【MV】バレンタインで売り上げアップ

マスター:笹村工事

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/16 19:00
完成日
2015/02/23 11:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 クリムゾンウエストにも、バレンタインの足音が近づいてきています。
 ハロウィンやクリスマスのようにリアルブルーからやってきた文化のひとつではありますが、その伝わり方はひとつではありませんでした。
 チョコレートを贈る日、気持ちを伝える日、合同結婚式が頻繁に行われる時期、食品業界が活性化する時期……あげればきりがありません。
 感情の絆、マテリアルリンクが強まり世の中のマテリアルが活性化すると言われることもありますが、少しばかり別の形……愛情を育む者達を羨み憎むための怪しげな集会が行われ、嫉妬の絆で結束を強めているという噂もあるようです。本当でしょうか?
 崖上都市「ピースホライズン」は催し事に力を入れる土地。勿論今は、バレンタインの賑わいで都市中が彩られています。
 その中の、ほんの一部だけでも……確かめに行ってみてはいかがでしょうか?

 とはいえ、「ピースホライズン」以外でも、そういった催しを商売のチャンスと思い動く人々は居るもので――

●バレンタインで盛り上がろう
 バレンタイン。
 リアルブルーでは異性にチョコと共に想いを告げたり、あるいは親しい間柄の相手に日頃の好意を手紙やハンカチと共に伝える日。
 クリムゾンウェストでも、その習慣はあったりする。
 とはいえ地方毎で多少の、あるいは盛大な、風習の違いはあったりするけれど。
 でも、その日に想いを込めてチョコレートを作ったりする少女達が大勢居るのもまた事実。
 女の子達にとって、その日は大事な日なのだ。
 もっとも、それは人によるもので。たとえば、商人でもある少女達にとっては、いつもより多くの売り上げが期待できるという意味で大事な日でもあったりする。
 とある新興商店街の盛り上げなどの世話役を委託されているクルキャット商会所属の双子の少女、カタリーナとビアンカも例外ではなかった。

「稼ぎ時やね!」
 姉であるカタリーナの呼び掛けに、妹であるビアンカは頷く。
「そうやねぇ。バレンタインは売れ行きええから、ほんま嬉しいんよね」
「関連商品揃えとるだけで、それなりに売上あるんやもんね。やけど今年は、ここの商店街の盛り上げもあるし、イベントとかした方がええかもしれんね」
「そうやねぇ。先輩らにも手伝って貰えたら楽やけど、ジェオルジの方で忙しいみたいやし」
「ほんま残念やねぇ。キティ、チョコ渡せへんし」
「余計なこと言うんわ、この口か。この口なんか」
「ひひゃぃ、ひっぱらんといてぇ~」
 むにぃぅ、とビアンカのほっぺを摘まみ引っ張るカタリーナ。ちょくちょく戯れ合う、仲の良い双子である。
 ひとしきりビアンカの頬の感触を楽しんだ後、カタリーナは続けて言う。
「先輩らへのチョコは、お姉ちゃん達が先にあげてからやから後でええんよ。
 それよりも、イベントを考えんといけんやろ」
「そうやねぇ。やったらまた、ハンターの人らに手伝って貰った方がええと思うんよ」
「うん、ウチもそう思っとったんよ。ハンターの人らに、もっとここの商店街のこと知って欲しいし。宣伝にもなって、協力して貰って、一石二鳥やもんね」
「宣伝言うんやったら、折角やし、イベント開くんやし皆にも楽しんで貰えたらええよね」
「そやね。イベントのアイデア出して貰おて、その後皆にもイベント楽しんで貰おう」
「それがええわぁ、キティ。やったら早速、ハンターオフィスに依頼出しに行こう」

 こうして、新しい依頼がハンターオフィスに持ち込まれました。内容は、

 バレンタインをテーマにした商店街の盛り上げの協力
 その後、イベントに参加する事による盛り上げ協力

 という物でした。これを見たアナタ達は?

リプレイ本文

●バレンタインで盛り上げよう
「一枚どうぞ。商店街の店舗や今回行われるイベントが紹介されています」
 気持ちの良い早朝。ヴァイス(ka0364)は商店街に訪れたカップル達に、依頼人である双子が用意した宣伝ビラを手渡す。
 一緒に配っているのがペットの柴犬・ワンコの背に乗ったパルム・キノである事もあって、手に取る人達の表情は楽しそうだ。
 中にはバレンタインという事で想い人の事を胸に抱いているのか、弾むような表情を見せる女性も多い。彼は心地好さを感じながら、ビラ配りを続ける。
 本音を言うと、少しばかりバレンタインの輪に入りナンパのひとつでもしたい所だが、恋する乙女を見るだけでも十分意味がある。何より、皆が幸せになれるのならば、それは嬉しい事だ。彼は相棒達と共に、さらにビラ配りに精を出す。
 そんな彼の元に訪れたのは、彼の知人でもあるメトロノーム・ソングライト(ka1267)。
「お疲れ様ですね。少し手伝いましょうか?」
「ありがとな。助かるけど、そっちの用事は良いのか?」
「ええ。私は服屋さんのお手伝いをするつもりですけれど、店員さんの準備がまだみたいで、少し空き時間がありますから」
「そっか、それなら頼む。あと少しで配り終わるから。その後は賑やかしも兼ねて商店街を散策してくれって事だし、お店の方を覗かせて貰うよ」
「ええ、ぜひ」
 ふんわりと笑みを浮かべ彼女は応え、そして2人は宣伝ビラを配っていく。その甲斐もあり、他のイベントやお店は少しずつ活気を見せ始めていた。

●広場でイベント準備
「それではカタリーナさんビアンカさん、イベントの進行をお願いしますね」
 ミオレスカ(ka3496)に依頼人の双子は元気良く返す。
「任せて欲しいんよ!」
「絵師の人達の手配も全部終わったんよ」
 商店街のお店で星の印をあしらった商品を扱って貰い、全ての星を集めたお客さんには肖像画をプレゼント。もちろんカップルでも大歓迎。
 そんなイベント企画・星イベを立ち上げたミオレスカに協力を求められた双子は全ての準備をこなし、進行役も引き受けた。元々の企画ではポラロイドカメラで撮影というアイデアだったが、数枚程度ならともかく大勢の人が来た際に用意出来ないという事で、ここは絵師に協力して貰う事になっている。
「私はパン屋でお手伝いさせて貰います。イーディスさんは小物屋、クリスティンさんはメイド執事喫茶で良かったですよね?」
 彼女の呼び掛けに、イベント協力を申し出た2人は応えを返す。 
「服も着替えたし、準備万端だから任せてくれ」
 クリスティン・ガフ(ka1090)は、広場近くの案内所で着替えたメイド服姿を披露しながら返す。清楚さと動き易さを考えて作られたメイド服は、落ち着いた華やかさで彼女を飾った。
「見えない部分でも今回は気を使ったからな、お蔭で動き易い」
 戦いではないという事でさらしは止め、以前福引で買ったという黒の下着姿で固めている。リアルブルー製のガーターベルトに奇妙な感じを受けながらも、動き易さは気に入っていた。もちろんその辺りは見えないお洒落だが、身に着ける者の気分には出るもので、どこか普段よりも色艶のある雰囲気を醸し出している。
 そんな彼女と同様、普段の戦士としての姿とは違う姿を見せるのは、イーディス・ノースハイド(ka2106)。戦闘時の重武装姿ではなく、お店の手伝いをするという事で、双子が用意した暖色系のふんわりとしたワンピースの上に、まだ寒さが残っているので暖かそうなカーディガンを羽織っている。いわば、かわいらしい店員さんという感じだ。
「私は小物屋では星を象ったペアのアクセサリを薦めてみるよ。恋人同士でお互いの絆を象徴するものさ」
 イーディスの言葉に、ミオレスカとクリスティンは返す。
「私はチョコレートと、色砂糖をトッピングして星の形に焼いたパンを、限定商品としてお勧めします。朝早くからパン屋さんに協力して貰いましたし、頑張って売りますね」
「私の方は星型のチョコを複数個ラッピングして用意し、食事してくれた興味がありそうな人に説明と一緒に手渡すつもりだ。お店の方にも許可を貰っているし協力もしてくれるそうだから、私の方も頑張るよ。それと、肖像画を一緒に頼まれたら応じるつもりだが、皆はどうする?」
 これにミオレスカとイーディスは賛同する。
「折角ですし、そう言ってくれるお客さんが居たなら、協力します」
「私もそうするよ。望んでくれると言うのなら応えたいものさ」
 3人はそう言うと、早速それぞれ手伝いをするお店へと向かって行く。そうして星イベは始まったが、まだまだ始まったばかりで肖像画を求めて人は来ていない。
 だが、広場での催し物はそれだけではなく、他のハンター達の働きで賑わいを見せていた。

「各店舗でVDイベント開催中~。みんな覗いていってね~♪」
 玉乗りしながらジャグリング、お客の注目が集まる中でのアクロバティックな宙返り。時に可愛らしくウインクしながら、星垂(ka1344)は身の軽さを生かした軽業を披露して周囲を沸かす。
 その横でイベント関連の宣伝が書かれたチラシを配っているのは、コーネリア・デュラン(ka0504)。彼女は兎の着ぐるみに身を包み、ハート形のチラシを配りながら宣伝をしていく。
「はい、どうぞ。星イベや特典スタンプイベント、無料チョコフォンデュイベントに、他にもお店ごとにイベントを開催しています。ぜひ、参加してみて下さいね」
 兎の着ぐるみに嬉しそうに寄って来た女の子にチラシを渡し、手を振って別れた後、彼女は星垂に声を掛ける。
「ほたるん、お疲れさま。宣伝、もう少しする?」
「うん、もう少しやろう。その後は、一緒に商店街巡りだね。コーニーさんと一緒に回るの、ボク楽しみだよ」
「私も。その為にも、もっと一杯お客さんがお店に来てくれるよう、宣伝頑張ろうね」
 笑顔で声を掛けあいながら、2人は更に宣伝を重ねていく。
 そうした宣伝をしているのは、彼女達だけではなかった。

「特典スタンプイベント開催してるよ。商店街でお買い物をすると、特製チョコとスタンプをプレゼント。カップルのお客さんには、特別にお店ごとの特典もプレゼントだ」
 依頼人の双子が用意したプラカードを手に、鹿島 雲雀(ka3706)は自分が企画したイベントの宣伝を広場で行う。この後、商店街を歩きながら宣伝をするつもりだが、その前にお客さんが集まっている広場で小手調べ。反応や質問を聞き、それに合わせて宣伝内容を修正して、改めて通りで宣伝をするつもりなのだ。
 そんな彼女に声を掛けたのは、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)。彼は湯煎で溶かしたチョコを鍋に用意しながら彼女に呼び掛ける。
「この後、通りで宣伝するんだろ? だったら悪いんだけど、チョコフォンデュの事も宣伝してくれないか?」
 そう言いながらテキパキと忙しそうに動く。元々は、フルーツパーラーの手伝いで行う予定だったのだが、チョコを温め続ける為に火が必要だった事もあり場所を取り、通りでするには少し手狭なので、広場で行う事になった。
 もっともそれは、依頼人の双子が他のイベントとの相乗効果も出せるかもしれないのでお願いしたという理由もあったが。
「忙しそうだな」
 鹿島の言葉に、レイオスは苦笑しながら返す。
「まぁね。でもその分やりがいはあるし、最初の準備が終われば人を回してくれるみたいだしな。その間に商店街も回れるから悪くはないさ。星イベやスタンプイベント、パルム達と一緒に参加してみたいしな」
 この言葉を聞き、フォンデュ用に果物を串に刺していた2体のパルムが嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。その微笑ましさに、鹿島は笑みを浮かべると申し出に返す。
「分かった。一緒に宣伝しておくな」
「助かる。だったらチョコフォンデュ、先に試してみてくれよ。宣伝するなら、味を知っていた方が良いだろうしさ」
 これに鹿島は、ベリーの刺さった串をパルム達から受け取りチョコを付け食べる。チョコのコクのある甘味の後にベリーのほど良い酸味がアクセントになり、次々にお代わりしてしまいそうな美味しさである。
「美味い。これなら宣伝のしがいもあるし、任せろ」
 こうして忙しくハンター達は商店街の賑わいの為に動いていく。もっとも中には、アート制作で黙々と動くハンターも居た。

「よし、こんなもんか」
 作品を前に、アシェ・ブルゲス(ka3144)は満足そうに呟く。
 廃材で作った執事像、姿勢は執事らしく丁寧なお出迎えのお辞儀・ボウアンドスクレイプ。商店街にメイド執事喫茶があるという事で、女性客向けに作っている。
 針金や木々で作られたそれは、大きさが成人男性が見上げるほど。服装は布端を繋いで派手に飾り、足元には沢山のオブジェを装飾した物を付け、そして後は無数の手作りハートで彩りを増している。
 それは写実的な形ではなかったが、人を惹き付けるアートとして注目を集めた。それもあり材料について聞いて来るお客に彼は答える。
「材料はここの商店街のものだよ。その布はあっちの服屋、この瓶は服屋の三件先にある小物屋の物で、あとは――」
 彼の説明に興味を持ったお客さんは、材料先の店に足を向ける。宣伝としての効果もあった。
 こうしてハンター達の宣伝もあり、商店街のそれぞれのお店にお客は次々向かって行く。お蔭で賑わいを見せていた。

●商売繁盛
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
 朗らかな声で、セレーネ・エイシェント(ka0027)はアルバイト先の雑貨店にお客としてきた、アイ・シャ(ka2762)とヴィーナ・ストレアル(ka1501)に声を掛ける。
 お客役の2人は、ある意味商店街盛り上げのサクラ役ではあったが、依頼人にどうせなら好きなように楽しんで欲しいと言われ、お客として散策を楽しんでいた。
「せっかくですから、妹達にお土産でも探しましょうか」
 ヴィーナは、やんちゃばっかりする可愛い妹達の事を想い小さく笑みを浮かべながら商品を見ていく。商品はセレーネの手により販促用の可愛らしいイラストで飾られていた。それらを見ながらアイは提案する。
「ね~さま、トマトソースの瓶詰めがありますよ。甘口のは、こっちのグミの材料みたい」
 ナイフとフォークを持った2体のパルムが描かれたラベルが貼られたそれは、塩味の濃い物もあったが彼女の手にしたのは甘口の物。それにセレーネは押し付けにならない程度に売り込む。
「グミのレシピは、おまけで付いてくるカードに載っています。折角ですし、グミも一緒にどうですか?」
「そうですね。食べ物の方が良いでしょうから、瓶詰めとグミを貰います。私は決めましたけれど、アイちゃんはどうしますか?」
 これに少し考え込んでから、アイは返す。
「ね~さま? に~さまには、どれがよろしいでしょうか?」
 想い人への贈り物。それを可愛らしく想いながらヴィーナは返す。
「貴女の贈り物なら、何であろうときっと喜んでくれますよ。折角のバレンタインですし、それに合わせた物を贈ってみてはどうです?」
「なら、チョコでしょうか? でも、ね~さまの買われた瓶詰めも気になります」
「でしたら、こちらのチョコクッキーなんてどうでしょう?」
 セレーネはお店と交渉して作っていた配布用のクッキーとは別の、より贈答用に豪華になったクッキーのセットを勧める。
「今日は買い物をして貰ったお客さんにクッキーを配ってるんですけれど、それよりも質や見た目も良いですよ。私も家族用に買ってますけれど、お勧めしたくなるぐらい物は良いです。味とかを確認されるのでしたら、配布用のクッキーを先に試して貰って、それから考えてみられてはどうでしょう」
 これにヴィーナとアイは返す。
「店員さんが買うほどの物なら質は良さそうですね。これにしますか、アイちゃん?」
「はい、ね~さま。だったら贈り物だし、きれいに包装して貰えると嬉しいです」
 これにラッピング用のリボンなどを取り出しながらセレーネは商品を包み、受け取った2人は更にどこを散策しようかと会話を弾ませていた。
 こうして盛り上がっているお店は、ここだけではない。お祭り騒ぎという事で、ハンター達の諸々の提案に乗り、いつもよりはっちゃけているメイド執事喫茶も同様だった。

「おかえりなさいませ、ご主人さま!」
「お、おかえりなさいませ!」
 メイド執事喫茶にて、自前のお揃い猫耳にお店が用意した伊達メガネを付けて、ミィリア(ka2689)とエリー・ローウェル(ka2576)はお客さんを出迎える。双子コーデで揃えてまとめた衣装は2人共に似合っていた。
 ミィリアはメイドの経験もあるという事で、その仕事っぷりは慣れたもの。その一方、本職がシスターのエリーは少しばかりぎこちない。
 けれどそれをミィリアが助け、エリーも頑張る中、仲の良い姉妹のようである。
 そんな中、リアルブルーの作法を教えて貰った事もあるというミィリアは、出迎えの挨拶と同じく、エリーと一緒に教えて貰った作法に従い接客する。
「オムライスお待ちどうさまです。ご主人さまの好きな言葉を書いちゃいますね」
「主たる方は神だけですしご飯で遊ぶような真似は言語道断ですけどミィリアちゃんも頑張ってるから、私もやっちゃいますね!」
 ケチャップは無かったのでトマトソースを使い、お客のリクエストに合わせて文字や絵をオムライスに描いていく。ミィリアは楽しそうにノリノリで、エリーは恥ずかしさを見せながらもそれが可愛らしさに繋がり、恋人のいない独身男性に喜ばれた。特に、2人が仲良く給仕をする様は受けが良かった。
「エリー、猫さんの絵、かわいい♪ あとで私にも作ってね」
「ほ、ほんとに? それなら良いけど。それよりも、さっきの注文の取り方とか、変じゃなかったかな?」
「大丈夫! すっごく可愛かったし元気で、立派なメイドさんだよ」
「そうなんだ……いつもは私の方がお姉さん役だけど、今日はちょっと頼らせて貰うね」
「任せて! 2人一緒にメイドさんとして頑張ろう!」
 こうして2人は仲良くメイドさんをこなし、独り身男性の潤いとなっていた。
 とはいえ独り身のお客さんばかりではなく、中にはカップルで訪れているお客さん達も居る。そんなお客さんに、ちょっとした悪戯を仕掛けるハンターも居たりした。

「お客さま、お取りしますね」
 カップル客の内、男性客が落したスプーンを拾いに行ったのはエルバッハ・リオン(ka2434)。メイド執事喫茶で働く前に「バレンタインを用いたイベントですか。面白そうですね」と呟いていた彼女は、やる気一杯である。その意気込みは衣装にも出ていた。リアルブルー知識を基にしたフレンチメイド調の服。胸元を強調しミニスカート姿のそれは、元々の意味合いの物より品良く、それでいて色艶を見せている。
 それを身に着ける前に、お店の迷惑になると拙いと気遣いを見せ聞いていたが、店側はお祭り時期という事もあり、何かあればすぐに店側がフォローできる範囲内で好きに接客してくれて良いと許可が出ていた。
 そんな訳で、彼女が着ているメイド服はある意味際どく、スプーンを取る為にしゃがむと短いスカートのすそが更に上がり悩ましい感じになる。もちろんそれで下着が見えたりなどは一切ないが、それだけで男性客の鼻の下は伸びていたりする。
「スプーン、お取替えしますね」
 立ち上がる時に、豊かな胸を揺らしながらスプーンを取りに行く。そんな彼女の後ろ姿を見詰める男性客は、その後凍りつくような笑顔を浮かべている恋人の機嫌を取る為に高い買い物をさせられるのだが、商店街としては売上アップという事で結果オーライである。

 そんな風に、少しばかり遊ぶようにして働いているハンター達は他にもいた。
「ルーエル君、すっごく似合うよメイド服」
 楽しそうなレイン・レーネリル(ka2887)に、ルーエル・ゼクシディア(ka2473)は苦笑するように返す。
「ありがとう。でもこういう時、普通執事服じゃないのかな?」
「大丈夫! かわいいは正義だよ。ふふ、女装させるの癖になっちゃいそう」
 幼馴染のお姉さんに勧められ、お揃いのメイド服で給仕仕事。恥ずかしさも感じながら、お祭りと思いルーエルは共に給仕をこなしていく。
「いらっしゃいませ、お客さま。え? 星イベのチョコサービスですか? 僕からで良いんですか?」
 完全に女の子と勘違いしイベントチョコを欲しがるお客に困惑する彼を、レインは楽しそうに援護する。
「はい、ルーエル君、チョコ持って来たよ」
 そこに、クリスティンも加わる。
「他のお店で扱っている星アイテムは? 全て集めれば一緒に肖像画のサービスがあるんだが。一人で気が向かいなら、私や他の店員も同行するぞ」
「それ、僕も入ってるの? いいのかな?」
 苦笑するルーエルに、レインは楽しそうに返す。
「まぁまぁ、ルーエル君。休憩入ったら、後で商店街一緒に回って、私がバレンタインのプレゼントあげるから。ね?」
「ありがとう、お姉さん。うん、楽しくなってきたよ。なら頑張らないといけないね」
 仕事終わりの楽しさを励みに、彼は他の店員達と共に積極的に働いた。

 そうして、知り合い同士がお店で和気藹々としているのは彼らだけでもない。
「イヴァン、執事服似合ってるじゃない」
 商店街の美味しい物を探してガイドブック作り。その途中メイド執事喫茶に寄ったランカ(ka0327)は、同じ家に居候している友人・イヴァン・アディンセル(ka3328)の執事姿に歓声を上げる。
「似合ってるかい? ありがとう。それでランカ、折角来たんだし、お茶でもどうだい?」
「うん、それも良いんだけど、今はガイドブックの為に食べ歩きしてるから後でまた来るね。そうだ、一緒に見て回る? お店の人に許可が貰えたらだけど」
「許可は貰えると思うよ。ランカが来てくれるって聞いていたから、お店に余裕があれば許して貰えるよう交渉してたから。少し待ってて、行っても良いか聞いて来るよ」
 そうして話をつけた後、見て回って良いと許可が出る。ただし、少しばかりお店の宣伝も頼まれた。

「それでは宣伝も兼ねて商店街を回りますので、よろしくお願いします」
 イヴァンとランカの他に複数のメイドや執事を前にして、最上 風(ka0891)は、ぴょこりと頭を下げる。
 メイドと執事で商店街を回り宣伝、ついでにクーポン券付きのチョコやチラシを配布する。最上の提案による宣伝隊である。
「日頃からお店で培った、接客技術を駆使するには、良い機会かと思いますよ?」
 彼女の提案にお店は乗り、チョコやチラシにクーポン券をバスケットに入れ、皆はそれぞれ持って出発した。道中、幾つもの店を回っていく。

 例えば、パン屋。そこではアルバイトのミオレスカやお客のレイオスがいる。
「はい、星イベの星チョコパンです。私が作ってみたいんですけど、美味しいですか? ちゃんとした菓子パンを作ったのは初めてだから、美味しいと良いんですけれど」
「美味い! お世辞とかじゃないぜ。俺も料理はよくするけど、これだけ美味く作れれば大したもんだよ。そう思うだろ?」
 レイオスの言葉に、彼の両肩に座り星チョコパンを頬張る2体のパルムは目を輝かせながらコクコクと頷く。それを見たランカや最上は注文する。
「私も2つ! それとイヴァンの分でもう1個」
「私の分もかい、ランカ? いっぱい食べるのも良いけれど、気を付けないと家に帰って食べられなくなるよ」
「大丈夫! 甘い物は別腹だもん。それにこの為にお腹空かせてきたんだもの」
「風も一つ下さい。他所のお店の偵察は経費で落として良いそうなので、お代はメイド執事喫茶にお願いします」

 商店街巡りは更に続き、服屋にも。そこではアルバイトのメトロノームやお客のヴァイスが。
「すごく似合ってるぜ! これから春先に向けて明るい感じがぴったりだ」
 服を見ている途中、相棒のワンコとキノ目当てに近づいて来た女の子達と会話が弾み、選んだ服を褒める彼をメトロノームは感心する。
「ヴァイスさん、接客が上手ですね。私も頑張らないと」
「そんなに力入れなくても大丈夫。ほら、お客さん来てるから思ったように勧めてみれば良いんだって」
 その言葉に視線を向ければ、お店の宣伝で出ていたレインとルーエルが。
「ほらほら、ルーエル君。これ絶対似合うよ」
 それはふりふりのかわいいゴシックドレス。すかさずメトロノームは間の手を入れる。
「とっても似合います」
「えっと、うん、ありがとう」
 苦笑しながらも礼を返すルーエルだった。

 他にも雑貨屋では、星垂とコーネリアが。
「時にコーニーさんは意中の人にチョコを上げたりするのかな? ボクはお世話になっている傭兵隊の人たちへあげるつもりだけどね~」
「えぇ、意中の人って、そんな人はいない、ですよ~? その、御世話になってる人にはあげたいけど……」
 2人は広場の衣装から着替え、女の子らしい服装でガールズトークを繰り広げていた。

 こうしてハンター達は店員として、あるいはお客として商店街を盛り上げ、そして楽しんでいく。それはバレンタインのイベントとして良い雰囲気を作り出していた。
 とはいえ、それらはお祭り騒ぎの盛り上がり。バレンタイン特有の、甘い恋の盛り上がりとは少し違う。そんな中、どこか甘い雰囲気を漂わせていたハンター達も当然いた。
 
●良い雰囲気?
「ディッシュはもう予約済みなのでテイクアウトはダメですー!」
 案内所に仮置きされたデリバリーサービス所。権利関係もあり商店街の外への配達は外部の業者がするので、ここでは包装や配達手配のみを行う。セラ・グレンフェル(ka1049)は、ディッシュ・ハーツ(ka1048)を逆ナンしてきた20歳ほどの女性に返す。これに女性は苦笑するようにディッシュに聞く。
「あら、そうなの?」
 これにおどけたように、けれどセラを安心させるようにはっきりと返す。
「ハハハ。そうだね、セラの言う通りだ。でも次はもっと素敵な出会いがあるよ、麗しきレディ」
 これに女性はくすりと笑みを浮かべ返す。
「残念ね。でも良いわ。出会いの女神に愛されている2人の邪魔をするほど、野暮じゃないもの」
 そう言うと案内所を出て行く。後に残されたのは2人きり。少しばかり気恥ずかしい沈黙が満ちる中、それを振り払うようにディッシュは言う。
「さて、仕事を続けようか。配達の人を待たせると悪いからね」
 そう言うとテキパキと包装を再開。それに頷き包装の手伝いをしながら、セラは勢いを付ける為に一気に片付けると、熱のこもった声でディッシュを誘う。
「あのね、お仕事が一段落したらディッシュと一緒に屋台めぐりしたいな。みんなに、お土産買って帰りたいし。それに――」
 バレンタインのプレゼントを、あげたいから。
 ディッシュに喜んで欲しい気持ち一杯に、驚かせて楽しませたいから最後の言葉を飲み込んで。もし断られたらどうしようと不安も胸に抱きながら、それでもねだるように彼女は言う。
「だめ? ディッシュ?」
 これに彼は力を抜くように小さく笑顔を向ける。年の離れた彼女に、今の自分が応えられる精一杯の笑顔を作り、彼は応えた。
「もちろん。嬉しいよ、ありがとう。それじゃ、余計にお仕事頑張らないとな。一生懸命頑張って、俺達も一杯楽しもう」
「うん!」
 応えを返す彼女の笑顔は花が咲くように華やかで喜びに満ちていた。
 そんな2人は、この後迷子の世話や親の捜索にてんやわんやで頑張った後、チョコを渡し渡され良い雰囲気だったりする。
 そうして、どこかはにかむような可愛らしい恋模様が広がっている一方で、お互いが踏み込み過ぎないよう距離を取りながら交友する2人もいた。

「兵庫さんも、こちらでお買い物ですか?」
 イーディスのアルバイトしている小物屋で、静かに品物を見ていた榊 兵庫(ka0010)に、知り合いに送るチョコレートやちょっとした小物などの材料を仕入れる為に商店街を見て回っていた日下 菜摘(ka0881)が声を掛ける。
「ドクターも買い物か? こちらの世界でも同じような物があるとは思わなかったが、バレンタインだからな。折角だし、冷やかし半分に売り上げへ貢献しようと思ってね」
 これに苦笑するように日下は返す。
「私も、似たような物ですね。知り合いの方達に、バレンタインですから日頃の感謝の意味も込めて渡す贈り物を探してるんです」
「なるほど、というと――」
 榊は共通の知人の名前を出す。
「ええ、皆さんに贈ろうと思うんです。チョコレートやちょっとした小物を手作りしようかと。出来上がったら、兵庫さんにもプレゼントさせて頂きますから、楽しみにしておいて下さいね」
「それは楽しみだ。だが、それなら俺もお返しをしないと。商店街の売り上げにも貢献できる事だし。
 すまない。どうにも女性が喜びそうな物には疎くてな。何かお勧めの物があれば、教えてくれないか?」
 尋ねられたイーディスは、少し考える。先ほどまで居たカップルには、星を象ったペアのアクセサリなど勧めていたが、それでは少し親密過ぎると思い、星を象ったネックレスを勧める。格別高い訳ではないが丁寧な仕事で作られたそれは、身に付けたとしても自己主張しすぎる事も無く、それでいてちょっとしたアクセントとして彩りを与えてくれる。
「これなど、どうだろうか? 手頃な値段で、渡す方も貰う方も気軽にできる」
「なるほど。なら、それを貰おう。
 ドクター、貰ってくれるだろうか? ……他意はない。まあ、プレゼントのお礼の先渡しと思ってくれればいい。受け取って貰えれば、俺としても嬉しい」
 これに日下は驚きながら返す。
「……別にそんなつもりで言ったわけではないんですよ。でも、ありがとうございます」
 礼を返し、更に彼女は続ける。
「この後、兵庫さんは予定はありますか? 折角プレゼントを先に貰いましたし、私も良い物をプレゼントしたいですから。一緒に買い物をして、意見を教えてくれませんか? 皆さんに贈るプレゼントの意見も、教えて貰えれば嬉しいですし」
「分かった。俺が役に立つというのなら、協力させて貰おう」
 そうして、2人は共通の知人の為にも商店街を共に回った。

 こうして商店街の賑わいは高まっていく。その高まりは、広場でも同様だった。

●広場でみんなで楽しもう
「バレンタインの肖像画ですから、恋人同士みたいに描いて貰いましょう」
 星イベの肖像画。それに一人で居た純朴そうな青年の腕を取り、エルバッハは悪戯っぽく腕を絡める。メイド執事喫茶でアルバイトしていた彼女だが、星イベの手伝いにも動いていた。同様にクリスティンやミオレスカ、イーディスも動いている。それもあって、カップルだけでなく独り身にも好評だった。
 中にはミィリアやエリーのように、自分達も参加して描いて貰うハンター達も居た。
「エリー、仲の良い双子みたいに描いて貰おうね」
「うん。今日、お姉ちゃんはミィリアちゃんだから、私は妹役だね」

 盛況なのはチョコフォンデュイベントも同様で、散策から戻ったレイオスがパルム達と一緒に、ハンター達にも串を配っていく。
「はい、追加のベリー串」
 それを、アルバイト先から休憩を貰い、家族用のお土産を探しながら散策していたセレーネや、美味しそうな匂いにつられた最上に渡していく。
「ありがとうございます。うん、美味しい。帰ったらみんなにも食べさせてあげたいし、追加で果物買っちゃいましょう」
「風にも、一本下さい。甘い物は別腹なので、もっと一杯美味しく頂けます」
 彼女達以外のハンター達も、大勢楽しんでいた。

 こうして広場も活況を見せる。それを形に留めるように、アシェは賑わう人々をモデルに、新たに幾つもの人形を作っている。それは最初に作った執事の物よりも小ぶりだったが、その分数も多く賑やかで、見ているだけで楽しそうな感じが伝わってくる。
「うん、創作意欲が湧いて来るね。時間終了まで、まだまだいけるかな?」
 作っている彼自身も、楽しそうだった。

 賑わいは、日が暮れ辺りが暗くなるまで続いた。
 その全てはハンター達が賑やかに盛り上げ、楽しくなるように頑張ったからこそ。
 ハンター達のお蔭で、商店街はこの先さらに賑わうのだろう。そう思える依頼であった。

依頼結果

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MVP一覧


  • ヴァイス・エリダヌスka0364
  • 戦場に咲く白い花
    コーネリア・デュランka0504

  • 最上 風ka0891
  • 天に届く刃
    クリスティン・ガフka1090
  • 静かな闘志
    星垂ka1344
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカーka1990
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイドka2106
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカka3496
  • 無類の猫好き
    鹿島 雲雀ka3706

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人

  • セレーネ・エイシェント(ka0027
    エルフ|23才|女性|魔術師
  • 貝焼き片手の盗人退治
    ランカ(ka0327
    人間(紅)|15才|女性|闘狩人

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 戦場に咲く白い花
    コーネリア・デュラン(ka0504
    エルフ|16才|女性|疾影士
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士

  • 最上 風(ka0891
    人間(蒼)|10才|女性|聖導士

  • ディッシュ・ハーツ(ka1048
    人間(紅)|25才|男性|疾影士
  • 護りの細腕
    セラ・グレンフェル(ka1049
    人間(紅)|14才|女性|聖導士
  • 天に届く刃
    クリスティン・ガフ(ka1090
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 静かな闘志
    星垂(ka1344
    エルフ|12才|女性|霊闘士
  • 母なる海の鼓動
    ヴィーナ・ストレアル(ka1501
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 鍛鉄の盾
    イーディス・ノースハイド(ka2106
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 『未来』を背負う者
    エリー・ローウェル(ka2576
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • Bro-Freaks
    アイ・シャ(ka2762
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
  • 不空の彩り手
    アシェ・ブルゲス(ka3144
    エルフ|19才|男性|魔術師

  • イヴァン・アディンセル(ka3328
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 無類の猫好き
    鹿島 雲雀(ka3706
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人

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ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
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カタリーナ(kz0071
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/15 20:25:07