元で囁かれ、ドキリと心臓が鼓動する。
が、慌てて揚羽の身体を引き離すと、クルリと背を向けてびしりと手を立てた。
「お、俺は先を急ぐので……これで」
そうして少しでも早くその場を離れんがばかりのクロールで先へと進んでゆく。
「あら……意外とおカタイのね。残念」
そう言って唇を指でなぞる揚羽は、次の漢をその瞳に捉えると静かにその背後へと忍び寄るのであった。
「危なかった……サラリーマン経験が無ければ、やられていた」
収まらぬ鼓動を感じながらも、慶一郎はその時のことを振り返る。
数年に渡る社畜人生が教えてくれた唯一絶対の教訓――それは耐えること。
そういえば……先ほどから回りに人が見えないが。
自分は今、どこを泳いでいるのだろうか。
自慢の方向感覚も空しく、どこか変な沖へと出てしまったのだろうか。
とりあえず、耐え切って、早く終わらせて、暖かい飲み物でも飲みたい。
そう願った彼の右腕が、不意に触れた海底の砂を掴んだ。
●海の……漢?
「おめでとう、今年の優勝者はハンター! キド・ケイイチロウだ!」
高らかに響く主催者らしき漢の声。
靡く赤いふんどしがまぶしい、屈強な海の男にその腕を持ち上げられ、その身体も宙へと浮く。
「優勝? ナンデ?」
一番驚いているのは自分自身だとでも言うように、目を白黒させながら慶一郎は小さく一つくしゃみをした。
「それが、あの方のお陰で漢達は皆あの状態でな……」
続々と陸へと泳ぎ着く……いや、漂流した漢達の群れ。
皆一様に「く」の字になってそそくさと海岸を抜けてゆく。
そんな彼らにニコニコと手を振りながら揚羽が慶一郎の視線に気づいた。
「残念……どうやら、あなたの手助けをしてしまっただけみたいね」
そこでようやく、自分の前に居た漢達はみんな揚羽の毒牙に掛かってしまい、慶一郎がいつの間にか繰り上がりで先頭ついていた事を知る。
「っぷはぁ……! やったぞ、泳ぎ切ってやった!」
海岸へと顔を見せる勇人の姿。
その背中の辺りに未だにティラをひっつけながら。
「やるじゃないの……でも、その肉体を堪能できたらよしとするわ!」
なんか完泳できたし、とティラも満足げに頷いてみせる。
「俺はやった……やったんだ……ぐはっ」
「ヴァイスさぁぁぁぁん!!」
こちらもまた、凄くやりきった表情でかくりと意識を失うヴァイス。
それを抱きかかえるようにして陸雄の叫びが海岸に響き渡る。
「あら、まったく無茶しちゃって……」
そんな彼らの姿を見ながら、マリアもまた到着した海岸でその濡れた髪を掻き上げた。
「くぅ、あと一押し。一押し足りません。次の機会があればもう少し布面積を減らして……いや、いっそ手ブラでしょうか」
なにやら不穏な言葉を発しているエルバッハであるが、これ以上自主規制な事にならないことを願う。
「いや、さすがハンターの皆さん。こうして皆完泳できるとは! やはり呼んで正解でしたな、がはははは!」
そう、主催者の男は大きく高笑いを見せながら慶一郎の背中をバンバンと激しく叩く。
ああ、なんかこの乗せられ方、前の会社で見た事ある……乗せられるだけ乗せられて、こき使われるアレだと。
もちろんそんな事は無いのだが、サラリーマンは今日も異世界を元気に生きていた。
「うぉぉぉぉ! 寒いぃぃぃぃ!!」
そう叫ばずには居られない極寒の中、海パン一丁のなんとも自業自得としか言いようの無い恰好で、伊出 陸雄(ka0249)は自らの肩を抱いて潮風に震えていた。
荒れる高波、押し寄せる白波。
ちらつく雪はまさしく絶好の寒中水泳日和だ。
「今からこの恰好してる意味はあるんだろうか」
ガチガチと歯を擦り合わせながら震えた声を上げるのは、城戸 慶一郎(ka3633)。
いくら覚醒者と言えどスーパーマンではないのだ。寒いものは寒い。
「あんた、そんな状態で大丈夫か?」
漢の神器、褌の紐をぐっと結び上げながら十文字 勇人(ka2839)は傍らで包帯巻きのヴァイス(ka0364)の姿を見やり、同時に荒れ狂う海原を見つめた。
大怪我を負ったヴァイスが海水に浸れば……結果は言わずもがなである。
「心頭を滅却すれば火もまた涼し……逆に、塩水で殺菌と考えれば行ける筈だ!」
「そうなの? じゃあ実験♪」
不意にそんな声がしたかと思えば、間髪入れずにヴァイスの頭からぶっ掛けられる大量の海水。
瞬間、ヴァイスは石化したかのように硬直し……暫くしてパタリとその場に倒れこんだ。
「ははは、面白~い!」
桶片手に腹を抱えて笑うのは、ティラ・ンダイハ(ka2699)。
体のラインがくっきりと浮き出るセクシーなビキニが季節はずれ太陽のようにまぶしい。
「うぐ……ティラ、お前が居るのか!」
「あたしが居たら悪い~? こんなに素晴らしい大会、逃す訳ないじゃん!」
言いながら、きゃらきゃらと笑って砂浜を駆け抜けて行く。
「……大丈夫か?」
その場に取り残されて、勇人は傍らに倒れるヴァイスへと手を添える。
ヴァイスは文字通り涅槃にでも至ったかのようなザ・真顔で、ティラの駆け抜けて行った方角を見つめながら、ポツリと呟いた。
「……女性の水着は時期関係なく素晴らしいものだ」
たぶん、彼は大丈夫だろう。
「この寒ささえ無ければ、もう少し色気のある水着も着れたのだけれどね」
下半身から肩口までをぴっちりと覆う、所謂競泳水着に身を包みながらマリア・K・エルバベル(ka4166)は静かにぼやく。
「生まれ故郷でも寒い中で水と戯れるお祭りはあったから、その時も準備運動だけはしっかりするように言われたしね」
そうして準備運動に余念が無い彼女の姿に見とれる漢は少なくない。
ただでさえ女性が少ない中でもあるが、その、準備運動中の長身から成される流線美は人の眼を惹き付けるものがあった。
そんな彼女の傍で、海岸線に一同に並んだ漢たちを前に、エルバッハ・リオン(ka2434)は厚い布のマントを身に纏いながらその様子を眺めていた。
「日ごろから鍛錬を積んでいる方々に勝つのは難しいでしょう。だったら……ふふふ」
不穏な笑い声と共にばっと、羽織るマントを脱ぎ捨てる。
そこには、もはやその機能を成しているのかいないのかも定かではない最低限の「布切れ」に大事な部分だけを隠した水着に身を包んだ彼女の姿があった。
「あ、どうぞ今日はよろしくお願いします」
その谷間が見えるようにわざと深々とお辞儀をし、漢たちの中を掻き分けて行くエルバッハ。
少しでも島に近い位置を手に入れるのだと。その一心で。
一方、別の人だかりができている箇所が一つ。
黒いひらひらのワンピース水着に身を包んだ揚羽・ノワール(ka3235)を囲むように、心配そうな表情の漢達が数名。
「みなさん、ありがとうございます……でも、少し寒さにも慣れて来ましたわ」
そう、震える演技を見せながら白い顔でニッコリと微笑む揚羽に、漢達はどきりとその頬を染める。
そんな彼女達の光景を眺めながら、ヴァイスは再び呟いた。
「何度でも言うが、女性の水着は素晴らしいものだ。あ、いや、正確には1人――」
そう、言いかけたところでその口元がしなやかな指で覆われた。
ビクリと視線だけで後ろを振り返ると、いつの間にか揚羽が背後に張り付いてその口を覆っていた。
「私の接近に気づかないくらい弱ってるのだから、無粋な事は言わないで頂戴ね?」
そう艶やかな視線とばちり目が合い、ヴァイスはコクコクと無言で頷いて見せた。
●海の漢達
響き渡る空砲の音と共に、漢達が一斉に海へと突撃する。
その勢いや、文字通り砂浜の砂を巻き上げ、地響きも鳴り響くほどで、湧き上がる喚声はポルトワール中に響き渡るのではないかと言うほど。
海面に張り倒すのはもちろん、力に自慢があれば投げ飛ばし、様々な方法で漢達がくんずほぐれつ、少しでも他の人間より優位に立とうとその肉体美を示す。
そんな漢達の中で浅瀬を滑るように走り、水面へと飛び込むエルバッハ。
「技術じゃ敵わないのですから、それを補えるだけリードを奪えれば……」
初めから全力のクロールで一気に水面を走る。
覚醒できない以上、最初から彼らの手の届かぬ位置を、順位を目指す以外に道は残されていないのだ。
「お嬢ちゃん、頑張るね! 俺だって負けていられないぞ!」
想定どおり、か弱い女性相手に手を上げる漢どもは居ない。
この様子なら、自分さえ頑張れば良いセン行けるのでは――
「――ごぼあぁ!?」
不意に、隣を泳いでいた漢の姿が消えた。
それだけではない、次々に、周囲の漢達が何処かへと……いや、水中へと消える。
その巨体が荒波の中へ揉まれて行く。
一体何が――
「へぶっ……!?」
そう考えるや否や、不意に片足を「何者か」に掴まれ、エルバッハは水中へと引きずり込まれた。
唐突の事態に少し海水を飲んでしまったようで、口の中に塩辛さと生臭さがぶわっと広がる。
その霞んだ視線の先に、にやりと笑うエルフの姿を捉えるのにそう時間は必要無かった。
(ふふふ……水中を華麗に泳ぐ姿はまさにマーメイド! 獲物を狙うその瞳はまさにビッグ・シャーク! そして絡みつくわ、まさしくクラーケン!)
そう、自身を鼓舞するように唱えるティラ。
(そして、屈強な男達の裸に囲まれて、まさしくここはシーパラダイス!)
そんな彼女の姿を見送りながら、エルバッハは自分の重大なミスを痛感した。
――まさか、実力行使に出る女子が居るとは。
「やっぱりティラのヤツ、厄介な真似を……!」
海面に顔を出し一端その泳ぎを止めながら、勇人はその「惨状」を振り返る。
ぷかりと力なく漂う漢、漢、漢の山。
「まったく彼女は……とりあえず、私は参加者の安全を確かめてくるわ。身内の起こした事態だしね」
そう勇人へと言い残すと、マリアはそのまま180度進行方向を反転。
浮かぶ筋肉達へと一人一人泳ぎ寄り、その生の安全確保に努める。
「ええい、そうだな。これ以上犠牲者が増えるのも忍びない!」
勇人もまた自らを奮い立たせるとざぶりと極寒の海中へとその身を投じる。惨劇の現況を止める為に。
海中に潜ると視界も良好、目標はすぐに見つかった。
なんともイキイ――いや、楽しげに水中を踊りまわるティラ。
行っている事が事で無ければ、文字通り冬の海のマーメイドにも見えた事だろう。
(ええい、狙いたければ俺を狙え……!)
その思い、通じたのか否かティラの瞳がギラリと獲物を捕らえる。
まさに魚のように水中を滑る彼女の身体ががっちりと勇人の右足を捕らえた。
(それでいい! このまま……完泳してみせる!)
絡みついたティラは足元から徐々に勇人の上半身を侵食せんと迫り来る。
が、これもまた精神・肉体の鍛錬の一環だと言い聞かせ、一心に冬の海を掻いていく。
「とりあえず、こんなものかしらね……」
「あら……ご苦労様」
一通りの人命救助を終えたマリアの横を黒いワンピース――揚羽がすいーっと滑るように泳ぎ抜けた。
「随分とゆっくりな遊泳ね。アナタも完泳を目標に?」
「まさか、出場している以上は目指すのは一番よ」
救助に時間を食ってしまいもはや完泳が目標となったマリアを前に、揚羽はさらりとそう言い切る。
「ここから頑張るの? 実は泳ぎのスペシャリストなのかしら?」
「私は見ての通りのか弱いオトメ。でも、だからこそできる事もあってよ?」
そう言いながら揚羽はパチリと意味深にウインクを返す。
「あなたこそ、私よりもずうっと勝負の目はあるわよ? だって、私には無いものを持っているのだもの」
それだけ言い残すと「じゃあね♪」と手を振って、そのまま変わらぬ速度ですいーっと眼前の男達の群れへと入り込んでゆく。
マリアはその言われた事の意味も理解しきれずに、ただぽかんとその姿を見送った。
「うおぉぉぉ、やっぱり冷てぇぜ! あのオッサンたち、よく平気だな!!」
先頭集団からちょっと後ろへ引いて、彼らを追いかけるような位置に陸雄はその身を投じていた。
「おっ、なるほど……高波が来た時は無理せず止まるんだな。なるほど、ためになるぜ!」
こと海に関してド素人である陸雄にとってはその何もかもが新鮮である。
「なぁ、ヴァイスさんもそう思うよな!?」
そう、自分のやや後方を泳いでいるヴァイスのほうへと振り返った……しかし、そこに彼の姿は無い。
慌てて周囲を見渡すも、すぐに深い海の底に力なく沈んで行く彼の姿を見つける事となる。
「ヴァ、ヴァイスさん!?」
慌てて彼を救出する陸雄。
無事海面に救出されたヴァイスは一つ水を吐き出すと、ぜーぜーと肩で大きく息をした。
「どうしたんすか! まさか、誰かに襲われて……!?」
「い、いや、違うんだ……」
そう言って、ヴァイスはいつもと違うどこか遠くを見つめるような覇気の無い目で口を開く。
「……痛いものは、痛かった。そう、思わず気を失うほどに……」
文字通り傷口に塩を塗る状態の彼にとって、この海中では、どれだけの激痛がその身を襲う事だろう。
「い、痛みになど負けるか……絶対に、諦め……ない……」
そう、もはや意識があるのか無いのかも分からない状態でもなお泳ぐ事を止めないヴァイス。
「ヴァイスさん……俺が付いてるぜ! 絶対に完泳してやりやしょう!」
そう、お互いに声を掛け合いながら2人の漢は島を目指すのだ。
「もう、どのくらい泳いだのだろう……」
水面を滑るように平泳ぎで泳ぎながら、慶一郎は一人静かにそう呟いた。
有名な童話で言えば、自分はカメになるのだと。
そう頭の中で言い聞かせながら、弱音も吐かず、愚痴も溢さず、日本のサラリーマンの心意気のままに淡々と依頼をこなす。
そんな中、前方に水面に顔を出してどこかのぼせた様子でゆらゆらと漂う漢達の姿が目に入った。
「あら……これはまた、逞しいお体ですわね?」
漢の間を掻き分けるように、参加者の身体へと手を伸ばしながらそっと耳元で囁く揚羽の姿。
そうして掛けられた吐息によって、漢はゾクゾクとした感覚が背筋を伝うように震えると、そのまま「前屈み」になって水面を漂う。
「あら……頑張ってらっしゃるのね。ステキ」
不意に、慶一郎の背中をつつっと、揚羽のしなやかな指先がつたった。
極寒の海で冷やされたその指は尚冷たく、ゾクリとした悪寒にも似た感覚が背筋を伝う。
「な、何やってんですか!」
思わず泳ぎを止めて揚羽へと向き直る慶一郎。
ほんの少し顔が赤いのは霜焼けという事にしておいてあげよう。
「あら、皆さん素晴らしい身体をお持ちですから褒めて差し上げていたのよ?」
揚羽はそうクスリと笑うと妖艶な動きで慶一郎の顎の下へと指を這わせる。
そうして引き寄せられ、耳元で囁かれ、ドキリと心臓が鼓動する。
が、慌てて揚羽の身体を引き離すと、クルリと背を向けてびしりと手を立てた。
「お、俺は先を急ぐので……これで」
そうして少しでも早くその場を離れんがばかりのクロールで先へと進んでゆく。
「あら……意外とおカタイのね。残念」
そう言って唇を指でなぞる揚羽は、次の漢をその瞳に捉えると静かにその背後へと忍び寄るのであった。
「危なかった……サラリーマン経験が無ければ、やられていた」
収まらぬ鼓動を感じながらも、慶一郎はその時のことを振り返る。
数年に渡る社畜人生が教えてくれた唯一絶対の教訓――それは耐えること。
そういえば……先ほどから回りに人が見えないが。
自分は今、どこを泳いでいるのだろうか。
自慢の方向感覚も空しく、どこか変な沖へと出てしまったのだろうか。
とりあえず、耐え切って、早く終わらせて、暖かい飲み物でも飲みたい。
そう願った彼の右腕が、不意に触れた海底の砂を掴んだ。
●海の……漢?
「おめでとう、今年の優勝者はハンター! キド・ケイイチロウだ!」
高らかに響く主催者らしき漢の声。
靡く赤いふんどしがまぶしい、屈強な海の男にその腕を持ち上げられ、その身体も宙へと浮く。
「優勝? ナンデ?」
一番驚いているのは自分自身だとでも言うように、目を白黒させながら慶一郎は小さく一つくしゃみをした。
「それが、あの方のお陰で漢達は皆あの状態でな……」
続々と陸へと泳ぎ着く……いや、漂流した漢達の群れ。
皆一様に「く」の字になってそそくさと海岸を抜けてゆく。
そんな彼らにニコニコと手を振りながら揚羽が慶一郎の視線に気づいた。
「残念……どうやら、あなたの手助けをしてしまっただけみたいね」
そこでようやく、自分の前に居た漢達はみんな揚羽の毒牙に掛かってしまい、慶一郎がいつの間にか繰り上がりで先頭ついていた事を知る。
「っぷはぁ……! やったぞ、泳ぎ切ってやった!」
海岸へと顔を見せる勇人の姿。
その背中の辺りに未だにティラをひっつけながら。
「やるじゃないの……でも、その肉体を堪能できたらよしとするわ!」
なんか完泳できたし、とティラも満足げに頷いてみせる。
「俺はやった……やったんだ……ぐはっ」
「ヴァイスさぁぁぁぁん!!」
こちらもまた、凄くやりきった表情でかくりと意識を失うヴァイス。
それを抱きかかえるようにして陸雄の叫びが海岸に響き渡る。
「あら、まったく無茶しちゃって……」
そんな彼らの姿を見ながら、マリアもまた到着した海岸でその濡れた髪を掻き上げた。
「くぅ、あと一押し。一押し足りません。次の機会があればもう少し布面積を減らして……いや、いっそ手ブラでしょうか」
なにやら不穏な言葉を発しているエルバッハであるが、これ以上自主規制な事にならないことを願う。
「いや、さすがハンターの皆さん。こうして皆完泳できるとは! やはり呼んで正解でしたな、がはははは!」
そう、主催者の男は大きく高笑いを見せながら慶一郎の背中をバンバンと激しく叩く。
ああ、なんかこの乗せられ方、前の会社で見た事ある……乗せられるだけ乗せられて、こき使われるアレだと。
もちろんそんな事は無いのだが、サラリーマンは今日も異世界を元気に生きていた。
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寒中水泳大会に向けて 十文字 勇人(ka2839) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/02/09 20:04:57 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/08 12:03:05 |