ゲスト
(ka0000)
ゴブ姐さん(男)のお悩み相談所
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~50人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/18 22:00
- 完成日
- 2015/02/19 05:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●意外と繁盛しているようで
「……ということなんダガ……」
「そうネェ。貴方モ反省してるみたいだケレド、まずは奥サンと向き合ウ勇気を持たないことには始まらないんじゃないカシラ。
ここで管まくのは自由ダケレド、遊んでいると勘違いされるとますますこじれるわヨ」
年齢が分かりにくいがおそらく中年と思われる武骨なゴブリンが着飾ったゴブリン(ただし声質的におそらく男性。しかし身に纏っているのは女物の華やかな衣類である)に相談を持ち掛けていたようだった。
以前バーを開けばいいんじゃないか、とアドバイスを受けたオカマのゴブリンは仲間と協力して酒を集め、料理の腕を磨き、店を用意してバーというか酒を飲みながら悩み相談をする場所を最近オープンしたのである。
最初の内は胡散臭そうに眺めている他のゴブリンたちだったが料理が手が込んでいて美味しい事と珍しい酒が揃っていること、親身になって話を聞いてくれることが口コミで広がり徐々に固定客がつき始めた様子だ。
「あとは……花とかを送ってみるのもいいかもしれないワネ」
「花?」
いまいちピンと来ていない様子のゴブリンにオカマのゴブリンのママはそう、花、と繰り返す。
「人間の間じゃ思いを伝えるのに花言葉や宝石言葉って言うのがあるノヨ。そうじゃなくても花を貰って喜ばない女性はいないと思うワ」
「そうか、花か……ありがとウ、参考にする」
「またドウゾ」
「広場に人間の男性をナンパにきてたオカマゴブリンのことを覚えてるかな? 彼ら……彼女、ら……?
あの後アドバイス通りバーを開いたみたいでね。意外と賑わってるみたいだ。それでお礼がしたいんだって。
珍しいお酒と美味しい料理に悩み相談がついてくるよ。人間も食べられるものだから安心して。
新人の子が入ったりでまだうまく悩みを聞きだせないゴブリンの相談に乗る練習相手になってくれたら嬉しい、とも聞いてるけど単純に料理やお酒を楽しむだけでも歓迎はしてくれるはずだよ。
僕もまぁ……いってみようかな」
どんなゴブリンなのかちょっと話してみたいしね、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)は言葉を結んだ。
「……ということなんダガ……」
「そうネェ。貴方モ反省してるみたいだケレド、まずは奥サンと向き合ウ勇気を持たないことには始まらないんじゃないカシラ。
ここで管まくのは自由ダケレド、遊んでいると勘違いされるとますますこじれるわヨ」
年齢が分かりにくいがおそらく中年と思われる武骨なゴブリンが着飾ったゴブリン(ただし声質的におそらく男性。しかし身に纏っているのは女物の華やかな衣類である)に相談を持ち掛けていたようだった。
以前バーを開けばいいんじゃないか、とアドバイスを受けたオカマのゴブリンは仲間と協力して酒を集め、料理の腕を磨き、店を用意してバーというか酒を飲みながら悩み相談をする場所を最近オープンしたのである。
最初の内は胡散臭そうに眺めている他のゴブリンたちだったが料理が手が込んでいて美味しい事と珍しい酒が揃っていること、親身になって話を聞いてくれることが口コミで広がり徐々に固定客がつき始めた様子だ。
「あとは……花とかを送ってみるのもいいかもしれないワネ」
「花?」
いまいちピンと来ていない様子のゴブリンにオカマのゴブリンのママはそう、花、と繰り返す。
「人間の間じゃ思いを伝えるのに花言葉や宝石言葉って言うのがあるノヨ。そうじゃなくても花を貰って喜ばない女性はいないと思うワ」
「そうか、花か……ありがとウ、参考にする」
「またドウゾ」
「広場に人間の男性をナンパにきてたオカマゴブリンのことを覚えてるかな? 彼ら……彼女、ら……?
あの後アドバイス通りバーを開いたみたいでね。意外と賑わってるみたいだ。それでお礼がしたいんだって。
珍しいお酒と美味しい料理に悩み相談がついてくるよ。人間も食べられるものだから安心して。
新人の子が入ったりでまだうまく悩みを聞きだせないゴブリンの相談に乗る練習相手になってくれたら嬉しい、とも聞いてるけど単純に料理やお酒を楽しむだけでも歓迎はしてくれるはずだよ。
僕もまぁ……いってみようかな」
どんなゴブリンなのかちょっと話してみたいしね、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)は言葉を結んだ。
リプレイ本文
●くねくね再び見参
同種であるゴブリンに見向きもされなかったころ、『山は高いほど登りたい、振られること前提で人間の男性をナンパに行こう!』とぶっ飛んだ目標を立て、ハンターの数人と顔見知りになったオカマでなんだか常にくねくねしているゴブリンがいたのだが、その時彼ら(彼女ら?)がハンターに勧められた道が『悩み相談なんかを兼ねたバーの運営』であり、『駄目男を育てるのも恋愛の醍醐味だし、自分から売りに行くと安くみられるからやめた方がいい』という意見を聞いてゴブリンたちは本当に店を開いたらしい。
今日はその時のアドバイスと、自分たち相手に真摯に向き合ってくれたお礼ということで軌道に乗り始めた店へハンターたちが招待されたのだった。
悩み相談も受け付ける、ということでシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)が持ち込んだ悩みは友人の恋愛事情について。
「ここでは仮にAとMとしておきますが、その二人がこう……いつもお互いのことを気遣っているのになかなかうまくいかないのですよ。
別に仲が悪いというわけではありませんが、常にどこか一線を引いていると言いますか……うあー! なんだあの二人は! うあー!」
普段は無表情で丁寧な口調のシルヴィアだが酒には弱いらしく相談しながらちびちびと飲んでいる内に酔いが回ってしまったらしい。
「そうネェ……その二人の様子をじっくり見ていないとはっきりしたことは分からないケレド、今ノ関係を崩すのガ怖いのカモしれないわね。
なまじ仲がいい分、踏み込んで拒絶サレタラ、と考えて足が竦むといえば伝わるカシラ?
二人ノ反応を見ながら外堀をじわじわ埋めていく感じ二なるでしょうケレド、それで間がぎこちなくなってしまわないようフォローが必要そうな感じはするワネ」
「外堀をじわじわ……埋めて、うまくいくでしょうか」
「ソレは二人と外堀の埋め方次第デショ。好きあっていても恋愛に発展しない男女モ世の中にはいるし、親同士に決められて本人同士の意に染まない結婚から何年も経って心ヲ通ワセル夫婦モいるって聞くワ」
「じれったいんですよねぇ……でも急かすのは駄目なんですよね……むぅ、とっととくっついてくれればこっちも安心するのに……」
言いたいことを言ってすっきりしたのかぱたりとテーブルに突っ伏して眠り始めたシルヴィアの肩に、冷えないようにブランケットをかけながらゴブ姐さんの一人は蒼い春ねぇ、といかつい顔で笑ったのだった。
「……こないだ開店したのにすぐに軌道に乗るなんて、たいしたもんだね。
やあ、開店おめでとう。頑張ってる?」
レイフェン=ランパード(ka0536) がお祝いに買ってきた花束を渡すとゴブ姐さんが嬉しそうにくねくね具合に拍車をかけながらお礼を言って出迎えた。
「悩み相談カシラ? それとも料理やお酒?」
「お祝いと店の様子を見に。折角だから新人の子と話してみたいかな」
「分かったワ。席に案内するワネ」
緊張している様子の新人のゴブリンが席についてよろしくお願いシマス、と頭を下げる。
「なんでこの店で働こうと思ったの?」
「前ノ仕事場で人間関係で揉メテ追い出されたトキ、此処ノ姐さんタチが凄く親身になってアドバイスをくれたノ。私モこの職場デナラ頑張れるんじゃないかって思ッテ……」
「そっか。悩み相談に乗らなきゃいけない、って気負い過ぎなんじゃないかな。話聞かせて! って迫られるとかえって言い難くなるよ。
相談だけじゃなくて、憂さ晴らしが目的だからさ、こういうお店に来るのは。まずは楽しませるつもりで気軽にお話したら?
話が苦手なら歌とか手品とか身につけてくる人もいるよ」
ゴブリンの年齢は外見からは良く分からないが、恐らくゴブ姐さんたちよりだいぶ若いゴブリンなのだろう。
レイフェンの意見を熱心に聞いてお礼を言って、その後しばらく会話の練習として料理を摘まみながら時間を過ごす。
「アノ、此処で頑張ってみるワ。いつか姐さん達みたいになるのガ目標ダケド、力入りすぎてた部分カラ力が抜けたみたい。
貴方ノおかげヨ。どうもアリガトウ」
「どういたしまして。ごちそうさま。楽しかったよ」
藤堂研司(ka0569) もかつてゴブ姐さんたちと縁を持ったハンターの一人で、お祝いを兼ねて店にやってきた。
「この短時間で……お店を持ち、人気に……。さすがだぜ、ゴブ姐さん方! 俺も負けてらんねぇ!」
「アラアラ、いらっしゃい。その節はアリガトウね」
「あ、ゴブ姐さん方! お久しぶりです!
あん時のゴブ姐さん、ありがとう! あの後、ちょっとでもこっちの世界に根差した変化をつけてみようと思ってさ……俺の店で、こっちで受けた依頼で作った料理をメニューにいれたんだ。
俺の寄る辺はまだ見つからないが……徐々に、徐々にやっていくよ!」
前回、集団デートで研司の相談に乗ったゴブ姐さんに研司は熱く意気込みを語る。
うんうん、と嬉しそうに話を聞くゴブ姐さん。
「それで、今日もちょっと相談したいんだけどさ。俺も結構なこと依頼で料理を作る機会があって、喜んでもらって、すっごく嬉しいんだが……なんだろうな、俺のは日常の料理って言うか……プロの料理……そんな味が出せてねぇって感じるんだ。
プロの姐さん方、どうしてる?」
「そうネェ……うちの店ハ割と家庭的な味を求メル人モ来たりするカラ一概には言えないケレド……自分オリジナルの隠し味なんかを忍ばせてみると、料理の印象ッテ変わるものヨ。
隠し味って言う位だから、他デハ出せない味の深ミが出るデショ? 同じ料理なのにどこかが違ウってところがミソね。
あとは高級感を出したいなら料理の味に見合った食器ヲ使ったりクロスや、お店でやるなら飾り付け二気を配っタリ、かしら」
「隠し味に、飾り付け……それに食器類の使い分け、か」
「食器が料理二負けてないナラ、その二つハお互いを高め合うんだって昔聞いたことがアルワ」
「なるほどなぁ……そういう細かい工夫でも結構違ってくるのかもな。
ありがとう、ゴブ姐さん! 俺にしか出せない味を作って、一人でも多くの人に美味いって言ってもらえる店を目指して頑張るぜ!」
「若い子ハ心ガしなやかで伸びていく姿を見ていると気持ちイイワネ」
頑張りなサイ、詰まったらまた気晴らしに来るとイイワ。
そのゴブ姐さんの言葉を合図に二人は食事を楽しむ時間に切り替えたのだった。
「立派に自分の店を構えたのじゃな~。また会えて嬉しいのじゃ」
ヴィルマ・ネーベル(ka2549)がゴブ姐さんにお祝いの言葉を言ったあと甘い酒を中心に酒盛りをしながらお悩み相談。
「ゴブ姐さん……大人な魅力ってどうすれば身につくの?
……私は逃げてばかりだから……あの頃と、同じ……弱くて何もできない子供のまま。……逃げずに立ち向かえるだけの力がもっとほしい……。
憧れの……絵本の魔女をいくら真似ても、身につかない……ごめんなさい、こんな愚痴」
「大人な魅力ガ欲しいノネ。アタシが思う大人って言うのはね、たくさんたくさん転んで、傷だらけになりナガラ、それでも夢を追いかけるコトヲ諦めないデ何度でも立ち上がってもう一度挑戦して、を繰り返ス強さを持った人。
傷つくたびに転び方ヲ学んで、傷つくたび二歩き方ヲ覚エル。失敗モ成功モどこかデ必ズ自分の力になる部分がアル。
スグに大人二なる必要ナンて7ないのヨ。外面ばっかり大人になっても中身ガ空っぽじゃタダ生き急いだだけのつまらない人間ダモノ」
だから一つずつ向き合って、たくさん転んで、自分が傷ついた分人に正しく優しくできる大人を目指して、自分のペースで一歩一歩進んでいけばいいわ、とゴブ姐さんは語る。
「失敗も成功も糧に……。外面ばっかり大人で中身が空っぽじゃ意味がない、か。……そうだね。
ちょっと元気出たよ……ありがとう」
「タマに立ち止ってみる時間モ必要ナ人モいるわ。何カあったらいつでも来なさい」
愚痴でもなんでも受け止めるから、とゴブ姐さんは笑ってもう一本酒のボトルを開けたのだった。
薄氷 薫(ka2692)はお勧めの酒を飲みながら、同じくバーをやっている身としてどんな酒が入っているのか、雰囲気などをさりげなくチェック。
他の客の相談に乗っているゴブ姐さん達の話を聞きながら無言で酒を飲み、新人のゴブリンの会話内容には特に耳を傾ける。
「ちょっといいか」
大体の問題点を把握したら新人のゴブリンを呼んで相手を頼み、相談する振りをして上手い相談テクニックを誘導的に教える作戦の発動。
「最近……人生に疲れちゃってさ。男ならではってのもあるし、うーん。
おたくはそういうことないのか?」
新人のゴブリンがオロオロしながらも自分なりの考えを述べると薫は小さくうなずいたりしながらなおも誘導。
「デモ、あたしヨリ意見より姐さん達の方が相談に乗るの上手いノニどうして……?」
「いや、経験者の、でも悟りきってないって言うか……あぁ、悪い意味じゃないぜ?
等身大で物を見られる相手からの意見ってのも参考になるしさ、、まあ、いろんな奴にいろんな悩みがあるんだなって勉強させてもらった。
ありがとな」
まだよくわかっていない風のゴブリンにお礼の言葉をかけ、チップを置いて店を出ていく。
新人のゴブリンが、薫がさりげなく練習台になってくれたのだと気づいたのは薫が店を出た後だった。
「ふーむ、まぁた変わった店がオープンしたもんだなぁ?
話のタネにはなるだろうし、一つ楽しむとするか」
奄文 錬司(ka2722)は純粋に飲み食いを楽しむほか、周囲の客の話に聞き耳を立てたり連れであるベラ・ハックウッド(ka3727)との会話を楽しんだりもしようとこの店にやってきた。
「俺からデートに誘ったんだしな。ちったぁエスコートってやつもやってみっか」
「変わったお店ね。男なのに女のゴブリンが主だなんて」
錬司にエスコートされながらベラが呟き、メニューを見て注文する料理を決めて会話と飲み物を楽しんでいると程なく料理が運ばれてきた。
ベラのリクエストで脂っこいものや重いものではなく軽食、できればいろんな薬草を混ぜ込んだお勧めの健康料理を出してもらったが薬草だけでなくハーブも使ったり味付けに工夫したりと意外なほど手の込んだ料理は「味は気にしないからできるだけ健康にいいものを」というリクエストをいい意味で裏切っていた。
「食事ハネ、栄養を摂る手段としても大事だけれど食事の環境や味の快不快で摂取できる栄養の量ガ変わったりするカラ、成分ダケじゃなく美味しくとることも大事なのヨ」
料理を運んできたゴブリンにそういわれ、会話をしながら舌鼓を打つ二人。
「ま、他の連中の話でも聞きながら酒でも飲むかね? ああ、ベラ。園芸が趣味みたいだが、良いモノはできてるか?」
自身も簡単な菜園で自給しているのでこれから育ててみたい野菜や花などの話を振ってみる錬司。
健康的な料理と酒を味わいながら二人はしばらくの間園芸の話題を中心に会話を楽しんだのだった。
ミネット・ベアール(ka3282)は席に案内されると同時に盛大なため息を吐いて同席したゴブ姐さんにちょっとだけ驚かれた。
「あ、すみません。ちょっと悩み事があって。これ、差し入れです! 締めたてなので美味しいですよ」
狩りをして捌いた獲物をお祝いの差し入れとして持っていくと調理を主に行っているゴブリンがお礼を言ってこれで一品作ってくる、と受け取って厨房に歩いて行った。
ミネットの悩みは文明的な生活に馴染めないこと。今までの人生はほぼ移動しながら森の中での狩猟生活で、食べるために必死だった。
「今も一人、街から離れてテント生活してます……どうも馴染めなくて」
便利だとは思うが馴染めない。人見知りではなく暮らしてきた文化の違い。
「違う環境に適応するのってすごく大変です。お姐さんもお店開いたりで結構身の回りの環境が変わったんですよね。どうですか?」
「アタシは好きなことを仕事にできたし、幸い店モ軌道に乗っているカラ辛い事ヨリ楽しいことの方ガ多いケレド……生活していくうえで一番大切なのって、いかにストレスを感じない生活環境デ過ごすカ、じゃないカシラ?
馴染めないなら無理に馴染む必要モない気がするワ。
全部周りト同じにしようとスルト無理な部分で疲れちゃうモノ」
「無理に馴染む必要はない、ですか?」
「厳しい生活ガ嫌で、都会デ華ヤカに暮らしたい、便利な道具二囲まれて楽をシタイ、そう思うなら街デノ暮らし方を学んでいってあうか合わないかヲ見定めないトいけないカモ知れないケレド……馴染めないッテ思うなら無理して染まる必要ハないと思うのヨ」
それで生活を成り立たせることができているなら今のままでいいのではないか、という言葉にミネットはなるほど、とうなずく。
「家デくらいハありのままの自分でいないと疲れちゃうと思うノ。だから街で暮らしたい、と思うまでは今のママでいいんじゃないカシラ」
「生活環境が変わったんだから、新しいほうに馴染まなきゃって思い込んでました。
そういう考え方もあるんですね……」
その後しばらくミネットが仕留めて捌いた獲物を使った料理を楽しみつつ人生相談は進み、自分なりに折り合いを見つけるヒントを得たミネットはお礼を言って店を後にしたのだった。
「ほーん? 本当にゴブリンが店やってるとはねぇ。面白い場所もあったもんだ」
興味本位できたもののやることはいつもと変わらず、適当に酒を飲んで食事を摂って、程よく楽しめれば最高だと思っている鵤(ka3319)はゴブ姐さん達には近づかずにたまに新人のこと話したりしつつ、悩み相談所となりつつあるバーの雰囲気を楽しんでいた。
「お悩みぃ? 特にないから酒でも注いでちょうだいよ」
けらけらと笑いながらグラスを差し出す鵤に新人ながらお酌は叩き込まれたのか、危なげない仕草で酒を注いでごゆっくり、と声をかけて去っていくゴブリン。
どうやら周りを眺めて楽しみたいタイプだと判断したようで同席して観察の邪魔をするのを避けたようだった。
「人も十人十色ってくらいいろいろいるもんだけど、ゴブリンもそうなんだねぇ。
普段は殺伐とした出会いしかないからなかなか面白い眺めだわ」
少し強めの酒をゆったりと味わいながら平和そのものな光景に目を細め口角をあげて場の雰囲気を楽しむのだった。
屋外(ka3530)はゴブ姐さんと、料理を摘まんでいたルカ・シュバルツエンド(kz0073)に命題を挙げて答えを求めていた。
一つは、結果判定が既に出尽くしてる試合で、負けてる方がエキシビジョン的に死ぬまで闘う場合はどんな心構えが必要か?
もう一つは、誰かを大切にする場合に言葉でしか表現出来ない時、気持ちを伝える言葉を重ねるか、抑えて態度を示すか、他の方法は?
それから恋愛相談として、週一位でデートに良さそうな御依頼が発表されたら嬉しいのですが?
恋愛を理屈で再構成して感情部分を勇気で補う場合に忘れてはならない事は?
「命を大事にしろって綺麗ごと以外の答えを求めてるなら、相手が自分を殺した時に背負ってしまうものをきちんと理解したうえで求めること、その対価として何を払えるか、かな」
「オカマは暴力で物事ヲ解決したりはしないのヨ。今負けてテモ死ぬまで戦う道を選ぶ前二もっと強くなって再戦を申し込んだ方が建設的じゃないかしら」
「自分を殺した事で相手が背負うものを理解し、そのうえで申し込む、ですか。では次の命題は?」
「行動デモ言葉デモ示してもらいたいんじゃない? 両想いなら、ね。片思いなら自分を見てもらえるようにするトコロから始めないと引かれると思うケレド。
言葉だけデハ伝わらないコトモ、行動だけデハ伝わらないコトモ世の中にはたくさんあるわ。どっちか片方じゃ駄目ナノヨ」
「男の人は多いらしいねぇ、態度で察しろっていうタイプ。言語が同じでも脳の構造なんて一人一人違うから本当の意味で分かりあうって僕は無理だって思ってるタイプだから伝える手段は多く持ってる方がいいと思うよ。
認識のすり合わせって大事だよね」
「言葉で足りない部分を行動で、行動で足りない部分を言葉で補うわけですね。……デートに関しては……」
「アタシは依頼とかは分からないわね。招待状なら出せるケレド、オカマのゴブリンのバーにデート、っていうのもオンナノコにとっては複雑でしょうし……」
「今の時期リア充は爆発しろって感じの依頼は多そうだけどねぇ……二兎を追わずに大人しく二人でデートした方が早いし邪魔も入らないかもよ」
「む……依頼にかこつければ誘いやすいかと思ったのですが。では、最後の命題については?」
「時と場合と場所を考えること、かな? 補足があったら恋愛の専門家さん、よろしく」
「理屈で割り切れないのが感情ってモノだから、無理に再構成して歪ませないコトネ。勇気で補う時モ、相手がその勇気を受け止めらる状態二いるかってイウ気遣いも大切ダワ。
恋人同士デモ気持ちヲ押し付け過ぎちゃ重くなっちゃウから、飴を舐めるように長く楽しみたいなら途中で噛みつぶすような野暮ハしないコト」
その後も暫く屋外が挙げた四つの命題について三人は議論を交わしたのだった。
ドゥアル(ka3746)は新人のゴブリンと席を共にしていた。
悩みの相談に乗る練習相手、ということだったが本人曰く自分の悩みは特殊で話しにくい、とのこと。
「相談……わたくしの体質のことでし……覚醒しないと……この通り……ほぼ寝ていまして……今では覚醒しなけれ……目が覚めることは……いのですが……いつか眠れなくなるのではと……不安なので……」
合間合間に既に寝ているドゥアルに新人は呆気にとられつつも料理や飲み物が突っ伏した時にこの客人の服や髪を汚さないようにと手早く彼女が寝落ちてテーブルに突っ伏した時に被害が発生しないように空間を作った。
「このままだと……心配で一日二十五時間しか眠れませ」
「……アノ、一日は二十四時間ダト思ウのダケレド」
「三度の飯より……睡眠を優先……わたくしにとっては……死活問題で……何かいい方法は……あるで……うか……」
「…………とりあえず、食事と入浴ノ時間ハ取った方ガいいと思うワ。寝るのニモ意外ト体力を使うカラ、老人ハ朝が早いト聞いたことガあるカラ、食事を摂らずに寝るのはよくない気がするノ」
「そうです……か……では折角……食事……も」
退避させていた食事に手を付ける最中も頭はぐらぐら、意識はふらふら。
夢と現をいったりきたりする客人の長い髪が汚れたりしないように新人のゴブリンは必至で給仕をしていたのだった。
紫(ka4173) と蛍(ka4174) はガールズトークのノリを楽しもうと姉妹でやってきていた。
接客についたゴブリンが、爪を綺麗に整えているのを見て紫が歓声をあげる。
「オネーサンのネイル、超かわいくない? ユカも真似っこしていい!?」
褒められたのが嬉しかったのか、道具を買った店や色を置くときの注意点などを細やかに教えるゴブリンに紫は種族の違いも忘れて大はしゃぎ。
「……なんて呼べばいーのかな……オネーサン?」
「好き二呼んでいいワヨ」
最初は他愛のない話から始まり、会話が弾んできたところで蛍が悩み相談を。
「そーだ。オネーサン聞いて。私、悩みがあるの。実はね、お菓子作りが苦手なの。
この間もケーキ作ったら、キッチンが消し飛んじゃって……紫ちゃんに凄く怒られたんだよね……」
「キッチンが……ソレは、凄いワネ。見ていてあげるカラ簡単そうなのから挑戦してミル?」
「だめだよオネーサァーン! 蛍はマジでバナナのキャラメリゼ~イクラを添えて~とかやってくるんだよ試食なんてもってのほかだよー!!」
「……ソレジャ、一般的なアドバイスをするカラよく聞いテ」
「うん……」
メモを取る用意をした蛍にゴブリンはコホン、と一つ咳払いをする。
「初心者向けのレシピ本を買ッテ、忠実スギルくらい忠実にレシピの通り二やってごらんナサイ。
料理で失敗する人ハ大概余計なアレンジを入れたり計量を面倒くさがったり、ダカラ。
最初ハ火加減の調節も難しいと思うカラ慣れた人ト一緒二火を使うとイイワ」
「なるほど……」
「慣れないウチはアレンジしちゃダメよ。慣れないからこそレシピを大事二。此処で出してるメニューで気に入ったのがあればレシピをあげるから慣れてきたら挑戦してミル?」
「わ、ここの料理美味しいと思ってたからレシピ貰えるのは嬉しいかも!」
食いついたのは胃袋ブラックホール女子の紫。
「基本ヲしっかり抑えられれば料理ハ少しずつ上達していくと思うワヨ」
「有難う、オネーサン」
そしてそれぞれの悩みを打ち明け、或いは相談に乗る練習をして、はたまた単純に食事や酒を楽しんでハンターたちは帰っていった。
ゴブ姐さん達は一人一人に見送りの際に声をかけ、気がむいたらまた来てほしい、と言葉を添える。
明日からはゴブ姐さん達にとってもハンターたちにとってもそれぞれの日常が始まる事だろう。
敵対することの多いハンターとゴブリンという立場を超えたちょっとした非日常はささやかに幕を閉じたのだった。
同種であるゴブリンに見向きもされなかったころ、『山は高いほど登りたい、振られること前提で人間の男性をナンパに行こう!』とぶっ飛んだ目標を立て、ハンターの数人と顔見知りになったオカマでなんだか常にくねくねしているゴブリンがいたのだが、その時彼ら(彼女ら?)がハンターに勧められた道が『悩み相談なんかを兼ねたバーの運営』であり、『駄目男を育てるのも恋愛の醍醐味だし、自分から売りに行くと安くみられるからやめた方がいい』という意見を聞いてゴブリンたちは本当に店を開いたらしい。
今日はその時のアドバイスと、自分たち相手に真摯に向き合ってくれたお礼ということで軌道に乗り始めた店へハンターたちが招待されたのだった。
悩み相談も受け付ける、ということでシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)が持ち込んだ悩みは友人の恋愛事情について。
「ここでは仮にAとMとしておきますが、その二人がこう……いつもお互いのことを気遣っているのになかなかうまくいかないのですよ。
別に仲が悪いというわけではありませんが、常にどこか一線を引いていると言いますか……うあー! なんだあの二人は! うあー!」
普段は無表情で丁寧な口調のシルヴィアだが酒には弱いらしく相談しながらちびちびと飲んでいる内に酔いが回ってしまったらしい。
「そうネェ……その二人の様子をじっくり見ていないとはっきりしたことは分からないケレド、今ノ関係を崩すのガ怖いのカモしれないわね。
なまじ仲がいい分、踏み込んで拒絶サレタラ、と考えて足が竦むといえば伝わるカシラ?
二人ノ反応を見ながら外堀をじわじわ埋めていく感じ二なるでしょうケレド、それで間がぎこちなくなってしまわないようフォローが必要そうな感じはするワネ」
「外堀をじわじわ……埋めて、うまくいくでしょうか」
「ソレは二人と外堀の埋め方次第デショ。好きあっていても恋愛に発展しない男女モ世の中にはいるし、親同士に決められて本人同士の意に染まない結婚から何年も経って心ヲ通ワセル夫婦モいるって聞くワ」
「じれったいんですよねぇ……でも急かすのは駄目なんですよね……むぅ、とっととくっついてくれればこっちも安心するのに……」
言いたいことを言ってすっきりしたのかぱたりとテーブルに突っ伏して眠り始めたシルヴィアの肩に、冷えないようにブランケットをかけながらゴブ姐さんの一人は蒼い春ねぇ、といかつい顔で笑ったのだった。
「……こないだ開店したのにすぐに軌道に乗るなんて、たいしたもんだね。
やあ、開店おめでとう。頑張ってる?」
レイフェン=ランパード(ka0536) がお祝いに買ってきた花束を渡すとゴブ姐さんが嬉しそうにくねくね具合に拍車をかけながらお礼を言って出迎えた。
「悩み相談カシラ? それとも料理やお酒?」
「お祝いと店の様子を見に。折角だから新人の子と話してみたいかな」
「分かったワ。席に案内するワネ」
緊張している様子の新人のゴブリンが席についてよろしくお願いシマス、と頭を下げる。
「なんでこの店で働こうと思ったの?」
「前ノ仕事場で人間関係で揉メテ追い出されたトキ、此処ノ姐さんタチが凄く親身になってアドバイスをくれたノ。私モこの職場デナラ頑張れるんじゃないかって思ッテ……」
「そっか。悩み相談に乗らなきゃいけない、って気負い過ぎなんじゃないかな。話聞かせて! って迫られるとかえって言い難くなるよ。
相談だけじゃなくて、憂さ晴らしが目的だからさ、こういうお店に来るのは。まずは楽しませるつもりで気軽にお話したら?
話が苦手なら歌とか手品とか身につけてくる人もいるよ」
ゴブリンの年齢は外見からは良く分からないが、恐らくゴブ姐さんたちよりだいぶ若いゴブリンなのだろう。
レイフェンの意見を熱心に聞いてお礼を言って、その後しばらく会話の練習として料理を摘まみながら時間を過ごす。
「アノ、此処で頑張ってみるワ。いつか姐さん達みたいになるのガ目標ダケド、力入りすぎてた部分カラ力が抜けたみたい。
貴方ノおかげヨ。どうもアリガトウ」
「どういたしまして。ごちそうさま。楽しかったよ」
藤堂研司(ka0569) もかつてゴブ姐さんたちと縁を持ったハンターの一人で、お祝いを兼ねて店にやってきた。
「この短時間で……お店を持ち、人気に……。さすがだぜ、ゴブ姐さん方! 俺も負けてらんねぇ!」
「アラアラ、いらっしゃい。その節はアリガトウね」
「あ、ゴブ姐さん方! お久しぶりです!
あん時のゴブ姐さん、ありがとう! あの後、ちょっとでもこっちの世界に根差した変化をつけてみようと思ってさ……俺の店で、こっちで受けた依頼で作った料理をメニューにいれたんだ。
俺の寄る辺はまだ見つからないが……徐々に、徐々にやっていくよ!」
前回、集団デートで研司の相談に乗ったゴブ姐さんに研司は熱く意気込みを語る。
うんうん、と嬉しそうに話を聞くゴブ姐さん。
「それで、今日もちょっと相談したいんだけどさ。俺も結構なこと依頼で料理を作る機会があって、喜んでもらって、すっごく嬉しいんだが……なんだろうな、俺のは日常の料理って言うか……プロの料理……そんな味が出せてねぇって感じるんだ。
プロの姐さん方、どうしてる?」
「そうネェ……うちの店ハ割と家庭的な味を求メル人モ来たりするカラ一概には言えないケレド……自分オリジナルの隠し味なんかを忍ばせてみると、料理の印象ッテ変わるものヨ。
隠し味って言う位だから、他デハ出せない味の深ミが出るデショ? 同じ料理なのにどこかが違ウってところがミソね。
あとは高級感を出したいなら料理の味に見合った食器ヲ使ったりクロスや、お店でやるなら飾り付け二気を配っタリ、かしら」
「隠し味に、飾り付け……それに食器類の使い分け、か」
「食器が料理二負けてないナラ、その二つハお互いを高め合うんだって昔聞いたことがアルワ」
「なるほどなぁ……そういう細かい工夫でも結構違ってくるのかもな。
ありがとう、ゴブ姐さん! 俺にしか出せない味を作って、一人でも多くの人に美味いって言ってもらえる店を目指して頑張るぜ!」
「若い子ハ心ガしなやかで伸びていく姿を見ていると気持ちイイワネ」
頑張りなサイ、詰まったらまた気晴らしに来るとイイワ。
そのゴブ姐さんの言葉を合図に二人は食事を楽しむ時間に切り替えたのだった。
「立派に自分の店を構えたのじゃな~。また会えて嬉しいのじゃ」
ヴィルマ・ネーベル(ka2549)がゴブ姐さんにお祝いの言葉を言ったあと甘い酒を中心に酒盛りをしながらお悩み相談。
「ゴブ姐さん……大人な魅力ってどうすれば身につくの?
……私は逃げてばかりだから……あの頃と、同じ……弱くて何もできない子供のまま。……逃げずに立ち向かえるだけの力がもっとほしい……。
憧れの……絵本の魔女をいくら真似ても、身につかない……ごめんなさい、こんな愚痴」
「大人な魅力ガ欲しいノネ。アタシが思う大人って言うのはね、たくさんたくさん転んで、傷だらけになりナガラ、それでも夢を追いかけるコトヲ諦めないデ何度でも立ち上がってもう一度挑戦して、を繰り返ス強さを持った人。
傷つくたびに転び方ヲ学んで、傷つくたび二歩き方ヲ覚エル。失敗モ成功モどこかデ必ズ自分の力になる部分がアル。
スグに大人二なる必要ナンて7ないのヨ。外面ばっかり大人になっても中身ガ空っぽじゃタダ生き急いだだけのつまらない人間ダモノ」
だから一つずつ向き合って、たくさん転んで、自分が傷ついた分人に正しく優しくできる大人を目指して、自分のペースで一歩一歩進んでいけばいいわ、とゴブ姐さんは語る。
「失敗も成功も糧に……。外面ばっかり大人で中身が空っぽじゃ意味がない、か。……そうだね。
ちょっと元気出たよ……ありがとう」
「タマに立ち止ってみる時間モ必要ナ人モいるわ。何カあったらいつでも来なさい」
愚痴でもなんでも受け止めるから、とゴブ姐さんは笑ってもう一本酒のボトルを開けたのだった。
薄氷 薫(ka2692)はお勧めの酒を飲みながら、同じくバーをやっている身としてどんな酒が入っているのか、雰囲気などをさりげなくチェック。
他の客の相談に乗っているゴブ姐さん達の話を聞きながら無言で酒を飲み、新人のゴブリンの会話内容には特に耳を傾ける。
「ちょっといいか」
大体の問題点を把握したら新人のゴブリンを呼んで相手を頼み、相談する振りをして上手い相談テクニックを誘導的に教える作戦の発動。
「最近……人生に疲れちゃってさ。男ならではってのもあるし、うーん。
おたくはそういうことないのか?」
新人のゴブリンがオロオロしながらも自分なりの考えを述べると薫は小さくうなずいたりしながらなおも誘導。
「デモ、あたしヨリ意見より姐さん達の方が相談に乗るの上手いノニどうして……?」
「いや、経験者の、でも悟りきってないって言うか……あぁ、悪い意味じゃないぜ?
等身大で物を見られる相手からの意見ってのも参考になるしさ、、まあ、いろんな奴にいろんな悩みがあるんだなって勉強させてもらった。
ありがとな」
まだよくわかっていない風のゴブリンにお礼の言葉をかけ、チップを置いて店を出ていく。
新人のゴブリンが、薫がさりげなく練習台になってくれたのだと気づいたのは薫が店を出た後だった。
「ふーむ、まぁた変わった店がオープンしたもんだなぁ?
話のタネにはなるだろうし、一つ楽しむとするか」
奄文 錬司(ka2722)は純粋に飲み食いを楽しむほか、周囲の客の話に聞き耳を立てたり連れであるベラ・ハックウッド(ka3727)との会話を楽しんだりもしようとこの店にやってきた。
「俺からデートに誘ったんだしな。ちったぁエスコートってやつもやってみっか」
「変わったお店ね。男なのに女のゴブリンが主だなんて」
錬司にエスコートされながらベラが呟き、メニューを見て注文する料理を決めて会話と飲み物を楽しんでいると程なく料理が運ばれてきた。
ベラのリクエストで脂っこいものや重いものではなく軽食、できればいろんな薬草を混ぜ込んだお勧めの健康料理を出してもらったが薬草だけでなくハーブも使ったり味付けに工夫したりと意外なほど手の込んだ料理は「味は気にしないからできるだけ健康にいいものを」というリクエストをいい意味で裏切っていた。
「食事ハネ、栄養を摂る手段としても大事だけれど食事の環境や味の快不快で摂取できる栄養の量ガ変わったりするカラ、成分ダケじゃなく美味しくとることも大事なのヨ」
料理を運んできたゴブリンにそういわれ、会話をしながら舌鼓を打つ二人。
「ま、他の連中の話でも聞きながら酒でも飲むかね? ああ、ベラ。園芸が趣味みたいだが、良いモノはできてるか?」
自身も簡単な菜園で自給しているのでこれから育ててみたい野菜や花などの話を振ってみる錬司。
健康的な料理と酒を味わいながら二人はしばらくの間園芸の話題を中心に会話を楽しんだのだった。
ミネット・ベアール(ka3282)は席に案内されると同時に盛大なため息を吐いて同席したゴブ姐さんにちょっとだけ驚かれた。
「あ、すみません。ちょっと悩み事があって。これ、差し入れです! 締めたてなので美味しいですよ」
狩りをして捌いた獲物をお祝いの差し入れとして持っていくと調理を主に行っているゴブリンがお礼を言ってこれで一品作ってくる、と受け取って厨房に歩いて行った。
ミネットの悩みは文明的な生活に馴染めないこと。今までの人生はほぼ移動しながら森の中での狩猟生活で、食べるために必死だった。
「今も一人、街から離れてテント生活してます……どうも馴染めなくて」
便利だとは思うが馴染めない。人見知りではなく暮らしてきた文化の違い。
「違う環境に適応するのってすごく大変です。お姐さんもお店開いたりで結構身の回りの環境が変わったんですよね。どうですか?」
「アタシは好きなことを仕事にできたし、幸い店モ軌道に乗っているカラ辛い事ヨリ楽しいことの方ガ多いケレド……生活していくうえで一番大切なのって、いかにストレスを感じない生活環境デ過ごすカ、じゃないカシラ?
馴染めないなら無理に馴染む必要モない気がするワ。
全部周りト同じにしようとスルト無理な部分で疲れちゃうモノ」
「無理に馴染む必要はない、ですか?」
「厳しい生活ガ嫌で、都会デ華ヤカに暮らしたい、便利な道具二囲まれて楽をシタイ、そう思うなら街デノ暮らし方を学んでいってあうか合わないかヲ見定めないトいけないカモ知れないケレド……馴染めないッテ思うなら無理して染まる必要ハないと思うのヨ」
それで生活を成り立たせることができているなら今のままでいいのではないか、という言葉にミネットはなるほど、とうなずく。
「家デくらいハありのままの自分でいないと疲れちゃうと思うノ。だから街で暮らしたい、と思うまでは今のママでいいんじゃないカシラ」
「生活環境が変わったんだから、新しいほうに馴染まなきゃって思い込んでました。
そういう考え方もあるんですね……」
その後しばらくミネットが仕留めて捌いた獲物を使った料理を楽しみつつ人生相談は進み、自分なりに折り合いを見つけるヒントを得たミネットはお礼を言って店を後にしたのだった。
「ほーん? 本当にゴブリンが店やってるとはねぇ。面白い場所もあったもんだ」
興味本位できたもののやることはいつもと変わらず、適当に酒を飲んで食事を摂って、程よく楽しめれば最高だと思っている鵤(ka3319)はゴブ姐さん達には近づかずにたまに新人のこと話したりしつつ、悩み相談所となりつつあるバーの雰囲気を楽しんでいた。
「お悩みぃ? 特にないから酒でも注いでちょうだいよ」
けらけらと笑いながらグラスを差し出す鵤に新人ながらお酌は叩き込まれたのか、危なげない仕草で酒を注いでごゆっくり、と声をかけて去っていくゴブリン。
どうやら周りを眺めて楽しみたいタイプだと判断したようで同席して観察の邪魔をするのを避けたようだった。
「人も十人十色ってくらいいろいろいるもんだけど、ゴブリンもそうなんだねぇ。
普段は殺伐とした出会いしかないからなかなか面白い眺めだわ」
少し強めの酒をゆったりと味わいながら平和そのものな光景に目を細め口角をあげて場の雰囲気を楽しむのだった。
屋外(ka3530)はゴブ姐さんと、料理を摘まんでいたルカ・シュバルツエンド(kz0073)に命題を挙げて答えを求めていた。
一つは、結果判定が既に出尽くしてる試合で、負けてる方がエキシビジョン的に死ぬまで闘う場合はどんな心構えが必要か?
もう一つは、誰かを大切にする場合に言葉でしか表現出来ない時、気持ちを伝える言葉を重ねるか、抑えて態度を示すか、他の方法は?
それから恋愛相談として、週一位でデートに良さそうな御依頼が発表されたら嬉しいのですが?
恋愛を理屈で再構成して感情部分を勇気で補う場合に忘れてはならない事は?
「命を大事にしろって綺麗ごと以外の答えを求めてるなら、相手が自分を殺した時に背負ってしまうものをきちんと理解したうえで求めること、その対価として何を払えるか、かな」
「オカマは暴力で物事ヲ解決したりはしないのヨ。今負けてテモ死ぬまで戦う道を選ぶ前二もっと強くなって再戦を申し込んだ方が建設的じゃないかしら」
「自分を殺した事で相手が背負うものを理解し、そのうえで申し込む、ですか。では次の命題は?」
「行動デモ言葉デモ示してもらいたいんじゃない? 両想いなら、ね。片思いなら自分を見てもらえるようにするトコロから始めないと引かれると思うケレド。
言葉だけデハ伝わらないコトモ、行動だけデハ伝わらないコトモ世の中にはたくさんあるわ。どっちか片方じゃ駄目ナノヨ」
「男の人は多いらしいねぇ、態度で察しろっていうタイプ。言語が同じでも脳の構造なんて一人一人違うから本当の意味で分かりあうって僕は無理だって思ってるタイプだから伝える手段は多く持ってる方がいいと思うよ。
認識のすり合わせって大事だよね」
「言葉で足りない部分を行動で、行動で足りない部分を言葉で補うわけですね。……デートに関しては……」
「アタシは依頼とかは分からないわね。招待状なら出せるケレド、オカマのゴブリンのバーにデート、っていうのもオンナノコにとっては複雑でしょうし……」
「今の時期リア充は爆発しろって感じの依頼は多そうだけどねぇ……二兎を追わずに大人しく二人でデートした方が早いし邪魔も入らないかもよ」
「む……依頼にかこつければ誘いやすいかと思ったのですが。では、最後の命題については?」
「時と場合と場所を考えること、かな? 補足があったら恋愛の専門家さん、よろしく」
「理屈で割り切れないのが感情ってモノだから、無理に再構成して歪ませないコトネ。勇気で補う時モ、相手がその勇気を受け止めらる状態二いるかってイウ気遣いも大切ダワ。
恋人同士デモ気持ちヲ押し付け過ぎちゃ重くなっちゃウから、飴を舐めるように長く楽しみたいなら途中で噛みつぶすような野暮ハしないコト」
その後も暫く屋外が挙げた四つの命題について三人は議論を交わしたのだった。
ドゥアル(ka3746)は新人のゴブリンと席を共にしていた。
悩みの相談に乗る練習相手、ということだったが本人曰く自分の悩みは特殊で話しにくい、とのこと。
「相談……わたくしの体質のことでし……覚醒しないと……この通り……ほぼ寝ていまして……今では覚醒しなけれ……目が覚めることは……いのですが……いつか眠れなくなるのではと……不安なので……」
合間合間に既に寝ているドゥアルに新人は呆気にとられつつも料理や飲み物が突っ伏した時にこの客人の服や髪を汚さないようにと手早く彼女が寝落ちてテーブルに突っ伏した時に被害が発生しないように空間を作った。
「このままだと……心配で一日二十五時間しか眠れませ」
「……アノ、一日は二十四時間ダト思ウのダケレド」
「三度の飯より……睡眠を優先……わたくしにとっては……死活問題で……何かいい方法は……あるで……うか……」
「…………とりあえず、食事と入浴ノ時間ハ取った方ガいいと思うワ。寝るのニモ意外ト体力を使うカラ、老人ハ朝が早いト聞いたことガあるカラ、食事を摂らずに寝るのはよくない気がするノ」
「そうです……か……では折角……食事……も」
退避させていた食事に手を付ける最中も頭はぐらぐら、意識はふらふら。
夢と現をいったりきたりする客人の長い髪が汚れたりしないように新人のゴブリンは必至で給仕をしていたのだった。
紫(ka4173) と蛍(ka4174) はガールズトークのノリを楽しもうと姉妹でやってきていた。
接客についたゴブリンが、爪を綺麗に整えているのを見て紫が歓声をあげる。
「オネーサンのネイル、超かわいくない? ユカも真似っこしていい!?」
褒められたのが嬉しかったのか、道具を買った店や色を置くときの注意点などを細やかに教えるゴブリンに紫は種族の違いも忘れて大はしゃぎ。
「……なんて呼べばいーのかな……オネーサン?」
「好き二呼んでいいワヨ」
最初は他愛のない話から始まり、会話が弾んできたところで蛍が悩み相談を。
「そーだ。オネーサン聞いて。私、悩みがあるの。実はね、お菓子作りが苦手なの。
この間もケーキ作ったら、キッチンが消し飛んじゃって……紫ちゃんに凄く怒られたんだよね……」
「キッチンが……ソレは、凄いワネ。見ていてあげるカラ簡単そうなのから挑戦してミル?」
「だめだよオネーサァーン! 蛍はマジでバナナのキャラメリゼ~イクラを添えて~とかやってくるんだよ試食なんてもってのほかだよー!!」
「……ソレジャ、一般的なアドバイスをするカラよく聞いテ」
「うん……」
メモを取る用意をした蛍にゴブリンはコホン、と一つ咳払いをする。
「初心者向けのレシピ本を買ッテ、忠実スギルくらい忠実にレシピの通り二やってごらんナサイ。
料理で失敗する人ハ大概余計なアレンジを入れたり計量を面倒くさがったり、ダカラ。
最初ハ火加減の調節も難しいと思うカラ慣れた人ト一緒二火を使うとイイワ」
「なるほど……」
「慣れないウチはアレンジしちゃダメよ。慣れないからこそレシピを大事二。此処で出してるメニューで気に入ったのがあればレシピをあげるから慣れてきたら挑戦してミル?」
「わ、ここの料理美味しいと思ってたからレシピ貰えるのは嬉しいかも!」
食いついたのは胃袋ブラックホール女子の紫。
「基本ヲしっかり抑えられれば料理ハ少しずつ上達していくと思うワヨ」
「有難う、オネーサン」
そしてそれぞれの悩みを打ち明け、或いは相談に乗る練習をして、はたまた単純に食事や酒を楽しんでハンターたちは帰っていった。
ゴブ姐さん達は一人一人に見送りの際に声をかけ、気がむいたらまた来てほしい、と言葉を添える。
明日からはゴブ姐さん達にとってもハンターたちにとってもそれぞれの日常が始まる事だろう。
敵対することの多いハンターとゴブリンという立場を超えたちょっとした非日常はささやかに幕を閉じたのだった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/18 20:52:01 |